JP6141660B2 - 山留壁構築工法及びこの山留壁構築工法により構築された山留壁 - Google Patents

山留壁構築工法及びこの山留壁構築工法により構築された山留壁 Download PDF

Info

Publication number
JP6141660B2
JP6141660B2 JP2013056845A JP2013056845A JP6141660B2 JP 6141660 B2 JP6141660 B2 JP 6141660B2 JP 2013056845 A JP2013056845 A JP 2013056845A JP 2013056845 A JP2013056845 A JP 2013056845A JP 6141660 B2 JP6141660 B2 JP 6141660B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
retaining wall
superabsorbent polymer
mountain retaining
construction method
soil
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013056845A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013224572A (ja
Inventor
寛一 赤木
寛一 赤木
義正 近藤
義正 近藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Waseda University
Maguma Co Ltd
Original Assignee
Waseda University
Maguma Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Waseda University, Maguma Co Ltd filed Critical Waseda University
Priority to JP2013056845A priority Critical patent/JP6141660B2/ja
Publication of JP2013224572A publication Critical patent/JP2013224572A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6141660B2 publication Critical patent/JP6141660B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、山留壁構築工法及びこの山留壁構築工法により構築された山留壁に関するものである。
地中に構造物を施工するには、その外周に沿って山留壁を構築し、その内部を掘削して空間部を作り、その空間部に構造物を施工する工法が一般的である。従来山留壁は、ソイルセメント地中連続壁工法や鉄筋コンクリート地中連続壁工法等により構築されているが、近年ではソイルセメント地中連続壁工法が一般的である。
ソイルセメント地中連続壁工法は、掘進機により地盤を掘削しつつ、掘進機の先端部よりセメントミルクを添加しながら、掘削土とセメントミルクの混合・撹拌を行い、掘削土とセメントミルクの混合土により溝壁の安定を保ち、かつ混合土の流動性を保つことにより排泥土の排出を容易にしている。
掘削終了後は、掘進機の先端部よりセメントミルクを添加し、混合土と混合・撹拌しつつ引上げ、混合土とセメントミルクの混合体の山留壁を構築する。
山留壁の強度と止水性は、固化材であるセメントミルクが土と凝結したソイルセメントによるものである。さらに、固結した混合体の曲げ強度を補強するためにソイルセメント壁の中に芯材を挿入し、芯材とソイルセメント壁が一体となって山留壁を構築している。
近年では、排泥土の削減のために、掘削時に気泡あるいは気泡とセメントミルクを添加しつつ掘削を行い、掘削機の引上げ時に消泡剤とセメントミルクを添加しつつ混合・撹拌を行って山留壁を構築する工法が主流になりつつある(例えば、特許文献1、2を参照)。
山留壁は、構造物の施工に際し、山留壁の内部を掘削するために、土圧に対抗するための所定の強度と、地下水が山留壁から侵入しないように所定の止水性を有している。しかし、掘削底面付近や底面以深の土質が透水性の良い砂質や砂礫で、かつ地下水位が高い地盤である場合には、掘削中に山留壁の内外の水圧差によりボイリングやパイピングと呼ばれる現象が発生し、掘削底面の破壊現象が発生することがある。そのため、山留壁の深さは土圧に対抗するために必要な深さよりも深くし、不透水層である粘土層まで施工する必要がある。
土圧に対抗するために必要な深さに加え、ボイリング等の現象を防止するために、粘土層まで施工した従来の山留壁の構築概念を図3に示す。図3において、構造物を施工するのに際し、山留壁で囲まれた内部を掘削するために土圧の安定に必要な深さ(施工深度A)で山留壁の下端を留めると、山留壁の下端部が砂層や砂礫層のように透水性の大きい地層で、山留壁の内外の地下水の差圧(地下水位1−地下水位2)が大きいと、掘削底面にボイリング等の現象が発生し掘削作業ができない場合がある。
このような場合には、地下水圧の差を無くするために山留壁を粘土層(不透水層)まで施工し、地下水を遮断する必要がある。しかしながら、山留壁を粘土層(不透水層)まで施工すると、構造物の完成後においても山留壁により地下水流の遮断が継続し、そのために地下水の下流域において水位の低下(地下水位3)が継続し、往々にして地盤の沈下、構造物の沈下、井戸涸れや湧水の枯渇等が生じる場合があり、この場合には社会環境、自然環境に与える影響は大きい。特に、この構造物が地下鉄、共同溝あるいは地下の高速道路などの横長の構造物の場合はその影響がさらに大きくなる。
これらの問題を解決するために、工事終了後には山留壁の透水性を早急に回復させることが求められている。
しかしながら、一般的に使用されるソイルセメント地中連続壁や、鉄筋コンクリート地中連続壁による山留壁において透水性を回復させるためには、それらの山留壁を貫通するパイプ類を構造物の上部や下部に埋設するか、あるいは山留壁を破壊するしかないが、現実的には、このパイプ類の貫通や山留壁の破壊は困難であり、透水性の回復は困難であるのが現状である。
特許4342558号公報 特許4703575号公報
本発明は、上記のような背景から従来のソイルセメント地中連続壁工法による山留壁に起因する恒久的な地下水の遮断の問題点を解消し、工事中においては十分な止水性を保持し、工事終了後は容易に透水を回復させることを可能とする、山留壁構築工法及びこの山留壁構築工法により構築された山留壁を提供することを課題としている。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
第1に、吸水し膨潤した高吸水性ポリマー(以下、膨潤高吸水性ポリマーと称す。)を添加しつつ掘削、混合を行い、又は、膨潤高吸水性ポリマーを添加せずに掘削を行った後、膨潤高吸水性ポリマーを添加しつつ混合し、掘削土と膨潤高吸水性ポリマーの混合土からなる山留壁を所定深度まで地下に構築した後、その上部にソイルセメントによる強度と止水性を有する山留壁を地下に構築することを特徴とする山留壁構築工法である。
第2に、上記第1の発明の山留壁構築工法において、水を吸収させた膨潤高吸水性ポリマーを体積比率で掘削土の間隙の60〜140%添加しつつ混合を行う。
第3に、上記第1又は第2の発明の山留壁構築工法において、膨潤高吸水性ポリマーが、デンプン系、セルロース系及び合成ポリマー系から選ばれる少なくとも1種である。
第4に、上記第1から第3の発明の山留壁構築工法において、掘削及び膨潤高吸水性ポリマーの添加、混合を、柱列式施工法又は等厚式施工法で行う。
第5に、上記第1から第4の発明の山留壁構築工法において、山留壁の構築後に、地下水流を止めている山留壁の止水性を低下させるために、地下水流の上流側から地下水中に電解質を添加して山留壁の膨潤高吸水性ポリマーから水を放出させることにより、山留壁の透水を回復させ、山留壁中に地下水流を通過させることを特徴とする。
第6に、上記第5の発明の山留壁構築工法において、電解質が、塩化カルシウム、クエン酸、水酸化ナトリウム及び塩化ナトリウムから選ばれる少なくとも1種である。
第7に、上記第5又は第6の発明の山留壁構築工法において、地下水流の上流側に電解質を射出するための配管を設置する。
第8に、上記第1から第7の発明の山留壁構築工法により構築された山留壁であって、掘削土と膨潤高吸水性ポリマーの混合土からなる山留壁と、その上部に構築された、ソイルセメントによる強度と止水性を有する山留壁からなることを特徴とする。
本発明の山留壁構築工法によれば、膨潤高吸水性ポリマーを添加しつつ掘削、混合を行い、掘削土と膨潤高吸水性ポリマーの混合土を一体として止水性と透水性を有する山留壁を構築した後、その上部に強度と止水性を有する山留壁を構築することにより、地下水の止水に伴い、工事終了後に透水性を回復させる必要が生じた時点で、山留壁の一部の透水性を回復させることにより、地下水の下流側の水位の低下に起因する地盤沈下、構築物の沈下、井戸水の枯渇等による社会的な影響や植生等の自然環境に加わる悪影響を低減させることができる。
本発明の通常山留壁と非硬化性山留壁の施工順序を示す概略図である。 電解質濃度と吸水量の関係を示したグラフである。 従来の山留壁による構造物の施工を示した概略図である。 本発明の等厚式施工法による通常山留壁と非硬化性山留壁の施工法を示す概略図である。 膨潤高吸水性ポリマーの添加量及び塩化カルシウム添加による透水係数の変化を示したグラフである。 間隙に対する膨潤ポリマーの添加率と流動性(TF値)の関係を示したグラフである。 間隙に対する膨潤ポリマーの添加率と一軸圧縮強度の関係を示したグラフである。
本発明の山留壁は、土圧等の外圧に対抗する強度と止水性を有する山留壁(以下、通常山留壁と略称する)と、その下部に止水性を有し、止水性を排除する必要が生じたときには、電解質の添加により容易に透水性を回復させることができる山留壁(以下、非硬化性山留壁と略称する)により構成されている。
以下に、本発明の山留壁構築工法の実施形態について、図1を用いて詳細に説明する。図1に示す実施形態では、柱列式ソイルセメント地中連続壁の施工機械を使用して、通常山留壁と非硬化性山留壁を構築している。
まず、図1(1)に示すように、柱列式ソイルセメント地中連続壁施工機械の先端部より、膨潤高吸水性ポリマーを添加しつつ掘削土と混合・撹拌をし、山留壁の底部までの掘削を行い、掘削土と膨潤高吸水性ポリマーの混合土を作る。
本発明で用いる膨潤高吸水性ポリマーは、架橋構造を持つ親水性のポリマーで、自重の100倍以上の吸水性を有し、圧力をかけても離水しにくいものであり、JIS K 7223やJIS K 7224で定義づけられるものである。
このような膨潤高吸水性ポリマーとしては、例えば、合成ポリマー系、デンプン系及びセルロース系の高吸水性ポリマーを挙げることができる。これらの中でも、合成ポリマー系の高吸水性ポリマーが好ましく、特に性能とコストの両面からアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマーを好適に用いることができる。
アクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマーは、軽度に架橋した3次元網目構造を持った乾燥ゲルで、水を吸収するとカルボキシル基がゲル中にナトリウムイオンを解離し、脱イオン水なら自重の100〜1000倍にも達する膨潤度を生み出すことが知られている。解離はゲルがおかれるpHや塩濃度等の条件に依存するため、条件に応じてその他の膨潤高吸水性ポリマーを適宜選択して併用することもできる。
次に、図1(2)に示すように、掘削機を引上げながら山留壁の構築を行う。ここで、非硬化性山留壁(壁の最深部と施工深度Aの間)においては、膨潤高吸水性ポリマーを添加し、あるいは何も添加せずに、混合・撹拌をしながら施工深度Aまで引上げる。そして施工深度Aに達したところで、固化材であるセメントミルクを混合土に添加しつつ地表面まで引上げる。
即ち、掘削土と膨潤高吸水性ポリマーのみの混合土からなる非硬化性山留壁を構築し、その上部に、掘削土と膨潤高吸水性ポリマーの混合土にセメントミルクを添加し、混合・撹拌した混合体からなるソイルセメントによる通常山留壁を構築する。
非硬化性山留壁の構築では、掘削土に膨潤高吸水ポリマーを混合しつつ掘削すると、膨潤高吸水ポリマーがベアリング作用を呈し、混合土は流動性を有するが、掘削を終了し静置状態になると、強度の小さな膨潤高吸水性ポリマーは土粒子の間隙に収まり、土粒子の間隙を間詰めした状態で安定する。
間詰めに必要な膨潤高吸水ポリマーの量は、掘削土の間隙の60〜140%程度であり、経済性等を考慮した場合、膨潤高吸水ポリマーの使用量は掘削土の間隙の120%程度とするのが望ましい。
なお、非硬化性山留壁を構築する砂質土や砂礫土の場合、間隙率は40〜60%程度である。この間隙率は、工事に先立って行う地盤調査により容易に計測することができる。
また、掘削時において施工性を良くするための膨潤高吸水性ポリマーの添加量は、掘削土の間隙の40%以上が必要である。また、混合土の流動性をさらに増加させるためには、膨潤高吸水性ポリマーの添加率を増加させることにより容易に流動性を増加させることができる。
なお、静置状態において混合土は静止土圧を受け、過剰な水は混合土中から周辺の地中に侵出し、最終的には掘削土と膨潤高吸水性ポリマーの混合土となる。
本発明で使用するのに適した膨潤高吸水性ポリマーの粒度分布は最大径から微小で、かつ粘性を呈するまでの、いわゆる粒度分布が良いものが望ましい。これは最大粒径は掘削土の土粒子の間隙を間詰めするために間隙径より大径のものが望ましく、さらに土粒子と膨潤高吸水性ポリマーの間隙からの透水を減少させるためには、より小さな粒径で、かつ粘性を呈する物性を持った膨潤高吸水性ポリマーを混合したものが望ましいためである。
非硬化性山留壁の構築が完了した後、その上部(地表面から施工深度A)に通常山留壁を構築するのに際し、掘削土と膨潤高吸水性ポリマーの混合土にセメントミルクを混合すると、膨潤高吸水性ポリマーはセメントの高アルカリ性とカルシウムイオンにより水を放出し体積が減少するため、所定の強度を得ることができる。
このようにして、地上まで掘削機を引上げながら通常山留壁を構築した後、さらに、通常山留壁の強度を補強するために、図1(3)に示すように、通常山留壁の中に芯材を挿入する。これにより、本発明の非硬化性山留壁と通常山留壁の構成による山留壁を完成させることができる。
なお、本発明では図1の(1)に示す掘削時において、上記のように膨潤高吸水性ポリマーを添加しつつ掘削土と混合・撹拌をすることなく、まず、膨潤高吸水性ポリマーを添加せずに山留壁の底部まで掘削を行い、図1(2)に示す掘削機の引上げ時に膨潤高吸水性ポリマーを添加しつつ掘削土と混合・撹拌を行いながら、施工深度Aまで引上げて非硬化性山留壁の構築を行うこともできる。
この場合の膨潤高吸水性ポリマーの添加量、粒度分布は、上記の膨潤高吸水性ポリマーを添加しつつ掘削土と混合・撹拌をする場合と同様の条件である。
施工深度Aまで非硬化性山留壁の構築が完了した後は、その上部(地表面から施工深度A)にセメントミルクを添加しつつ混合・撹拌を行いながら引上げて、通常山留壁を構築する。
図1(3)に示す通常山留壁の中に芯材を挿入する工程は、上記の膨潤高吸水性ポリマーを添加しつつ掘削土と混合・撹拌をする場合と同様である。
図1(1)〜(3)の工程により構築させた山留壁について、非硬化性山留壁の止水性を低下させて透水性を回復させるためには、図1(4)に示すように、ソイルセメント地下連続壁の施工と同時期に電解質放出のための有孔管を埋設しておき、この有孔管から電解質を放出させることにより、膨潤高吸水性ポリマーが吸水した水を放出して体積を収縮させることができる。そして、これにより土粒子間に空隙が生じ、非硬化性山留壁の透水性を回復させることが可能となる。
本発明で用いられる電解質としては、膨潤高吸水性ポリマーに吸水させた水を放出させることができる一価又は二価の電解質を用いることができる。
このような一価又は二価の電解質としては、毒性を有さず、地下水又は土壌中に残留しても公害等の原因とならない一般に公知のものであれば特に制限なく用いることができる。一価の電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類や、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機水酸化物類、クエン酸等が挙げられる。
また、二価の電解質としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸アンモニウム等が挙げられる。これらの中でも、安全性、入手容易性、コスト等の観点から特に塩化カルシウムを好適に用いることができる。
前記電解質は、水溶液として膨潤高吸水性ポリマーに作用させるものであり、電解質の水溶液濃度は使用する膨潤高吸水性ポリマー及びその吸水量、また使用する電解質の種類に応じて適宜設定することができるが、通常0.5〜10%、好ましくは1〜3%の範囲の電解質水溶液を用いることができる。
また、非硬化性山留壁の透水性は、膨潤高吸水性ポリマーの吸水量と電解質濃度を調整することにより適宜設定することができる。
膨潤高吸水性ポリマーとしての、アクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマー(三洋化成工業社製、商品名:サンフレッシュST−500D、ST−500MPSA)の吸水量と各電解質濃度の関係を図2に示す。これによれば、例えば、電解質として塩化カルシウムを用いた場合、アクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマーの体積は容易に1/40に減少することがわかる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
例えば、図1(2)に示した地表面から深度Aまでの通常山留壁の構築は、従来公知のソイルセメント地中連続壁の施工法により施工したり、また、本発明者らによる気泡を使用した山留壁の施工法(例えば特許文献1、2)により施工することもできる。
また、図1(4)に示した電解質放出のための有孔管を埋設せず、地下水流の上流側にボーリングなどにより削孔し、この孔を利用して地下水流の上流側から電解質を添加することにより、膨潤高吸水性ポリマーに電解質を作用させる方法や、ジェットグラウト施工機等を用いて圧力により電解質を非硬化性山留壁に加え、強制的に混合・撹拌することにより添加することもできる。
なお、上記実施形態では、柱列式ソイルセメント地中連続壁施工機械を使用して柱列式施工法で行うことを前提として説明したが、本発明の山留壁は、等厚式施工機械を使用して等厚式施工法で行うこともできる。
この場合には、図4に示すように、等厚式施工機械の吐出口から膨潤高吸水性ポリマーを吐出しながら切削・混合を行い、非硬化性山留壁を構築し、その後、施工深度Aの深さまで混合・撹拌のできる等厚式施工機械を用いて、セメントミルクを添加しながら混合・撹拌し、通常山留壁を構築して、本発明の非硬化性山留壁と通常山留壁の構成による山留壁を完成させることができる。
(実施例1)
以下に、本発明の非硬化性山留壁の効果、即ち透水性の大きい砂層や砂礫層に膨潤高吸水性ポリマーを添加し混合した混合土の透水係数は小さくなること、及びその層に電解質を溶解した水を加えることにより、容易に透水性が回復することを確認するために行った室内での透水試験と屋外での透水試験について詳述する。
まず、室内の透水試験で用いた材料は、試料土として珪砂1号、硅砂3号、硅砂4号、硅砂6号を、膨潤高吸水性ポリマーとしてアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマー(三洋化成工業社製、商品名:サンフレッシュST−500D及びST−500MPSA)を、電解質として塩化カルシウムを使用した。
アクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマー(三洋化成工業社製、商品名:サンフレッシュST−500D、ST−500MPSA)の物性値を表1に、透水試験の実施条件を表2に示す。
Figure 0006141660
Figure 0006141660
表2に示す透水試験用の試料1〜5の試料状態1〜3は、以下の状態とした。
試料状態1:硅砂のみの状態
試料状態2:硅砂に膨潤高吸水性ポリマーを混合した状態
試料状態3:状態2に塩化カルシウムの1%水溶液を通水させた状態
膨潤高吸水性ポリマーはアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマーに350倍の水を加え膨潤させた状態を膨潤高吸水性ポリマーとした。膨潤高吸水性ポリマーは珪砂の間隙の100%を使用した。
そして、各々の試料状態1〜3の試料について透水試験を行った。透水試験は、土質工学会基準「土の透水試験方法:JSF311−1990」に規定された試験装置、試験方法に準拠して行い、それぞれの透水係数を計測した。試験結果を表3及び図5に示す。
Figure 0006141660
表3及び図5の透水試験の結果によると、試料1の礫土である珪砂1号のみの試料状態1の透水係数は2.2cm/sであり、ST−500Dの膨潤高吸水性ポリマーを混合した試料状態2では、透水係数は6.5×10−2cm/sと低下する。さらに、これに塩化カルシウム1%水溶液を通過させると、透水係数は1.5cm/sとなり、珪砂1号のみの透水係数にほぼ等しくなり、透水係数が回復したことがわかる。
珪砂1号に膨潤高吸水性ポリマーを添加すると透水係数が低下する理由は、珪砂の間隙を膨潤高吸水性ポリマーが充填し、通水する間隙が小さくなることに起因すると考えられる。さらに塩化カルシウムを作用させると、膨潤高吸水性ポリマーは水を放出し、体積が減少し、ほぼ元通りの間隙ができ、透水係数が回復するものと考えられる。
次に、試料2では、ST−500DとST−500MPSAを等量で混合し、粒度分布を良くした膨潤高吸水性ポリマーを使用した。これによると、膨潤高吸水性ポリマー混合土の試料状態2は7.5×10−5cm/sとなり、ST−500Dのみを使用した試料1の透水係数6.5×10−2cm/sに比べて大きく低下しており、充分な止水性を有することが確認された。
さらに、塩化カルシウムを通過させると0.96cm/sとなり、ほぼ珪砂1号単体の透水係数に等しく、充分に透水性が回復したことが確認された。
同様に、硅砂3号、硅砂4号、珪砂6号を使用した試料3、4、5においても、膨潤高吸水性ポリマーとしてST−500DとST−500SMPAを等量で混合した膨潤高吸水性ポリマーを使用すると、透水係数は珪砂のみに比較し透水係数は1/1000低下し、充分な止水性を呈し、塩化カルシウムを作用させると、珪砂のみとほぼ等しくなるまで透水係数が回復することが確認された。
次に、現地における非硬化性山留壁の効果を確認するために、単軸の柱列式ソイルセメント地中連続壁施工機を使用して以下の試験を行った。
試験地質は、地表から1.0mが凝灰質粘土層であり、その下部が砂層である。膨潤高吸水性ポリマーはST−500DとST−500MPSAを等量混合し、これに水350倍を加えたものとした。砂層の間隙率は48%であった。
地表から6.0mまで掘削土1m当たり膨潤高吸水性ポリマー450L、水50Lを加えつつ掘削を行い、掘削土と膨潤高吸水性ポリマーの混合土を作った。6.0mまでの掘削を終え、次に掘削底から2.5mまでは何も加えず混合・撹拌をしながら掘削機を引上げ、2.5mから地表までは水セメント比80%のセメントミルクを混合土1m当たり540L添加しつつ、混合土と混合・撹拌しつつ引上げた。
1週間後に、改良体の中心部に内径7.8cmの有孔塩ビ管を6.0mまで挿入し、塩化カルシウム1%水溶液を放出させて透水試験を行った。これらの結果を表4に示す。
Figure 0006141660
表4に示す結果によると、原地盤での砂層の透水係数は1.7×10−2cm/sであるが、膨潤高吸水性ポリマーの混合土(非硬化性山留壁)の透水係数は7.2×10−5cm/sとなり、さらに塩化カルシウムを透過させると1.3×10−2cm/sとほぼ原地盤の透水係数に等しくなり、透水係数が回復したことが確認された。
(実施例2)
次に、掘削時における膨潤高吸水性ポリマーの添加による流動性の向上効果、即ち掘削時において、掘削抵抗の大きな砂層においても膨潤高吸水性ポリマーを添加することにより流動性が良好となり、さらに芯材の挿入が可能となることを調べた。
まず、室内試験で用いた材料は、試料土として硅砂4号を、膨潤高吸水性ポリマーはアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマー(三洋化成工業社製、商品名:サンフレッシュST−500D及びST−500MPSA)を使用した。硅砂5号に加水し含水比15%と20%の状態とし、これを試料土とした。なお、試料土の間隙率の計測結果は48.1%であった。膨潤高吸水性ポリマーはサンフレッシュST−500D及びST−500MPSAを等重量混合し、これに350倍の水を吸収させたものとした。
2種類の試料土に各々、膨潤高吸水性ポリマーを試料土の間隙の33%〜140%の範囲で添加し、膨潤高吸水性ポリマー添加率と流動性の関係を求めた。流動性の指標としてテーブルフロー値(TF値)を使用した。これらの関係を図6に示す。これによると膨潤高吸水性ポリマーの添加率が大きくなるにつれ流動性が増加することがわかる。
施工性および芯材の挿入性を考慮すると、TF値は150mm以上、望ましくは170mm以上を確保する必要がある。図6の結果からTF値150mmを得るには、膨潤高吸水性ポリマーの添加率は40%、170mmを得るには50%が必要であることが確認された。
(実施例3)
次に、掘削時における膨潤高吸水性ポリマーの添加によるソイルセメントの強度への影響を調べた。即ち、掘削土と膨潤高吸水性ポリマーの混合体にセメントミルクを加えると、膨潤高吸水性ポリマーは水を放出し、一軸圧縮強度が低下することが予想されるため、この影響を調べた。
室内試験で用いた材料には、硅砂4号と膨潤高吸水性ポリマーとしてアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマー(三洋化成工業社製、商品名:サンフレッシュST−500D及びST−500MPSA)を使用した。試料土として、硅砂5号に加水し含水比20%の状態とした。膨潤高吸水性ポリマーはサンフレッシュST−500D及びST−500MPSAを等重量混合し、これに350倍の水を吸収させたものとした。試料土に各々、膨潤高吸水性ポリマーを試料土の間隙の33%〜140%の範囲で添加した。固化材として、高炉セメントB種を使用し、水セメント比60%に相当する水を加え、これをセメントミルクとした。固化材の添加量は掘削土1m当たり200kgとした。
膨潤高吸水性ポリマー添加率と一軸圧縮強度の関係を図7に示す。図7から、膨潤高吸水性ポリマーの添加率が高くなるにつれ一軸圧縮強度は低下する傾向が確認できる。実際の現場でのソイルセメント地中連続壁の設計強度は500kN/mであり、安全率を3とすると、配合強度は1500kN/mとなり、膨潤高吸水性ポリマーの添加率は約120%以下では問題は生じないことがわかる。膨潤高吸水性ポリマーの添加率を140%とする時は、固化材の添加量を増加させることにより容易に対応することができるので、膨潤高吸水性ポリマーを添加することにより一軸圧縮強度が極度に低下し、健全なソイルセメント地中連続壁の構築を妨げられることはないことがわかる。

Claims (8)

  1. 膨潤高吸水性ポリマーを添加しつつ掘削、混合を行い、又は、膨潤高吸水性ポリマーを添加せずに掘削を行った後、膨潤高吸水性ポリマーを添加しつつ混合し、掘削土と膨潤高吸水性ポリマーの混合土からなる山留壁を地下に構築した後、その上部にソイルセメントによる止水性を有する山留壁を地下に構築することを特徴とする山留壁構築工法。
  2. 水を吸収させた膨潤高吸水性ポリマーを体積比率で掘削土の間隙の60〜140%添加しつつ混合を行うことを特徴とする請求項1に記載の山留壁構築工法。
  3. 膨潤高吸水性ポリマーが、デンプン系、セルロース系及び合成ポリマー系から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の山留壁構築工法。
  4. 掘削及び膨潤高吸水性ポリマーの添加、混合を、柱列式施工法又は等厚式施工法で行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の山留壁構築工法。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の山留壁構築工法において、山留壁の構築後に、地下水流を止めている山留壁の止水性を低下させるために、地下水流の上流側から地下水中に電解質を添加して山留壁の膨潤高吸水性ポリマーから水を放出させることにより、山留壁の透水を回復させ、山留壁中に地下水流を通過させることを特徴とする山留壁構築工法。
  6. 電解質が、塩化カルシウム、クエン酸、水酸化ナトリウム及び塩化ナトリウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の山留壁構築工法。
  7. 地下水流の上流側に電解質を射出するための配管を設置することを特徴とする請求項5又は6に記載の山留壁構築工法。
  8. 請求項1から7に記載の山留壁構築工法により構築された山留壁であって、掘削土と膨潤高吸水性ポリマーの混合土からなる山留壁と、その上部に構築された、ソイルセメントによる強度と止水性を有する山留壁からなることを特徴とする山留壁。
JP2013056845A 2012-03-22 2013-03-19 山留壁構築工法及びこの山留壁構築工法により構築された山留壁 Active JP6141660B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013056845A JP6141660B2 (ja) 2012-03-22 2013-03-19 山留壁構築工法及びこの山留壁構築工法により構築された山留壁

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012066118 2012-03-22
JP2012066118 2012-03-22
JP2013056845A JP6141660B2 (ja) 2012-03-22 2013-03-19 山留壁構築工法及びこの山留壁構築工法により構築された山留壁

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013224572A JP2013224572A (ja) 2013-10-31
JP6141660B2 true JP6141660B2 (ja) 2017-06-07

Family

ID=49594794

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013056845A Active JP6141660B2 (ja) 2012-03-22 2013-03-19 山留壁構築工法及びこの山留壁構築工法により構築された山留壁

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6141660B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7112242B2 (ja) * 2018-05-02 2022-08-03 学校法人早稲田大学 地盤中での遮水および透水回復工法

Family Cites Families (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS58189415A (ja) * 1982-04-28 1983-11-05 Kajima Corp 止水壁構築法
JPS59161513A (ja) * 1983-03-04 1984-09-12 Ohbayashigumi Ltd 軟弱地盤改良工法
JPS6360317A (ja) * 1986-08-29 1988-03-16 Nippon Kokan Kk <Nkk> 遮水壁
JPH03233016A (ja) * 1990-02-07 1991-10-17 Shimizu Corp 地下構造体及びその構築方法
JP2819901B2 (ja) * 1991-11-11 1998-11-05 株式会社大林組 軟弱地盤における遮断壁の造成方法
JP3285163B2 (ja) * 1993-03-31 2002-05-27 株式会社前川製作所 地盤強化用基礎杭孔における止水方法及び止水機構
JP3452217B2 (ja) * 1994-10-20 2003-09-29 帝都高速度交通営団 土留壁の構築工法
JP3894519B2 (ja) * 1997-10-02 2007-03-22 ケミカルグラウト株式会社 山留壁造成工法
JP3821575B2 (ja) * 1998-03-25 2006-09-13 東日本旅客鉄道株式会社 土質改良工法
JP3857529B2 (ja) * 2001-02-02 2006-12-13 東日本旅客鉄道株式会社 地盤充填材及び地盤充填方法
JP4791947B2 (ja) * 2006-12-11 2011-10-12 株式会社かんでんエンジニアリング 地中埋設管路への薬液浸入防護方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013224572A (ja) 2013-10-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Karol Chemical grouting and soil stabilization, revised and expanded
Cui et al. Mitigation of geohazards during deep excavations in karst regions with caverns: a case study
Shen et al. Jet grouting with a newly developed technology: The Twin-Jet method
CN106088099B (zh) 一种地铁基坑锚索处理方法
KR101907141B1 (ko) 강관다단 그라우팅을 위한 실재용 조성물 및 이의 제조방법
Huang et al. Use of self-hardening slurry for trench cutoff wall: A review
Seed et al. The failure of Teton dam
Feng et al. Failure of a retaining structure in a metro station excavation in Nanchang City, China
CN106866056B (zh) 一种用于地下连续墙施工的泥浆及其制备方法
CN106223346B (zh) 一种报废机井的封填方法
JP6141660B2 (ja) 山留壁構築工法及びこの山留壁構築工法により構築された山留壁
JP2019015100A (ja) 山留壁の撤去方法
Shen et al. Improvement efficacy of RJP method in Shanghai soft deposit
Khoury et al. Design, construction and performance of a soil-bentonite cutoff wall constructed in two stages
Katsumi et al. Hydraulic barrier performance of SBM cut-off wall constructed by the trench cutting and re-mixing deep wall method
JP6066757B2 (ja) 透水性基礎の構築方法
JP5317938B2 (ja) ソイルセメント柱およびソイルセメント連続壁の造成方法
Chu et al. New Solutions to Geotechnical Challenges for Coastal Cities.
KR101666204B1 (ko) 지하수 심정 차수장치
CN109537612A (zh) 一种多孔冲击搅拌地下连续墙阻隔技术及其施工方法
Jefferis et al. Polymer systems for fluid supported excavations
CN104032736B (zh) 珊瑚礁灰岩地层中水泥土搅拌桩的施工方法
JP3725750B2 (ja) 安定液組成物
JP2018104929A (ja) ソイルセメント地中連続壁の構築方法
Shen et al. A ten-year review on the development of soil mixing technologies in China

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20151225

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20161012

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20161025

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161209

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170418

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170508

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6141660

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250