JP6104045B2 - 心臓用医療機器誘導具 - Google Patents

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Description

本発明は、心臓用医療機器誘導具に関するものである。
従来、剣状突起下部から体内に挿入した内視鏡を心嚢内に導入して心臓の外部から心臓を観察あるいは処置する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1には、剣状突起下から内視鏡ルートを確保し内視鏡下で心耳とよばれる血栓形成の懸念がある部位を結紮し、血栓飛沫を予防する治療手段が記載されている。
米国特許出願公開第2004/0064138号明細書
剣状突起下からの治療は開胸手術が不要なため侵襲性が低く、将来的には心外側から内視鏡下で多くの心臓疾患を診断・治療できる可能性が高い。特に心臓へ栄養する冠動脈および冠静脈(冠動静脈)に起因する心疾患への対応が望まれる。
しかしながら、剣状突起下から挿入した内視鏡等の医療機器では、特許文献1のように心耳という心房の一部、かつ比較的大きく位置的にも容易な部位の治療に限定されてしまい、手技のみで心外側から心室表面にある冠動脈を適切に捉えて診断処置するのは非常に難しい。
なぜならば、心臓の表面は潤滑液で覆われており、冠動静脈を持つ心室は楕円球状であるとともに拍動による体積変化も発生するためである。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、内視鏡等の医療機器を心臓の外側から冠動脈へ容易に誘導および留置することができる心臓用医療機器誘導具を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、心臓の表面を周方向に沿って走行する回旋枝および右冠状動脈を被覆する位置に、全周にわたって配置される環状の横断部と、該横断部に両端が接続され、心臓の前側表面を心尖に向かって下降するように走行する前下降枝および心臓の後ろ側表面を心尖に向かって下降するように走行する前記回旋枝の末梢部を被覆する位置に、心尖側を取り囲むように配置される縦断部と、該縦断部または前記横断部のいずれかに接続する導入部とを備え、前記横断部、前記縦断部および前記導入部が、内部に医療機器を挿通可能な管状に構成されるとともに少なくとも前記横断部および前記縦断部が、拡張および収縮可能な材質により構成され、前記横断部および前記縦断部が、収縮した状態で、心尖側から心臓の外面に被せることができ、かつ、流体圧によって拡張させられたときに、被覆している回旋枝および右冠状動脈、前下降枝および回旋枝の末梢部に密着させられる寸法を有する心臓用医療機器誘導具を提供する。
本態様によれば、横断部および縦断部を収縮させた状態で、心膜腔内に導入し、心膜腔内で解放してある程度拡張させた状態で、環状の横断部を心臓に心尖側から被せていくと、横断部が回旋枝および右冠状動脈を被覆する位置に全周にわたって配置されるとともに、縦断部が心尖側を取り囲むように配置される。この状態で、縦断部を前下降枝および回旋枝の末梢部を覆う位置に移動させた後、導入部から流体を導入し、流体圧によって横断部および縦断部を拡張させることにより、横断部および縦断部の内面側を回旋枝および右冠状動脈、前下降枝および回旋枝の末梢部に密着させる。
これにより、横断部および縦断部が心臓の表面に固定される。冠動脈は、左心室と右心室との境目および心房と心室との境目に位置している。この位置は心臓の拍動による伸縮は少ないため、横断部および縦断部が拍動の影響を受けることなく、心臓に安定的に固定された状態に維持される。したがって、導入部から横断部および縦断部内に導入される医療機器を、心臓の拍動によっても冠動脈から外れないように誘導することができる。医療機器による検査や治療が終了した後には、内部の流体を排出することにより収縮させ、心膜腔内から容易に抜き出すことができる。
上記態様においては、前記縦断部の略中央位置に、心尖に嵌合させられる心尖受け部を備えていてもよい。
このようにすることで、心尖受け部を心尖に嵌合させることで、縦断部を心尖に固定することができる。これにより、縦断部の安定性を向上し、医療機器をさらに安定的に誘導することができる。
また、上記態様においては、前記心尖受け部に負圧により心尖に吸着する吸着手段を備えていてもよい。
このようにすることで、吸着手段の作動により心尖受け部を心尖に負圧により吸着させ、さらに確実に縦断部を固定することができる。
また、上記態様においては、前記横断部および前記縦断部の少なくとも内側面が、光または超音波を透過可能な材質により構成されていてもよい。
このようにすることで、医療機器として光または超音波を照射するものを導入する場合に、横断部および縦断部の内部から内側面を介して光または超音波を冠動脈に照射し、観察または治療を行うことができる。
また、上記態様においては、前記縦断部の両端の前記横断部への接続位置が、前記横断部を不均等に分割する位置であってもよい。
このようにすることで、非シンメトリな構造を有する右心室と左心室との間の冠動脈の位置に、縦断部を一致させ、医療機器を容易に冠動脈に沿って誘導することができる。
本発明によれば、医療機器を心臓の外側から冠動脈に容易に誘導および留置することができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態に係る心臓用医療機器誘導具の拡張した状態を示す平面図である。 図1の心臓用医療機器誘導具を示す正面図である。 図1の心臓用医療機器誘導具を装着する心臓を示す正面図である。 図1の心臓用医療機器誘導具を心臓に装着した状態を示す正面図である。 図1の心臓用医療機器誘導具を心臓に装着する手順を示す図であり(a)外套管内に収納した状態、(b)心尖受け部を外套管から突出させた状態、(c)外套管を湾曲し易くした状態、(d)外套管を湾曲させた状態、(e)心臓用医療機器誘導具を外套管から突出させた状態、(f)心尖受け部を心尖に嵌合させた状態、(g)心臓に装着させた状態をそれぞれ示している。 図1の心臓用医療機器誘導具の変形例を示す部分的な(a)斜視図、(b)縦断面図である。 図6の心臓用医療機器誘導具の横断部および縦断部の横断面図であり(a)拡張した状態、(b)収縮した状態をそれぞれ示している。 図6の心臓用医療機器誘導具の横断部および縦断部において冠動脈が(a)膨張した状態、(b)収縮した状態をそれぞれ示す図である。 図1の心臓用医療機器誘導具を心臓に装着する際の外套管の導入方向の一例を示す図である。 図9の場合の心臓用医療機器誘導具の展開の様子を示す図である。 図1の心臓用医療機器誘導具を心臓に装着する際の外套管の導入方向の他の例を示す図である。 図11の場合の心臓用医療機器誘導具の展開の様子を示す図である。 図1の心臓用医療機器誘導具を用いて冠動脈の内部および外部から冠動脈の異常を観察する場合の冠動脈内および冠動脈外に配置する装置の組み合わせを示す図である。 図13の観察方法を示すフローチャートである。
本発明の一実施形態に係る心臓用医療機器誘導具1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る心臓用医療機器誘導具1は、例えば、剣状突起下部から組織を貫通して心膜腔内に開口して配置されるシースを経由して、体外から心膜腔内に導入された後、心臓に固定されるものである。
この心臓用医療機器誘導具1は、薄膜材料からなる拡張および収縮可能な管状部材によって構成され、図1および図2に示されるように、拡張した状態で円環状となる横断部2と、該横断部2の側壁の2箇所に両端が接続され拡張した状態で略U字状となる縦断部3と、該縦断部3の長手方向の途中位置に接続する導入部4とを有する形状に構成されている。また、縦断部3の長さ方向の略中央には、図3および図4に示されるように、心臓Aの心尖Bを嵌合させる心尖受け部5が設けられている。
横断部2および縦断部3を構成する管状部材は、少なくともその内側面が光学的に透明な材質により構成されている。横断部2、縦断部3および導入部4は、例えば、内視鏡を挿入可能な内径を有している。これら横断部2、縦断部3および導入部4の内部空間は相互に連絡しており、導入部4から導入した内視鏡を、導入部4に接続する縦断部3を経由して横断部2内に導入することができるようになっている。
横断部2は、図3および図4に示されるように、心臓用医療機器誘導具1が心臓Aに取り付けられた状態で、回旋枝および右冠状動脈Cを被覆する位置で心臓Aを全周にわたって取り囲むように配置されるようになっている。
また、縦断部3は、横断部2が回旋枝および右冠状動脈Cを被覆する位置に配置された状態で、心臓Aの前側表面を心尖Bに向かって下降するように走行する前下降枝Dおよび心臓Aの後ろ側表面を心尖Bに向かって下降するように走行する回旋枝Cの末梢部Eを被覆する位置に、心尖B側を取り囲むように配置されるようになっている。
U字状の縦断部3は、その両端が横断部2の側壁に接続しているが、2つの接続位置は、横断部2を周方向に不均等に分割する位置に配置されている。この位置は、前下降枝Dおよび回旋枝Cの末梢部Eの位相に一致させるように決定されている。
すなわち、図3に示されるように、回旋枝および右冠状動脈Cは、心房Fと心室G,Hとの境界を辿るように心臓A表面を走行しており、前下降枝Dおよび回旋枝Cの末梢部Eは、左心室Gと右心室Hとの境界を辿るように心臓A表面を走行している。解剖学的には、心臓Aは、右心室Hが、左心室Gを構成する半楕円球の側面に貼り付く形状を有しており、右心室Hよりも左心室Gが大きく、全体として非シンメトリな構造を有している。したがって、縦断部3も横断部2に非対称の位置に接続されている。
導入部4は、心臓Aが拍動によって捻転する場合にも追従し、かつ内部空間が確保できるように、図示しない蛇腹構造を伴う構成を採用している。
心尖受け部5は、図4に示されるように、縦断部3が前下降枝Dおよび回旋枝Cの末梢部Eを被覆する位置に配置されたときに、心尖Bに嵌合するカップ状の形状を有している。また、この心尖受け部5は、X線造影性を有している。
このように構成された本実施形態に係る心臓用医療機器誘導具1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る心臓用医療機器誘導具1を心臓Aに装着するには、剣状突起下部から心膜腔内に貫通して配置されたシースS(図9参照。)を経由して、図5(a)に示されるように、収縮した状態で外套管6に収容された本実施形態に係る心臓用医療機器誘導具1を挿入する。外套管6は柔軟な材質により構成され、外套管6内には外套管6よりも剛性の高い押出シャフト7が外套管6に対して軸方向に相対移動可能に挿入されている。外套管6および押出シャフト7もX線造影性を有している。
心膜腔内に外套管6の先端が配置された状態で、図5(b)に示されるように、外套管6に対して押出シャフト7を押し出すことにより、心尖受け部5を外套管6内から心膜腔内に突出させる。次いで、図5(c)に示されるように、外套管6内において押出シャフト7を基端側に引き出すことにより、図5(d)に示されるように、外套管6の先端部が心膜腔内において湾曲できるようにする。
X線映像を見ながら、外套管6を操作して心尖受け部5を心臓Aの心尖Bに嵌合する位置まで移動させる。この状態で、図5(e)に示されるように、外套管6を押出シャフト7に対して基端側に引くことにより、本実施形態に係る心臓用医療機器誘導具1を構成する横断部2および縦断部3を心膜腔内において拡張させる。そして、導入部4を経由して流体(例えば、生理食塩水)を供給することにより、図5(f)に示されるように、横断部2および縦断部3によって心臓Aを包むようにこれらを展開させる。
これにより、図5(g)に示されるように、横断部2が回旋枝および右冠状動脈Cを被覆するように心臓Aの表面に全周にわたって配置される。この状態で、縦断部3が前下降枝Dおよび回旋枝Cの末梢部Eを被覆するように位相を調節し、さらに流体を供給することによって、横断部2および縦断部3を内面側に膨張させる。
その結果、横断部2および縦断部3の内面側が、被覆している回旋枝および右冠状動脈C、前下降枝Dおよび回旋枝Cの末梢部Eに密着するように心臓Aを外面から押圧する。横断部2および縦断部3の少なくとも内面側は光学的に透明な薄膜によって構成されているので、横断部2または縦断部3内を通る内視鏡によって該横断部2または縦断部3が密着している回旋枝C、前下降枝Dおよび回旋枝Cの末梢部Eの光学的な観察または治療を容易に行うことができる。
すなわち、横断部2および縦断部3は心臓Aの表面を走行している回旋枝および右冠状動脈C、前下降枝Dおよび回旋枝Cの末梢部Eに沿って配置されているので、内部を通過する内視鏡を回旋枝および右冠状動脈C、前下降枝Dおよび回旋枝Cの末梢部Eの長さ方向に誘導することができる。
また、横断部2および縦断部3が配置されている回旋枝および右冠状動脈C、前下降枝Dおよび回旋枝Cの末梢部Eに沿う位置は、丁度、心房Fと心室G,Hとの境界および左心室Gと右心室Hとの境界に当たるため、心臓Aが拍動しても大きく伸縮することがない位置である。
この解剖学的な特性により、横断部2および縦断部3により心臓Aの拍動が阻害されることなく心臓用医療機器誘導具1を心臓Aに固定することができるという利点がある。また、拍動によっても大きく伸縮することない位置に横断部2および縦断部3を密着させるので、拍動により、冠動脈が圧迫されたり、横断部2や縦断部3が冠動脈からずれたりすることが防止され、長時間にわたって取り付けた状態に維持することができるという利点がある。
さらに、本実施形態によれば、心尖受け部5を心尖Bに嵌合させているので、縦断部3が前下降枝Dおよび回旋枝Cの末梢部Eからずれるのを防止することができる。
なお、本実施形態においては、心尖受け部5を心尖Bに嵌合させることとしたが、これに加えて、心尖受け部5を心尖Bに吸着させることにしてもよい。
図6(a),(b)および図7に示される例では、横断部2および縦断部3が医療機器を誘導するための第1のルーメン2a,3aと、拡張用の流体を供給するための第2のルーメン2b,3bとを備え、導入部4が、内部を負圧に吸引して心尖受け部5を心尖Bに吸着させるための第3のルーメン4aとを備えている。心尖受け部5に心尖Bを接触させた状態で矢印Jに示されるように、第3のルーメン4aを吸引することにより、心尖受け部5を心尖Bに吸着させることができる。
横断部2および縦断部3は、例えば、図7に示されるように、流体によって断面半円状に拡張可能な伸縮部Xと、該伸縮部Xとともに第1のルーメン2a,3aを画定する透明なフィルムYとを備えている。図7(a)に示されるように、伸縮部Xの内部の第2のルーメン2b,3bに供給する流体圧を増大させることにより横断部2および縦断部3が拡張し、図7(b)に示されるように、流体圧を低下させることにより、横断部2および縦断部3を収縮させるようになっている。
透明なフィルムYは柔軟性を有し、図8(a)に示されるように回旋枝C、前下降枝Dあるいは末梢部Eが拡張したとき、および図8(b)に示されるように回旋枝C、前下降枝Dあるいは末梢部Eが収縮したときにはそれに倣って変形し、密着状態を維持することができるようになっていてもよい。
また、横断部2、縦断部3および心尖受け部5は、図9に示されるように、外套管6の先端開口が心臓Aの心尖B側に向かって配置される施術方法では、図10に示されるように展開され、図11に示されるように外套管6の先端開口が心臓Aの頭部Kに向かって配置される施術方法では、図12に示されるように展開されることが好ましい。図中符号Lは心膜である。
また、本実施形態においては、横断部2および縦断部3の内面側が光を透過可能な材質により構成されて、内視鏡による光学的な観察あるいは治療を行う場合について説明したが、これに代えて、横断部2および縦断部3の内面側が超音波を透過可能な材質により構成されていてもよい。これにより、内部に誘導された超音波内視鏡によって、超音波による観察や治療を行うことができる。特に、この場合には横断部2および縦断部3の内部全体が、超音波伝播媒体である液体によって充満されている必要がある。
また、横断部2および縦断部3の内面側を光または超音波を透過可能な材質により構成したが、これに代えて、横断部2および縦断部3の他の部分あるいは心臓用医療機器誘導具1全体が光または超音波を透過可能な材質により構成されていてもよい。
また、本実施形態においては、導入部4は縦断部3の途中位置に接続することとしたが、これに代えて、横断部2のいずれかの位置に接続することにしてもよい。
また、縦断部3の心臓への装着が確りと行われる場合には、心尖受け部5を備えていなくてもよい。
また、本実施形態においては内部に誘導する医療機器として内視鏡を例示したが、これに代えて、他の任意の医療機器、例えば、カテーテル、超音波プローブ等を誘導することにしてもよい。
次に、本実施形態に係る心臓用医療機器誘導具1を用いて冠動脈の異常を診断する方法の一例を説明する。
冠動脈は心臓A本体へ血液を供給する重要な血管である。この冠動脈に何らかの原因で血栓が形成されて詰まってしまうと、心臓Aに供給する血液量が減少するため、心筋への栄養手段が途絶え、心筋梗塞などの重篤な心疾患を引き起こす。
現在の診断技術では、X線透視下で冠動脈内にX線造影剤を投与し、冠動脈内面を白黒画像で浮かび上がらせ、形態学的に診断している。この診断技術では、X線という影絵に映し出された冠動脈内面の凹凸、つまり、冠動脈の太さ(狭窄率)や走行(蛇行しているか否か等)しか確認できないため、形態学的な変化がない場合には判定を行うことができない。
しかしながら、狭窄や蛇行を伴わないケース、正確にはX線造影では狭窄が分からない狭窄率50%未満のケースで心筋梗塞になってしまう患者が半数以上であると言われている。このような50%以下の狭窄や主訴がある場合の詳細診断として、現在、以下の3つのカテーテルモダリティが存在する。
(a) IVUS(血管内超音波断層像)
(b) OCT(光干渉断層像)
(c) 血管内視鏡
しかし、いずれのカテーテルモダリティも確定診断には至らないため、即座に血管内治療まで移行することはできない。
IVUSやOCTはグレースケールの断層像で形態学的変化を見る。画像がグレースケールであるため病理所見として扱われず、確定診断には至らない。
血管内視鏡は表層の色調をみる。現在の技術では内視鏡を極細にすると解像度が劣化するため、血管内の凹凸を見分けることは難しい。したがって、同様に、病理所見としては扱われず、確定診断には至らない。
以上のことから、現在のモダリティでは50%以上の狭窄率を伴わない限り、病理所見として扱われない。仮に、冠動脈を摘出することなく冠動脈プラークなどの異常部位が発見されたと仮定した場合に判断したい情報は、以下の2点である。
(1)異常部位の被覆の厚さと質
被覆が剥がれ、異常部位が血管内に露出されて血栓を形成し、冠動脈を閉塞させて心筋梗塞を起こしてしまうリスクを推測でき、予防的に治療を行うことができる。
(2)異常部位の由来
冠動脈の外側にあった異常が血管内へと浸潤したと推測できれば、予防的に外側への治療を遂行することができる。冠動脈の内部から発生したとすれば、予防的に血液成分や他臓器の疾患の治療を遂行することができる。
現在のモダリティでは冠動脈の内側からのみ観察しているが、それらは冠動脈外の画像情報を原理的に入手できないため、上記2つの情報を評価することができない。
これら2つの情報を評価可能とするために、本実施形態に係る心臓用医療機器誘導具1を心臓Aの表面に設置し、冠動脈の内側と外側に内視鏡を導入する。
冠動脈内に導入された内視鏡は冠動脈に沿って誘導される一方、本実施形態に係る心臓用医療機器誘導具1の横断部2あるいは縦断部3に導入された内視鏡は、横断部2あるいは縦断部3に沿って誘導されることにより、やはり冠動脈に沿って誘導される。
そして、図13および図14に示されるように、各内視鏡によって取得された画像情報の他、いずれか一方の内視鏡から発光あるいは超音波送信を行い、他方の内視鏡によって受光あるいは超音波受信を行って画像を構築する。これらの画像を組み合わせることにより、冠動脈壁の質、異常組織の大きさ、被覆(内膜)の厚さ、等の情報を得ることができる。
これにより、冠動脈における病変部位の全体像を推定することができ、病理診断を経て治療方針を容易に決定することができる。
血管内視鏡観察、IVUSおよびOCTの組み合わせを自在に変化させて種々の画像を得ることができ、定性的だが確度の高い診断へと導くことが可能となる。
例えば、IVUSおよびOCTを、血管内から冠動脈を観察する場合に加え、本実施形態に係る心臓用医療機器誘導具1を用いて心外側から冠動脈を観察する場合の有用性を説明する。
IVUSおよびOCTは、血管内の断層像を取得する手段として期待されているが、観察深度が浅いため、血管の比較的内側のみの観察しかできない欠点がある。そのため、血管病変部の病理解析を進め確定診断に至るためには不可欠となる、血管病変部外周の情報が不足している。
その情報を得ることができ、かつ、それを血管内の映像と同時に比較すれば、病変部が炎症等の異常をきたしたその由来が血管外起因か血管内起因かの判断をより正確にすることができ、病因を推定でき確実な診断と治療手段の選択(例えば、早期開胸術やカテーテル術、など)が可能となる。
例えば、血管内視鏡を、血管内から冠動脈を観察する場合に加え、本実施形態に係る心臓用医療機器誘導具1を用いて心外側から冠動脈を観察する場合の有用性を説明する。
血管内視鏡は血管内面の色調に加え、凹凸や剥離など表面状態を定性的に観察する手段として期待されているが、深部観察はできない。さらに、病的な色調といわれる黄色から黄白色を出す物質の由来が心臓外周か血管内かを見極めることは難しい。血管内面の光学的観察で得た情報に加え、血管外周の情報を血管内視鏡、IVUSまたはOCTによって同時に追加すれば、病変部が異常に映し出される原因を、より正確に把握することが可能となる。
また、内視鏡を用いる場合には、特定波長を強調可能な物質と、それを認識できる波長の組み合わせも有効である。例えば、インドシアニングリーンのような物質を冠動脈外から投与し、血管内から、600〜900nmの波長を有する近赤外線光によって観察することにより、血管壁の厚さを輝度により推定することができる。
A 心臓
B 心尖
C 回旋枝および右冠状動脈
D 前下降枝
E 末梢部
1 心臓用医療機器誘導具
2 横断部
3 縦断部
4 導入部
4a 第3のルーメン(吸着手段)
5 心尖受け部

Claims (5)

  1. 心臓の表面を周方向に沿って走行する回旋枝および右冠状動脈を被覆する位置に、全周にわたって配置される環状の横断部と、
    該横断部に両端が接続され、心臓の前側表面を心尖に向かって下降するように走行する前下降枝および心臓の後ろ側表面を心尖に向かって下降するように走行する前記回旋枝の末梢部を被覆する位置に、心尖側を取り囲むように配置される縦断部と、
    該縦断部または前記横断部のいずれかに接続する導入部とを備え、
    前記横断部、前記縦断部および前記導入部が、内部に医療機器を挿通可能な管状に構成されるとともに、少なくとも前記横断部および前記縦断部が、拡張および収縮可能な材質により構成され、
    前記横断部および前記縦断部が、収縮した状態で、心尖側から心臓の外面に被せることができ、かつ、流体圧によって拡張させられたときに、被覆している回旋枝および右冠状動脈、前下降枝および回旋枝の末梢部に密着させられる寸法を有する心臓用医療機器誘導具。
  2. 前記縦断部の略中央位置に、心尖に嵌合させられる心尖受け部を備える請求項1に記載の心臓用医療機器誘導具。
  3. 前記心尖受け部に負圧により心尖に吸着する吸着手段を備える請求項2に記載の心臓用医療機器誘導具。
  4. 前記横断部および前記縦断部の少なくとも内側面が、光または超音波を透過可能な材質により構成されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の心臓用医療機器誘導具。
  5. 前記縦断部の両端の前記横断部への接続位置が、前記横断部を不均等に分割する位置である請求項1から請求項4のいずれかに記載の心臓用医療機器誘導具。
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