JP6091860B2 - 鉱物繊維用水性バインダー - Google Patents
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また、上記特許文献3のバインダーは、少なくとも2個の、カルボキシル基、酸無水物基またはそれらの塩を含有する多酸と、少なくとも2個のヒドロキシル基を含有するポリオールからなるものであり、触媒としてリン含有促進剤を用いているものの、硬化が遅く多量の触媒が必要であり、バインダーとしての有効成分の割合が少なくなることから、得られる鉱物繊維マットの復元性に難があるという問題がある。
本発明の目的は、上記課題を解決し、耐熱性マット材料のグラスウール、ロックウール等の鉱物繊維の接着性に優れ、かつホルムアルデヒドを含有しない、耐水性、耐加水分解性に優れ、復元性に優れた鉱物繊維マットを与える水性バインダーを提供することにある。
(1)鉱物繊維の接着性に優れる。
(2)耐水性、耐加水分解性に優れる。
(3)該バインダーで接着してなる鉱物繊維マットは圧縮に対する復元性に優れる。
(4)ホルムアルデヒドを含有しない。
本発明における(共)重合体(A)は、少なくとも2個の、カルボキシル基および/もしくは潜在性のカルボキシル基を有する。ここにおいて、潜在性のカルボキシル基とは、例えば1個の酸無水物基が加水分解されて生じる2個のカルボキシル基を意味する。
そして、少なくとも2個の、カルボキシル基および/もしくは潜在性のカルボキシル基を有するとは、少なくとも2個のカルボキシル基、少なくとも2個の潜在性のカルボキシル基、またはカルボキシル基および潜在性のカルボキシル基の合計少なくとも2個の基を有することを意味する。
上記(a1)、(a2)のうち、バインダーの硬化速度の観点から好ましいのは(a1)、さらに好ましいのはアクリル酸である。
(1)アミドモノマー
C3〜18、例えば(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(C1〜5)(メタ)アクリルアミド、アルコキシ(C1〜4)アルキル(C1〜5)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(C1〜5)(メタ)アクリルアミド、アミノアルキル(C1〜5)(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(C1〜5)アミノアルキル(C1〜5)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(C1〜5)アミノアルキル(C1〜5)(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン;
C3〜30、例えばアルキル(C1〜18)(メタ)アクリレートおよびそれらの低級アルキル(C1〜4)エーテル[2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等]、ヒドロキシアルキル(C1〜5)(メタ)アクリレート、アミノアルキル(C1〜5)(メタ)アクリレート、N−アルキル(C1〜5)アミノ
アルキル(C1〜5)(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキル(C1〜5)アミノ
アルキル(C1〜5)(メタ)アクリレート、N−アルキル(C1〜5)アミノアルキル(C1〜5)(メタ)アクリレート;
C3〜10、例えばN−アリルアミン、N−アルキル(C1〜5)アリルアミン、N,N−ジアルキル(C1〜5)アリルアミン;
(4)ニトリルモノマー
C3〜10、例えば(メタ)アクリロニトリル;
C2〜30、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、イソプレン、ブタジエン;
(6)スチレンモノマー
C8〜30、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、ビニルトルエン、p−ヒドロキシスチレン、p−アセトキシスチレン;
(7)ビニルエステルモノマー
C4〜30、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル;
(8)ビニルエーテルモノマー
C3〜22、例えばビニルアルキル(C1〜20)エーテル。
上記(x)は1種単独使用でも、2種以上の併用でもいずれでもよい。
(a)としては、(a1)、(a2)の各単独でも併用してもいずれでもよい。併用する場合の重量比[(a1)/(a2)]は、硬化速度およびバインダーの接着力の観点から好ましくは50/50以上、さらに好ましくは70/30以上である。
本発明におけるMwのGPC測定条件は下記のとおりである。
<GPC測定条件>
[1]装置 :ゲルパーミエイションクロマトグラフィー「HLC−
8120GPC」、東ソー(株)製
[2]カラム :「TSKgel G6000PWxl」、「TSKgel
G3000PWxl」[いずれも東ソー(株)製]を直列に連結。
[3]溶離液 :メタノール/水=30/70(容量比)に0.5重量%の酢酸ナトリ
ウムを溶解させたもの。
[4]基準物質:ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)
[5]注入条件:サンプル濃度0.25%、カラム温度40℃
有機溶剤を使用する場合は、重合後脱溶剤しても、脱溶剤せずにそのまま用いてもいずれでもよい。該有機溶剤としては、メチルエチルケトン(以下MEKと略記)、アルコール等が挙げられ、生産性の観点から好ましいのはMEKである。
該(A)は、通常溶液(工業上の観点から好ましいのは水溶液)として得られ、溶液中の(A)の含有量(重量%)は、生産性および後工程の水性バインダー製造時のハンドリング性の観点から好ましくは5〜80%、さらに好ましくは10〜70%、とくに好ましくは20〜60%である。
重合時間は、製品中の残存モノマー含量の低減および生産性の観点から好ましくは1〜10時間である。
重合反応の終点は残存モノマー量で確認できる。残存モノマー量はバインダーの鉱物繊維に対する接着力の観点から好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下である。残存モノマー量はガスクロマトグラフィー法により測定できる。
本発明における(B)は、少なくとも2個(好ましくは3個以上、さらに好ましくは4個以上)のヒドロキシル基を有するポリオールである。(B)中のヒドロキシル基が2個未満では、バインダーの接着力(硬化後の強度)が悪くなる。
本発明における硬化触媒(C)は、ルイス酸(C1)およびプロトン酸(C2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の、リン原子を含有しない硬化触媒である。硬化触媒としてリン原子を含有するものを用いると、多量の硬化触媒が必要となり後述の鉱物繊維マットの耐水性、耐加水分解性が悪くなる。
(C11)元素(c1)含有ハロゲン化物
例えば、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素アミン錯体等のホウ素化合物;塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等のアルミニウム化合物;四フッ化錫、四塩化錫等の錫化合物;フッ化アンチモン、塩化アンチモン等のアンチモン化合物;塩化第二鉄等の鉄化合物;塩化亜鉛等の亜鉛化合物;四塩化チタン等のチタン化合物;塩化ジルコニウム等のジルコニウム化合物;塩化マグネシウム等のマグネシウム化合物;塩化ベリリウム等のベリリウム化合物;等。
(C12)元素(c1)含有(ハロゲン化)炭化水素
例えば、トリフェニルホウ素、トリ(t−ブチル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ビス(ペンタフルオロフェニル)−t−ブチルホウ素、ビス(ペンタフルオロフェニル)フッ化ホウ素、ジ(t−ブチル)フッ化ホウ素、(ペンタフルオロフェニル)2フッ化ホウ素等のホウ素化合物;トリエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、ジフェニル−t−ブチルアルミニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、ビス(ペンタフルオロフェニル)−t−ブチルアルミニウム、ビス(ペンタフルオロフェニル)フッ化アルミニウム、ジ(t−ブチル)フッ化アルミニウム、(ペンタフルオロフェニル)2フッ化アルミニウム、(t−ブチル)2フッ化アルミニウム等のアルミニウム化合物;ジエチル亜鉛等の亜鉛化合物;
有機スズ化合物(例えば、トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチルチンマレエート);有機鉛化合物(例えば、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛);有機ビスマス化合物(例えば、オクタン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス);有機チタン化合物(例えば、チタンラクテート、テトライソプロポキシチタネート、ビストリエタノールアミンチタネート、シュウ酸チタン酸カリウム);有機亜鉛化合物(例えば、酢酸亜鉛);有機ジルコニウム化合物(例えば、酢酸ジルコニル);その他の有機金属化合物(例えば、ナフテン酸コバルト等のナフテン酸金属塩);等。
シルベンゼンスルホン酸である。
なお、これらの硬化触媒(C)は単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
本発明の鉱物繊維用水性バインダーは、前記(共)重合体(A)、ポリオール(B)、硬化触媒(C)、および水を含有してなり、(A)中のカルボキシル基および潜在性カルボキシル基に由来するカルボキシル基の合計モル数と、(B)中のヒドロキシル基のモル数との比(COOH/OH)が0.5〜2.0(好ましくは0.6〜1.7、さらに好ましくは0.7〜1.4)であるものである。該比が0.5未満では鉱物繊維間の接着性が悪くなり、2.0を超えると、後述の鉱物繊維マットの耐水性、耐加水分解性が悪くなる。
比(COOH/OH)=[(A)の酸価]×[(A)の重量]
/〔[(B)の水酸基価]×[(B)の重量]〕
なお、水酸基価および酸価の単位はいずれもmgKOH/gで表されるが、以下においては数値のみを示す。
硬化触媒(C)の含有量は、(A)と(B)の合計重量に基づいて、バインダーの硬化速度および鉱物繊維間の接着性の観点から好ましくは0.01〜5%、さらに好ましくは0.02〜4%、とくに好ましくは0.05〜3%である。
また、(A)と(B)の合計重量に基づく各添加剤の使用量は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、抗菌剤、防かび剤および香料は、それぞれ通常10%以下、上記と同様の観点から好ましくは0.5〜5%;可塑剤、ワックス、顔料もしくは染料、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、造膜助剤および湿潤剤は、それぞれ通常10%以下、上記と同様の観点から好ましくは1〜5%である。
であるフェノール樹脂からなるものではないことから、ホルムアルデヒドは含有しない。また、該水性バインダーは、後述の方法で評価される耐水性、耐加水分解性において極めて優れている。
本発明の鉱物繊維マットは、前記水性バインダーを付着させた鉱物繊維の積層物を加熱、成形して得られる。ここにおいてマットの厚みは、用途によって異なるが、通常1〜1,000mm、マットの生産性および取り扱いのし易さの観点から好ましくは、3〜500mm、さらに好ましくは5〜300mmである。
[1]鉱物繊維に水性バインダー(X)を噴霧して加熱、成形する方法
(1)鉱物組成物を炉内で溶融し、繊維化した直後にエアスプレーまたはエアレススプレー装置等を用いて該繊維に水性バインダー(X)を噴霧する。
(2)水性バインダー(X)が付着した鉱物繊維を積層して積層物とし、加熱して成形する。
[2]鉱物繊維またはそのストランド(繊維束)を積層して積層物とし、これに水性バインダー(X)を散布して加熱、成形する方法
(1)鉱物繊維または鉱物繊維のストランド(繊維束)を積層して積層物とする。
(2)該積層物の上から水性バインダー(X)を散布する。
(3)水性バインダーが付着した鉱物繊維積層物を加熱、成形する。
加熱時間は、反応率および該マットの着色抑制の観点から好ましくは10秒〜60分、さらに好ましくは30秒〜30分である。
(A−1):ポリアクリル酸(Mw12,000、酸価740)水溶液、不揮発分50%(A−2):アクリル酸/ヒドロキシエチルメタクリレート(重量比=90/10)共重
合体(Mw11,000、酸価690)水溶液、不揮発分50%
(A−3):ポリアクリル酸(Mw27,000、酸価750)水溶液、不揮発分50%
(A−4):ポリアクリル酸(Mw8,000、酸価760)水溶液、不揮発分80%
(B−1):ソルビトール
(B−2):グリセリン
(B−3):1,4−ブタンジオール
(比B−1):1−オクタノール
(C−1):チタンラクテート水溶液[商品名「オルガチックスTC−310」、
マツモトファインケミカル(株)製、固形分44重量%]
(C−2):酢酸ジルコニル
(C−3):p−トルエンスルホン酸
(比C−1):次亜リン酸ナトリウム
表1、2に示した配合組成(部)に従って水性バインダーを調製した。該水性バインダーを用いて下記の要領でバインダー硬化物および鉱物繊維マットの試験片を作成し、それぞれ後述の方法で評価した。
<バインダー硬化物試験片の作成>
平均粒径1mmのガラスビーズに対して、バインダー固形分が2.5%となるように水性バインダーを添加し、十分に混合した。これを離型処理した80mm×15mm×6mmの型枠に押し入れて成型し、230℃の循風乾燥機で20分間熱処理を行い、試験片を得た。この試験片を10枚作成した。
前記得られた試験片について、下記の方法に従って性能評価した。結果を表1、2に示す。
(1)機械的強度
JIS K7171に準じ、50mm/minの試験速度で曲げ強さを測定した。試験片5枚の曲げ強さを測定し、平均値を算出した。
(2)耐加水分解性
試験片5枚を、75℃、95%RHの恒温恒湿機内に7日間静置した。その後取り出し、30℃、50%RHで1日間乾燥した。乾燥後の試験片について前記(1)と同様に曲げ強さを測定し、平均値を算出してバインダー硬化物の耐加水分解性を評価した。
<鉱物繊維マット試験片の作成>
タテ×ヨコ×厚みが30cm×30cm×1cm、密度が0.025g/cm3のガラ
ス繊維積層物を、離型処理したタテ×ヨコ×深さが30cm×30cm×5cmの平板金型内に載置した。次に、該積層物の重量に対して乾燥後の固形分重量が20%相当量となる水性バインダーをエアスプレーを使用して該積層物に均一噴霧した。その後、230℃の循風乾燥機で20分間熱処理を行い、厚み約1cm、密度0.030g/cm3のマッ
ト試験片を得た。
前記得られた試験片について、下記の方法に従って性能評価した。結果を表1、2に示す。
(1)鉱物繊維マットの接着性
試験片から、長さ×幅が10cm×1.5cmの試験片5枚を切り出し、これらをオートグラフを用いてJIS R3420「ガラス繊維一般試験方法」の「7.4引張強さ」に準拠して測定し、試験片5枚の平均値を下記の基準で評価した。
<評価基準>
◎:500N/m2以上
○:400N/m2以上500N/m2未満
△:300N/m2以上400N/m2未満
×:300N/m2未満
試験片から、長さ×幅が10cm×1.5cmの試験片5枚を切り出し、該試験片の厚みをノギスを用いて0.1mmの単位まで測定した。該試験片をステンレス板(10cm×2cm×0.1cm)の上に載置し、さらに試験片の上から同じ寸法のステンレス板(重量約95g)を載置して圧縮した。試験片をステンレス板の重量で圧縮した状態で30℃、50%RHの雰囲気下で5日間静置後に、試験片から上部のステンレス板を取り除き、取り除いて5秒後の試験片の厚み(圧縮後の試験片の厚み)を測定した。下記の式から復元割合(%)を求め、試験片5枚の平均値を下記の基準で評価した。
復元割合(%)=(圧縮後の試験片の厚み/圧縮前の試験片の厚み)×100
<評価基準>
◎:復元割合が90%以上
○:復元割合が85%以上90%未満
△:復元割合が75%以上85%未満
×:復元割合が75%未満
試験片から、長さ×幅が10cm×1.5cmの試験片10枚を切り出し、それらを45℃の水道水に5日間浸漬した。その後取り出し、30℃、50%RHで1日間乾燥した。乾燥後の試験片について前記(1)、(2)と同様に接着性および復元性の評価を行った。
前記試験片から、長さ×幅が10cm×1.5cmの試験片10枚を切り出し、それらを75℃、95%RHの恒温恒湿機内に7日間静置した。その後取り出し、30℃、50%RHで1日間乾燥した。乾燥後の試験片について前記(1)、(2)と同様に接着性および復元性の評価を行った。
、比較例に比べて、鉱物繊維の接着性、該マットの圧縮後の復元性に優れ、さらに耐水性、耐加水分解性試験後の接着性、圧縮後の復元性にも優れていることがわかる。
Claims (8)
- 少なくとも2個の、カルボキシル基および/もしくは潜在性カルボキシル基を有する(共)重合体(A)、3個〜6個のヒドロキシル基を有し、脂肪族ポリオールまたは糖類であるポリオール(B)、ルイス酸(C1)およびプロトン酸(C2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の、リン原子を含有しない硬化触媒(C)、並びに水を含有してなり、(A)の重量平均分子量が8,000〜27,000であって、(A)中のカルボキシル基および潜在性カルボキシル基に由来するカルボキシル基の合計モル数と、(B)中のヒドロキシル基のモル数との比(COOH/OH)が0.5〜2.0である鉱物繊維用水性バインダー(X)。
- 前記(A)がポリアクリル酸である請求項1記載の水性バインダー。
- (A)と(B)の合計含有量が、2〜80重量%である請求項1または2記載の水性バインダー。
- (C)の含有量が、(A)と(B)の合計重量に基づいて0.01〜5%である請求項1〜3のいずれか記載の水性バインダー。
- 請求項1〜4のいずれか記載の水性バインダーを付着させた鉱物繊維の積層物を成形してなる鉱物繊維マット。
- 水性バインダーの固形分付着量が、鉱物繊維積層物の重量に基づいて0.4〜40%である請求項5記載の鉱物繊維マット。
- 断熱材または吸音材用である請求項5または6記載の鉱物繊維マット。
- 鉱物繊維積層物に請求項1〜4のいずれか記載の水性バインダーを均一散布し、該水性バインダー付着積層物を加熱成形することを特徴とする鉱物繊維マットの製造方法。
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