JP6171227B2 - 陽イオン性多糖類共重合体の抗癌剤デリバリーシステム - Google Patents
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Description
個人差による薬物動態の偏りも問題である。 それは、パクリタキセルは、主としてCYP2C8、CYP3A4により代謝され、また薬物トランスポータの1つであるP-糖タンパク(MDR1/ABCB1)の基質となることが報告されており、一方、ドセタキセルはCYP3A4による代謝を受ける。従って、薬物動態の個人差がこれらの薬物代謝酵素や薬物トランスポータの遺伝子多型により生じている可能性がある。
さらに、これらの薬物並びにその添加剤が原因と推定されるアレルギー性副作用も比較的高頻度にみられる。これらの解決策として本発明の超分子タキサン系抗癌剤複合体は人工酵素として基質選択性を有する可能性がある。
1968年、米国アルゼ社(現在ジョンソンアンドジョンソン社)により薬物を製剤から徐々に放出させることによって効果を長期間持続するように提案された概念がドラッグデリバリーシステム(DDS)である。今日まで研究され、中でも抗癌剤への利用が活発に研究されてきた。
その理由は、抗癌剤の強力な副作用の抑制や薬剤の利便性の拡大、薬効の増強など様々な有益性が存在しているからである。例えば、抗癌剤パクリタキセル(タキソール)は、非水溶性のためクレモホールELや無水エタノール等で溶解したものを使用している。このタキソールの水溶化は、L−グルタミン酸に固定化させた方法の他にアルブミンやデキストリンなどと複合化したものが知られている。
ドラッグデリバリーシステム(DDS)では水溶性・脂溶性などのバランスや分子量で粒子径を大きくしEPR効果やRES抑制効果が可能となる。EPR効果では、粒子径数10〜200nmで新生血管を透過して薬剤が腫瘍組織へ集積していき、RES抑制では肝臓のクッパー細胞や副腎のマクロファージ系の細胞によって粒子径400nm以上のものを異物として貪食作用により排除する。肝臓では薬物代謝により分解されるので、腎臓の糸球体でろ過により5nm以下のものが排泄される。このように最適な粒子径にすることで長期間体内の薬物濃度を維持することが可能である。このような方法をプロドラッグ化といい薬剤の利便性を向上させるものであるが、さらに効率良く癌細胞にとりこまれるためには、マイナス帯電の癌細胞表面にたいして陽電荷である必要や安全性の為にDDSが加熱滅菌の可能性があるかなどの問題点がある。
一方従来イムノアッセイ材料としてラテックス重合生成物を製造されていたが、製造する方法は界面活性剤存在下水溶液中で乳化重合して成された物が大部分であり、界面活性剤の存在しないソ−プレスの物が望まれている。 これは水溶液中に存在する界面活性剤がラテックス診断薬としての作用に影響するからである。 この為に問題点を解決するための手段として水可溶性リニア多糖類の陽イオン性誘導体−オレフィンを有する単量体グラフト共重合体は水酸基を有する水可溶性リニア多糖類の陽イオン性誘導体に水中下オレフィンを有する単量体をレドックス開始剤などでグラフト重合させ、イムノアッセイ材料として有用なソ−プレスのラテックス重合生成物として製造される。 すでにこのソ−プレスの水可溶性リニア多糖類の陽イオン性誘導体−オレフィンを有する単量体グラフト共重合体ラテックスおよびラテックス診断薬の特許が成立している。 これは抗体吸着ラテックス診断薬に使用されている。 乳化重合とは水溶液中にオレフィン単量体を懸濁し通常は界面活性剤などを用いて乳化される重合法で、詳細に述べれば単量体あるいは成長鎖と水素結合、ク−ロン力、電荷移動相互作用、ファンデルワ−ルス力などによって水溶媒界面で相互作用して高分子鎖が重合成長して水溶液中に微粒子を形成さす重合方法である。 通常、重合生成物は重合させた単量体と界面活性剤との混合物として存在する。 この不純物として考えられる界面活性剤はラテックス診断薬に使用される時に妨害する事があり問題と成っていた。 今回、おもいもかけずソ−プレスのラテックスを製造するこの技術を用いて人工酵素として基質選択性を有する可能性がある超分子化合物を形成し、ドラッグデリバリー(DDS)材料として有用なラテックス重合生成物を製造出来る事をみいだした。
現在実用化されているドラッグデリバリーシステム(DDS)は大部分が水溶性・脂溶性などのバランスや分子量の制御が困難であり、かつ加熱滅菌などの安全性に問題がある。
さらにドラッグデリバリーシステム(DDS)使用して、効率良く癌細胞にとりこまれるためには、マイナス帯電の癌細胞表面にたいして陽電荷である必要や安全性の為にDDSへのオートクレーブ滅菌の可能性などの問題点がある。
タキサン (taxane)の種類としては、以下のようなものがあり、上述のリニア多糖類陽イオン性誘導体のオレフィン化合物グラフト共重合体と超分子抗癌剤複合体を作り得る。
1 タキサジエンパクリタキセルやバッカチンIIIの生合成における前駆体であり、イチイによる生合成では、ゲラニルゲラニルピロリン酸からタキサジエン合成酵素によってタキサジエンが合成される。
2 バッカチンIII
既存のタキサン系抗がん剤に共通してみられる、タキサン環にオキセタン環が付加された四環性の炭素骨格を有する。バッカチンIIIの脱アセチル化物である10-デアセチルバッカチンIIIが、ヨーロッパイチイ(Taxus baccata)から比較的多く採取できることから、パクリタキセルやドセタキセルの半合成における前駆体として利用されている。イチイによる生合成では、10-デアセチル-2-デベンゾイルバッカチンIIIから2α-ヒドロキシタキサン2-O-ベンゾイルトランスフェラーゼによって10-デアセチルバッカチンIIIが合成される。
3 パクリタキセル(タキソール)Paclitaxel
タイヘイヨウイチイ(Taxus brevifolia)の樹皮から発見されたもので、 抗がん剤として用いられる。イチイからごく微量しか採取できず抗がん剤として十分な量が供給できなかったことから合成方法が盛んに研究され、ヨーロッパイチイの針葉・小枝から採取される10-デアセチルバッカチンIIIからの半合成法が実用化され,抗がん剤として安定した供給が可能となった。
4 ドセタキセル(タキソテール)Docetaxel
パクリタキセル類縁の抗がん活性を持つ化合物のスクリーニングを通じて開発された抗がん剤。ヨーロッパイチイの針葉・小枝から採取される10-デアセチルバッカチンIIIから半合成される。
5 タクスチニンA
タクスチニンAは、炭素数6/8/6の三環性のタキサン環とは異なる、炭素数5/7/6の三環性のアベオタキサン環(アベオタキサジエン環、A-ノルタキサン環ともいう)を持つ化合物として初めて発見されたタキソイドである。タクスチニンAは、チュウゴクイチイ(Taxus chinensis)から発見された。
6 ブレビフォリオール
ブレビフォリオールはタイヘイヨウイチイから発見されたタキソイドである。発見当初ブレビフォリオー
ルはタキサン環を持つと考えられていたが、実際にはアベオタキサン環を持つことが同定された。
7 タキサスパインD
日本のイチイ(Taxus cuspidata)から発見された。既存のタキサン系抗がん剤と異なっている。 微小管への結合に重要だと考えられてきたオキセタン環もタキサン環のC-13の位置のN-アシルフェニルイソセリン基の大きな側鎖も持たないが、しかしそれらと同様に微小管脱重合阻害作用を持ち抗がん活性を有する。また、P-糖タンパク質の機能阻害作用をもち、既存のタキサン系抗がん剤に治療抵抗性をもったがん細胞に対して抗がん活性を示すことが知られており重要である。
このように、タキソール等は他の抗ガン剤とは異なり、細胞骨格を構成する微小管に結合し、細胞分裂を妨げる作用を示し、細胞分裂の盛んなガン細胞を優先的に攻撃することが示唆されており、パクリタキセルは全身投与のために、現在エタノールとポリオキシエチレン化ヒマシ油(クレモホールEL)との混合物中に製剤されており、ポリオキシエチレン化ヒマシ油は、むしろ薬剤自体よりも、薬剤に関連する過敏性反応の主な原因となっているようである。ドセタキセルおよびパクリタキセルは、通常、1
日1 回10 − 250 mg / m 2( 体表面積) を点滴静注で投与するが、本願発明の超分子抗癌剤複合体により副作用を軽減する事が期待される。
現在、陽イオンの電荷を帯びたリポソームにパクリタキセルを内包化させた製剤や(特許文献2JP,2006-517594,A)、親水性領域と疎水性領域を有するブロックコポリマーから成る高分子ミセル中に抗癌剤等 の薬物を封入した薬物封入高分子ミセルを用いた薬物送達が公知である(特許文献3〜5)。
本願発明の水可溶性リニア多糖類の陽イオン性誘導体−オレフィンを有する単量体グラフト共重合体ラテックスが抗体吸着ラテックス診断薬に使用されることを目的としている事は昭和59年特許願第248476号の特許請求の範囲の記載形式より明白であった。 即ち水酸基を有する水可溶性高分子体に水中でオレフィンを有する単量体をグラフト重合させ、イムノアッセイ診断材料として有用なラテックス重合生成物を製造する事を発明の構成に欠く事ができない事項の主要部としており、多糖類等のオレフィンを有する単量体グラフト共重合体も同一の目的を達成出来る。 このようなソ−プフリ−と言われる溶媒と溶質との界面で成長するグラフト共重合体は種々用途の広い有用な物質である。
特にイムノアッセイ材料以外にも濾過膜やバイオマテリアルとして注目されている。 又その親水性に注目して、人口腎臓膜、コンポ−ネント、代用血管、コンタクトレンズ、遺伝子キャリアーへの応用が考えられてきたが、このラテックス重合生成物が生じる疎水親水ドメインの界面活生性が細胞膜表面の親和性・透過性に特に重要であり又タキサンなどとの超分子反応を高め、思いもかけず新たにドラッグデリバリー(DDS)材料として極めて有望な事が解った。
(1)リニア多糖類の陽イオン性誘導体の調整
固体で存在する場合、リニア多糖類陽イオン性誘導体の単位の式が、
〜C3 のジアルキルアミノアルキルエステル、グリシジルエステル、テトラヒドロフルフリルエステル、ベンジルエステル、ポリエチレングリコ−ルモノエステル類;アクリロニトリル、メタアクリロニトリルのごときα、β−不飽和酸のニトリル基;ビニルアルコ−ル、メチルビニルアルコ−ル、ジメチルビニルアルコ−ル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレ−トのごときビニルアルコ−ル及びそのメチル置換ビニルアルコ−ルのC1
〜C3 アルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン;ビニルピロリドン;ビニルメチルピロリドンなどが考えられる。
(2)グラフト共重合体の調整
反応は通常水溶液中で行われる。 すなわちリニア多糖類の陽イオン性誘導体の水溶液中、上記オレフィンを有する単量体を加え、開始剤を添加して反応する。 開始剤としては4価のセリウム塩、4価のマンガン塩、第二鉄塩−過酸化水素が通常用いられるが、他に過硫酸カリウム(KPS)、アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル(BPO)等ラジカル開始剤も用いられる。反応温度は常温より80℃まで幅広く選択出来る。必要なら窒素置換して反応を続行させる事も行われる。 それぞれの結合関係は、水可溶性リニア多糖類陽イオン性誘導体のプロトンの引き抜きによるラジカル発生によるオレフィンを有する単量体二重結合の連鎖移動による共有結合である。この反応では生成物はラテックスで生じる。 このラテックス重合体は一般的には水、アルコ−ル、又はアセトン、テトラヒドロフラン等有機溶媒によりキヤステイング法などにより、容易に成膜出来る。 あるいはアルコ−ルなど不溶溶媒を過剰に加え沈殿として得た後、熱プレス法などにより容易に成型品を作る事が出来る。
上記目的の為に、グラフト重合体中、幹ポリマ−とグラフトポリマ−の比率あるいはその重合度比率は目的に合わせて種々選択出来る。 グラフト重合はその重合率をグラフト率(%)で定められる。 これはグラフト率(%)=(グラフト重合した単量体量/グラフト共重合体中の幹ポリマ−量)×100で定義される。 本発明においてはオレフィン化合物がグラフト鎖として成り、グラフト率が2%から5000%の範囲が適当と考えられる。 本願発明は水酸基を有する水可溶性リニア多糖類の陽イオン性誘導体に水中下オレフィンを有する単量体をグラフト重合させた物である事は繰り返し述べているが、生じた共重合体鎖の構造は特許請求の範囲に化学構造式として記載されている様に(化2)式と(化3)式よりなる、
それぞれの結合関係は、水可溶性リニア多糖類陽イオン性誘導体の水酸基のプロトンの引き抜きによるラジカル発生によるオレフィンを有する単量体二重結合への付加による共有結合である。
(3)陽イオン性多糖類共重合体とタキサンとの複合体
本発明の陽イオン性多糖類共重合体をドラッグデリバリー材料とするデリバリーシステムではその最初のステップは本発明の陽イオン性多糖類共重合体とタキサンよりなる超分子複合体の形成より始まる。 詳細にはリニア多糖類を母体とする多糖類の陽イオン性部分置換体にオレフィンを有する単量体をグラフト重合して得られる共重合体と、タキサンよりなる超分子複合体の形成がデリバリーシステムの重要な最初のステップである。
具体的にはその複合体は
(化6)、(化8)式は代表的なタキサンの構成を示し、
本発明の陽イオン性多糖類共重合体と(化6)、(化8)式中に示されるタキサンの疎水部分は疎水結合力により陽イオン性多糖類共重合体と容易に結合して超分子の陽イオン性多糖類共重合体−タキサン複合体を生じる事が解った。 この超分子複合体形成がタキサンデリバリーシステムの重要な最初のステップである。
その為、用いる陽イオン性高分子体のタキサンデリバリーシステムは疎水親水ドメインを有する事が必要であると思われ、具体的にはDEAE−デキストランなどの陽イオン性多糖類とビニル単量体の共重合体からなるラテックスを形成し、ビニル単量体の重合部分による疎水部分と陽イオン性多糖類による親水部分をあわせ持たす事が重要であると考えられる。 これがタキサンとの反応を高め、かつ陽イオン性はエンドサイト−シスで細胞内に容易に導入されエンドソ−ム(輸送小胞体)に取り込まれる確率を高め、ドラッグデリバリー材料の細胞や細胞核へのタキサン導入率を改善できる事も解った。
陽イオン性多糖類共重合体とタキサンとの複合体の製法はあらかじめ重合反応時にビニル単量体にタキサンを溶解させて得ることも、また生じた陽イオン性多糖類共重合体ラテックスにタキサンを直接反応させても得られる。
実施例2の方法を用いて、パクリタキセル(PTX)(a)2.3mg、(b)7.7mg、(c)14.2mgをグラフト率100%デキストラン−MMA共重合体の19.2%液10mlに抱接させDDMC/PTX 複合体(a)、(b)、(c)を得た。この物の物性をしらべる為に、熱分析および赤外分析を行った。
図1はDDMC/PTX
複合体(c)とパクリタキセル(PTX)の差動熱量計(DSC)の曲線を示す。ここには
特徴的な以下の3つの吸熱ピークと1つの発熱ピークがある。
1サンプルに吸着されている非構造水の脱離(94.9℃)
2パクリタキセル二水和物からの脱水(171.8℃)
3パクリタキセルの融点(220.8℃)ΔHm=20.6mJ/mg
4分解温度(236℃)
一方,(a)、(b)および(c)のDDMC/PTX 複合体には,いずれも220.8℃の融点に相当する吸熱ピークが現れなかった。このことから,DDMC/PTX複合体中には,PTXが非結晶で包接されているものと考えられる。
図2はDDMC(グラフト率102%)、PTXおよびDDMC/PTX複合体(b)、(c)の波数3200-3700cm-1近辺の赤外吸収スペクトルである.PTXは3500cm-1付近にDDMCおよびDDMC/PTX複合体は3400cm-1付近にそれぞれの出発物質より,よりブロードで大きなN-H,O-H,NH-Oの伸縮振動による水素結合の吸収が観察される。さらにまたN-H,O-Hの吸収はそれぞれ高エネルギー側にシフトしている。
これは自身の水素結合による会合が弱まり、それらの複合体が疎水的に超分子再集合してなる事を意味しており,PTXの結合したDDMCはそれが結合していない状態よりもエントロピーが減少していると考えられるが,このことは超分子ストレスに対して安定である事
が期待される.これらの事はそれぞれに超分子的立体構造変化が起きているためであると考えられる。
しかるにその高エネルギー側シフトの変化はDDMC/PTX複合体の方がはるかに大きく、 その疎水結合がきちんとした立体構造へ折り畳まれていく時の推進力になっており,図2はまたDDMCにおいて3000cm-1付近にC-Hの伸縮振動による吸収を示すが,そのDDMC/PTX複合体ではより分子間相互作用によるブロードな吸収となっている。以上のことより図2はDDMC/PTX複合体のおおきな疎水結合の存在を示している。
酵素の本体を本格的に研究したのは,ドイツのウィルシュテッター(R.Willstatter)で,サッカラーゼなどを精製し,酵素は高分子量の担体と低分子量の活性基からなると考えた(1920年代)。アメリカのサムナー(J.B.Sumner)はウレアーゼを結晶化し,酵素はタンパク質であることを示した。しかしながら、酵素がタンパク質という巨大分子であることによって可能となる。
この高分子量の担体と低分子量の活性基からなると考えたことこそが、Supramolecular 超分子の概念である。
MTTアッセイ(直接法)においては細胞数 と吸光度(O.D.値)との間に正の相関を認められており、MTTアッセイin-vitro試験はメラノーマ細胞のタキソールに対する薬効評価にはてきしている。
図3はPTXおよびDDMC/PTX複合体(b)に対するメラノーマ細胞B16F10の生存率の曲線で、ここでもメラノーマ細胞のタキソール(PTX)単体に対する耐性は、図3上の凸生存率の曲線で明らかに成っている。 上に凸生存率の曲線はPTX濃度に対して、低濃度ではPTX濃度に生存率正に依存する遺伝子発現の因子(事象A)と高濃度ではPTX濃度に生存率負に依存する因子(事象B)とによるものと考えられる。
ここで生存率の確率は生存率正に依存する遺伝子発現の因子確率P(A)と高濃度ではPTX濃度に生存率負に依存する因子確率P(B)の積事象の確率となる。この積事象の確率は積事象A∩Bとは、事象A、Bにおいて「事象AかつBが起こる」という事象のことであり、事象A、Bが互いに独立なとき、積事象の起こる確率P(A∩B)は下式で表される。
P(A∩B) = P(A)・P(B)
P(A∩B):事象AまたはBが起こる確率
P(A):事象Aが起きる確率
P(B):事象Bが起きる確率
ゆえにP(A)とP(B)を漸近線とする凸曲線となる。
いままでの東大のタキソールに対する耐性研究でPTX濃度に生存率正に依存する遺伝子発現の因子(事象A)をうまく説明している、すなわちメラノーマ細胞に抗がん剤タキソールを投与して、24時間にわたって時系列で遺伝子発現データを計測し、メラノーマの細胞内で時間を追って、どの遺伝子からどの遺伝子群に指令がでているかを見ようとしたものである。数理モデリングの方法はダイナミックベイジアンネットワークに非線形回帰を組み与わせた方法がある。スパコンは1024コアを使って計算している。 追って記述すると、タキソールを投与して1時間後、タキソールの標的遺伝子の1つであるTubulin
alpha-4A chainとタンパク質と相互作用することが知られているRBM23という遺伝子が大きなハブになって影響を与えはじめた。2時間後、乳癌において既にタキソールが効かないことの鍵となっている遺伝子として知られているTXNIPがハブになった。
4時間後、このTXNIPやEGR1からたくさんの遺伝子に指令が出ている様子が見えてきた。6時間後、乳がんにおいて既にタキソールの耐性遺伝子として知られているCYR61が活発になっていることがわかる。EGR1も影響を与え続ける。このように、抗がん剤という「国難」に遭遇したがん細胞において、時間とともに変化する「がんの政局」が見えてくるという。
このへんの解析は本実験の低濃度でのPTX濃度に生存率正に依存する遺伝子発現の因子であろう。しかしながら高濃度ではPTX濃度に生存率負に依存する因子、PTXのチュブリン重合阻害が発現してくるのであろう。PTX濃度に生存率負に依存する因子(事象B)が支配的になり、PTXの薬効は顕著となる。いつぽう、DDMC/PTX複合体の挙動は思いもかけず特異的である。PTX初濃度と生存率負は直線依存する。即ちDDMC/PTX複合体の薬効はPTXの低濃度から顕著となっている。
これは期せずしてDDMC/PTX複合体がメラノーマ細胞に対して耐薬剤性を生じない事を意味する貴重な新発見である。
マウスを持ちいたin
vivo試験では
検液として 1PTX
2 DDMC/PTX複合体(b) 3 生理食塩水を、がん細胞Melanoma Cells B16F10を用いて、実験動物として マウス(C57BL/6系の雌性マウス)(一群5匹)を使用して、実験7
日前より飼育、接種後7日後腫瘍の体積が100mm3 前後に達した時点から実験開始した。
接種後 (1.0 ×
106 cells/mouse)、7日後及び9日、11日に、10mg PTX /kg換算で腹腔内に注射投与して50%生存期間による相対的生存期間の中央値(MST;%T;治療群/C;対照群)で評価した。
1 PTX:146%
176h,2 DDMC/PTX複合体(b):273% 328h,3 生理食塩水:100% 120h
とDDMC/PTX複合体(b)の薬効が顕著であつた。
実施例21のDEAE(ジエチルアミノエチル)−デキストラン−MMA共重合体の塩酸塩の場合の手順で、5種類のDEAE(ジエチルアミノエチル)−デキストラン−MMA共重合体/パクリタキセルの複合体の例1、例2、例3、例4、例5を作製した。 即ち平均分子量Mw50万のデキストランを母体とした窒素含量3%のDEAE(ジエチルアミノエチル)−デキストラン塩酸塩2gを水50mlに溶解し、ついで例1、例2、例3、例4、例5にたいして、メタクリル酸メチル(MMA)2mlにパクリタキセルの25mg、50mg、75mg、100mg、125mgをメタノ−ル5mlに溶解して、それぞれ加え、十分に反応溶液、反応容器中の空気を窒素ガスで置換した後よく攪拌しながら、溶存空気を窒素ガスで置換した0.1N硝酸15mlに溶かした硝酸第二セリウムアンモニウムニトレイト100mgを加え反応を開始する。 反応は30℃で2時間行いラテックスが生成する。
反応終了は停止剤としてハイドロキノン1%溶液3mlを使用した後、水中で透折を行い未反応物及び開始剤を除去して、DEAE−デキストラン−MMA共重合体/パクリタキセルラテックスを得た。
パクリタキセルはUV分光光度計を用いて波長 227nmの吸光度を測定することにより、得られたパクリタキセル微粒子分散液に含まれるパクリタキセル量を定量した。 表1から明らかのように、パクリタキセル導入率はDEAE−デキストラン−MMA共重合体にたいして95%―98%であった。重合体と薬物の比率は100:1から100:5で仕込むときが、封入率が高いことを示す。
結果は表2に示される。Aパクリタキセル(PTX)、B PTXとDDMCの混合物とも融解ピークを224℃近辺に見られるが、複合体では融解ピークが観察されなかった。
B PTXとDDMCの混合物
(B mixture of DDMC and PTX)
C PTXとDDMCの複合体
(C complex by PTX/DDMC)
陽イオン性多糖類共重合体とタキサンとの複合体の製法はあらかじめ重合反応時にビニル単量体にタキサンを溶解させて得ることも、また生じた陽イオン性多糖類共重合体ラテックスにタキサンを直接反応させても得られる。
即ち、適善、パクリタキセル(Taxol)(PTX)を溶媒に溶解して、攪拌しながらこのDEAE−デキストラン−MMA共重合体ラテックスの2%溶液に滴下する。 超音波で良く分散させ、後、攪拌を継続し、水中で透折を行い未反応物及び溶媒を除去して、DEAE−デキストラン−MMA共重合体/パクリタキセル複合体ラテックスを得る。ここで溶媒としてはアセトン、メタノール、DMSO, ジクロロメタンなどPTX可溶な溶媒なら何でもよく、攪拌中加熱してもよく、また必要であれば濾過工程を加えてもよい。
実施例1のDEAE(ジエチルアミノエチル)−デキストラン−MMA共重合体の塩酸塩の場合の手順で、3種類のDEAE(ジエチルアミノエチル)−デキストラン−MMA共重合体例6、例7、例8を作製した。
即ち平均分子量Mw50万のデキストランを母体とした窒素含量3%のDEAE(ジエチルアミノエチル)−デキストラン塩酸塩2gを水50mlに溶解し、ついで例6、例7、例8にたいして、メタクリル酸メチル(MMA)3ml、4ml、6mlをそれぞれ加え、十分に反応溶液、反応容器中の空気を窒素ガスで置換した後よく攪拌しながら溶存空気を窒素ガスで置換した0.1N硝酸15mlに溶かした硝酸第二セリウムアンモニウムニトレイト100mgを加え反応を開始する。 反応は30℃で2時間行いラテックスが生成する。 反応終了は停止剤としてハイドロキノン1%溶液3mlを使用した後、水中で透折を行い未反応物及び開始剤を除去して、DEAE−デキストラン−MMA共重合体ラテックスを得た。
このものはドラッグデリバリー材料として極めて有用でありタキサンを直接反応させることが出来る。 実施例2の手順で、それぞれパクリタキセル(Taxol)(PTX)の3 mgを反応させて、
例6の重量増加率100%のDEAE−デキストラン−MMA共重合体/PTX複合体,例7の重量増加率150%のDEAE−デキストラン−MMA共重合体/PTX複合体、例8の重量増加率200%のDEAE−デキストラン−MMA共重合体/PTX複合体を得た。パクリタキセル導入率はそれぞれ
90%前後であった。ここでは適善、重合体と薬物の比率は100:1から200:30で仕込むときが、複合体水溶液の安定性が高いことを示す。
ここで重量増加率は加えたMMAの重量にたいする使用したDEAE−デキストランの重量との比である。
即ち,重量増加率=加えたMMAの重量/使用したDEAE−デキストラン塩酸塩の重量。
さらにタキセル類(taxane)はさまざまな腫瘍の治療に用いられているが、多剤耐性タンパク質であるP糖タンパク質(P-GP)の基質であるため必ずしもいつも効果があるとは限らない。P-GPは細胞外へ薬物をくみ出す輸送体であるといわれる。P糖タンパク質阻害薬としては、
カルシウム拮抗薬のベラパミル、 抗真菌薬のイトラコナゾール、ケトコナゾールなどがある。そこでP-GP阻害剤との組みあわせは有用である事を発見した。
P-GP阻害剤である。
(Dimethyl sulfoxide、略称DMSO) 2 mlに溶解して反応させた。超音波で良く分散させ、後、5時間攪拌を継続した後、水中で透折を行い未反応物及びアセトンまたはジメチルスルホキシドを除去して、例9の重量増加率100%のDEAE−デキストラン−MMA共重合体/PTX/ PSC833複合体,例10の重量増加率150%のDEAE−デキストラン−MMA共重合体/PTX/ PSC833複合体、例11の重量増加率200%のDEAE−デキストラン−MMA共重合体/PTX/ PSC833複合体を得た。パクリタキセル導入率はそれぞれ90%前後であった。
DSC分析結果を示すと、それぞれ融解ピーク(℃)は存在しなかつた。
nmの吸光度で測定した。細胞生存率(%)=[(As-Ab)/(Ac-Ab)]x100により求められ、ここで、
As: 検体の吸光度( 細胞、被検物質およびMTT
溶液の入ったウェル)
Ac: 陰性対照の吸光度( 細胞およびMTT
溶液の入ったウェル被検物質無し)
Ab: ブランク吸光度( 培地およびMTT
溶液の入ったウェル 細胞無し)
生存率が50% になる値IC50(50%
細胞傷害率)より細胞毒を評価すると、
例2のサンプルと同量の対照パクリタキセル(Taxol)のみの値を1とし例2のサンプルを比較したところ、3倍の抗癌効果が得られた。すなわち、ポリオキシエチレンヒマシ油2.5mL及び無水エタノールでパクリタキセル30mgを溶解して5mLにしたものを、MTTテスト方法の培地で希釈して、例2のサンプルと同量したものの比較1のIC50は3.0であった。 同様に例6のサンプルと同量の対照Taxolのみの値、比較2のIC50は4.5であり、その値を1とし例6のサンプルを比較したところ3倍の抗癌効果が得られた。
これらの事は陽イオン性多糖類共重合体が細胞との高い反応性を有する事を示している。
これらタキサンとの複合体は細胞膜を透過し、エンドサイト−シスで細胞内に容易に導入され、エンドソ−ム(輸送小胞体)に取り込まれる。 複合体はさらにエンドソ−ムから細胞室内へ放出され、複合体として核内へ集積する。 通常は核内で複合体からタキサンが分離され、細胞分裂抑制を容易にするとみられるが、これらの効果は予想外のものであった。
このため一部はタキサンが分離されず超分子として、細胞分裂抑制に関与していると見られる。
(4)陽イオン性多糖類共重合体ドラッグデリバリー材料によるMTTテスト方法
1) 80% コンフルエントの細胞を細胞浮遊液を調製する。
2) マルチピペットを用いて100
μl ずつ、96 穴マイクロプレートの各ウェルに細胞浮遊液を分注する。ブランク( バツクグランド値) 用のウェルには培地のみを100 μl 加える。
3) 炭酸ガスインキュベーター内で48-72
時間培養したのち、培地を吸引により除く。浮遊細胞の場合には、吸引する前に遠心操作により、細胞を沈澱させておく。新たに培地100 μl を各ウェルに加える( 培地交換)。ブランク用のウェルには培地のみ100
μl 加える。
4) 培地で種々濃度に調製した被験物質液を10μlずつ添加する。 同様にブランクおよび陰性対照のウェルには、培地を10
μlずつ加える。
5) 37℃の炭酸ガスインキュベーター内で24
〜72 時間、培養する。
6) プレートを取り出し、MTT
溶液を各ウェルに10 μlずつ添加する。
7) 炭酸ガスインキュベーター内に戻し、2
〜 4 時間、呈色反応を行う。
8) 各ウェルに200 μl のPBS(-)
を加え、1 分間ほどおいたのち、液を吸引する。
9) 0.04 mol/l HCl/イソプロピルアルコールを200
μlずつ加える。
10) プレートをマイクロプレートミキサーにのせ、10
分間振動させホルマザンを溶解させる。
11)マイクロプレートリーダーで570
nmの吸光度を測定する。
12) IC50細胞傷害率の算定法
下記の式により細胞生存率を算出する。これを種々の被検物質濃度に対して、生存率が50% になる値をIC50
(50% 細胞傷害率) とする。
細胞生存率(%)=[(As-Ab)/(Ac-Ab)]x100
As: 検体の吸光度( 細胞、被検物質およびMTT 溶液の入ったウェル)
Ac: 陰性対照の吸光度( 細胞およびMTT 溶液の入ったウェル被検物質無し)
Ab: ブランク吸光度( 培地およびMTT 溶液の入ったウェル 細胞無し)
(5)陽イオン性多糖類共重合体とタキサンとの複合体の用途
本発明のリニア多糖類の陽イオン性誘導体−オレフィンを有する単量体グラフト共重合体とタキサンとの複合体溶液は金属体に対するカチオン電着塗装に最適である事を発見した。
カチオン電着塗装とは、 低濃度で水溶性の陽イオン性電着塗料(陽極とする)中に、被塗物(エバポレータ等)を浸漬させ陰極とし、直流電流をかける電着塗装法である。 電極付近では陽イオン性塗料が化学反応を起こし不溶性の樹脂(ポリマー)となり、複雑な形状質も(部品の不溶接部の隙間までも)ピンホールなく均一で密着性の良い厚い塗膜を形成するものである。
カチオン電着の特徴は以下である。
1.被塗物の構造に関係なく塗膜を一定の厚さに保つことが出来る。
2.塗り漏れを防止することが出来る。
3.塗料損失が少ない。
4.VOCをほとんど使用しないため、いわば環境適応型塗装法である。
5.耐蝕性に優れている。
この複合体溶液の金属体に対するカチオン電着塗装用途しては、生体埋め込み用の各種の医療用具が考えられる。特にパクリタキセル溶出型ステントへの応用は重要である。
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は1970年代から実施されてきており、PCIは侵襲の少ない冠動脈血行再建術として世界中に普及している。日本国内でも1980年代前半から各地で実施されてきているが、当初のPCIは経皮的バルーン血管形成術と呼ばれ、血管内で小さな風船を膨らませることにより閉塞した血流の再建を図るものであったが、しかし再閉塞等の大きな問題をかかえた為に1990年代に入り、ベアメタルステント(BMS)が開発され治療成績は大幅に向上したが、留置したステント内の再狭窄といった問題が依然として残っており、そうした問題解決のために、ベアメタルステントに、ステント留置後の再狭窄の原因となる新生内膜を抑制する効果がある薬剤を塗布した薬剤溶出型ステントが開発された。
薬剤溶出型ステントの登場により再狭窄は著しく減少し、PCI治療の標準的な治療として薬剤溶出型ステントが留置されるようになった。特にパクリタキセル溶出型ステントは注目されている。その性能は、薬剤、薬剤放出を制御するポリマー、およびステントのデザインの組み合わせによるが、
薬剤とその放出を制御するポリマーの安定した皮膜形成が重要である。例6の重量増加率100%のDEAE−デキストラン−MMA共重合体/PTX複合体(アミン価が58mmol/100gであるアミノ基含有化合物を含む)の塗料固形分濃度が2.3重量%をもちいて、金属のみでできた従来ステント(BMS、316L、内径1mm,肉厚約0.2mm,長さ15mm)を浸漬させ陰極とし、直流電流(100V〜300V)を流し帯電したBMS被塗物に塗膜を析出させること
により、優れたパクリタキセル複合体塗膜を得た。
同様の試験を医療用ステンレスである316Lステンレスの厚さ(mm)0.05の100X100(mm)の試験片を使用して塗装時間3分,塗膜焼付160 ℃×10分以上行ったところ、思いもかけず以下の結果を得た。
光沢 50〜70(60度鏡面反射)
塗膜厚 15〜25μm
鉛筆硬度 H〜2H
塗装効率 25mg/クローン 以上
密着性 100/100合格 1mm碁盤目
平均分子量Mw50万のデキストランを母体とした窒素含量5%のDEAE(ジエチルアミノエチル)−デキストラン塩酸塩1gを水30mlに溶解し、ついでメタクリル酸メチル(MMA)2mlを加え、十分に反応溶液、反応容器中の空気を窒素ガスで置換した後よく攪拌しながら、溶存空気を窒素ガスで置換した0.1N硝酸7.5mlに溶かした硝酸第二セリウムアンモニウムニトレイト100mgを加え反応を開始する。 反応は30℃で2時間行いラテックスが生成する。 反応終了は停止剤としてハイドロキノン1%溶液3mlを使用した。後、反応溶液を3倍量のメタノ−ル中に注入し、遠心分離後、沈殿を得た。 この沈殿を熱水で十分に洗浄し遠心分離後50℃で減圧乾燥し、ついで乾燥物をソックスレ−抽出器に入れて24時間アセトン抽出を行い、DEAE(ジエチルアミノエチル)−デキストラン−MMA共重合体の塩酸塩2gを得た。
窒素含量2% グラフト率150%
対DEAE−デキストラン収率80%
このものは、DEAE−デキストラン塩酸塩の良溶媒である水にもポリメタクリル酸メチルの良溶媒であるアセトンにも溶けない。 この物の赤外吸収スペクトルをみると、 DEAE−デキストラン塩酸塩には見られないカルボニル基の吸収が波数1730cm−1付近にみられる。
実施例2
実施例1と同様な反応を行った後、ラテックスの反応終了溶液をメタノ−ル中に注入せず、水中で透折を行い未反応物及び開始剤を除去して、DEAE−デキストラン−MMA共重合体(DDMC)ラテックスを得た。
パクリタキセル(Taxol)(PTX)の3 mgをアセトン 2 mlに溶解して、攪拌しながらこのDEAE−デキストラン−MMA共重合体ラテックスの2%溶液10mlに滴下する。 超音波で良く分散させ、後、5時間攪拌を継続した後、水中で透折を行い未反応物及びアセトンを除去して、DEAE−デキストラン−MMA共重合体/パクリタキセル複合体ラテックスを得た。
パクリタキセル(PTX)、 PTXとDDMCの混合物とも融解ピークを224℃近辺に見られるが、複合体では融解ピークが観察されなかった。パクリタキセル導入率はUV波長 227nmの吸光度より90%であった。
実施例3
実施例2のDEAE−デキストラン−MMA共重合体/パクリタキセル複合体ラテックス、
このものはドラッグデリバリー(DDS)材料として有用である。
テスト方法は(発明を実施するための最良の形態)の欄の(4)―MTT assay法の手順に従って行った。 ヒト乳がん細胞 MDA-MB-231を37℃で72時間インキュベイトした後、IC50 (μg/ml)を調べた。
即ちDDSの抗癌効果をみる細胞毒性、IC50 (μg/ml)によった。実施例2のサンプルと同量の対照パクリタキセル(Taxol)のみの値を1として実施例2のサンプルを比較したところ、3倍の抗癌効果が得られた(IC50値は1/3)。
実施例4
実施例2で得られたDEAE(ジエチルアミノエチル)−デキストラン−MMA共重合体/パクリタキセル複合体ラテックスを凍結乾燥し、対照パクリタキセル(Taxol)とDSC分析をおこなうと、対照パクリタキセル(Taxol)では融解ピークが224(℃)付近で観察されるが、実施例2の複合体ラテックスでは融解ピークが観察されなかった。
実施例5
平均分子量Mw20万のプルランを母体とした窒素含量4%のDEAE(ジエチルアミノエチル)−プルラン塩酸塩4gを水80mlに溶解し、ついでメタノ−ル10ml、スチレン単量体35mlを加え、十分に反応溶液、反応容器中の空気を窒素ガスで置換した後よく攪拌しながら、溶存空気を窒素ガスで置換した0.1N硝酸30mlに溶かした硝酸第二セリウムアンモニウムニトレイト200mgを加え反応を開始する。反応は室温で1時間行いラテックスが生成する。 反応終了は停止剤としてハイドロキノン1%溶液3mlを使用した。
後の精製及び乾燥工程は実施例1と同様に行い、DEAE(ジエチルアミノエチル)−プルラン−スチレン共重合体の塩酸塩7gを得た。
窒素含量0.92% グラフト率350%
対DEAE−プルラン収率38%
実施例6
実施例5と同様な反応を行った後、ラテックスの反応終了溶液をメタノ−ル中に注入せず、水中で透折を行い未反応物及び開始剤を除去して、DEAE−プルラン−スチレン共重合体ラテックスを得た。 パクリタキセル(Taxol)の3 mgをアセトン 2 mlに溶解して、攪拌しながらこのDEAE−プルラン−スチレン共重合体ラテックスの2%溶液10mlに滴下する。後、5時間攪拌を継続した後、水中で透折を行い未反応物及びアセトンを除去して、DEAE−プルラン−スチレン共重合体/パクリタキセル複合体ラテックスを得た。
パクリタキセル導入率はUV波長 227nmの吸光度より91%であった。
実施例7
実施例6のDEAE−プルラン−スチレン共重合体/パクリタキセル複合体ラテックス、
このものはDDSとして有用であった。
実施例3と同様な手順に従い、このもののDDSのIC50 (μg/ml)の細胞毒性による抗癌効果をみると、対照パクリタキセル(Taxol)のみの値を1として、2.5倍の抗癌効果が得られた(IC50値は2/5)。
実施例8
実施例6で得られたDEAE−プルラン−スチレン共重合体/パクリタキセル複合体ラテックスを凍結乾燥し、対照パクリタキセル(Taxol)とDSC分析をおこなうと、対照パクリタキセル(Taxol)では融解ピークが224(℃)付近で観察されるが、実施例6の複合体ラテックスでは融解ピークが観察されなかった。
実施例9
平均分子量Mw4万のデキストランを母体とした窒素含量5%のAE(アミノエチル)−デキストラン塩酸塩4gを水90mlに溶解し、ついでメタノ−ル5ml、メタクリル酸ブチル20mlを加え、十分に反応溶液、反応容器中の空気を窒素ガスで置換した後よく攪拌しながら、溶存空気を窒素ガスで置換した0.1N硝酸15mlに溶かした硝酸第二セリウムアンモニウムニトレイト50mgを加え反応を開始する。 反応は室温で30分間行いラテックスが生成する。 反応終了は停止剤としてハイドロキノン1%溶液3mlを使用した。 後の精製及び乾燥工程は実施例1と同様に行い、AE(アミノエチル)−デキストラン−メタクリル酸ブチル共重合体の塩酸塩6gを得た。
窒素含量1.3% グラフト率300% 対AE−デキストラン収率38%
このものは、AE−デキストラン塩酸塩の良溶媒である水にもポリメタクリル酸ブチルの良溶媒であるアセトンにも溶けない。
実施例10
実施例9と同様な反応を行った後、ラテックスの反応終了溶液をメタノ−ル中に注入せず、水中で透折を行い未反応物及び開始剤を除去して、AE(アミノエチル)−デキストラン−メタクリル酸ブチル共重合体ラテックスを得た。 パクリタキセル(Taxol)の3 mgをアセトン 2 mlに溶解して、攪拌しながらこのAE(アミノエチル)−デキストラン−メタクリル酸ブチル共重合体ラテックスの2%溶液10mlに滴下する。後、5時間攪拌を継続した後、水中で透折を行い未反応物及びアセトンを除去して、AE(アミノエチル)−デキストラン−メタクリル酸ブチル/パクリタキセル複合体ラテックスを得た。
パクリタキセル導入率はUV波長 227nmの吸光度より90%であった。
実施例11
実施例10のAE(アミノエチル)−デキストラン−メタクリル酸ブチル共重合体/パクリタキセル複合体ラテックス、このものはDDSとして有用であった。
実施例3と同様な手順に従い、このもののDDSのIC50 (μg/ml)の細胞毒性による抗癌効果をみると、対照パクリタキセル(Taxol)のみの値を1として、2.0倍の抗癌効果が得られた(IC50値は1/2)。
実施例12
実施例10で得られたAE(アミノエチル)−デキストラン−メタクリル酸ブチル共重合体/パクリタキセル複合体ラテックスを凍結乾燥し、対照パクリタキセル(Taxol)とDSC分析をおこなうと、対照パクリタキセル(Taxol)では融解ピークが224(℃)付近で観察されるが、実施例10の複合体ラテックスでは融解ピークが観察されなかった。
実施例13
平均分子量Mw3万のプルランを母体とした窒素含量3%のHPTMA(2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム)−プルラン塩酸塩4gを水100mlに溶解し、ついでアクリル酸メチル単量体30mlを加え、十分に反応溶液、反応容器中の空気を窒素ガスで置換した後よく攪拌しながら、溶存空気を窒素ガスで置換した0.1N硝酸20mlに溶かした硝酸第二セリウムアンモニウムニトレイト200mgを加え反応を開始する。 反応は室温で1時間行いラテックスが生成する。 反応終了は停止剤としてハイドロキノン1%溶液4mlを使用した。
後の精製及び乾燥工程は実施例1と同様に行い、HPTMA(2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム)−プルラン−アクリル酸メチル共重合体の塩酸塩2gを得た。
窒素含量1.2% グラフト率150%
対HPTMA−プルラン収率20%
実施例14
実施例13と同様な反応を行った後、水中で透折を行い未反応物及び開始剤を除去して、
HPTMA(2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム)−プルラン−アクリル酸メチル共重合体ラテックスを得た。 パクリタキセル(Taxol)の3 mgをアセトン 2 mlに溶解して、攪拌しながらこのHPTMA(2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム)−プルラン−アクリル酸メチル共重合体ラテックスの2%溶液10mlに滴下する。後、5時間攪拌を継続した後、水中で透折を行い未反応物及びアセトンを除去して、HPTMA(2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム)−プルラン−アクリル酸メチル/パクリタキセル複合体ラテックスを得た。
パクリタキセル導入率はUV波長 227nmの吸光度より92%であった。
実施例15
実施例14のHPTMA(2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム)−プルラン−アクリル酸メチル共重合体/パクリタキセル複合体ラテックス、このものはDDSとして有用であった。
実施例3と同様な手順に従い、このもののDDSのIC50 (μg/ml)の細胞毒性による抗癌効果をみると、対照パクリタキセル(Taxol)のみの値を1として、2.1倍の抗癌効果が得られた(IC50値は10/21)。
実施例16
実施例14で得られたHPTMA(2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム)−プルラン−アクリル酸メチル共重合体/パクリタキセル複合体ラテックスを凍結乾燥し、対照パクリタキセル(Taxol)とDSC分析をおこなうと、対照パクリタキセル(Taxol)では融解ピークが224(℃)付近で観察されるが、実施例14の複合体ラテックスでは融解ピークが観察されなかった。
実施例17
平均分子量Mw30万のデキストランを母体とした窒素含量2%のTEAE(トリエチルアミノエチル)−デキストラン塩酸塩2gを水50mlに溶解し、アクリル酸メチル(MA)15mlを加え、十分に反応溶液、反応容器中の空気を窒素ガスで置換した後よく攪拌しながら、溶存空気を窒素ガスで置換した0.1N硝酸15mlに溶かした硝酸第二セリウムアンモニウムニトレイト250mgを加え反応を開始する。 反応は30℃で2時間行いラテックスが生成する。 反応終了は停止剤としてハイドロキノン1%溶液3mlを使用した。後、反応溶液を3倍量のメタノ−ル中に注入し沈殿を得た。 この沈殿を熱水で十分に洗浄し遠心分離後50℃で減圧乾燥し、ついで乾燥物をソックスレ−抽出器に入れて24時間アセトン抽出を行い、TEAE(トリエチルアミノエチル)−デキストラン−MA共重合体の塩酸塩2gを得た。
窒素含量0.7% グラフト率185%
対TEAE−デキストラン収率35%
このものは、TEAE−デキストラン塩酸塩の良溶媒である水にもアクリル酸メチルの良溶媒であるアセトンにも溶けない。
実施例18
実施例17と同様な反応を行った後、水中で透折を行い未反応物及び開始剤を除去して、
TEAE(トリエチルアミノエチル)−デキストラン−MA共重合体ラテックスを得た。 パクリタキセル(Taxol)の3 mgをアセトン 2 mlに溶解して、攪拌しながらこのTEAE(トリエチルアミノエチル)−デキストラン−MA共重合体ラテックスの2%溶液10mlに滴下する。後、5時間攪拌を継続した後、水中で透折を行い未反応物及びアセトンを除去して、TEAE(トリエチルアミノエチル)−デキストラン−MA/パクリタキセル複合体ラテックスを得た。
パクリタキセル導入率はUV波長 227nmの吸光度より90%であった。
実施例19
実施例18のTEAE(トリエチルアミノエチル)−デキストラン−MA共重合体/パクリタキセル複合体ラテックス、このものはDDSとして有用であった。
実施例3と同様な手順に従い、このもののDDSのIC50 (μg/ml)の細胞毒性による抗癌効果をみると、対照パクリタキセル(Taxol)のみの値を1として、3倍の抗癌効果が得られた(IC50値は1/3)。
実施例20
実施例18で得られたTEAE(トリエチルアミノエチル)−デキストラン−MA共重合体/パクリタキセル複合体ラテックスを凍結乾燥し、対照パクリタキセル(Taxol)とDSC分析をおこなうと、対照パクリタキセル(Taxol)では融解ピークが224(℃)付近で観察されるが、実施例10の複合体ラテックスでは融解ピークが観察されなかった。
実施例21
平均分子量Mw50万のデキストランを母体とした窒素含量5%のDEAE(ジエチルアミノエチル)−デキストラン塩酸塩1gを水30mlに溶解し、ついでメタクリル酸メチル(MMA)2mlとパクリタキセル(PTX )の50mgをメタノ−ル5mlに溶解したものを加え、十分に反応溶液、反応容器中の空気を窒素ガスで置換した後よく攪拌しながら、溶存空気を窒素ガスで置換した0.1N硝酸2.5mlに溶かした硝酸第二セリウムアンモニウムニトレイト100mgを加え反応を開始する。 反応は30℃で2時間行いラテックスが生成する。 反応終了は停止剤としてハイドロキノン1%溶液3mlを使用した。ラテックスの反応終了溶液を水中で透折を行い未反応物及び開始剤を除去して、後、反応溶液を3倍量のメタノ−ル中に注入し、遠心分離後、沈殿を得た。 この沈殿を熱水で十分に洗浄し遠心分離後50℃で減圧乾燥し、DEAE−デキストラン−MMA共重合体PTX
複合体を得た。
DEAE(ジエチルアミノエチル)−デキストラン−MMA共重合体PTX 複合体の塩酸塩として1.5gを得た。
窒素含量1.7% グラフト率200%
対DEAE−デキストラン収率50%、パクリタキセル2%(PTX/polymers、wt/wt)
このものは、DEAE−デキストラン塩酸塩の良溶媒である水にもポリメタクリル酸メチルの良溶媒であるアセトンにも溶けない。 この物の赤外吸収スペクトルをみると、 DEAE−デキストラン塩酸塩には見られないカルボニル基の吸収が波数1730cm−1付近にみられる。
実施例22
実施例21と同様な反応を行った後、ラテックスの反応終了溶液をメタノ−ル中に注入せず、さらに水中で透折を行い未反応物及び開始剤を除去して、DEAE−デキストラン−MMA共重合体/パクリタキセル複合体ラテックスを得た。
パクリタキセル導入率はUV波長 227nmの吸光度より90%であった。
実施例23
実施例22のDEAE−デキストラン−MMA共重合体/パクリタキセル複合体ラテックス、
このものはドラッグデリバリー(DDS)材料として有用である。
テスト方法は(発明を実施するための最良の形態)の欄の(4)―MTT assay法の手順に従って行った。 ヒト乳がん細胞 MDA-MB-231を37℃で72時間インキュベイトした後、IC50 (nmol/l)を調べた。
即ちDDSの抗癌効果をみる細胞毒性、IC50 (μg/ml)によった。対照パクリタキセル(Taxol)のみの値を1として実施例22のサンプルを比較したところ、3.5倍の抗癌効果が得られた(IC50値は2/7)。
実施例24
実施例22で得られたDEAE(ジエチルアミノエチル)−デキストラン−MMA共重合体/パクリタキセル複合体ラテックスを凍結乾燥し、対照TaxolとDSC分析をおこなうと、対照パクリタキセル(Taxol)では融解ピークが224(℃)付近で観察されるが、実施例22の複合体ラテックスでは融解ピークが観察されなかった。
実施例25
実施例21でパクリタキセルの代わりにドセタキセル(DOC/TXT)を用いて、DEAE−デキストラ
ン−MMA共重合体DOC/TXT
複合体を得た。
DEAE(ジエチルアミノエチル)−デキストラン−MMA共重合体DOC/TXT 複合体の塩酸塩として1.4gを得た。
窒素含量1.61% グラフト率210%
対DEAE−デキストラン収率45%、ドセタキセル2%(ドセタキセル/polymers、wt/wt)。
このものは、DEAE−デキストラン塩酸塩の良溶媒である水にもポリメタクリル酸メチルの良溶媒であるアセトンにも溶けない。 この物の赤外吸収スペクトルをみると、 DEAE−デキストラン塩酸塩には見られないカルボニル基の吸収が波数1730cm−1付近にみられる。
実施例26
実施例22でパクリタキセルの代わりにドセタキセル(DOC/TXT)を用いて、ラテックスの反応終了溶液をメタノ−ル中に注入せず、さらに水中で透折を行い未反応物及び開始剤を除去して、DEAE−デキストラン−MMA共重合体/ドセタキセル複合体ラテックスを得た。
ドセタキセル導入率はUV波長 228nmの吸光度より90%であった。
実施例27
実施例26のDEAE−デキストラン−MMA共重合体/ドセタキセル複合体ラテックス、
このものはドラッグデリバリー(DDS)材料として有用である。
テスト方法は(発明を実施するための最良の形態)の欄の(4)―MTT assay法の手順に従って行った。 ヒト乳がん細胞 MDA-MB-231を37℃で72時間インキュベイトした後、IC50 (nmol/l)を調べた。
即ちDDSの抗癌効果をみる細胞毒性、IC50(μg/ml)によった。対照ドセタキセル(DOC/TXT)のみの値を1として実施例26のサンプルを比較したところ、3.4倍の抗癌効果が得られた(IC50値は5/17)。
実施例28
実施例26で得られたDEAE(ジエチルアミノエチル)−デキストラン−MMA共重合体/ドセタキセル複合体ラテックスを凍結乾燥し、対照ドセタキセル(DOC/TXT)とDSC分析をおこなうと、対照ドセタキセル(DOC/TXT)では融解ピークが230(℃)付近で観察されるが、実施例26の複合体ラテックスでは融解ピークが観察されなかった。
実施例29
実施例2の手順で、パクリタキセル(Taxol)(PTX)の3 mgを反応させて、
重量増加率150%のDEAE−デキストラン−MMA共重合体/PTX複合体を得た。さらにP−糖蛋白質(MDR1)阻害剤のバルスポダール( PSC833)1.5mgをジメチルスルホキシド (Dimethyl sulfoxide、略称DMSO) 2 mlに溶解して反応させた。超音波で良く分散させ、後5時間攪拌を継続した後、水中で透折を行い未反応物及びジメチルスルホキシドを除去して、
DEAE−デキストラン−MMA共重合体/PTX/ PSC833複合体を得た。パクリタキセル導入率は90%であった。
ここで重量増加率は加えたMMAの重量にたいする使用したDEAE−デキストランの重量との比(%)である。 即ち,重量増加率=(加えたMMAの重量/使用したDEAE−デキストラン塩酸塩の重量) X 100。このものはドラッグデリバリー(DDS)材料として有用である。
テスト方法は(発明を実施するための最良の形態)の欄の(4)―MTT assay法の手順に従って行った。 ヒト乳がん細胞 MDA-MB-231を37℃で72時間インキュベイトした後、IC50 (μg/ml)を調べた。
即ちDDSの抗癌効果をみる細胞毒性、IC50 (μg/ml)によった。実施例29のサンプルと同量の対照パクリタキセル(Taxol)のみの値を1として実施例2のサンプルを比較したところ、3倍の抗癌効果が得られた(IC50値は1/3)。
実施例30
実施例2のDEAE−デキストラン−MMA共重合体/パクリタキセル複合体ラテックス溶液を使用して、ナイチノール(ニッケル・チタン合金)形状記憶合金の管(外径1.589mm 厚み0.14mm
長さ15mm)を用いて、直流電流(200V)を流し帯電した管被塗物に塗膜を析出させ,塗装時間3分,塗膜焼付160 ℃×1分すること により、以下の優れたパクリタキセル複合体塗膜を得た。
光沢 50(60度鏡面反射)
塗膜厚 20μm
鉛筆硬度 H
本発明の陽イオン性多糖類共重合体のようなドラッグデリバリー材料を用いるとオートクレーブ処理などが容易である事から安定して使用される事になる。 本発明の陽イオン性多糖類共重合体はタキサンの疎水部分と疎水結合力により容易に結合して超分子の陽イオン性多糖類共重合体−タキサン複合体を生じる。 この超分子複合体形成がタキサンデリバリーシステムの重要な最初のステップであり、疎水親水ドメインを有している事からこれがタキサンとの超分子反応を高め、かつ陽イオン性なので、エンドサイト−シスで細胞内に容易に導入され、エンドソ−ム(輸送小胞体)に取り込まれる確率を高める。 なによりも本発明の陽イオン性多糖類共重合体は化学的に安定である。 たとえばその溶液は120℃、15分のオートクレーブ処理に十分に耐える。 ドラッグデリバリー材料を産業化のレベルまで高めるには再現性が優れている事やコストの安い事, 特に化学的に安定している事は重要である。この複合体溶液は安定したカチオン性であるため、金属体に対するカチオン電着塗装用途に適しており、生じた金属のコーテイング物の応用には生体埋め込み用の各種の医療用具が考えられる。特にパクリタキセル溶出型ステントへの応用は産業上重要である。
これらの重要な特性を本発明の陽イオン性多糖類共重合体は具備しており産業上非常に有望である。
Claims (6)
- 一般式
- 一般式
- 一般式
- 一般式
- 一般式
- (請求項1)の水可溶性リニア多糖類の陽イオン性誘導体を幹ポリマ−とし、オレフィンを有する化合物がグラフト鎖として成る、グラフト率が2%から5000%の範囲の(化2)とこの(化3)よりなる、上記(化1)で表わされる、リニア多糖類を母体とする多糖類の陽イオン性部分置換体にオレフィンを有する単量体をグラフト重合して得られる共重合体と、 タキサン系抗癌剤よりなる(請求項1)、(請求項3)または(請求項5)の複合体をコーテイング塗布してなる金属のコーテイング物。
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