次に、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、電子燃料噴射方式の内燃機関制御システムに、本発明に係る熱式流量計を使用した一実施例を示すシステム図である。エンジンシリンダ112とエンジンピストン114を備える内燃機関110の動作に基づき、吸入空気が被計測気体30としてエアクリーナ122から吸入され、主通路124である例えば吸気管、スロットルボディ126、吸気マニホールド128を介してエンジンシリンダ112の燃焼室に導かれる。前記燃焼室に導かれる吸入空気である被計測気体30の流量は本発明に係る熱式流量計300で計測され、計測された流量に基づいて燃料噴射弁152より燃料が供給され、吸入空気である被計測気体30と共に混合気の状態で燃焼室に導かれる。なお、本実施例では、燃料噴射弁152は内燃機関の吸気ポートに設けられ、吸気ポートに噴射された燃料が吸入空気である被計測気体30と共に混合気を成形し、吸気弁116を介して燃焼室に導かれ、燃焼して機械エネルギを発生する。
燃焼室に導かれた燃料および空気は、燃料と空気の混合状態を成しており、点火プラグ154の火花着火により、爆発的に燃焼し、機械エネルギを発生する。燃焼後の気体は排気弁118から排気管に導かれ、排気24として排気管から車外に排出される。前記燃焼室に導かれる吸入空気である被計測気体30の流量は、アクセルペダルの操作に基づいてその開度が変化するスロットルバルブ132により制御される。前記燃焼室に導かれる吸入空気の流量に基づいて燃料供給量が制御され、運転者はスロットルバルブ132の開度を制御して前記燃焼室に導かれる吸入空気の流量を制御することにより、内燃機関が発生する機械エネルギを制御することができる。
エアクリーナ122から取り込まれ主通路124を流れる吸入空気である被計測気体30の流量および温度が、熱式流量計300により計測され、熱式流量計300から吸入空気の流量および温度を表す電気信号が制御装置200に入力される。また、スロットルバルブ132の開度を計測するスロットル角度センサ144の出力が制御装置200に入力され、さらに内燃機関のエンジンピストン114や吸気弁116や排気弁118の位置や状態、さらに内燃機関の回転速度を計測するために、回転角度センサ146の出力が、制御装置200に入力される。排気24の状態から燃料量と空気量との混合比の状態を計測するために、酸素センサ148の出力が制御装置200に入力される。
制御装置200は、熱式流量計300の出力である吸入空気の流量、および回転角度センサ146の出力に基づき計測された内燃機関の回転速度、に基づいて燃料噴射量や点火時期を演算する。これら演算結果に基づいて、燃料噴射弁152から供給される燃料量、また点火プラグ154により点火される点火時期が制御される。燃料供給量や点火時期は、実際にはさらに熱式流量計300で計測される吸気温度やスロットル角度の変化状態、エンジン回転速度の変化状態、酸素センサ148で計測された空燃比の状態に基づいて、きめ細かく制御されている。制御装置200はさらに内燃機関のアイドル運転状態において、スロットルバルブ132をバイパスする空気量をアイドルエアコントロールバルブ156により制御し、アイドル運転状態での内燃機関の回転速度を制御する。
図2は、熱式流量計300の外観を示している。図2Aは熱式流量計300の正面図、図2Bは左側面図、図2Cは背面図、図2Dは右側面図である。熱式流量計300は、ハウジング302と表カバー303と裏カバー304とを備えている。ハウジング302は、熱式流量計300を、主通路を構成する吸気管に固定するためのフランジ312と、外部機器との電気的な接続を行うための外部端子を有する外部接続部(コネクタ部)305と、流量等を計測するための計測部310を備えている。計測部310の内部には、副通路を作るための副通路溝が設けられている。計測部310の内部には、主通路を流れる被計測気体30の流量を計測するための流量検出部602や主通路を流れる被計測気体30の温度を計測するための温度検出部452を備える回路パッケージ400が設けられている(図3A参照)。
熱式流量計300は、フランジ312を吸気管に固定することにより、計測部310が主通路内に片持ち状に支持される。計測部310は、フランジ312から主通路124の中心方向に向かって長く延びる形状を成し、その先端部には吸入空気などの被計測気体30の一部を副通路に取り込むための入口350(第1上流開口部11a)と副通路から被計測気体30を主通路124に戻すための2つの出口352A、352B(第2下流開口部21b、第1下流開口部11b)が設けられている。
熱式流量計300の入口350が、フランジ312から主通路の中心方向に向かって延びる計測部310の先端側に設けられることにより、主通路の内壁面から離れた中央部に近い部分の気体を副通路に取り込むことができる。これにより、主通路の内壁面の温度の影響を受け難くなり、気体の流量や温度の計測精度の低下を抑制できる。
また、主通路の内壁面近傍では流体抵抗が大きく、主通路の平均的な流速に比べ、流速が低くなる。本実施例の熱式流量計300では、フランジ312から主通路の中央に向かって延びる薄くて長い計測部310の先端部に入口350が設けられているので、主通路中央部の流速の速い気体を副通路(計測用通路)に取り込むことができる。また、副通路の2つの出口352A、352Bも計測部310の先端部に設けられているので、副通路内を流れた気体を流速の速い主通路中央部に戻すことができる。
計測部310は主通路124の外壁から中央に向かう軸に沿って長く延びる形状を成しているが、幅は、図2B及び図2Dに記載の如く、狭い形状を成している。即ち熱式流量計300の計測部310は、側面の幅が薄く正面が略長方形の形状を成している。これにより、熱式流量計300は、被計測気体30に対しては流体抵抗を小さくして、十分な長さの副通路を備えることができる。
すなわち、本実施例の熱式流量計は、主通路124を流れる被計測気体30の流れ方向と直交する直交面に投影される計測部310の形状が、前記の直交面上で第1の方向50に定義される長さ寸法と、前記の直交面上で第1の方向50に対して垂直な第2の方向51に定義される厚み寸法とを有し(図2B参照)、厚み寸法が長さ寸法よりも小さい形状を成している。
被計測気体30の温度を計測するための温度検出部452が、計測部310の中央部で、計測部310内の上流側外壁が下流側に向かって窪んだ位置に、上流側外壁から上流側に向かって突出する形状を成して設けられている。
表カバー303や裏カバー304は、薄い板状に形成されて、広い冷却面を備える形状を成している。このため熱式流量計300は、空気抵抗が低減され、さらに主通路124を流れる被計測気体により冷却されやすい効果を有している。
外部接続部305の内部には、図示しない外部端子と補正用端子とが設けられている。外部端子は、計測結果である流量と温度を出力するための端子と、直流電力を供給するための電源端子とで構成される。補正用端子は熱式流量計300に関する補正値を、熱式流量計300内部のメモリに記憶するのに使用する端子である。
図3は熱式流量計300から表カバー303および裏カバー304を取り外したハウジング302の状態を示している。図3Aはハウジング302の正面図、図3Bは左側面図、図3Cは背面図、図3Dは右側面図である。図4は、回路パッケージ400が副通路溝の内部に配置されている状態を示す部分拡大図であり、図3CのA−A断面図である。なお、図4は説明を容易にするための概念図であり、図2や図3に示す詳細形状に対して、図4では細部の省略および単純化を行っており、細部に関して少し変形している。
ハウジング302には、計測部310の先端側に副通路を成形するための副通路溝が設けられている。この実施例ではハウジング302の表裏両面に副通路溝が設けられている。表カバー303及び裏カバー304をハウジング302の表面及び裏面にかぶせることにより、ハウジング302の両面に副通路が完成する構成になっている。このような構造とすることで、ハウジング302の成形時(樹脂モールド工程)にハウジング302の両面に設けられる金型を使用して、表側副通路溝332と裏側副通路溝334の両方をハウジング302の一部として全てを成形することが可能となる。
図3Cにおいて、主通路を流れる被計測気体30の一部が入口350から入口溝351に取り込まれ、入口溝351内を流れる。入口溝351の下流側は、排出溝333と裏側副通路溝334の二股に分岐している。排出溝333は、ハウジング302の下流端部に向かって直線状に延びてハウジング302の下流端部に開口する出口352Bに連通している。入口350から入口溝351に取り込まれた被計測気体30は、その一部が排出溝333を通って出口352Bから排出され、残りが裏側副通路溝334内に取り込まれて裏側副通路溝334内を流れる。
裏側副通路溝334は進むにつれて深くなる形状をしており、溝に沿って流れるにつれ表側(図3Cで図の奥側)の方向に被計測気体30は徐々に移動する。裏側副通路溝334には回路パッケージ400よりも上流側の通路上流部342で急激に深くなる急傾斜部347が設けられている。質量の小さい空気の一部は急傾斜部347に沿って移動し、通路上流部342で図3Aに記載の計測用流路面430の方を流れる。一方、質量の大きい異物は遠心力によって急激な進路変更が困難なため、急傾斜部347に沿って流れることができず、図3Cに示す計測用流路裏面431の方を流れる。その後、回路パッケージ400よりも下流側の通路下流部341を通り、図3Aに記載の表側副通路溝332に流れ込む。
ここで、図4を参照する。図4の左部分が裏側副通路溝334の終端部であり、右側部分が表側副通路溝332の始端部分である。図4では明確に記載していないが、ハウジング302には、裏側副通路溝334と表側副通路溝332との間をつなぐように、幅方向に貫通する貫通部が設けられている。そして、貫通部に回路パッケージ400の計測用流路面430が露出するように突出して配置されている。
図3Aに記載の表側副通路溝332において、回路パッケージ400よりも上流側の通路上流部342から表側副通路溝332側に移動した被計測気体30である空気は、計測用流路面430に沿って流れる。このとき、流量検出部602に設けられた熱伝達面437を介して流量を計測するための流量検出部602との間で熱伝達が行われ、流量の計測が行われる。回路パッケージ400の計測用流路面430側と計測用流路裏面431側を通過した被計測気体30は、回路パッケージ400よりも下流側の通路下流部341から表側副通路溝332側に流れて、表側副通路溝332に沿って流れ、出口352を形成する出口溝353から主通路に排出される。
この実施例では、裏側副通路溝334で構成される流路は曲線を描きながらハウジング302の先端部からフランジ312側である基端部の方向に向かい、最もフランジ312側の位置では、副通路を流れる気体は主通路の流れに対して逆方向の流れとなり、この逆方向の流れの部分でハウジング302の一方側に設けられた裏面側副通路(裏面側に設けられた入口側副通路)が、他方側に設けられた表面側副通路(表面側に設けられた出口側副通路)につながる。
計測用流路面430側の空間と計測用流路裏面431側の空間とは、ハウジング302にインサートされた回路パッケージ400によって区分されており、ハウジング302によっては区分されていない。即ち、通路上流部342と通路下流部341と空洞部382と計測用流路面430側の空間と計測用流路裏面431側の空間とによって形成される一つの空間が、ハウジング302の表面と裏面とを貫通しており、この一つの空間にハウジング302にインサートされた回路パッケージ400が片持ち状に突出している。このような構成とすることで、1回の樹脂モールド工程でハウジング302の両面に副通路溝を成形でき、また両面の副通路溝を繋ぐ構造を合わせて成形することが可能となる。尚、回路パッケージ400はハウジング302の固定部372,373,376に樹脂モールドにより埋設して固定されている。
また、ハウジング302の樹脂モールド成形と同時に、回路パッケージ400をハウジング302にインサートして実装することができる。なお、回路パッケージ400よりも上流側の通路上流部342と下流側の通路下流部341のどちらか一方をハウジング302の幅方向に貫通した構成とすることで、裏側副通路溝334と表側副通路溝332とをつなぐ副通路形状を1回の樹脂モールド工程で成形することも可能である。
なお、裏側副通路溝334の両側には裏側副通路内周壁392と裏側副通路外周壁391とが設けられている。これら裏側副通路内周壁392と裏側副通路外周壁391とのそれぞれの高さ方向の先端部と裏カバー304の内側面とが密着することで、ハウジング302の裏側副通路が成形される。また表側副通路溝332の両側には表側副通路内周壁393と表側副通路外周壁394が設けられ、これら表側副通路内周壁393と表側副通路外周壁394の高さ方向の先端部と表カバー303の内側面とが密着することで、ハウジング302の表側副通路が形成される。
入口350から取り込まれ、裏側副通路溝334により構成される裏側副通路を流れた被計測気体30は、図4の左側から導かれ、被計測気体30の一部は、回路パッケージ400よりも上流側の通路上流部342を介して、回路パッケージ400の計測用流路面430の表面と表カバー303に設けられた突起部356で作られる流路386の方を流れる。他の被計測気体30は計測用流路裏面431と裏カバー304で作られる流路387の方を流れる。その後、流路387を流れた被計測気体30は、回路パッケージ400よりも下流側の通路下流部341を介して表側副通路溝332の方に移り、流路386を流れている被計測気体30と合流する。合流した被計測気体30は、表側副通路溝332を流れ、出口352から主通路に排出される。
裏側副通路溝334から通路上流部342を介して流路386に導かれる被計測気体30の方が、流路387に導かれる流路よりも曲りが大きくなるように、副通路溝が形成されている。これにより、被計測気体30に含まれるごみなどの質量の大きい物質は、曲りの少ない流路387の方に集まる。
流路386では、突起部356は絞りを形成しており、被計測気体30を渦の少ない層流にする。また突起部356は被計測気体30の流速を高める。これにより、計測精度が向上する。突起部356は、計測用流路面430に設けた流量検出部602の熱伝達面露出部436に対向する方のカバーに設ける。
図3A及び図3Cに示すように、ハウジング302には、フランジ312と副通路溝が形成された部分との間に空洞部363が形成されている。この空洞部363の中に、回路パッケージ400の接続端子412と外部接続部305の外部端子の内端361とを接続する端子接続部320が設けられている。接続端子412と内端361とは、スポット溶接あるいはレーザ溶接などにより、電気的に接続される。
次に、図5を用いて、流量検出部602の回路構成について説明する。
図5は熱式流量計300の流量検出回路601を示す回路図である。なお、先に実施例で説明した温度検出部452に関する計測回路も熱式流量計300に設けられているが、図5では省略している。流量検出回路601は、発熱体608を有する流量検出部602と処理部604とを備えている。処理部604は、発熱体608の発熱量を制御すると共に、流量検出部602の出力に基づいて流量を表す信号を、端子662を介して出力する。前記処理を行うために、処理部604は、Central Processing Unit(以下CPUと記す)612と入力回路614、出力回路616、補正値や検出値と流量との関係を表すデータを保持するメモリ618、一定電圧をそれぞれ必要な回路に供給する電源回路622を備えている。電源回路622には車載バッテリなどの外部電源から、端子664と図示していないグランド端子を介して直流電力が供給される。
流量検出部602には被計測気体30を熱するための発熱体608が設けられている。電源回路622から、発熱体608の電流供給回路を構成するトランジスタ606のコレクタに電圧V1が供給され、CPU612から出力回路616を介して前記トランジスタ606のベースに制御信号が加えられ、この制御信号に基づいてトランジスタ606から端子624を介して発熱体608に電流が供給される。
流量検出部602は、発熱体608の発熱量を制御するための発熱制御ブリッジ回路640と、流量を計測するための流量検知ブリッジ回路650と、を有している。発熱制御ブリッジ回路640の一端には、電源回路622から一定電圧V3が端子626を介して供給され、発熱制御ブリッジ回路640の他端はグランド端子630に接続されている。また流量検知ブリッジ回路650の一端には、電源回路622から一定電圧V2が端子625を介して供給され、流量検知ブリッジ回路650の他端はグランド端子630に接続されている。
発熱制御ブリッジ回路640は、熱せられた被計測気体30の温度に基づいて抵抗値が変化する測温抵抗体である抵抗642を有しており、抵抗642と抵抗644、抵抗646、抵抗648とでブリッジ回路640を構成している。抵抗642と抵抗646の交点(接続部)Aおよび抵抗644と抵抗648との交点(接続部)Bの電位差が端子627および端子628を介して入力回路614に入力され、CPU612は交点Aと交点B間の電位差が所定値、この実施例ではゼロボルト、になるようにトランジスタ606から供給される電流を制御して発熱体608の発熱量を制御する。処理部604のCPU612は、被計測気体30がもとの温度に対して一定温度(例えば常に100℃)高くなるように、発熱体608で被計測気体30を加熱する。この加熱制御を高精度に行えるように、発熱体608で暖められた被計測気体30の温度が当初の温度に対して一定温度だけ高くなったときに、交点Aと交点Bとの間の電位差がゼロボルトとなるように発熱制御ブリッジ640を構成する各抵抗の抵抗値が設定されている。
流量検知ブリッジ650は、抵抗652と抵抗654、抵抗656、抵抗658の4つの測温抵抗体で構成されている。抵抗652と抵抗656との交点(接続部)Cと、抵抗654と抵抗658との交点(接続部)Dとの間の電位差が端子631と端子632を介して入力回路614に入力される。例えば被計測気体30の流れがゼロの状態で、前記交点Cと交点Dとの間の電位差がゼロとなるように流量検知ブリッジ650の各抵抗が設定されている。
後述するように、抵抗652や抵抗654とは順方向に流れる被計測気体30に対して上流側に配置される。また、抵抗656と抵抗658とは順方向に流れる被計測気体30に対して下流側に配置される。被計測気体30が図4の矢印方向に流れている場合、上流側に配置されている抵抗652と抵抗654とは、被計測気体30によって冷却され、被計測気体30の下流側に配置されている抵抗656と抵抗658とは、発熱体608により暖められた被計測気体30により暖められ、抵抗656と抵抗658との温度が上昇する。このため、流量検知ブリッジ650の交点Cと交点Dとの間に電位差が発生する。この電位差が端子631と端子632を介して、入力回路614に入力される。CPU612は交点Cと交点Dとの間の電位差に基づいて、メモリ618に記憶されている電位差と主通路124の流量との関係を表すデータを検索し、主通路の流量を求める。このようにして求められた主通路の流量を表す電気信号が端子662を介して出力される。なお、図5に示す端子664および端子662は新たに参照番号を記載しているが、先に説明した図3Aや図3Cに示す接続端子412に含まれている。
メモリ618には、回路パッケージ400の生産後に、気体の実測値に基づいて求められた、ばらつきなどの測定誤差の低減のための補正データが記憶されている。なお、補正データのメモリ618への書き込みは、外部接続部305に設けられた外部端子や補正用端子を使用して行われる。
図6は、流量検出部(流量検出素子)の平面図である。流量検出部(流量検出素子)602は矩形形状の半導体チップとして作られており、図6に示す流量検出部602の左側から右側に向って、矢印の方向に、順方向の被計測気体30が流れる。
半導体チップで構成される流量検出部(流量検出素子)602には、半導体チップの厚さを薄くした矩形形状のダイヤフラム672が成形されて、このダイヤフラム672には、破線で示す薄厚領域(すなわち上述した熱伝達面)603が設けられている。この薄厚領域603の裏面側には空隙が成形されている。
ダイヤフラム672の厚さを薄くすることで、熱伝導率が低くなっており、ダイヤフラム672の薄厚領域603(熱伝達面437)に設けられた抵抗652、抵抗654、抵抗658、抵抗656へダイヤフラム672の外側からダイヤフラム672を介して伝達される熱を抑制している。
ダイヤフラム672の薄厚領域603の中央部には、発熱体608が設けられており、この発熱体608の周囲に発熱制御ブリッジ640を構成する抵抗642が設けられている。そして、薄厚領域603の外側に発熱制御ブリッジ640を構成する抵抗644、646、648が設けられている。このように成形された抵抗642、644、646、648によって発熱制御ブリッジ640が構成される。
また、発熱体608に対して順方向の被計測気体30が流れる矢印方向の上流側に、上流測温抵抗体である抵抗652、抵抗654が配置され、発熱体608に対して順方向の被計測気体30が流れる矢印方向の下流側に、下流測温抵抗体である抵抗656、抵抗658が配置されている。また計測精度を上げるために抵抗652と抵抗654は発熱体608までの距離が互いに略同じになるように配置されており、抵抗656と抵抗658は発熱体608までの距離が互いに略同じになるように配置されている。
尚、本実施例の熱式流量計300は逆流(順方向に対して逆方向に流れる被計測気体)に対しても流量を計測できる。「上流」及び「下流」は順方向の被計測気体30の流れを基準に定めている。
また、上記発熱体608の双方の端部は、図6の下側に記載した端子624および629にそれぞれ接続されている。ここで、図5に示すように、端子624にはトランジスタ606から発熱体608に供給される電流が加えられ、端子629はグランドとして接地される。
抵抗642、抵抗644、抵抗646、抵抗648は、それぞれ接続されて、端子626と630に接続される。端子626には電源回路622から一定電圧V3が供給され、端子630はグランドとして接地される。また、抵抗642と抵抗646との間、抵抗644と抵抗648との間の各接続点は、それぞれ端子627と端子628とに接続される。端子627は交点Aの電位を出力し、端子628は交点Bの電位を出力する。端子625には、電源回路622から一定電圧V2が供給され、端子630はグランド端子として接地グランドされる。また、抵抗654と抵抗658との接続点は端子631に接続され、端子631は交点Dの電位を出力する。抵抗652と抵抗656との接続点は端子632に接続され、端子632は交点Cの電位を出力する。
抵抗642は、発熱体608の近傍に成形されているので、発熱体608からの発熱で暖められた気体の温度を精度良く計測することができる。一方、抵抗644、646、648は、発熱体608から離れて配置されているので、発熱体608からの発熱の影響を受け難い構成に成っている。このため、被計測気体30を所定温度だけ高める制御を高精度に行うことができる。
図7は、本発明にかかる熱式流量計の流路構造に示す模式図、図8Aは、本発明にかかる熱式流量計を主通路の上流側から示す模式図、図8Bは、本発明にかかる熱式流量計を主通路の下流側から示す模式図である。
図7に示す副通路2は、上述したように、複数の副通路溝が組み合わされて構成されるが、以下、各副通路溝を区別せず、副通路2と呼ぶこととする。尚、図7は、図2Cに示す一部の構成を、簡略化或いは省略している。
熱式流量計300のボディ(筐体)1は、ハウジング302と表カバー303と裏カバー304を有する。熱式流量計300は、配管壁32に取り付けられる。配管壁32は、その内側に主通路124を構成する。熱式流量計300を自動車の内燃機関に取り付ける場合、配管壁32は吸気管の壁である。配管壁32は、一定径で延在する円筒形状を有しており、その中心軸線CLは、主通路124を通過する被計測気体の主要流れ方向に一致する。
ボディ1は、配管壁32に設けられた取付穴から主通路124内に挿入されて、主通路124の中心軸線CLに直交する方向に延在するように取り付けられる。ボディ1の先端部1aは、主通路124の中心軸線CLよりも突出した位置に配置されている。ボディ1は、その幅方向中央が中心軸線CLと一致するように配管壁32に取り付けられている。
副通路2は、主通路124を流れる被計測気体30の一部をボディ1内に取り込む構成を有している。具体的には、主通路124を流れる被計測気体30の一部を取り込み、その取り込んだ被計測気体30をボディ1から主通路124に排出する第1通路11と、第1通路11の通路途中で分岐して第1通路11内を流れる被計測気体の一部を取り込み、その取り込んだ被計測気体30を主通路124に排気する第2通路とを有する。
第1通路11は、被計測気体30の主要流れ方向に沿って延在する略直線形状を有し、第2通路21は、第1通路11から主要流れ方向に対して交差する方向に曲がる迂回形状を有しており、第2通路21内に流量検出部602が設けられている。
第1通路11は、ハウジング302の上流端部で主通路124の上流に向かって開口する第1上流開口部11aとハウジング302の下流端部で主通路124の下流に向かって開口する第1下流開口部11bを有する。第2通路21は、第1通路11の通路途中に開口する第2上流開口部21aとハウジング302の下流端部で主通路124の下流に向かって開口する第2下流開口部21bを有する。
そして、第1上流開口部11aと第1下流開口部11bと第2下流開口部21bは、主通路124の中心軸線CLから互いに同じ方向に離間した位置に配置されており、本実施例では、主通路124の中心軸線CLからみて全て先端部1a側に離間した位置に配置されている。
第1上流開口部11aと第1下流開口部11bと第2下流開口部21bは、例えば主通路124の中心軸線CLに沿った断面である一つの仮想平面F1上に位置するように配置されている。仮想平面F1は、主通路124の中心軸線CLから所定距離だけ横方向に離間した位置で中心軸線CLに沿って平行に延在するように設定されており、本実施例では、図8A及び図8Bに示すように、中心軸線CLに沿って平行でかつボディ1の突出方向に平行に延在するように設定されている。なお、仮想平面F1は、中心軸線CLを通る位置に設定してもよい。
第1下流開口部11bと第2下流開口部21bは、ボディ1の下流端部であって、第1上流開口部11aを被計測気体30の主要流れ方向に投影した投影面に重なる位置もしくはその周辺位置に配置されている。本実施例では、第2下流開口部21bの一部が第1上流開口部11aの投影面に重なる位置に配置されており、第2下流開口部21bよりもボディ1の先端部1a側の位置に第1下流開口部11bが配置されている。
主通路124内は、中心軸線CL付近の流速が最も速く、配管壁32に近づくに応じて流速が遅くなる流速分布となっている。したがって、第1上流開口部11aと第1下流開口部11bと第2下流開口部21bを、主通路124の中心軸線CLから互いに同じ方向に離間した位置に配置することによって、互いにほぼ等しい大きさの流速(同一流線)の中に置くことができ、偏流の影響を少なくすることができる。
第1下流開口部11bと第2下流開口部21bは、図8Bに示すように、ボディ1の突出方向に沿って上下に並んで配置されている。ボディ1は、主通路124内を流れる被計測気体の中に置かれるので、ボディ1の下流には後流渦が発生する。後流渦は、ボディの左右、すなわち、ボディ1の幅方向中心を境にして幅方向両側に一個ずつ発生し、各後流渦の大きさは、近傍を通過する被計測気体30の流速の大きさに依存する。したがって、第1下流開口部11bと第2下流開口部21bをボディ1の突出方向に沿って上下に並んで配置することによって、左右の後流渦のいずれか一方側の近傍位置に置くことができ、偏流の影響を少なくすることができる。
入口溝351によって形成される第1通路11の入口部12は、排出溝333によって形成され第1通路11の出口部13に向かって移行するにしたがって流量検出部602から漸次離れるように、被計測気体30の主要流れ方向に対してある所定の角度θをなすように傾斜している。第1通路11の出口部13は、第2上流開口部21aから第1下流開口部11b側に移行するにしたがって断面積が漸次減少するテーパ形状を有しており、第1下流開口部11bは、第1上流開口部11aよりも開口面積が小さくなっている。
第2通路21は、第1通路11から分岐しており、第1通路11の通路途中に第2上流開口部21aが開口しており、第2下流開口部21bがハウジング302の下流端部に開口している。第2通路21は、第2上流開口部21aからボディ1の基端側に向かって湾曲して螺旋状に一周するループ状の曲がりを有している。
図7に太矢印30で示す方向に被計測気体が流れる場合、上述したように、第1上流開口部11aが、副通路2の入口となり、第1下流開口部11bと第2下流開口部21bがそれぞれ副通路2の出口となる。
被計測気体30には、ダスト、オイルミスト、水滴等の汚損物が含まれている場合があり、例えば流量検出部602に対して、ダストが衝突すると破損し、オイルミストが付着すると計測誤差を生じ、水滴が付着すると質量流量の計測値に異常を生じるおそれがある。
本実施例の熱式流量計300では、第1上流開口部11aから副通路2内に流れ込む被計測気体30の一部は、第1通路11の出口部13に流れ込み、第1下流開口部11bから主通路124に排出される。したがって、第1上流開口部11aから副通路2内に流入した汚損物の多くを被計測気体と共に第1下流開口部11bから排出することができる。特に粒径の大きい汚損物は慣性力が大きく直進性が大きいため、出口部13に流入して排出され易くなっている。
第1下流開口部11bから排出されなかった残りの汚損物は、第2上流開口部21aから第2通路21へ向う被計測気体によって運ばれるが、第2通路21は、ループ状の曲がりを有しているため、曲がりの部分で遠心力の作用を受け外周側に偏向される。このため、汚損物は、第2通路21内で流量検出部602から離れた位置を通過する。これらにより、汚損物が流量検出部602に到達する量が削減される。
本実施例では、第1通路11の出口部13が第1下流開口部11b側に移行するにしたがって漸次断面積が小さくなるテーパ形状を有しており、第1下流開口部11bの開口面積が、第1上流開口部11aの開口面積より小さくなっている。したがって、第1上流開口部11aから流入した被計測気体は、出口部13で流量が絞られて、流体抵抗が大きくなる。したがって、出口部13に流入して第1下流開口部11bから流出する被計測気体の流量が抑制され、第2通路21を介して流量検出部602に供給される流量が不足することが回避される。
本実施例によれば、副通路2は、第1上流開口部11aと第1下流開口部11bと第2下流開口部21bが主通路124の中心軸線CLから互いに同じ方向に離間した位置に配置されており、第1上流開口部11aと、第1下流開口部11b及び第2下流開口部21bとが中心軸線CLに沿った方向の一方側と他方側にそれぞれ配置されている。
主通路124内は、中心軸線CL付近の流速が最も速く、配管壁32に近づくに応じて流速が遅くなる流速分布となっている。また、主通路124内に偏流が生じても、中心軸線CLに沿った方向の同一流線上の上流位置における流速と下流位置における流速との間に大きな差は生じない。
したがって、主通路124内を流れる被計測気体の第1上流開口部11aの位置における流速と、第1下流開口部11b及び第2下流開口部21bの位置における流速とがほぼ等しくなり、副通路2は、主通路124内で所定の流速を有する上流位置から副通路2に取り込んだ被計測気体を、副通路2から主通路124内でほぼ等しい流速を有する下流位置に戻すことができる。したがって、第1上流開口部11aと第1下流開口部11bと第2下流開口部21bを、互いにほぼ等しい大きさの流速(同一流線)の中に置くことができる。
したがって、特許文献1の装置のように2つの出口が主通路の中心軸線を間に介して互いに離間する位置に配置されているものや、入口と出口とが主通路の中心軸線を間に介して互いに離間する位置に配置されているものと比較して、主通路124内における偏流の影響を受けにくくすることができ、所期の計測性能を安定して発揮することができる。
本実施例によれば、第1下流開口部11bと第2下流開口部21bは、ボディ1の突出方向に沿って上下に並んで配置されているので、ボディ1の下流に発生する左右の後流渦のうち、いずれか一方側の後流渦の近傍位置に置くことができ、
偏流の影響を少なくすることができる。
本実施例によれば、第2通路21は、第1通路11から主要流れ方向に対して交差する方向に曲がる迂回形状を有しており、第2通路21内に流量検出部602が設けられている。検出素子(流量検出部602)は、通路内に被計測気体を取り込む開口部から遠いほど、開口部よりも上流の流れの影響を受けにくく、開口部からなるべく遠い位置に配置するのが望ましい。したがって、検出素子よりも上流と下流の通路を構成する第2通路21の形状は迂回形状が好ましい。
そして、主通路124から第1通路11に取り込まれた被計測気体の流速分布の変動は、主通路124内における被計測気体の流速分布の変動よりも変動量が少なくなっており、さらに、第1通路11から第2通路21に取り込まれた被計測気体の流速分布の変動は、第1通路11内における被計測気体の流速分布の変動よりも変動量が少なくなっている。このように、被計測気体は、分岐を繰り返すほど、上流側の流速分布の変動の影響を受けにくくなっており、上流側の流速分布の変動の影響を少なくするためには、最も分岐した先の第2通路21内に流量検出部602を設けることが好ましい。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。