JP6097500B2 - 磁気測定データ校正装置及び方位角計測装置 - Google Patents
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Description
この方位測定に用いる磁気素子は、通常、携帯機器に搭載する前に、3軸ヘルムホルツコイルを用いて、各軸毎のゼロ磁界出力値の調整(以下、オフセット調整)をしておく。
この具体的な調整手順は、予め校正された磁気素子により、地磁気の測定を行い、その予め校正された磁気素子の出力する3軸各々の磁気データを基準磁気測定データとして、方位測定に用いる。
ここで、対象磁気素子は、オフセットが無い場合、出力する磁気測定データが3軸共に0であり、オフセットを有する場合、出力する磁気測定データが0ではない。
ここで、対象磁気素子が出力する磁気測定データを、対象磁気素子自身の有するオフセットとして測定し、この磁気測定データにより、磁気素子の出力する磁気測定データのオフセット調整を行う。
すなわち、磁気素子の出力する磁気測定データから、3軸ヘルムホルツコイルで測定したオフセットを、各磁気測定データから減算し、磁気素子の測定結果として方位検出を行うことになる。
したがって、磁気素子単体でオフセット調整を行った後、搭載される携帯機器の他の部品が発生する磁界により、携帯機器が向いている実際の方位と、磁気素子が出力する磁気データから得られる方位とに、環境オフセットによる差異が生じることになる。
しかしながら、各部品の磁力の経時的な変化や、携帯機器の周囲の温度の変化、さらには携帯機器の周囲に強度の磁界を発生する物体の存在により、環境オフセットの値が常に変動してしまう。
このため、オフセットを再度行う必要があるが、常に3軸ヘルムホルツコイルにより、携帯機器に搭載された磁気素子のオフセット調整を行うことができない。したがって、自身が磁気素子のオフセット調整を行う機能を、携帯機器に対して持たせる必要がある。
そして、オフセット調整部がデータバッファに蓄積された磁気測定データに対して、距離(磁界の強度)が最小となるオフセットを求める手法がある(例えば、特許文献1を参照)。この手法においては、以下の式に示すように、球の方程式に磁気測定データを代入し、最小二乗法によりオフセットSxを求める。
Sx=Σ{(Xi−X0)2+(Yi−Y0)2+(Zi−Z0)2−R2}=0 …(i)
Xi、Yi及びZiが磁気測定データであり、X0、Y0及びZ0がオフセット座標であり、Rが定数である。
この特許文献2においては、時系列に測定される測定データの中から4組の磁気測定データを抽出する際、抽出する抽出条件を以下のように設定している。すなわち、磁気素子の3軸で構成される3次元空間で、磁気測定データを座標点として以下の抽出条件が設定されている。
3軸の磁気測定データを3次元空間(3次元座標系)内に描画(配置)した際、
a.1組目の磁気測定データと2組目の磁気測定データとの距離が十分離れている
b.3組目の磁気測定データは、1組目及び2組目の磁気測定データとで構成される鈍角3角形の鈍角の頂点である
c.4組目の磁気測定データは、1組目から3組目の磁気測定データが形成する平面からの距離が十分離れている
(Xi−X0)2+(Yi−Y0)2+(Zi−Z0)2−R2=0 …(ii)
Xi、Yi及びZiが磁気測定データであり、X0、Y0及びZ0がオフセット座標であり、Rが定数である。
すなわち、4組の磁気測定データのいずれかに磁気ノイズが重畳している場合、これらの磁気測定データを用いて算出されたオフセットは、磁気ノイズによる誤差が含まれることになり、実際のオフセットとずれることになる。
このため、ユーザは、オフセット調整の際、携帯機器を円を描くように、すなわち、一定の球面に沿うように移動させる必要がある。
この移動が行われている際、磁気測定データを多数取得してバッファに蓄積し、すでに説明した算出に用いる磁気測定データの抽出処理を行う。
したがって、環境オフセットが変化に追従できない場合が発生し、再度、新たな磁気測定データを取得して、オフセット調整を繰り返して行なわなければならなくなる。
本実施形態の方位角計測装置は、磁気測定データ校正装置1、磁気素子2及び方位角計測部3から構成されている。
磁気素子2は、例えば、X軸方向の測定軸における磁界の強度を示す磁気データMxを測定するX軸方向磁気検出部21、Y軸方向の測定軸における磁界の強度を示す磁気データMyを測定するY軸方向磁気検出部22、Z軸方向の測定軸における磁界の強度を示す磁気データMzを測定するZ軸方向磁気検出部23とから構成された、X軸、Y軸及びZ軸の3軸の測定軸を有する磁気素子である。ここで、X軸方向磁気検出部21、Y軸方向磁気検出部22及びZ軸方向磁気検出部23は、例えば、ホール素子、磁気抵抗素子、フラックスゲート型磁気素子などが用いられる。
方位角計測部3は、磁気測定データ校正装置1が校正した磁気校正データMf(Mfx,Mfy,Mfz)を用い、上記X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向からなる3次元磁界空間において方位角計測装置の向いている方位を出力する。
また、磁気測定データMn(Mxn,Myn,Mzn)は、n番目の磁気データである。また、地磁気ベクトルの大きさ(以下、全磁力)をRとする。
ここで、全磁力は、磁気測定データMn(Mxn,Myn,Mzn)とオフセットO(Ox,Oy,Oz)とを用い、以下の(1)式により、求められる。
したがって、全磁力が同一であるならば、上述した(1)式の関係は、磁気測定データにおける各測定軸方向の磁気データが変化したとしても、常に成り立つことになる。
ここで、(1)式を変形するため、以下の(2)式に示す定数Qを定義する。
しかしながら、実際の磁気測定データMには、携帯機器の各部品からのまたは外部からの磁気ノイズが重畳している。
このため、(3)式から算出されるオフセット成分Ox、Oy、Oz、全磁力Rは正確な値を得ることができない場合がある。
したがって、統計的な手法、すなわちRLS(Recursive Least Square:再帰的最小二乗)法を用いて、磁気ノイズを低減することにより、オフセット成分Ox、Oy、Oz、全磁力Rの推定値(以下、最尤推定値)を算出する。最尤推定値が算出できる説明は後述する。以下、本実施形態における、RLS法を用いた磁気測定データの校正について説明する。
測定データ入力部11は、X軸方向磁気検出部21、Y軸方向磁気検出部22及びZ軸方向磁気検出部23の各々から入力されるアナログ値の軸センサ測定値を、デジタル値に変換して出力する。ここで、X軸方向磁気検出部21、Y軸方向磁気検出部22及びZ軸方向磁気検出部23の各々は、自身の感知方向で検出した磁場に対応した、アナログ値である電圧値を磁気データとして出力する。
また、測定データ入力部11は、アナログ値の磁気データM(Mx,My,Mz)を、デジタル値の磁気測定データM(Mx、My、Mz)に変換する際、アナログ値の磁気データに含まれているオフセット値を除去するため、磁気素子単体でのオフセット調整を行うようにしてもよい。
また、(4)式における右辺の4行×4列の行列における磁気測定データを示す列行列を、以下の(5)式のベクトルznとして定義する。
ここで、誤差関数計算部15は、磁気測定データMnとオフセットOnとの距離の二乗と、全磁力Rn−1の二乗を算出し、磁気測定データMnとオフセットOnとの距離の二乗から、全磁力Rn−1の二乗を減算し、減算結果を誤差関数enとする。ここで、磁気測定データMnとオフセットOnとの距離とは、測定軸であるX軸、Y軸及びZ軸からなる3次元空間において、磁気測定データMnとオフセットOn−1とを配置した際の、磁気測定データMnとオフセットOn−1との座標点の距離である。
記憶部14には、共分散行列Pと、オフセットベクトルxと、全磁力Rとが記憶される。共分散行列P、オフセットベクトルx及び全磁力Rの各々は、それぞれ書き込まれる際に、次の算出において用いられる直前のデータである、共分散行列Pn−1、オフセットベクトルn−1及び全磁力Rn−1として書き込まれる。
また、記憶部14には、共分散行列Pの初期値、忘却係数ρ、(5)式、(6)式、(7)式、(8)式、(9)式、(10)式が予め書き込まれて記憶されている。
また、磁気測定データ判定部19は、算出した距離dが予め設定した閾値dsを超えない場合、磁気測定データ校正装置1において、新たな磁気測定データMnによるオフセットOnの算出を行わない制御を行う。この場合、記憶部14に記憶されるデータは、磁気測定データMn−1において算出された数値が、書き換えられずにそのまま記憶されることになる。
方位計測装置を静止状態とし、X軸、Y軸及びZ軸方向の各測定軸の磁気測定データの変動幅を予め測定し、この変動幅を含む範囲を測定ノイズvx、vy、zvとする。
例えば、X軸、Y軸及びZ軸方向の各測定軸の測定ノイズの標準偏差が1μTである磁気素子を用いた場合、(11)式により求められる変動幅は最大で4.5μTである。
この場合、閾値dsを5μTとして設定する。
また、測定データ入力部11は、オフセットOnが求められた後、磁気測定データMnを記憶部14に書き込んで記憶させる。
また、記憶部14には、データバッファが設けられており、16組から32組の磁気測定データMがこのデータバッファに書き込まれて記憶されている。例えば、16組の磁気測定データの組が記憶されている場合、磁気測定データM1からM16までの磁気測定データがデータバッファに記憶されることになる。
オフセット有効性判定部10は、以下の(12)式により、データバッファに記憶されている磁気測定データM1からMnの各々に対応する距離d1nを算出する。
そして、オフセット有効性判定部10は、それぞれ二乗した結果を加算し、加算結果の平方根を算出することで、距離d1nを求める。ここで、オフセット有効性判定部10は、磁気測定データM1からMnの各々に対応し、距離d11からd1nの各々を求める。
また、オフセット有効性判定部10は、以下の(13)式により、評価値G1を算出する。
また、オフセット有効性判定部10は、磁気素子2から読み込んだ磁気測定データMnから求めたオフセットOnのオフセットのベクトルをO2(O2x,O2y,O2z)とし、このベクトルO2(O2x,O2y,O2z)と、磁気測定データMnとから新たに全磁力R2を求める。
そして、オフセット有効性判定部10は、以下の(14)式により、データバッファに記憶されている磁気測定データM1からMnの各々に対応する距離d2nを算出する。
そして、オフセット有効性判定部10は、それぞれ二乗した結果を加算し、加算結果の平方根を算出することで、距離d2nを求める。ここで、オフセット有効性判定部10は、磁気測定データM1からMnの各々に対応し、距離d21からd2nの各々を求める。
また、オフセット有効性判定部10は、以下の(15)式により、評価値G2を算出する。
評価値G1及びG2を算出すると、オフセット有効性判定部10は、この評価値G1と評価値G2の比較を行う。
このとき、オフセットO1と全磁力R1とが真値になっている場合、評価値G1が真値であり、オフセットO2と全磁力R2とが真値になっている場合、評価値G2が真値である。すなわち、オフセットO1と全磁力R1とが真値に近くなるほど評価値G1が小さくなり、また、オフセットO2と全磁力R2とが真値に近くなるほど評価値G2が小さくなると考えられる。
一方、オフセット有効性判定部10は、評価値G2が評価値G1以上である(G2≧G1)場合、前回算出したオフセットOn−1及び全磁力Rn−1が新たに算出されたオフセットOn及び全磁力Rnより真値に近いか、あるいは同様と判定する。
オフセット更新部17は、前回算出したオフセットOn−1を更新することを示す制御情報が供給されると、記憶部14に記憶されているオフセットOn−1対して、新たに算出されたオフセットOnを上書きする。これにより、記憶部14には最新のオフセットOnが保持される。
オフセット更新部17は、オフセットを更新しないことを示す制御情報が供給されると、記憶部14に記憶されている前回算出したオフセットOn−1を上書きせず、前回算出したオフセットOn−1の値の更新処理を行わない。これにより、記憶部14には、最新のオフセットとして、前回算出したオフセットOn−1と同じ値のオフセットOnが保持される。
この閾値GSは、標準的な地磁気の数値を基づいて決定されており、例えば日本における地磁気の大きさが約46μTであるので、この二乗である2116を用いている。すなわち、本実施形態においては、地磁気を超える(同等以上)のオフセット誤差が残っている場合を検出している。
また、この閾値GSは、磁気校正処理の仕様に対応して任意の数値に設定しても良い。
そして、初期化判定部20は、カウンタのカウンタ値Jが予め設定した閾値JS以上か否かの判定を行う。ここで、初期化判定部20は、カウンタ値Jが閾値JS以上である場合、閾値GSを超えるオフセット誤差が残っている、すなわち地磁気を超えるオフセット誤差が残っているため、オフセットO、全磁力R及び共分散行列Pを初期化する処理を行う。
一方、初期化判定部20は、評価値G2が閾値GS以下の場合、自身の内部に設けられたカウンタのリセット、すなわちカウント値Jを「0」とする処理を行う。
また、プログラムの構成あるいは回路の構成により変わるが、オフセットO、全磁力R及び共分散行列Pが初期化されてからオフセットの推定が終了するまで、複数のステップ数が必要となる。そして、この初期化からオフセットの終了まで、評価値G2が閾値GSを超える場合が存在する。このため、閾値JSは、初期化からオフセットの推定が終了するまでのステップ数、すなわちオフセット推定の処理におけるオフセットの更新回数として設定されている。
ステップS1:
共分散行列計算部12は、オフセットO及び全磁力Rの初期化を行う。
このとき、例えば、オフセットOの初期化の値としては磁気素子2の単体で3軸ヘルムホルツコイルにて測定されたオフセット値が記憶部14に予め書き込まれて記憶されている。また、全磁力Rの初期化の値としては、複数の地域における地磁気基準値が記憶部14に予め書き込まれて記憶されている。
そして、携帯機器に電源を投入した後、ユーザは携帯機器の表示部に表示される複数の地域から、自身の居住地が含まれる地域を選択する。
これにより、共分散行列計算部12は、記憶部14から、オフセットOの初期値を読み出すとともに、ユーザの選択した地域に対応して記憶されている地磁気基準値を全磁力Rの初期値として読み出す。
また、GPS(Global Positioning System)機能が携帯機器に搭載されている場合、共分散行列計算部12は、GPSから得られる緯度経度情報が含まれる地域(緯度経度情報の範囲で規定された領域)に対応して記憶されている地磁気基準値を全磁力Rの初期値として読み出すように構成しても良い。
そして、共分散行列計算部12は、処理をステップS2へ進める。
次に、共分散行列計算部12は、共分散行列Pの初期化を行う。すなわち、共分散行列計算部12は、記憶部14に予め書き込まれて記憶されている(4)式を読み出し、読み出した(4)式を共分散行列の初期値とする。
そして、共分散行列計算部12は、処理をステップS3へ進める。
測定データ入力部11は、磁気素子2のX軸方向磁気検出部21、Y軸方向磁気検出部22及びZ軸方向磁気検出部23の各々から、磁気測定データMnとして磁気データMxn、Myn及びMznを読み込む。
そして、測定データ入力部11は、読み込んだ磁気測定データMnを記憶部14に書き込んで記憶させる。
磁気測定データMnを読み込んだ後、測定データ入力部11は、処理をステップS4へ進める。
磁気測定データ判定部19は、測定データ入力部11から磁気測定データMnが供給されると、閾値dsと、前回オフセットOn−1の算出に用いた磁気測定データMn−1とを記憶部14から読み出す。
次に、磁気測定データ判定部19は、供給された磁気測定データMnと、記憶部14から読み出した磁気測定データMn−1との距離dを(11)式により算出する。
そして、磁気測定データ判定部19は、算出した距離dと、記憶部14から読み出した閾値dsとを比較する。
このとき、磁気測定データ判定部19は、距離dが閾値ds以上の場合、処理をステップS5へ進め、一方、距離dが閾値ds未満の場合、処理をステップS6へ進める。
次に、誤差関数計算部15は、記憶部14から読み込んだ(7)式に対し、磁気素子2から読み込んだ磁気データMxn、Myn及びMznと、記憶部14から読み込んだオフセットOn−1(Oxn−1,Oyn−1,Ozn−1)とを代入し、誤差関数enを算出する。
すなわち、誤差関数計算部15は、磁気データMxnからオフセットOxn−1を減算した結果を二乗し、磁気データMynからオフセットOyn−1を減算した結果を二乗し、磁気データMznからオフセットOzn−1を減算した結果を二乗する。
そして、誤差関数計算部15は、それぞれの減算した結果を加算し、この加算した結果から、全磁力Rn−1の二乗を減算し、誤差関数enを求める。
誤差関数enを算出した後、誤差関数計算部15は、処理をステップS7へ進める。
また、図2のフローチャートにおけるステップS3からステップS17までのループ(繰り返し処理)において、携帯機器の電源が投入されてから1回目のループの際、オフセットOn−1としては初期化におけるオフセットの数値が用いられ、同様に、全磁力Rn−1としては初期化における全磁力の数値が用いられる。
磁気測定データ判定部19は、オフセットOnの算出の処理を磁気測定データ校正装置1に行わせず、記憶部14に記憶された数値をそのままとし、処理をステップS3へ進める。
オフセット残差計算部16は、記憶部14から、(5)式と、(8)式と、忘却係数ρと、前回求めた共分散行列Pn−1とを読み出す。
次に、オフセット残差計算部16は、磁気データMnを(5)式に代入してベクトルznの行列を生成し、この生成したベクトルznの行列の転置行列zn Tを生成する。
そして、オフセット残差計算部16は、忘却係数ρ、共分散行列Pn−1、ベクトルzn及び転置行列zn Tの各々を(8)式に代入し、オフセット残差ηを算出し、このオフセット残差ηをオフセット更新部17へ出力する。
オフセット残差ηを算出した後、オフセット残差計算部16は、処理をステップS8へ進める。
共分散行列更新部13は、記憶部14から、(5)式と、(9)式と、忘却係数ρと、共分散行列Pn−1とを読み込む。
次に、共分散行列更新部13は、磁気データMnを(5)式に代入してベクトルznの行列を生成し、この生成したベクトルznの行列の転置行列zn Tを生成する。
そして、共分散行列更新部13は、忘却係数ρと、共分散行列Pn−1と、ベクトルznと、転置行列zn Tとを、(9)式に代入し、新たな共分散行列Pnを生成し、記憶部14に書き込んで記憶させる。この共分散行列更新部13が記憶部14に書き込んだ共分散行列Pnが、磁界のループにおいては共分散行列Pn−1として用いられる。
今回の磁気データMnを含む、今までに共分散行列Pを生成するために用いた磁気データMの全てを母集団とする共分散行列Pnを生成した後、共分散行列更新部13は、処理をステップS9へ進める。
オフセット更新部17は、記憶部14から(6)式及び(10)式を読み出す。
次に、オフセット更新部17は、(6)式に対し、前回算出されたオフセットOn−1と全磁力Rn−1とを代入し、オフセットのベクトルxn−1を求める。
そして、オフセット更新部17は、オフセット残差計算部16から供給されるオフセット残差ηと、求めたベクトルとを(10)式に代入し、磁気測定データMnを測定した時点(すなわち現在)におけるオフセットOnを示すオフセットのベクトルxnを算出する。すなわち、オフセット更新部17は、ベクトルxn−1に対し、オフセット残差ηを加算することにより、新たなオフセットを示すベクトルxnを算出する。
ベクトルxnを算出した後、オフセット更新部17は、処理をステップS10へ進める。
そして、磁気測定データ処理部18は、磁気測定データMnからオフセットOnを減算した結果を、校正した磁気校正データMf(Mfx,Mfy,Mfz)として、方位角計測部3に対して出力する。
次に、オフセット有効性判定部10は、記憶部14に記憶されている磁気測定データM1からMnと、前回算出されて記憶されたオフセットOn−1(O1)を読み出し、磁気データM毎に、上述した(12)式により距離d1nを算出する。
そして、オフセット有効性判定部10は、記憶部14に記憶されている磁気測定データMn−1とオフセットOn−1とを読み出し、(1)式により全磁力R1を算出する。
これにより、オフセット有効性判定部10は、算出した磁気データ毎の距離d1nと、全磁力R1とから、(13)式により評価値G1の算出を行い、処理をステップS16へ進める。
次に、オフセット有効性判定部10は、記憶部14に記憶されている磁気測定データM1からMnと、今回算出されて記憶されたオフセットOn(O2)を読み出し、磁気データM毎に、上述した(14)式により距離d2nを算出する。
そして、オフセット有効性判定部10は、記憶部14に記憶されている磁気測定データMnとオフセットOnとを読み出し、(1)式により全磁力R2を算出する。
これにより、オフセット有効性判定部10は、算出した磁気データ毎の距離d2nと、全磁力R2とから、(15)式により評価値G2の算出を行い、処理をステップS12へ進める。
次に、オフセット有効性判定部10は、算出した評価値G1とG2とを比較し、評価値G2が評価値G1未満であるか否かの判定を行う。
このとき、オフセット有効性判定部10は、評価値G2が評価値G1未満である場合、処理をステップS13へ進め、一方、評価値G2が評価値G1以上である場合、処理をステップS14へ進める。
評価値G2が評価値G1未満である場合、今回求めたオフセットOnが前回記憶部14にオフセットとして書き込まれて記憶されたオフセットOn−1より真値に近いため、オフセット有効性判定部10は、今回求めたオフセットOnを更新しないことを判定する。
そして、オフセット有効性判定部10は、記憶部14に記憶されているオフセットの値を更新することを示す制御信号を、オフセット更新部17に対して出力する。
この更新を行うことを示す制御情報が供給されると、オフセット更新部17は、記憶部14に記憶されているオフセットに対し、今回求めたオフセットOnを上書きし、オフセットの値の更新を行う。
そして、オフセット更新部17は、処理をステップS15へ進める。
評価値G2が評価値G1以上である場合、今回求めたオフセットOnに対して、前回記憶部14にオフセットとして書き込まれて記憶されたオフセットOn−1の方が真値に近いため、オフセット有効性判定部10は、前回書き込まれたオフセットの値を維持したまま更新することを示す制御信号を、オフセット更新部17へ出力する。
この更新を行わないことを示す制御情報が供給されると、オフセット更新部17は、記憶部14に記憶されているオフセットO、前回のオフセットOn−1の値を維持したまま上書し、オフセットの値の更新を行う。
そして、オフセット更新部17は、処理をステップS15へ進める。
次に、初期化判定部20は、評価値G2が内部の記憶部に予め書き込まれて記憶されている閾値GSを超えるか否かの判定を行う。
このとき、初期化判定部20は、評価値G2が閾値GSを超えている場合、処理をステップS16へ進める。
一方、初期化判定部20は、評価値G2が閾値GS以下の場合、内部のカウンタのカウンタ値Jをリセットした後、処理をステップS3へ進める。
次に、初期化判定部20は、自身内部に設けられたカウンタのカウンタ値Jをインクリメントした後、処理をステップS17へ進める。
次に、初期化判定部20は、カウンタのカウンタ値Jが、自身内部に設けられた記憶部に予め書き込まれて記憶されている閾値JS以上か否かの判定を行う。
このとき、初期化判定部20は、カウンタ値Jが閾値JS以上である場合、処理をステップS1へ進め、共分散行列計算部12に対してオフセットO、全磁力R及び共分散行列Pの初期化を行わせる処理を行う。
一方、初期化判定部20は、カウンタ値Jが閾値JS未満である場合、処理をステップS3へ進め、オフセット推定の処理を継続させる。
本実施形態による磁気測定データ校正装置1と、第1の手法のアルゴリズムを用いた校正装置#1と、第2の手法のアルゴリズムを用いた校正装置#2との各々を搭載した磁気計測装置を用意した。
そして、磁気計測装置の各々のオフセットを3軸ヘルムホルツコイルにて測定し、それぞれの校正装置が設けられた磁気素子のオフセット調整を行った状態とする。
まず、測定する磁気計測装置をオフセットが校正された状態で、3軸ヘルムホルツコイルのステージに静止させてセットする。
そして、地磁気と逆の磁界を発生させて磁界が0となる状態とし、この状態で磁気計測装置を特定の方向に移動させた際に磁気素子に印加される磁界である特定移動磁界を3軸ヘルムホルツコイルに発生させる。
すなわち、3軸ヘルムホルツコイルのステージに静止されてセットされた磁気計測装置に対し、磁気計測装置を移動させたときに磁気素子が検出すると推定される磁界を3軸ヘルムホルツコイルにより印加する。これにより、磁気計測装置を搭載した携帯機器を移動させた状態をシミュレーションすることになる。
このシミュレーションの際、地磁気と逆の磁界と特定移動磁界とのみでなく、ある一方向の決められた大きさの特定方向の磁界を仮想オフセットとする磁界(あたかも環境オフセットが存在するようにする仮想的なオフセット磁界)を、地磁気と逆の磁界と特定移動磁界とに対して合成した合成磁界を印加した。
そして、上述した合成磁界を印加し、各磁気計測装置の出力を計測した。このとき、合成磁界の磁界変化を検知し、正常に校正が行われた場合、磁気計測装置における校正装置がオフセット磁界を、携帯機器内部のオフセットとして判定する。このため、磁気計測装置は、オフセット磁界と携帯機器内部のオフセットを磁気測定データから減算して出力することになる。
上述した実験において、X、Y及びZ軸方向の各々の測定軸に対し、それぞれオフセット磁界として10μT(マイクロテスラ)を用いた。
また、地磁気と逆の磁界とオフセット磁界との合成磁界を印加した状態における磁気計測装置の出力する各測定軸の磁気データの2乗を加算し、加算結果の平方根をオフセット推定誤差として計算した。このオフセット推定誤差は0に近くなるほど、校正装置の算出したオフセットが真値に近いことを示すことになる。
図3に本実施形態における実験の結果を示す。この図3は、本実施形態による磁気測定データ校正装置1、校正装置#1及び校正装置#2に対し、磁気と逆の磁界と、特定移動磁界(8の字状の移動と斜め方向の移動)と、オフセット磁界との合成磁界を印加し、計測したオフセット推定誤差を示すテーブルである。
斜め方向に移動させる第2の状態の場合、本実施形態においては第1の状態の場合と差がないが、校正装置#1及び#2においては第1の状態に対し、算出されるオフセットの算出精度が低下している。特に、校正装置#2は、17.32=(102+102+102)1/2であるため、そもそもオフセットの推定自体が行われていないことが判る。
上述した図3の結果から、本実施形態によれば、磁気測定データの校正に必要な携帯機器の移動を最小限にすることができ、かつ従来の手法に比較してオフセットの推定精度を向上させることができる。
すなわち、図4及び図5は、横軸が時間を示し、縦軸がオフセットの値を示し、オフセットが真値に近づくまでのオフセット推定にかかる時間を定量的に評価するための実験の結果を示す図である。図4は初期化判定部20を設けない構成の磁気校正装置によりオフセット推定を行い、一方、図5は初期化判定部20を設けた構成の磁気校正装置によりオフセット推定を行った結果を示している。
この図4及び図5の結果から分かるように、オフセットが急激に大きく変化した場合に、オフセットO、全磁力R及び共分散行列Pの初期化を行わないと、真のオフセットに近づくまでに長い時間がかかることになる。一方、オフセットO、全磁力R及び共分散行列Pの初期化を行うことにより、オフセットが変化しても、初期化を行わない場合に比較して、オフセットの変化により速く追従できることが分かる。
以下に、RLS法を用いた場合、共分散行列を用いて最新の磁気測定データMを用いてオフセットOを更新する、すなわちオフセットのベクトルxを更新することで、常にオフセットOの最尤値(最尤推定値)を得ることができることの説明を行う。
まず、磁気測定データMn(Mxn,Myn,Mzn)から、以下の(16)式を定義する。
この重み付け行列Wnが単位行列であるならば、評価関数J2はすでに示した(17)式による評価関数J1と同一の評価値(J2=J1)を求める最小二乗法になる。
また、計算で用いる共分散行列Pnを表すため、行列Unを以下の(23)式により定義する。
また、共分散行列Pnを、重み付け係数wnと行列Unで表すと、以下の(29)式となり、(27)式が(9)式と一致することになる。
次に、本発明の一実施形態による磁気測定データ校正装置1を用いた方位角計測装置の動作を以下に示す。
携帯機器に搭載される方位角計測装置には、図1に示す互いに直交する3つの測定軸を有する磁気検出部からなる磁気素子2と、図示されていない3軸加速度センサとを組み合わせた構成が搭載されている。
すなわち、この方位角計測装置は、3軸加速度センサにより重力を検出し、検出した重力の傾きの程度から自身の傾斜角を計算する。
そして、方位角計測装置において、磁気素子2により測定された磁気測定データが、磁気測定データ校正装置1により、オフセットが校正された磁気校正データMfを生成する。
方位角計測装置は、磁気測定データ校正装置1から出力される磁気校正データMfにより、方位角を算出する。
図6は、3軸加速度センサにより求まる絶対座標系と、3軸磁気素子である磁気計測装置の検出するセンサ座標系との各軸のずれを説明する図である。
図6において、3次元の絶対座標系を校正するX軸、Y軸及びZ軸を定義する。そして、X軸を回転軸とした回転角度をピッチ角(p)とし、Y軸を回転軸とした回転角度をロール角(r)とし、Z軸を回転軸とした回転角度を方位角(θ)とする。
上記絶対座標系とは、本実施形態においては、重力ベクトルに対してX軸とY軸とにより形成される平面が垂直であり、磁気素子2の測定する磁気測定データM(Mx,My,Mz)の全てがゼロとなる地点を原点Oとした座標系としている。また、センサ座標系は、磁気素子2が測定する磁気データM(Mx,My,Mz)が形成する座標系である。このため、磁気素子2が磁気データM(Mx,My,Mz)を測定する測定点毎にセンサ座標系は異なる。
そのため、磁気素子2により方位角を推定する場合、常に絶対座標系におけるX軸及びY軸のなす平面に対して、磁気素子2のセンサ座標系におけるX方向の測定軸(X軸検出磁界)とY方向の測定軸(T軸検出磁界)とのなす平面が平行であれば、周囲の環境による磁界の変化などの影響があっても、常に、傾斜センサとして用いた3軸加速度センサの測定する重力ベクトルにより、磁気素子2、すなわち方位角計測装置の傾斜角を正確に測定することができる。
このとき、加速度計測データS(Sx,Sy,Sz)と加速度計測データS’(Sx’,Sy’,Sz’)との関係は、以下の(36)式により示される。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
Claims (9)
- 互いに直交する3つの測定軸を有し、測定軸方向の地磁気を測定する軸センサからなる磁気素子から出力される前記測定軸毎の地磁気の測定結果である磁気測定データのオフセットを求め、前記磁気測定データを補正する磁気測定データ校正装置であり、
測定された磁気測定データの前記測定軸毎の磁気データと、前回求められたオフセットとの差分から誤差関数を求める誤差関数計算部と、
前記誤差関数及び前回求められた共分散行列からオフセット残差を算出するオフセット残差計算部と、
前回の前記磁気測定データの測定時に算出した前記オフセットに対し、前記オフセット残差を加算し、新たなオフセットを算出するオフセット更新部と、
測定された前記磁気測定データを用い、以前に測定された前記磁気測定データを母集団とする磁気測定データの共分散行列を更新し、測定された前記磁気測定データを前記母集団に加えて新たな共分散行列を生成する共分散行列更新部と、
更新された前記オフセットとオフセットの真値との誤差を示す第1評価値を算出するオフセット有効性判定部と、
前記第1評価値が予め設定された第1閾値を超えているか否かの判定を行い、前記第1評価値が前記第1閾値を越えている場合、前記オフセット及び前記共分散行列を初期化する処理を行う初期化判定部と
を備え、
前記共分散行列は、4行×4列の行列であり、前記新たな共分散行列は、前記測定された前記磁気測定データMnを前記3つの測定軸に対応した(Mxn,Myn,Mzn)とするとき、
前記オフセット有効性判定部が、前記磁気素子の測定軸からなる3次元磁界空間における前記磁気測定データの各々と、更新された前記オフセットとの第1距離を求め、当該第1距離の各々と前記磁気測定データから求めた全磁力との第1差分を求め、全ての第1距離に対応する当該第1差分の二乗を加算して前記第1評価値を算出することを特徴とする磁気測定データ校正装置。 - 前記初期化判定部が、
オフセット更新を行う過程において、前記第1評価値が前記第1閾値を越えていることを判定した回数が予め設定された回数以上である場合、前記初期化する処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の磁気測定データ校正装置。 - 前記新たな共分散行列が、前記行列znと、前記転置行列zn Tと、更新前の共分散行列と、忘却係数ρとを用いて生成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気測定データ校正装置。
- 前回算出されたオフセットを求める際に用いた磁気測定データと、前記磁気素子から新たに入力された新たな磁気測定データとの、前記磁気素子の測定軸からなる3次元磁界空間における第2距離を求め、当該第2距離と予め設定されている第2閾値との比較を行い、前記第2距離が前記第2閾値を超えている場合、前記オフセット更新部に対して新たなオフセットの更新を行わせ、一方前記第2距離が前記第2閾値以下の場合、新たなオフセットの更新を行わせない制御を行う磁気測定データ判定部を
さらに有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の磁気測定データ校正装置。 - 前記第2閾値が、前記3次元磁界空間における前記磁気素子の各測定軸方向における測定ノイズの座標点と、前記3次元磁界空間の原点との距離として定められている
ことを特徴とする請求項4に記載の磁気測定データ校正装置。 - 前記第1評価値が前記第1差分の二乗の総和であり、前記第1閾値が地磁気の大きさの二乗であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の磁気測定データ校正装置。
- 現時点までに前記オフセットを算出した際に用いた磁気測定データを時系列に記憶するバッファと、
前記バッファに記憶されている前記磁気測定データの各々と前回のオフセットとの第3距離を求め、当該第3距離の各々と前回のオフセットを求めた際の前記磁気測定データから求めた全磁力との第3差分を求め、全ての第3距離に対応する当該第3差分の二乗を加算して第2評価値を算出し、当該第2評価値と前記第1評価値とを比較し、前記第1評価値が前記第2評価値未満である場合、新たに求めたオフセットを前記磁気測定データの校正に用いるオフセットとし、一方、前記第1評価値が前記第2評価値以上である場合、前回求めたオフセットを前記磁気測定データの校正に用いるオフセットとする
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の磁気測定データ校正装置。 - 前記誤差関数計算部が、
前記3つの測定軸からなる3次元座標系において、測定された前記磁気測定データのデータ座標と、前回の前記磁気測定データの測定時に算出した前記オフセットのオフセット座標との距離の2乗から全磁力を求め、当該全磁力から前回算出した前回全磁力を減算し、減算結果を前記誤差関数とする
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の磁気測定データ校正装置。 - 互いに直交する3つの測定軸を有し、測定軸方向の地磁気を測定する軸センサからなる磁気素子と、
前記磁気素子から出力される前記測定軸毎の地磁気の測定結果である磁気測定データのオフセットを求め、前記磁気測定データを補正する磁気測定データ校正部と、
前記磁気測定データ校正部から出力される、前記磁気測定データを校正した磁気校正データから方位角を算出する方位角計測部と
を備え、
前記磁気測定データ校正部が、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の磁気測定データ校正装置であることを特徴とする方位角計測装置。
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