JP6129500B2 - 原子炉の炉内構造物の寿命予測装置、方法及びプログラム - Google Patents
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Description
応力腐食割れ(SCC:stress corrosion cracking)は、材料・応力・環境といった3つの因子が複合的に作用して発生する。
このうち環境因子として、高温高圧水の化学影響のほかに、中性子とガンマ線の照射影響が加わると、材料の化学組成や微細組織が変化して材料の劣化が進み応力腐食割れの進展が早くなることが知られている(例えば、特許文献1,2)。
図1に示すように、原子炉の炉内構造物の寿命予測装置10は、炉内構造物(シュラウド22;図2)に存在するき裂27(図3)の形状寸法(長さc,深さa)及びモデルを条件設定する条件設定部11と、き裂27の形状寸法(長さc,深さa)及び炉内構造物の残留応力σを変数とし前記モデルに対応する計算式gで導出される応力拡大係数Kを更新する応力拡大係数更新部12と、炉内構造物における中性子束分布及び照射時間に基づいて導出される前記き裂の先端部分における中性子照射量Φを更新する中性子照射量更新部15と、この応力拡大係数更新部12及び中性子照射量更新部15から取得された応力拡大係数K及び中性子照射量Φに基づいてき裂進展速度(Δa/Δt)を導くき裂進展速度演算部18と、き裂進展速度(Δa/Δt)に基づいて経過時間に対するき裂進展量Δaを導出するき裂進展量導出部19と、を備えている。
このシュラウド22は、サポートレグ24を介して圧力容器21の底部に支持され、サポートプレート23を介して圧力容器21の内周面に支持されている。
シュラウド22は、大型精密構造物であって、機械加工された部材を、溶接線25により継ぎ合わせて製作されている。
なお、実施形態における寿命予測の評価対象となる炉内構造物として、シュラウド22を例示しているが、これに限定されるものではなく、その他の中性子照射を受ける部位であれば適宜評価対象となる。
き裂27は、き裂自身の形状及びき裂が進展する部材の形態(円筒、平板、コーナー部、丸棒等)に対応していくつかのモデルに分類される。
応力拡大係数Kの計算式gは、日本機械学会維持規格、ASME Boiler & Pressure Vessel Code Section XIなどの規格基準に掲載されている簡易評価式や、Raju&Newmanの式や影響関数法などの広く知られている簡易評価式を採用することができる。
また、有限要素法解析に基づいた応力拡大係数Kの計算式gを採用することもできる。
例示される半楕円形状のき裂27の場合、長さcと深さaでその形状寸法が規定されているが、この形状寸法がどのように規定されるかについては、分類されたモデルに応じてそれぞれ異なる。
そして、所定の刻み時間におけるき裂進展量Δaを元のき裂寸法に逐次加算することにより、経時的に変化するき裂27の形状寸法及びモデルが再設定される。
炉内構造物の残留応力σは、文献に記載のデータを適用する場合、有限要素法(FEM:Finite Element Method)による解析結果を適用する場合、実験的な計測値を適用する場合がある。
このようにして取得された炉内構造物の内部の残留応力σは、この炉内構造物の内部で進展するき裂と、位置的な対応がとれるようにデータベース13に保存される。
このように、炉内構造物における中性子束分布は、照射される中性子の進行方向に向かって減衰している。
また、図5(A)に示すように、中性子束解析などによりシュラウド22(図3)内部の複数の中性子束をさらに導いて、中性子束分布をステップ関数で表わすこともできる。
さらに、図5(B)に示すように、中性子束分布を指数関数(式2)で表わすこともできる。
φt=φ0exp(lnφT/φ0・t/T) (式2)
但し、T:き裂深さ方向の構造物寸法,t:構造物表面からのき裂深さ方向距離,
φ0:構造物表面(t=0)における中性子束,
φT:構造物表面(t=T)における中性子束,
φt:構造物表面からの距離tにおける中性子束。
シュラウド22の内側に配置される燃料集合体(図示略)の配置規則性により、その内周面26の周方向における中性子束分布は、極座標上において周期性を有する曲線関数で表される。
また、このような中性子束分布が炉内構造物に内部形成される中性子束の照射時間は、原子炉の運転開始からの経過年数に稼働率を乗じて算出され、データベース17に保存される。
(式3)(式4)に示すき裂進展速度(Δa/Δt)は、BWR型原子力発電所炉内構造物IASCC評価ガイド案に示す評価式である。その他に、日本機械学会維持規格2008年度版 表 添付E−2−SA−1に記載のき裂進展速度式を用いることができる。なお、き裂進展速度式は、これらに限定されるものではなく、応力拡大係数K及び中性子照射量Φを変数に含むものであれは、適用することができる。
Δa/Δt=5.85×10-11K1.23 (4≦Φ≦11dpa) (式4)
Δa/Δt:き裂進展速度(m/s),
K:応力拡大係数(MPa√m),
Φ:中性子照射量(dpa)(1dpa=7.0×1024 n/m2)
この刻み時間Δtは任意であり、演算されたΔaは、元のき裂深さaに加算され、新しいき裂深さaに基づいて応力拡大係数及び中性子照射量を更新させるといった処理が繰り返される。
図7は、24年間にわたり中性子照射を受けた時点を初期状態に設定し、き裂深さがシュラウド板厚の8割(応力拡大係数計算式の適用限界33)に到達するまでの、き裂深さと経過年数との関係を示している。
この比較例(曲線32)によれば、初期き裂発生から5.7年で適用限界33に到達すると評価されるが、実機シュラウドにおいてそのような貫通き裂が発見された事例はこれまでに無い。
一方、実施例(曲線31)によれば、初期き裂発生から適用限界33に至るまで10年であり、保守性を維持しつつ、シミュレーションと実機事例との乖離が改善される。
中性子照射量更新部15を機能させずにIASCCき裂進展評価を実施した場合は、き裂貫通までの期間が7年よりも短いことから、7年の点検周期を設定することはできない。一方、本実施形態によれば、き裂貫通までの期間が7年を上回ることから、7年の点検周期を設定することが可能となる。
また、原子炉の炉内構造物の寿命予測装置の構成要素は、コンピュータのプロセッサで実現することも可能であり、原子炉の炉内構造物の寿命予測プログラムにより動作させることが可能である。
Claims (6)
- 炉内構造物に存在するき裂の形状寸法及びモデルを条件設定する条件設定部と、
前記き裂の形状寸法及び前記炉内構造物の残留応力を変数とし前記モデルに対応する計算式で導出される応力拡大係数を更新する応力拡大係数更新部と、
中性子の照射を受ける前記炉内構造物の内周面における中性子束の値とその外周面における中性子束の値とに基づいて解析的に導かれる、中性子の進行方向に対する前記炉内構造物の板厚における中性子束分布を、少なくとも保存するデータベースと、
前記中性子束分布及び照射時間に基づいて導出される前記き裂の先端部分における中性子照射量を更新する中性子照射量更新部と、
前記応力拡大係数更新部及び前記中性子照射量更新部から取得された前記応力拡大係数及び前記中性子照射量に基づいてき裂進展速度を導くき裂進展速度演算部と、
前記き裂進展速度に基づいて経過時間に対するき裂進展量を導出するき裂進展量導出部と、を備えることを特徴とする原子炉の炉内構造物の寿命予測装置。 - 前記炉内構造物は、炉心の外周を円筒状に囲むシュラウドであって、
前記データベースには、前記中性子の進行方向に一致する前記シュラウドの半径方向の前記中性子束分布に加え、さらにその周方向の前記中性子束分布が保存されていることを特徴とする請求項1に記載の原子炉の炉内構造物の寿命予測装置。 - 前記シュラウドの半径方向における前記中性子束分布は、線形関数、指数関数及びステップ関数のうちいずれかで表されることを特徴とする請求項2に記載の原子炉の炉内構造物の寿命予測装置。
- 前記シュラウドの周方向における前記中性子束分布は、周期性を有する曲線関数で表されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の原子炉の炉内構造物の寿命予測装置。
- 炉内構造物に存在するき裂の形状寸法及びモデルを条件設定するステップと、
前記き裂の形状寸法及び前記炉内構造物の残留応力を変数とし前記モデルに対応する計算式で導出される応力拡大係数を更新するステップと、
中性子の照射を受ける前記炉内構造物の内周面における中性子束の値とその外周面における中性子束の値とに基づいて解析的に導かれる、中性子の進行方向に対する前記炉内構造物の板厚における中性子束分布を、少なくとも保存するステップと、
前記中性子束分布及び照射時間に基づいて導出される前記き裂の先端部分における中性子照射量を更新するステップと、
前記応力拡大係数及び前記中性子照射量に基づいてき裂進展速度を導くステップと、
前記き裂進展速度に基づいて経過時間に対するき裂進展量を導出するステップと、を含むことを特徴とする原子炉の炉内構造物の寿命予測方法。 - コンピュータに、
炉内構造物に存在するき裂の形状寸法及びモデルを条件設定するステップ、
前記き裂の形状寸法及び前記炉内構造物の残留応力を変数とし前記モデルに対応する計算式で導出される応力拡大係数を更新するステップ、
中性子の照射を受ける前記炉内構造物の内周面における中性子束の値とその外周面における中性子束の値とに基づいて解析的に導かれる、中性子の進行方向に対する前記炉内構造物の板厚における中性子束分布を、少なくとも保存するステップ、
前記中性子束分布及び照射時間に基づいて導出される前記き裂の先端部分における中性子照射量を更新するステップ、
前記応力拡大係数及び前記中性子照射量に基づいてき裂進展速度を導くステップ、
前記き裂進展速度に基づいて経過時間に対するき裂進展量を導出するステップ、を実行させることを特徴とする原子炉の炉内構造物の寿命予測プログラム。
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