JP6114188B2 - 堤防 - Google Patents
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Description
図7(a)は、地盤81の上面に構築した断面台形の盛土堤体で構成した堤防80であり、海側の傾斜した前面82、陸側の傾斜した背面83、および天端面84とを有している。
<1>図7(b)に示すように、堤体表面が保護材で覆われていない盛土式の堤防80では、津波の押波または引波が作用すると堤防80の全面の土砂が浸食され、さらに地盤81が洗掘されて堤防80の浸食崩壊を促進するため、堤防80が短時間の間に崩壊する。
<2>堤防機能の持続時間を長くするには、堤防80の裾幅Lと高さHを大きくする方法があるが、堤防80が無駄に大型化するだけで効果の実効性に乏しい。
<1>図8(b)に示すように、盛土堤体の全面を硬質の硬質覆工層85で覆った被覆防護式の堤防80あっては、地震時に硬質覆工層85が地盤81の変形に追従できずクラックや破壊を生じ易い。
硬質覆工層85が損傷した状態で津波が襲来すると、硬質覆工層85の損傷部を通じて内部の盛土の吸い出しと硬質覆工層85の破壊拡大により堤防80が短時間の間に崩壊して堤防機能を喪失する。
硬質覆工層85の損傷を回避する方法として、硬質覆工層85の躯体厚を厚くする等して強化する方法があるが、コストが非常にかさむ問題がある。
さらに堤防80を越波した津波が、堤防80の裾際の補強されていない地盤84を洗掘し、地盤84の洗掘が堤防80の浸食崩壊を促進する。
<2>上記した堤防80の浸食崩壊を抑制する手段として、堤防80の据付地盤とその周辺地盤一帯に亘って洗掘防止用の強化層86を形成する方法がある。
広大な面積で強化層86を形成するには、莫大なコストがかかるだけでなく、工期も長期化するといった問題がある。
<3>硬質覆工層85は通気性および透水性を有しないことから、水没すると堤防80に浮力が生じる。そのため、硬質覆工層85が捲り上がって盛土堤体が破壊され易くなる。
<4>従来の堤防80は修復性について特に配慮がなされていない。そのため、堤防80の一部が損壊した場合の修復性が非常に悪く、復旧までに長期間を要する。
<5>東日本大震災の巨大津波ではあらゆる種類の堤防が壊滅的な被害を受けた。例えば釜石市の湾口に設置した世界一巨大なコンクリート製の防波堤や堤防は、津波のエネルギーに十分に対抗し得る強度に設計していたにもかかわらず、瞬く間に倒壊して押し流されてしまった。
被災地および津波の到来が予想される地域では、人々が安心して生活できる防災環境を整備することが喫緊の課題となっており、巨大津波に対抗可能な新たな堤防技術の提案が切望されている。
<1>堤防が破壊や倒壊に対して粘り強く、当初の堤防高さを長時間に亘って持続できること。
<2>経済的に堤防を構築できること。
<3>堤防の修復性に優れ、迅速な復旧が可能であること。
<4>堤防の構造が簡易であること。
さらに本発明は前記した堤防において、前記強化コア帯の直下の範囲に亘って洗掘防止用の強化層を形成したことを特徴とする。
さらに本発明は前記した堤防において、前記強化コア帯の両側面に壁体を付設したことを特徴とする。
<1>強化コア帯の両側面に隣接して一体に構築した防護緩衝帯の浸食抵抗により津波の襲撃エネルギーを減衰して強化コア帯に作用する津波の衝撃エネルギーを効果的に減衰でき、さらに強化コア帯は単独で自立可能な耐浸食構造になっているため、津波が襲来したときに短時間に崩壊や倒壊することがなく、崩壊や倒壊に対して粘り強く対抗することができる。
<2>自立性の高い強化コア帯の両側面に、防護機能および緩衝機能を併有した防護緩衝帯を位置させたことで、少なくとも強化コア帯が当初の堤防高さを維持可能なように、強化コア帯の自立性を格段に高めることが可能となる。
したがって、津波の押波または引波が作用したときに、防護緩衝帯を消失しても強化コア帯が残留するので、当初の堤防高さを長時間に亘って持続することができる。
<3>堤防機能が高いので、従来の高さの等しい盛土式の堤防と比較して堤防全体の裾幅を小さくできて、近隣に既設構造物が存在する等して設置現場に面積的な制約があっても堤防の建設が可能となる。
<4>堤防の表面が非通気性部材で遮蔽されていないので、堤防が水没しても堤防に浮力がはたらかない。
したがって、浮力に起因した堤防の破壊を回避することができる。
<5>堤防の建設にコンクリートを一切使用しないことと、洗掘防止用の強化層の形成範囲が強化コア帯の直下の狭い範囲で済むことにより、コストの大幅削減と工期の大幅短縮が可能となる。
<6>強化コア帯および防護緩衝帯を修復が容易な土構造物で構成するので、防護緩衝帯が消失したときは強化コア帯の側面に盛土するだけで容易に防護緩衝帯を修復でき、また強化コア帯が損傷したときは損傷個所の盛土を再構築したり盛土補強材を交換したりするだけで強化コア帯の修復を容易に行える。
したがって、本発明の堤防は修復性に優れ、迅速な復旧が可能である。
<7>堤防を構成する強化コア帯および防護緩衝帯がともに挙動が同じ土塊構造物であるため、地震時に防護緩衝帯が強化コア帯から分断され難い。
したがって、堤防の高い耐震性が損なわれることがない。
<1>堤防の概要
図1,2を参照して説明すると、本発明に係る堤防10は、断面矩形を呈する強化コア帯20と、該強化コア帯20の前後面に隣接して一体に構築した断面三角形を呈する一対の防護緩衝帯30(30a,30b)とを具備する。
海側の防護緩衝帯30aの傾斜した斜面が堤防10の前面11を形成し、陸側の防護緩衝帯30aの傾斜した斜面が堤防10の傾斜した背面12、および天端面13を有し、地盤14の上面に構築してある。
断面形状が台形を呈する堤防10の裾幅Lは、強化コア帯20の横断幅L1に一対の防護緩衝帯30a,30bの裾幅L2,L3を加えた長さであり、堤防10の高さHは強化コア帯20の高さと等しい。
また本例では説明の便宜上、堤防10の断面形状を左右対称形に形成した場合について示すが、堤防10の断面形状は左右非対称形を含むものである。
これに対し本発明では、堤防10の核となる強化コア帯20を自立性の高い土塊構造物として構築し、強化コア帯20の前後の防護緩衝帯30a,30bを、浸食可能な土塊構造物として構築し、防護緩衝帯30を浸食させることで津波の衝撃エネルギーを減衰して強化コア帯20の損傷を低減しようとする構造物である。
換言すれば、本発明の堤防10は津波に対して自立性の異なる二種類の構造物を組み合わせた複合構造物である。
以下に堤防10の各部について詳述する。
強化コア帯20は堤防10の最も設計高さの高い部位を構成する構造物で、堤防10の長手方向に沿って連続して形成してある。
強化コア帯20の横断幅L1と高さHは、想定される津波の衝撃エネルギー等を考慮し、強化コア帯20が自立可能な適宜の寸法を選択する。
強化コア帯20の断面形状は横長または縦長の方形に限定されず、断面台形を呈していてもよい。
盛土補強材22は、例えばジオグリッドッド等の引張強度に優れたメッシュシートで、強化コア帯20の横断方向に向けて連続して敷設してある。
強化コア帯20を補強盛土で構成する場合には、強化コア帯20の外周全面を吸出し防止シート23で被覆しておくことが肝要である。
上下に隣接する盛土補強材22の間は、盛土の自重による摩擦抵抗により、または打設した連結ピン等により抜け出し不能に連結されている。
強化コア帯20は全体として一体構造の土塊構造物であればよいので、公知の各種の補強盛土構造物を適用することができる。
また図示を省略するが、強化コア帯20の天端面13を透水性の舗装材で覆工してもよい。
防護緩衝帯30(30a,30b)は、強化コア帯20の前後の側面を覆った断面形状が三角形を呈する土塊構造物であり、強化コア帯20に作用する津波の衝撃エネルギーを緩衝しつつ、強化コア帯20への浸食を緩和するために機能する。
防護緩衝帯30(30a,30b)は、堤防10の長手方向に沿って連続して形成してある。
本例では防護緩衝帯30が、浸食抵抗が大きく、入手コストが安価である締め固め盛土31のみで構成する場合について説明するが、盛土31に長、短繊維を混入させて締め固めると浸食抵抗がさらに大きくなる。
防護緩衝帯30は所定の高さまで盛土31を撒き出す工程と、撒き出した盛土31を十分に転圧する工程を繰り返すことで構築することができる。
地盤14の圧密沈下または液状化による沈下が予想される場合は、強化コア帯20の直下の範囲に亘って洗掘防止用の強化層15を形成する。
強化コア帯20の直下の地盤14の沈下が予想されない場合は、強化層15を設ける必要はない。
本発明の堤防10は、防護緩衝帯30a,30bが浸食されることを前提とするため、従来のように堤防の据付地盤とその周辺地盤一帯に亘って洗掘防止用の強化層を形成する必要がない。
本発明では、堤防の据付面積に対して、強化コア帯20の直下の限定した狭い範囲に亘って強化層15を形成するだけでよく、強化層15の形成コストと工期を大幅に短縮することができる。
図1,2に示した堤防10の施工方法としては以下にいくつかの施工方法を例示する。堤防10の施工方法はこの例示した形態に限定されるものではない。
堤防10の低層から上層へ向けて、強化コア帯20および防護緩衝帯30(30a,30b)を並行して構築する方法。
強化コア帯20を先行して完成した後、強化コア帯20の前後の側面に防護緩衝帯30(30a,30b)を構築する方法。
本発明に係る堤防10は、津波に対して自立性の異なる二種類の土塊構造物(強化コア帯20と防護緩衝帯30(30a,30b))の組み合わせで構成するものである。
さらに防護緩衝帯30(30a,30b)に盛土補強材22を埋設していないため、盛土補強材22の使用量を大幅に削減できる。
したがって、従来の覆工式の堤防と比較して、施工に要する資材や機械の種類と数が少なくて済むだけでなく、工期および工費の両面で優れている。
つぎに図2,4を参照して、地震時および津波の襲来時における堤防10の作用について説明する。
例えば、堤防の表層または内部にコンクリート製の構造物が存在した場合は、土砂とコンクリート構造物の挙動が異なるために、地震時に堤防が分断する可能性がある。
これに対して本発明では、堤防10を構成する強化コア帯20および防護緩衝帯30がともに土塊構造物であるため、地震で地盤14が大きく揺れても、強化コア帯20および防護緩衝帯30は同じ挙動を示すことになるので、防護緩衝帯30a,30bが強化コア帯20から分断され難い特性を有している。
したがって、堤防10の高い耐震性が損なわれることがない。
図2,3を参照して津波の襲来時の堤防10の作用について説明する。
<2.1>押波時
図2において、海側から襲来した津波が堤防10の傾斜した前面11に衝突すると、海側の防護緩衝帯30aの盛土31の浸食が進行する。津波の衝撃エネルギーは海側の防護緩衝帯30aの浸食抵抗によって減衰される。
津波が越波すると、堤防10の傾斜した背面11に衝突し、陸側の防護緩衝帯30bの盛土31の浸食が進行する。同時に越波した津波は陸側の堤防10の裾部の地盤14を洗掘する。
津波の衝撃エネルギーは陸側の防護緩衝帯30bの浸食抵抗や、地盤14の洗掘抵抗により減衰される。
津波が押波から引波に変わると、同様に強化コア帯20の前後に設けた防護緩衝帯30a,30bの盛土31が浸食されることで衝撃エネルギーが減衰される。
本発明では堤防10の表面に硬質覆工層を有しない。
したがって、堤防10が水没しても大きな浮力が働かないので、浮力に起因した破壊を回避することができる。
強化コア帯20の外周全面が防止シート23で覆い盛土21の吸い出しを防止した構造になっている。
したがって、堤防10全体や強化コア帯20が単独で水没しても、盛土21の吸い出しを効果的に防止して強化コア帯20の崩壊を抑制することが可能となる。
上記したように堤防10は、衝撃エネルギーの減衰性能が高いだけでなく、防護緩衝帯30a,30bが消失するまでは、防護緩衝帯30a,30bが強化コア帯20を防護し、防護緩衝帯30a,30bが消失した後は強化コア帯20が単独で断面形状を維持できるように、堤防10が崩壊や倒壊に対して粘り強い構造となっているので、当初の堤防高さを長時間に亘って維持できる。
したがって、防護緩衝帯30a,30bが消失するまでは防護緩衝帯30a,30bが強化コア帯20を防護する。防護緩衝帯30a,30bが消失した後は強化コア帯20が単独で断面形状を維持できるので、強化コア帯20が瞬時に崩壊せずに初期の高さHを維持することができる。
殊に強化コア帯20は各盛土21を盛土補強材22が抱持した補強構造となっている。
したがって、強化コア帯20に大きな衝撃エネルギーが作用すると、強化コア帯20が多少変形するものの、強化コア帯20の崩壊を抑制することが可能となる。
これに対して本発明では、地盤14の洗掘が進行しても、堤防10の中心部分である強化コア帯20の直下の強化層15が洗掘を阻止するので、強化コア帯20の自立性と安定性が保たれる。
このように本発明では、地盤14の洗掘が強化コア帯20の自立性と安定性に与える影響が少ない。
堤防10は基本的に防護緩衝帯30a,30bが消失しても強化コア帯20が残置する構造物である。
したがって、強化コア帯20の側面に盛土して防護緩衝帯30a,30bを構築するだけの簡単な作業で堤防10の修復を行える。
また残存した強化コア帯20が損傷を受けた場合は、盛土層21を再構築したり、損傷した盛土補強材22を新たたなものと交換したりして当初の設計高さHに補修すればよい。
このように、本発明の堤防10は簡易な手法で以て短期間に修復することができる。
以降に他の実施例について説明するが、その説明に際し実施例1と同一の部位は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
本例では強化コア帯20の下方の側面域をメッシュ状の袋体24内に土砂等の中詰材25を充填して製作した複数の土塊バッグ26を積み上げ、相対向する土塊バッグ26の空間域に内部囲繞盛土27を位置させるとともに、強化コア帯20の上部域を実施例1と同様に盛土21と盛土補強材22の積層体で構成してある。
土塊バッグ26の内側には必要に応じて吸出し防止シートを配置して内部の土砂が流出しないようにしておく。
図6に強化コア帯20の前後両側面に壁体28a,28bを追加して設けた堤防10の他の形態を示す。
壁体28a,28bは、複数の硬質パネルを積み上げたもの、或いは一枚ものの硬質板であり、強化コア帯20の自立性をより高めるために機能する。
各壁体28a,28bと盛土補強材22の関係は、盛土補強材22の一端が各壁体28a,28bの内面に連結しておくことが望ましい。また、既述した実施例1,2で示した強化コア帯20の前後両側面に対して壁体28a,28bを非連結状態で付設してもよい。
各盛土21は盛土補強材22と壁体28a,28bとにより挟持される。
以上の実施例は強化コア帯20を補強盛土で構成する場合について説明したが、その他に流動化処理土等のセメントを貧配合したセメント系改良構造物で構成してもよい。
14・・・・・地盤
15・・・・・強化層
20・・・・・強化コア帯
21・・・・・強化コア帯の盛土
22・・・・・盛土補強材
23・・・・・吸出し防止シート
26・・・・・土塊バッグ
30,30a,30b・・・防護緩衝帯
31・・・・・防護緩衝帯の盛土
Claims (3)
- 全体の断面形状が台形を呈する堤防であって、
単独で自立可能な強度を有する強化コア帯と、
該強化コア帯の側面に隣接して構築した防護緩衝帯とを具備し、
前記強化コア帯が盛土補強材を埋設した補強盛土であり、該強化コア帯の外周全面を吸出し防止シートで被覆し、
前記防護緩衝帯を浸食可能な土塊構造物として構築し、
前記防護緩衝帯が前記強化コア帯に作用する津波の衝撃エネルギーを緩衝しつつ、前記強化コア帯への浸食を緩和することを特徴とする、
堤防。 - 前記強化コア帯の直下の範囲に亘って洗掘防止用の強化層を形成したことを特徴とする、請求項1に記載の堤防。
- 前記強化コア帯の両側面に壁体を付設したことを特徴とする、請求項1に記載の堤防。
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