本発明に係るタイヤの一例について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)タイヤ1の概略構成、(2)空気供給機構の概略構成、(3)凹部300の概略構成、(4)突起部500の概略構成、(5)作用効果、(6)比較評価、(7)その他実施形態、について説明する。
以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
(1)タイヤ1の概略構成
本実施形態に係るタイヤ1の概略構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るタイヤ1のトレッドパターンの展開図である。図2は、本実施形態に係るタイヤ1のタイヤ径方向trd及びトレッド幅方向twdに沿った断面図である。
タイヤ1は、正規リムであるリムに組み付けられている。タイヤ1は、正規内圧を有し、正規荷重が負荷されている。なお、リムには、リムフランジが設けられる。リムフランジは、トレッド幅方向twdにおいて、ビード部3を支持する。
ここでは、説明の便宜上、タイヤ1は、車両が前進する場合において、回転方向tr1に回転するように当該車両に装着されるものとする。なお、タイヤ1の車両装置時における回転方向は、特に指定されるものではない。
なお、「正規リム」とは、JATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2008年度版に定められた適用サイズにおける標準リムを指す。日本以外では、後述する規格に記載されている適用サイズにおける標準リムを指す。
「正規内圧」とは、JATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2008年度版のタイヤの測定方法で規定された(0-3頁、5項)空気圧である。日本以外では、「正規内圧」とは、後述する規格に記載されているタイヤ寸法測定時の空気圧に対応する空気圧である。
「正規荷重」とは、JATMA(日本自動車タイヤ協会)のYear Book2008年度版の単輪を適用した場合の最大負荷能力に相当する荷重である。日本以外では、「正規荷重」とは、後述する規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)のことである。
規格は、タイヤが生産又は使用される地域に有効な産業規格によって決められている。例えば、アメリカ合衆国では、”The Tire and Rim Association Inc. のYear Book ”であり、欧州では”The European Tire and Rim Technical OrganizationのStandards Manual”である。
図1及び図2に示されるように、タイヤ1は、ビード部3、トレッド部5、サイドウォール部7及びバットレス部9を備える。
ビード部3は、ビードコア10を有する。ビード部3は、リムに接する。
トレッド部5は、路面と接するトレッド踏面5a(踏面5a)を有する。トレッド部5は、トレッド幅方向twdにおいてトレッド部5の外側の端部であるトレッド端部5eを有する。トレッド部5のトレッドパターンは、タイヤ赤道線CL上の点を中心とした点対称の形状である。
サイドウォール部7は、タイヤ1の側面を構成する。サイドウォール部7は、ビード部3とバットレス部9との間に位置する。サイドウォール部7は、バットレス部9を介して、ビード部3とトレッド部5とをつなぐ。
バットレス部9は、トレッド幅方向twdにおいてトレッド部5の外側の端部であるトレッド端部5eからタイヤ径方向trdにおいて内側に延びる。バットレス部9は、サイドウォール部7に連なる。バットレス部9は、トレッド部5とサイドウォール部7との間に位置する。
バットレス部9のタイヤ径方向trdにおける内側の位置は、後述する横溝(ラグ溝60)のトレッド端部5eにおける開口位置の最もタイヤ径方向trd内側の位置と同等である。バットレス部9は、通常走行時では接地しない部分である。
図2に示されるように、タイヤ1は、空気入りタイヤである。タイヤ1は、乗用車などに装着される空気入りタイヤと比較して、トレッド部5のゴムゲージ(ゴム厚さ)が厚い。
具体的には、タイヤ1は、タイヤ外径をOD、タイヤ赤道線CLの位置におけるトレッド部5のゴムゲージをDCとした場合に、DC/OD≧0.015を満たす。
タイヤ外径OD(単位:mm)とは、タイヤ1の外径が最大となる部分(一般的には、タイヤ赤道線CL付近におけるトレッド部5)のタイヤ1の直径である。ゴムゲージDC(単位:mm)は、タイヤ赤道線CLの位置におけるトレッド部5のゴム厚さである。ゴムゲージDCには、ベルト層30の厚さは含まれない。なお、図2に示すように、タイヤ赤道線CLを含む位置に周方向溝50Cが形成されている場合には、周方向溝50Cに隣接する位置におけるトレッド部5のゴム厚さとする。
図2に示されるように、タイヤ1は、1対のビードコア10、カーカス層20及び複数のベルト層30を備える。
ビードコア10は、ビード部3に設けられる。ビードコア10は、ビードワイヤー(不図示)によって構成される。
カーカス層20は、タイヤ1の骨格をなすものである。カーカス層20の位置は、トレッド部5からバットレス部9及びサイドウォール部7を通ってビード部3に渡る。
カーカス層20は、1対のビードコア10間に跨り、トロイダル形状を有する。カーカス層20は、本実施形態において、ビードコア10を包む。カーカス層20は、ビードコア10に接する。トレッド幅方向twdにおけるカーカス層20の両端は、一対のビード部3によって支持されている。
カーカス層20は、トレッド面視において、所定方向に延在するカーカスコードを有する。本実施形態において、カーカスコードは、トレッド幅方向twdに沿って延在する。カーカスコードとして、例えば、スチールワイヤが用いられる。
ベルト層30は、トレッド部5に配置される。ベルト層30は、タイヤ径方向trdにおいてカーカス層20の外側に位置する。ベルト層30は、タイヤ周方向に延びる。ベルト層30は、カーカスコードが延在する方向である所定方向に対して傾斜して延在するベルトコードを有する。ベルトコードとして、例えば、スチールコードが用いられる。
複数のベルト層30は、第1ベルト層31、第2ベルト層32、第3ベルト層33、第4ベルト層34、第5ベルト層35及び第6ベルト層36を含む。
第1ベルト層31は、タイヤ径方向trdにおいてカーカス層20の外側に位置する。第1ベルト層31は、タイヤ径方向trdにおいて、複数のベルト層30の中で最も内側に位置する。第2ベルト層32は、タイヤ径方向trdにおいて第1ベルト層31の外側に位置する。第3ベルト層33は、タイヤ径方向trdにおいて第2ベルト層32の外側に位置する。第4ベルト層34は、タイヤ径方向trdにおいて第3ベルト層33の外側に位置する。第5ベルト層35は、タイヤ径方向trdにおいて第4ベルト層34の外側に位置する。第6ベルト層36は、タイヤ径方向trdにおいて第5ベルト層35の外側に位置する。第6ベルト層36は、タイヤ径方向trdにおいて、複数のベルト層30の中で最も外側に位置する。タイヤ径方向trdにおいて、内側から外側に向かって、第1ベルト層31、第2ベルト層32、第3ベルト層33、第4ベルト層34、第5ベルト層35、第6ベルト層36の順に配置される。
本実施形態において、トレッド幅方向twdにおいて、第1ベルト層31及び第2ベルト層32の幅は、トレッド踏面5aの幅TWの25%以上、かつ、70%以下である。トレッド幅方向twdにおいて、第3ベルト層33及び第4ベルト層34の幅は、トレッド踏面5aの幅TWの55%以上、かつ、90%以下である。トレッド幅方向twdにおいて、第5ベルト層35及び第6ベルト層36の幅は、トレッド踏面5aの幅TWの60%以上、かつ、110%以下である。
本実施形態において、トレッド幅方向twdにおいて、第5ベルト層35の幅は、第3ベルト層33の幅よりも大きく、第3ベルト層33の幅は、第6ベルト層36の幅以上であり、第6ベルト層36の幅は、第4ベルト層34の幅よりも大きく、第4ベルト層34の幅は、第1ベルト層31の幅よりも大きく、第1ベルト層31の幅は、第2ベルト層32の幅よりも大きい。トレッド幅方向twdにおいて、複数のベルト層30のうち、第5ベルト層35の幅が最も大きく、第2ベルト層32の幅が最も小さい。従って、複数のベルト層30は、トレッド幅方向twdにおける長さが最も短い最短ベルト層(すなわち、第2ベルト層32)を含む。
最短ベルト層である第2ベルト層32は、トレッド幅方向twdにおける端部であるベルト端30eを有する。
本実施形態において、トレッド面視において、カーカスコードに対する第1ベルト層31及び第2ベルト層32のベルトコードの傾斜角度は、70度以上、かつ、85度以下である。カーカスコードに対する第3ベルト層33及び第4ベルト層34のベルトコードの傾斜角度は、50度以上、かつ、75度以下である。カーカスコードに対する第5ベルト層35及び第6ベルト層36のベルトコードの傾斜角度は、50度以上、かつ、70度以下である。
複数のベルト層30は、内側交錯ベルト群30Aと、中間交錯ベルト群30Bと、外側交錯ベルト群30Cと、を含む。
内側交錯ベルト群30Aは、1組のベルト層30からなりタイヤ径方向trdにおいてカーカス層20の外側に位置する。内側交錯ベルト群30Aは、第1ベルト層31と第2ベルト層32とによって、構成される。中間交錯ベルト群30Bは、1組のベルト層30からなりタイヤ径方向trdにおいて内側交錯ベルト群30Aの外側に位置する。中間交錯ベルト群30Bは、第3ベルト層33と第4ベルト層34とによって、構成される。外側交錯ベルト群30Cは、1組のベルト層30からなりタイヤ径方向trdにおいて中間交錯ベルト群30Bの外側に位置する。外側交錯ベルト群30Cは、第5ベルト層35と第6ベルト層36とによって、構成される。
トレッド幅方向twdにおいて、内側交錯ベルト群30Aの幅は、トレッド踏面5aの幅の25%以上、かつ、70%以下である。トレッド幅方向twdにおいて、中間交錯ベルト群30Bの幅は、トレッド踏面5aの幅TWの55%以上、かつ、90%以下である。トレッド幅方向twdにおいて、外側交錯ベルト群30Cの幅は、トレッド踏面5aの幅TWの60%以上、かつ、110%以下である。
トレッド面視において、カーカスコードに対する内側交錯ベルト群30Aのベルトコードの傾斜角度は、70度以上、かつ、85度以下である。トレッド面視において、カーカスコードに対する中間交錯ベルト群30Bのベルトコードの傾斜角度は、50度以上、かつ、75度以下である。トレッド面視において、カーカスコードに対する外側交錯ベルト群30Cのベルトコードの傾斜角度は、50度以上、かつ、70度以下である。
トレッド面視において、カーカスコードに対するベルトコードの傾斜角度は、内側交錯ベルト群30Aの傾斜角度が最も大きい。中間交錯ベルト群30Bのカーカスコードに対するベルトコードの傾斜角度は、外側交錯ベルト群30Cのカーカスコードに対するベルトコードの傾斜角度以上である。
図1及び図2に示されるように、トレッド部5には、タイヤ周方向tcdに延びる複数の溝部(周方向溝50)及び複数の横溝部(ラグ溝60)が形成される。また、トレッド部5には、複数の周方向溝50及び複数のラグ溝60によって区画された複数の陸部(周方向陸部70)が形成される。
複数の周方向溝50は、タイヤ周方向tcdに沿って延びる。複数の周方向溝50は、周方向溝50A、50B、50Cを含む。
周方向溝50Aは、トレッド幅方向twdにおいて最も外側に位置する周方向溝である。周方向溝50Cは、タイヤ赤道線CL上に位置する。
周方向溝50Bは、トレッド幅方向twdにおいて周方向溝50Aと周方向溝50Cとの間に位置する。具体的には、ベルト端30eから、タイヤのトレッド面視において周方向溝50Bの幅方向における中心を通る溝中心線WLまでのトレッド幅方向twdに沿った長さDLは、200mm以下であるように、周方向溝50Bは、形成される。
周方向溝50Bの溝底50B2には、後述するように、複数の突起部500が設けられる。このため、周方向溝50Bが位置するトレッド部5の周辺の温度は、低減する。ベルト端30eから溝中心線WLまでのトレッド幅方向twdにおける長さDLが200mm以下であるため、ベルト端30eの温度が低減する。これにより、ベルト端30e周辺のゴム部材は、熱による劣化が抑制されるため、発熱に起因したベルト端30eを起点とした第2ベルト層32と周辺のゴム部材との剥離が抑制される。トレッド部5の発熱の影響を最も受けやすい最短ベルト層である第2ベルト層32の剥離が抑制できるため、タイヤ1の耐久性を向上することができる。
また、トラック、バス及び建設用車両などに装着される重荷重用タイヤのトレッド部は、ゴムゲージ(厚さ)が厚く、ゴムのボリュームが多い。このような重荷重用タイヤが変形を繰り返すとトレッド部の温度が上昇する。このような重荷重用タイヤでは、特に、タイヤ赤道線CL付近のトレッド部5よりもトレッド幅方向twdにおいて外側のトレッド部5の方が多く発熱していた。タイヤ赤道線CLよりも外側に位置する周方向溝50Bの溝底50B2に、複数の突起部500が設けられることにより、トレッド部5から効率的に熱が放熱される。
ラグ溝60は、周方向溝50Bからバットレス部9まで延在する。ラグ溝60は、バットレス部9に開口部60aを有する。従って、ラグ溝60は、トレッド端部5eにおいて、開口している。ラグ溝60は、周方向溝50A及び周方向溝50Bに連通する。トレッド幅方向twdにおけるラグ溝60の内側の端部は、周方向溝50Bに連通する。
なお、トレッド幅方向におけるトレッド部5の両端部(トレッド端部5e)の幅をTWと表す。本実施形態において、トレッド部5の両端とは、タイヤが路面に接した状態における設置範囲のトレッド幅方向twdの両端を示す。タイヤが路面に接した状態とは、タイヤが正規リムに装着され、かつ、正規内圧及び正規荷重が負荷された状態を示す。
タイヤ1のトレッド面視において、ラグ溝60は、トレッド幅方向twdに対して傾斜して延在する。トレッド幅方向twdに対するラグ溝60の傾斜角度φは、15度以上、かつ、60度以下である。
図1に示されるようにタイヤ1が回転方向tr1に回転する場合には、タイヤ1の回転に相対的に発生する回転方向tr1とは反対向きの空気の流れ(相対風)が発生する。図1の左側のラグ溝60は、トレッド幅方向twdにおいて外側に向かうに連れ、回転方向tr1において前側に向かう。また、ラグ溝60は、トレッド幅方向twdに対するラグ溝60の傾斜角度φは、15度以上、かつ、60度以下である。このため、タイヤ1が回転方向tr1に回転する場合には、外部からラグ溝60に入り込む空気の流れが、開口部60a付近のラグ溝60の側壁に衝突し停滞することを抑制できる。その結果、ラグ溝60の内部の熱伝達率が向上するとともに、空気の流れが周方向溝50Bにスムーズに達するため、トレッド部5の温度を低減させることができる。
一方、タイヤ1が回転方向tr1に回転する場合には、図1の右側のトレッド部5において、タイヤ1の回転に相対的に発生する回転方向tr1とは反対向きの空気の流れ(相対風)が発生する。トレッド幅方向twdに対するラグ溝60の傾斜角度φは、15度以上、かつ、60度以下であるため、ラグ溝60の内部の空気は、ラグ溝60に沿って流れやすくなる。その結果、ラグ溝60からトレッド幅方向twdにおいて外側への空気の排出が促進され、ラグ溝60の内部を流れる空気の流量を増加させることができる。これにより、ラグ溝60の内部の熱伝達率が向上し、トレッド部5の温度を低減させることができる。
さらに、周方向溝50Bを流れる空気がラグ溝60に流入しやすくなる。周方向溝50Bの内部を通過することにより熱を蓄えた空気が、ラグ溝60を介して外部へ流れるため、トレッド部5からの放熱が促進される。
なお、傾斜角度φが60度以下であるため、後述する陸部ブロック100、200のブロック剛性を確保することができる。その結果、タイヤ1の回転に伴う陸部ブロック100、200の変形が抑制さえるため、トレッド部5の発熱量が増加することを抑制できる。
複数の周方向陸部70は、タイヤ周方向に沿って延びる。複数の周方向陸部70は、周方向陸部70A、70B、70Cを含む。
周方向陸部70Aは、トレッド幅方向twdにおいて最も外側に位置する周方向陸部である。周方向陸部70Bは、トレッド幅方向twdにおいて周方向陸部70Aと周方向陸部70Cとの間に位置する。周方向陸部70Bは、トレッド幅方向twdにおいて最も内側に位置する周方向陸部である。
周方向陸部70A及び周方向陸部70Bには、ラグ溝60が形成される。トレッド部5には、ラグ溝60によって区画された陸部ブロック100、200が設けられる。すなわち、周方向陸部70Aが、ラグ溝60によって分断されることにより、陸部ブロック100が形成される。周方向陸部70Bは、ラグ溝60によって分断されることにより、陸部ブロック200が形成される。
本実施形態では、タイヤ1は、例えば、偏平率80%以下、リム径が57”以上、荷重負荷能力が60mton以上、荷重係数(k−factor)が1.7以上のラジアルタイヤを想定している。なお、タイヤ1は、これに限定されるものではない。
(2)空気供給機構の概略構成
本実施形態に係る空気供給機構の概略構成について、図1から図4を参照しながら説明する。図3は、陸部ブロック100を拡大した拡大斜視図である。図4は、トレッド面視における周方向陸部70Aの平面図である。
タイヤ1には、横溝部(ラグ溝60)に空気を供給する空気供給機構が設けられている。本実施形態において、空気供給機構は、テーパ面100Rによって構成される。
図1から図4に示されるように、陸部ブロック100は、路面に当接する踏面100Sと、陸部ブロック100のトレッド幅方向twd外側に形成される側面101と、陸部ブロック100のトレッド幅方向twd内側に位置する側面102と、陸部ブロック100のタイヤ周方向tcdの一方に形成されるラグ溝60の溝壁を形成する横溝面103と、陸部ブロック100のタイヤ周方向tcdの他方に形成されるラグ溝60の溝壁を形成する横溝面104とを有する。また、陸部ブロック100は、踏面100Sと側面101と横溝面103によって形成される角部100Aにおいて、踏面100Sと側面101と横溝面103とに交わるテーパ面100Rを有する。なお、角部100Aは、上述したトレッド部5のトレッド端部5eを構成する。
側面101は、陸部ブロック100のバットレス部9側に形成される。側面101は、タイヤ周方向tcdに沿って延びる。側面101は、ラグ溝60の溝壁を形成する陸部ブロック100の横溝面103,104に連なる。側面102は、トレッド幅方向twdにおいて、側面101に向かい合うように形成される。側面102は、陸部ブロック100のトレッド幅方向twd内側に隣接する周方向溝50Aの溝壁を形成する。
横溝面103は、トレッド幅方向twdに延びる。横溝面103は、陸部ブロック100のタイヤ周方向tcdの一方に位置する。横溝面104は、トレッド幅方向twdに延びる。横溝面104は、陸部ブロック100のタイヤ周方向tcdの他方に位置する。
テーパ面100Rは、踏面100Sと側面101とによって形成される角部100Aにおいて、タイヤ周方向tcdに向かって延びる。テーパ面100Rは、陸部ブロック100のタイヤ周方向tcd及びタイヤ径方向trdの断面において、タイヤ周方向tcdの一方に向かうにつれて、タイヤ径方向trd内側に向かって傾斜する。テーパ面100Rは、陸部ブロック100のトレッド幅方向twd及びタイヤ径方向trdの断面においても、トレッド幅方向twd外側に向かうにつれて、タイヤ径方向trd内側に向かって傾斜している。
すなわち、テーパ面100Rは、踏面100Sと側面101と横溝面103とが交わる頂点を面取りするように形成されている。言い換えれば、テーパ面100Rは、踏面100Sと側面101と横溝面103との間において、それぞれの面に少なくとも一辺を有するように形成されている。
テーパ面100Rは、陸部ブロック100のトレッド幅方向twdの側面101と側面102との内、側面101に一辺を有し、側面102には一辺を有していない。つまり、陸部ブロック100において、トレッド幅方向twdに互いに対向する側面101と側面102との内、一方(側面102)は、テーパ面100Rに交わらない。
更に、テーパ面100Rは、陸部ブロック100のタイヤ周方向tcdの横溝面103と横溝面104との内、横溝面103に一辺を有し、横溝面104には一辺を有していない。つまり、陸部ブロック100において、タイヤ周方向tcdに互いに対向する横溝面103と横溝面104との内、一方(横溝面104)は、テーパ面100Rに交わらない。
上述のようにテーパ面100Rを形成することによって、タイヤ1の回転時にテーパ面100Rに沿って流れる空気は、タイヤ周方向tcdに隣接する他の陸部ブロック100の横溝面104に衝突し易くなる。すなわち、テーパ面100Rに沿って流れる空気は、陸部ブロック100のタイヤ周方向tcdに隣接するラグ溝60内へ取り込まれ易くなる。
本実施形態において、テーパ面100Rの形状は、平面形状である。すなわち、テーパ面100Rの形状は、タイヤ周方向tcd及びタイヤ径方向trdの断面、又は、トレッド幅方向twd及びタイヤ径方向trdの断面において、線形的に延びる。
また、図3に示すように、テーパ面100Rと踏面100Sと側面101とが交わる頂点P2と、テーパ面100Rと踏面100Sと横溝面103とが交わる頂点P1と、テーパ面100Rと側面101と横溝面104が交わる頂点P3とを通る平面Svを仮定した場合、平面Svと踏面100Sとのなす角度θ1は、0度<θ1<45度の範囲である。又は、平面Svと側面101とのなす角度θ2は、0度<θ2<45度の範囲である。つまり、角度θ1又は角度θ2の一方が、0度<θ1(又はθ2)<45度の範囲であればよい。また、より好ましくは、角度θ1(又は角度θ2)が、10度<θ1(又はθ2)<30度の範囲である。なお、本実施形態では、テーパ面100Rの形状は、平面形状であるため、テーパ面100Rと平面Svとは同一の面になる。
テーパ面100Rは、頂点P1と頂点P2とのトレッド幅方向twdにおける間隔L1よりも、頂点P1と頂点P3とのタイヤ径方向trdにおける間隔L2を長くするように形成されていることが好ましい。これは次の理由による。すなわち、間隔L1よりも間隔L2を長くすることによって、陸部ブロック100の摩耗が、踏面100Sから進行した場合であっても、テーパ面100Rがより残りやすくなるためである。つまり、テーパ面100Rによる効果の持続性を向上させることが可能になる。なお、間隔L2は、50mm以上であることがより好ましい。
タイヤ1は、陸部ブロック100が、踏面100Sとトレッド幅方向twd外側に位置する側面101とによって形成される角部100Aにおいて、踏面100Sと側面101と横溝面103とに交わるテーパ面100Rを有する。
このため、図4に示されるように、タイヤ1が回転方向tr1に回転する場合には、タイヤ1の回転によって発生する回転方向tr1とは反対向きの空気の流れ(相対風)ARが、テーパ面100Rに沿って流れる。テーパ面100Rに沿って流れた空気の流れARは、回転方向tr1の後側に配設される陸部ブロック100の横溝面104に衝突し、ラグ溝60に導かれる。このため、陸部ブロック100の側面101からラグ溝60へと空気の流れARが形成される。つまり、タイヤ1の周囲の空気がラグ溝60内へ取り込まれ、ラグ溝60の内部を流れる空気の流量を増加させることができる。その結果、ラグ溝60の内部の熱伝達率が向上し、トレッド部5の温度を低減させることができる。
また、タイヤ1が回転方向tr2に回転する場合には、タイヤ1の回転によって、ラグ溝60の内部において発生する回転方向tr2とは反対向きの空気の流れ(相対風)ARが、テーパ面100Rに沿って流れ出る。このため、ラグ溝60からトレッド幅方向twd外側への空気の排出が促進され、ラグ溝60の内部を流れる空気の流量を増加させることができる。これにより、ラグ溝60の内部の熱伝達率が向上する。更には、トレッド部5の温度を低減させることができる。
(3)凹部300の概略構成
本実施形態に係る凹部300の概略構成について、図5を参照しながら説明する。図5(a)から図5(c)は、トレッド面視における凹部300の拡大平面図である。
図5(a)から図5(c)に示されるように、周方向陸部70Cには、凹部300が形成される。凹部300は、ラグ溝60の延在方向に位置する。凹部300は、ラグ溝60に対向する周方向陸部70Cの溝壁面に形成される。
本実施形態において、凹部300は、トレッド平面視において、三角形状である。トレッド平面視において、凹部300の一方の壁面300aは、ラグ溝60の一方の壁面の延長線上に沿って延び、凹部300の他方の壁面300bは、ラグ溝60の他方の壁面の延長線に交差する。トレッド平面視において、ラグ溝60に対向する周方向陸部70Cの溝壁面とラグ溝60の一方の壁面の延長線とが交わる点は、交差点aであり、ラグ溝60に対向する周方向陸部70Cの溝壁面とラグ溝60の他方の壁面の延長線とが交わる点は、交差点bである。トレッド平面視において、周方向溝50B側の壁面300aの端部Aと交差点aとは、同じ位置にあり、周方向溝50B側の壁面300bの端部Bと交差点bとは、異なる位置にある。端部Bは、交差点aと交差点bとの間に位置しない。従って、端部Aから端部Bまでの長さは、交差点aから交差点bまでの長さよりも長い。なお、トレッド平面視において、壁面300aと壁面300bとの接点は、頂点Cである。
トレッド平面視において、ラグ溝60に対向する周方向陸部70Cの溝壁面に沿った延長線と壁面300aとがなす角度は、角度αであり、ラグ溝60に対向する周方向陸部70Cの溝壁面に沿った延長線と壁面300bとがなす角度は、角度βである。本実施形態において、角度βは、角度αよりも小さい。20度≦α≦70度、β≦45度を満たすことが好ましい。
ラグ溝60の延在方向であり、かつ、延在方向に直交する方向における中心を通るラグ溝中心線から周方向溝50Bの延在方向における凹部300の中心がずれるように、凹部300は、形成されている。凹部300の中心とは、端部Aと端部Bとを結ぶ直線の中心又は頂点Cの少なくとも一方である。
図5(b)に示されるように、凹部300は、トレッド幅方向twdの長さ300Wが、タイヤ周方向tcdに沿って変化する。すなわち、タイヤ周方向tcdにおいて、端部Bから頂点Cに向かうにつれ、長さ300Wが漸増する。タイヤ周方向tcdにおいて、端部Cから頂点Aに向かうにつれ、長さ300Wが漸減する。
凹部300は、タイヤ周方向tcdの長さ300Lが、周方向溝50Bに開口する側から奧に向かって減少する。すなわち、長さ300Lは、端部Aと端部Bとの間の距離が最大であり、頂点に向かうにつれ減少する。
図5(c)に示されるように、凹部300が形成されることにより、トレッド幅方向twdの外側から内側へラグ溝60に沿って流れてきた空気の流れARは、凹部300の壁面300bにぶつかる。図5(c)において、壁面300bの上側には、壁面300aが位置するため、壁面300bの上側には空気の流れARが流れにくい。このため、空気の流れARは、周方向溝50Bに導かれてスムーズに流れる。
凹部300が形成されることにより、タイヤ周方向tcdの一方の方向に空気の流れARが出来るため、周方向溝50Bの内部で空気の流れARが停滞しにくくなる。その結果、周方向溝50Bの内部の熱伝達率が向上し、トレッド部5の温度を低減させることができる。
(4)突起部500の概略構成
本実施形態に係る突起部500の概略構成について、図6から図9を参照しながら説明する。
図6は、周方向溝50Bの一部破断斜視図である。図7は、周方向溝50Bのトレッド平面視(トレッド部5の上方の視点)における形状を示す。図8は、図7のF5方向からの周方向溝50Bの形状を示す。図9は、図7のF6−F6線に沿った周方向溝50B(突起部500)の断面図である。図10は、タイヤ径方向trd及び溝中心線WLに沿った周方向溝50B(突起部500)の断面図である。
図6から図10に示されるように、周方向溝50Bの溝底50B2には、複数の突起部500が設けられる。
本実施形態では、突起部500は、周方向溝50Bにおいて所定の間隔P毎に設けられる。また、突起部500は、周方向溝50Bを形成する一方の側壁50B1から、他方の側壁50B3に向けて延在する。本実施形態では、突起部500は、一方の側壁50B1から、他方の側壁50B3まで連なる。つまり、突起部500は、周方向溝50Bの溝幅W全体に渡って設けられる。本実施形態では、側壁50B1及び側壁50B3は、タイヤ周方向に略平行に延び、側壁50B1と側壁50B3とは、互いに対向するように形成される。
突起部500は、周方向溝50Bの溝底50B2からタイヤ径方向外側に立設するように設けられる。本実施形態では、突起部500は、溝底50B2から立ち上がる平板状のゴムであり、タイヤ周方向tcdに対して傾斜して設けられる。
具体的には、図7に示されるように、溝中心線WLと突起部500とがなす角度θfは、10度以上、かつ60度以下である。角度θfは、タイヤ1のトレッド面視において、突起部500の延在方向xと、周方向溝50Bの幅方向における中心を通る溝中心線WLとがなす角度であって、タイヤ1の回転方向と逆側に形成される角度である。つまり、角度θfは、タイヤ1が回転方向tr1に転動することによって発生する空気の流れARの進行方向側に形成される角度である。
さらに、タイヤ1のトレッド面視において、溝中心線WLに沿った突起部500の長さをLとし、所定間隔をPとした場合、周方向溝50Bに設けられる突起部500は、0.75L≦P≦10Lの関係を満たす。
突起部500は、0.75L≦Pの関係を満たすため、周方向溝50Bに設けられる突起部500の数が多くなりすぎず、周方向溝50Bを流れる空気の速度が低下することを抑制できる。突起部500は、P≦10Lの関係を満たすため、周方向溝50Bに設けられる突起部500の数が少なくなりすぎず、効率的に空気の流れAR1が、螺旋状(スワール状)の流れに変化する。
また、1.25L<Pの関係を満たすことが好ましい。1.5L<Pの関係を満たすことがより好ましく、2.0L<Pの関係を満たすことがさらに好ましい。これらの関係を満たすことによって、周方向溝50Bに設けられる突起部500がより適切な数となる。空気の流れARが通過する溝底50B2の面積が小さくなりすぎないため、溝底50B2から熱が効率よく放熱される。
長さLは、周方向溝50Bの延在方向ged(本実施形態では、タイヤ周方向)における突起部500の一端から他端までの長さである。間隔Pは、突起部500と溝中心線WLとが交差する突起部500の中心間の距離である。
また、周方向溝50Bの側壁50B1から側壁50B3までの距離を溝幅Wとした場合、長さLは、W/tanθf+TWf/sinθfとして表すこともできる。ここで、突起幅TWfは、図9に示すように、突起部500の短手方向、つまり、突起部500の延在方向xに直交する方向における突起部500の幅である。
また、図8に示すように、突起部500の溝底50B2からの高さをHfとし、周方向溝50Bの踏面5aから溝底50B2(最深部)までの深さをDとした場合、突起部500は、0.03D<Hf≦0.4Dの関係を満たす。さらに、周方向溝50Bの溝幅をWとした場合、溝底50B2は、少なくとも0.2Wの幅において平坦である。つまり、溝底50B2の溝幅Wにおける溝中心線WLを含む中央部は、凹凸がなく溝底50B2の表面が平滑である。
また、周方向溝50Bの溝幅をWとし、突起部500の延在方向xに直交する方向における突起部500の幅をTWfとした場合、TWf/cosθf≦0.9Wの関係を満たす。
TWf/cosθf≦0.9Wの関係を満たすため、突起幅TWfが厚くなりすぎない。このため、突起部500を乗り越えた空気の流れAR1は、周方向溝50の溝底50B2に容易に達するため、溝底50B2から熱が効率よく放熱される。
また、突起部500は、0.2≦TWfの関係を満たすように、設けられることが好ましい。0.2≦TWfの関係を満たすことにより、突起幅TWfを確保できるため、突起部500の耐久性が向上する。タイヤ1の使用時に突起部500が損傷することを抑制できるため、車両の走行に伴うトレッド部5の温度上昇を効果的に抑制できる。
なお、長さLは、例えば、10mm〜100mmの範囲である。間隔Pは、例えば、1.25mm〜4.00の範囲である。突起高さHfは、例えば、5mm〜15mmの範囲である。突起幅TWfは、例えば、0.5mm〜10mmの範囲である。深さDは、例えば、40nn〜120mmの範囲である。溝底50B2の溝幅Wは、例えば、5mm〜20mmの範囲である。
図6から図10に示されるように、複数の突起部500は、第1突起部510と第2突起部520とを含む。第2突起部520は、周方向溝50Bの延在方向gedにおいて第1突起部510に隣接する。本実施形態では、第1突起部510と第2突起部520とは、交互に配置される。
図10に示されるように、第1突起部510の溝底50B2からの高さ(第1突起高さ)は、Hf1である。第2突起部520の溝底50B2からの高さ(第2突起高さ)は、Hf2である。第1突起高さHf1と、第2突起高さHf2とは、異なる。従って、複数の突起部500は、高さの異なる突起部500を有する。
本実施形態では、第1突起高さHf1は、第2突起高さHf2よりも低い。第1突起高さHf1と第1突起高さHf2との差は、hである。
なお、0.03D<Hf1≦0.4Dの関係を満たし、0.03D<Hf2≦0.4Dの関係を満たすことが好ましい。
(5)作用効果
タイヤ1によれば、周方向溝50Bの溝底50B2には、複数の突起部500が設けられ、突起部500は、周方向溝50Bを形成する一方の側壁50B1から、一方の側壁50B1に対向する他方の側壁50B3に向けて延在し、突起部500は、周方向溝50Bにおいて、所定間隔毎に設けられ、0.75L≦P≦10Lの関係を満たし、第1突起高さHf1と第2突起高さHf2とは、異なる。
タイヤ1の回転によって回転方向tr1とは反対向きの空気の流れAR1、AR2(相対風)が、周方向溝50Bに発生する。図11(a)及び図11(b)に示されるように、空気の流れに対して遠くに位置する突起部500の端部側の側壁50B3に沿った空気の流れAR1は、進行方向に突起部500が位置するため、周方向溝50Bに沿って進めずに、周方向溝50Bの延在方向に対して傾斜しながら進み、突起部500を乗り越える。これにより、空気の流れAR1は、螺旋状(スワール状)の流れに変化する。周囲の空気を巻き込んで進むため、空気の流量が増大するとともに、空気の流れAR1の速度が上昇する。これにより、トレッド部5からの放熱が促進される。
また、空気の流れに対して近くに位置する突起部500の端部側の側壁50B1に沿った空気の流れAR2は、突起部500の延在方向に沿って進む。その後、空気の流れAR2は、周方向溝50Bの他方の側壁50B3側で、周方向溝50Bの外部へ流れ出る。周方向溝50Bの内部を通過することにより熱を蓄えた空気が外部へ流れるため、トレッド部5からの放熱が促進される。
突起部500は、0.75L≦Pの関係を満たすため、周方向溝50Bに設けられる突起部500の数が多くなりすぎず、周方向溝50Bを流れる空気の速度が低下することを抑制できる。突起部500は、P≦10Lの関係を満たすため、周方向溝50Bに設けられる突起部500の数が少なくなりすぎず、効率的に空気の流れAR1が、螺旋状(スワール状)の流れに変化する。これにより、トレッド部5からの放熱が促進される。
これらの結果、トレッド部5が効率的に冷却されるため、車両の走行に伴うトレッド部5の温度上昇を効果的に抑制し得る。
さらに、タイヤ1によれば、第1突起高さHf1と第2突起高さHf2とは、異なる。突起高さHfを変化させることにより、騒音性能及び排水性能といったタイヤに求められている他の性能が調整し易くなる。その結果、高性能のタイヤを製造することが可能となる。
また、1.25L<Pの関係を満たすことが好ましい。これによれば、周方向溝50Bに設けられる突起部500がより適切な数となる。空気の流れARが通過する溝底50B2の面積が小さくなりすぎないため、溝底50B2から熱が効率よく放熱される。
また、突起部500の延在方向と溝中心線WLとがなす角度θfは、10度以上、かつ、60度以下であることが好ましい。角度θfが、10度以上であることにより、突起部500と側壁50B1(または側壁50B3)とにより形成される鋭角部分によって、周方向溝50Bを流れる空気の流れARが弱くなることを抑制できる。また、周方向溝50Bに突起部500を容易に製造することができる。角度θfが60度以下であることにより、周方向溝50Bを流れる空気の流れAR2を螺旋状の流れに効率よく変化させることができる。このため、溝底50B2を通過する風量が増加し、トレッド部5から効率的に熱が放熱される。
また、0.03D<Hf≦0.4Dの関係を満たすことが好ましい。0.03D<Hfの関係を満たすことにより、突起部500の高さHfが所定の高さ以上となるため、周方向溝50Bを流れる空気の流れAR2を螺旋状の流れに効率よく変化させることができる。このため、溝底50B2を通過する風量が増加し、トレッド部5から効率的に熱が放熱される。Hf≦0.4Dの関係を満たすことにより、螺旋状の流れに変化した空気の流れAR1が溝底50B2に到達しやすくなる。このため、溝底50B2から熱が効率よく放熱される。
また、溝底50B2は、少なくとも0.2Wの幅において平坦である。これにより、溝底50B2を通過する空気の流れARが妨げられないため、トレッド部5の温度上昇をさらに効果的に抑制し得る。
また、DC/OD≧0.015を満たすことが好ましい。DC/OD≧0.015を満たすタイヤは、トレッド部5のゴムゲージが厚いため、トレッド部5に熱が蓄積されやすい。このため、DC/OD≧0.015を満たすタイヤにおいて、車両の走行に伴うトレッド部5の温度上昇を効果的に抑制することによって、トレッド部5の温度上昇に起因した故障を抑制することができる。加えて、トレッド部5のゴムゲージが厚いため、トレッド部5を構成するゴム部材の変形が大きくなる。このため、DC/OD≧0.015を満たすタイヤにおいて、突起部500の耐久性を向上させることにより、トレッド部5の温度上昇に起因した故障を抑制することができる。
また、突起部500は、一方の側壁50B1から他方の側壁50B3まで連なる。これにより、突起部500に沿って進んだ空気の流れAR1は、側壁50B3付近で突起部500を乗り越えることができるため、効率的に空気の流れAR1が、螺旋状(スワール状)の流れに変化する。このため、トレッド部5から効率的に熱が放熱される。
(6)比較評価
本発明に係るタイヤの効果を確かめるために、以下の測定を行った。なお、本発明は、以下の実施例に限定されない。
試験タイヤとして、鉱山用のタイヤ(59/80R63)を用いた。周方向溝に突起部を設け、溝中心線と突起部とがなす角度θf、長さLに掛ける係数、溝深さDに掛ける係数を変化させて、タイヤの回転速度が20km/hにおける熱伝達率を測定した。なお、突起部がない場合の熱伝達率を100とし、測定した熱伝達率と比較した。結果を図12から図14に示す。図12は、角度θfと周方向溝における熱伝達率(指数表示)との関係を示す。図13は、突起部の長さLに掛ける係数と、周方向溝における熱伝達率との関係を示す。図14は、溝深さDに掛ける係数と、周方向溝における熱伝達率との関係を示す。
図12に示されるように、角度θfは、10度以上、かつ、60度以下であれば、熱伝達率が良好であることが分かった。特に、角度θfは、15度以上、かつ、40度以下であれば、熱伝達率がさらに良好であることが分かった。
図13に示されるように、長さLに掛ける係数は、0.75以上、かつ、10以下であれば、熱伝達率が良好であることが分かった。長さLに掛ける係数は、1.25以上であれば、熱伝達率がさらに良好であることが分かった。長さLに掛ける係数は、1.5以上、かつ、7以下であれば、熱伝達率がさらに良好であることが分かった。
図14に示されるように、溝深さDに掛ける係数は、0.03以上、かつ、0.4以下であれば、熱伝達率が良好であることが分かった。
次に、突起高さの変化と熱伝達率との関係を確かめるために、上述と同様のタイヤを用いて、以下の測定を行った。
実施例1〜3及び比較例2に係るタイヤのいずれも、角度θfは、70度であり、長さLは、43mmであり、間隔Pは、43mmであり、第1突起高さHf1は、10mmであった。実施例1〜3及び比較例1、2に係るタイヤのいずれも、溝深さDは、100mmであり、溝幅Wは、10mmであった。なお、比較例1に係るは、突起部が設けられていない。
実施例1に係るタイヤでは、第2突起高さHf2は、7.5mmであった。すなわち、第1突起高さHf1と第2突起高さHf2の差は、2.5mmであった。
実施例2に係るタイヤでは、第2突起高さHf2は、5mmであった。すなわち、第1突起高さHf1と第2突起高さHf2の差は、5mmであった。
実施例3に係るタイヤでは、第2突起高さHf2は、2.5mmであった。すなわち、第1突起高さHf1と第2突起高さHf2の差は、7.5mmであった。
比較例2に係るタイヤでは、第2突起高さHf2は、10mmであった。すなわち、第1突起高さHf1と第2突起高さHf2の差は、0mmであった。すなわち、突起部の高さは、一定であった。
比較例及び実施例に係るタイヤの熱伝達率を測定した。結果を表1に示す。なお、比較例1に係るタイヤの熱伝達率を基準(100)として、他のタイヤの熱伝達率を指数表示した。
表1に示されるように、実施例に係るタイヤは、比較例1に比べて、熱伝達率が良好であることが分かった。
従って、騒音性能及び排水性能といったタイヤに求められている他の性能を維持ないしは、向上させつつ、車両の走行に伴うトレッド部の温度上昇を効果的に抑制できることが確認できた。
(7)その他実施形態
本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。本発明はここでは記載していない様々な実施形態を含む。
以下に示す各実施形態及び上述した実施形態は、発明の効果を損なわない範囲において、適宜組み合わせることが可能である。
(7.1)空気供給機構
上述した実施形態では、空気供給機構は、テーパ面100Rによって構成されていたが、これに限られない。
例えば、図15及び図16に示されるように、トレッド幅方向twdにおける陸部ブロック100の長さは、タイヤ周方向tcdにおける一方から他方に向かうに連れて短くなってもよい。
図15は、他の実施形態に係るトレッド面視における周方向陸部70Aの平面図である。
タイヤ周方向tcdにおける陸部ブロック100の一方の端部100Dは、タイヤ1が車両に装着されたときの車両前進方向に回転する回転方向tr1の後側に位置する。タイヤ周方向tcdにおける陸部ブロック100の他方の端部100Eは、回転方向tr1の前側に位置する。端部100Dにおけるトレッド幅方向の長さLa1は、陸部ブロック100の端部100Eにおけるトレッド幅方向の長さLa2よりも短い。長さLb1と長さLa1との差は、長さLw1で表され、長さLw1は、5mm以上であることが好ましい。
側面101は、タイヤ周方向に沿った平面に対して陸部ブロック100の内側に向けて傾斜して延びており、ラグ溝60の内壁を構成する陸部ブロック100の横溝面103に連なる。タイヤ周方向tcdの回転方向後側の陸部ブロック100の端部100Dは、サイドウォール部7から長さLw1だけトレッド幅方向twdの内側に位置している。すなわち、バットレス部9の陸部ブロック100のタイヤ周方向tcdの回転方向後側は、サイドウォール部7から長さLwだけトレッド幅方向twdの内側に位置している。このため、バットレス部9と側面101との間には段差が形成されている。ラグ溝60の溝底である溝底60bは、タイヤ周方向tcdの回転方向後側の端部100Dから端部100Eに向けて延びている。溝底60bは、バットレス部9と側面101との間に位置する。
図15に示されるように、タイヤ1が回転方向tr1に回転する場合には、タイヤ1の回転によって発生する回転方向tr1とは反対向きの空気の流れ(相対風)ARが、陸部ブロック100の側面101に沿って流れる。側面101に沿って流れた空気の流れARは、回転方向tr1の後側に配設される陸部ブロック100の横溝面104に衝突し、ラグ溝60に導かれる。これにより、タイヤ1の周囲の空気がラグ溝60内へ取り込まれ、ラグ溝60の内部を流れる空気の流量を増加させることができる。その結果、ラグ溝60の内部の熱伝達率が向上し、トレッド部5の温度を低減させることができる。
図16は、他の実施形態に係るトレッド面視における周方向陸部70Aの平面図である。タイヤ1の陸部ブロック100の路面に当接するトレッド部の踏面100Sと側面101と横溝面103との頂点が形成される部分には、曲面形状であるラウンド面100Ruが形成されている。すなわち、踏面100Sと側面101と横溝面103との頂点が面取りされている。図16に示されるように、タイヤ1の陸部ブロック100の路面に当接するトレッド部の踏面100Sの面積は、ラグ溝60の溝底60bに連なる陸部ブロック100の面積よりも小さい。陸部ブロック100は、路面と当接する踏面100Sから溝底60bとの連結部分に向かうほど面積が大きい。
図17及び図18に示されるように、陸部ブロック100の側面101には、側面101から陸部ブロック100の内側に向けて切り欠かれており、ラグ溝60の少なくとも一方に連通する切欠部130が形成されていてもよい。
図17は、他の実施形態に係るトレッド部5を拡大した拡大斜視図である。図18は、他の実施形態に係るトレッド面視における周方向陸部70Aの平面図である。
切欠部130は、陸部ブロック100のトレッド幅方向twdに交差する側面であるバットレス部9に形成される。切欠部130は、タイヤ周方向tcdにおける陸部ブロック100の前後に形成されるラグ溝60の溝底60b同士を結ぶ線よりもタイヤ径方向trdにおいて外側に形成される。
切欠部130は、タイヤ周方向tcdにおける陸部ブロック100の側面101の一方の端部側に形成される。切欠部130は、側面101から陸部ブロック100の(トレッド幅方向twdにおける)内側に向けて切り欠かれ、タイヤ周方向tcdにおいてラグ溝60に連通する。陸部ブロック100の側面101及び横溝面103には、開口131が形成される。
切欠部130のタイヤ周方向に沿った長さLkは、陸部ブロック100のタイヤ周方向tcdの長さWBよりも短い。
切欠部130の陸部ブロック100の側面101からトレッド幅方向twdの切欠部130の深さdsは、陸部ブロック100のタイヤ周方向tcdに亘って一定である。また、陸部ブロック100の側面101に形成された切欠部130の開口131は、トレッド幅方向twdから視て矩形状を有する。切欠部130は、トレッド部5の表面に平行に形成されている。
図18に示されるように、タイヤ1が回転方向tr1に回転する場合には、タイヤ1の回転によって発生する回転方向tr1とは反対向きの空気の流れ(相対風)ARが、切欠部130に流れ込み、切欠部130に沿って流れる。切欠部130に沿って流れた空気の流れARは、回転方向tr1の後側に配設される陸部ブロック100の横溝面104に衝突し、ラグ溝60に導かれる。これにより、タイヤ1の周囲の空気がラグ溝60内へ取り込まれ、ラグ溝60の内部を流れる空気の流量を増加させることができる。その結果、ラグ溝60の内部の熱伝達率が向上し、トレッド部5の温度を低減させることができる。
切欠部130は、連通するラグ溝60に向かうにつれ、切欠部130の深さdsが深くなってもよい。
図19から図20に示されるように、陸部ブロック100の側面101には、トレッド幅方向twdに突出する突出部150が形成されていてもよい。
図19は、他の実施形態に係るトレッド部5を拡大した拡大斜視図である。図20は、他の実施形態に係るトレッド面視における周方向陸部70Aの平面図である。
突出部150は、陸部ブロック100の側面101のタイヤ周方向tcdにおける一方側に位置するラグ溝60側に形成されている。陸部ブロック100の側面101のタイヤ周方向tcdにおける他方側は、略平滑になっている。ここで略平滑とは、製造誤差による微少凹凸を許容するものである。微少凹凸とは、例えば、陸部ブロック100のトレッド幅方向twdにおける長さの±10%以内の凹凸である。
突出部150のタイヤ周方向tcdに沿った長さLrは、周方向陸部70Aに形成された陸部ブロック100のタイヤ周方向tcdの長さWBよりも短い。
突出部150は、タイヤ径方向trdに直線状に延在する矩形状を有し、タイヤ径方向trdと矩形状の長手方向とは傾斜していてもよい。この場合、突出部150のタイヤ周方向tcdにおける中央部に設定される突部中心線と、タイヤ法線(すなわち、タイヤ径方向trd)とのなす角度|γ|≦60°とすることができる。なお、図19及び図20に示される突出部150は、タイヤ径方向trdと矩形状の長手方向とが一致し、トレッド幅方向twdと矩形状の短手方向とが一致するように配置されている。
陸部ブロック100の側面101には、複数の突出部150が形成されていてもよい。複数の突出部150は、タイヤ径方向trdに沿って直線状に配置されていてもよい。
また、トレッド幅方向twdから視て、複数の突出部150は、タイヤ径方向trdに対して傾斜していてもよい。
また、突出部150の形状は、矩形状でなくてもよい。突出部150の長手方向に垂直な断面の形状が三角形であってもよい。突出部150の長手方向に垂直な断面の形状は、陸部ブロック100の側面101に取り付けられた付け根部分を長辺とする台形であってもよい。突出部150の長手方向に垂直な断面の形状は、陸部ブロック100の側面101に取り付けられた付け根部分を短辺とする台形であってもよい。突出部150の長手方向に垂直な断面は、回転方向の一方側に向けて傾斜した形状を有してもよい。突出部150は、タイヤ回転軸の軸芯に沿った方向からの平面視において、平行四辺形であってもよい。突出部150は、タイヤ回転軸の軸芯に沿った方向からの平面視において、長手方向の中央部の幅が長手方向端部の幅よりも短い形状を有してもよい。突出部150は、タイヤ回転軸の軸芯に沿った方向からの平面視において、楕円形であってもよい。上述した例のほか、タイヤの表面を通過する空気を乱す効果を生む構造であれば、適用可能である。
また、上述した実施形態では、トレッド幅方向twdにおける両方の陸部ブロック100が空気供給機構を有していたが、これに限られない。トレッド幅方向twdにおける一方の陸部ブロック100だけが空気供給機構を有していてもよい。また、複数の陸部ブロック100の各々が、異なる形状の空気供給機構を有することも可能である。
(7.2)突起部
上述した実施形態では、突起部500の形状は、平板状であったが、これに限られない。突起部500の形状は、例えば、トレッド面視において波形であったり、溝中心線WL付近が太く、側壁50B1及び側壁50B3に向かうに連れて細くなる(或いはその逆)ような形状であったりしてもよい。
また、図21(a)〜(g)は、突起部500の断面形状の変形例を示す図である。図21(a)〜(g)に示すように、突起部500の断面形状(図9と同様)は、上端が平坦でなくても構わない。突起部500の断面形状において、突起部500の上端が傾斜していたり、円弧状であったりしてもよい。
また、上述した実施形態では、第1突起部510と第2突起部520とは、交互に配置されていたが、これに限られない。例えば、複数の第1突起部510が連続して配置されていてもよいし、複数第2突起部520が連続して配置されていてもよい。
また、複数の突起部500は、第1突起部510及び第2突起部520とは高さが異なる別の突起部を含んでいてもよい。
角度θf、溝深さD及び溝幅Wは、必ずしも上述した実施形態において規定した条件を満足しなくても構わない。
また、突起部500は、周方向溝50Bのみに設けられていたが、これに限られない。突起部500は、タイヤ赤道線CLを含む位置に形成された周方向溝50Cに、形成されていてもよいし、周方向溝50Cに設けられていてもよい。
(7.3)その他
上述した実施形態では、周方向溝50Bは、タイヤ周方向tcdに平行に延びていたが、これに限られない。周方向溝50Bは、必ずしもタイヤ周方向tcdに平行でなくても構わない。例えば、周方向溝50Bは、タイヤ赤道線CLとなす角度が45度以下であれば、タイヤ周方向tcdと平行でなくてもよい。また、周方向溝50Bは、必ずしも直線状でなくてもよく、例えば、トレッド幅方向twdにおいて外側に向かって湾曲した形状や、ジグザグ状であっても構わない。なお、周方向溝50Bがジグザグ状の場合、周方向溝50Bを流れる空気の速度が低下しないような形状であることが好ましい。
上述した実施形態では、ベルト端30eから溝中心線WLまでのトレッド幅方向twdに沿った長さDLは、200mm以下であるように、周方向溝50Bは、形成されていたが、これに限られない。長さDLは、200mmより大きくなるように、周方向溝50Bが形成されてもよい。
また、ラグ溝60が周方向溝50Cまで延在し、かつ、周方向溝50の溝底に上述した突起部500が設けられていてもよい。すなわち、突起部500が設けられた周方向溝が、タイヤ赤道線CLを含む位置に形成されてもよい。これにより、トレッド部5の温度を低減させることができる。
ラグ溝60は、タイヤ周方向tcdに対して全て同じ角度に形成されていたが、これに限られない。同一のタイヤにおいて、ラグ溝60の傾斜角度φは、必ずしも同一でなくてもよい。トレッド幅方向twdにおける一方の端部側に位置するラグ溝60と、他方の端部側に位置するラグ溝60とで、ラグ溝60の傾斜角度φが異なっていてもよい。トレッド幅方向twdにおける一方の端部側に位置する複数のラグ溝60において、ラグ溝60の傾斜角度φが異なっていてもよい。ラグ溝60の傾斜角度φは、15度未満であってもよいし、60度より大きくてもよい。
本実施形態に係るタイヤ1は、いわゆる超大型タイヤに適用すると顕著な効果が得られるが、汎用のタイヤに適用することもできる。
また、本発明に係るタイヤは、空気入りタイヤであっても良いし、ゴムが充填されたソリッドタイヤであっても良い。また、アルゴン等の希ガスや窒素等が入れられた空気以外の気体入りタイヤであっても良い。
上述の通り、本発明はここでは記載していない様々な実施形態を含む。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。