JP6159241B2 - 筋萎縮抑制剤 - Google Patents
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Description
<1> 動物
ICRマウス(リタイアマウス、日本クレア株式会社)雄性マウス50匹(30.1g〜56.3g)を用意し、これらマウスを表1に示す5群に区分した。各群10匹とした。
各群のマウスに与える飲料水として、表2に示すものを用意した。
マウスは室温22℃の環境下で個別にケージで飼育した。食餌(MFオリエンタル酵母)と飲料水は自由摂取とした。なお、D-ZnTS群、D-MgTS群及びD-KTS群のマウスは、上記表2に示した物質を純水の中に溶かしたものを飲料水とし、W群及びWTS群のマウスは純水を飲料水とした。
筋萎縮誘導方法として、モーレーが開発した尾部懸垂法(Tail Suspension/TS)を用いた(図1参照)。実験は7日間行った。
7日後、麻酔下で屠殺してヒラメ筋と足底筋をそれぞれ摘出し、重量を電磁式はかり(研精工業株式会社)にて計測した。
図2は、尾部懸垂が遅筋であるヒラメ筋重量に及ぼす影響について示したものである。筋重量は体重で除した値である。
W群ではヒラメ筋が0.28mg/g、WTS群では0.25mg/gであった。両群の平均値には統計的に1%で有意差がみられた。
W群では足底筋が0.56mg/g、WTS群では0.52mg/gであった。両群の平均値には統計的に有意差がみられなかった。従ってこのモデルにおいては速筋に対する萎縮誘導は小さいものと考えられる。
W群ではヒラメ筋が0.28mg/g、WTS群では0.25mg/g、D-ZnTS群では0.29mg/gであった。WTS群とD-ZnTS群、両群の平均値には統計的に1%で有意差がみられた。
W群では足底筋が0.56mg/g、WTS群では0.52mg/g、D-ZnTS群では0.54mg/gであった。WTS群とD-ZnTS群の平均値間には統計的に1%で有意差がみられた。
W群ではヒラメ筋が0.28mg/g、WTS群では0.25mg/g、D-MgTS群では0.27mg/gであった。WTS群とD-MgTS群の平均値間には統計的に1%で有意差がみられた。
W群では足底筋が0.56mg/g、WTS群では0.52mg/g、D-MgTS群では0.54mg/gであった。WTS群とD-MgTS群の平均値間には統計的に1%で有意差がみられた。
W群ではヒラメ筋が0.28mg/g、WTS群では0.25mg/g、D-KTS群では0.26mg/gであった。W群とD-KTS群の平均値間には統計的に1%で有意差がみられた。従ってD-K摂取の萎縮抑制に対する効果は観察されなかった。
W群では足底筋が0.56mg/g、WTS群では0.52mg/g、D-KTS群では0.54mg/gであった。すべての群の平均値間で統計的な有意差は観察されなかった。従ってD-K摂取の萎縮抑制に対する効果は観察されなかった。
<1> 動物
ICRマウス(リタイアマウス、日本クレア株式会社)雄性マウス30匹を用意し、これらマウスを表3に示す3群に区分した。各群10匹とした。
各群のマウスに与える飲料水として、前記表2に示すものを用意した。
マウスは室温22℃の環境下で個別にケージで飼育した。食餌(MFオリエンタル酵母)と飲料水は自由摂取とした。なお、D-ZnTS群のマウスは、前記表2に示したD-Znを純水の中に溶かしたものを飲料水とし、W群、WTS群のマウスは純水を飲料水とした。
筋萎縮誘導方法として、モーレーが開発した尾部懸垂法を用いた(図1参照)。実験は7日間行った。
7日後、麻酔下で屠殺してヒラメ筋と足底筋をそれぞれ摘出し、筋細胞の面積を計測した。
1.ヒラメ筋に関する実験結果
図10(A)は、W群とWTS群のヒラメ筋平均細胞面積を比較したものである。
W群の平均面積値は369μm2で、WTS群の平均面積値は242μm2であった。両群の平均面積値には統計的に1%で有意差がみられた。
WTS群の平均面積値は242μm2で、D-ZnTS群の平均面積値は392μm2であった。両群の平均面積値には統計的に1%で有意差がみられた。
また、W群とD-ZnTS群の細胞面積を比較すると分かるように、D-Zn摂取によって、ヒラメ筋に対する萎縮抑制効果と同時に肥大効果も得られることが確認された。
図11(A)は、W群とWTS群の足底筋平均細胞面積を比較したものである。
W群の平均面積値は482μm2で、WTS群の平均面積値は361μm2であった。両群の平均面積値には統計的に1%で有意差がみられた。
WTS群の平均面積値は361μm2で、D-ZnTS群の平均面積値は519μm2であった。両群の平均面積値には統計的に1%で有意差がみられた。
また、W群とD-ZnTS群の細胞面積を比較すると分かるように、D-Zn摂取によって、足底筋に対する萎縮抑制効果と同時に肥大効果も得られることが確認された。
筋細胞面積の測定結果に基づきヒストグラムを作成し、D-Zn摂取による筋萎縮抑制効果を確認した。
図12にヒラメ筋細胞面積のヒストグラムを示す。
図12(B)と図12(C)のヒストグラムを比較すると、尾部懸垂に伴うヒラメ筋細胞の萎縮がD-Zn摂取により抑制されているのが明らかであり、右側にシフトしているのがわかる。
図12(A)と図12(C)のヒストグラムを比較すると、僅かであるがW群のヒラメ筋細胞面積に比較してD-ZnTS群のヒラメ筋細胞面積は右側にシフトしているのがわかる。
図13に足底筋細胞面積のヒストグラムを示す。
図13(B)と図13(C)のヒストグラムを比較すると、尾部懸垂に伴う足底筋細胞の萎縮がD-Zn摂取により抑制されているのが明らかであり、右側にシフトしているのがわかる。
図13(A)と図13(C)のヒストグラムを比較すると、僅かではあるがW群の足底筋細胞面積に比較してD-ZnTS群の足底筋細胞面積は右側にシフトしているのがわかる。
<1> 動物
ICRマウス(リタイアマウス、日本クレア株式会社)雄性マウス40匹を用意し、これらマウスを表4に示す4群に区分した。各群10匹とした。
各群のマウスに与える飲料水として、前記表2に示すものを用意した。
マウスは室温22℃の環境下で個別にケージで飼育した。食餌(MFオリエンタル酵母)と飲料水は自由摂取とした。なお、D-ZnTS群、D-MgTS群及びD-KTS群のマウスは、前記表2に示した物質を純水の中に溶かしたものを飲料水とし、W群、WTS群のマウスは純水を飲料水とした。
筋萎縮誘導方法として、モーレーが開発した尾部懸垂法を用いた(図1参照)。実験は7日間行った。
7日後、麻酔下で屠殺してヒラメ筋と足底筋をそれぞれ摘出し、筋細胞の面積を計測した。
1.ヒラメ筋に関する実験結果
図14は、本実験における各群のヒラメ筋平均細胞面積を比較したものである。
W群の平均面積値は482μm2、WTS群の平均面積値は361μm2、D-ZnTS群の平均面積値は519μm2、D-MgTS群の平均面積値は575μm2であった。
また、W群、D-ZnTS群、D-MgTS群の細胞面積を比較すると分かるように、D-Zn,D-Mgのいずれを摂取した場合でも、ヒラメ筋に対する萎縮抑制効果と同時に肥大効果が得られることが確認された。
図15は、本実験における各群の足底筋平均細胞面積を比較したものである。
W群の平均面積値は369μm2、WTS群の平均面積値は242μm2、D-ZnTS群の平均面積値は392μm2、D-MgTS群の平均面積値は603μm2であった。
また、W群、D-ZnTS群、D-MgTS群の細胞面積を比較すると分かるように、D-Zn,D-Mgのいずれを摂取した場合でも、足底筋に対する萎縮抑制効果と同時に肥大効果が得られることが確認された。
<1> 実験動物
マウスは日本エスエルシー株式会社より購入し、ICR系オスマウスのリタイヤマウスを用いた。
各群5匹とし、7日間個別ケージにて飼育をした。筋萎縮誘導方法は尾部懸垂法を用いた(図1)。
すべての群において室温24.0±1.0℃、12時間昼夜逆転明暗サイクルを維持した環境下で、飼育を行った。
また食餌と飲料水は自由摂取とした。餌はオリエンタル酵母工業株式会社より購入したマウス飼育用飼料MF(図16)を用いた。飲料水は正起薬品工業株式会社のイオン交換水(図16)を用いた。
飲料水として水・D-Mg水・D-Zn水の3通りに分類し、TSの有無により6群に分けた。
群の名称はW、WTS、D-Mg、D-MgTS、D-Zn、D-ZnTSとした(表5)。
下記の通りに飲料水を作製した。
1.D-Mg(MP Biomedicals.LLC) 72mg/L
2.D-Zn(Nutra Bio com) 1.1mg/L
飼育期間終了後、麻酔下(ソムノペンチル(ペントバルビタールナトリウム):共立製薬株式会社)で屠殺し、心肺停止を確認後、下肢骨格筋よりヒラメ筋(遅筋)と足底筋(速筋)をそれぞれ採取しサンプルとして用いた。
体重の計測は、実験開始時および飼育7日後に行った。
食餌量は実験開始時に50gセットし、飼育7日後に残量の計量を行い、摂取量を算出した。
また飲料水においては実験開始時に100mLセットし、飼育7日後に計量を行い、飲水量を算出した。
萎縮の判定は動物実験において骨格筋の湿重量によるものが一般的であることから、電子天秤 (Mettler -Toledo International Inc.)を用いて骨格筋湿重量を計測し、判定を行った。
a. プレパラートの作製
10%ホルマリン固定した骨格筋を脱水後、パラフィン包埋を行った。パラフィン切片は筋腹部横断面となるようにミクロトーム(Reichert-Jung 2050 supercut:株式会社ファインテック)にて作製した。
次に切片をスライドガラス上で伸展および乾燥させた後、HE染色を行った。
HE染色にはヘマトキシリン(マイヤーヘマトキシリン溶液:和光純薬株式会社)とエオジン(エオジンY1%:武藤化学薬品株式会社)を用いた。
作製したプレパラートを用いて、デジタルマイクロスコープ(KH‐7700:株式会社HYROX)で、筋細胞面積の計測を行った。
a. サンプルの調整
液体窒素で凍結保存した骨格筋を乳鉢で粉末状に破砕し、1000μLのPBSに溶解した。
Bradford法により筋タンパク質を定量した。試薬はQuick startプロテインアッセイ スタンダードBSA(Bio-Rad Laboratories, Inc.)を用いた。
操作方法は96wellプレートに、各レーンあたり20μLの調整したサンプル(またはスタンダード)、30μLのPBSと50μLの試薬をアプライした。振とうさせてから10分放置し、吸光度を測定した。吸光度はOdyssey(LI-COR,Inc)を用い、波長700nmで測定した。
また検量線は7点で作成した。
得られたデータはmeans±SDで示した。統計学的分析はTukey法を用いた。有意水準は、危険率5%未満とした。
1.体重の変化、摂食量および飲水量
図17に体重の変化を示した。実験開始時の体重の平均は、W群40.64±1.34g、WTS群41.20±2.95g、D-Mg群36.20±1.52g、D-MgTS群39.08±4.94g、D-Zn群37.32±2.27g、D-ZnTS群38.84±1.41gであった。各群の体重の平均値間に有意差はなかった。
飼育7日後の体重の平均は、W群42.52±0.75g、WTS群40.26±1.99g、D-Mg群39.02±2.31g、D-MgTS群37.50±5.66g、D-Zn群39.54±1.63g、D-ZnTS群38.66±1.47gであった。各群の体重の平均値間に有意差はなかった。
実験開始前と飼育7日後の体重の変化は、W群1.88±0.73g、WTS群−0.94±3.34g、D-Mg群2.82±0.91g、D-MgTS群−1.58±0.86g、D-Zn群2.22±0.95g、D-ZnTS群−0.18±1.74gであった。各群の体重の変化に有意差はなかったが、TSなし群では実験前に比べて実験後に体重が増加傾向を示したのに対し、TSあり群では実験前に比べて実験後に体重が減少傾向を示した。
図18に各群摂食量および飲水量の平均値を示した。各群摂食量および飲水量の平均値に有意差はなかった。
図19に各群における体重あたりのヒラメ筋と足底筋の骨格筋湿重量の平均値を示した。
ヒラメ筋においてはW群0.28±0.06mg/g、WTS群0.25±0.04mg/g、D-Mg群0.28±0.03mg/g、D-MgTS群0.28±0.04mg/gであった。W群とWTS群の平均値間、WTS群とD-MgTS群の平均値間では5%の有意差があった。
したがって、W群とWTS群を比較するとWTS群では有意に筋重量が低下しているが、D-Mg群とD-MgTS群を比較するとD-MgTS群では筋重量の低下は生じなかった。またW群とD-Mg群を比較するとD-Mg群では筋の肥大も生じていないことからD-Mgはヒラメ筋において筋萎縮抑制効果があることが判明した。
足底筋においてはW群0.56±0.09mg/g、WTS群0.52±0.02mg/g、D-Mg群0.55±0.04mg/g、D-MgTS群0.54±0.05mg/gであった。どの群間においても統計的に有意差はなかった。
図20に各群における体重あたりのヒラメ筋と足底筋の骨格筋重量の平均値を示した。
ヒラメ筋においてはW群0.28±0.06mg/g、WTS群0.25±0.04mg/g、D-Zn群0.27±0.04mg/g、D-ZnTS群0.29±0.04mg/gであった。W群とWTS群の平均値間には5%の有意差があった。WTS群とD-ZnTS群の平均値間では1%の有意差があった。
したがって、W群とWTS群を比較するとWTS群では有意に筋重量が低下しているが、D-Zn群とD-ZnTS群を比較するとD-ZnTS群では筋重量の低下は生じなかった。またW群とD-Zn群を比較するとD-Zn群では筋の肥大も生じていないことからD-Znはヒラメ筋において筋萎縮抑制効果があることが判明した。
足底筋においてはW群0.56±0.09mg/g、WTS群0.52±0.02mg/g、D-Zn群0.56±0.05mg/g、D-ZnTS群0.55±0.04mg/gであった。どの群の平均値間においても統計的な有意差はなかった。
図21に各群における細胞面積の平均値を示した。
ヒラメ筋においてはW群448.5±94.6μm2、WTS群344.9±87.3μm2、D-Mg群458.4±37.9μm2、D-MgTS群469.9±79.8μm2であった。W群とWTS群の平均値間、WTS群とD-MgTS群の平均値間では1%の有意差があった。W群とWTS群を比較するとWTS群では有意に筋細胞が縮小しているが、D-Mg群とD-MgTS群を比較するとD-MgTS群では筋細胞の縮小は生じなかった。またW群とD-Mg群を比較するとD-Mg群では筋細胞の肥大も生じていないことからD-Mgによりヒラメ筋の筋細胞面積が維持されていることがわかった。
足底筋においてはW群533.0±142.6μm2、WTS群523.0±139.4μm2、D-Mg群527.9±87.1μm2、D-MgTS群554.3±185.2μm2であった。どの群間においても統計的な有意差はなかった。
図22に各群における細胞面積の平均値を示した。
ヒラメ筋においてはW群448.5±94.6μm2、WTS群344.9±87.3μm2、D-Zn群457.2±28.4μm2、D-ZnTS群466.4±93.8μm2であった。W群とWTS群の平均値間、WTS群とD-ZnTS群の平均値間では1%の有意差があった。W群とWTS群を比較するとWTS群では有意に筋細胞が縮小しているが、D-Zn群とD-ZnTS群を比較するとD-ZnTS群では筋細胞の縮小は生じなかった。またW群とD-Zn群を比較するとD-Zn群では筋細胞の肥大も生じていないことからD-Znによりヒラメ筋の筋細胞面積が維持されていることがわかった。
足底筋においてはW群533.0±142.6μm2、WTS群523.0±139.4μm2、D-Zn群524.6±107.8μm2、D-ZnTS群563.7±160.3μm2であった。どの群間においても統計的な有意差はなかった。
図23に各群の筋タンパク質の定量結果を示した。絶対量(mg)の平均値および筋重量当たりのタンパク量の平均値(mg/g)を示した。絶対量においてヒラメ筋ではW群とD-Mg群の平均値間、W群とD-Zn群の平均値間、D-Mg群とD-MgTS群の平均値間、D-Zn群とD-ZnTSの平均値間に有意な差はなかったが、W群とWTS群の平均値間、WTS群とD-MgTS群、WTS群とD-ZnTS群の平均値間では1%の有意差があった。また筋重量当たりのタンパク量の平均値間にはどの群間でも有意差はなかった。
したがって、ヒラメ筋における筋萎縮は絶対的なタンパク質含有量は減少するものの、筋重量当たりのタンパク質濃度はほとんど変化しないということがわかった。またD-MgまたはD-Znを摂取することにより筋タンパク質量は維持されていることがわかった。
足底筋において、タンパク量および体重当たりのタンパク量の平均値はどの群間でも有意差はなかった。
足底筋では7日間で萎縮は生じなかったにもかかわらずヒラメ筋は萎縮したことから、ヒラメ筋は不活動による影響を強く受けることが明らかとなった。
またヒラメ筋の筋重量減少とともに筋細胞面積の縮小およびタンパク質量が減少していたことから、筋重量の減少は筋細胞自体の萎縮を反映していることが明らかとなった。
さらにD-MgまたはD-Zn摂取により筋萎縮の抑制ができたのは、筋細胞の面積を維持および筋タンパク質量減少を抑制していたからであるということが示唆された。
実験動物、飼育条件、骨格筋の採取方法は上記[実施例5]と同様である。
表6に飲料水9種類を示した。
9種類の飲料水で群分けをおこない、各群にTSを負荷した。また対照群を水TS群とし、計10群とした。群の名称は、表7に示すとおり飲料水名とした。TS負荷を行った群には飲料水名の後ろにTSと記した。
萎縮の判定は動物実験において骨格筋の湿重量によるものが一般的であることから、骨格筋湿重量を計測し萎縮の判定を行った。計測は電子天秤 (Mettler-Toledo International Inc.)を用いた。
得られたデータはmeans±SDで示した。統計学的分析はT検定法を用いた。有意水準は、危険率5%未満とした。
1.体重あたりのヒラメ筋湿重量の比較
図24にヒラメ筋湿重量の平均値を示した。
対照群である水TS群(0.25±0.04mg/g)と比較し、1%の有意差があったのはアスパラギン酸亜鉛TS群(0.29±0.04mg/g)、5%で有意差があったのは水群(0.28±0.06mg/g)とアスパラギン酸マグネシウムTS群(0.27±0.02mg/g)であった。
またアスパラギン酸カリウムTS群(0.26±0.03mg/g)、グルコン酸マグネシウムTS群(0.25±0.05mg/g)、グルコン酸亜鉛TS群(0.24±0.04mg/g)、グルコン酸カルシウムTS群(0.24±0.03mg/g)、クエン酸鉄アンモニウムTS群(0.22±0.04mg/g)、アスパラギン酸TS群(0.26±0.04mg/g)において有意差はなかった。
図25に足底筋湿重量の平均値を示した。
対照群である水TS群(0.52±0.02mg/g)と比較し、5%で有意差があったのはクエン酸鉄アンモニウムTS群(0.45±0.09mg/g)であった。
また水群(0.56±0.08mg/g)、アスパラギン酸マグネシウムTS群(0.54±0.06mg/g)、アスパラギン酸亜鉛TS群(0.55±0.03mg/g)、アスパラギン酸カリウムTS群(0.54±0.06mg/g)、グルコン酸マグネシウムTS群(0.52±0.05mg/g)、グルコン酸亜鉛TS群(0.48±0.06mg/g)、グルコン酸カルシウムTS群(0.52±0.05mg/g)、アスパラギン酸TS群(0.52±0.03mg/g)においては有意差がなかった。
D-MgまたはD-Znで筋萎縮抑制効果があったのに対し、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸亜鉛、またアスパラギン酸では筋萎縮の抑制効果がみられなかった。
また本実験結果よりアスパラギン酸のみでも筋萎縮抑制効果はなく、D-MgまたはD-Znという形でとくに筋萎縮抑制効果があることがわかった。
D-MgまたはD-Znを摂取することにより筋重量減少の抑制、すなわち筋萎縮抑制効果があることがわかった。またアスパラギン酸のみでは筋萎縮抑制効果がなかった。
そこで本実験においては、必ず筋が萎縮するTSモデルのマウスにD-MgまたはD-Zn摂取させることにより、骨格筋中のミネラルがどのように変動するのかを分析するため、誘導結合プラズマ発光分析法によりCa、Mg、Znの定量分析を行った。
<1> 誘導結合プラズマ発光分析によるCa、Mg、Znの定量
a. 採取した骨格筋の前処理
採取した骨格筋を液体窒素で凍結保存し、サンプルとして用いた。
このサンプルをジーエルサイエンス株式会社のデジチューブに移し、10mLの60%硝酸(有害金属測定用:和光純薬株式会社)を加えて1晩浸漬を行い、翌日に湿式加熱酸分解を行った。加熱にはジーエルサイエンス株式会社のDigiPREP Jrを用いた。
加熱のプロトコルは表8の通りである。110℃ホールド60分経過後、0.2mLの過酸化水素水を15分おきに計3回滴下した。
加熱終了後、自然冷却を行い室温まで下げてから、純水で1N硝酸になるように調整後、10mLをフィルター処理した。フィルターはGEヘルスケア・ジャパン株式会社の25mmGD/X PVDF 0.45 μmを用いた。
元素定量分析は誘導結合プラズマ発光分析法により行った。測定装置は株式会社島津製作所のICPE-9000を用いた。ICP条件は高周波パワー:1.20、プラズマガス流量:10.0、補助ガス0.60、キャリアガス0.7、露光時間:15秒、感度:ワイドレンジ、観測:軸、ソルベントリンス時間:30秒、サンプルリンス時間:45秒、ペリスタルティックポンプ回転数:20rpmとした。
得られたデータはmeans±SDで示した。統計学的分析はT検定法を用いた。対象群はW群とし、有意水準は危険率5%未満とした。
1.筋萎縮におけるCa、MgおよびZnの動態
図26にW群とWTS群の骨格筋組織あたりのCa、MgおよびZn量の平均値を示した。
ヒラメ筋におけるCa量はW群238.8±18.7μg/g、WTS群319.0±58.3μg/gであった。WTS群で有意にCa量は増加した(p<0.05)。またMg量はW群247.1±8.5μg/g、WTS群200.2±56.8μg/gであった。平均値間には統計的な有意差はなかったが、WTS群でMg量は減少傾向であった。そしてZn量はW群623.1±80.8μg/g、WTS群706.8±53.0μg/gであった。平均値間には統計的な有意差はなかったが、WTS群で増加傾向を示した。
次に足底筋におけるCa量はW群133.0±5.3μg/g、WTS群134.6±8.9μg/gであった。平均値間には統計的な有意差はなかった。またMg量はW群221.9±23.1μg/g、WTS群220.8±7.4μg/gであった。平均値間には統計的な有意差はなかった。そしてZn量はW群279.0±11.4μg/g、WTS群280.0±27.8μg/gであった。平均値間には統計的な有意差はなかった。
したがって、筋萎縮に伴いヒラメ筋においてCa、MgおよびZn量は変化することがわかった。
図26にD-Mg群とD-MgTS群の骨格筋組織あたりのCa、MgおよびZn量の平均値を示した。
ヒラメ筋におけるCa量はD-Mg群222.7±44.0μg/g、D-MgTS群267.7±35.9μg/gであった。D-Mg群およびD-MgTS群におけるCa量は、W群と比較して統計的な有意差はなかった。またMg量はD-Mg群224.1±13.9μg/g、D-MgTS群260.7±27.3μg/gであった。D-Mg群およびD-MgTS群におけるMg量は、W群と比較して統計的な有意差はなかった。そしてZn量はD-Mg群584.8±67.5μg/g、D-MgTS群701.6±80.4μg/gであった。D-Mg群およびD-MgTS群におけるMg量は、平均値間に統計的な有意差はなかったが、D-MgTS群で増加傾向を示した。
次に足底筋におけるCa量はD-Mg群134.2±25.2μg/g、D-MgTS群131.0±18.3μg/gであった。D-Mg群およびD-MgTS群におけるCa量は平均値間には統計的な有意差はなかった。またMg量はD-Mg群224.0±15.1μg/g、D-MgTS群206.4±32.7μg/gであった。D-Mg群およびD-MgTS群におけるMg量は、平均値間には統計的な有意差はなかった。そしてZn量はD-Mg群275.1±33.4μg/g、D-MgTS群289.1±30.8μg/gあった。D-Mg群およびD-MgTS群におけるZn量は、平均値間に統計的な有意差はなかった。
したがって、ヒラメ筋においてD-Mg摂取により筋組織内のCaおよびMg量は維持されたことがわかった。
図26にD-Zn群とD-ZnTS群の骨格筋組織あたりのCa、MgおよびZn量の平均値を示した。
ヒラメ筋におけるCa量はD-Zn群254.7±55.4μg/g、D-ZnTS群280.3±23.2μg/gであった。D-Zn群およびD-ZnTS群におけるCa量は、D-ZnTS群で有意に増加した(p<0.05)。またMg量はD-Zn群239.9±19.9μg/g、D-ZnTS群273.4±26.6μg/gであった。D-Zn群およびD-ZNTS群におけるCa量は、W群と比較して統計的な有意差はなかった。そしてZn量はD-Zn群610.7±85.5μg/g、D-ZnTS群801.6±120.4μg/gであった。D-Zn群およびD-ZnTS群におけるZn量は、D-ZnTS群で有意に増加した(p<0.05)。
次に足底筋におけるCa量はD-Zn群139.7±10.9μg/g、D-ZnTS群167.4±19.4μg/gであった。D-Zn群およびD-ZnTS群におけるCa量は、平均値間には統計的な有意差はなかった。またMg量はD-Zn群229.5±5.8μg/g、D-ZnTS群230.0±10.4μg/gであった。D-Zn群およびD-ZnTS群におけるMg量は、平均値間には統計的な有意差はなかった。そしてZn量はD-Zn群297.7±31.9μg/g、D-ZnTS群342.6±53.7μg/gであった。D-Zn群およびD-ZnTS群におけるZn量は、平均値間に統計的な有意差はなかった。
したがって、ヒラメ筋においてD-Zn摂取により、D-ZnTS群で筋組織内のZn量は増加することがわかった。
1.D-Mg摂取によるヒラメ筋の萎縮抑制効果
WTS群における骨格筋中のCaとMgの動態結果では、W群と比較してCa量は有意に増加し、Mg量は減少傾向を示している。また前述した実験結果よりWTS群では筋が萎縮していることから、WTS群では組織中のCa量が増加することによりタンパク質分解系の酵素であるカルパインが活性していると考えられる。さらにカルパインの活性化はROSの産生にもかかわることがわかっている。したがってWTS群ではタンパク質分解系の亢進と、ROSの産生により、筋萎縮が亢進していると考えられた。またD-MgTS群においては骨格筋中のCa量の増加もMg量の減少も生じていない。
したがってD-Mgを摂取することにより組織中のMg量が維持されたことから、Caの過度な流入が起こらなかったと考えられる。またCaが組織中に増加しなかったことからカルパインが活性化せず、筋の萎縮も亢進しなかったと考えられた。
WTS群における骨格筋中のCaの動態結果では、W群と比較してCa量は有意に増加し、D-ZnTS群でもCa量は有意に増加している。したがってD-ZnTS群でもROSが産生されているものと考えられる。ところがWTS群では筋が萎縮しているが、D-ZnTS群では筋の萎縮は生じなかった。
またD-ZnTS群における骨格筋中のZnの動態結果では、有意にZn量が増加している。したがって、増加したZnが筋の萎縮抑制に関係があるものと考えられた。
不活動の状態では、ヒラメ筋の組織中ではCa量が増加し、Mgが減少傾向にあり、Zn量増加傾向を示すといった変化が生じた。
ところが不活動の状態であってもD-Mgを摂取すると、筋組織中のCa、Mg量は維持されることがわかった。また不活動の状態であってもD-Znを摂取することにより、筋組織中のZn量は増加することがわかった。
上述した各実施例の実験結果より、尾部懸垂に起因する廃用性筋萎縮が確認された。また、廃用性筋萎縮を惹起する条件下であっても、アスパラギン酸亜鉛又はアスパラギン酸マグネシウムを継続して与えることで、筋萎縮が効果的に抑制されると同時に、筋肉の成長が促進されることが確認された。
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- アスパラギン酸マグネシウムを有効成分とする、遅筋における廃用性の筋萎縮を抑制するための筋萎縮抑制剤。
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