JP6147608B2 - X線回折を利用した皮膚浸透性評価法 - Google Patents

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Description

本発明はX線回折を利用した皮膚浸透性評価法に関し、更に詳細には、被験物質の皮膚浸透の可否を、皮膚角層のX線回折測定により評価する皮膚浸透性評価法に関する。
皮膚の最外層である角層は生体と環境との境界にあり、生体内からの水分の蒸散を抑え、外部からの異物の侵入を防ぐバリアとして重要な役割をはたす組織である。角層は角層細胞と角層細胞間脂質からなっており、一般的に角層細胞がレンガのように積み重なり、その間を角層細胞間脂質がモルタルのように埋め尽くした構造をとっており、レンガ・モルタルモデルと呼ばれている。角層細胞の内部にはアミノ酸などの天然保湿因子が含まれている。角層細胞間脂質はセラミド・遊離脂肪酸・コレステロールなどの多成分から構成される脂質分子集合体である。角層のバリア機能を主に担っているのは角層細胞間脂質であり、アセトン/エーテルなどの有機溶媒処理によって角層中から細胞間脂質を抽出すると、バリア機能が低下し角層水分量の低下や皮膚浸透性の向上が起こることなどが報告されている(非特許文献1,2参照)。
物質の主な皮膚浸透ルートには、毛包や汗腺等の付属器官を介する経付属器官ルートと角層実質を透過する経角層ルートの2通りが考えられる。付属器官を介した皮膚透過は、皮膚実質を通るより速やかであるが、皮膚表面積に対する付属器官の割合は0.1%ほどであるため、付属器官の寄与率は多くの物質において無視し得る。物質が皮膚実質を通る場合は、皮膚浸透の最大のバリアである角層中を拡散する必要がある。角層を通る経路をさらに分類すると、角層細胞内を通る経細胞ルートと細胞間隙(細胞間脂質)を通る細胞間ルートがある。一般的に細胞間ルートは、物質の移動する道のりは長くなるが透過抵抗は細胞実質を通るより小さく、多くの研究者は細胞間ルートが物質浸透の主たる経路と考えている。また、浸透させる物質の性質によって細胞間ルートのどの部分を通るかも異なっており、一般的に、水溶性物質は細胞間脂質が形成するラメラ構造の層間に存在する水の部分を、脂溶性物質は細胞間脂質の疎水鎖部分を通ると考えられる。以上のことをふまえて、ある被験物質の皮膚浸透性を考えると、皮膚を通過して被験物質を皮膚内部へ浸透させるにはバリア機能を担う角層細胞間脂質をいかに効率よく通過させるかが重要となる(非特許文献3参照)。
上記のように、バリア機能において重要な役割を担うと同時に物質の主たる浸透経路でもある角層細胞間脂質は、特徴的な周期構造をもつことが知られている。特徴的な周期構造とは、脂質分子の長軸方向への配向により現れるラメラ構造と、ラメラ方向に直交する横断面での炭化水素鎖の並びにより現れる充填構造である。角層細胞間脂質がもつラメラ構造には長周期ラメラ構造(約13nm)と短周期ラメラ構造(約6nm)があり、充填構造には六方晶(格子定数0.42nm)と斜方晶(格子定数0.38nmおよび0.42nm)がある。これらの周期構造は、X線回折実験により測定することができ、小角X線回折からはラメラ構造の情報が、広角X線回折からは充填構造の情報が得られる。
一方、一般的な物質の皮膚浸透性試験として、皮膚を拡散セル(フランツ型セルやside by sideセルなど)に挟み込みんだ後に皮膚の角層側から被験物質を投与し、一定時間後の皮膚内部あるいは皮膚下層(リザーバー)に移行した被験物質量を液体クロマトグラフィーなどで定量する方法(例えば、特許文献1〜5)や、市販されている培養皮膚の培養カップ内へ被験物質を一定時間投与し、カップ下部へ移行した被験物質量を定量する方法(例えば、特許文献6)、被験物質を一定時間投与した皮膚の角層をテープストリッピングで剥離し、剥離した角層中の被験物質を定量する方法(例えば、特許文献7)、被験物質と同時に蛍光色素を投与し、皮膚の凍結切片を共焦点レーザー顕微鏡などで観察する方法(例えば、特許文献8,9)、被験物質と同時に蛍光色素を投与した皮膚の角層をテープストリッピングで剥離し、剥離した角層の蛍光強度を測定する方法(例えば、特許文献10)などがよく用いられている。これら従来法は簡便であり、皮膚浸透性評価において広く利用されている。しかしながらこれらの手法は、被験物質の定量値や蛍光強度だけを指標に皮膚浸透性を評価するため、被験物質が角層細胞間脂質に及ぼす影響まで評価することはできない。
特開2012−229100公報 特開平8−3073公報 特開平10−53527公報 特開2007−130076公報 特開2000−142493公報 特開2011−200224公報 特開2008−94809公報 特開2008−297241公報 特開2008−88133公報 特開2011−201848公報
表面科学, Vol.28, No.3, 164−168(2007) 放射光, Vol.21, No.6, 297−304(2008) 薬学雑誌, Vol.129, No.12, 1453−1458(2009)
そこで本発明では、X線回折測定により、一般的な皮膚浸透性試験法では測定することのできなかった被験物質投与による皮膚角層細胞間脂質の構造変化を捉えると同時に、被験物質の皮膚浸透の可否を分子レベルで測定可能な皮膚浸透性評価法を提供することを目的とする。
本発明者らは、これらの課題について鋭意検討した結果、被験物質を投与した皮膚角層および被験物質を投与していない皮膚角層を対象としてX線回折測定を行い、該X線回折測定から得られた回折プロファイルの小角及び広角領域より、皮膚角層細胞間脂質のラメラ構造及び充填構造由来のピークや被験物質由来のピークから、被験物質投与の有無によるピーク面積の有意な差を検出することにより被験物質の皮膚角層への浸透の可否を評価する手法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)被験物質を投与した皮膚角層及び被験物質を投与していない皮膚角層を対象としてX線回折測定を行い、該X線回折測定から得られた回折プロファイルの小角及び広角領域における皮膚角層細胞間脂質由来のピーク及び/又は前記ピークとは別の被験物質由来のピークから、被験物質投与の有無によるピーク面積の有意な差を検出することにより被験物質の皮膚角層への浸透の可否を評価する、皮膚浸透性評価法。
(2)前記被験物質が、両親媒性物質を含む被験物質であることを特徴とする(1)記載の皮膚浸透性評価法。
(3)前記皮膚角層が、哺乳類由来の皮膚角層又は培養皮膚角層から選択される1種であることを特徴とする(1)又は(2)記載の皮膚浸透性評価法。
本発明に記載の皮膚浸透性評価法を用いることにより、従来の皮膚浸透性試験法では測定することのできなかった被験物質投与による皮膚角層細胞間脂質の構造変化を、X線回折測定によって捉えることが可能となり、被験物質の皮膚浸透性が測定可能となった。
ヘアレスマウス皮膚角層についてX線回折測定を行い、得られた広角X線回折プロファイルの細胞間脂質の充填構造に由来するピーク(S=2.41nm−1)をガウス関数によりカーブフィッティングした例 実施例1のSDS水溶液を投与した培養皮膚角層の小角X線回折プロファイル 実施例1のSDS水溶液を投与した培養皮膚角層の広角X線回折プロファイル 実施例3のリン脂質ディスク状ミセル分散液を投与した培養皮膚角層の小角X線回折プロファイル 実施例3のリン脂質ディスク状ミセル分散液を投与した培養皮膚角層の広角X線回折プロファイル 比較例1のリン脂質エマルションを投与した培養皮膚角層の小角X線回折プロファイル 比較例1のリン脂質エマルションを投与した培養皮膚角層の広角X線回折プロファイル
以下、本発明の構成を更に詳細に説明する。
本発明に記載の皮膚浸透性評価法は、哺乳類由来の皮膚角層もしくは培養皮膚角層を測定対象として、被験物質を投与した場合としていない場合についてX線回折測定を行うものである。本発明に記載の皮膚浸透性評価法は、被験物質投与による皮膚角層細胞間脂質の構造変化を、X線回折測定によって捉えることで、被験物質の皮膚浸透の可否を分子レベルで測定できる。
本発明で用いる皮膚角層としては、哺乳類由来の皮膚角層、培養皮膚角層から選択される1種を用いることができる。哺乳類由来の皮膚角層としては、特に限定されるものではないが、例えばヒト、ブタ、マウス、モルモット由来の皮膚角層が挙げられる。市販されている哺乳類由来の皮膚角層としては、摘出ヒト皮膚(BIOPREDIC International社)やYucatan Minipig皮膚(日本チャールズ・リバー社)などが挙げられる。培養皮膚角層としては、特に限定されるものではないが、例えば市販されている培養皮膚としてTESTSKIN LSE−high(東洋紡ライフサイエンス)、LabCyte EPI−MODEL(J−TEC)、Epiderm(クラボウ)、Episkin(SkinEthic)が挙げられる。
上述のような皮膚を用い、角層表面側から被験物質を投与する。被験物質を投与する方法として、例えば皮膚を拡散セル(フランツ型セルやside by side型セル)に挟み込み、角層表面側から被験物質を投与することができる。また、皮膚角層上にアッセイリングを置き、その内部に被験物質を投与することもできる。一定時間投与した後に被験物質の残渣を除去し、必要に応じて皮膚角層表面を洗浄して皮膚を回収する。
回収した皮膚は、トリプシン処理などにより角層を剥離し、乾燥させる。乾燥後に精製水で膨潤させ、角層水分量を約20%に調整して測定サンプルとする。
本発明で用いる被験物質は、主に化粧品及び/又は医薬品に利用できる成分を対象とし、そのまま投与することもできるし、水、油性成分、各種溶媒などに溶解もしくは分散物として、更に乳化製剤として投与することもできる。また、化粧品、例えば抗老化化粧品、美白化粧品、保湿化粧品、サンスクリーン化粧品、ボディ用化粧品、トイレタリー化粧品、医薬品製剤などを塗布することができるほか、食器用洗剤や洗濯用洗剤、園芸用農薬等も対象となりうる。
化粧品及び/又は医薬品に利用できる成分のうち、生理活性成分としては、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、アスコルビン酸リン酸二ナトリウム、アスコルビン酸グルコシド、モノステアリン酸アスコルビル、モノパルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸、dl−α−トコフェリルリン酸ナトリウム、アルブチン、エラグ酸、カミツレエキス、コウジ酸、リノール酸、トラネキサム酸及びその誘導体、ルシノールなどの美白剤、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、アミノ酸、糖類、ムコ多糖、セラミド、ステロールおよびその誘導体、リン脂質およびその誘導体などの肌荒れ防止剤、各種ビタミン類やその誘導体、トコフェロール、酢酸トコフェロール、β−カロテン、カテキン、ポリフェノールなどの抗酸化剤、カフェイン、ヒドロキシクエン酸パルミテートなどのスリミング剤などが挙げられる。また、前記生理活性成分の他に、通常化粧品及び/又は医薬品に用いられる成分、例えば界面活性剤、油剤、金属キレート剤、エタノール、多価アルコール、防腐剤、pH調整剤、香料、色素、抗酸化剤、紫外線吸収剤等を用いることもできる。
皮膚角層細胞間脂質は脂質分子集合体であり、脂質分子が形成するラメラ構造の層間に水分子が存在する。そのため、両親媒性を有する物質は角層細胞間脂質と相互作用しやすく、X線回折による皮膚浸透性評価の被験物質としてより好ましい。
化粧品及び/又は医薬品に利用できる成分のうち、両親媒性物質としては、dl−α−トコフェリルリン酸ナトリウム、モノステアリン酸アスコルビル、ヒドロキシクエン酸パルミテート、リン脂質およびその誘導体等の生理活性成分のほか、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。
両親媒性物質は、水中に単分散した状態でも、ミセルを形成した状態でも、ディスク状ミセルを形成した状態でも、二分子膜ベシクルを形成した状態でも被験物質として用いることが可能であり、構造体の形態に限定されない。
X線回折測定には、皮膚の角層細胞間脂質構造を測定可能な公知の装置を特に制限なく用いることができるが、好ましくは、X線の光源として輝度が高いNANO−Viewer(リガク)やSAXSpace(アントンパール)が良く、さらに好ましくは、X線の光源として輝度が高く指向性の良い放射光(シンクロトロン光)を用いるとよい。例えば、SPring−8のBL40B2や、あいちシンクロトロン光センターのBL8S3などが挙げられる。
皮膚角層のX線回折測定により得られるX線回折像は、標準試料にベヘン酸銀(格子定数d=5.838nm)を用いて一次元化する。即ち、横軸を散乱ベクトルS(=q/2π)、縦軸をピーク強度としてプロットして、X線回折プロファイルを得る。一次元化する方法として、例えばCrystalClear(リガク)、SAXSquant(アントンパール)、FIT2D(ESRF)などの市販の解析ソフトを用いることができる。
X線回折プロファイルは、散乱ベクトルS=0.05〜0.6nm−1の範囲を小角領域、散乱ベクトルS=1.6〜2.8nm−1の範囲を広角領域とした。小角領域からは、角層細胞間脂質のラメラ構造に由来するピークが得られる。また、広角領域からは、角層細胞間脂質の充填構造に由来するピークが得られる。
具体的には、小角領域では、S=0.17nm−1、S=0.22nm−1、S=0.27nm−1、S=0.29nm−1などに角層細胞間脂質のラメラ構造に由来するピークがみられる。また、広角領域では、S=2.41nm−1やS=2.61nm−1に角層細胞間脂質の充填構造に由来するピークがみられる。
実施例にて後述するように、本発明者らは、被験物質を投与した皮膚角層および被験物質を投与していない皮膚角層を対象としてX線回折測定を行い、該X線回折測定から得られた回折プロファイルの小角及び広角領域における皮膚角層細胞間脂質由来のピーク及び/又は前記ピークとは別の被験物質由来のピークから、被験物質投与の有無によるピーク面積の有意な差を検出することにより被験物質の皮膚角層への浸透の可否を評価できることを見出した。
即ち、皮膚角層細胞間脂質のラメラ構造及び充填構造由来のピークは、被験物質が浸透していれば、被験物質を投与した皮膚角層と被験物質を投与していない皮膚角層でピーク面積が変化する。また、被験物質を投与した皮膚角層と投与していない皮膚角層で皮膚角層細胞間脂質のラメラ構造及び充填構造由来のピークのピーク面積に変化がなかった場合でも、被験物質が浸透していれば、被験物質を投与していない皮膚角層で存在しなかった被験物質由来の新たなピークが出現する。
従って、被験物質を投与した皮膚角層と被験物質を投与していない皮膚角層のX線回折プロファイルを比較し、皮膚角層細胞間脂質のラメラ構造及び充填構造に由来するピークのピーク面積が変化した場合及び/又は被験物質を投与していない皮膚角層で存在しなかった新たなピークが出現した場合に、被験物質が皮膚角層へ浸透したと判断することができる。
被験物質を投与した皮膚角層と被験物質を投与していない皮膚角層のX線回折プロファイルを比較し、皮膚角層細胞間脂質のラメラ構造及び充填構造に由来するピークのピーク面積が変化した場合には、必要に応じてピークのカーブフィッティングをしても良い。具体的には、被験物質を投与した皮膚角層と被験物質を投与していない皮膚角層のX線回折プロファイルについて、皮膚角層細胞間脂質のラメラ構造及び/又は充填構造に由来するピークのカーブフィッティングを行い、得られたピーク面積について、被験物質を投与した皮膚角層と被験物質を投与していない皮膚角層で比較を行い、有意な変化があった場合に被験物質が皮膚角層へ浸透したと判断することができる。例えば、被験物質投与群と未投与群の各3試料についてピーク面積を計算し、有意差検定を行ってp<0.05であれば有意差有りと判断する。カーブフィッティングに用いられる関数形としては、ガウス関数やローレンツ関数などが挙げられる。例えば、ガウス関数は以下の数式(1)で表わされる。
前記の式(1)を用いてカーブフィッティングした例を、測定されたX線回折プロファイルとともに図1に示す。同図におけるS=2.41nm−1のピークは、ヘアレスマウス皮膚角層細胞間脂質の充填構造に由来するピークである。このカーブフィッティング結果より、以下の数式(2)を用いてピーク面積を計算することができる。
被験物質を投与した皮膚角層と被験物質を投与していない皮膚角層のX線回折プロファイルを比較し、被験物質を投与していない皮膚角層で存在しなかった新たなピークが出現した場合には、カーブフィッティングを必ずしも必要とはせず、被験物質が皮膚角層へ浸透したと判断することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらに限定されるものではない。
アニオン性界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム水溶液の皮膚浸透性試験
1.試験の概要
洗浄剤として用いられるアニオン性界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(以下、SDS)の水溶液を投与した三次元培養ヒト皮膚モデルと、何も投与していない三次元培養ヒト皮膚モデルの皮膚角層についてX線回折測定を行い、SDSの皮膚浸透性を評価した。
2−1.実験方法(被験物質調製)
SDS(ドデシル硫酸ナトリウム、和光純薬)0.5gを、精製水99.5gに溶解し、SDS水溶液とした。
2−2.実験方法(測定試料調製)
角層が形成されている三次元培養ヒト皮膚モデル(TESTSKIN LSE−high、東洋紡ライフサイエンス)を購入し、購入したモデルの使用方法に従い、培地から取り出した。透過有効面積0.79cmでレシーバー容量5mLの縦型拡散セル(パーメギア)にレシーバー液としてPBS(−)を満たし、レシーバー液を32℃で保温して、角層表面側からSDS水溶液300μLを投与した。24時間経過後、SDS水溶液の残渣を回収し、角層表面側を200μLのPBS(−)で5回洗浄した。拡散セルから皮膚モデルを回収し、トリプシン処理により角層を剥離した。剥離した角層は凍結乾燥処理により一晩乾燥させた。その後、乾燥した角層を精製水に浸して膨潤させ、角層重量に対する水分量が20%になるように水分量を調整した。角層水分量が20%となったら、角層をキャピラリーチューブ(φ1mm;W.Muller)に詰め、測定試料とした。何も投与していない三次元培養ヒト皮膚モデルは、購入したままの三次元培養ヒト皮膚モデルの角層を剥離し、上記と同様の手順にて測定試料とした。
2−3.実験方法(X線回折測定)
SPring−8のBL40B2を用い、小角・広角X線回折同時測定を行い、角層細胞間脂質のラメラ構造と充填構造を同時に評価した。測定条件は、X線の波長0.1nm、X線のエネルギー15keV、カメラ長500mmとし、カメラはRAXIS(リガク)、イメージングプレートは300×300mmを使用した。得られたX線回折像は、FIT2D(ESRF)を用いて一次元化した。即ち、標準試料にベヘン酸銀(格子定数d=5.838nm)を用い、横軸を散乱ベクトルS(=q/2π)、縦軸をピーク強度としてプロットして、X線回折プロファイルを得た。
3.結果
被験物質としてSDS水溶液を投与した三次元培養ヒト皮膚モデルの角層と、何も投与していない三次元培養ヒト皮膚モデルの角層について、得られた小角X線回折プロファイルを図2に、広角X線回折プロファイルを図3に示した。被験物質の投与の有無によるX線回折プロファイルの差をみると、被験物質の投与により、小角領域のS=0.257nm−1やS=0.517nm−1、広角領域のS=2.29nm−1、S=2.46nm−1に新たな回折ピークが出現した。なお、これらのピーク面積の差は有意であった。以上より、SDSが三次元培養ヒト皮膚モデルの角層内部へ浸透していることが示された。
dl−α−トコフェリルリン酸ナトリウムの水溶液又はそれを含有する乳化製剤の皮膚浸透性試験
1.試験の概要
皮膚美白剤及び肌荒れ防止剤であるdl−α−トコフェリルリン酸ナトリウム(以下、VEPNa)の溶液を投与した三次元培養ヒト皮膚モデルと、何も投与していない三次元培養ヒト皮膚モデルの皮膚角層についてX線回折測定を行い、VEPNaの皮膚浸透性を評価した。
2−1.実験方法(被験物質調製)
VEPNa(ビタミンEリン酸ナトリウム、昭和電工)2gと1,2−ペンタンジオール(ハイドロライト−5、Symrise)1gをよく混合し、精製水97gを少量ずつ添加して溶解させ、VEPNa溶液とした。
2−2.実験方法(測定試料調製)
角層が形成されている三次元培養ヒト皮膚モデル(TESTSKIN LSE−high、東洋紡ライフサイエンス)を用い、実施例1と同様の手順にて測定試料を調製した。
2−3.実験方法(X線回折測定)
実施例1と同様の方法にてX線回折測定を行い、X線回折プロファイルを得た。
3.結果
被験物質の投与の有無によるX線回折プロファイルの差をみると、被験物質の投与により、小角領域のS=0.223nm−1に新たな回折ピークが出現し、ラメラ構造に由来するS=0.292nm−1の回折ピークのピーク面積が低下した。また広角領域では、充填構造に由来するS=2.41nm−1やS=2.61nm−1の回折ピークのピーク面積が低下した。なお、これらのピーク面積の差は有意であった。以上より、VEPNaが三次元培養ヒト皮膚モデルの角層内部へ浸透していることが示された。
ジパルミトイルホスファチジルコリン及びジヘキサノイルホスファチジルコリンからなるリン脂質ディスク状ミセル分散液の皮膚浸透性
1.試験の概要
肌荒れ防止剤や浸透促進剤として用いられるリン脂質の1種であるジパルミトイルホスファチジルコリン(以下、DPPC)及びジヘキサノイルホスファチジルコリン(以下、DHPC)からなるディスク状ミセル分散液を投与した三次元培養ヒト皮膚モデルと、何も投与していない三次元培養ヒト皮膚モデルの皮膚角層についてX線回折測定を行い、DPPC及びDHPCの皮膚浸透性を評価した。
2−1.実験方法(被験物質調製)
DPPC(Avanti Polar Lipids社)0.2125gとDHPC(Avanti Polar Lipids社)0.0375gをクロロホルムに溶解し、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去して脂質薄膜を作製した。その後脂質薄膜へ精製水10gを加え、超音波照射及び凍結・融解を液が透明になるまで繰り返した。液が透明になったらフィルターろ過してディスク状ミセル分散液とした。
2−2.実験方法(測定試料調製)
角層が形成されている三次元培養ヒト皮膚モデル(TESTSKIN LSE−high、東洋紡ライフサイエンス)を用い、実施例1と同様の手順にて測定試料を調製した。
2−3.実験方法(X線回折測定)
実施例1と同様の方法にてX線回折測定を行い、X線回折プロファイルを得た。
3.結果
被験物質としてリン脂質ディスク状ミセル分散液を投与した三次元培養ヒト皮膚モデルの角層と、何も投与していない三次元培養ヒト皮膚モデルの角層について、得られた小角X線回折プロファイルを図4に、広角X線回折プロファイルを図5に示した。被験物質の投与の有無によるX線回折プロファイルの差をみると、被験物質の投与により、小角領域のS=0.156nm−1、S=0.165nm−1、S=0.311nm−1、S=0.332nm−1などに、広角領域のS=2.37nm−1に新たな回折ピークが出現した。なお、これらのピーク面積の差は有意であった。以上より、リン脂質ディスク状ミセルを構成するDPPC及びDHPCが三次元培養ヒト皮膚モデルの角層内部へ浸透していることが示された。
非イオン性界面活性剤の二分子膜ベシクル分散液(ニオソーム分散液)の皮膚浸透性試験
1.試験の概要
トリステアリン酸ソルビタンとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(酸化エチレン付加モル数:10)から構成される非イオン性界面活性剤の二分子膜ベシクル分散液(ニオソーム分散液)を投与した三次元培養ヒト皮膚モデルと、何も投与していない三次元培養ヒト皮膚モデルの皮膚角層についてX線回折測定を行い、ニオソームの皮膚浸透性を評価した。
2−1.実験方法(被験物質調製)
トリステアリン酸ソルビタン(NIKKOL SS−30V、日光ケミカルズ)1gとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(酸化エチレン付加モル数:10)(NIKKOL HCO−10、日光ケミカルズ)9gを温めて均一にし、そこへ予め温めておいた精製水90gを少量ずつ撹拌しながら添加した。マグネティックスターラーで撹拌した後、超音波照射し、ニオソーム分散液とした。
2−2.実験方法(測定試料調製)
角層が形成されている三次元培養ヒト皮膚モデル(TESTSKIN LSE−high、東洋紡ライフサイエンス)を用い、実施例1と同様の手順にて測定試料を調製した。
2−3.実験方法(X線回折測定)
実施例1と同様の方法にてX線回折測定を行い、X線回折プロファイルを得た。
3.結果
被験物質の投与の有無によるX線回折プロファイルの差をみると、被験物質の投与により、小角領域のS=0.197nm−1に新たな回折ピークが出現し、ラメラ構造に由来するS=0.273nm−1の回折ピークのピーク面積が増加した。なお、これらのピーク面積の差は有意であった。以上より、ニオソームを構成する非イオン性界面活性剤が三次元培養ヒト皮膚モデルの角層内部へ浸透していることが示された。
(比較例1)
卵黄由来ホスファチジルコリンを用いて乳化したリン脂質エマルションの皮膚浸透性試験
1.試験の概要
肌荒れ防止剤や浸透促進剤として用いられるリン脂質である卵黄由来ホスファチジルコリン(以下、卵黄PC)を用いて乳化したリン脂質エマルションを投与した三次元培養ヒト皮膚モデルと、何も投与していない三次元培養ヒト皮膚モデルの皮膚角層についてX線回折測定を行い、卵黄PCの皮膚浸透性を評価した。
2−1.実験方法(被験物質調製)
卵黄PC(COATSOME NC−50、日油)0.5%、大豆油(大豆油YM、日清オイリオ)0.5%、Milli−Q 99%を高圧乳化処理し、リン脂質エマルションとした。
2−2.実験方法(測定試料調製)
角層が形成されている三次元培養ヒト皮膚モデル(TESTSKIN LSE−high、東洋紡ライフサイエンス)を用い、実施例1と同様の手順にて測定試料を調製した。
2−3.実験方法(X線回折測定)
実施例1と同様の方法にてX線回折測定を行い、X線回折プロファイルを得た。
3.結果
被験物質の投与の有無によるX線回折プロファイルの差をみると、被験物質の投与によって角層細胞間脂質のラメラ構造や充填構造に由来する回折ピークのピーク面積に大きな変化は見られず、また新たな回折ピークの出現もなかった(図6及び図7)。そこで、ピーク面積の差の有無を評価するため、充填構造に由来する回折ピークのフィッティングを行った。充填構造に由来するS=2.41nm−1の回折ピークについてガウス関数によりカーブフィッティングした結果を以下の表1に示す。表1に示すように投与群と非投与群のピーク面積に有意差はなく、卵黄PCは三次元培養ヒト皮膚モデルの角層内部へ浸透していないことが示された。


Claims (2)

  1. 角層表面側から両親媒性物質を含む被験物質を投与した皮膚角層及び投与していない皮膚角層を対象としてX線回折測定を行い、該X線回折測定から得られた回折プロファイルの小角及び広角領域における皮膚角層細胞間脂質由来のピーク及び/又は前記ピークとは別の被験物質由来のピークから、両親媒性物質を含む被験物質投与の有無によるピーク面積の有意な差を検出することにより両親媒性物質を含む被験物質の皮膚角層への浸透の可否を評価する、皮膚浸透性評価法。
  2. 前記皮膚角層が、哺乳類由来の皮膚角層又は培養皮膚角層から選択される1種であることを特徴とする請求項1記載の皮膚浸透性評価法。
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