JP6151981B2 - 関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性の予測方法 - Google Patents

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Description

本発明は、関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性を予測する方法に関する。
関節リウマチ(RA)は関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患であり、関節炎が進行すると、関節機能の低下、日常生活動作(ADL)の障害、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)の低下が起こる。関節リウマチの治療は、メトトレキサートをはじめとする抗リウマチ薬に加え、2003年以降から承認され始めた、様々な種類の生物学的製剤の導入により、早期からの寛解導入、関節破壊の進行阻止が可能になってきた。しかしながら、生物学的製剤は、免疫抗体等を製剤化した薬であるために薬価が非常に高い一方で、投与された患者の1〜3割で薬効が見られないという問題がある。また、副作用として、感染症、結核、発癌リスクの上昇等が報告されている。さらに、関節破壊が進行した時点で生物学的製剤を投与しても、不可逆的な関節破壊によるADL低下は改善されない。以上のように、QOLの維持と医療費の問題の面から、早期に適切な生物学的製剤を選択し、投与することが重要であるため、生物学的製剤選択においては個別化治療が強く求められている。
これに対し、関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性を予測するための種々の方法が提案されている(例えば、特許文献1、2)。しかしながら、簡便に生物学的製剤の有効性を予測し得る方法のさらなる開発が求められている。
特開2010−172307号公報 特開2013−21932号公報
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、簡便に生物学的製剤の有効性を予測し得る方法を提供することにある。
本発明によれば、関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性を予測する方法が提供される。該方法は、関節リウマチ患者から単離された末梢血を炎症性刺激物質の存在下および非存在下でそれぞれ全血培養した培養液におけるインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ活性を指標にして炎症性刺激物質に対する反応性を評価すること、関節リウマチ患者から単離された末梢血を生物学的製剤の存在下および非存在下でそれぞれ全血培養した培養液におけるインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ活性を指標にして生物学的製剤に対する反応性を評価すること、関節リウマチ患者から単離された末梢血を炎症性刺激物質の存在下であって、生物学的製剤の存在下および非存在下でそれぞれ全血培養した培養液におけるインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ活性を指標にして生物学的製剤による炎症抑制性を評価すること、および炎症性刺激物質に対する反応性、生物学的製剤に対する反応性および生物学的製剤による炎症抑制性の総合評価に基づいて関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性の予測を行うこと、を含む。
好ましい実施形態においては、上記関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性の予測が、炎症性刺激物質に対する反応性、生物学的製剤に対する反応性、および生物学的製剤による炎症抑制性のそれぞれについて、応答感度が高いほど高スコアとなるようにスコア化し、それらの合計スコアが高いほど生物学的製剤が有効であると予測することによって行われる。
好ましい実施形態においては、上記炎症性刺激物質が、リポ多糖である。
好ましい実施形態においては、上記インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ活性が、培養液中のL−キヌレニン濃度に基づいて決定される。
好ましい実施形態においては、本発明の方法は、関節リウマチ患者から単離された末梢血由来の血球におけるインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼおよびサイトカインの発現量を測定すること、およびインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼおよびサイトカインの発現量比に基づいて関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性を予測すること、をさらに含む。
好ましい実施形態においては、上記サイトカインが、IL−17である。
好ましい実施形態においては、炎症性刺激物質の非存在下で全血培養した培養液におけるL−キヌレニン濃度に対する炎症性刺激物質の存在下で全血培養した培養液におけるL−キヌレニン濃度の比率が500%未満である関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性を予測する。
好ましい実施形態においては、上記生物学的製剤が、TNF阻害剤、IL−6阻害剤またはT細胞阻害剤である。
好ましい実施形態においては、上記スコア化が、後述する表1〜表3に基づいて行われ、その合計スコアが6以上の場合に生物学的製剤が有効であると予測する。
本発明によれば、全血培養という簡便な手段を用いて生物学的製剤の有効性を投与前に予測することができる。
炎症性刺激物質に対する反応性の評価を説明する概略図である。 生物学的製剤に対する反応性の評価を説明する概略図である。 生物学的製剤による炎症抑制性の評価を説明する概略図である。 実施例1におけるLPS刺激に対する反応性の結果を示すグラフである。 実施例1における生物学的製剤に対する反応性の結果を示すグラフである。 実施例1における生物学的製剤によるLPS刺激の抑制性の結果を示すグラフである。 (a)は実施例1における総合評価とCDAIとの関連性を示すグラフであり、(b)は実施例1における総合評価とSDAIとの関連性を示すグラフである。 (a)は未処置の血球におけるIDO1のmRNAの発現量と生物学的製剤の有効性との関連を示すグラフであり、(b)は未処置の血球におけるIL−17AのmRNAの発現量と生物学的製剤の有効性との関連を示すグラフであり、(c)は未処置の血球におけるIDO1およびIL−17AのmRNA発現量比と生物学的製剤の有効性との関連性を示すグラフである。 (a)は健常者群および関節リウマチ患者群における血中L−KYN濃度を示すグラフであり、(b)は血中L−TRP濃度を示すグラフである。 生物学的製剤の存在下でのL−KYN濃度の増大率とIDO1のmRNA発現量との関連性を示すグラフである。 実施例1の炎症性刺激物質に対する反応性の評価におけるL−KYN濃度の増加率と、DAS28−ESRでの分類による疾患活動性との関連性を示すグラフである。
本発明の関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性を予測する方法は、関節リウマチ患者から単離された末梢血を炎症性刺激物質の存在下および非存在下でそれぞれ全血培養した培養液におけるインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO1)活性を指標にして炎症性刺激物質に対する反応性を評価すること[工程A];関節リウマチ患者から単離された末梢血を生物学的製剤の存在下および非存在下でそれぞれ全血培養した培養液におけるIDO1活性を指標にして生物学的製剤に対する反応性を評価すること[工程B];関節リウマチ患者から単離された末梢血を炎症性刺激物質の存在下であって、生物学的製剤の存在下および非存在下でそれぞれ全血培養した培養液におけるIDO1活性を指標にして生物学的製剤による炎症抑制性を評価すること[工程C];および炎症性刺激物質に対する反応性、生物学的製剤に対する反応性および生物学的製剤による炎症抑制性の総合評価に基づいて関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性の予測を行うこと[工程D]を含む。本発明の方法によれば、全血培養という簡便な操作によって生物学的製剤の有効性を予測することができる。また、L−トリプトファン(L−TRP)代謝の第一段階を触媒する律速酵素であり、L−TRPをL−キヌレニン(L−KYN)へと代謝させるIDO1は、インターロイキン6(IL−6)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)等の種々のサイトカイン類によって活性化され、それらの発現動向を反映し得るので、IDO1活性を指標とすることにより、TNF阻害剤だけでなく、IL−6阻害剤、T細胞阻害剤等の種々の生物学的製剤についても薬効を予測することが可能である。
好ましい実施形態においては、本発明の予測方法は、さらに、関節リウマチ患者から単離された末梢血由来の血球におけるIDO1およびサイトカインの発現量を測定すること[工程E];およびIDO1およびサイトカインの発現量比に基づいて関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性を予測すること[工程F]を含む。以下、各工程について詳細に説明する。
[工程A]
工程Aにおいては、関節リウマチ患者から単離された末梢血を炎症性刺激物質の存在下および非存在下でそれぞれ全血培養した培養液におけるIDO1活性を指標にして炎症性刺激物質に対する反応性を評価する。具体的には、関節リウマチ患者から単離された末梢血を炎症性刺激物質の非存在下で全血培養した培養液におけるIDO1活性に対する炎症性刺激物質の存在下で全血培養した培養液におけるIDO1活性の比率に基づいて炎症性刺激物質に対する反応性を評価する。
IDO1活性は、培養細胞中の酵素活性の測定によって決定することができるが、操作の簡便性の観点から、培養液中のL−TRP濃度および/またはL−KYN濃度に基づいてIDO1活性を決定してもよい。好ましくはL−KYN濃度に基づいてIDO1活性が決定される。IDO1活性の変動を好適に反映し得るからである。具体的には、培養中におけるL−TRPの消費量が少なければIDO1活性が低いと判断でき、また、L−KYNの産生量が多ければIDO1活性が高いと判断できる。したがって、炎症性刺激物質の非存在下で全血培養した培養液におけるL−KYN濃度に対して炎症性刺激物質の存在下で全血培養した培養液におけるL−KYN濃度が高い場合、炎症性刺激物質に反応してIDO1活性が増大したことがわかり、その際のL−KYN濃度の増大率が大きいほど炎症性刺激物質に対する反応性が高い(すなわち、応答感度が高い)と評価される(図1(a))。同様に、炎症性刺激物質の非存在下で全血培養した培養液におけるL−TRP濃度に対して炎症性刺激物質の存在下で全血培養した培養液におけるL−TRP濃度が低い場合、炎症性刺激物質に反応してIDO1活性が増大したことがわかり、その際のL−TRP濃度の減少率が大きいほど炎症性刺激物質に対する反応性が高いと評価される(図1(b))。なお、L−TRP濃度およびL−KYN濃度は、例えば高速液体クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
上記末梢血の全血培養は、末梢血を任意の適切な培地と混合して培養することによって行われる。培養条件は、当業者によって適切に設定され得る。培養条件は、例えば37℃、5%CO環境下とされ、24時間〜48時間培養された培養液におけるIDO1活性を指標とすることができる。
炎症性刺激物質の存在下で全血培養を行う場合、炎症性刺激物質は培養開始当初から添加されてもよく、培養開始から数時間後、例えば2〜5時間後に添加されてもよい。炎症性刺激物質を添加後、24時間〜48時間培養した培養液におけるIDO1活性を指標とすることが好ましい。炎症性刺激物質に対する反応性をより正確に評価できるからである。
炎症性刺激物質としては、IDO1を活性化し得る任意の適切な物質が用いられ得る。例えば、リポ多糖(LPS)、IL−6、TNF−α、Toll様受容体(TLR)等が挙げられる。なかでも、LPSが好ましく用いられ得る。LPSとしては、ヒト等の哺乳動物の細胞に作用してIDO1を活性化できるものであればよく、由来する細菌の種類に制限はない。
培養液における炎症性刺激物質の濃度(終濃度)は、種類等に応じて適切に設定され得る。例えば、LPSの培養液における濃度(終濃度)は、好ましくは0.5ng/ml〜200ng/ml、より好ましくは1ng/ml〜50ng/mlである。
[工程B]
工程Bにおいては、関節リウマチ患者から単離された末梢血を生物学的製剤の存在下および非存在下でそれぞれ全血培養した培養液におけるIDO1活性を指標にして生物学的製剤に対する反応性を評価する。具体的には、関節リウマチ患者から単離された末梢血を生物学的製剤の非存在下で全血培養した培養液におけるIDO1活性に対する生物学的製剤の存在下で全血培養した培養液におけるIDO1活性の比率に基づいて生物学的製剤に対する反応性を評価する。
IDO1活性は、工程Aと同様に決定され得る。したがって、生物学的製剤の非存在下で全血培養した培養液におけるL−KYN濃度に対する生物学的製剤の存在下で全血培養した培養液におけるL−KYN濃度として求められるL−KYN濃度の増大率が小さいほど生物学的製剤に対する反応性が高い(すなわち、応答感度が高い)と評価される(図2(a))。同様に、生物学的製剤の非存在下で全血培養した培養液におけるL−TRP濃度に対する生物学的製剤の存在下で全血培養した培養液におけるL−TRP濃度として求められるL−TRP濃度の減少率が小さいほど生物学的製剤に対する反応性が高いと評価される(図2(b))。
工程Bにおける末梢血の全血培養は、工程Aと同様に行うことができる。
生物学的製剤の存在下で全血培養を行う場合、生物学的製剤は培養開始当初から添加されてもよく、培養開始から数時間後、例えば2〜5時間後に添加されてもよい。好ましくは生物学的製剤を添加後、24時間〜48時間培養した培養液におけるIDO1活性を指標とする。生物学的製剤に対する反応性をより正確に評価できるからである。
生物学的製剤としては、特定のサイトカインを対象とするものに限定されず、例えば、ゴリムマブ、アダリムマブ、インフリキシマブ等のTNF阻害剤、トシリズマブ等のIL−6阻害剤、アバタセプト等のT細胞阻害剤が用いられ得る。
培養液における生物学的製剤の濃度(終濃度)は、好ましくは1μg/ml〜100μg/ml、より好ましくは5μg/ml〜50μg/mlである。
[工程C]
工程Cにおいては、関節リウマチ患者から単離された末梢血を炎症性刺激物質の存在下であって、生物学的製剤の存在下および非存在下でそれぞれ全血培養した培養液におけるIDO1活性を指標にして生物学的製剤による炎症抑制性を評価する。具体的には、関節リウマチ患者から単離された末梢血を炎症性刺激物質の存在下であって生物学的製剤の非存在下で全血培養した培養液におけるIDO1活性に対する炎症性刺激物質および生物学的製剤の存在下で全血培養した培養液におけるIDO1活性の比率に基づいて生物学的製剤による炎症抑制性を評価する。
IDO1活性は、工程Aと同様に決定され得る。したがって、炎症性刺激物質の存在下であって生物学的製剤の非存在下で全血培養した培養液におけるL−KYN濃度に対する炎症性刺激物質および生物学的製剤の存在下で全血培養した培養液におけるL−KYN濃度として求められるL−KYN濃度の増大率が小さいほど炎症抑制性が高い(すなわち、応答感度が高い)と評価される(図3(a))。同様に、炎症性刺激物質の存在下であって生物学的製剤の非存在下で全血培養した培養液におけるL−TRP濃度に対する炎症性刺激物質および生物学的製剤の存在下で全血培養した培養液におけるL−TRP濃度として求められるL−TRP濃度の減少率が小さいほど炎症抑制性が高いと評価される(図3(b))。
工程Cにおける末梢血の全血培養は、炎症性刺激物質の存在下で行われる。培養条件は工程Aと同様であり、炎症性刺激物質は培養開始当初から添加されてもよく、培養開始から数時間後、例えば2〜5時間後に添加されてもよい。炎症性刺激物質の種類および濃度としては、工程Aに関して記載したとおりである。
炎症性刺激物質および生物学的製剤の存在下で全血培養を行う場合、生物学的製剤は炎症性刺激物質の添加と同時に添加されてもよいが、好ましくは炎症性刺激物質の添加から数時間後、例えば2〜5時間後に添加される。また、生物学的製剤を添加後、20時間〜48時間培養した培養液におけるIDO1活性を指標とすることが好ましい。生物学的製剤による炎症抑制性をより正確に評価できるからである。生物学的製剤の種類および濃度としては、工程Bに関して記載したとおりである。
[工程D]
工程Dにおいては、工程Aで評価した炎症性刺激物質に対する反応性、工程Bで評価した生物学的製剤に対する反応性および工程Cで評価した生物学的製剤による炎症抑制性の総合評価に基づいて関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性の予測を行う。
1つの実施形態においては、これらの反応性および炎症抑制性が高いほど末梢血の単離源である関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性が高いと予測することができる。具体的には、炎症性刺激物質に対する反応性、生物学的製剤に対する反応性、および生物学的製剤による炎症抑制性の各々に関して、その応答感度が高いほど高スコアとなるようにスコア化し、それらの合計スコアが高いほど生物学的製剤が有効であると予測することができる。スコア化の1つの方法としては、最高スコアを付与する応答感度の基準値と最低スコアを付与する応答感度の基準値(例えば、以下の表1〜表3の基準値)とを決定し、必要に応じて、それらの間を分割して、各応答感度レベルに連続的にスコアを付与する方法が挙げられる。このような方法で各評価に関して4区分以上にスコア化した場合(すなわち、最高スコアと最低スコアとの間を2以上に分割してスコア化した場合)、合計スコア(その最大値は12以上となる)が該最大値の40%以上、好ましくは50%以上であれば生物学的製剤が有効であると予測することができる。当該方法による炎症性刺激物質に対する反応性、生物学的製剤に対する反応性、および生物学的製剤による炎症抑制性のスコア化の一例をそれぞれ、表1、表2および表3に示す。表1、表2および表3においてはそれぞれ、L−KYN増大率が300%以上900%未満の範囲、90%以上105%未満の範囲および70%以上100%未満の範囲を3つに均等分割し、その上下の範囲を加えて5区分のスコア化を行っている。表1〜3に例示するスコア化の場合、合計スコアが、例えば6以上(すなわち、合計スコアの最大値(15)の40%以上)、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であれば、生物学的製剤が有効であると予測することができる。
なお、表1〜表3に示すスコア化は一例であり、炎症性刺激物質に対する反応性、生物学的製剤に対する反応性、および生物学的製剤による炎症抑制性のそれぞれに関して、用いる炎症性刺激物質および/または生物学的薬剤の種類、濃度等に応じて、より多くの区分に分けてスコア化してもよく、少ない区分に分けてスコア化してもよい。また、スコア化における区分の数は、3つの評価の各々で同じであってもよく、異なっていてもよい。
別の実施形態においては、炎症性刺激物質に対する反応性が低い一方で、生物学的製剤に対する反応性および生物学的製剤による炎症抑制性が高ければ末梢血の単離源である関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性が高いと予測することができる。具体的には、炎症性刺激物質に対する反応性が低い患者を選別する一方で、当該患者の生物学的製剤に対する反応性および生物学的製剤による炎症抑制性に関して、その応答感度が高いほど高スコアとなるようにスコア化し、これらの合計スコアが高いほど生物学的製剤が有効であると予測することができる。これらのスコア化の方法としては、上述の実施形態と同様の方法が用いられ得る。当該方法で各評価に関して4区分以上にスコア化した場合、合計スコア(その最大値は8以上となる)が該最大値の例えば30%以上、好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上であれば生物学的製剤が有効であると予測することができる。
上記炎症性刺激物質に対する反応性が低い関節リウマチ患者としては、炎症性刺激物質の非存在下で全血培養した培養液におけるL−KYN濃度に対する炎症性刺激物質の存在下で全血培養した培養液におけるL−KYN濃度の増大率が例えば500%未満、また例えば0〜300%未満である関節リウマチ患者等が挙げられる。
[工程E]
工程Eにおいては、関節リウマチ患者から単離された末梢血由来の血球におけるIDO1およびサイトカインの発現量を測定する。抹消血由来の血球としては、培養を経たものであってもよく、経ていないものであってもよい。好ましくは、炎症性刺激物質による処置および生物学的製剤による処置のいずれもがなされていない血球が用いられる。また、IDO1およびサイトカインの発現量は、該血球におけるmRNAの発現量をリアルタイムPCR法等を用いて測定することによって決定できる。
上記サイトカインとしては、関節リウマチに関連する炎症性サイトカインであれば限定されず、例えば、IL−1、IL−4、IL−6、IL−17、TNF−α、インターフェロン等が挙げられる。なかでも、IL−17が好ましい。IDO1との発現量比と生物学的製剤の有効性との関連性が高い傾向にあるためである。IL−17の発現量は、IL−17A、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17E、IL−17F等のファミリー分子のいずれか1つの発現量(例えば、IL−17Aの発現量)であってもよく、任意の2つ以上の合計発現量(例えば、IL−17ファミリー全ての合計発現量)であってもよい。
[工程F]
工程Fにおいては、IDO1およびサイトカインの発現量比に基づいて関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性を予測する。例えば、IL−17の発現量に対するIDO1の発現量比(IDO1/IL−17)が高い場合(例えば、1.5以上、また例えば2以上、また例えば2.5以上)、その関節リウマチ患者において生物学的製剤が有効であると予測することができる。このようなIDO1およびサイトカインの発現量比に基づいた有効性の予測と工程Dにおける各種反応性の総合評価に基づいた有効性の予測とを組み合わせることにより、より確実性の高い予測が可能となる。
本発明の予測方法は、好ましくは炎症性刺激物質に対する反応性が低い関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性を予測するために用いられる。本発明者らの検討によれば、炎症性刺激物質に対する反応性が高い患者においては生物学的製剤の有効性が高い傾向にある一方で、炎症性刺激物質に対する反応性が低い関節リウマチ患者においては生物学的製剤の有効性に個人差が大きい傾向がある。よって、炎症性刺激物質に対する反応性が低い関節リウマチ患者を対象とする場合に、本発明の効果がより好適に得られ得る。
炎症性刺激物質に対する反応性が低い関節リウマチ患者としては、炎症性刺激物質の非存在下で全血培養した培養液におけるL−KYN濃度に対する炎症性刺激物質の存在下で全血培養した培養液におけるL−KYN濃度の比率が、例えば500%未満、また例えば0〜300%未満である関節リウマチ患者等が挙げられる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、実施例等における測定値は全て平均±標準偏差で表記した。各群間での有意差検定にはANOVAを用い、p<0.05を統計学的有意とした。
[全血サンプル]
生物学的製剤を未投与の関節リウマチ患者からヘパリン採血した全血をサンプルとし、使用時まで−80℃で保存した。
[L−TRPおよびL−KYNの測定]
血清および全血培養上清は2倍量の3%PCA(過塩素酸)を用いて除蛋白した。14000rpm、4℃で10分間遠心分離後の上清をサンプルとして高速液体クロマトグラフィー(CLASS−LC10、島津製作所株式会社)でL−TRP、L−KYNを測定した。測定UV波長はKYN=355nm、TRP=280nm、移動相は酢酸緩衝液、流量は1.0ml/minを測定条件とした。測定カラムはTSK gel ODS−100V、粒子径3μm、内径4.6mm×7.5cm(TOHO製)を使用した。
[実施例1]
[炎症性刺激物質に対する反応性の評価]
全血サンプルをRPMI 1640培地(日水製薬株式会社)で2倍希釈し、37℃、5%CO培養条件の下、24wellプレートで500μl/wellとなるよう培養した(n=9)。炎症性刺激物質の存在下での培養は、Salmonella abortus equi由来のLPSを培養開始と同時に培養液に終濃度50ng/mlとなるように添加して行った。培養開始から24時間後に上清を回収した。上清中のL−KYN濃度を測定し、炎症性刺激物質の非存在下および存在下での培養後のL−KYN濃度を比較した。結果を図4に示す。なお、培養後の血球はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて1600rpm、4℃、5分の遠心分離を2回繰り返すことで洗浄を行い、ペレットの状態で−80℃で保存した。
[生物学的製剤に対する反応性の評価]
全血サンプルをRPMI 1640培地(日水製薬株式会社)で2倍希釈し、37℃、5%CO培養条件の下、24wellプレートで500μl/wellとなるよう培養した(n=9)。生物学的製剤の存在下での培養は、生物学的製剤としてゴリムマブ(n=4)、アダリムマブ(n=2)、インフリキシマブ(n=2)、またはトシリズマブ(n=1)を培養開始と同時に培養液に終濃度10μg/mlとなるように添加して行った。培養開始から24時間後に上清を回収した。上清中のL−KYN濃度を測定し、生物学的製剤の非存在下および存在下での培養後のL−KYN濃度を比較した。結果を図5に示す。なお、培養後の血球はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて1600rpm、4℃、5分の遠心分離を2回繰り返すことで洗浄を行い、ペレットの状態で−80℃で保存した。
[生物学的製剤による炎症抑制性の評価]
全血サンプルをRPMI 1640培地(日水製薬株式会社)で2倍希釈し、Salmonella abortus equi由来のLPSを終濃度1ng/mlとなるように添加して、37℃、5%CO培養条件の下、24wellプレートで500μl/wellとなるよう培養した(n=9)。生物学的製剤の存在下での培養は、生物学的製剤としてゴリムマブ(n=4)、アダリムマブ(n=2)、インフリキシマブ(n=2)、またはトシリズマブ(n=1)をLPS添加の3時間後に培養液に終濃度10μg/mlとなるように添加して行った。ただし、生物学的製剤に対する反応性の評価と生物学的製剤による炎症抑制性の評価において、同一患者由来の全血サンプルに対しては同一の生物学的製剤を使用した。培養開始から24時間後に上清を回収した。上清中のL−KYN濃度を測定し、生物学的製剤の非存在下および存在下での培養後のL−KYN濃度を比較した。結果を図6に示す。
[総合評価]
上記3つの評価に関して、表1〜3に示すスコア化を行い、各患者における合計スコアを算出した。結果を表4に示す。
各患者に関して、得られた合計スコアと各生物学的製剤による治療開始から3か月後におけるACR/EULAR寛解基準であるSimplified Disease Activity Index (SDAI)およびClinical Disease Activity Index (CDAI)との関連性を評価した。なお、SDAIは、臨床試験における基準であり、3.3以下を寛解とみなす。また、CDAIは、日常臨床における基準であり、2.8以下を寛解とみなす。結果を図7(a)および(b)に示す。
[IDO1およびIL−17の発現量比]
炎症性刺激物質および生物学的製剤の非存在下で培養した培養液中の血球を回収し、回収された血球から商品名「ISOGEN」(ニッポンジーン製)を使用してRNAを抽出した。次いで、商品名「ReverTra Ace qPCR RT−Kit」(TOYOBO製)を用いて逆転写反応を行い、cDNAを得た。得られたcDNAに関して、商品名「SsoFast EvaGreen supermix with low ROX」(Bio−Rad製)を用い、製品名「7500/7500Fast Real−Time System」(Applied Biosystem製)にてReal−time PCR解析を行って、IDO1およびIL−17AのmRNAの定量を行った(内部標準:GAPDH、n=7)。また、対照として、上記と同様にして健常者の血球中のIDO1およびIL−17AのmRNAの定量を行った。使用したプライマーの配列を表5に示す。
一方、EULAR改善基準により患者群を表6に示すとおり、DAS28−ESRで治療反応性ごとにGood responder(治療反応性が良好な患者)、Moderate responder(治療反応性が中程度の患者)、No responder(治療反応性が低い患者)に分類した。次いで、各分類におけるIDO1のmRNA発現量およびIL−17AのmRNA発現量を健常者における発現量(コントロール)を100%として評価した。結果を図8(a)および(b)に示す。また、各分類におけるIDO1とIL−17との発現量比(IDO1/IL−17)を図8(c)に示す。
図7(a)および(b)に示されるとおり、生物学的製剤の投与前の総合評価における合計スコアと投与後3か月におけるSDAIおよびCDAIとはそれぞれ高い相関性を有する。このことから、本発明の方法によって、生物学的製剤の投与前にその有効性を予測可能であることがわかる。さらに、図8(c)に示されるとおり、生物学的製剤投与前のIDO1 mRNA発現量が高く、IL−17A mRNA発現量が低い患者群、すなわち、IDO1発現量/IL−17発現量比が高い患者群がGood responderとなる傾向が認められる。このことから、生物学的製剤投与前のIDO1発現量/IL−17発現量比が高い患者に対して生物学的製剤が有効であると予測可能であることがわかる。よって、上記総合評価に基づく予測とIDO1発現量/IL−17発現量比に基づく予測とを組み合わせることにより、生物学的製剤の有効性をより確実に予測可能となる。
[参考例1]
健常者群(n=65)と関節リウマチ患者群(n=30)において、血中L−KYN濃度および血中L−TRP濃度を測定した。結果を図9(a)および(b)に示す。
図9(a)および(b)に示されるとおり、関節リウマチ患者群における血中L−TRP濃度は健常者群と比較して減少傾向を示し、血中L−KYN濃度は健常者群と比較して有意な増加が認められた(p<0.001)。また、別途、未処置全血培養時の血球内のIDO1 mRNA発現量を測定したところ、関節リウマチ患者群における血球内のIDO1 mRNA発現量が健常者群と比較して有意に増加した。これらの結果から、関節リウマチ患者においては、局所のIDO1活性のみならず、末梢循環血においてもIDO1が誘導されていることが確認された。
[参考例2]
実施例1における生物学的製剤に対する反応性の評価において培養後に凍結保存した血球中のIDO1 mRNA発現量をリアルタイムPCRで測定し、L−KYN濃度の増大率が小さい群(生物学的製剤の存在下培養でのL−KYN濃度/非存在下培養でのL−KYN濃度<0.95)およびL−KYN濃度の増大率が大きい群(生物学的製剤の存在下培養でのL−KYN濃度/非存在下培養でのL−KYN濃度≧1)におけるIDO1 mRNA発現量を生物学的製剤の非存在下培養における発現量(コントロール)を100%として評価した。結果を図10に示す。
図10に示されるとおり、L−KYN濃度の増大率が小さい群において、血球内IDO1 mRNA発現量が低下していた(p<0.05)。このことから、生物学的製剤によるL−KYN産生量の抑制率の差に、IDO1が関与していることがわかる。
[参考例3]
炎症性刺激物質に対する反応性の評価におけるL−KYN濃度の増大率と、DAS28−ESRでの分類による生物学的製剤による治療開始後3か月における疾患活動性との関連性を調べた。結果を図11に示す。
図11に示されるとおり、疾患活動性が高い群(DASスコア≧5.1)ではLPS刺激によるL−KYN増大率が小さく、LPSに対する反応性が低い傾向が見られた。一方、疾患活動性が低い群(DASスコア<3.2)では、LPS刺激によるL−KYN増大率が大きく、LPSに対する反応性が高い傾向が見られた。
本発明の予測方法は、医療分野において好適に利用され得る。

Claims (9)

  1. 関節リウマチ患者から単離された末梢血を炎症性刺激物質の存在下および非存在下でそれぞれ全血培養した培養液におけるインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ活性を指標にして炎症性刺激物質に対する反応性を評価すること、
    関節リウマチ患者から単離された末梢血を生物学的製剤の存在下および非存在下でそれぞれ全血培養した培養液におけるインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ活性を指標にして生物学的製剤に対する反応性を評価すること、
    関節リウマチ患者から単離された末梢血を炎症性刺激物質の存在下であって、生物学的製剤の存在下および非存在下でそれぞれ全血培養した培養液におけるインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ活性を指標にして生物学的製剤による炎症抑制性を評価すること、および
    炎症性刺激物質に対する反応性、生物学的製剤に対する反応性および生物学的製剤による炎症抑制性の総合評価に基づいて関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性の予測を行うこと、
    を含む、関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性を予測する方法。
  2. 前記関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性の予測が、炎症性刺激物質に対する反応性、生物学的製剤に対する反応性、および生物学的製剤による炎症抑制性のそれぞれについて、応答感度が高いほど高スコアとなるようにスコア化し、それらの合計スコアが高いほど生物学的製剤が有効であると予測することによって行われる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記炎症性刺激物質が、リポ多糖である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ活性が、培養液中のL−キヌレニン濃度に基づいて決定される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 関節リウマチ患者から単離された末梢血由来の血球におけるインドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼおよびサイトカインの発現量を測定すること、および
    インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼおよびサイトカインの発現量比に基づいて関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性を予測すること、
    をさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記サイトカインが、IL−17である、請求項5に記載の方法。
  7. 炎症性刺激物質の非存在下で全血培養した培養液におけるL−キヌレニン濃度に対する炎症性刺激物質の存在下で全血培養した培養液におけるL−キヌレニン濃度の比率が500%未満である関節リウマチ患者における生物学的製剤の有効性を予測する、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記生物学的製剤が、TNF阻害剤、IL−6阻害剤またはT細胞阻害剤である、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記スコア化が、以下の表1〜表3に基づいて行われ、その合計スコアが6以上の場合に生物学的製剤が有効であると予測する、請求項2から8のいずれかに記載の方法。
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