JP6140033B2 - 鋼板の変形方法 - Google Patents
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Description
また船体の曲面形状は、部位によって微妙に相違し、一つのプレス型によって全ての外装材をつくることはできない。
さらに、船舶は少量生産品であり、個々の外装材の生産数量は極めて少ない。
そのため船舶の外装に使用される鋼板は、装着部位に合わせて、一枚ずつ手作りで成形される。
即ち鋼板を部分的に加熱すると加熱部分が膨張する。次いで、加熱部分を冷却すると、加熱部分が収縮して周囲部位を引っ張る。そのため、鋼板を部分的に加熱してその直後に冷却すると、鋼板は、加熱部分が凹となる様に曲がる。
より具体的には、鋼板の表面をガストーチの火炎で炙り、鋼板の表面を加熱する。続いて加熱部分に冷却水を噴射する。その結果、鋼板は、表面側が凹となる様に変形する。
この工程を何度も繰り返して、鋼板を僅かずつ変形させ、所望の曲面形状を作る。
また表面側を凸形状にする場合や、先の工程で鋼板を凹変させ過ぎた様な場合には、鋼板を裏返し、裏面側をガストーチで炙って加熱し、加熱部分に冷却水を噴射する。
実際の作業は、鋼板を何度も裏返しにして、表面側と裏面側の各部を少しずつ加熱・冷却し、各部を少しずつ変形させて所望の曲面となる様に加工することとなる。
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、表面側から加熱することよって加熱部位を凸状に変形することができる鋼板の変形方法を提供するものである。
即ち、鋼板を表面側から誘導加熱すると、表面側が急速に昇温する。そしてその熱が表面側から裏面側に伝導し、次第に裏面側の温度が上昇する。即ち裏面側は、表面側よりも遅れて昇温する。特に、船舶の外装材として使用される様な鋼材は、厚さが厚いので、裏面側は、表面側よりも遅れて昇温する傾向が強い。
同様に表面側に冷却水を噴射すると、表面側の温度が急速に低下し、これに遅れて裏面側の温度が低下する。前記した様に、船舶の外装材として使用される様な鋼材は、厚さが厚いので、裏面側は、表面側よりも遅れて温度低下する傾向が強い。
そして本発明者らが、加熱速度、加熱深度、冷却速度等を変えて鋼材を加熱・冷却する実験を重ねた結果、加熱面側の表面温度がその裏面側の温度よりも低くなり、且つその際の裏面側の温度が摂氏500度以上となれば、鋼板は顕著に加熱面側に向かって凸変することが分かった。
本実施形態は、船舶の外装板を成形する一工程であり、図1に示す様な鋼板1を曲げる工程である。
本実施形態では、誘導加熱コイル2と、冷却ジャケット3を使用して鋼板1を凸変形させる。
二本の平行部5,6は、それぞれ給電部10,11に接続されている。また各給電部は、図示しないトランス及び高周波発振器に接続されている。
従って、誘導加熱コイル2には、高周波電流が通電される。
また、誘導加熱コイル2の内部には、図示しない給液源から冷却液が循環供給される。
冷却ジャケット3を省略し、代わりに、誘導加熱コイル2に複数の孔を設け、当該孔を介して誘導加熱コイル2内を循環する冷却液の一部を鋼板1に向けて噴射してもよい。図2では、冷却ジャケット3を省略している。
また冷却ジャケット3を使用する場合には、誘導加熱コイル2の移動に追従して移動させ、その際に前記した小孔から冷却水を噴射し続ける。
即ち電流値を上げた場合、誘導加熱コイル2と鋼板1との距離が近い場合、誘導加熱コイル2の移動速度が遅い場合は、鋼板1の裏面のピーク温度が上昇する。
逆に電流値を下げた場合、誘導加熱コイル2と鋼板1との距離が遠い場合、誘導加熱コイル2の移動速度が速い場合は、鋼板1の裏面のピーク温度が下がる。
さらに誘導加熱コイル2と鋼板1との距離を変更することにより、加熱面側の加熱領域を変更することができる。
冷却水の量についても同様の傾向があり、冷却水の量が多い場合には、鋼板1の裏面側の温度を加熱面側よりも高なる期間を長くすることができる。冷却水の量が多すぎる場合には、裏面の温度上昇が不十分となる。
その結果、図2、図3に示す様に、鋼板1は、加熱面側が凸状態となる様に変形する。
鋼材のサイズ:500×500×t20
鋼材の材質 :SS400
加熱幅 :100mm
周波数 :26kHz
移動速度 :2mm/秒
加熱面側表面のピーク温度 :摂氏991度
加熱面側表面温度と裏面側表面温度の逆転時の代表温度:摂氏560度
裏面側表面のピーク温度時における加熱面側表面温度 :摂氏 89度
加熱終了部分の変位量HE(図5)は、0.8mmであった。
また両者の中間部の変位量は、0.30mmであった。
加熱開始側の端辺は、逆に凸状態となる様に変形し、その変位量は0.15mmであった。
鋼材のサイズ:685×685×t7
鋼材の材質 :SS400
加熱幅 :100mm
周波数 : 23kHz
移動速度 : 4mm/秒
加熱面側表面のピーク温度 :摂氏1028度
加熱面側表面温度と裏面側表面温度の逆転時の代表温度:摂氏712度
裏面側表面のピーク温度時における加熱面側表面温度 :摂氏111度
加熱終了部分の変位量HE(図5)は、33.5mmであった。
鋼材のサイズ:615×615×t18
鋼材の材質 :SS400
加熱幅 :100mm
周波数 : 26kHz
移動速度 : 2mm/秒
加熱面側表面のピーク温度 :摂氏987度
加熱面側表面温度と裏面側表面温度の逆転時の代表温度:摂氏605度
裏面側表面のピーク温度時における加熱面側表面温度 :摂氏112度
加熱終了部分の変位量HE(図5)は、4.3mmであった。
鋼材のサイズ:500×500×t20
鋼材の材質 :SS400
加熱幅 :100mm
周波数 :23kHz
移動速度 :4mm/秒
表面側ピーク温度 :摂氏987度
加熱面側表面温度と裏面側表面温度の逆転時の代表温度:摂氏412度
裏面側表面のピーク温度時における加熱面側表面温度 :摂氏50度
図6(後述の図7、8、10も同じ)において、「表」とは加熱面側を意味しており、「裏」とは、加熱面とは反対側の面を意味している。すなわち、細い実線が加熱面側の表面の温度変化を示すグラフであり、太い実線が加熱面とは反対側の表面の温度変化を示すグラフである。
第1実施例の場合は、図6の様に、加熱面側の温度が急激に上昇する。
なお、加熱面側の温度上昇に、二山のピークが存在する理由は、誘導加熱コイル2が、二本の平行部5,6を持つためである。
また加熱面側の温度は、誘導加熱コイル2の通過の後、冷却水の影響によって急激に低下する。
これに対して裏面側は、昇温及び冷却が大幅に遅れ、加熱面側の温度が、冷却水の温度近傍に落ちて定常温度に至った後に上昇のピークを迎える。加熱面側表面温度と裏面側表面温度の逆転時の代表温度(加熱面側の下降する表面温度と、裏面側の上昇する表面温度が一致する温度)が摂氏560度となり、加熱面側の表面温度が、摂氏150度以下となっているにも係わらず、裏面側の表面温度は、摂氏560度を超える。
その結果、裏面側が遅れて収縮し、鋼板1は、加熱面側(表面側)が凸となる様に変形する。
第2実施例の場合も実施例1の場合と同様に、誘導加熱コイル2の二本の平行部5,6により、加熱面側の温度が急激に上昇し、二山のピークが生じる(図7)。二つ目の山のピーク温度は、一つ目の山のピーク温度よりも高い。
これに対して裏面側の温度は、加熱面側の温度に若干遅れて上昇し、加熱面側の二つ目の山のピーク温度に近い温度まで上昇する。また、加熱面側の温度が冷却水温度まで下がる前に、裏面側の温度がピーク(930度)を迎える。
すなわち、第2実施例では、第1実施例の場合よりも、裏面側の温度上昇が、加熱面側の温度上昇に追従している。換言すると、加熱面側の温度上昇に呼応して裏面側の温度も上昇している。これは、第2実施例の板厚が7mmと薄く、板厚が20mmである第1実施例の場合よりも加熱面側から裏面側へ熱が伝達され易いためであると考えられる。
図8に示す様に、第3実施例では、加熱面側と裏面側のピーク温度は、第1実施例の場合よりも若干(40度〜60度)高いが、加熱面側及び裏面側の温度変化は、第1実施例と同様である。また、裏面側のピーク温度は、630度である。
即ち比較例についても裏面側の表面温度は、加熱面側の表面温度よりも昇温及び冷却が大幅に遅れ、加熱面側の温度が、冷却水の温度近傍に落ちて定常温度に至った後に上昇のピークを迎える。しかしながら、裏面側の表面温度は、摂氏412度に過ぎず、低い。
また、裏面側の温度が過熱面側の温度を超え、その差の最大値は300度程度である。
その結果、裏面側の収縮が十分に行われず、鋼板1は、図9に示す様に、加熱面側が凹となる様に変形する。
2 誘導加熱コイル
3 冷却ジャケット
Claims (5)
- 鋼板の一方の面である表面に通電状態の誘導加熱コイルを近接して鋼板の表面の一部を誘導加熱し、その直後に前記誘導加熱部に向かって冷却液を噴射して鋼板を冷却することによって、加熱した表面の温度が、他方の面である裏面の温度よりも低くなり、且つその際の裏面の温度が摂氏500度以上となる状況を作り出し、鋼板及び/又は誘導加熱コイルを移動させて鋼板の加熱部位及び冷却部位を変更して、鋼板が誘導加熱した表面側に凸となる様に変形させることを特徴とする鋼板の変形方法。
- 加熱した一方の面である表面の温度が、摂氏150度以下であり、且つその際の他方の面である裏面の温度が、摂氏500度以上となる状況を作り出すことを特徴とする請求項1に記載の鋼板の変形方法。
- 表面の温度がピークを過ぎて定常温度となった後に、裏面の温度がピークを迎えることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼板の変形方法。
- 誘導加熱コイルを一方方向に移動させ、誘導加熱コイルが通過した後の部位に冷却液を噴射することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の鋼板の変形方法。
- 鋼板の厚さが6mm以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の鋼板の変形方法。
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JP2013181239A JP6140033B2 (ja) | 2013-09-02 | 2013-09-02 | 鋼板の変形方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2013181239A JP6140033B2 (ja) | 2013-09-02 | 2013-09-02 | 鋼板の変形方法 |
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JP2015050045A JP2015050045A (ja) | 2015-03-16 |
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JP2013181239A Active JP6140033B2 (ja) | 2013-09-02 | 2013-09-02 | 鋼板の変形方法 |
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