JP6141679B2 - 導電性電極活物質、導電性電極活物質製造方法、及びマグネシウム回収方法 - Google Patents

導電性電極活物質、導電性電極活物質製造方法、及びマグネシウム回収方法 Download PDF

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Description

本発明は、電解用電極に使用できる導電性電極活物質に関し、特に金属マグネシウムを効率的に電解回収できる導電性電極活物質に関する。
現在、国外において資源物質の輸出規制が強まっており、我が国内でも有用資源物質の回収技術が望まれている。このような有用資源物質としては、リチウム、マグネシウム、カリウム、ウラン等がある。しかし、現状では、我が国の国策による本格的な資源回収の技術開発は、リチウムにその対象が限定されており、それ以外の金属資源については未だに進展していない。
また、これら有用資源物質のうち、特にマグネシウムは、国外の低価格な製造コストを背景に100%を輸入に頼っている。マグネシウムは、自動車、電機、航空機等の基幹産業に必要不可欠な素材であることのみならず、チタン製造の還元金属や次世代二次電池の負極材料として期待されている。
マグネシウムを得る方法としては、熱還元法(ビジョン法)やダウ法が知られている。熱還元法(ビジョン法)は、焼成ドロマイトとケイ素鉄との混合物を高温真空条件下で加熱、ケイ素の還元作用により発生したマグネシウム蒸気を冷却し、凝結させるが、莫大な量の二酸化炭素の放出を伴う。ダウ法は、海水に石灰乳を加えることで水酸化マグネシウムを沈殿させ、これに塩化水素を加えることで得られる塩化マグネシウム6水和物に対して、脱水・蒸発を経て、溶融塩電解(グラファイト電極を使用)により金属マグネシウムと塩化水素を生産する電解法であり、熱還元法のように二酸化炭素を大量に放出しないものの、陽極と電解浴との間でハロゲン化炭素の気体皮膜が生成し、電極反応の妨げとなる電解現象(アノード効果や金属霧発生)が生じるという問題や、石灰石の焼成や海水の濃縮等の工程が必要とされ、大量のエネルギーが要求されることによって製造コストが嵩むという問題が依然としてある。このため、電解反応を用いたマグネシウムの回収技術において、電解現象を抑制でき、不純物の混入を抑制し、電力消費及び環境負荷を抑制できる電極(導電性電極活物質)が望まれている。
このような各種の有用資源物質の回収技術に用いられる電解法で使用される導電性電極活物質としては、例えば、ボロンの添加によって電気伝導性を発現させたダイヤモンド結晶(ボロンドープダイヤモンド;BDD)を、基材にコーティングして形成されたBDD被膜電極が、有力な電極材料として期待されている。これは、導電性をもつダイヤモンド電極が、電位窓が広く且つバックグラウンド電流が小さいという電極材料として非常に優れた特性を有しているためである。
従来の導電性ダイヤモンド電極の例としては、例えば、特許文献1において、写真廃液の活用方法に関する技術として、導電性ダイヤモンド電極を陽極に用いて、写真廃液を電解酸化処理し、処理された写真廃液を硫酸水溶液として利用することが開示されている。また、特許文献2では、導電性ダイヤモンド電極を用いて、海水中の臭素を電解回収することが開示されている。また、非特許文献1では、導電性ダイヤモンド電極を電極に用いて溶融塩電解することによって、金属マグネシウムを回収し得る可能性について示唆されている。
特開2005−221808号広報 特開2012−097334号広報
池田進、公益財団法人ソルト・サイエンス研究財団平成22年度助成研究報告集(平成24年3月)
しかし、従来の導電性電極活物質としての導電性ダイヤモンド電極は、基材に対してダイヤモンド結晶を高い密着度で充分にコーティングできるまでは至っておらず、一旦はコーティングされたダイヤモンド結晶も剥離し易く、特に、電解反応で広く用いられている板状の形状を有する電極(板状電極)の場合では、実質的には、その片面のみにしかダイヤモンド結晶がコーディングできていないという課題がある。これは、基板とダイヤモンド結晶との間に熱膨張率の差が大きいことが一因として挙げられる。また、板状電極を利用する場合には、電解の適用範囲は、片面のみがダイヤモンドでコーディングされた板状電極で使用可能な範囲(例えば、水溶液中)に限定されるという課題がある。また、水溶液中での電解は、電解用電極に回収対象の所望とする有用資源物質以外の不純物が付着しやすいことから、有用資源物質自体の純度が低下する傾向にあることのみならず、媒体として水が介在することにより金属が回収できないという課題がある。
本発明は、前記課題を解消するためになされたもので、基材に対してダイヤモンドが高い密着度で充分にコーティングされた電解特性に優れた導電性電極活物質を提供することを目的とする。さらに、当該導電性電極活物質を用いた有用資源物質の回収方法、特に、電力消費及び環境負荷を抑制したマグネシウム回収方法を提供することを目的とする。
本発明に係る導電性電極活物質は、基材の表面に数百μmオーダーの凹凸形状で形成される基礎凹部と、前記基礎凹部上に数十μmオーダーの凹凸形状で形成される微細凹部とを含み、前記基礎凹部及び微細凹部に形成されたダイヤモンド結晶により、当該基材の表面が被膜されているものである。このように本発明によれば、基材表面に前記基礎凹部及び、基礎凹部上に微細凹部が形成されていることから、投錨効果によって、微細凹部がダイヤモンド結晶成長の起端となって結晶を確実に開始させ、成長した結晶が基礎凹部に確実に固定されることとなり、基材の表面に対してダイヤモンド結晶を迅速且つ安定強固に支持され、基材に対して極めて高い密着度でダイヤモンド結晶が充分にコーティングされたものとなる。このように基材に対して極めて高い密着度でコーティングされたダイヤモンド結晶によって、電解電極として優れた電解特性が得られることとなり、また板状電極の場合でもその両面にダイヤモンド結晶が緻密にコーディングされることとなり、各種の有用資源物質の電解回収に使用することができる。
また、本発明に係る導電性電極活物質は、前記基材が、モリブデンまたはグラファイトであるものである。このように本発明によれば、電極としての特性に優れたモリブデンまたはグラファイトを基材に用いることから、当該基材にダイヤモンド結晶がコーティングされることにより高い導電性が得られることとなり、当該導電性電極活物質を用いて電力消費及び環境負荷を抑制した各種の有用資源物質の電解回収に使用することができる。
また、本発明に係るマグネシウム回収方法は、前記導電性電極活物質から構成された溶融塩電解用電極を陰極に用いて、溶融塩電解によりマグネシウム塩化物から金属マグネシウムを回収するマグネシウム回収工程を含むものである。このように、前記導電性電極活物質から構成された溶融塩電解用電極を陰極に用いて、イオン性の固体を高温にて溶融させて電解するという溶融塩電解を行うことから、ダイヤモンド結晶が緻密にコーディングされた溶融塩電解用電極(例えば、板状電極であっても両面にわたり充分にダイヤモンド結晶がコーディングされる)によって、水溶液中で行う電解よりも不純物が少ない溶融塩電解を充分に行えることとなり、水溶液中での電解によっては得ることができなかった金属マグネシウムを、電力消費及び環境負荷を抑制して回収することができる。
また、本発明に係るマグネシウム回収方法は、海水を濾過してにがりを得るにがり生成工程と、前記にがり生成工程により得られたにがりから低温晶析法により塩化マグネシウム水和物を得る水和物生成工程と、前記水和物生成工程により得られた塩化マグネシウム水和物に対して、塩化物を添加または塩素ガスを導入し、無水化処理し、塩化マグネシウム無水物を得る無水物生成工程とを含み、前記マグネシウム回収工程が、前記無水物生成工程により得られた塩化マグネシウム無水物を、前記溶融塩電解用電極を用いて溶融塩電解し、金属マグネシウムを回収するものである。このように、本発明に係るマグネシウム回収方法は、海水を原料として溶融塩電解により金属マグネシウムを回収することから、無尽蔵な原料と電解効率の高い溶融塩電解とを組み合わせて金属マグネシウムが得られることとなり、従来の場合、例えば水溶液電解を適用する場合では得られなかった金属マグネシウムを、低コストで高純度且つ大量に回収することができる。
また、本発明に係る導電性電極活物質製造方法は、基材の表面に対して、数百μmオーダーの凹凸形状から構成される基礎凹部を形成させる基礎凹部形成工程と、前記粗間隙形成工程により前記基礎凹部が形成された前記基材の表面に対して、さらに、数十μmオーダーの凹凸形状から構成される微細凹部を形成させる微細凹部形成工程と、前記基礎凹部及び微細凹部が形成された前記基材の表面に対して、ダイヤモンド結晶を結晶成長させる結晶成長工程を含み、前記ダイヤモンド結晶により前記基材の表面が被膜された導電性電極活物質を得るものである。このように、本発明に係る導電性電極活物質製造方法は、基材の表面に対して、数百μmオーダーの凹凸形状から構成される基礎凹部と、当該基礎凹部が形成された前記基材の表面に、さらに、数十μmオーダーの凹凸形状から構成される微細凹部を形成させ、当該基礎凹部及び微細凹部が形成された前記基材の表面に対して、ダイヤモンド結晶を結晶成長させることから、投錨効果によって、微細凹部がダイヤモンド結晶成長の起端となって結晶を確実に開始させ、成長した結晶が基礎凹部に確実に固定されることとなり、基材の表面に対してダイヤモンド結晶を迅速且つ安定強固に支持され、基材に対して極めて高い密着度でダイヤモンド結晶が充分にコーティングされた導電性電極活物質を得ることができる。このように基材に対して極めて高い密着度でコーティングされたダイヤモンド結晶によって、電解電極として優れた電解特性を有する導電性電極活物質を得ることができる。
本発明に係る海水からの金属マグネシウムの回収方法についてのフローチャート及び詳細なフローチャートを示す。 グラファイト下地基材とモリブデン下地基材に対する各々の傷つけ処理、及び成膜プロセスを模式的に示す。 (a)グラファイトの下地基材に対して傷つけ痕跡のSEM像、(b)一段階傷つけ処理直後のSEM像、及び(c)二段階傷つけ処理後に成長した本発明に係るBDD被覆膜のSEM像を示す。 (a)板状の片面に成膜した本発明に係るBDD被覆膜の外観写真、(b)及び(c):グラファイト下地基材及びモリブデン下地基材の表面SEM像を示す。 (a)及び(b):二段階の傷つけ処理で得られた本発明に係るBDD被覆グラファイトのX線回折パターン及びラマンスペクトル、及び(c)本発明に係るBDD被覆電極を用いて得られたCV曲線を示す。 (a)本発明に係るBDD被覆電極を用いたCV測定における分極曲線、及び(b)電解時間(分)に対する電流密度(mA/cm)の変動を示す。 (a)本発明に係るBDD被覆電極を用いて、3.5V、4時間の溶融塩電解の精錬後に採取したMg塊の外観、(b)蛍光X線分析装置による定量分析結果、(c)得られた生成物の粉末X線回折パターンを示す。 本発明に係るBDD被覆グラファイト電極の溶融塩電解後のSEM像を示す。 (a)にがりから本発明に係るBDD被覆電極を用いた低温蒸発(50℃)の繰り返し晶析(1回目〜9回目)によって得られた結晶のX線回折パターン、及び(b)加熱時間を変化して得られた結晶のX線回折パターンを示す。
(導電性電極活物質)
本発明に係る導電性電極活物質は、基材の表面に数百μmオーダーの凹凸形状で形成される基礎凹部と、前記基礎凹部上に数十μmオーダーの凹凸形状で形成される微細凹部とを含み、前記基礎凹部及び微細凹部に形成されたダイヤモンド結晶により、当該基材の表面が被膜されるという特徴を有する。基礎凹部は、例えば、100〜500μmの凹凸形状を、例えば240番のサンドペーパーを用いて基板に研磨(パフ研磨)することにより形成することができる。また、微細凹部は、例えば、10〜50μm(例えば25μm)の凹凸形状を、例えば超音波振動(超音波傷つけ処理)又はマイクロ波(マイクロ波傷つけ処理)を基板に与えることにより形成することができる。このダイヤモンド結晶による被覆膜は、例えば、ボロンをダイヤモンド結晶にドープすることによって、ボロンドープダイヤモンド(BDD)被覆膜として使用することができる。
基板は、電極として一般に用いられているものを使うことができ、金属/非金属を問わず特に制限はされないが、例えば、モリブデンまたはグラファイトを用いることができ、特に、前記微細凹部の凹凸形状を、板状等の電極形状に依らず、例えば超音波振動やマイクロ波によって形成し易いという点からグラファイトが好ましい。
また、基礎凹部及び微細凹部において結晶成長により形成されたダイヤモンド結晶は、投錨効果(アンカー効果)によって、微細凹部がダイヤモンド結晶成長の起端となって結晶を確実に開始させ、成長した結晶が基礎凹部に確実に固定され、導電性電極活物質の基材に対して極めて高い密着度でダイヤモンド結晶が充分にコーティング(被覆)される。
このように、本発明に係る導電性電極活物質は、基材に対して極めて高い密着度でコーティングされたダイヤモンド結晶によって、電解電極として優れた電解特性を有することから、各種の有用資源物質の回収方法に利用することができる。その一例として、以下に、本発明に係る導電性電極活物質を使用した金属マグネシウムの回収方法を説明する。
(金属マグネシウムの回収)
本発明に係るマグネシウム回収方法は、上述した導電性電極活物質から構成された溶融塩電解用電極を陰極に用いて、溶融塩電解によりマグネシウム塩化物(塩化マグネシウム)から金属マグネシウムを回収するという特徴を有する。尚、本発明に係るマグネシウム回収方法では、陽極にも上記の溶融塩電解用電極を用いること、即ち、上記の溶融塩電解用電極を両極に用いる構成とすることもできる。この場合には、電極反応の妨げとなる電解現象(例えば、アノード効果による電極表面の腐食)が、上記の溶融塩電解用電極では生じ難いことから(後述の実施例参照)、従来の電解で陽極として一般に用いられているグラファイト電極(アノード効果が生じやすい)の場合と比べて、分解電圧(分極電圧)を低く設定できることとなり、従来の電解反応よりも、省エネルギーで電解反応を進行させることができる。
この溶融塩電解用電極は、公知の電極製造技術を用いて作製することができ、例えば、集電材に、上述した導電性電極活物質、結着材、及び導電材を、公知の手法により固着させて形成することができる。
溶融塩電解が水溶液電解と異なる点としては、溶媒としての水が存在せず、高温度で実施されるということが挙げられる。水溶液電解の場合では、溶媒として介在する水が電極に作用し、水素や酸素発生との競合が発生すること等により金属が回収できない。これに対して、溶融塩電解の場合では、塩化マグネシウム溶融塩に対して、水が介在することなく電解反応を行うことによって、水溶液電解では得られなかった金属マグネシウムを電解採取し得る。
塩化マグネシウム(MgCl)の電解浴から溶融塩電解を行うことによるマグネシウムの電解採取に関して、塩化マグネシウム溶融塩の電解における反応式を以下に示す。
(反応式)
MgCl2 → Mg2+ + 2Cl
塩化マグネシウム(MgCl)の電解浴は、Mg2+とClのイオンの電導体からなり、さらに、それが高温で高い運動エネルギーを持つことから、導電率は常温における水溶液の場合よりも10〜20倍程度高くなる。また、塩化マグネシウム溶融塩の理論分解電圧から、水溶液中で行う電解の場合よりもかなり広い範囲の浴電圧を用いることが可能である。すなわち、陽極では極めて貴な反応を、陰極ではきわめて卑な反応を行うことが可能となる。
このように、前記導電性電極活物質から構成された溶融塩電解用電極を陰極に用いて、溶融塩電解を行うことから、ダイヤモンド結晶が緻密にコーディングされた溶融塩電解用電極(例えば、板状電極であっても両面にわたり充分にダイヤモンド結晶がコーディングされる)によって、水溶液中で行う電解よりも不純物が少ない溶融塩電解を充分に行えることとなり、金属マグネシウムの回収を、電力消費及び環境負荷を抑制して行うことができる。
上述した金属マグネシウムの回収方法は、マグネシウム塩化物(塩化マグネシウム)を含む原料であれば、容易に金属マグネシウムを回収することができることから、その応用例として、海水から金属マグネシウムを回収することもできる。
(海水からの金属マグネシウムの回収)
以下、本発明に係る導電性電極活物質を用いた海水からの金属マグネシウムの回収方法について、図1(a)のフローチャート、及び(b)の詳細なフローチャートに沿って説明する。
先ず、海水を濾過してにがり(主成分:塩化マグネシウム)を得る(S1:にがり生成工程)。尚、海水を代替して、海水の逆浸透膜処理で排出された高濃度塩水を用いることもできる。この排出された高濃度塩水は海水(海水密度がd=1.03)の2倍程度(海水密度はd=1.07)まで濃縮されており、海水中の食塩やマグネシウムをはじめとする有用資源物質の回収やその他の物質を得るために有利である。なお、この海水の濾過により得られた造水の副産物である高濃度塩水から、純度の高い食塩(NaCl)を同時に回収することができる。
このにがり生成工程により得られた濾過液であるにがりから、低温晶析法により塩化マグネシウム水和物(MgCl2・6H2O)結晶を得る(S2:水和物生成工程)。得られた塩化マグネシウム水和物に対して、塩化物(例えば、塩化アンモニウム)を添加または塩素ガスを導入して無水化処理(脱水処理)し、塩化マグネシウム無水物(無水MgCl)を得る(S3:無水物生成工程)。この無水化処理(脱水処理)については、例えば、以下の反応を用いることができる。なお、この加熱時間については、高純度の無水MgCl結晶を得るという観点から、1時間以上であることが好ましい。
(脱水反応式)
MgCl2・6H2O + 6NH4Cl → MgCl2 + 6NH4OH + 6HCl↑
NH4OH → NH3↑ + H2O↑
得られた塩化マグネシウム無水物に対して、上述した本発明に係る溶融塩電解用電極を用いて溶融塩電解し、金属マグネシウムを回収する(S4:マグネシウム回収工程)。このような溶融塩電解の実施には、高温安定性、耐薬品性、機械的強度、導電性など優れた特性を十分に兼ね備えた電極材料が要求されており、従来の電極材料では充分に電解が行えていなかったが、本発明に係る溶融塩電解用電極によって、従来には無い優れた電解特性によって、金属マグネシウムを回収することができる。
この本発明に係る溶融塩電解用電極の優れた電解特性は、その特徴である基材表面に前記基礎凹部及び、基礎凹部上に前記微細凹部が形成されていることにより、投錨効果が得られ、微細凹部がダイヤモンド結晶成長の起端となって結晶を確実に開始させ、成長した結晶が基礎凹部に確実に固定されることとなり、基材の表面に対してダイヤモンド結晶を迅速且つ安定強固に支持され、基材に対して極めて高い密着度(付着強度)でダイヤモンド結晶が基材に対して極めて高い密着度でコーティングされていることに起因するものと推察される。
このように、本発明に係るマグネシウム回収方法は、図1(b)の詳細なフローチャートにも示されているように、海水を原料にして溶融塩電解により金属マグネシウムを回収することから、無尽蔵で安価で入手できる原料と、電解効率の高い溶融塩電解とを組み合わせることによって、金属マグネシウムが得られることとなり、従来の方法、例えば、水溶液電解を適用する方法では、媒体として水が介在することにより回収できなかった金属マグネシウムを、低コストで高純度且つ大量に回収することができる。
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(1)ボロンドープダイヤモンド(BDD)被覆膜の作製
ボロンドープダイヤモンド(BDD)被覆膜は新日本無線(株)製−NJE2917のマイクロ波プラズマCVD装置を用いて作製した。合成条件を以下の表1に示す。
マイクロ波は導波管を通して縦型の石英反応管(内径46mm)内に導入した。マイクロ波を導入することでプラズマを発生させ、基板支持台にセットした下地基材上へBDD被覆膜を析出させた。基板温度はマイクロ波の出力によって制御し、赤外放射パイロメータを用いて測定した。電極の下地基材には板状や円板状のグラファイト、モリブデンを用いた。電極の基材のサイズは円板状が25mmφ×1mm、板状が5×25×1mmであった。
(グラファイト基材)
基材(下地基材)であるグラファイトは、パフ研磨機で一段階目の傷つけ処理を両面に施した。さらに、25μmのダイヤモンド砥粒が入ったエタノール溶液中で二段階目の超音波傷つけ処理を両面に1時間施した。次に、アセトン(5分間)、エタノール(5分間)、蒸留水(5分間)の順に超音波洗浄を行った。その後、片面毎に成膜を交互に繰り返した。片面の成膜時間は35時間とした。
(モリブデン基材)
一方、基材(下地基材)であるモリブデンは、グラファイトと同様の二段階傷つけ処理を施した。その後、表側の片面へ成膜を5時間行った。成膜後の裏側の片面はグラファイトと同様に二段階傷つけ処理を施し、その後、裏側の片面への成膜を5時間施し、成膜を交互に繰り返した。
図2は、グラファイト下地基材(同図(a))とモリブデン下地基材(同図(b))に対する各々の傷つけ処理、及び成膜プロセスを模式的に示すものである。いずれの下地基材に対しても、炭素源の原料には9:1のアセトン−メタノール混合溶液を調製し、その混合溶液にボロン濃度が7×10ppmになるように三酸化ホウ素(B)を溶解させた。B不純物を含むB/C炭素源の溶解液に水素キャリアーガスを流してバブリングした。そこで発生した気化ガスを5〜25ccmの流量範囲で流した。さらに、別系列からはB/C濃度を希釈するための水素キャリアーガスを200ccm流した。これら二系列からなるキャリアーガスを混合して反応容器内へ導入した。下地基材の片面毎に成膜を繰り返した。
グラファイトの下地基材について、パフ研磨機による一段階傷つけ処理に引き続き、超音波傷つけの二段階傷つけ処理を行った結果を以下に示す。結果として、剥離の殆どないBDD被覆膜を作製することができた。
図3(a)は、グラファイトの下地基材に対して傷つけ痕跡のSEM像(走査型電子顕微鏡(SEM)装置(トプコン製、SM−200M)を使用)を示したものである。二段階の傷つけ処理を施したグラファイトの下地基材にBDD被覆膜の合成を行った。その初期段階(一段階傷つけ処理)直後のSEM像を図3(b)に示す。被覆膜合成の初期段階では傷つけ痕に沿ってダイヤモンド粒子(結晶)の析出が確認されたことから、傷つけ痕がダイヤモンド核の発生サイトとなって粒子が析出し、下地基材の傷つけ痕に析出したダイヤモンド粒子は、傷つけ痕に埋め込まれた状態で成長しているものと推察される。結果として、析出したダイヤモンド粒子(結晶)が、相互的にアンカー作用を強め合うこととなり、下地基材に対する付着強度(剥離の抑制)が高まったものと推察される。
傷つけの一段階傷つけ処理に加えて、超音波傷つけの二段階傷つけ処理を実施した。図3(c)は、二段階傷つけ処理後に成長したBDD被覆膜のSEM像を示す。ピンセットの傷つけにより確認を行ったところ亀裂や剥離は生じていなかった。パフ研磨機による傷つけの一段階傷つけ処理に加えて、超音波傷つけの二段階傷つけ処理を施すというプロセスによって、ダイヤモンド粒子(結晶)が下地基材と高い付着強度が生じることが推察され、結果として、剥離を抑えて高導電性のBDD被覆膜を作製することができたものと推察される。
上述したように、二段階の傷つけ処理を両面に施した板状のグラファイト下地基材では両面に剥離のないBDD被覆膜を成膜することができた。一方、板状のモリブデンの下地基材では、同様のオペレーションでは片面にのみBDD被覆膜が形成されるという性質があるため、片面ずつグラファイトと同様の二段階傷つけ処理を施した。
図4(a)は板状(長方形及び円盤形)の片面に成膜したBDD被覆膜の外観写真を示す。図4(b)及び(c)は、各々グラファイト下地基材及びモリブデン下地基材の表面SEM像を示す。モリブデン下地基材の場合では、片面ずつBDD被覆膜を成長させた表面・エッジ部分のSEM像を示している。下地基材がいずれの場合でも、二段階傷つけ処理を再度施すことでBDD被覆膜が得られた。また、両面を交互に繰り返して成膜を行うことによって、厚膜のBDD被覆膜が得られた。以上のことから、傷つけの一段階処理(基礎凹部を形成)に加えて、超音波傷つけの二段階処理(微細凹部を形成)を施すことから、ダイヤモンド結晶に投錨効果(アンカー効果)が生じることによって、微細凹部がダイヤモンド結晶成長の起端となって結晶を確実に開始させ、成長した結晶が確実に固定されることとなり、下地基材と高い付着強度を有し、かつ剥離を抑え、高導電性のBDD被覆膜を作製することができた。
(2)ボロンドープダイヤモンド(BDD)被覆膜の評価(X線回折とラマン分光分析による作製したBDD被覆グラファイトの評価)
上述の二段階の傷つけ処理で得られたBDD被覆グラファイトのX線回折パターンとラマンスペクトルを図5(a)及び(b)に示す。X線回折パターン(X線回折装置(理学電機製、RINT1100)を使用)では43.95゜(2θ/゜)にダイヤモンドの(111)面に対応した回折線および、下地基材のグラファイト(0004)面に対応する回折線も顕著に現れた。B/Cガス流量10ccmのラマンスペクトル(レーザー顕微ラマン分光光度計(日本分光製、NRS2100)を使用)では1334cm-1にダイヤモンドに対応するピークが顕著に現れた。一方、25ccmではアモルファス状炭素に対応するピークが1360cm-1と1580cm-1に現れていた。これらの結果から、B/Cガス流量が10ccm、反応温度が900℃の成膜条件で結晶性が良く、アモルファス成分の少ない高品質なBDD被覆膜を作製することができることがわかった。
(BDD被覆電極の電気化学特性)
上記BDD被覆膜で被膜されたBDD被覆電極の電気化学特性を評価するために、アノード極にBDD被覆モリブデン電極、カソード極に白金電極、参照電極にAg/AgClを設置し、支持電解液として0.5mol−HSO水溶液のサイクリックボルタムメトリー測定(CV測定)を行った(CV装置(北斗電工製、HSV−110)を使用)。得られたCV曲線を図5(c)に示す。アノード極では2.0ボルトの電位で酸化電流が流れ、酸素ガス発生による分極が起きた。また、カソード極では−1.0ボルトの電位で還元電流が流れ、水素ガス発生による分極が起きた。有意義な電気化学測定が可能な電位領域である電位窓は3.0ボルトであった。また、分極(分解)電圧に達するまでの微小の電流すなわち残余電流は小さいことが分かった。これらの結果から、作製したBDD被覆膜の電位窓(3.0ボルト)とこれまでに報告された文献の電位窓(2.9ボルト)の電気化学特性が同じであることが判明した。このように、広い電位窓を持ったBDD被覆膜が得られたことは水溶液電解や過酷な溶融塩電解に有用な電極材料として利用が期待できる。
(3)ボロンドープダイヤモンド(BDD)被覆電極を用いた溶融塩電解
上記得られた板状BDD被覆電極を用いて溶融塩電解を行った。真空容器内に電気炉を設置し、電気炉内にはグラファイト坩堝の電解槽を置いた。電解浴の原料には無水MgClを用いた。陽極、陰極の両極に板状グラファイト電極または、板状BDD被覆電極を設置し、参照電極には金線(Au)を使用した。アルゴン雰囲気、720℃の電解浴温度でCV(サイクリックボルタンメトリー)装置による分極曲線を測定し、電気化学的な電解挙動を調べた。電解製錬はアルゴン雰囲気下、720℃、電解電圧2.5V、3,5V、4.0Vで4時間行った。電解製錬で採取された金属Mg塊の物性(生成量、組成など)は、以下、粉末X線回折装置、蛍光X線分析装置、SEMなどを用いて評価を行った結果を示す。
グラファイトやモリブデンの下地基材に被覆したBDD電極及び、グラファイト電極の3種類を準備した。MgCl(720℃)電解浴に同一の電極を両極に設置してCV測定を行った。参照電極に金線を用いた。その分極曲線を図6(a)に示す(スキャン速度:100mV/s)。被覆したBDD電極のカソード極では−0.70V付近からマグネシウム(Mg)析出に起因する大きな還元電流が確認された。さらに、電位を−0.75Vから−0.20Vに掃引すると溶解反応に伴う酸化電流が確認された。また、アノード極では0.35VでClの発生に起因する大きな酸化電流が流れた。酸化還元の電位である電位窓は1.05Vと見積もられた。
一方、グラファイト電極では−1.20V付近まで不安定な還元電流が流れた後にマグネシウム(Mg)析出に対応する大きな還元電流が流れた。また、0.60VでClの発生に起因する大きな酸化電流が流れるが還元電流は確認されなかった。電位窓は1.80Vと見積もられた。
電極材料の違いで電位窓に差異が見られたことから、この差異は電極の仕事関数の違いや帯電粒子の影響によるものと推察される。溶融塩電解では電解浴がイオンの電導体であるために荷電粒子の移動が速くなり、水溶液電解に比べて電位窓が狭くなったと推察される。また、本発明に係るBDD電極はイオン種の吸着に対して不活性である一方で、グラファイトは表面で高い反応性を示すという傾向が、電位窓の広さに大きく関わっているものと推察される。
本発明に係るBDD電極のカソード極ではマグネシウム(Mg)の溶解反応に起因する酸化電流が流れているがグラファイト電極では流れない。これは、マグネシウム(Mg)の溶解反応が電極固有の特性によって起こることを示唆している。このことから、本発明に係るBDD電極ではマグネシウム(Mg)の析出・溶解の電解反応が可逆的に進行するのに対し、グラファイト電極では電解反応が不可逆的に進行したと考えられることから、図6(a)で示される溶融塩の電解反応は、水溶液の電解の場合と電気化学的に同様な電解挙動を示すことが示唆された。
図6(a)で示されたCV測定から、MgClの溶融塩電解採取では、グラファイト電極よりも、本発明に係るBDD電極を用いることで電力消費が抑えられた電解を行えることがわかった。カソード側で不安定な電解挙動を示すグラファイト電極に比べ、本発明に係るBDD電極では鋭い還元電流が確認されることから安定した電解採取が可能になるものと推察される。また、被覆したBDD電極では分解電圧より低い電位で電極に析出するマグネシウム(Mg)や、電極に付着するその他の無機物質を溶出させるファウリングが生じている可能性があり、これによって、電極表面の汚染物質が取り除かれているものと推察される。また、本発明に係るBDD電極は、表面の耐久性や耐食性が高いことから、極性転換に伴う電極消耗や破損リスクに対して、十分に耐え得ることができるものと推察される。
(各種電極の溶融塩電解における電流安定性)
溶融塩電解における本発明に係るBDD電極の電解安定性について確認を行った。各種電極の電解時間(分)に対する電流密度(mA/cm)の変動(印加電圧3.5V、電解浴温度720℃)を図6(b)に示す。
先ず、両極にグラファイト電極を用い、印加電圧3.5V、電解浴温度720℃の電解条件で溶融塩電解を行った。電解開始時の電流密度は420mA/cmであり、電流密度の低下は見られなかった。両極に本発明に係るBDD被覆グラファイト電極を用いた電解では電解開始時の電流密度は600mA/cmでグラファイト電極の場合と同等の電流が流れた。BDD被覆モリブデン電極においても、電解開始時の電流密度が600mA/cm程度で、その後の電流は安定して流れた。よって、本発明に係るBDD被覆膜とモリブデン基材との間では頑丈なアンカー作用が働いていることにより剥離が抑えられ、安定して電流が流れているものと推察される。
(マグネシウムの収率)
マグネシウム(Mg)の収率は以下の式により求めた。
収率 (%) = [採取したMg(/mol) / 投入したMgCl2(/mol)] × 100
以下の表2は、各種電極について、精製されたMgClを原料に溶融塩電解で採取したMg塊の収率を示している。2.5V−4hの電解において生成物の析出は確認されなかったが、3.5V−4h以上に電解電圧を挙げることで金属様の丸みのある生成物が確認された。採取した金属様の塊を秤量して収率を求めた結果、グラファイト電極よりもBDD被覆電極において収率が高くなる傾向にあることが分かった。これは図6(a)に示したCV測定の分極曲線からBDD被覆電極がグラファイト電極に比べて低い電圧で分極が起きているために電解採取したマグネシウム(Mg)の収率が増したものと推察される。4.5V−4hの電解ではBDD被覆モリブデン電極で22%の収率が得られた。一方、グラファイト電極の陰極側ではアノード効果による電極の消耗が顕著であることが分かった。
(溶融塩電解から得られた生成物の物性評価)
本発明に係るBDD被覆グラファイト電極を用いて、3.5V、4時間の溶融塩電解の精錬後に採取したMg塊の外観(a)、及び、蛍光X線分析(EDX)(蛍光X線分析(EDX)装置(島津製作所製、EDX800)を使用)による定量分析結果(b)を図7に示す。得られた生成物の塊は表面が灰色の酸化被膜で覆われているが、表面を研磨したところ銀白色の金属光沢を呈する面が現れた。これをEDX分析したところ、得られた生成物の組成は99%の高品質なマグネシウムから構成されていることが分かった。
(採取したマグネシウム塊の構造評価)
得られた生成物の粉末X線回折による回折パターンを図7(c)に示す。この回折パターンは、本発明に係るBDD被覆グラファイト電極を用いて、3.5V、4hの電解条件で採取したマグネシウム(Mg)塊の生成物について構造評価したものである。得られた結果から、当該生成物と市販の金属マグネシウム(Mg)のピークは一致していることが分かった。従って、生成物の塊はマグネシウム(Mg)であることが同定された。
(電解による電極の耐久性)
本発明に係るBDD被覆グラファイト電極の溶融塩電解後のSEM像を図8に示す。BDD被覆表面の拡大像を観察した結果、金属霧や陽極効果等の電解現象による電極表面の劣化や消耗は確認されなかった。また、BDD被覆モリブデン電極についても同様な電解劣化や消耗は観察されなかった。
(実施例2)
海水からの金属マグネシウムの回収
上記本発明に係る金属マグネシウムの回収において、原料にMgClを用いたが、このMgClは、海水から精製することによって得ることもできる。以下、本発明に係るBDD被覆電極を用いた海水からの金属マグネシウムの回収について確認した。
(低温蒸発による塩化マグネシウム6水和物の晶析)
海水の逆浸透膜処理で排出された高濃度塩水を用い、溶存量の多い金属資源物質であるマグネシウムの分離・回収技術について確認をした。この排出された高濃度塩水は海水(海水密度がd=1.03)の2倍程度(海水密度はd=1.07)まで濃縮されたものである。
高濃度塩水(海水密度d=1.07)を用い、塩化マグネシウム6水和物の回収までの精製を行った。溶解度の差を利用した蒸発晶析で最初に硫酸カルシウム2水和物の晶析物を回収し、その濾過液から塩化ナトリウム(食塩)の晶析物を回収した。その後、濾過液のにがり(海水密度d=1.25、1.7リットル)を50℃の温度で所定の海水密度に達するまで蒸発を行い、引き続き自然冷却(25℃)を行って晶析物を回収した。
上記の晶析を繰り返し行い(繰り返し晶析)、MgSO4・7H2O → MgCl2・6H2Oの順に回収した。繰り返し晶析で回収した結晶はX線回折装置(理学電機製、RINT1100)を用いて構造を評価すると共に、回収した晶析量や海水密度を測定し、繰り返し晶析で回収した結晶構造、および、晶析量と海水密度との関連性を確認した。
にがり1.7リットル(海水密度:d=1.25)から低温蒸発(50℃)の繰り返し晶析(1回目から9回目)で回収した結晶のX線回折パターンを図9(a)に示す。図9(a)のX線回折パターンでは塩化ナトリウムに起因する回折線が繰り返し晶析の1回目から4回目までに確認され、回折ピーク強度は徐々に弱まった。繰り返し晶析の1回目(晶析時の海水密度d=1.35)では280gの晶析量があり、理論収量の70%であった。繰り返し晶析の5回目以上の晶析物には塩化ナトリウムに起因する回折線は確認されなかった。また、繰り返し晶析の2回目から4回目では複数の硫酸マグネシウム水和物に起因する回折線が確認され、構造が異なる硫酸マグネシウムの水和物であることが分かった。繰り返し晶析の5回目以上ではMgCl・6HOに起因する回折線が確認された。さらに、繰り返し晶析の5回目以上(晶析時の海水密度d=1.355)では晶析総量162g(理論収量の80%)を回収することができた。回収した結晶は再晶析処理を施すことで高純度化が図れることも確認した。これらの結果、にがり溶液から低温蒸発(50℃)の繰り返し晶析で塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム7水和物、MgCl・6HOの順に効率よく回収できたことが分かった。
(溶融塩電解用の無水MgCl精製)
上記で得られたMgCl・6HOに対して、NHClを添加する以下の反応式に従う方法により脱水(無水化)を行った。
(反応式)
MgCl2・6H2O + 6NH4Cl → MgCl2 + 6NH4OH + 6HCl↑
化学両論比より過剰量のNHClを添加し、MgCl・6HOとNHClの重量比1:3として加熱時間依存性を確認した。上記反応式の反応における加熱時間を変化して得られた結晶のX線回折パターン(加熱時間:0.5h〜1h、加熱温度:450℃、重量比(MgCl6HO/NHCl):1/3)を図9(b)に示す。1時間の加熱では酸化マグネシウムに起因する回折線が弱々しく現われ、0.5時間の加熱時間では酸化マグネシウムに起因する回折線は現れなかった。無水MgClに起因する回折線は加熱時間が長くなるほどピーク強度が増大した。
上記海水から得られた無水MgClに対して、上述の実施例1と同様の手順にて、本発明に係るBDD被覆電極を用いて、上述の実施例1と同様に、金属マグネシウムを回収した。このように、無尽蔵な原料と電解効率の高い溶融塩電解とを組み合わせて金属マグネシウムが得られたことから、本発明に係るBDD被覆電極を用いることによって、従来の方法よりも低コストで高純度且つ大量の金属マグネシウムを回収できることがわかった。

Claims (3)

  1. 基材の表面に100〜500μmの凹凸形状で形成される基礎凹部と、前記基礎凹部上に10〜50μmの凹凸形状で形成される微細凹部とを含み、前記基礎凹部及び微細凹部に形成されたダイヤモンド結晶により、当該基材の表面が被膜されている導電性電極活物質から構成された溶融塩電解用電極を陰極に用いて、溶融塩電解によりマグネシウム塩化物から金属マグネシウムを回収するマグネシウム回収工程を含むことを特徴とする
    マグネシウム回収方法
  2. 請求項1のマグネシウム回収方法において、
    前記基材が、モリブデンまたはグラファイトであることを特徴とする
    マグネシウム回収方法
  3. 請求項1または請求項2のマグネシウム回収方法において、
    海水を濾過してにがりを得るにがり生成工程と、
    前記にがり生成工程により得られたにがりから低温晶析法により塩化マグネシウム水和物を得る水和物生成工程と、
    前記水和物生成工程により得られた塩化マグネシウム水和物に対して、塩化物を添加または塩素ガスを導入し、無水化処理し、塩化マグネシウム無水物を得る無水物生成工程とを含み、
    前記マグネシウム回収工程が、前記無水物生成工程により得られた塩化マグネシウム無水物を、前記溶融塩電解用電極を用いて溶融塩電解し、金属マグネシウムを回収することを特徴とする
    マグネシウム回収方法。
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