以下に添付図面を参照して、本発明に係る湿潤燃料の乾燥システムの好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
図1は、本実施例の流動層乾燥装置が適用された石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。図2は、本発明の一実施例に係る湿潤燃料の乾燥システムを表す概略構成図である。図3は、本実施例の流動層乾燥装置を表す概略側面図である。図4は、本実施例の流動層乾燥装置を表す概略背面図である。
本実施例の石炭ガス化複合発電設備(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)は、空気を酸化剤としてガス化炉で石炭ガスを生成する空気燃焼方式を採用し、ガス精製装置で精製した後の石炭ガスを燃料ガスとしてガスタービン設備に供給して発電を行うものである。即ち、本実施例の石炭ガス化複合発電設備は、空気燃焼方式(空気吹き)の発電設備である。
本実施例において、図1に示すように、石炭ガス化複合発電設備10は、給炭装置11、流動層乾燥装置12、微粉炭機(ミル)13、石炭ガス化炉14、チャー回収装置15、ガス精製装置16、ガスタービン設備17、蒸気タービン設備18、発電機19、排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)20を有している。
給炭装置11は、原炭バンカ21と、石炭供給機22と、クラッシャ23とを有している。原炭バンカ21は、原炭(石炭)を貯留可能であって、所定量の原炭を石炭供給機22に投下することができる。石炭供給機22は、原炭バンカ21から投下された原炭をコンベアなどにより搬送し、クラッシャ23に投下することができる。このクラッシャ23は、投下された原炭を所定の大きさの石炭に破砕することができる。
流動層乾燥装置12は、給炭装置11により投入された石炭に流動化ガスを供給することで、この石炭を流動させながら加熱乾燥するものであり、石炭に含有される水分を除去することができる。そして、この流動層乾燥装置12は、取り出された乾燥炭を冷却する冷却器31が設けられ、乾燥炭が乾燥炭バンカ32に貯留される。また、流動層乾燥装置12は、取り出された排ガスから乾燥炭の粒子を分離するサイクロン33が設けられ、排ガスから分離された乾燥炭の粒子が乾燥炭バンカ32に貯留され、乾燥炭が分離された排ガスは、流動層乾燥装置12に流動化ガスとして戻される。
微粉炭機13は、石炭粉砕機であって、流動層乾燥装置12により乾燥された石炭(乾燥炭)を細かい粒子状に粉砕して微粉炭を製造するものである。即ち、微粉炭機13は、乾燥炭バンカ32に貯留された乾燥炭が石炭供給機36により投下され、この乾燥炭を所定粒径以下の微粉炭とするものである。そして、微粉炭機13で粉砕後の微粉炭は、バグフィルタ37a,37bにより搬送用ガスから分離され、微粉炭供給ホッパ38a,38bに貯留される。
石炭ガス化炉14は、微粉炭機13で処理された微粉炭が供給可能であると共に、チャー回収装置15で回収されたチャー(石炭の未燃分)が戻されてリサイクル可能となっている。
即ち、石炭ガス化炉14は、ガスタービン設備17(圧縮機61)から圧縮空気供給ライン41が接続されており、このガスタービン設備17で圧縮された圧縮空気が供給可能となっている。空気分離装置42は、大気中の空気から窒素と酸素を分離生成するものであり、第1窒素供給ライン43が石炭ガス化炉14に接続され、この第1窒素供給ライン43に微粉炭供給ホッパ38a,38bからの給炭ライン44a,44bが接続されている。また、第2窒素供給ライン45も石炭ガス化炉14に接続され、この第2窒素供給ライン45にチャー回収装置15からのチャー戻しライン46が接続されている。更に、酸素供給ライン47は、圧縮空気供給ライン41に接続されている。この場合、窒素は、石炭やチャーの搬送用ガスとして利用され、酸素は、酸化剤として利用される。
石炭ガス化炉14は、例えば、噴流床形式のガス化炉であって、内部に供給された石炭、チャー、空気(酸素)、またはガス化剤としての水蒸気を燃焼・ガス化すると共に、二酸化炭素を主成分とする可燃性ガス(生成ガス、石炭ガス)が発生し、この可燃性ガスをガス化剤としてガス化反応が起こる。なお、石炭ガス化炉14は、微粉炭の混入した異物を除去する異物除去装置48が設けられている。この場合、石炭ガス化炉14は噴流床ガス化炉に限らず、流動床ガス化炉や固定床ガス化炉としてもよい。そして、この石炭ガス化炉14は、チャー回収装置15に向けて可燃性ガスのガス生成ライン49が設けられており、チャーを含む可燃性ガスが排出可能となっている。この場合、ガス生成ライン49にガス冷却器を設けることで、可燃性ガスを所定温度まで冷却してからチャー回収装置15に供給するとよい。
チャー回収装置15は、集塵装置51と供給ホッパ52とを有している。この場合、集塵装置51は、1つまたは複数のバグフィルタやサイクロンにより構成され、石炭ガス化炉14で生成された可燃性ガスに含有するチャーを分離することができる。そして、チャーが分離された可燃性ガスは、ガス排出ライン53を通してガス精製装置16に送られる。供給ホッパ52は、集塵装置51で可燃性ガスから分離されたチャーを貯留するものである。そして、供給ホッパ52からのチャー戻しライン46が第2窒素供給ライン45に接続されている。
ガス精製装置16は、チャー回収装置15によりチャーが分離された可燃性ガスに対して、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物を取り除くことで、ガス精製を行うものである。そして、ガス精製装置16は、可燃性ガスを精製して燃料ガスを製造し、これをガスタービン設備17に供給する。なお、このガス精製装置16では、チャーが分離された可燃性ガス中にはまだ硫黄分(H2S)が含まれているため、アミン吸収液によって除去することで、硫黄分を最終的には石膏として回収し、有効利用する。
ガスタービン設備17は、圧縮機61、燃焼器62、タービン63を有しており、圧縮機61とタービン63は、回転軸64により連結されている。燃焼器62は、圧縮機61から圧縮空気供給ライン65が接続されると共に、ガス精製装置16から燃料ガス供給ライン66が接続され、タービン63に燃焼ガス供給ライン67が接続されている。また、ガスタービン設備17は、圧縮機61から石炭ガス化炉14に延びる圧縮空気供給ライン41が設けられており、中途部に昇圧機68が設けられている。従って、燃焼器62では、圧縮機61から供給された圧縮空気とガス精製装置16から供給された燃料ガスとを混合して燃焼し、タービン63にて、発生した燃焼ガスにより回転軸64を回転することで発電機19を駆動することができる。
蒸気タービン設備18は、ガスタービン設備17における回転軸64に連結されるタービン69を有しており、発電機19は、この回転軸64の基端部に連結されている。排熱回収ボイラ20は、ガスタービン設備17(タービン63)からの排ガスライン70に設けられており、空気と高温の排ガスとの間で熱交換を行うことで、蒸気を生成するものである。そのため、排熱回収ボイラ20は、蒸気タービン設備18のタービン69との間に蒸気供給ライン71が設けられると共に、蒸気回収ライン72が設けられ、蒸気回収ライン72に復水器73が設けられている。そして、排熱回収ボイラ20にガス浄化装置74及び煙突75が連結されている。
このように構成された本実施例の石炭ガス化複合発電設備10では、給炭装置11にて、原炭が石炭供給機22によりクラッシャ23に投下されて破砕され、流動層乾燥装置12により加熱乾燥された後、冷却器31により冷却され、乾燥炭バンカ32に貯留される。乾燥炭バンカ32の乾燥炭は、微粉炭機13で粉砕されて微粉炭が製造され、微粉炭供給ホッパ38a,38bに貯留される。この微粉炭供給ホッパ38a,38bに貯留される微粉炭は、石炭ガス化炉14に供給され、圧縮空気により燃焼してガス化することで、二酸化炭素を主成分とする可燃性ガス(石炭ガス)が生成される。そして、この可燃性ガスは、チャー回収装置15によりチャーが分離されてガス精製装置16に送られる。
ガス精製装置16にて、可燃性ガスは、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物が取り除かれてガス精製され、燃料ガスが製造される。ガスタービン設備17では、圧縮機61が圧縮空気を生成して燃焼器62に供給すると、この燃焼器62は、この圧縮空気と燃料ガスとを混合して燃焼することで燃焼ガスを生成し、タービン63を駆動して発電機19による発電を行う。そして、ガスタービン設備17から排出された排気ガスは、排熱回収ボイラ20で蒸気を生成し、蒸気タービン設備18に供給する。蒸気タービン設備18では、この蒸気によりタービン69を駆動して発電機19により発電を行う。その後、ガス浄化装置74では、排熱回収ボイラ20から排出された排気ガスの有害物質が除去され、浄化された排ガスが煙突75から大気へ放出される。
ここで、本実施例の湿潤燃料の乾燥システムについて詳細に説明する。
本実施例の湿潤燃料の乾燥システムは、図2に示すように、流動層乾燥装置12と、サイクロン33と、流動化ガス供給装置202と、加熱装置203とを有している。流動層乾燥装置12は、流動化ガスを供給することで石炭(湿潤燃料)を流動化させて乾燥するものである。本実施例では、流動化ガスとして不活性ガス(例えば、窒素ガスなど)が適用される。
流動層乾燥装置12は、プラグフロー式の乾燥装置であって、図3及び図4に示すように、乾燥容器101と、石炭投入口102と、乾燥炭排出口103と、流動化ガス供給部104(104a,104b,104c)と、ガス排出口105と、伝熱管106,107,108とを有している。
乾燥容器101は、中空箱型形状をなしており、一端側に石炭を投入する石炭投入口102が形成される一方、他端側の下部に石炭を加熱乾燥した乾燥炭を排出する乾燥炭排出口103が形成されている。この場合、石炭投入口102や乾燥炭排出口103を乾燥容器101の端部に1つずつ設けたが、複数であってもよい。この場合、乾燥容器101は、石炭供給機22(図1参照)により石炭投入口102から内部への石炭供給量を調整することができる。また、乾燥容器101は、乾燥炭排出口103に設けられた図示しないロータリバルブの回転数を調整することで、石炭排出量を調整することができる。
また、乾燥容器101は、下部に底板101aから所定距離をあけて複数の貫通孔を有する分散板109が設けられることで、上部の乾燥室(111,112,113)と下部の風箱110とに区画されている。そして、乾燥容器101は、この底板101aに風箱110を介して分散板109の上方に流動化ガスを供給する流動化ガス供給部104(104a,104b,104c)が設けられている。更に、乾燥容器101は、乾燥炭排出口103側の天井板101bに流動化ガス及び発生蒸気を排出するガス排出口105が形成されている。
この乾燥容器101は、石炭投入口102から石炭が供給されると共に、流動化ガス供給部104から風箱110及び分散板109を通して流動化ガスが供給されることで、この分散板109の上方に所定厚さの流動層S1,S2,S3が形成されると共に、この流動層S1,S2,S3の上方にフリーボード部F1,F2,F3が形成される。
そして、乾燥容器101は、内部が石炭の流動方向の上流側に設けられた第1乾燥室111と、この第1乾燥室111より下流側に設けられた第2乾燥室112と、石炭の流動方向の最も下流側に設けられた第3乾燥室113とが設けられている。
詳細に説明すると、乾燥容器101は、複数(本実施例では、2個)の仕切板(仕切部材)114,115により流動層S1,S2,S3が石炭の流動方向に複数(本実施例では、3個)に分割され、各仕切板114,115により原炭の通過開口部116,117が形成されている。この各仕切板114,115は、原炭の流動方向に直交する鉛直方向に沿って配置されると共に、石炭の流動方向に所定間隔で配置されており、左右の端部が乾燥容器101の内壁面に取付けられている。そして、各仕切板114,115は、下端部が分散板109と所定隙間をもって位置し、上端部が流動層S1,S2,S3より上方に延出するように位置している。即ち、各仕切板114,115と分散板109との間に、所定の高さと幅(開口面積)を有する通過開口部116,117が確保されており、この通過開口部116,117は、ほぼ同じ開口面積に設定されている。
このように乾燥容器101は、各仕切板114,115が設けられることで、第1乾燥室111と第2乾燥室112と第3乾燥室113に区画され、各乾燥室111,112,113は、この仕切板114,115の上方で連通されている。この場合、第1乾燥室111は、フリーボード部F1と流動層S1が形成され、石炭の初期乾燥を行う領域(予熱乾燥領域)となっている。第2乾燥室112は、フリーボード部F2と流動層S2が形成され、原炭の中期乾燥を行う領域(定率乾燥領域)となっている。第3乾燥室113は、フリーボード部F3と流動層S3が形成され、原炭の後期乾燥を行う領域(減率乾燥領域)となっている。
この場合、各乾燥室111,112,113は、床面積がほぼ同様となるように設定されているが、原炭の含水量などに応じて最適な比率に設定してもよく、例えば、第2乾燥室112の床面積を最大に設定することが望ましい。即ち、第1乾燥室111は、投入される石炭の含水率が高いことから、所定の含水率まで原炭の乾燥速度が上昇する予熱乾燥領域である。石炭の乾燥速度は、所定の乾燥速度まで上昇して一定となることから、第2乾燥室112は、石炭の乾燥速度が一定となる定率乾燥領域である。石炭の乾燥速度は、石炭の含水率が所定の含水率(限界含水率)になると、加工することから、第3乾燥室113は、石炭の乾燥速度が減少する減率乾燥領域である。従って、定率乾燥領域である第2乾燥室112の容積を最大にすることで、乾燥効率が向上する。
また、乾燥容器101は、3つの乾燥室111,112,113に対応するように、複数(本実施例では、2個)の区画板(区画部材)118,119により風箱110が石炭の流動方向に複数(本実施例では、3個)に区画されている。即ち、風箱110は、2個の区画板118,119により3個の風箱110a,110b,110cに区画され、この3個の風箱110a,110b,110cに対応するように3個の流動化ガス供給部104a,104b,104cが設けられている。流動層乾燥装置12は、各乾燥室111,112,113に対して流動化ガスを供給するガス供給ライン121が設けられており、このガス供給ライン121から分岐した3個の分岐ライン121a,121b,121cがそれぞれ風箱110a,110b,110c(流動化ガス供給部104a,104b,104c)に連結されている。
この乾燥容器101は、その室内において、供給された石炭が押し出し流れとなるようにプラグフロー方式として構成されている。この押し出し流れとは、流動層S1,S2,S3において、石炭が流動方向に拡散しないように、この石炭を流動方向に押し出す流れである。
また、乾燥容器101は、各乾燥室111,112,113にて、外部から乾燥容器101を貫通して各流動層S1,S2,S3内を循環する複数の伝熱管106,107,108が配置されている。この伝熱管106,107,108は、各流動層S1,S2,S3内に埋設されるように位置されている。伝熱管106,107,108は、過熱蒸気St1が供給されている。伝熱管106,107,108は、内部を流れる過熱蒸気St1により各流動層S1,S2,S3で流動化ガスにより流動している石炭を加熱して乾燥することができる。伝熱管106、107、108を通過した過熱蒸気St1は、石炭と熱交換した後、蒸気St2として排出される。また、伝熱管106,107,108を通過した過熱蒸気St1は、液化した状態で排出されるようにしてもよい。伝熱管106,107,108は、鉛直方向上側の端部から過熱蒸気St1が供給され、鉛直方向下側の端部から蒸気St2が排出される。この場合、伝熱管106,107,108は、供給される過熱蒸気St1の圧力を変更することで、その温度を調整することができる。伝熱管106,107,108の配置構成については後述する。
従って、第1乾燥室111に供給された石炭は、ここで流動化ガスにより流動されると共に、伝熱管106により加熱されることで乾燥される。そして、第1乾燥室111で初期乾燥された石炭は、仕切板114の下部の通過開口部116を通って第2乾燥室112に移動され、ここで、伝熱管107により加熱されることで中期乾燥される。そして、第2乾燥室112で中期乾燥された石炭は、仕切板115の下部の通過開口部117を通って第3乾燥室113に移動され、ここで、伝熱管108により加熱されることで後期乾燥される。
これにより、各乾燥室111,112,113の流動層S1,S2,S3を形成する石炭は、この流動層S1,S2,S3間を上流側から通過開口部116,117を通って順に移動することで、押し出し流れとすることができ、流動方向に拡散させることなく乾燥される。
次に、サイクロン33は、流動層乾燥装置12のガス排出口105から排出された排ガス(流動化ガス及び発生蒸気)から乾燥炭の微粒子を分離するものである。そのため、流動層乾燥装置12のガス排出口105からこのサイクロン33の上部に向けて排ガス供給ライン211が設けられている。そして、サイクロン33は、微粒子が除去された排ガスを下部から排出する排出管212が設けられている。この排出管212は、サイクロン33内の中央部に鉛直方向に沿って配置され、上端部の排出口がサイクロン33の上部で、且つ、水平方向の中央側に配置され、下端部が水平方向に屈曲してサイクロン33の下部から外方に突出している。そして、排出管212は、下端部が配管213を介して煙突214に連結されている。また、サイクロン33は、排ガスから分離した微粒子を乾燥炭バンカ32に供給する。
流動化ガス供給装置202は、サイクロン33により微粒子が除去された排気ガスを流動化ガスとして流動層乾燥装置12に供給するものである。この流動化ガス供給装置202は、配管213とガス供給ライン121を連結する流動化ガス戻しライン216と、この流動化ガス戻しライン216に設けられた循環ブロワ217とを有している。また、流動化ガス供給装置202は、流動層乾燥装置12に供給する流動化ガスを加熱する加熱装置203が設けられている。この加熱装置203は、流動化ガス戻しライン216における循環ブロワ217より流動化ガスの流れ方向の下流側に設けられている。加熱装置203は、例えば、燃焼バーナ、熱交換器などである。
ここで、本実施例の湿潤燃料の乾燥システムの作動について説明する。
湿潤燃料の乾燥システムにおいて、流動層乾燥装置12では、図3に示すように、石炭投入口102から乾燥容器101に石炭が供給されると共に、流動化ガス供給部104から分散板109を通して流動化ガスが供給されることで、この分散板109の上方に所定厚さの流動層S1,S2,S3が形成される。石炭は、流動化ガスにより流動層S1,S2,S3を乾燥炭排出口103側に移動し、このとき、伝熱管106,107,108から熱を受けることで加熱されて乾燥される。
即ち、石炭投入口102から石炭が供給されると、まず、第1乾燥室111では、流動化ガス供給部104aから分散板109を通して流動化ガスが供給されると共に、伝熱管106から熱を受けることで、流動層S1で流動しながら乾燥される。次に、第1乾燥室111で初期乾燥が終了した石炭は、仕切板114の通過開口部116を通って第2乾燥室112に流動する。この第2乾燥室112では、流動化ガス供給部104bから分散板109を通して流動化ガスが供給されると共に、伝熱管107から熱を受けることで、流動層S2で流動しながら乾燥される。そして、第2乾燥室112で中期乾燥が終了した石炭は、仕切板115の通過開口部117を通って第3乾燥室113に流動する。この第3乾燥室113では、流動化ガス供給部104cから分散板109を通して流動化ガスが供給されると共に、伝熱管108から熱を受けることで、流動層S3で流動しながら乾燥される。このように石炭は、流動層S1,S2,S3にて、伝熱管106,107,108により加熱されながら、供給される流動化ガスにより流動し、押し出し流れとなって流動方向に拡散することなく乾燥される。
その後、石炭が乾燥された乾燥炭は、乾燥炭排出口103から外部に排出され、流動層Sで石炭が加熱乾燥されることで発生した蒸気は、流動化ガスと共に上昇し、乾燥炭排出口103側に流れ、ガス排出口105から外部に排出される。
流動層乾燥装置12のガス排出口105から排出された排ガス(流動化ガス及び発生蒸気)は、排ガス供給ライン211を通してサイクロン33に供給される。このサイクロン33に供給された排ガスは、内部を旋回することで、石炭の微粒子が外周部側に分離される。微粒子が除去された排ガスは、冷却水により冷却されると共に蒸気が凝縮され、不活性ガスが排出管212に吸い込まれ、この排出管212から配管213を介して煙突214で処理される。分離された微粒子は、乾燥炭バンカ32に供給される。
ここで、サイクロン33から排出管212を通して配管213に排出された排ガスは、一部が流動化ガス供給装置202により流動化ガスとして流動層乾燥装置12に供給される。即ち、循環ブロワ217が作動することで、配管213に排出された排ガスの一部は、流動化ガス戻しライン216に吸引され、加熱装置203及び熱交換器241により所定温度まで加熱された後にガス供給ライン121に送られ、流動化ガスとして流動層乾燥装置12に供給される。
次に、図4及び図5を用いて、伝熱管106の配置構成について説明する。図5は、伝熱管の配置の一例を示す説明図である。伝熱管106は、図4に示すように、複数の直線部が鉛直方向に並列で配置されている。また、複数の直線部は、両端が屈曲部(折り返し部)と接続され、一方の端部の屈曲部で鉛直方向上側の直線部と連結し、他方の端部の屈曲部で鉛直方向下側の直線部と連結している。また、鉛直方向の最も上側の直線部は、一方の端部が過熱蒸気St1を供給する機構に接続されている。鉛直方向の最も下側の直線部は、他方の端部が蒸気St2を排出する機構に接続されている。このように、伝熱管106は、1本に繋がった管路が折りたたまれた状態で乾燥容器101の内部に配置されている。また、乾燥容器101の内部には、同様の形状の複数の伝熱管106が水平方向に隣接して配置されている。また、伝熱管106は、水平方向に隣接する伝熱管106と鉛直方向の位置が異なる位置に配置されている。これにより、伝熱管106は、直線部に直交する方向で切断した断面における配置位置が図5に示すように千鳥格子状になる。
ここで、本実施形態の伝熱管106は、直線部の延在方向に直交する方向で、かつ、水平方向から見た場合に隣接する直線部の間隔をa1、a2とする。直線部の延在方向に直交する方向で、かつ、鉛直方向から見た場合に隣接する直線部の間隔をb1、b2とする。ここで、間隔a1、b1は、鉛直方向の最も上側に配置された直線部の間隔であり、間隔a2、b2は、鉛直方向の最も下側に配置された直線部の間隔である。
伝熱管106は、直線部の鉛直方向上側の端部において隣接する直線部の間隔a1が、鉛直方向下側の端部において隣接する直線部の間隔a2よりも狭い。また、間隔b1と間隔b2は同じ間隔である。
流動層乾燥装置12は、伝熱管106の直線部の延在方向に直交する方向で、かつ、水平方向から見た場合に隣接する直線部の間隔を、a1<a2とすることで、鉛直方向上側の領域の伝熱管106の配置密度を高くすることができる。
ここで、流動層乾燥装置12は、乾燥容器101内で原炭(被乾燥物)が乾燥され、水分が蒸発することで蒸気は発生する。また、発生した蒸気は、鉛直方向上側に流れる。これにより、乾燥容器101の流動層S1,S2,S3は、鉛直方向上側に向かうに従ってガス量が増加するため、鉛直方向上側に向かうに従って流動化のガス速度が大きくなる。本実施形態の、流動層乾燥装置12は流動化のガス速度が大きい鉛直方向上側の領域の伝熱管106の配置密度を高くすることで、流動化しやすい領域により多くの伝熱管を配置することができる。また、流動化のガス速度が小さい鉛直方向下側の領域の伝熱管106の配置密度を低くすることで流動性の低下を抑制することができる。これにより、流動性の低下を抑制しつつ、より多くの伝熱管を配置することができる。
従って、流動層乾燥装置12では、相対的にガス量が増加し、流動性が高い鉛直方向上側での伝熱管106の配置密度を高くすることができる。これにより、より多くの伝熱管を配置することができ、乾燥性能を高くすることができる。また、伝熱管の配置密度が高くなっても流動性を維持できる領域の配置密度を高くしているため、流動性の低下を抑制できる。また、配置密度を高くすることができるため、装置を小型化することができる。以上より、乾燥の性能を維持しつつ、装置を小型化することができる。本実施形態の配置にすることで、伝熱管を水平方向及び鉛直方向に等間隔で配置した場合に比べ、流動性を維持しつつ、同じ領域あたりの伝熱管の配置量を多くすることができる。これにより、乾燥性能を高くすることができる。また、同じ乾燥性能をより小さい流動層で実現できるため、より小型の装置で実現することができる。また、流動層乾燥装置12は、石炭が上部から供給されるため、鉛直方向上側での伝熱管106の密度が高くすることで、投入された石炭を迅速に加熱・乾燥することができ、良好な流動状態の維持が可能となる。
ここで、上記実施形態では、鉛直方向最も上側の伝熱管の間隔と、鉛直方向最も下側の伝熱管の間隔との関係を規定したが、伝熱管106は、隣接する直線部の間隔が、鉛直方向上側から鉛直方向下側に向かって広くなる、言い換えれば、鉛直方向下側から鉛直方向上側に向かって狭くなることが好ましい。ここで、伝熱管106は、間隔が同じ伝熱管があってもよく、伝熱管の間隔が変化する場合、鉛直方向上側における間隔が鉛直方向下側における間隔よりも広くなっていればよい。伝熱管は、鉛直方向上側から鉛直方向下側に向かって、間隔が徐々にまたは段階的に広くなるようにすることで、流動性に対応して伝熱管の配置量を増加させることができる。これにより流動性の低下を抑制しつつ、より乾燥効率を高くすることができる。
また、本実施形態では、直線部の延在方向に直交する方向で、かつ、水平方向から見た場合の間隔を変化させたが、これに限定されない。流動層乾燥装置は、複数の直線部が水平方向及び鉛直方向に列状に配置されており、直線部の鉛直方向上側の端部において隣接する直線部の間隔が、鉛直方向下側の端部において隣接する直線部の間隔よりも狭い形状であればよい。例えば、伝熱管は直線部延在方向に直交する方向で、かつ、鉛直方向から見た場合に、直線部の鉛直方向上側の端部において隣接する直線部の間隔が、鉛直方向下側の端部において隣接する直線部の間隔よりも狭く配置しても同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態では、伝熱管を、2つの直線部の端部を連結する湾曲部を有し、直線部が前記湾曲部を介して、他の直線部と連結している構造としたが、これに限定されない。流動層乾燥装置は、伝熱管の複数の直線部に連結するヘッダを設け、ヘッダから伝熱管の直線部に過熱蒸気を供給してもよい。
図6は、伝熱管に蒸気を循環させる機構の一例を示す説明図である。図7は、伝熱管の配置の他の例を示す説明図である。図6に示す伝熱管ユニット250は、過熱蒸気St1を供給する蒸気供給管252と、蒸気供給管252から供給された蒸気を伝熱管256に供給する供給ヘッダ254と、伝熱管256を流れた流体を回収する回収ヘッダ255と、複数の直線部262を有する伝熱管256と、使用された蒸気St2を回収する蒸気回収管260と、を有する。伝熱管256は、複数の直線部262を備え、直線部262は、それぞれ一方の端部が供給ヘッダ254に接続し、他方の端部が回収ヘッダ255に接続されている。伝熱管ユニット250は、蒸気供給管252から供給された過熱蒸気St1を供給ヘッダ254からそれぞれに直線部262に供給する。また、直線部262を流れた蒸気は、回収ヘッダ255で回収する。
ここで、本実施形態の伝熱管256は、図7に示すように、直線部262の延在方向に直交する方向で、かつ、水平方向から見た場合に隣接する直線部の間隔をa3、a4とする。直線部262の延在方向に直交する方向で、かつ、鉛直方向から見た場合に隣接する直線部262の間隔をb3、b4とする。ここで、間隔a3、b3は、鉛直方向の最も上側に配置された直線部の間隔であり、間隔a4、b4は、鉛直方向の最も下側に配置された直線部の間隔である。
伝熱管256は、水平方向から見た場合に、直線部262の鉛直方向上側の端部において隣接する直線部262の間隔a3が、鉛直方向下側の端部において隣接する直線部の間隔a4よりも狭い。また、鉛直方向から見た場合に、直線部262の鉛直方向上側の端部において隣接する直線部262の間隔b3が、鉛直方向下側の端部において隣接する直線部の間隔b4よりも狭い。
このように、伝熱管256は、水平方向と鉛直方向の両方で隣接する伝熱管の間隔を変化させることで、鉛直方向上側の配置密度をより高くすることができる。また、本実施形態のように直線部262を供給ヘッダ254、回収ヘッダ255で連結した構成とすることで、屈曲部の形状等を考慮する必要がなくなり、直線部262の配置(レイアウト)を簡単に変更することができる。
なお、本実施形態では、流動性を高くすることができ、かつ、効率よく伝熱管を配置できるため、直線部を千鳥格子状に配置したが、これにも限定されない。直線部をランダムに配置してもよいし、種々の規則で配置してもよい。ここで、隣接する直線部は、直線距離が最も近い直線部同士の間隔である。また、直線部の延在方向に直交する方向で、かつ、水平方向から見た場合に隣接する直線部は、鉛直方向から見た場合の配置位置が同じまたは隣接する位置にある直線部を対象とする。同様に、直線部の延在方向に直交する方向で、かつ、鉛直方向から見た場合に隣接する直線部は、水平方向から見た場合の配置位置が同じまたは隣接する位置にある直線部を対象とする。
なお、上述した実施例では、流動層乾燥装置12にて、乾燥容器101内を3つの乾燥室111,112,113に区画したが、2つの乾燥室または4つ以上の乾燥室としてもよい。また、乾燥容器101の形状、石炭投入口102、乾燥炭排出口103、流動化ガス供給部104、ガス排出口105の各構成や配置は、各実施例に限定されるものではなく、流動層乾燥装置12の設置場所や用途などに応じて適宜変更が可能である。即ち、本発明の湿潤燃料の乾燥システムは、流動層乾燥装置の形態に依存するものではない。
また、上述した実施例では、湿潤燃料として低品位炭を使用したが、高品位炭であっても適用可能であり、また、石炭に限らず、再生可能な生物由来の有機性資源として使用されるバイオマスであってもよく、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などを使用することも可能である。
また、上述した実施例では、乾燥容器101内に流動化ガスを供給するものとして説明したが、流動化ガスとして不活性ガス以外に空気などを適用してもよい。