本発明の実施の形態では、鉱山ダンプの衝突を防止する閉塞制御を行う際、鉱山ダンプが停止する位置に関して走行経路の高低差を考慮し、路面抵抗、空気抵抗などによる鉱山ダンプの抗力エネルギーよりも、走行経路の高低差による位置エネルギー(勾配エネルギー)が大きい場所に鉱山ダンプを停止させることで燃料消費を抑える鉱山ダンプの運行管理を行っている。
閉塞制御とは、各鉱山ダンプの走行経路上に設定した複数の区間における或る区間(例えば交差点)内に2台以上の運搬車両が存在することが予測されている間は、当該区間の走行を1台の運搬車両のみに許可し、他の運搬車両については走行を禁止することで複数の運搬車両の衝突を防止する制御である。閉塞制御中の当該区間は閉塞区間と称され、他の運搬車両にとって走行経路上で走行不可能な閉塞された区間となり、閉塞区間に近づいた他の運搬車両は走行経路上にける当該閉塞区間の手前に設定される所定の停止位置で停止される。
本実施の形態は、閉塞制御時の鉱山ダンプの停止位置を位置エネルギーに基づいて決定する点に特徴を有する。具体的には、停止位置と閉塞区間における鉱山ダンプの位置エネルギーの差が、走行経路上を当該停止位置から閉塞区間に至るまでに当該鉱山ダンプが受ける抗力エネルギー(本稿では「抗力エネルギー」という語句を「鉱山ダンプの推力を減衰させる各種エネルギーの総称」として用いる。具体的には、路面抵抗、空気抵抗、加速抵抗等が含まれる。ただし、本発明の実施に際して実際に鉱山ダンプに作用する具体的なエネルギーを全て考慮して抗力エネルギーを見積もる必要は無い)を上回るところに停止位置を設定する。これにより直前まで閉塞区間だった区間に達する際の鉱山ダンプの推進力として停止位置での位置エネルギーを利用することが可能となるので、閉塞制御の解除後に鉱山ダンプが当該停止位置から走行を再開し直前まで閉塞区間だった区間に達するまでに消費される燃料を抑制できる。
なお、停止位置と閉塞区間の位置エネルギーは、搬送路の地図情報として予め取得済みの各地点の高度情報(高さ情報)から算出可能である。閉塞区間の位置エネルギーを算出する際の基準点(位置エネルギーの算出点)は当該閉塞区間に含まれる点であれば良く、例えば、閉塞区間の始点または閉塞区間直前の区間の終点の高度情報から算出可能である。また、抗力エネルギーは、例えば鉱山ダンプが一定の路面抵抗を受け走行距離に比例した抗力エネルギーを受けると仮定すれば、停止位置から閉塞区間(位置エネルギーの算出点)までの距離から推定可能である。当該演算に利用する両地点の距離は地図情報から算出可能である。抗力エネルギーの算出に際して当該距離に各地点の路面抵抗、空気抵抗および積載重量(車両総重量でも良い)等の情報を加味すれば抗力エネルギーの算出精度は向上する。
図1は本発明の実施の形態における走行経路の高低差による位置エネルギー(以下では「勾配エネルギー」と称することもある)を考慮することで燃料消費を抑制する鉱山ダンプの閉塞制御に関する説明図であり、鉱山ダンプが走行経路を高い位置から低い位置に降坂する際の様子を示している。図1では、鉱山ダンプは走行経路の高度の高い部分150から、走行経路の坂部分160を降坂し、走行経路の高度の低い部分170に進む。鉱山ダンプ100は走行経路の高い部分150にいる場合を示し、鉱山ダンプ110は走行経路の坂部分160にいる場合を示し、鉱山ダンプ120は走行経路の高度の低い部分170にいる場合を示す。
走行経路の高い部分150にいる場合の鉱山ダンプ100は、走行経路の高い部分150と走行経路の高度の低い部分170の高度差分の位置エネルギー(勾配エネルギー)を持っており、ここでは運動エネルギー(「推進力エネルギー」と称することもある)は0とする。次に走行経路の坂部分160を降坂している場合の鉱山ダンプ110では、鉱山ダンプ110の降坂による位置エネルギー(勾配エネルギー)の変化分が運動エネルギー(推進力エネルギー)に変換される。そして走行経路の高度の低い部分170にいる場合の鉱山ダンプ120では全ての位置エネルギー(勾配エネルギー)が運動エネルギー(推進力エネルギー)に変換される。
この運動エネルギー(推進力エネルギー)は、路面抵抗、空気抵抗などの鉱山ダンプの推力を減衰させる抗力エネルギーと、鉱山ダンプを前進させるための速度エネルギーとして使用される。したがって、運動エネルギー(推進力エネルギー)が抗力エネルギーより大きい場合には、鉱山ダンプを前進させるための速度エネルギーが正になるため鉱山ダンプは位置エネルギー(勾配エネルギー)で加速することができる。一方、運動エネルギー(推進力エネルギー)が抗力エネルギーより小さい場合には、鉱山ダンプを前進させるための速度エネルギーが非正になるため鉱山ダンプは位置エネルギー(勾配エネルギー)のみにより加速することはできない。
本実施の形態では、降坂する際に位置エネルギー(勾配エネルギー)から変換される運動エネルギー(推進力エネルギー)が抗力エネルギーより大きい場合に得られる加速力(速度エネルギー)を使うことで鉱山ダンプの燃料消費を抑制する。
次に図3から図6までを用いて、走行経路の高低差による位置エネルギー(勾配エネルギー)を考慮することで、閉塞制御の解除後の燃料消費を抑制可能な鉱山ダンプの停止位置の例について説明する。
図3および図4は、閉塞制御の対象車(鉱山ダンプ)300,400の前方の交差点310を閉塞区間とする閉塞制御が行われている例である。図3および図4の例では交差点310の手前に降坂部分を持つ走行経路320があり、当該走行経路320を鉱山ダンプ300,400が走行するようになっている。
図3では、閉塞区間310との高低差を考慮せず対象車300がその前方に存在する交差点(閉塞区間)310の直前に停止している。図4では、閉塞区間310との高低差を考慮し対象車400がその前方に存在する交差点(閉塞区間)310より高度が高い位置に停止している。
図3の場合には、対象車300に影響を与える抗力エネルギーが位置エネルギー(勾配エネルギー)より大きい場所に停止しているので、位置エネルギー(勾配エネルギー)を利用した加速を行うことができない。
一方、図4の場合には、対象車400に影響を与える抗力エネルギーよりも位置エネルギー(勾配エネルギー)が大きい場所に停止しているので、位置エネルギー(勾配エネルギー)を利用した加速を行うことができ、対象車400の燃料消費量を削減できる。
図5および図6は、閉塞制御の対象車(鉱山ダンプ)500,600の前方の鉱山ダンプ510が走行する区間530を閉塞区間とする閉塞制御が行われている例である。図5および図6の例では前方車両510の手前に降坂部分を持つ走行経路520があり、当該走行経路520を鉱山ダンプ500,510,600が走行する。
図5では、閉塞区間530との高低差を考慮せず対象車500が、他の鉱山ダンプ510の存在する前方の区間(閉塞区間)530の直前に停止している。図6は、閉塞区間530との高低差を考慮し対象車600が他の鉱山ダンプ510の存在する前方の区間(閉塞区間)530より高度が高い位置に停止している。
図5の場合には、対象車500に影響を与える抗力エネルギーが位置エネルギー(勾配エネルギー)より大きい場所に停止しているので、位置エネルギー(勾配エネルギー)を利用した加速を行うことができない。
一方、図6の場合には、対象車600に影響を与える抗力エネルギーよりも位置エネルギー(勾配エネルギー)が大きい場所に停止しているので、位置エネルギー(勾配エネルギー)を利用した加速を行うことができ、対象車600の燃料消費量を削減できる。
次に図7から図8までを用いて、閉塞制御の解除後の燃料消費を抑制可能な鉱山ダンプの停止位置を求める際に、まず走行経路の高低差による位置エネルギー(勾配エネルギー)を考慮して停車位置を仮決定し、当該仮決定した停止位置における走行経路の勾配の度合を判定し、その判定結果に応じて最終的な停止位置を決定する場合の例について説明する。
図7および図8は、閉塞制御の対象車(鉱山ダンプ)700,800の前方の鉱山ダンプ710が走行する区間730を閉塞区間とする閉塞制御が行われている例である。図7および図8の例では前方車両710の手前に降坂部分と平坦部分を組み合わせた走行経路720があり、当該走行経路720を鉱山ダンプ700,710,800が走行する。
図7では、他の鉱山ダンプ710の存在する前方の区間(閉塞区間)730より高度が高い位置を対象車700の停止位置としているが、当該停止位置での勾配により発生する推進力と抗力(抗力とは推進力を減衰する力の総称であり、例えば路面摩擦力が含まれる)の差は対象車700の制動力を大きく上回っている。
図8では、他の鉱山ダンプ710の存在する前方の区間(閉塞区間)730より高度が高い位置を対象車800の停止位置としているだけでなく、さらに、当該停止位置での勾配により発生する推進力と抗力の差は対象車800の制動力を上回っていない。
図7の場合には、対象車700に作用する抗力エネルギーよりも位置エネルギー(勾配エネルギー)が大きい停止位置に対象車700を停止することで、位置エネルギー(勾配エネルギー)を利用した加速を行うことができる。しかし、図7の場合は、当該停止位置の勾配を考慮していないため、当該停止位置での推進力と抗力の差が対象車700の制動力を大きく上回る程度に当該停止位置の勾配が非常に大きい場合(例えば8%)には、対象車700のブレーキに大きな負担がかかり、さらにブレーキが利きにくいことで事故発生リスクが高くなる。
図8の場合には、図7の場合同様に、対象車800に作用する抗力エネルギーよりも位置エネルギー(勾配エネルギー)が大きい停止位置に対象車700を停止することで、位置エネルギー(勾配エネルギー)を利用した加速を行うことができる。さらに、図8の場合は、当該停止位置での勾配を考慮して当該停止位置を勾配の無い平坦部に設定することで、当該停止位置での勾配により発生する推進力と抗力の差が対象車800の制動力を上回ることがないようにしているので、ブレーキに負担がかからず、事故発生リスクを抑制できる。
次に、本発明の実施の形態を説明する前に、本発明に係る運搬車両の運行管理システムに含まれる主な特徴について説明する。
(1)本発明に係る運搬車両の運行管理システムは、複数の運搬車両のそれぞれの走行経路として設定された少なくとも1つの走行経路を複数の区間に区切って得られる複数の区間のうち少なくとも1つを閉塞区間として設定し、当該閉塞区間内に前記複数の運搬車両のうちいずれかが存在すると予測される間は、当該閉塞区間への他の運搬車両の進入を禁止する閉塞制御を行う閉塞制御部(例えば後述の閉塞制御部254)と、前記少なくとも1つの走行経路上の複数の点の高度情報を含む地図情報を管理する地図情報管理部(例えば後述のセンタ側地図DB216)と、前記複数の運搬車両のうち1台の運搬車両が前記閉塞制御により或る閉塞区間の前で停止する停止位置として、当該或る閉塞区間の高さを基準とした当該1台の運搬車両の当該停止位置での位置エネルギーが、当該1台の運搬車両が当該停止位置から前記或る閉塞区間に至るまでに受ける抗力エネルギーよりも大きい位置を前記地図情報に基づき算出する停止位置計算部(例えば後述の燃費最小停止位置計算部210)とを備え、前記閉塞制御部は、前記1台の運搬車両を前記閉塞制御により停止する場合に、前記停止位置に停止させることを特徴とする。
このように構成した運行管理システムによれば、運搬車両の走行経路の高度情報を考慮して閉塞制御時の運搬車両の停止位置が決定されるので、閉塞区間の解除後の走行で当該停止位置から位置エネルギーを利用して加速でき、閉塞制御時の運搬車両の燃料消費量を削減できる(省燃費効果を向上できる)。また、他の運搬車両が存在する閉塞区間が当該他の運搬車両の移動とともに時々刻々変化しても、本実施の形態により決定される停止位置はその閉塞区間の移動に合わせてリアルタイムで決定されるので、閉塞区間が移動する場合での運用にも適したものとなっている。
(2)上記(1)の運搬車両の運行管理システムにおいて、好ましくは、前記複数の運搬車両のそれぞれの積載重量を計算する重量計算部(例えば後述の車両重量計算部204)をさらに備え、前記停止位置計算部は、当該重量計算部で算出された前記1台の運搬車両の積載重量を考慮して前記位置エネルギーおよび前記抗力エネルギーを算出することとする。
このように構成したシステムによれば、位置エネルギー及び抗力エネルギーの算出時に運搬車両の積載重量を考慮できるので、これらの算出精度が向上し、その結果として推進力エネルギーの算出精度および推進力エネルギーを利用した各種処理の精度を向上できる。
(3)上記(1)または(2)の運搬車両の運行管理システムにおいて、好ましくは、前記少なくとも1つの走行経路に関する路面抵抗が記憶された路面抵抗記憶部(例えば後述のセンタ側地図DB、路面抵抗取得部202)をさらに備え、前記停止位置計算部は、当該路面抵抗記憶部に記憶された前記1台の運搬車両の走行経路に係る路面抵抗を考慮して前記抗力エネルギーを算出することとする。
このように構成したシステムによれば、抗力エネルギーの算出時に路面抵抗を考慮できるので、その算出精度および推進力エネルギーを利用した各種処理の精度を向上できる。
(4)上記(1)から(3)のいずれかの運搬車両の運行管理システムにおいて、好ましくは、前記停止位置計算部は、前記位置エネルギーが前記抗力エネルギーよりも大きい位置のうち、前記1台の運搬車両が前記或る閉塞区間に所定時間以内(例えば後述の実施形態では20秒以内)に到達できる位置を前記停止位置として設定することとする。
このように構成したシステムによれば、閉塞区間から無益に遠い位置が停止位置として設定されることが回避できるので、運搬車両による作業効率の低下を抑制できる。
(5)上記(1)から(4)のいずれかの運搬車両の運行管理システムにおいて、好ましくは、前記1台の運搬車両の前記停止位置における路面勾配による推進力と抗力の差が、当該1台の運搬車両の制動装置の制動力よりも小さくなるか否かを判別する制動力判定部(例えば後述の制動力判定部206)をさらに備え、前記停止位置計算部は、前記位置エネルギーが前記抗力エネルギーよりも大きい位置のうち、前記推進力と前記抗力の差が前記制動力よりも小さい位置を前記停止位置とすることとする。
ところで、閉塞制御時の運搬車両の停止位置を決定する際に、その停止位置における走行経路の勾配の程度を考慮しないと、勾配により発生する推進力が運搬車両の制動力を大きく上回る場合もある。この場合、運搬車両のブレーキに大きな負担がかかり、さらにブレーキが利きにくいことで事故発生リスクが高くなる。
これに対して、上記のように構成したシステムによれば、前記推進力と前記抗力の差が前記制動力よりも小さい位置に運搬車両を停止させることで、ブレーキ負荷(制動装置負荷)が軽減し、ブレーキ事故の発生リスクを低減できる。
(6)上記(1)から(5)のいずれかの運搬車両の運行管理システムにおいて、好ましくは、前記1台の運搬車両を前記停止位置に停止させることによる省燃費効果を表示する省燃費効果表示部(例えば後述の省燃費効果表示部218)をさらに備えることとする。
このように構成したシステムによれば、省燃費効果を視覚的にオペレータに提示することができ、本システムによる省燃費効果の把握が飛躍的に容易になる。
次に本発明の実施形態に係る運搬車両の運行管理システムの構成を図2に示す。本実施形態のシステムは、複数の鉱山ダンプ(車両群)の運行管理をするものであり、管制センタシステム200と車載端末システム250とから構成される。
管制センタシステム200は、管制センタ1500(図15参照)の内部に設置されたコンピュータ及びその周辺機器であり、車載端末システム250は、管制センタシステム200が管理対象とする複数の鉱山ダンプ290(車群)のそれぞれに搭載されたコンピュータ及びその周辺機器である。管制センタシステム200と各車載端末システム250とは無線ネットワーク240を通じて情報を送受する。なお、ここでは説明を簡略して、1台分の車載端末システム250のみを説明するが、車載端末システム250は鉱山ダンプの台数分存在するものとする。
管制センタシステム200は、管制センタ1500内のオペレータ1510に対して管制センタシステム200における各鉱山ダンプ290の位置(車両位置)や配車先や走行経路の閉塞状況などの管制制御状況を示すセンタ側表示部214と、管制センタ1500内のオペレータ1510が管制センタシステム200に対して、管制制御開始、管制制御終了などの入力指示を行うセンタ側入力部212と、鉱山内を走行する複数の鉱山ダンプ290の位置から閉塞区間を管理する閉塞管理部226と、鉱山内の複数の鉱山ダンプ290に対して作業状況や位置に基づいて目的地を指示する配車管理部220と、鉱山内を走行する複数の鉱山ダンプと無線により通信を行うセンタ側通信部224と、鉱山における走行経路、積込場、放土場などの位置、範囲、高度情報を含む地図データ(地図情報)を管理するセンタ側地図DB(地図情報管理部)216と、センタ側地図DB216で管理された地図情報の中から走行経路の高度情報(具体的には、走行経路(搬送路)を規定する点列に含まれる各点の高度情報)を取得する高度情報取得部222と、高度情報取得部222により取得した高度位置、路面抵抗取得部202により取得した路面抵抗、車両重量計算部により計算された車両総重量(積載重量を含む)等に基づき、閉塞制御により或る閉塞区間の手前で停止する鉱山ダンプ(制御対象車)の停止位置を計算する燃費最小停止位置計算部210と、閉塞制御が実行される鉱山ダンプの走行経路上において勾配により発生する推進力と抗力の差が当該鉱山ダンプの制動力を上回るか否かを判定する制動力判定部206と、各鉱山ダンプの積荷運搬状況に基づき積載重量を含む各鉱山ダンプの車両総重量を計算する車両重量計算部204と、閉塞制御が実行される鉱山ダンプの走行経路の路面抵抗に関する情報を取得する路面抵抗取得部202と、燃費最小停止位置計算部210により計算された停止位置から閉塞区間位置に到達するまでの鉱山ダンプの到達予想時間(車両到達予想時間)を計算する車両到達時間予測部208と、燃費最小停止位置計算部210により計算された停止位置に鉱山ダンプを停止することにより削減された燃費を計算しオペレータ1510に表示する省燃費効果表示部218と、管制センタシステム200全体の処理を制御するセンタ側制御部228とを備えている。
また、車載端末システム250は、管制センタシステム200と無線により通信を行うための車載側通信部258と、GPS(Global Positioning System 衛星測位システム)やIMU(Inertial Measurement Unit 慣性計測装置)やジャイロセンサ等により自車(車載端末システム250が搭載された鉱山ダンプ自身のことを示す)の位置を測位する車載側自車位置測位部256と、管制センタシステム200から出力される閉塞指示により、燃費最小停止位置計算部210で算出された停止位置への自車の停止指示を行う閉塞制御部254と、オペレータ(鉱山ダンプの搭乗者またはサービスマン)が車載端末システム250に対して起動指示、停止指示などの入力を行う車載側入力268と、自車(鉱山ダンプ290)の動作状況を表示する車載側表示部266と、センタ側地図DB216同様に鉱山における搬送路、積込場、放土場などの地図データを管理する車載側地図DB(地図管理部)260と、自車の車両制御部292(後述)に対して操舵、加減速、発進停止など車両制御に関する情報の通信を行う車両制御通信部262と、自車の積荷の積載状況を送信する積載状況計測部252と、車載端末システム250全体の処理を制御する車載側制御部264とを備えている。
各鉱山ダンプ290には、車載端末システム250とともに車両制御部292が装備され、車載端末システム250内の車両制御通信部262からの指示により、鉱山ダンプ290の操舵、加減速、発進停止など車両制御を行う。
図15に管制センタ1500の概要を示す。管制センタシステム200は管制センタ1500内に装備される。管制センタシステム200には、管理対象の複数の鉱山ダンプの運行状況を表示するセンタ側表示部(例えば液晶モニタ)214と、管制センタシステム200に対して管制制御開始、管制制御終了など指示を行うセンタ側入力部(例えば、マウス、キーボード)212が装備されている。管制センタ1500では、オペレータ1510がセンタ側表示部214に表示された鉱山ダンプの運行状況の画面1520を見ながら、センタ側入力部212を介して管制制御開始、管制制御終了など指示を行う。
図16に鉱山ダンプ290の概要を示す。鉱山ダンプ290には、鉱山ダンプ290の操作や動作状態を確認できるコックピット1630内に車載端末システム250が装備されている。また、鉱山ダンプ290の位置を測位するためのGPSアンテナ1615と、管制センタシステム200と無線通信を行うための無線LANアンテナ1620が装備されている。GPSアンテナ1615と無線LANアンテナ1620は車載端末システム250と通信線を介して接続されている。
次に図9Aおよび図9Bに管制センタシステム200の処理フローを示す。図9Aと図9Bにおける(A5)〜(A8)は互いに接続されている。なお、ここでは説明を簡略化するために、管制センタシステム200が、管理対象としている複数の鉱山ダンプの中から任意に選択した1台の運行管理を行う場合を例に挙げて説明するが、残りの鉱山ダンプについても同様の処理フローを適用しており、実際は車両群の運行管理をしているものとする。
はじめにステップ900では、センタ側制御部228において管制センタシステム200の起動状態を確認する初期設定処理を行う。
ステップ903では、センタ側通信部224において制御対象とする鉱山ダンプ(対象車)に無線を経由して走行経路情報(経路情報)(A1)を送信する。これにより対象車に走行経路が設定される。なお、本発明は、管理対象としている全ての鉱山ダンプの走行経路が同一の場合も許可するので、全ての鉱山ダンプに設定される走行経路の合計は少なくとも1つとなる。
ここで図14を用いて鉱山ダンプ(対象車)の走行経路(経路)および閉塞制御における閉塞区間について説明する。図14は本実施形態における鉱山ダンプの閉塞区間および経路の概要を示す図である。図14に例示した鉱山は、鉱物や土砂のダンプへの積込作業を行う積込場A(1400)と積込場B(1405)と、積み込んだ土砂を放土する放土場1410と、積み込んだ鉱物の選鉱する選鉱場1415とから構成され、積込場A(1400)、積込場B(1405)、放土場1410、選鉱場1415は道路(搬送路)で接続されている。
図14に示すように、各鉱山ダンプの走行経路が設定される各道路は複数の区間(例えば、区間1420,1425,1430,1435)によって仮想的に区切られている。図14に例示した鉱山ダンプ(対象車)290の走行経路1450としては、積込場B(1405)から選鉱場(1415)に至る道路が設定されている。本実施形態では或る鉱山ダンプの閉塞制御に伴い、当該或る鉱山ダンプの走行経路を構成する少なくとも1つの区間が閉塞区間として設定される。閉塞区間は、当該閉塞区間に1台の鉱山ダンプが存在する場合に当該閉塞区間への他の鉱山アンプの侵入を防止して2台以上の鉱山ダンプが同時に存在しないようにすることで、当該閉塞区間での鉱山ダンプ同士の衝突を防止するための区間である。なお、閉塞区間は鉱山ダンプが存在する区間のみに限らず、例えば、当該区間の前及び/又は後ろに隣接する1以上の区間を合わせて閉塞区間としても良い。
また、各鉱山ダンプは積込場、放土場、選鉱場などの目的地(走行経路の終着点)に到達すると、管制センタシステム200の配車管理部220より新たな目的地(積込場、放土場、選鉱場)および走行経路を指示される。本実施形態では、新たな目的地の指示として管制センタ1500より各鉱山ダンプに現在地から目的地までの走行経路(経路)を送信する。図14の例では、鉱山ダンプ(対象車)290が積込場B(1405)に到着し、新たな目的地である選鉱場1415までの走行経路1450(積込場1405から選鉱場1415までの太線)が設定されている。このように積込場B(1405)から選鉱場1415に鉱山ダンプが向かう場合には、これらを結ぶ道路(搬送路)を経路とし、その経路情報を鉱山ダンプに送信する。
つぎに、鉱山ダンプ(対象車)290の経路受信処理について説明する。図10に鉱山ダンプ290の経路受信処理フローを示す。
はじめにステップ1000では、車載側制御部264において車載端末システム250の起動状態を確認する初期設定処理を行う。
ステップ1005では、車載側通信部258において管制センタシステム200から送信される経路情報(A1)を受信する処理を行う。この受信した経路情報に従って鉱山ダンプ(対象車)290の走行経路を設定し、当該走行経路に沿って搬送路上の走行を行う。
ステップ1010では、車載側制御部264において車載端末システム250の終了処理を行う
図9Aに戻り、ステップ906では、センタ側通信部224において鉱山ダンプ(対象車)290から無線を経由して送信される積荷の積載状況(A2)を受信する。
ここで、鉱山ダンプ290の積載状況(A2)の送信処理について説明する。図11に鉱山ダンプ290の積載状況の送信処理フローを示す。
はじめにステップ1100では、車載側制御部264において車載端末システム250の起動状態を確認する初期設定処理を行う。
ステップ1105では、積載状況計測部252において、自車(鉱山ダンプ290)の荷台の積載状況を計測する。積載状況は「荷台上の積荷の重量(積載重量)」と換言でき、積載重量を算出/推定する方法としては、例えば、荷台上の積荷の重量を重量センサで直接的に測定したり、積込機(ショベル)から提供される積荷の重量の積算値から推定したり、積荷の有無のみで積載重量を推定したりするものがあるが、積載重量の算出/推定が可能な方法であれば特に拘らない。また、積載重量の算出/推定に際して、鉱山ダンプの操縦者の搭乗の有無を勘案しても良い。
ステップ1110では、車載側通信部258において、ステップ1105で計測した自車の積載状況(A2)を管制センタシステム200に送信する処理を行う。
ステップ1115では、車載側制御部264において車載端末システム250の終了処理を行う。
図9Aに戻り、ステップ909では、車両重量計算部204においてステップ906で取得した鉱山ダンプの積荷の積載状況(A2)に基づき車両総重量を計算する。この車両重量計算では、鉱山ダンプ290から送信される積載重量と鉱山ダンプの空荷状態の重量の和(車両総重量)を求める。別の方法として、鉱山ダンプが空荷状態又は積荷状態のどちらであるかという積載状態情報に基づき、積載重量を200tなど予め一定値として決めておき、その値と鉱山ダンプの空荷状態の重量との和を求めることで車両総重量を計算してもよい。
ステップ912では、センタ側通信部224において鉱山ダンプ290から無線を経由して送信される自車位置情報(A3)を受信する。
ここで、対象車である鉱山ダンプ290の自車位置送信処理について図12を用いて説明する。図12に鉱山ダンプの自車位置送信処理フローを示す。
はじめにステップ1200では、車載側制御部264において車載端末システム250の起動状態を確認する初期設定処理を行う。
ステップ1205では、車載側自車位置測位部256において鉱山ダンプの自車位置(A3)を測位する。この自車位置測位ではGPS(Global Positioning System 衛星測位システム)やIMU(Inertial Measurement Unit 慣性計測装置)やジャイロセンサ等により鉱山ダンプの自車位置を測位する。
ステップ1210では、車載側通信部258において、ステップ1205で測位した自車位置(A3)を管制センタシステム200に送信する。
ステップ1215では、車載側制御部264において終了判定を行い、終了と判定された場合にはステップ1220に進み、終了と判定されない場合にはステップ1205に戻る。
ここで終了判定は、管制センタシステム200から送信される終了命令によるものであったり、鉱山ダンプが目的地に到達したことによる終了判定であったりする。
ステップ1220では、車載側制御部264において車載端末システム250の終了処理を行う。
図9に戻り、ステップ915では、閉塞管理部226において、対象車290の走行経路に関わる閉塞区間情報を取得する。この閉塞区間情報に従うことで、対象車290は他の鉱山ダンプと衝突しない位置に停止することができる。
ステップ918では、閉塞管理部226において、自車位置より前方の走行経路(自車の現在位置から目的地までに至る全区間)に閉塞区間が存在するか否かを判別し、閉塞区間が存在する場合、すなわち自車が停止しなければいけない場合にはステップ921に進み、そうでない場合にはステップ966に進む。
ステップ921では、高度情報取得部222において、自車位置より前方の走行経路の高さ情報をセンタ側地図DB216から取得する。
ステップ924では、路面抵抗取得部202において、自車位置より前方の走行経路の路面抵抗情報をセンタ側地図DB216から取得する。路面抵抗情報は、センタ側地図DB216で搬送路の区間ごとに管理された値であり、路面抵抗取得部202は自車位置より前方の経路上にある各区間の路面抵抗値を取得する。また、搬送路の各区間における路面抵抗値は、固定値としても良いし、外部因子により変化する値(可変値)としても良い。後者の場合の具体例としては、搬送路に散水する散水車の運行状況、すなわち搬送路への散水状況を用いて、散水が実施された各区間の路面抵抗値を適宜補正する方法がある。
ここで、燃費最小となる停止位置の計算方法について説明する。燃費最小となる停止位置を計算する場合、閉塞区間までの到達時間が遅くならないように、停止位置から閉塞区間位置までの到達予想時間(旅行予想時間)を計算し、その到達予想時間が一定時間(例えば20秒)以内になるような停止位置を最終的に求める。
この停止位置と閉塞区間位置の到達予想時間を求めるにあたり、本実施の形態では、図17のように或る閉塞区間位置1750を基準として車両進行方向の逆方向に所定の距離で走行経路を複数の区間に区切る。当該区間は停止位置の決定に用いられ、停止位置決定用区間と称することがある。図17の各区間は、閉塞区間位置(1750)に近いものから順番に区間1(1700)、区間2(1705)、区間3(1710)、区間4(1715)、区間5(1720)、区間6(1725)、区間7(1730)、区間9(1735)、区間9(1740)、区間10(1745)という形式で区間番号が付与されており、本実施形態では各区間は1mごとに区切られる。各区間は始点から始まり終点で終わる。
なお、図17の区間の数は一例に過ぎず、10を超える区間や10未満の区間が設定されることもある。また、本実施の形態では、図17の区間(停止位置決定用区間)は、図14の区間(閉塞区間用区間)と異なるものとして取り扱うが、両者を一致させても良い。ただし、図14の区間の長さは鉱山ダンプの車両長より長くなることが通常であるため、この場合には停止位置決定用区間の距離は本実施の形態よりも長くなる。
次に、図17の区間ごとに鉱山ダンプ(対象車)290に作用する抗力エネルギーと勾配エネルギーを求める。或る区間の終点で勾配エネルギーが抗力エネルギーより大きい場合、その差を当該区間での推進力エネルギー(運動エネルギー)として対象車の加速に用いることができる。
ステップ927からステップ963では、閉塞区間位置1750から車両進行方向の逆方向に遡って、勾配エネルギーが抗力エネルギーを上回った区間、かつ、推進力エネルギーにより求めた車両速度を用いて、閉塞区間位置1750までの到達予想時間が一定時間(例えば20秒)以内になる区間を探索し、両条件を満たす区間を閉塞制御時の対象車の停止位置として決定する。以下、ステップ927以降の各ステップについて詳細に説明する。
ステップ927では、対象車の停止位置計算の準備として、燃費最小停止位置計算部210において、後続するステップ930から945までの処理の対象となる区間(燃料最小の停止位置計算のための区間)の区間番号iとして1を設定する。これによりステップ930の処理をはじめて実行する場合には区間1がステップ930から945までの処理対象となる。なお、区間番号が0の区間は、後続する処理の便宜上、閉塞区間とする。
ステップ930では、燃費最小停止位置計算部210において、区間番号iの区間(区間i)について勾配エネルギーを算出する。勾配エネルギーは、下記式1のように番号(i−1)の区間位置(但し、i=1で番号0となるときは閉塞区間位置)と番号iの区間位置との間の高度差[m]と車両重量[kg]と重力加速度(9.81[m/s
2])の積で求める。ここでは、ステップ909で計算した重量を「車両重量」として入力し、さらに、番号(i−1)と番号iの区間の高度差をステップ921で取得した高度情報から算出しこれを「高度差」として入力することで勾配エネルギー(位置エネルギー)を求める。なお、本実施の形態では、番号(i−1)の区間と番号(i)の区間の高度差を算出する際に基準点は、番号iの区間の終点(つまり番号(i−1)の区間の始点)と番号iの区間の始点を利用する。但し、これは一例に過ぎず、両区間の中点など、他の基準点を利用しても良い。
ステップ933では、燃費最小停止位置計算部210において、区間番号iの区間を通過する間に鉱山ダンプ(対象車)に作用する抗力エネルギーを算出する。当該抗力エネルギーは、路面抵抗エネルギーと空気抵抗エネルギーの和として求めることができるが、空気抵抗エネルギーは車重が大きい鉱山ダンプの場合には路面抵抗エネルギーに対して十分小さな値なので本実施形態では無視して、路面抵抗エネルギーのみを抗力エネルギーとする。これにより本実施の形態の路面抵抗エネルギーは下記式2のように車両重量[kg]と路面抵抗と重力加速度(9.81[m/s
2])と移動距離[m]の積で求められる。ここでは、ステップ909で計算した重量を「車両重量」として入力し、ステップ924で取得した路面抵抗から算出した区間番号iの区間の路面抵抗値を「路面抵抗」として入力することで路面抵抗エネルギーを求める。なお、既述のとおり本実施の形態における各区間の間隔は1mなので「移動距離」は常に1mとなる。
ステップ936では、燃費最小停止位置計算部210において、区間番号iの区間の終点における鉱山ダンプ(対象車)の推進力エネルギーを算出する。推進力エネルギーは、下記式3のようにステップ930の勾配エネルギーとステップ933の抗力エネルギーとの差で求める。
ステップ936が終了したら図9Bのステップ939に進む。ステップ939では、燃費最小停止位置計算部210において、区間番号iの区間について、ステップ936で求めた推進力エネルギーから区間番号iの区間における終点速度を求める。
ステップ936の推進力エネルギーは、下記式4のように車両重量[kg]と、区間番号iの区間の始点速度[m/s]及び終点速度[m/s]を用いて表すことができる。終点速度とは、番号iの区間において閉塞区間に最も近い位置(終点)での速度を示し、始点速度とは、番号iの区間において閉塞区間から最も遠い位置(始点)での速度を示す。本実施の形態では、区間iの始点速度は常に0km/hと設定し、式(4)により区間iの終点速度を求めることにする。区間(i+1)のときも同様に、区間(i+1)の始点速度を0km/hとして、区間(i+1)の終点速度を求める。なお、先と同様に式4にはステップ909で計算した重量を「車両重量」として入力する。
また、式(4)は区間iでの増加速度を求める式であると換言でき、ステップ939での演算対象の区間から閉塞区間の手前の区間までの増加速度を加算すれば閉塞区間の始点(区間1の終点)での鉱山ダンプの速度(終端速度と称することがある)を算出できる。例えば、ステップ939で区間3の増加速度(終点速度)v3を求めた場合に、区間1の増加速度がv1、区間2の増加速度がv2とすると、閉塞区間の始点での速度はv1+v2+v3となる。ステップ939では区間iの場合の終端速度も算出し、これを管制センタシステム200内のメモリに保持する。
ステップ942では、車両到達時間予測部208において、区間番号iの区間から閉塞区間位置までの鉱山ダンプの到達予想時間を求める。具体的には、まず、ステップ942の直前のステップ939で速度を求めた区間番号iの区間の移動時間(区間iの始点から終点への到達に要する時間)を求める。この区間移動時間の算出方法は特に拘らないが、例えば、まず始点速度(ゼロ)と終点速度から区間iにおける平均速度を求め、次に当該平均速度でその区間iの移動(1mの移動)に要する時間を区間移動時間として求める方法がある。
次に、1サイクル前の区間番号(i−1)の区間の移動時間を求める。区間(i−1)の始点速度は区間iの終点速度であり、区間(i−1)の終点速度は区間iの終点速度に区間(i−1)の増加速度(1サイクル前のステップ939で算出した速度)を加算した値となるため、両者から区間番号(i−1)の区間移動時間を求めることができる。
以下、区間番号を1ずつ減らして、i=1となるまで上記と同様の作業を繰り返し行い、全ての区間移動時間(i個の時間)を算出し、それらを加算すれば、区間番号iの始点から閉塞区間の始点(区間番号1の終点)に達するまでの鉱山ダンプの到着予想時間を算出できる。そして、算出した到達予想時間を車両到達時間予測部208内のメモリ(管制センタシステム200内のメモリであれば可)に保持する。
ステップ945では、燃費最小停止位置計算部210において、閉塞区間位置から区間番号iの区間までの距離が200m以内か否かを判別し、200m以内であればステップ948に進み、200m以内でない場合にはステップ951に進む。なお、本実施の形態では、1区間の距離は1mなので、区間番号i=200以下であればステップ948に進み、iが201以上の場合であればステップ951に進むことになる。
ステップ948では、燃費最小停止位置計算部210において、区間番号iを1インクリメントし、ステップ930に戻る。
ステップ951では、制動力判定部206において、ステップ930〜942の処理対象とした全ての区間の中から、(1)ステップ945で車両到達時間予測部208において保持した閉塞区間位置から区間番号iの区間までの移動時間が20秒以内であること、(2)ステップ939で算出した終端速度が最大であること、という2条件を満たす区間を検索する。そして、当該2条件を満たす区間について、制動力判定部206は、当該区間の勾配(走行路の傾斜)により発生する推進力と抗力の差が鉱山ダンプの制動装置(ブレーキ)の制動力よりも小さいか否かを判定する。つまり、ステップ951では合計3つの条件を満たす区間の有無が検索される。なお、各区間の勾配の情報は、地図情報としてセンタ側地図DB216に記憶されており、各鉱山ダンプの制動装置の制動力は、予め制動力判定部206に記憶されており、制動力判定部206は、これら情報を参照して推進力と抗力の差と制動力の比較を行う。
ステップ951において勾配による推進力と鉱山ダンプの抗力の差が鉱山ダンプの制動装置の制動力よりも小さくなる区間を検索することで、鉱山ダンプが停止しなければならない区間に勾配がある場合を避け、これによりブレーキへの負担を軽減し、ブレーキによる事故発生リスクを低減させることができる。
ステップ954では、燃費最小停止位置計算部210において、ステップ951の3条件を満たす区間が存在するか否かを判別し、そのような区間が存在する場合にはステップ957に進み、そのような区間が存在しない場合にはステップ960に進む。
ステップ957では、燃費最小停止位置計算部210において、鉱山ダンプの燃料最小停止位置(停止位置)をステップ951で検索した区間の始点に設定し、ステップ963に進む。
ステップ960では、燃費最小停止位置計算部210において、閉塞区間位置の直前の区間(すなわち区間番号1の区間)の始点に燃料最小停止位置を設定し、ステップ963に進む。
ステップ963では、センタ側通信部224において、ステップ957又はステップ960で設定した燃料最小停止位置(A4)を鉱山ダンプに送信する。これにより燃料最小停止位置(A4)を受信した鉱山ダンプで閉塞制御処理が実行される。
ここで鉱山ダンプの閉塞制御処理について説明する。図13に鉱山ダンプの閉塞制御処理フローを示す。
はじめにステップ1300では、車載側制御部264において車載端末システム250の起動状態を確認する初期設定処理を行う。
ステップ1305では、車載側通信部258において管制センタシステム200から送信された燃料最小停止位置(A4)を受信する。
ステップ1310では、車載側自車位置測位部256において自車位置(燃料最小停止位置(A4)を受信した車載端末システム250が搭載された鉱山ダンプ(対象車)の位置)を測位する。
ステップ1315では、閉塞制御部254において、ステップ1305で受信した燃料最小停止位置で停止するように、自車位置と燃料最小停止位置を見ながら速度指令を出す。この速度指令は車両制御通信部262を介して車両制御部292に送られ車両制御部292において速度指令に従って駆動力や制動力が制御される。
これにより対象車は燃料最小停止位置で停止し、その後、ステップ1318で閉塞区間の設定の確認判定を行い、前方の閉塞区間の設定が解除されるまで停止を継続する。一方、前方の閉塞区間の設定が解除されたら、ステップ1320に進む。なお、本実施の形態では、燃料最小停止位置を区間の始点としたが、当該区間内の点であれば適宜変更可能である。また、燃料最小停止位置に鉱山ダンプを停止させる際の鉱山ダンプ側の基準点をどこにするか(例えば、鉱山ダンプの先端にするか、中点にするか、後端にするか等)についても適宜変更可能である。
ステップ1320では、車載側制御部264において終了判定を行い、終了と判定された場合にはステップ1325に進み、終了と判定されない場合にはステップ1305に戻る。
図9Bに戻り、ステップ966では、センタ側制御部228において終了判定を行い、終了と判定された場合にはステップ969に進み、終了と判定されない場合にはステップ912に戻る。
ここでステップ966の終了判定は、管制センタ1500におけるオペレータ1510によるセンタ側入力部212を介した終了命令によるものであったり、鉱山ダンプが目的地に到達したことによる終了判定であったりする。
ステップ969では、省燃費効果表示部218において、推進力エネルギーが鉱山ダンプの抗力エネルギーよりも大きい位置に鉱山ダンプを停止させることによる省燃費効果を算出し、その算出結果をセンタ側表示部214の画面に表示してオペレータに示す。本実施の形態では、走行経路の高低差を考慮せず閉塞区間の直前で停止した場合を基準として省燃費効果を示している。ここで省燃費効果表示部218により表示される画面の一例について図18で説明する。
図18は、走行経路の高低差を考慮して推進力エネルギーが抗力エネルギーよりも大きい位置に鉱山ダンプを停止させることによる省燃費効果を表示する画面1800である。画面1800は、センタ側表示部214に表示され、管制センタ1500内のオペレータ1510に対して省燃費効果を示すものである。画面1800には、省燃費効果を示す指標として、鉱山ダンプ(トラック)ごとの一経路(例えば積込場から放土場など)あたりの燃料削減量1810(図18の例では15L)と、鉱山ダンプごとの本日分(一日分)の燃料削減量1820(図18の例では120L)と、サイト全体(全鉱山ダンプ)の本日分の燃料削減量1830(図18では1100L)とが表示されている。これにより本実施の形態に係る運行管理システムによる省燃費効果をオペレータに直感的に示すことができる。図示の例では燃料削減量を示す数値で省燃費効果を表したが、数値をグラフ化したものを表示しても良い。
図9Bに戻り、ステップ971では、センタ側制御部228において終了処理を行う。この終了処理により一連の運行管理を終了する。運行管理の終了状況は管制センタ1500におけるオペレータ1510に対してセンタ側表示部214を介して表示される。
このように本実施形態では、高度情報を含む搬送路の地図情報に基づき、鉱山ダンプが閉塞制御により停止する場合に、勾配による推進力エネルギーが鉱山ダンプの抗力エネルギーよりも大きい位置に鉱山ダンプを停止させることで、勾配により得られる加速力を利用することでき、鉱山ダンプの燃料消費量を削減することができる。
なお、上記の説明では、図9Bステップ954で3つの条件を満たす区間を閉塞制御時の鉱山ダンプの停止位置として設定する場合について説明したが、省燃費のみが目的の場合には、終端速度が最大という条件のみをステップ954の検索条件としても良い。
なお、上記の説明では、図9Aのステップ918において、自車位置より前方の走行経路に閉塞区間が存在するか否かの判断に際する検索対象は、自車の現在位置から目的地までに至る全区間としたが、自車位置から前方の所定距離内の経路に閉塞区間が存在するか否かを判断しても良い(すなわち、検索対象を限定しても良い)。また、自車位置から前方の所定数の区間に閉塞区間が存在するか否かを判断しても良い。
また、ステップ945で閉塞区間までの距離が200m以内の区間のみに停止位置を限定したが、「200m」という値は一例に過ぎず、他の値でも構わない。また、この距離の限定を行わず、現在値から閉塞区間までの間に存在する全区間についてステップ930〜942の処理を行うように設計しても構わない。
また、上記では、ステップ954の判定結果が「NO」の場合は閉塞区間の直前の区間を停止位置と設定したが、予め定めた他の位置(例えば、閉塞区間から所定距離離れた位置)を停止位置として設定しても構わない。また、上記の実施の形態では、ステップ969で本発明による省燃費を表示したが、当該処理は省略しても構わない。
本実施の形態は、鉱山ダンプ(ダンプトラック)以外の運搬車両、例えば、大型トラック、荷物を運ぶことができる他の自走式機械にも適用可能である。また、鉱業、建設、農業、輸送および他の産業に関連するある種の作業を行う移動機械にも適用可能である。例えば、ショベル、ローダ、クレーン、モータグレーダ、トラック、さらには、工事現場、鉱山および発電所などの作業環境で動作する任意のタイプの機械や、土木機械、鉱山車両、資材運搬機器、農業機器などに適用可能である。
本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。
また、上記のシステム200,250に係る各構成や当該各構成の機能及び実行処理等は、それらの一部又は全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現しても良い。また、上記のシステム200,250に係る構成は、演算処理装置(例えばCPU)によって読み出し・実行されることで当該システム200,250の構成に係る各機能が実現されるプログラム(ソフトウェア)としてもよい。当該プログラムに係る情報は、例えば、半導体メモリ(フラッシュメモリ、SSD等)、磁気記憶装置(ハードディスクドライブ等)及び記録媒体(磁気ディスク、光ディスク等)等に記憶することができる。
また、上記の各実施の形態の説明では、システム200,250における各構成を接続する制御線や情報線は、当該実施の形態の説明に必要であると解されるものを示したが、必ずしも製品に係る全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。