JP6093366B2 - 人工器官 - Google Patents

Description

本発明は人工器官に関し、限定する訳ではないが、特に股関節用の表面再形成人工器官に関する。

損傷した又は病変した生来の骨関節のある部分又は全部を人工器官構成要素で置換することが知られている。例えば、劣化した生来の股関節を人工関節で置換し、かかる人工関節は、患者の寛骨臼に埋込まれる人工寛骨臼カップ構成要素と、患者の大腿骨に埋込まれ且つ人工寛骨臼カップ構成要素と関節連結する人工大腿骨頭構成要素とを含む。この種の人工関節は、全人工股関節置換（ＴＨＲ）として知られている。変形例として、キャップを既存の大腿骨頭の上に配置する股関節表面再形成術を採用してもよい。キャップは、全人工股関節置換の場合とほぼ同じように、寛骨臼カップと関節連結される。しかしながら、表面再形成術では既存の大腿骨頭が保存されるので、全人工股関節置換よりも少ない骨しか除去されない。

寛骨臼カップの従来の固定手段は、準備された寛骨臼の中にカップを打ち込むことであり、必要であれば、骨セメントを付加的に使用する。これは多くの場合に許容できるが、寛骨臼骨組織が高レベルに劣化している患者のための代替手段を提供しない。付加的な固定は、骨ねじによって行われるのがよく、骨ねじは、カップを貫通し、患者の骨組織の中に深く係合して、カップを適所に保持する。典型的には、次いで、ライナを、ねじ頭部を覆うようにカップに嵌め、大腿骨頭のための関節連結面を構成する。特許文献１は、炭素繊維強化ポリエーテルエーテルケトン（ＣＦＲ−ＰＥＥＫ）から形成されたモノブロックカップを開示し、モノブロックカップは、開口を含み、（ＣＦＲ−ＰＥＥＫから形成された）ねじ等がこの開口の中を通って、カップを寛骨臼に取付ける。ＣＦＲ−ＰＥＥＫは、境界潤滑下で作用し、従って、開口の存在は、支持面の摩耗性能に影響を及ぼさない。

英国特許出願ＧＢ０８１５８８４．２号明細書

しかしながら、ＣＦＲ−ＰＥＥＫ材料内の炭素繊維が大腿骨頭構成要素の表面を引掻くことを示唆する研究がある。このことにより、寛骨臼カップの加速された摩耗が生じることがある。従って、大腿骨頭構成要素は、炭素繊維による引掻きに対して耐性があるセラミック材料から形成されることが望ましい。しかしながら、大腿骨頭構成要素をセラミックで作製することは、金属構成要素よりも技術的に困難である。そのうえ、表面再形成術のために、セラミック製の表面再形成構成要素は、金属製の構成要素よりも厚くする必要がある。結果として、セラミック構成要素は、金属製の表面再形成構成要素の場合に必要な骨の除去量よりも多い骨を除去することが潜在的に必要とされる。

本発明は、上述した問題の幾つか又は全てに対処しようとするものである。

本発明の側面によれば、人工器官であって、繊維強化ポリマー材料から形成され且つ支持面を有する第１の構成要素と、第１の構成要素の支持面と関節連結されるように構成された第２の構成要素と、を含み、第２の構成要素の支持面の少なくとも一部に表面処理が施され、耐引掻き又は耐摩耗のための表面が形成される、人工器官を提供する。

耐摩耗性コーティングは、繊維強化ポリマー材料内の繊維が第２の構成要素の支持面を引掻くことを防止する。この引掻きを防止しなければ、第１の構成要素の加速された摩耗を引起すことがある。従って、耐摩耗性コーティングは、人工器官の耐久性を向上させる。

第１の構成要素は、炭素繊維強化ポリエーテルエーテルケトン（ＣＦＲ−ＰＥＥＫ）から形成されるのがよい。

表面処理は、硬化処理を含むのがよく、硬化処理は、例えば、拡散硬化処理である。

表面処理は、支持面に施される耐摩耗性コーティングを含むのがよい。

コーティングは、超格子コーティングであるのがよい。

コーティングは、セラミック材料を含むのがよい。

第２の構成要素は、金属材料から形成されるのがよい。

第２の構成要素は、コバルトクロム合金から形成されるのがよい。

耐摩耗性コーティングは、第２の構成要素の金属を関節界面に対してシールし、かくして、金属イオンの放出を防止するのがよい。

人工器官は、股関節用人工器官であり、第１の構成要素は、寛骨臼カップを含み、第２の構成要素は、大腿骨頭構成要素を含むのがよい。

寛骨臼カップは、モノブロックカップ（即ち、一部品カップ）であるのがよい。

大腿骨頭構成要素は、表面再形成構成要素であるのがよい。

耐摩耗性コーティングは、第２の構成要素の厚さを著しく追加する訳ではないので、第２の構成要素の厚さを最小に保つことを可能にする。その結果、除去しなければならない骨の量を減少させる。従って、本発明は表面再形成術に特に適する。

第１の構成要素の支持面は、１つ又は２つ以上のボアを含み、１つ又は２つ以上のボアは、第１の構成要素を適所に固着させる１つ又は２つ以上の取付け手段を受入れるのがよい。

繊維強化ポリマーは境界潤滑下で作用し、従って、ボアの存在は、支持面の摩耗性能に影響を及ぼさない。

さらに、ボアは、外科医が第１の構成要素を正しく位置決めしたかどうか判断することを可能にする。

本開示をより良く理解するために、及び、それをどのように実行することができるかをより明確に示すために、ここから添付の図面を例として参照する。

本発明の一実施形態による人工器官の分解側面図である。

図１を参照すると、本発明の一実施形態による人工器官２は、寛骨臼カップ４と、表面再形成大腿骨構成要素６を含む。

寛骨臼カップ４は、炭素繊維強化ポリエーテルエーテルケトン（ＣＦＲ−ＰＥＥＫ）等の繊維強化ポリマーから形成されたモノブロック構成要素である。寛骨臼カップ４は、略半球形であり、内面（図示せず）と外面８を有する。

使用の際、後でより詳細に説明するように、内面は、支持面を形成し、外面８は、適切にリーマ加工された患者の寛骨臼に接する。寛骨臼カップ４の外面８に、骨結合による固定を補助する閉鎖孔型の多孔コーティング及び／又はヒドロキシアパタイト（ＨＡ）コーティングを施すのがよい。変形例として、外面８は、相互連結された孔を有するチタン製の多孔骨内殖面を含んでいてもよい。寛骨臼カップ４の外面８は、４４〜６６ｍｍの直径を有するのがよい。直径は、患者の寛骨臼との正確な解剖学的適合を行うように選択されるのがよい。

寛骨臼カップ４は、複数のボア（図示せず）を含む。ボアは、寛骨臼カップ４を貫いて外面８から内面まで延びるのがよい。変形例として、ボアは、外面８から寛骨臼カップ４の内に部分的にのみ延びる非貫通ボアであってもよい。ボアは、固定手段１０を受入れ、固定手段１０は、例えば、ねじ、ピン、逆目くぎ（ｂａｒｂ）、スパイク、又は任意その他の適切な固定装置である。固定手段１０は、患者の寛骨臼への寛骨臼カップ４の固定を強化するのに使用されるのがよい。

前述のように、ＣＦＲ−ＰＥＥＫは境界潤滑下で作用し、従って、ボアの存在は、支持面の摩耗性能に影響を及ぼさない。

表面再形成大腿骨構成要素６は、コバルトクロム合金等の金属材料から形成され、球形キャップ部分１２と、球形キャップ部分１２の内面から延びる中心支柱１４を含む。

球形キャップ部分１２の内面及び中心支柱１４は、グリットブラスト加工され、表面再形成大腿骨構成要素６が患者の骨と一体化するのを補助する粗面が形成されるのがよい。

球形キャップ部分１２は、直径３８〜６０ｍｍであるのがよく、寛骨臼カップ４の内側支持面を補完するように選択されるのがよい。球形キャップ部分１２の厚さは、大腿骨頭から除去される骨の量を減少させるように最小にされる。

中心支柱１４は、円柱形であるのがよく、かくして、長さ方向に沿って一様な断面を有するのがよい。これにより、大腿骨頭にわたって一様な応力伝達が行われる。さらに、中心支柱１４は、回転方向の安定性を得るために溝を有するのがよい。

球形キャップ部分１２の外面１６は、支持面を形成し、耐摩耗性コーティングが施される。耐摩耗性コーティングは、超格子コーティング、特にセラミック材料を含む超格子コーティングであるのがよい。しかしながら、その他の種類の耐摩耗性コーティングを用いてもよい。

人工器官の埋込みの前、患者の寛骨臼及び大腿骨頭をリーマ加工する。次いで、寛骨臼カップ４を、準備された寛骨臼の中に打込み、表面再形成大腿骨構成要素６を、準備された大腿骨頭上にセメント接合させる。次いで、表面再形成大腿骨構成要素６の球形キャップ部分１２が寛骨臼カップ４の内面に受入れられるように、関節を整復する。

球形キャップ部分１２の外面１６上の耐摩耗性コーティングは、寛骨臼カップ４と表面再形成大腿骨構成要素６が関節連結している間、ＣＦＲ−ＰＥＥＫ材料内の炭素繊維が球形キャップ部分１２を引掻くことを防止する。これを防止しなければ、かかる引掻きにより、寛骨臼カップ４の加速された摩耗を引起こすことがある。従って、耐摩耗性コーティングは、人工器官２の耐久性を向上させる。

さらに、耐摩耗性コーティングは、球形キャップ部分１２の厚さを著しく追加するわけではないので、球形キャップ部分１２の厚さを最小に保つことを可能にする。その結果、本発明の表面再形成大腿骨構成要素６は、セラミック構成要素と比較して、大腿骨頭から除去しなければならない骨の量を減少させる。

さらに、耐摩耗性コーティングは、球形キャップ部分１２の金属を関節界面に対してシールし、かくして、金属イオン（即ち、コバルトイオン及びクロムイオン）の放出を防止する。かかる金属イオン放出は、過敏反応、偽腫瘍、及び遺伝毒性等の影響を生じさせることがあるので、望ましくない。

従って、本発明は、ＣＦＲ−ＰＥＥＫを、寛骨臼カップ４を形成するのに使用することを可能にする。このことは、上述したように、ＣＦＲ−ＰＥＥＫにより付加的な固定手段が使用されることを可能にするので望ましい。このことは、金属製のモノブロックカップでは不可能である。さらに、寛骨臼カップ４を貫通するボアにより、外科医が打込みの後で寛骨臼カップ４が完全に着座しているかどうか判断することを可能にする。ＣＦＲ−ＰＥＥＫ製カップはまた、カップが垂直方向に配置される状況において、硬質材料同士の支持よりも許容性があると考えられる。

本発明を、表面再形成人工股関節を参照して説明したが、本発明を他の種類の人工器官に適用してもよい。例えば、本発明を、全人工股関節置換に適用してもよいし、膝又は肩等の他の解剖学的関節のための人工器官に適用してもよい。

他の種類の表面処理を球形キャップ部分１２の外面１６上に施して、耐引掻き又は耐摩耗のための表面を形成してもよい。例えば、外面１６に、拡散硬化等の硬化処理を施してもよい。硬化処理は、上述した耐摩耗性コーティングの代わりに使用してもよいし、二重の処理を施すために耐摩耗性コーティングに加えて使用してもよい。

Claims (11)

1. 繊維強化ポリマー材料から形成され且つ支持面を有する寛骨臼カップを含む第１の構成要素と、
   金属の大腿骨頭構成要素を含み且つ前記第１の構成要素の支持面と関節連結されるように構成された第２の構成要素と、を含み、
   前記第２の構成要素の金属の支持面の少なくとも一部に表面処理が施され、耐摩耗のための表面が形成され、前記表面処理は、超格子コーティングである、人工器官。
2. 前記第１の構成要素は、炭素繊維強化ポリエーテルエーテルケトン（ＣＦＲ−ＰＥＥＫ）から形成される、請求項１に記載の人工器官。
3. 前記表面処理は、硬化処理を含む、請求項１又は２に記載の人工器官。
4. 前記硬化処理は、拡散硬化処理である、請求項３に記載の人工器官。
5. 前記超格子コーティングは、セラミック材料を含む、請求項１〜４のいずれか１項に記載の人工器官。
6. 前記第２の構成要素は、金属材料から形成される、請求項１〜５のいずれか１項に記載の人工器官。
7. 前記第２の構成要素は、コバルトクロム合金から形成される、請求項６に記載の人工器官。
8. 前記人工器官は、股関節用人工器官である、請求項１〜７のいずれか１項に記載の人工器官。
9. 前記寛骨臼カップは、モノブロックカップである、請求項８に記載の人工器官。
10. 前記大腿骨頭構成要素は、表面再形成構成要素である、請求項８又は９に記載の人工器官。
11. 前記第１の構成要素の支持面は、１つ又は２つ以上のボアを含み、前記１つ又は２つ以上のボアは、前記第１の構成要素を適所に固着させる１つ又は２つ以上の取付け手段を受入れる、請求項１〜１０のいずれか１項に記載の人工器官。

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