(1)全体回路
図1は、薬剤投与情報提供装置の中の全体回路を示し、薬剤投与情報提供のデータ処理装置、薬剤投与情報提供方法を実現するための装置、薬剤投与情報提供のためのコンピュータプログラムを実行する装置、薬剤投与情報提供装置、サーバーまたはパソコンの全体回路を示す。
この全体回路は、コントローラ1(中央処理演算装置であるCPU、ROM、RAMなど)を中心に、アドレス信号及びデータ信号が双方向に伝達されるアドレス/データバスライン2を介して入力部3、出力部4、インターフェース部5、情報記憶部6、プログラム/データ記憶部7等と電気的に接続されて構成されている。
入力部3は、キーボ−ド、マウス、タッチパネル、デジタイザなどの文字入力装置または画像入力装置などからなっている。文字入力装置からは、患者の血中ヘモグロビンのデータ、血中ヘモグロビンの変化量データ、鉄剤の投与情報、エリスロポエチン製剤(赤血球産生ホルモン剤)の投与量情報などが入力され、文章数値データ、日付日時データなども入力され、さらに、その他の各種データを処理するためのコマンド、設定・指示データ、その他の情報が入力されてもよい。
出力部4は、ディスプレイ、プリンタなどから構成されており、上記薬剤の投与情報などの各種データ、種々の情報の入力画面、制御画面、出力画面などが表示画面に表示/印刷されるなどの出力処理が行われる。
インターフェース部5は、LAN、外部機器接続用のなどの送受信回路などからなり、外部入力装置と外部出力装置とからなる外部装置が接続される。このインターフェース部5を通じて、他のパソコンなどからも、上記患者の血中ヘモグロビンのデータ、血中ヘモグロビンの変化量データ、鉄剤を投与情報、エリスロポエチン製剤の投与量情報などのほか、その他のデータ、コマンド、設定・指示データ、その他の情報、プログラムが送受される。
プログラム/データ記憶部7(内部記憶媒体/手段)はフラッシュメモリ、EEPROM、EPROM、CD−ROMなどROM等の不揮発性メモリと、RAM、キャッシュメモリ、ハードディスク、磁気カード、磁気ディスク、CD−RAM、DVD(デジタルビデオディスク)等が用いられた一時記憶メモリという大別して二種類の記憶装置(記憶手段)から構成されている。
そして、プログラム/データ記憶部7のROMには、薬剤投与情報提供装置(全体回路)で実行されるプログラムや各種処理に使用される汎用データが記憶される。このプログラムは後述するフローチャートに対応している。また、プログラム/データ記憶部7の一時記憶メモリには、プログラム処理中のデータの一時的な蓄積等、つまりワーキングメモリ若しくはキャッシュメモリとして用いられ、フラグ、モードなども記憶される。
また、情報記憶部6(外部記憶補助媒体/手段、補助記憶媒体)は、磁気ディスク、光ディスク、フレキシブルディスク(プロッピィーディスク)、磁気ドラム、磁気テープ、メモリカード、CD−RAM、CD−ROM、DVDなどの大量情報記憶/保存メディアとそれらのメディアへの情報書き込み/読み出し装置等(ドライブ装置、インターフェイス回路)から構成されている。
なお、場合によって、薬剤投与情報提供装置は、情報記憶部6のROM内に予め記憶されたプログラムによって単一の処理が行われる専用装置とされ、情報記憶部6に保存されたプログラムが、適宜、プログラム/データ記憶部7のRAM内に呼び込まれて起動される汎用のコンピュータ装置とされる。この場合は、情報記憶部6には、コントローラ1によって実行される基本ソフト(オペレーティングソフト)、システムソフト、応用プログラムを含む各プログラムが保存されている。
そして、薬剤投与情報提供装置の電源立ち上げ時、または新たなプログラムの起動時等において、情報記憶部6から読み出されて取り込まれ、プログラム/データ記憶部7のRAM等に一時的に保存されると共に、コントローラ1によって実行される。つまり、薬剤投与情報提供装置によって実行されるプログラムが、情報記憶部6に保存されており、適宜読み出されて取り込まれてコントローラ1によって実行される。
この場合、新たなプログラムへの変更は、情報記憶部6内に保存されているプログラム自体が置き換えられるか、若しくはプログラムの保存されているCD−ROM、磁気ディスク、フレキシブル磁気ディスク等が交換される(インストール/転送される)ことで行われる。
また、プログラム/データ記憶部7のEPROMに保存されたプログラムを専用に実行するコンピュータ装置の場合には、同じように、CD−ROM、磁気ディスク、フレキシブル磁気ディスク等が交換される(インストール/転送される)ことに呼応してEPROM等の書き換えが行われるか、またはROM自体の交換によって達成される。
なお、このプログラムの新規置き換えは、場合によって、上記インターフェース部5を通じて、インターネット回線、電話回線、公衆回線またはLAN回線を介して接続されている他のコンピュータなどの外部装置から送られてくる。つまり、コンピュータ装置(全体回路)で実行されるプログラムが、情報記憶部6に対して直接的に交換されたり、インターネットなどの通信網を介して国内外の外部装置から送られてきたもので交換されたりする。
したがって、場合によって、薬剤投与情報提供装置(全体回路)において実行されるプログラムが、起動の度毎に、国内外の外部装置から送られてくる。つまり、薬剤投与情報提供装置の情報記憶部6に応用プログラムが保存されておらず、国内外の外部装置から送られてくるプログラムを実行する端末装置の役目のみが、本発明の薬剤投与情報提供装置(全体回路)に与えられる。さらには、国内外の外部装置からプログラムとそのプログラムによって処理されるデータが共に送られてきて、そのプログラムによってデータ処理がなされた後、その結果が国内外の外部装置に送り返される。
また、コンピュータ装置で実行されるプログラムは、場合によって、OSなどの基本プログラムを基に、応用プログラムが実行されるような、一般的なコンピュータシステムによるプログラムであり、OSを含む統一化された一つのプログラムのみが実行される専用のコンピュータシステムである。よって、それらの統一化されたプログラムが国内外の外部装置から与えられるし、応用プログラムまたは基本プログラムまたはプログラムの一部のみが国内外の外部装置から送られてきて実行される。
なお、場合によって、本コンピュータ装置に予め別のオペレーティングシステム、システムプログラム(OS)、その他のプログラムが記憶され、上記プログラムはこれらのOS、その他のプログラムとともに実行される。このプログラムは本装置(コンピュータ本体)にインストールされ実行されるときに、別のプログラムとともにまたは単独で請求項(特許請求の範囲)または末尾の他の発明の効果の各請求項に記載された処理・機能を実行させる。
また、場合によって、このプログラムの一部または全部が本装置以外の1つ以上の国内外の単数又は複数の別装置に記憶されて実行され、本装置と別装置との間には通信手段を介して、これから処理するデータ/既に処理されたデータ/プログラムが送受され、本装置及び別装置全体として、本発明が実行される。これらの通信手段はインターネット通信システムなどである。
(2)プログラム/データ記憶部7内の記憶データ
上記コントローラ1またはプログラム/データ記憶部7には、目標範囲データが記憶される。この目標範囲データは、患者の正常なまたは適正な血中ヘモグロビンデータHbの値の範囲を示し、鉄剤投与においては、図3、4に示す通り、10g/dl(グラム/デシリットル)〜12g/dlの範囲であり、エリスロポエチン製剤(赤血球産生ホルモン剤)投与においては、図5〜10に示す通り、9g/dl(グラム/デシリットル)〜12g/dlの範囲としている。したがって、目標範囲データは二種類存在する。
「鉄剤」における目標範囲データ10g/dl〜12g/dlのうち、低値は10g/dl≦Hb<11g/dlの範囲であり、中値は11g/dl≦Hb<11.5g/dlの範囲であり、高値は11.5g/dl≦Hb<12g/dlの範囲であり、これらの値も記憶される。
「エリスロポエチン製剤」における目標範囲データ9g/dl〜12g/dlのうち、低値は10g/dl≦Hb<11g/dlの範囲であり、中値は11g/dl≦Hb<11.5g/dlの範囲であり、高値は11.5g/dl≦Hb<12g/dlの範囲であり、これらの値も記憶される。
また、コントローラ1またはプログラム/データ記憶部7には、現在データ(第一データ)Hb1、1月前データ(第二データ)Hb2、半月前データ(第三データ)Hb3、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHb、半月変化量データ(第二変化量データ)δHb、鉄剤投与データ、鉄剤の投与量データ、エリスロポエチン製剤投与データ、エリスロポエチン製剤の投与量データ、エリスロポエチン製剤の投与量の増減データ、TSATデータ、フェリチンデータなども患者ごとに記憶される。
現在データ(第一データ)Hb1は、当日または近日における、患者の血中ヘモグロビンのデータ(g/dl)を示し、1月前データ(第二データ)Hb2は、1か月前に患者から採取した血中ヘモグロビンのデータ(g/dl)を示し、半月前データ(第三データ)Hb3は、半月前に患者から採取した血中ヘモグロビンのデータ(g/dl)を示す。
Hbはヘモクロビンを意味する。現在データ(第一データ)Hb1は、患者の検査ごとに入力・記憶・蓄積されていき、時間経過に応じて、薬剤投与情報提供装置(全体回路)内の計時回路(図示せず)によって、自動的に、半月前データ(第三データ)Hb3、1月前データ(第二データ)Hb2、…とされていく。
1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbは、上記現在データ(第一データ)Hb1から1月前データ(第二データ)Hb2を差し引いて求められた減算値、つまり最近の1か月間の血中ヘモグロビン量の変化量を示す。半月変化量データ(第二変化量データ)δHbは、上記現在データ(第一データ)Hb1から半月前データ(第三データ)Hb3を差し引いて求められた減算値、つまり最近の半月間の血中ヘモグロビン量の変化量を示す。
このような1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHb及び半月変化量データ(第二変化量データ)δHbを求める演算は、随時実行され、または後述するフローチャートに応じたプログラムの中で実行される。この演算結果は、プログラム/データ記憶部7に書き込まれ記憶される。
鉄剤投与データは、上記現在、1月前、半月前、…ごとに、鉄剤を投与したか否かを示す。この鉄剤投与データは、後述する図2のステップ06、07の出力処理によって、または、医師・薬剤師などの上記患者への診療・相談によって入力され、プログラム/データ記憶部7内に書き込まれ記憶される。上記鉄剤の投与量データは、上記現在、1月前、半月前、…ごとの鉄剤の投与量を示す。
上記エリスロポエチン製剤投与データは、上記現在、1月前、半月前、…ごとに、エリスロポエチン製剤を投与したか否かを示す。上記エリスロポエチン製剤の投与量データは、上記現在、1月前、半月前、…ごとのエリスロポエチン製剤の投与量を示す。
このエリスロポエチン製剤の投与量データは、後述する図12〜13のステップ57、61、64、67、77、78の出力処理によって、または、医師・薬剤師などの上記患者への診療・相談によって入力され、プログラム/データ記憶部7内に書き込まれ記憶される。この場合、前回のエリスロポエチン製剤の投与量に対して、ステップ57、61、64、67、77、78で出力される、増やす・減らす・変更しない増減無のデータに応じて決定される増減量が加算・減算される。このようなエリスロポエチン製剤の増減量は、医師・薬剤師などの診察・相談などによってあらかじめ決められている。
エリスロポエチン製剤の投与量の増減データは、上記現在、1月前、半月前、…ごとのエリスロポエチン製剤の投与量の前回に対しての増やす(増加)、減らす(減少)、増減無(そのまま、変動なし)を示す。このエリスロポエチン製剤の投与量の増減データは、後述する図12〜13のステップ57、61、64、67、77、78の出力処理によって、または、医師・薬剤師などの上記患者への診療・相談によって入力され、プログラム/データ記憶部7内に書き込まれ記憶される。
上記TSATデータは、鉄飽和率、つまり体内で鉄分がどのくらい蛋白質に結合されているか、つまり補給した鉄分が体内で結合される余地がどのくらいあるかを示し、血清鉄量をTIBCデータで割ったものであり、このTIBCデータは鉄と体内の蛋白質との結合能力を示す。
上記フェリチンデータは、肝臓内で貯蔵されている鉄分量(血液量)を示す。上記各データは、実際には、上記データが操作者によって上記薬剤投与情報提供装置に患者ごとに入力されるときに、薬剤投与情報提供装置内で計時されている年月日時データに基づき、当該年月日時データごとにかつ患者ごとにプログラム/データ記憶部7に記憶され、これら年月日時データと現在の年月日データとに基づいて、上記現在、1月前、半月前、2月前、2月半前、3月前、3月半前、4月前、4月半前、………が判別決定される。
(3)薬剤投与情報提供処理
図2は、薬剤投与情報提供処理(全体処理)のフローチャートを示す。
図2の処理は電源投入または当該プログラム実行の所定処理によって開始され、まず、イニシャライズ処理が実行され(ステップ00)、上記情報記憶部6、プログラム/データ記憶部7のエラーチェック、その他の初期化が行われる。
次いで、患者の電子カルテを開く、現在データ(第一データ)Hb1を入力する、または所定の指示動作があれば(ステップ01)、プログラム/データ記憶部7に記憶された現在データ(第一データ)Hb1から1月前データ(第二データ)Hb2が差し引かれて1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbが求められる(ステップ02)。
また、現在データ(第一データ)Hb1から半月前データ(第三データ)Hb3が差し引かれて半月変化量データ(第二変化量データ)δHbが求められる。同様にして他の1月期間、半月期間、1.5月期間、2月期間、2.5月期間、3月期間、………の変化量データが求められ、プログラム/データ記憶部7に書き込まれ記憶される(ステップ02)。
したがって、半月前データ(第三データ)Hb3は、上記現在データ(第一データ)Hb1に係る時点と、上記1月前データ(第二データ)Hb2に係る時点との間における時点で、上記患者の血中ヘモグロビンが取り込まれることになる。この両時点の間であれば、半月ではなく、一週間、三週間の時点でもよい。
このようにして求められるデータは、1月ごとの1月のデータ(定期採血)と、この1月ごとの採血の中間で行われる、半月間の半月のデータ(中間採血)とがある。この1月のデータ(定期採血)と半月のデータ(中間採血)との区別は、最初の採血の年月日時で決定されるが、途中でリセットされて、新たに決定されることもある。
上記TIBCデータが20%以下で、鉄飽和率が低く(ステップ03)、上記フェリチンデータが100ng/ml(ナノグラム/ミリリットル)以下で、肝臓内の鉄分量(血液量)が少ない時で(ステップ04)、鉄剤投与除外基準に該当しない場合(ステップ05)、鉄剤投与情報、例えば鉄剤を週1回ずつ1か月(4週間)40mgずつ投与する情報を上記出力部4に出力する(ステップ06)。
したがって、鉄剤投与除外基準に該当しなければ、TIBCデータが20%以下かつフェリチンデータが100ng/ml以下であれば、無条件に鉄剤を投与すべき情報が出力される(ステップ06)。これにより、鉄飽和率が低く、肝臓内の貯蔵鉄分量(血液量)が少なければ、鉄剤を投与すべき情報が出力される。
上記ステップ03〜05の基準・条件が満たさなければ、鉄剤の投与を見送り投与しない情報が出力部4に出力される(ステップ07)。これにより、血中ヘモグロビンが増えすぎるのが防がれる。
次いで、エリスロポエチン製剤(赤血球産生ホルモン剤)の投与情報提供処理が実行される(ステップ08)。これにより、ステップ06、07とステップ08の相関処理によって、鉄剤とエリスロポエチン製剤とにつき相関性を持ってバランスよく投与できる。
(4)鉄剤投与除外処理(ステップ05)
図3、図4は上記鉄剤投与除外処理(ステップ05)のフローチャートを示す。
この処理では、上記血中ヘモグロビンの現在データ(第一データ)Hb1をプログラム/データ記憶部7から読み出して取り込み、これが目標範囲データ内の低値10g/dl≦Hb<10.5g/dlであり(ステップ10、11)、同じく1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbをプログラム/データ記憶部7から読み出して取り込み、これが0.6g/dl(第一の所定値A)以上であり(ステップ12)、さらに1月前の鉄剤投与データを読み出して取り込み、これが投与する情報のとき(ステップ13)、鉄剤の投与を見送り投与しない情報を出力部4に出力する(ステップ07)。
これにより、現在データ(第一データ)Hb1が目標範囲内で低くても、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbがプラスで大きく、1月前の鉄剤投与データが投与であれば、鉄剤が投与されず、血中ヘモグロビンが増えすぎるのが防がれる。上記ステップ10〜13の基準・条件を満たさないときには、上記鉄剤を投与すべき情報が出力される(ステップ06)。
上記ステップ10〜13、06、07の処理によって、予め設定された上記患者における血中のヘモグロビンの目標範囲10g/dl≦Hb<12g/dlにつき、上記現在データ(第一データ)Hb1が当該目標範囲内の低い低値10g/dl≦Hb<10.5g/dlでありかつ上記1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbが第一の所定値Aプラス+0.6g/dl以上であり、さらに上記鉄剤投与データが上記患者に鉄剤を投与する情報のときには、患者の血中ヘモグロビンを増加させる鉄剤を投与しない情報が出力される。これ以外のときまたは上記現在データ(第一データ)Hb1が上記目標範囲より低いときHb<10g/dlには、当該鉄剤を当該患者に投与する情報が出力される。
また、上記血中ヘモグロビンの現在データ(第一データ)Hb1をプログラム/データ記憶部7から読み出して取り込み、これが目標範囲データ内の低値10.5g/dl≦Hb<11g/dlであり(ステップ16)、同じく1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbをプログラム/データ記憶部7から読み出して取り込み、これが0.3g/dl(第一の所定値B)以上であり(ステップ17)、さらに1月前の鉄剤投与データを読み出して取り込み、これが投与する情報のとき(ステップ13)、鉄剤の投与を見送り投与しない情報を出力部4に出力する(ステップ07)。
この0.3g/dl(第一の所定値B)は、上記0.6g/dl(第一の所定値A)より小さい。これにより、現在データ(第一データ)Hb1が目標範囲内で低くても、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbがプラスで大きく、1月前の鉄剤投与データが投与であれば、鉄剤が投与されず、血中ヘモグロビンが増えすぎるのが防がれる。
この場合、上記ステップ11〜13に比べて、現在データ(第一データ)Hb1が大きくなると、鉄剤を投与しない基準・条件を決める1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbの基準値・条件値が下げられる。上記ステップ16〜17、13の基準・条件を満たさないときには、上記鉄剤を投与すべき情報が出力される(ステップ06)。なお、ステップ11〜12の処理と、ステップ16〜17の処理とは合体させて1つにまとめてもよい。
上記ステップ16〜17、13、06、07の処理によって、予め設定された上記患者における血中のヘモグロビンの目標範囲10g/dl≦Hb<12g/dlにつき、上記現在データ(第一データ)Hb1が当該目標範囲内の低い低値10.5g/dl≦Hb<11g/dlであり、かつ上記1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbが第一の所定値Bプラス+0.3g/dl以上であり、上記鉄剤投与データが上記患者に鉄剤を投与する情報のときには、患者の血中ヘモグロビンを増加させる鉄剤を投与しない情報が出力される。これ以外のときには、当該鉄剤を当該患者に投与する情報が出力される。
さらに、上記血中ヘモグロビンの現在データ(第一データ)Hb1をプログラム/データ記憶部7から読み出して取り込み、これが目標範囲データ内の中値11g/dl≦Hb<11.5g/dlであり(ステップ20)、同じく1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbをプログラム/データ記憶部7から読み出して取り込み、これがマイナス−0.3g/dl(第二の所定値)以上のとき(ステップ21)、鉄剤の投与を見送り投与しない情報を出力部4に出力する(ステップ07)。このマイナス−0.3g/dl(第二の所定値)は、上記0.3g/dl(第一の所定値)より小さい。
これにより、1月前鉄剤投与の有無にかかわらず、現在データ(第一データ)Hb1が目標範囲内で中ぐらいでも、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbが中ぐらいであれば、鉄剤が投与されず、血中ヘモグロビンが増えすぎるのが防がれる。上記ステップ20〜21の基準・条件を満たさないときには、上記鉄剤を投与すべき情報が出力される(ステップ06)。この場合、ステップ13と同様に、1月前の鉄剤投与データが投与する情報のとき、鉄剤の投与を見送り投与しない情報を出力してもよい(ステップ07)。
上記ステップ20〜21、06、07の処理によって、予め設定された上記患者における血中のヘモグロビンの目標範囲10g/dl≦Hb<12g/dlにつき、上記現在データ(第一データ)Hb1が当該目標範囲内の上記低値以上の中値11g/dl≦Hb<11.5g/dlでありかつ上記1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbが上記第一の所定値より小さい第二の所定値マイナス−0.3g/dl以上のときには、患者の血中ヘモグロビンを増加させる鉄剤を投与しない情報が出力され、これ以外のときには当該鉄剤を当該患者に投与する情報が出力される。
さらに、上記血中ヘモグロビンの現在データ(第一データ)Hb1をプログラム/データ記憶部7から読み出して取り込み、これが目標範囲データ内の高値11.5g/dl≦Hb<12g/dlであり(ステップ24)、同じく1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbをプログラム/データ記憶部7から読み出して取り込み、これがマイナス−0.7g/dl(第三の所定値)以上のとき(ステップ25)、鉄剤の投与を見送り投与しない情報を出力部4に出力する(ステップ07)。このマイナス−0.7g/dl(第三の所定値)は、上記−0.3g/dl(第二の所定値)より小さい。
これにより、1月前鉄剤投与の有無にかかわらず、現在データ(第一データ)Hb1が目標範囲内で高くても、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbが一定値以上で増加して大きければ、鉄剤が投与されず、血中ヘモグロビンが増えすぎるのが防がれる。上記ステップ24〜25の基準・条件を満たさないときには、上記鉄剤を投与すべき情報が出力される(ステップ06)。この場合、ステップ13と同様に、1月前の鉄剤投与データが投与する情報のとき、鉄剤の投与を見送り投与しない情報を出力してもよい(ステップ07)。
上記ステップ24〜25、06、07の処理によって、予め設定された上記患者における血中のヘモグロビンの目標範囲10g/dl≦Hb<12g/dlにつき、上記現在データ(第一データ)Hb1が当該目標範囲内の上記中値以上の高値11.5g/dl≦Hb<12g/dlでありかつ上記1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbが上記第二の所定値より小さい第三の所定値マイナス−0.7g/dl以上のときには、患者の血中ヘモグロビンを増加させる鉄剤を投与しない情報が出力され、これ以外のときには当該鉄剤を当該患者に投与する情報が出力される。
また、上記血中ヘモグロビンの現在データ(第一データ)Hb1をプログラム/データ記憶部7から読み出して取り込み、これが目標範囲データ内の中値12g/dl≦Hbであれば(ステップ28)、鉄剤の投与を見送り投与しない情報を出力部4に出力する(ステップ07)。
これにより、現在データ(第一データ)Hb1が目標範囲外の非常に高いとき、鉄剤の投与を見送り投与しない情報が出力され、血中ヘモグロビンが増えすぎるのが防がれる。上記ステップ28の基準を満たさないときには、上記鉄剤を投与すべき情報が出力される(ステップ06)。
この場合、ステップ13と同様に、1月前の鉄剤投与データが投与する情報のとき、また、ステップ12、17、21、25と同様に、1月前鉄剤投与の有無にかかわらず、また、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbが上記マイナス−0.7g/dlよりさらに小さい所定値以上のとき、鉄剤の投与を見送り投与しない情報を出力してもよい(ステップ07)。
上記ステップ28、06、07の処理によって、予め設定された上記患者における血中のヘモグロビンの目標範囲10g/dl≦Hb<12g/dlにつき、上記現在データ(第一データ)Hb1が当該目標範囲内の上記中値以上の高値12g/dl≦Hbであるときには、患者の血中ヘモグロビンを増加させる鉄剤を投与しない情報が出力され、これ以外のときには当該鉄剤を当該患者に投与する情報が出力される。
さらに、現在データ(第一データ)Hb1が10g/dl未満で目標範囲外の非常に低いとき、鉄剤が投与される情報が出力され、血中ヘモグロビンが不足するのが防がれる(ステップ10)。 この場合、ステップ13と同様に、1月前の鉄剤投与データが投与する情報のとき、また、ステップ12、17、21、25と同様に、1月前鉄剤投与の有無にかかわらず、また、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbが上記0.6g/dlよりさらに大きい所定値以上のとき、鉄剤の投与を見送り投与しない情報を出力してもよい(ステップ07)。
また、現在データ(第一データ)Hb1の値いかんにかかわらず、後述するエリスロポエチン製剤の投与条件Aに該当するときには(ステップ29)、鉄剤の投与を見送り投与しない情報を出力部4に出力する(ステップ07)。
これにより、エリスロポエチン製剤の投与量を減らすほど、血中ヘモクロビンが高かったとき、若しくは1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbまたは半月変化量データ(第二変化量データ)δHbが大きかったときには、鉄剤の投与を見送り投与しない情報が出力され(ステップ07)、血中ヘモグロビンが増えすぎるのが防がれる。
また、これにより、鉄剤とエリスロポエチン製剤とにつき相関性を持ってバランスよく投与できる。上記ステップ29の基準・条件を満たさないときには、上記鉄剤を投与すべき情報が出力される(ステップ06)。
この場合、ステップ13と同様に、1月前の鉄剤投与データが投与する情報のとき、また、ステップ12、17、21、25と同様に、1月前鉄剤投与の有無にかかわらず、また、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbが上記各所定値よりさらに小さい所定値以上のとき、鉄剤の投与を見送り投与しない情報を出力してもよい(ステップ07)。
上記ステップ29、06、07の処理によって、エリスロポエチン製剤の投与条件Aに該当するときには、患者の血中ヘモグロビンを増加させる鉄剤を投与しない情報が出力され、これ以外のときには当該鉄剤を当該患者に投与する情報が出力される。このようなステップ29のような処理は、他のステップ10、11、12、13、16、17、20、21、24、25、28の処理内においても実行されてもよいし、他の投与条件B、C、D、E、F、Gの条件が判断されてもよい。
以上のように、上記ステップ06、07の鉄剤の投与/投与量の決定にあたっては、ステップ29のエリスロポエチン製剤の投与量を参照して決定しているので、鉄剤とエリスロポエチン製剤とをバランスよく相関性を持って投与できる。
以上のように、ステップ10〜29の処理では、血中ヘモクロビンHbが少ないほど、または血中ヘモクロビンの増え方が少ないまたは減少しているほど、鉄剤の投与/投与量を増やしている。
上記ステップ28と29とは、何れか一方のみの基準・条件を満たせば、鉄剤の投与を見送り投与しない情報が出力される(ステップ07)。この両方の基準・条件を満たさなければ、鉄剤を投与すべき情報が出力される(ステップ06)。なお、ステップ28と29との何れか一方のみの基準・条件を満たせば、鉄剤を投与すべき情報が出力され(ステップ06)、この両方の基準・条件を満たせば、鉄剤の投与を見送り投与しない情報が出力される(ステップ07)ように変更してもよい。
上記ステップ06またはステップ07で出力される、鉄剤を投与すべき情報、または鉄剤の投与を見送り投与しない情報は、プログラム/データ記憶部7に書き込まれ記憶され、1月後または半月後の検査で読み出され、上記のように1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbの演算、または半月変化量データ(第二変化量データ)δHbの演算、その他の処理に使用される。
(5)エリスロポエチン製剤投与変換テーブル11、12、13、14、15、16
図5〜図10は、プログラム/データ記憶部7内のエリスロポエチン製剤投与変換テーブル11、12、13、14、15、16を示す。このエリスロポエチン製剤投与変換テーブル11、12、13、14、15、16を使って、上記現在データ(第一データ)Hb1の各値と、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbの各値または半月変化量データ(第二変化量データ)δHbの各値とによって、エリスロポエチン製剤の投与条件A、B、C、D、E、F、Gが決定される。
このエリスロポエチン製剤における目標範囲データは、上記(2)プログラム/データ記憶部7内の記憶データで説明した通り、9g/dl〜12g/dlである。
第四の所定値は、図5〜図10において、原則として投与量を減らすエリスロポエチン製剤の投与条件AまたはBが選択される、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbまたは半月変化量データ(第二変化量データ)δHbのそれぞれの値を示す。
第五の所定値は、図5〜図10において、原則として投与量を変更しない増減無のエリスロポエチン製剤の投与条件C、DまたはEが選択される、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbまたは半月変化量データ(第二変化量データ)δHbのそれぞれの値を示す。
第六の所定値は、図5〜図10において、原則として投与量を増やすエリスロポエチン製剤の投与条件FまたはGが選択される、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbまたは半月変化量データ(第二変化量データ)δHbのそれぞれの値を示す。
したがって、これら第四の所定値、第五の所定値、第六の所定値の値は、図5〜図10の左縁の現在データ(第一データ)Hb1の値によって個々変化することになるし、この変化に応じて、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbまたは半月変化量データ(第二変化量データ)δHbの値によって個々変化もするし、エリスロポエチン製剤投与変換テーブル11、12、13、14、15、16ごとにも変化する。
エリスロポエチン製剤投与変換テーブル11は最近3月間エリスロポエチン製剤の投与量が変更しない増減無の時に選択され使用される。エリスロポエチン製剤投与変換テーブル12は半月前にエリスロポエチン製剤の投与量を増やした時または減らした時に選択され使用される。エリスロポエチン製剤投与変換テーブル13は1月前にエリスロポエチン製剤の投与量を増やした時に選択され使用される。
エリスロポエチン製剤投与変換テーブル14は1.5〜3月前にエリスロポエチン製剤の投与量を増やした時に選択され使用される。エリスロポエチン製剤投与変換テーブル15は1〜3月前にエリスロポエチン製剤の投与量を減らした時に選択され使用される。エリスロポエチン製剤投与変換テーブル16は半月の中間採血のときに、エリスロポエチン製剤の増減に関係なく選択され使用される。
したがって、エリスロポエチン製剤の投与量を増やしているときには(後述図11のステップ40→41、43→44)、上記第四の所定値、第五の所定値または第六の所定値を大きくする修正がされる。例えば、図5のエリスロポエチン製剤を変更しない増減無のテーブル11に対して、図7のエリスロポエチン製剤を増やすテーブル13では、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbの各値が、例外もあるが、また同じ値のままのところもあるが、−1.9→−1.4、1.5→1.6、−1.1→−0.9、…、1.8→2.0、−0.6→−0.5、…と大きくする修正が行われる。
また、エリスロポエチン製剤の投与量を減らしているときには(後述図11のステップ49→50)、上記第四の所定値、第五の所定値または第六の所定値を小さくする修正がされる。例えば、図5のエリスロポエチン製剤を変更しない増減無のテーブル11に対して、図9のエリスロポエチン製剤を減らすテーブル15では、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbの各値が、例外もあるが、また同じ値のままのところもあるが、1.3→1.1、−1.1→−1.4、1.5→1.3、1.1→0.9、…と小さくする修正が行われる。
この場合、原則減らす投与条件AとBをひとまとめにし、原則変更しない増減無の投与条件C、D及びEをひとまとめにし、原則増やす投与条件FとGをひとまとめにする。よって、投与条件AとBの境界、CとDとEとの境界、FとGとの境界における1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHb及び半月変化量データ(第二変化量データ)δHbは除外される。場合によって含めてもよい。
なお、上記エリスロポエチン製剤の投与量を増やしているとき、記第四の所定値、第五の所定値または第六の所定値のすべてについて、この値を大きくする修正をして、エリスロポエチン製剤投与変換テーブル11、13、14、15内の1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbの値が変更されてもよい。
また、上記エリスロポエチン製剤の投与量を減らしているとき、記第四の所定値、第五の所定値または第六の所定値のすべてについて、この値を小さくする修正をして、エリスロポエチン製剤投与変換テーブル11、13、14、15内の1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbの値が変更されてもよい。
また、エリスロポエチン製剤の投与条件A、B、C、D、E、F、Gを選択する条件・基準は、現在データ(第一データ)Hb1、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHb、半月変化量データ(第二変化量データ)δHbによって変化し、エリスロポエチン製剤投与変換テーブル11、12、13、14、15、16ごとでも変化する。
すなわち、エリスロポエチン製剤の投与量は、上記1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbまたは半月変化量データ(第二変化量データ)δHbが大きいほど、増やす方向から変更しない増減無を経て減らす方向に修正される。これによりエリスロポエチン製剤の投与条件A、B、C、D、E、F、Gも修正される。
さらに、これら第四の所定値、第五の所定値、第六の所定値の値は、上記現在データ(第一データ)Hb1が大きいほど小さく修正される、つまり現在データ(第一データ)Hb1が小さいほど大きく修正される。これによりエリスロポエチン製剤の投与条件A、B、C、D、E、F、Gも修正される。
上記図6及び図10のエリスロポエチン製剤投与変換テーブル12、16は、図5のエリスロポエチン製剤投与変換テーブル11または13、14、15に対して、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbが半月変化量データ(第二変化量データ)δHbに置き換えられる。
そして、上記第四の所定値、第五の所定値または第六の所定値は、現在データ(第一データ)Hb1が大きい場合、例えば12≦Hb、11.5≦Hb、…の場合には、例外もあるが、また同じ値のままのところもあるが、0→0.6、0.6→1.1、−1.9→−1.4、−1.9→−1.4、…というように、大きく修正される。逆に、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbが小さい場合には、例えばHb<9、Hb<9.5、…の場合には、例外もあるが、また同じ値のままのところもあるが、2.5→2、1.8→1.5、0.5→0、−0.2→−0.5、0.5→0、…というように、小さく修正される。
なお、上記現在データ(第一データ)Hb1が大きい場合、上記第四の所定値、第五の所定値または第六の所定値のすべてについて、この値を大きくする修正をして、エリスロポエチン製剤投与変換テーブル12、16内の半月変化量データ(第二変化量データ)δHbの値が変更されてもよい。
また、上記現在データ(第一データ)Hb1が小さい場合、上記第四の所定値、第五の所定値または第六の所定値のすべてについて、この値を小さくする修正をして、エリスロポエチン製剤投与変換テーブル12、16内の半月変化量データ(第二変化量データ)δHbの値が変更されてもよい。
(6)エリスロポエチン製剤の投与情報提供処理(ステップ08)
図11は、上記エリスロポエチン製剤の投与情報提供処理(ステップ08)のフローチャートを示す。プログラム/データ記憶部7に記憶された、1月前または半月前の前回のエリスロポエチン製剤の投与量データと、その半月前又は1月前のエリスロポエチン製剤の投与量データを読み出して、両データの差が求められて、エリスロポエチン製剤の投与量の増減データが求められ取り込まれる(ステップ30)。
同様にして他の1月期間、半月期間、1.5月期間、2月期間、2.5月期間、3月期間、………の半月ごとまたは1月ごとの増減データが求められ、プログラム/データ記憶部7に書き込まれ記憶される(ステップ31)。エリスロポエチン製剤の投与においては、1月のデータ(定期採血)と半月のデータ(中間採血)との区別はないが、あってもよい。
今回の検査つまり採血が、半月のデータ(中間採血)であれば(ステップ31)、プログラム/データ記憶部7から現在データ(第一データ)Hb1及び半月変化量データ(第二変化量データ)δHbが読み出されて、エリスロポエチン製剤投与変換テーブル16が使用されて、エリスロポエチン製剤の投与条件A〜Gが決定される(ステップ32)。
今回の検査つまり採血が、1月のデータ(定期採血)のとき(ステップ31)、最近3か月でエリスロポエチン製剤の投与量を増やすかまたは減らしていなければ、つまり変更しない増減無であれば(ステップ34)、プログラム/データ記憶部7から現在データ(第一データ)Hb1及び1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbが読み出されて、エリスロポエチン製剤投与変換テーブル11が使用されて、エリスロポエチン製剤の投与条件A〜Gが決定される(ステップ35)。
次いで、上記読み出して取り込んだ3か月にわたるエリスロポエチン製剤の投与量の増減が複数回あれば、最後の最新のエリスロポエチン製剤の投与量を増やしているか減らしているかを判断する(ステップ36)。
また、最近3か月の最後の増減が増やしており(ステップ36)、半月前にエリスロポエチン製剤の投与量を増やしていれば(ステップ37)、プログラム/データ記憶部7から現在データ(第一データ)Hb1及び半月変化量データ(第二変化量データ)δHbが読み出されて、エリスロポエチン製剤投与変換テーブル12が使用されて、エリスロポエチン製剤の投与条件A〜Gが決定される(ステップ38)。
さらに、最近3か月の最後の増減が増やしており(ステップ36)、1月前にエリスロポエチン製剤の投与量を増やしていれば(ステップ40)、プログラム/データ記憶部7から現在データ(第一データ)Hb1及び1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbが読み出されて、エリスロポエチン製剤投与変換テーブル13が使用されて、エリスロポエチン製剤の投与条件A〜Gが決定される(ステップ41)。
また、最近3か月の最後の増減が増やしており(ステップ36)、1.5月前〜3か月前にエリスロポエチン製剤の投与量を増やしていれば(ステップ43)、プログラム/データ記憶部7から現在データ(第一データ)Hb1及び1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbが読み出されて、エリスロポエチン製剤投与変換テーブル14が使用されて、エリスロポエチン製剤の投与条件A〜Gが決定される(ステップ44)。
さらに、最近3か月の最後の増減が減らしており(ステップ36)、半月前にエリスロポエチン製剤の投与量を減らしていれば(ステップ46)、プログラム/データ記憶部7から現在データ(第一データ)Hb1及び半月変化量データ(第二変化量データ)δHbが読み出されて、エリスロポエチン製剤投与変換テーブル12が使用されて、エリスロポエチン製剤の投与条件A〜Gが決定される(ステップ47)。
また、最近3か月の最後の増減が減らしており(ステップ36)、1〜3か月前にエリスロポエチン製剤の投与量を減らしていれば(ステップ49)、プログラム/データ記憶部7から現在データ(第一データ)Hb1及び1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbが読み出されて、エリスロポエチン製剤投与変換テーブル15が使用されて、エリスロポエチン製剤の投与条件A〜Gが決定される(ステップ50)。
上記ステップ34、37、40、43、46、49で、判別する期間内に複数回、エリスロポエチン製剤の投与量を変更した場合には、最新の変更内容を参照してこれが基準とされる。
(7)エリスロポエチン製剤の投与条件A〜Gの決定処理(ステップ32、35、38、41、44、47、50)
図12〜図13は、上記エリスロポエチン製剤の投与条件A〜Gの決定処理(ステップ32、35、38、41、44、47、50)のフローチャートを示す。ステップ32、35、38、41、44、47、50では、使用されるエリスロポエチン製剤投与変換テーブル11、12、13、14、15、16がそれぞれ異なり、厳密にはフローチャート/プログラムも異なるが、以下は代表例を示して説明する。
原則として、エリスロポエチン製剤の投与条件A及びBでは、エリスロポエチン製剤の投与量を減らす情報が出力され(ステップ57〜61)、同投与条件C、D及びEでは、同投与量を変更しない増減無の情報が出力され(ステップ64〜73)、同投与条件F及びGでは、同投与量を増やす情報が出力される(ステップ75〜78)。
ただし、この投与量を減らす情報が出力されるときに、投与量を変更しない増減無の情報が出力される切り換え・修正・例外があり(ステップ61)、投与量を変更しない増減無の情報が出力されるときに、投与量を増やす情報が出力される切り換え・修正・例外があり(ステップ67)、投与量を増やす情報が出力されるときに、投与量を変更しない増減無の情報が出力される切り換え・修正・例外がある(ステップ78)。
(投与条件A) 上記ステップステップ32、35、38、41、44、47、50では、上述のようにエリスロポエチン製剤投与変換テーブル11、12、13、14、15、16のいずれかが選択されて、上記読み出した現在データ(第一データ)Hb1及び1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbまたは半月変化量データ(第二変化量データ)δHbの各値に基づいて、エリスロポエチン製剤の投与条件A、B、C、D、E、F、Gのいずれかが選択される(ステップ56)。
投与条件Aが選択されれば(ステップ56)、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を減らす情報を出力する(ステップ57)。以上のように、投与条件Aでは、原則、血中ヘモクロビンを増えすぎないようにするため、エリスロポエチン製剤の投与量を減らす情報が出力される(ステップ57)。
(投与条件B) また、投与条件Bが選択されれば(ステップ56)、プログラム/データ記憶部7から今回、1月前及び2月前の鉄剤投与データを読み出して取り込み(ステップ59)、この3つの鉄剤投与データのうち、今回は鉄剤を投与しない(投与しなかった)情報であり(ステップ60)、2月前は投与する(投与した)情報であれば(ステップ62)、または1月前は投与する(投与した)情報であれば(ステップ63)、今回のエリスロポエチン製剤の投与量の変更しない増減無のそのままの情報を出力する(ステップ61)。
上記ステップ60で、今回は鉄剤を投与する情報であれば(ステップ60)、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を減らす情報を出力する(ステップ57)。また、上記ステップ62、63で、2月前及び1月前いずれも投与しない(投与しなかった)情報であれば(ステップ62、63)、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を減らす情報を出力する(ステップ57)。
このエリスロポエチン製剤の投与量を減らす情報が出力されるときに(ステップ57〜63)、現在データ(第一データ)Hb1が鉄剤を投与しない情報で、1月前データ(第二データ)Hb2が鉄剤を投与する(投与した)情報のとき(ステップ60)、つまり鉄剤の投与が数月にわたって減っていれば、エリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無の情報が出力される切り換え・修正・例外がある(ステップ61)。
このステップ56〜63の処理によって、エリスロポエチン製剤の投与量の増減データが変更しない増減無で、上記1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbまたは半月変化量データ(第二変化量データ)δHbが第四の所定値以上であれば、患者へのエリスロポエチン製剤の投与量を減らす情報が出力されることになる。この第四の所定値は、図5〜図10において、エリスロポエチン製剤の投与条件AまたはBが選択される、それぞれの値を示す。
なお、上記ステップ60で、今回は鉄剤を投与する情報であれば、今回のエリスロポエチン製剤の投与量の変更しない増減無のそのままの情報を出力してもよいし、減らす情報を出力してもよいし、増やす情報を出力してもよい。また、上記ステップ60で、今回は鉄剤を投与しない情報であれば、今回のエリスロポエチン製剤の投与量の変更しない増減無のそのままの情報を出力してもよいし、減らす情報を出力してもよいし、増やす情報を出力してもよい。
さらに、ステップ60〜63で、1月前または2月前に鉄剤を投与する(投与した)であれば、今回のエリスロポエチン製剤の投与量の変更しない増減無のそのままの情報を出力してもよいし、増やす情報を出力してもよいし、減らす情報を出力してもよい。また、ステップ60〜63で、1月前または2月前が投与しない(投与しなかった)情報であれば、今回のエリスロポエチン製剤の投与量の変更しない増減無のそのままの情報を出力してもよいし、増やす情報を出力してもよいし、減らす情報を出力してもよい。
このような上記ステップ59〜63の処理によって、今回または1月前・2月前の鉄剤投与データが、上記鉄剤を投与する(投与した)情報のときには、エリスロポエチン製剤の投与量を減らす情報を出力し、同情報が上記鉄剤を投与しない(投与しなかった)情報のときには、エリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無の情報を出力することになるし、 今回または1月前・2月前の鉄剤投与データが、上記鉄剤を投与する(投与した)情報のときには、エリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無の情報を出力し、同情報が上記鉄剤を投与しない(投与しなかった)情報のときには、エリスロポエチン製剤の投与量を増やす情報を出力することになる。
以上のように、投与条件Bでは、原則、血中ヘモクロビンを増えすぎないようにするため、エリスロポエチン製剤の投与量を減らす情報が出力される(ステップ57)。しかし、今回鉄剤を投与するのであれば、血中ヘモクロビンがさらに上昇しすぎてしまう可能性があるので、エリスロポエチン製剤の投与量を減らす(ステップ60→57)。
また、今回鉄剤を投与せず、過去2月間のうち少なくとも1月間鉄剤を投与すれば、血中ヘモクロビンの上昇は落ち着くと考えられるので、エリスロポエチン製剤の投与量の減少を見送る(ステップ60→62→61、60→62→63→61)。3月間鉄剤を投与しなければ、血中ヘモクロビンの上昇は鉄剤投与によるものではなく、エリスロポエチン製剤の投与量が多すぎると考えられるので、エリスロポエチン製剤の投与量を減らす(ステップ60→62→63→57)。
(投与条件C) さらに、投与条件Cが選択されれば(ステップ56)、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無のそのままの情報を出力する(ステップ64)。
以上のように、投与条件Cでは、原則、血中ヘモクロビンが目標範囲内にあるため、エリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無の情報が出力される(ステップ64)。
(投与条件D) また、投与条件Dが選択されれば(ステップ56)、プログラム/データ記憶部7から今回の鉄剤投与データを読み出して取り込み(ステップ65)、この鉄剤投与データが、今回は投与をする情報であれば(ステップ66)、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無のそのままの情報を出力する(ステップ64)。
上記今回の鉄剤投与データが、今回は投与をしない情報であれば(ステップ66)、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を増やす情報を出力する(ステップ67)。
このエリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無の情報が出力されるときに(ステップ64〜67)、現在データ(第一データ)Hb1が鉄剤を投与しない情報のとき(ステップ66)、エリスロポエチン製剤の投与量を増やす情報が出力される切り換え・修正・例外がある(ステップ67)。
以上のように、投与条件Dでは、原則、血中ヘモクロビンが目標範囲内にあるため、エリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無の情報が出力される(ステップ64)。しかし、今回鉄剤を投与しないなら、エリスロポエチン製剤によって血中ヘモクロビンを上昇させたほうがよいため、エリスロポエチン製剤の投与量を増やすことになる(ステップ66→67)。今回鉄剤を投与するなら、今後血中ヘモクロビンが上昇する可能性があるため、エリスロポエチン製剤の投与量の増加は見送る(ステップ66→64)。
(投与条件E) さらに、投与条件Eが選択されれば(ステップ56)、プログラム/データ記憶部7から今回の鉄剤投与データを読み出して取り込み(ステップ69)、この鉄剤投与データが、今回は投与をしない情報であれば(ステップ70)、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を増やす情報を出力する(ステップ67)。
上記ステップ70でYES、つまり上記今回の鉄剤投与データが投与する情報であれば(ステップ70)、プログラム/データ記憶部7から今回、1月前及び2月前の鉄剤投与データを読み出して取り込み(ステップ72)、この3つの鉄剤投与データが、ともに、投与する(投与した)情報であれば、つまり3か月連続で鉄剤投与であれば(ステップ73)、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を増やす情報を出力する(ステップ67)。
上記ステップ73でNO、つまり上記3つの鉄剤投与データのいずれか1つが、投与を見送り投与しない(投与しなかった)情報であれば(ステップ73)、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無のそのままの情報を出力する(ステップ64)。
このエリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無の情報が出力されるときに(ステップ69〜73、64、67、78)、現在データ(第一データ)Hb1が鉄剤を投与する情報で、1月前データ(第二データ)Hb2も鉄剤を投与する(投与した)情報のとき(ステップ73、70)、つまり鉄剤の投与では血中ヘモクロビンが十分に上昇しないときには、エリスロポエチン製剤の投与量を増やす情報が出力される切り換え・修正・例外がある(ステップ67)。
このステップ56、64〜73の処理によって、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbまたは半月変化量データ(第二変化量データ)δHbが、上記第四の所定値より小さい第五の所定値以上でかつ当該第四の所定値未満であれば、患者へのエリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無でそのままの情報が出力される。この第五の所定値は、図5〜図10において、エリスロポエチン製剤の投与条件C、DまたはEが選択される、それぞれの値を示す。
なお、上記ステップ66、70、73で、今回が投与する情報であれば、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無のそのままの情報を出力してもよいし、減らす情報を出力してもよいし、増やす情報を出力してもよい。また、上記ステップ66、70、73で、今回が投与しない情報であれば、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無のそのままの情報を出力してもよいし、減らす情報を出力してもよいし、増やす情報を出力してもよい。
さらに、上記ステップ66、70、73で、1月前または2月前が投与する(投与した)情報であれば、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無のそのままの情報を出力してもよいし、減らす情報を出力してもよいし、増やす情報を出力してもよい。また、上記ステップ66、70、73で、1月前または2月前が投与しない(投与しなかった)情報であれば、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無のそのままの情報を出力してもよいし、減らす情報を出力してもよいし、増やす情報を出力してもよい。
このような上記ステップ65〜66、69〜70、72〜73の処理によって、今回または1月前・2月前の鉄剤投与データが、上記鉄剤を投与する(投与した)情報のときには、エリスロポエチン製剤の投与量を減らす情報を出力し、同情報が上記鉄剤を投与しない(投与しなかった)情報のときには、エリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無の情報を出力することになるし、 今回または1月前・2月前の鉄剤投与データが、上記鉄剤を投与する(投与した)情報のときには、エリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無の情報を出力し、同情報が上記鉄剤を投与しない(投与しなかった)情報のときには、エリスロポエチン製剤の投与量を増やす情報を出力することになる。
以上のように、投与条件Eでは、原則、血中ヘモクロビンが目標範囲内にあるため、エリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無の情報が出力される(ステップ64)。しかし、今回鉄剤を投与しないなら、エリスロポエチン製剤によって血中ヘモクロビンを上昇させたほうがよいため、エリスロポエチン製剤の投与量を増やすことになる(ステップ70→67)。2か月連続で鉄剤投与しても血中ヘモクロビンが上昇していなければ、鉄剤での血中ヘモクロビンの上昇を断念し、別途エリスロポエチン製剤の投与量を増やして血中ヘモクロビンの上昇を目指す(ステップ73→67)。
(投与条件F) さらに、投与条件Fが選択されれば(ステップ56)、プログラム/データ記憶部7から今回、1月前及び2月前の鉄剤投与データを読み出して取り込み(ステップ75)、このうち、2月前は鉄剤投与データが投与しない(投与しなかった)情報で、かつ1月前も鉄剤投与データを投与しない(投与しなかった)情報で、しかし今回の鉄剤投与データが投与する情報であれば(ステップ76)、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無のそのままの情報を出力する(ステップ78)。
上記ステップ76でNO、つまり上記2月前または1月前の鉄剤投与データが鉄剤を投与する(投与した)情報であり、若しくは今回の鉄剤投与データが鉄剤を投与しない情報のいずれかであれば(ステップ76)、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を増やす情報を出力する(ステップ77)。
このエリスロポエチン製剤の投与量を増やす情報が出力されるときに(ステップ75〜78)、現在データ(第一データ)Hb1が鉄剤を投与する情報で、1月前データ(第二データ)Hb2が鉄剤を投与しない(投与しなかった)情報のとき(ステップ76)、つまり鉄剤の投与が数月にわたって増えていれば、エリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無の情報が出力される切り換え・修正・例外がある(ステップ78)。
以上のように、投与条件Fでは、原則、血中ヘモクロビンが減らないようにするため、エリスロポエチン製剤の投与量を増やす情報が出力される(ステップ77)。しかし、過去2月間鉄剤を投与せず今回久しぶりに鉄剤を投与するなら、血中ヘモクロビンが上昇することが期待されるため、エリスロポエチン製剤の投与量の減少を見送る(ステップ76→78)。これ以外の場合、血中ヘモクロビンが比較的低く、これ以上血中ヘモクロビンが下がる可能性が高いためまたは不都合があるため、エリスロポエチン製剤の投与量を増やす(ステップ76→77)。
(投与条件G) また、投与条件Gが選択されれば(ステップ56)、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を増やす情報を出力する(ステップ77)。
このステップ56、75〜78の処理によって、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbまたは半月変化量データ(第二変化量データ)δHbが、上記第五の所定値より小さい第六の所定値以上でかつ当該第五の所定値未満であれば、患者へのエリスロポエチン製剤の投与量を増やす情報が出力される。この第六の所定値は、図5〜図10において、エリスロポエチン製剤の投与条件FまたはGが選択される、それぞれの値を示す。
また、上記ステップ76で、今回は投与する情報であれば、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無のそのままの情報を出力してもよいし、減らす情報を出力してもよいし、増やす情報を出力してもよい。さらに、上記ステップ76で、今回は投与しない情報であれば、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無のそのままの情報を出力してもよいし、減らす情報を出力してもよいし、増やす情報を出力してもよい。
また、ステップ76で、1月前または2月前は投与する(投与した)情報であれば、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無のそのままの情報を出力してもよいし、増やす情報を出力してもよいし、減らす情報を出力してもよい。さらに、ステップ76で、1月前または2月前は投与しない(投与しなかった)情報であれば、今回のエリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無のそのままの情報を出力してもよいし、増やす情報を出力してもよいし、減らす情報を出力してもよい。
このような上記ステップ75〜76の処理によって、今回または1月前・2月前の鉄剤投与データが、上記鉄剤を投与する(投与した)情報のときには、エリスロポエチン製剤の投与量を減らす情報を出力し、同情報が上記鉄剤を投与しない(投与しなかった)情報のときには、エリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無の情報を出力することになるし、 今回または1月前・2月前の鉄剤投与データが、上記鉄剤を投与する(投与した)情報のときには、エリスロポエチン製剤の投与量を変更しない増減無の情報を出力し、同情報が上記鉄剤を投与しない(投与しなかった)情報のときには、エリスロポエチン製剤の投与量を増やす情報を出力することになる。
以上のように、投与条件Gでは、原則、血中ヘモクロビンが減らないようにするため、エリスロポエチン製剤の投与量を増やす情報が出力される(ステップ77)。
(特別投与条件)
なお、図12〜図13のフローチャートには図示していないが、授記ステップ56の前に以下の処理が行われる。すなわち、3月前に及び/または最後にエリスロポエチン製剤の投与量を増やしている場合で、今回の血中ヘモクロビンが10g/dl未満で、かつ3月前の血中ヘモクロビンと比べた変化量が0.5g/dl以下の場合には、無条件でエリスロポエチン製剤の投与量を増やす情報が出力される。
これにより、エリスロポエチン製剤の投与量を増やしても血中ヘモクロビンがあまり増えていなければ、エリスロポエチン製剤の投与量が増やされ、血中ヘモクロビンが増えるような改善がなされる。
以上のように、上記ステップ57、61、64、67、77、78のエリスロポエチン製剤の投与量の決定にあたっては、上記ステップ60、62、63、66、70、73、76で鉄剤の投与量を参照して決定しているので、鉄剤とエリスロポエチン製剤とをバランスよく相関性を持って投与できる。
以上のように、ステップ56〜78の処理では、血中ヘモクロビンHbが少ないほど、または血中ヘモクロビンの増え方が少ないまたは減少しているほど、エリスロポエチン製剤の投与量を増やし、さらにここで今回(または数月前の間)に鉄剤を投与するほど、このエリスロポエチン製剤の投与量を増やすことを、少なくするように修正している。
上記ステップ60、62、63、66、70、73または76のいずれかの鉄剤の投与量を参照する処理は、他のステップ57、61、64、67、77または78のエリスロポエチン製剤の投与量の決定処理の前のいずれのでも実行されてもよい。
(8)他の薬剤への置き換え
なお、鉄剤は血中のヘモクロビン(鉄分)とほぼ同一の成分を有するすべての薬剤を含み、エリスロポエチン製剤は血中のヘモクロビンを増やす造血を促すすべての薬剤を含み、ダルベポエチン、エポエチンベータ等を含む。ダルベポエチンはエリスロポエチン製剤の商品名であり、エポエチンベータもエリスロポエチン製剤の商品名である。
ダルベポエチンとエポエチンベータとの間には互換性があり、ダルベポエチン10μg、15μg、20μg、40μg、………、200μg、は、それぞれ、エポエチンベータ2250IU、3375IU、4500IU、9000IU、………、45000IUに置き換えて、他の投与量もこれらから比例換算またはその他の換算をして、エリスロポエチン製剤の投与量を決定できる。
この変換対比は1:225であるが、この比率に限られず、鉄飽和率、肝臓内の鉄分量(血液量)に応じて、または病状に応じて、若しくは健常でも上記血液検査結果に応じた修正が上記比率にくわえられることもある。
(9)他の実施の形態
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々変更可能である。例えば、本薬剤投与情報提供装置、薬剤投与情報提供方法、薬剤投与情報提供のためのコンピュータプログラムは、複数の場所、複数の国、国内外に分散して設けられた装置、プログラムによって、実行されてもよい。
上記患者は、透析患者を想定しているが、鉄欠乏性貧血、他の貧血、低血圧、その他の疾病・怪我の患者でもよいし、健常者、健康者でもよい。血中ヘモクロビンの目標範囲は、鉄剤におけるものと、エリスロポエチン製剤におけるものとは同じでもよいし、鉄剤におけるものが広くてもよいし、その上限値または下限値が一方より他方が大きくても小さくてもよい。
上記目標範囲の低値、中値、高値は、上記のものに限られず、低値、中値、高値の区分けは種々変更できるし、これらの上限値または下限値も変更でき、これに応じて上記第一の所定値A、第一の所定値B、第二の所定値、第三の所定値、第四の所定値、第五の所定値、第六の所定値は変更される。
上記低値、中値、高値のそれぞれは、さらに多重に区分けされてもよくこれに応じて、記第一の所定値A、第一の所定値B、第二の所定値、第三の所定値、第四の所定値、第五の所定値、第六の所定値はさらに増やされるし、これらの所定値の間にさらに区分けのための所定値が増やされる。
上記低値、中値、高値の1つまたは複数は省略されてもよく、これに応じて上記第一の所定値A、第一の所定値B、第二の所定値、第三の所定値、第四の所定値、第五の所定値、第六の所定値の1つまたは複数は省略される。
上記検査される期間は、1月、半月ごとのほか、検査内容・投与薬剤によっては、数時間ごと、1日ごと、数日ごと、1週間ごと、数週間ごと、数月ごと、半年ごと、1年ごと、数年ごとの期間にわたって、上記各データの入力及び取り込み、本薬剤投与情報提供装置の処理が実行されてもよい。
上記ステップ03、04で判断される数値は上記以外のものでもよく、例えばステップ03の判断では、TSATデータが25〜30%の範囲内かどうか、30%以上か等でもよく、ステップ04の判断では、フェリチンデータ100〜500ng/mlの間、または10〜1000ng/mlの間などの任意の数値以下を判断してもよく、判断する数値は任意である。
上記鉄剤の投与量は1回40mgを週1回ずつ4週間投与するものであるが、これに限られず、患者の透析ごとに鉄剤を投与したり、週1回ずつ3週間以下投与してもよいし、週数回ずつ所定週間投与してもよいし、数か月、例えば3か月連続で鉄剤を投与してもよい。
上記図3、4のステップ10〜29の処理では、エリスロポエチン製剤投与変換テーブル11、12、13、14、15、16と同様のテーブルを用いてもよく、現在データ(第一データ)Hb1、1月前データ(第二データ)Hb2、半月前データ(第三データ)Hb3、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHb、半月変化量データ(第二変化量データ)δHbに応じてより細かく鉄剤の投与情報を決定して出力してもよい。
上記図3及び4の各ステップにおける現在データ(第一データ)Hb1または1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHbの各区分けの各数値、図5〜10のエリスロポエチン製剤投与変換テーブル11、12、13、14、15、16の現在データ(第一データ)Hb1、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHb、半月変化量データ(第二変化量データ)δHbの各区分けの各数値、その他の現在データ(第一データ)Hb1、1月前データ(第二データ)Hb2、半月前データ(第三データ)Hb3、1月変化量データ(第一変化量データ)ΔHb、半月変化量データ(第二変化量データ)δHbの各数値は、変更可能であり、貧血、多血、高血圧、低血圧など、または患者によって、治療対象が異なれば、これに応じて種々変更してもよい。
上記図11のステップ31、34、37、40、43、46、49で判断するエリスロポエチン製剤の投与期間は、種々変更可能であり、半月〜3月の期間に限られず、数時間、1日、数日、1週間、数週間、半月、1月、数月、半年、1年、数年の期間にわたってもよい。
上記図11のステップ31、34、37、40、43、46、49で判断する情報は、エリスロポエチン製剤の投与量の増やす・減らす・変更しないの増減変動情報だけではなく、投与する・投与しないといった有無情報でもよい。同じく図12、図13のステップ57、61、64、67、77、78で出力される情報は、エリスロポエチン製剤の投与量の増やす・減らす・変更しないの増減変動情報だけではなく、投与する・投与しないの有無情報でもよいし、具体的なエリスロポエチン製剤の投与量であってもよい。
このような投与量は、医師・薬剤師などの診察・相談に応じて決定され、プログラム/データ記憶部7に書き込まれ記憶されている。この場合、前回のエリスロポエチン製剤の投与量に対して、ステップ57、61、64、67、77、78で出力される、増やす・減らす・変更しない増減無のデータに応じて決定される増減量が加算・減算される。このようなエリスロポエチン製剤の増減量は、医師・薬剤師などの診察・相談などによってあらかじめ決められている。
図2のステップ06、07で出力される情報は、鉄剤を投与する・投与しないの有無情報ではなく、鉄剤の投与量を増やす・減らす・変更しないの増減変動情報でもよいし、具体的な鉄剤の投与量であってもよい。このような投与量は、医師・薬剤師などの診察・相談に応じて決定され、プログラム/データ記憶部7に書き込まれ記憶されている。図12、13のステップ59、60、62、63、65、66、69、70、72、73、75、76で取り込み判断される情報は、鉄剤を投与する・投与しないの有無情報ではなく、鉄剤の投与量を増やす・減らす・変更しないの増減変動情報でもよい。
図4のステップ29は、ステップ10の前、ステップ10と11との間、ステップ11と16との間、ステップ16と20との間、ステップ20と24との間、ステップ24と28との間で実行されてもよい。投与条件は、上記A、B、C、D、E、F、Gに限られず、増やしてもよいし、減らしてもよい。
上記投与条件A、B、C、D、E、F、Gを選ぶ条件は、上記ステップ31、34、36、46、37、40、43、46、49の条件によって選ばれるが、これに限られず、例えば1〜3月前にエリスロポエチン製剤の投与量を減らすまたは増やす場合、1月前にエリスロポエチン製剤の投与量を減らすまたは増やす場合、1.5〜3月前にエリスロポエチン製剤の投与量を減らすまたは増やす場合に置き換えたり、この場合を図11に増やしたりし、これに応じてエリスロポエチン製剤投与変換テーブル11、12、13、14、15、16を増やしてもよい。
エリスロポエチン製剤投与変換テーブル11、12、13、14、15、16で投与条件A、B、C、D、E、F、Gを選ぶための現在データ(第一データ)Hb1の範囲は、9g/dl〜12g/dlより高くても低くてもよい。
上記エリスロポエチン製剤投与変換テーブル11、12、13、14、15、16は、上記図3、4のステップ10〜29の処理と同様に、コンピュータプログラム・フローチャートに置き換えてよく、同様にエリスロポエチン製剤の投与条件A〜Gの決定処理を実行できる。
上記ステップ00〜08、10、11〜13、16〜17→13、20〜21→06/07、24〜25→06/07、28、29、→06、→07、30〜50、→32、→35、37〜38、40〜41、43〜44、46〜47、49〜50、56〜57、56→59〜63、56→64、56→65〜67、56→69〜73、56→75〜78、56→77のそれぞれの処理の順番は入れ変えてもよいし、一部または全部が省略されてもよいし、各ステップが均等の他の処理に置き換えられてもよいし、同等の機能を発揮する変化テーブル、ハードまたは回路で一部または全部が置き換え可能であり、分割分離されてその数が増えても減ってもよいし、それぞれの処理は単数でも複数でも3つ以上でもよいし、これらの2つまたは3つ以上が合体または一体化されて兼用されてもよい。
上記コントローラ1、アドレス/データバスライン2、入力部3、出力部4、インターフェース部5、情報記憶部6、プログラム/データ記憶部7、エリスロポエチン製剤投与変換テーブル11、12、13、14、15、16、本薬剤投与情報提供装置は、単数でも複数でも3つ以上でもよいし、これらそれぞれの一部または全体は省略されてもよいし、分割分離されてその数が増えても減ってもよいし、その形状は任意に変更可能であり、均等の他の物に置き換えられてもよいし、これらの2つまたは3つ以上が合体または一体化されて兼用されてもよい。
上記エリスロポエチン製剤の投与情報提供処理(ステップ08)の実行は、操作者(医師・薬剤師など)の操作によって選択できてもよい。また、ステップ00〜07の薬剤投与情報提供処理は、ステップ08のエリスロポエチン製剤の投与情報提供処理の後に実行されてもよいし、ステップ00〜07の薬剤投与情報提供処理と、ステップ08のエリスロポエチン製剤の投与情報提供処理とは分離されていずれかを選択して実行してもよい。
(10)他の発明の効果
[1]患者の血中ヘモグロビンの第一データを取り込む第一の取り込み処理と、 この取り込みより前の時点での、上記患者の血中ヘモグロビンの第二データを取り込む第二の取り込み処理と、 これらの取り込まれた両データの変化量を示す第一変化量データを求める第一の求め処理と、 上記第二データに係る時点で、鉄剤を上記患者に投与したか否かの情報を取り込む第三の取り込み処理と、 予め設定された上記患者における血中のヘモグロビンの目標範囲につき、上記第一データが当該目標範囲内の低い低値でありかつ上記第一変化量データが第一の所定値以上であり、さらに上記第三の取り込み処理で取り込まれた情報が上記患者に鉄剤を投与する情報のときには、患者の血中ヘモグロビンを増加させる鉄剤を投与しない情報を出力し、これ以外のときまたは上記第一のデータが上記目標範囲より低いときには、当該鉄剤を当該患者に投与する情報を出力する第一の出力処理と、 この第一の出力処理または上記第三の取り込み処理の情報が上記鉄剤を投与する情報のときには、赤血球産生ホルモン剤の投与量を減らす情報を出力し、同情報が上記鉄剤を投与しない情報のときには、赤血球産生ホルモン剤の投与量を変更しない増減無の情報を出力する、 若しくは この第一の出力処理または上記第三の取り込み処理の情報が上記鉄剤を投与する情報のときには、赤血球産生ホルモン剤の投与量を変更しない増減無の情報を出力し、同情報が上記鉄剤を投与しない情報のときには、赤血球産生ホルモン剤の投与量を増やす情報を出力する赤血球産生ホルモン剤情報出力処理とを、コンピュータに実行させる薬剤投与情報提供のためのコンピュータプログラム。
これにより、多くの患者に対する薬剤の投与情報を提供することによって、血中のヘモグロビンの目標範囲からはずれる割合が減り、血中のヘモグロビンの目標範囲に対する標準偏差・偏差値も減って統計上優れた効果が得られた。
[2]患者の血中ヘモグロビンの第一データ(現在データHb1)を取り込む第一の取り込み手段と、 この取り込みより前の時点での、上記患者の血中ヘモグロビンの第二データ(1月前データHb2)を取り込む第二の取り込み手段と、 これらの取り込まれた両データの変化量を示す第一変化量データ(1月変化量データΔHb)を求める第一の求め手段と、 上記第二データに係る時点で、鉄剤を上記患者に投与したか否かの情報(鉄剤投与データ)を取り込む第三の取り込み手段と(ステップ13)、 予め設定された上記患者における血中のヘモグロビンの目標範囲(10g/dl〜12g/dl)につき、上記第一データが当該目標範囲内の低い低値(10g/dl≦Hb<11g/dl)であり(ステップ11、16)かつ上記第一変化量データが第一の所定値(A:0.6g/dlまたはB:0.3g/dl)以上であり(ステップ12、17)、さらに上記第三の取り込み手段で取り込まれた情報が上記患者に鉄剤を投与する情報のときには(ステップ13)、患者の血中ヘモグロビンを増加させる鉄剤を投与しない情報を出力し(ステップ07)、これ以外のときまたは上記第一のデータが上記目標範囲より低いときには(Hb<10g/dl、ステップ10)、当該鉄剤を当該患者に投与する情報を出力する(ステップ06)第一の出力手段と、 この第一の出力手段または上記第三の取り込み手段の情報が上記鉄剤を投与する情報のときには(ステップ60、62、63、66、70、73、76)、赤血球産生ホルモン剤の投与量を減らす情報を出力し(ステップ57)、同情報が上記鉄剤を投与しない情報のときには(ステップ60、62、63、66、70、73、76)、赤血球産生ホルモン剤の投与量を変更しない増減無の情報を出力する(ステップ61、64、78)、 若しくは この第一の出力手段または上記第三の取り込み手段の情報が上記鉄剤を投与する情報のときには(ステップ60、62、63、66、70、73、76)、赤血球産生ホルモン剤の投与量を変更しない増減無の情報を出力し(ステップ61、64、78)、同情報が上記鉄剤を投与しない情報のときには(ステップ60、62、63、66、70、73、76)、赤血球産生ホルモン剤の投与量を増やす情報を出力する(ステップ67、77)赤血球産生ホルモン剤情報出力手段とを備えたことを特徴とする薬剤投与情報提供装置。
これにより、血中のヘモグロビンが目標範囲の低値のとき、血中のヘモグロビンの変化量が高い(増加)とき以外、鉄剤を投与し、高い時のみ、鉄剤の投与をしないようにして、血中のヘモグロビン量を減りすぎず増えすぎないように目標範囲内にできる。
[3]請求項2記載の第一の取り込み手段、第二の取り込み手段、第一の求め手段、第三の取り込み手段を備え、 予め設定された上記患者における血中のヘモグロビンの目標範囲につき、上記第一データが当該目標範囲内の上記低値以上の中値(11g/dl≦Hb<11.5g/dl、ステップ20)でありかつ上記第一変化量データが上記第一の所定値より小さい第二の所定値(−0.3g/dl)以上であるときには(ステップ21)、患者の血中ヘモグロビンを増加させる鉄剤を投与しない情報を出力し(ステップ07)、これ以外のときには当該鉄剤を当該患者に投与する情報を出力する(ステップ06)第二の出力手段と、 この第二の出力手段または上記第三の取り込み手段の情報が上記鉄剤を投与する情報のときには(ステップ60、62、63、66、70、73、76)、赤血球産生ホルモン剤の投与量を減らす情報を出力し(ステップ57)、同情報が上記鉄剤を投与しない情報のときには(ステップ60、62、63、66、70、73、76)、赤血球産生ホルモン剤の投与量を変更しない増減無の情報を出力する(ステップ61、64、78)、 若しくは この第二の出力手段または上記第三の取り込み手段の情報が上記鉄剤を投与する情報のときには(ステップ60、62、63、66、70、73、76)、赤血球産生ホルモン剤の投与量を変更しない増減無の情報を出力し(ステップ61、64、78)、同情報が上記鉄剤を投与しない情報のときには(ステップ60、62、63、66、70、73、76)、赤血球産生ホルモン剤の投与量を増やす情報を出力する(ステップ67、77)赤血球産生ホルモン剤情報出力手段とを備えたことを特徴とする請求項2記載の薬剤投与情報提供装置。
これにより、血中のヘモグロビンが目標範囲の中値のとき、血中のヘモグロビンの変化量が中ぐらい未満のとき、鉄剤を投与し、中ぐらい以上の時のみ、鉄剤の投与をしないようにして、血中のヘモグロビン量を減りすぎず増えすぎないように目標範囲内にできる。
[4]請求項2記載の第一の取り込み手段、第二の取り込み手段、第一の求め手段、第三の取り込み手段を備え、 予め設定された上記患者における血中のヘモグロビンの目標範囲(10g/dl〜12g/dl)につき、上記第一データが当該目標範囲内の上記中値以上の高値(11.5g/dl≦Hb<12g/dl、ステップ24)であり、かつ上記第一変化量データ(1月変化量データΔHb)が上記第二の所定値より小さい第三の所定値(−0.7g/dl)以上のとき(ステップ25)、または当該目標範囲より高いときには(12g/dl≦Hb、ステップ28)、患者の血中ヘモグロビンを増加する鉄剤を投与しない情報を出力し(ステップ07)、これ以外のときには当該鉄剤を当該患者に投与する情報を出力する(ステップ06)第三の出力手段と、 この第三の出力手段または上記第三の取り込み手段の情報が上記鉄剤を投与する情報のときには(ステップ60、62、63、66、70、73、76)、赤血球産生ホルモン剤の投与量を減らす情報を出力し(ステップ57)、同情報が上記鉄剤を投与しない情報のときには(ステップ60、62、63、66、70、73、76)、赤血球産生ホルモン剤の投与量を変更しない増減無の情報を出力する(ステップ61、64、78)、 若しくは この第三の出力手段または上記第三の取り込み手段の情報が上記鉄剤を投与する情報のときには(ステップ60、62、63、66、70、73、76)、赤血球産生ホルモン剤の投与量を変更しない増減無の情報を出力し(ステップ61、64、78)、同情報が上記鉄剤を投与しない情報のときには(ステップ60、62、63、66、70、73、76)、赤血球産生ホルモン剤の投与量を増やす情報を出力する(ステップ67、77)赤血球産生ホルモン剤情報出力手段とを備えたことを特徴とする請求項3記載の薬剤投与情報提供装置。
これにより、血中のヘモグロビンが目標範囲の高値のとき、血中のヘモグロビンの変化量が低い(減少)ときのみ、鉄剤を投与し、低いとき以外、鉄剤の投与をしないようにして、血中のヘモグロビン量を減りすぎず増えすぎないように目標範囲内にできる。
[5]上記目標範囲は血中ヘモグロビンが12g/dl(デシリットル)から10g/dlの範囲であり、 上記目標範囲内の低値は10g/dl以上かつ11g/dl未満、上記目標範囲内の中値は11g/dl以上かつ11.5g/dl未満、上記目標範囲内の高値は11.5g/dl以上かつ12g/dl未満であり、 上記第一変化量データの第一の所定値はプラス+0.6g/dlまたはプラス+0.3g/dl、上記第一変化量データの第二の所定値はマイナス−0.3g/dl、上記第一変化量データの第三の所定値はマイナス−0.7g/dlであり、 上記第一データの取り込みと第二データの取り込みとの間隔時間は1か月であることを特徴とする請求項4記載の薬剤投与情報提供装置。 これにより、血中のヘモグロビンを具体的に減りすぎず増えすぎないように目標範囲内にできる。
[6]請求項2記載の第一の取り込み手段、第二の取り込み手段、第一の求め手段を備え、 上記第一データ(現在データHb1)に係る時点付近で、赤血球産生ホルモン剤の投与量を増やしたか減らしたか変更しない増減無かの情報を取り込む第四の取り込み手段と、 この第四の取り込み手段からの情報が変更しない増減無で(ステップ34、35)、上記第一の求め手段からの第一変化量データ(1月変化量データΔHb)が第四の所定値(図5〜10のテーブル11〜16の投与条件A、Bを選ぶ各下限値)以上であれば、患者への赤血球産生ホルモン剤の投与量を減らす情報を出力し(ステップ57)、 上記第一の求め手段からの第一変化量データ(1月変化量データΔHb)が上記第四の所定値より小さい第五の所定値(図5〜10のテーブル11〜16の投与条件C〜Eを選ぶ各下限値)以上でかつ当該第四の所定値未満であれば、患者への赤血球産生ホルモン剤の投与量の変更しない増減無の情報を出力し(ステップ64)、 上記第一の求め手段からの第一変化量データ(1月変化量データΔHb)が上記第五の所定値より小さい第六の所定値(図5〜10のテーブル11〜16の投与条件F、Gを選ぶ各下限値)以上でかつ当該第五の所定値未満であれば、患者への赤血球産生ホルモン剤の投与量を増やす情報を出力し(ステップ77)、 しかもこの第四の所定値、第五の所定値及び第六の所定値を、上記第一の取り込み手段から取り込まれた第一データ(現在データHb1)の値が大きいほど小さく修正して出力(図5〜10等でHb1が大きくなるにしたがって1月変化量データΔHbの値が小さくなる)、または小さいほど大きく修正して出力する(図5〜10等でHb1が小さくなるにしたがって1月変化量データΔHbの値が大きくなる)第四の出力手段と、 上記第四の取り込み手段からの情報が増やす情報であれば(ステップ40→41、43→44)、上記第四の出力手段における第四の所定値、第五の所定値または第六の所定値を大きくする修正をする(例えば、図5赤血球産生ホルモン剤変更しない増減無・テーブル11→図7同増やす・テーブル13で、ΔHb・δHbが、−1.9→−1.4、1.5→1.6、−1.1→−0.9、…、1.8→2.0、−0.6→−0.5、…と大きくする修正)第一の修正手段と、 上記第四の取り込み手段からの情報が減らす情報であれば(ステップ49→50)、上記第四の出力手段における第四の所定値、第五の所定値または第六の所定値を小さくする修正をする(例えば、図5赤血球産生ホルモン剤変更しない増減無・テーブル11→図9同減らす・テーブル15で、ΔHb・δHbが、1.3→1.1、−1.1→−1.4、1.5→1.3、1.1→0.9、…と小さくする修正)第二の修正手段とを備えたことを特徴とする薬剤投与情報提供装置。
これにより、赤血球産生ホルモン剤の投与量を、過去の赤血球産生ホルモン剤の投与量が多いほど減らし、少ないほど増やし、または血中のヘモグロビン量が少ないほど増やし、多いほど減らし、さらに血中のヘモグロビンの変化量が多いほど、減らす方向に修正し、少ないほど増やす方向に修正して、血中のヘモグロビンを具体的に減りすぎず増えすぎないように目標範囲内にできる。
[7]上記第一データ(現在データHb1)に係る時点と、上記第二データ(1月前データHb2)に係る時点との間における時点で、上記患者の血中ヘモグロビンの第三データ(半月前データHb3)を取り込む第五の取り込み手段と、 この第三データと上記第一データとの変化量を示す第二変化量データ(半月変化量データδHb)を求める第二の求め手段と、 上記第四の出力手段における第一変化量データ(1月変化量データΔHb)を上記第二の求め手段で求められた第二変化量データ(半月変化量データδHb)に置き換え、上記第四の出力手段における第四の所定値、第五の所定値または第六の所定値を、上記第一データが大きい場合には、大きく修正し(例えば、図5→図6で、10、12≦Hb1、11.5≦Hb1、…で大きい場合、ΔHb・δHbが、0→0.6、0.6→1.1、−1.9→−1.4、−1.9→−1.4、…と大きくする修正)、上記第一データが小さい場合には、小さく修正する(例えば図5→図6で、10、Hb1<9、Hb1<9.5、…で小さい場合、ΔHb/δHbが、2.5→2、1.8→1.5、0.5→0、−0.2→−0.5、0.5→0、…と小さくする修正)第三の修正手段を備えたことを特徴とする請求項6記載の薬剤投与情報提供装置。
これにより、赤血球産生ホルモン剤の投与量を、過去の赤血球産生ホルモン剤の投与量が多いほど減らし、少ないほど増やし、血中のヘモグロビン量の、例えば1月ごとより半月ごとというように、より細かい変化に応じて調整でき、血中のヘモグロビンを減りすぎず増えすぎないように目標範囲内にできる。
[8](投与条件B)請求項2の第一の出力手段、第三の取り込み手段を備え、 上記第四の出力手段で出力される情報が赤血球産生ホルモン剤の投与量を減らす情報の場合(ステップ57)、上記第一の出力手段で出力される情報が鉄剤を投与しない情報で、上記第三の取り込み手段で取り込まれた情報が患者に鉄剤を投与する情報のときには(ステップ60、62、63)、上記赤血球産生ホルモン剤の投与量を減らす情報を、変更しない増減無の情報に切り換える(ステップ61)第一の切り換え手段を備えたことを特徴とする請求項6記載の薬剤投与情報提供装置。
これにより、赤血球産生ホルモン剤の投与量を減らす場合でも、鉄剤の投与が減っていれば、赤血球産生ホルモン剤の投与量を減らさない微調整をして、血中のヘモグロビンを減りすぎず増えすぎないように目標範囲内にできる。
[9](投与条件D)請求項2の第一の出力手段、第三の取り込み手段を備え、 上記第四の出力手段で出力される情報が赤血球産生ホルモン剤の投与量を変更しない増減無の情報の場合(ステップ64)、上記第一の出力手段で出力された情報が患者に鉄剤を投与しない情報のときには(ステップ66)、上記赤血球産生ホルモン剤の投与量を変更しない増減無の情報を、増やす情報に切り換える(ステップ67)第二の切り換え手段を備えたことを特徴とする請求項6記載の薬剤投与情報提供装置。
これにより、赤血球産生ホルモン剤の投与量を変更しない増減無の場合でも、鉄剤の投与が無いまたは少なければ、赤血球産生ホルモン剤の投与量を増やす微調整をして、血中のヘモグロビンを減りすぎず増えすぎないように目標範囲内にできる。
[10](投与条件E)請求項2の第一の出力手段、第三の取り込み手段を備え、 上記第四の出力手段で出力される情報が赤血球産生ホルモン剤の投与量を変更しない増減無の情報の場合(ステップ64)、上記第一の出力手段で出力される情報が鉄剤を投与する情報で、上記第三の取り込み手段で取り込まれた情報が患者に鉄剤を投与する情報のときには(ステップ70、73)、この赤血球産生ホルモン剤の投与量を変更しない増減無の情報を、増やす情報に切り換える(ステップ67)第三の切り換え手段を備えたことを特徴とする請求項6記載の薬剤投与情報提供装置。
これにより、鉄剤投与の結果、ヘモクロビン・鉄分の増加が不十分であれば、赤血球産生ホルモン剤の投与量を増やす微調整をして、血中のヘモグロビンを減りすぎず増えすぎないように目標範囲内にできる。
[11](投与条件F)請求項2の第一の出力手段、第三の取り込み手段を備え、 上記第四の出力手段で出力される情報が赤血球産生ホルモン剤の投与量を増やす情報の場合(ステップ77)、上記第一の出力手段で出力される情報が鉄剤を投与する情報で、上記第三の取り込み手段で取り込まれた情報が患者に鉄剤を投与しない情報のときには(ステップ76)、この赤血球産生ホルモン剤の投与量を増やす情報を、変更しない増減無の情報に切り換える(ステップ78)第四の切り換え手段を備えたことを特徴とする請求項6記載の薬剤投与情報提供装置。
これにより、赤血球産生ホルモン剤の投与量を増やす場合でも、鉄剤の投与が増えていれば、赤血球産生ホルモン剤の投与量を変更しない増減無の微調整をして、血中のヘモグロビンを減りすぎず増えすぎないように目標範囲内にできる。
(11)血液透析患者のための貧血管理アルゴリズムの開発(本薬剤投与情報提供装置の学術的意味)
(諸言)
エリスロポエチン製剤(ESA)と鉄剤を使用することによって、輸血をすることなく透析患者の貧血を治療することができるようになり、透析患者のQOLが改善した。透析患者のヘモグロビン(Hb)は高すぎても低すぎても生命予後に悪影響が出るとされており、欧州版腎臓診療指針はHb10.0〜12.0 g/dLでの管理を推奨している。同様に日本透析医学会のガイドラインではHbの目標値は10.0〜11.0 g/dLを推奨し、活動性の高い比較的若年患者では11.0〜12.0 g/dLを目標として推奨している。しかしながら、狭い範囲にHbをコントロールするのは難しいという報告がされている。
これまでにも透析患者の貧血を管理するアルゴリズムを作成することによってより良いHbコントロールを行おうとする研究が行われてきたが、広く受け入れられているアルゴリズムは無い。これまでの多くのアルゴリズムは赤血球の寿命を考慮しておらず、さらにESAの投与量にばかり重点を置いてしまいESAと鉄剤を連携して管理することができていなかった。Hbを上手くコントロールするには赤血球の寿命を考慮し、ESAと鉄剤を連携して管理することによって、不必要なESAの増減を防ぐことが重要であると考えられる。また、アルゴリズムによって鉄の過剰投与も防ぐ必要があると考えられる。今回我々はこれらを実践することのできるアルゴリズムを開発し、Hbや鉄指標をどの程度上手くコントロールすることができるかを調べた。
(方法)
<対象>
四日市社会保険病院(2014年4月に四日市羽津医療センターに病院名変更。以下、四日市社会保険病院と表記する)に外来通院中の血液透析患者を対象とした。全透析患者88名のうち、慢性肝炎患者8名、主治医が自ら貧血コントロールを希望した患者8名、入院患者7名、ESAを使用していない患者4名、エポエチンベータペゴルを使用中の患者4名、同意の得られなかった患者2名、透析導入6か月以内の患者2名を除外とした。その結果計53名について2013年5月から2013年11月までの間、後述の貧血管理アルゴリズムに沿って貧血管理を行いその効果を調べた。
研究期間中の中止基準として、期間中Hb1.5g/dL以上の低下を伴う出血のエピソードを認めた例、輸血を必要とした例、転院に伴うアルゴリズムからの離脱例、死亡例を除外するものとした。本研究は四日市社会保険病院の倫理委員会の承認を受け、対象患者には書面で同意を得た。
<採血スケジュール>
毎月1回の定期採血でHb、鉄、TIBC、アルブミンを評価し、各月の定期採血の中間にHbをチェックする中間採血を設けた。鉄とTIBCからTSATを計算した(TSAT = 鉄 ÷ TIBC × 100)。2013年5月、8月、11月の定期採血時にはフェリチンの評価を行った。定期採血、中間採血ともに週初め(前回の透析から最も期間が開く日)の透析前に採血を予定した。
<貧血管理アルゴリズム>
貧血管理アルゴリズムはHbが10.0 g/dL〜12.0 g/dLの範囲に入ることを目標に作成した。貧血管理アルゴリズムによる判断は必ず医師のチェックを受けて承認されてから治療に反映されるものとした。貧血管理アルゴリズムは鉄アルゴリズムとESAアルゴリズムから構成され、以下に詳細を示す。
<鉄アルゴリズム>
TSAT、フェリチンの基準(ステップ03、ステップ04)は日本透析医学会の慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドラインを遵守した。定期採血施行時には鉄の投与を行うかどうかの判断を行い、条件を満たした場合に鉄剤40mg [フェジン静注(登録商標)40mg、日医工(株)、富山県富山市] の投与を週1回ずつ4週間行った(これを1コースとする)。なお、中間採血時には鉄投与の判断は行わないものとした。
<ESAアルゴリズム>
過去のESAの変更状況に応じてテーブル11〜16までのいずれかを使用し、HbやHbの変化量(ΔHbまたはδHb)に応じて各条件(A〜G)に分けるものとした。なお、最近3か月の間にESAの変更が複数回ある場合は、最終変更点を基準にするものとした(例:3か月前にESAを増量し2か月前にESAを減量した場合は2か月前にESA減量した場合としての判断を行う)。
また、Hbが低値で遷延するのを防ぐための特別条件として、3か月前に最後にESAを増量したが現在のHbが10g/dL未満である場合のうち、3か月前のHbと比べた現在のHbの変化量が0.5g/dL以下の場合には無条件でESAを増量するものとした。
<ESAの段階>
ESAの段階は下記の通りとした。
ダルベポエチンアルファ(μg):10、20、30、40、50、60、70、80、100、120、140、160、180
エポエチンベータ(IU):0、750、1500、2250、3000、3750、4500、6000、7500、9000
ESA量を変更する際はこれを元に1段階ずつ増減を行うものとした。エポエチンベータ [EPO; エポジン(登録商標)、中外製薬、東京] とダルベポエチン [DA; ネスプ(登録商標)、 協和発酵キリン(株)、東京] を使用し、これらの換算比は225:1とした。このためEPO 2250単位とDA 10μg、EPO 4500単位とDA 20μg、EPO 9000単位とDA 40μgはそれぞれ等しいものとして、相互に変換可能とした。
<運用>
アルゴリズムが複雑であるため、Microsoft Excel(登録商標)(Microsoft Corporation, Redmond, WA, US)上でアルゴリズム通りに素早く判断を下すことのできるプログラムを作成し、実際の運用にこのプログラムを使用した。
<統計方法>
Hbの平均値や各種患者背景データの比較には対応のあるt検定を用いた。Hbの標準偏差の比較には観測値に相関のある場合の2つの母分散についてのF検定を用いた。統計計算はMicrosoft Excel(登録商標)を使用し、p < 0.05を有意差ありとした。
(結果)
研究期間中にHb 1.5g/dL以上の低下を伴う消化管出血を認めた例が1例、輸血を必要とした例が1例、転院に伴うアルゴリズムからの離脱例が2例存在し、これらを除外した49例について解析を行った。なお、49例のうち1例は毎月の中間採血を拒否したため定期採血の結果のみで貧血コントロールを行ったが、期間中特に問題が起こることなく貧血管理を行うことができた。
このため、49例分のデータが揃う定期採血時のHbデータを解析に用いた。各採血は週初めの透析前に行うものとしていたが、例外として2013年5月に1例で1回、2013年6月に1例で1回、前回の透析から中1日の透析前に採血を行った。しかしながらいずれもその後のHbコントロールに悪影響は認められなかった。
医師のチェックの際にアルゴリズムの判断が却下されたケースは無く、期間中ESAの増量は延べ41回、ESA減量は延べ32回あり、鉄投与は延べ59セット行われた。期間内に最少0mg、最大800mgの鉄投与が行われ期間内の平均鉄投与量は193±179mgであった。
貧血管理アルゴリズムの導入前後でESAの投与量には有意な差は認められなかったが (p = 0.357)、フェリチンは有意に低下した(p = 0.011)。Hbの平均値は終始11.0 g/dL前後で推移し、アルゴリズム導入前後で有意な差は認められなかった(p = 0.682)。Hbの目標(10.0〜12.0 g/dL)達成率はアルゴリズム導入前が77.6%であったのに対しアルゴリズム導入4〜6か月後には85.7%まで上昇した。また、Hbの標準偏差は導入後低下していき、導入5,6ヶ月後には導入時と比べ有意に低下した(それぞれp = 0.013, p = 0.047)。
(考察)
貧血管理アルゴリズムの導入によってHbや鉄指標のコントロールは以下の点で改善した。第一にHbの目標達成率は上昇し、第二にHbの標準偏差は有意に低下した。Hbの平均値が11 g/dL付近にあった上に標準偏差が低下したことが目標達成率の上昇に結びついたものと考えられる。第三に我々のアルゴリズムは鉄の投与量を抑え、フェリチン値を有意に低下させた。これらのことは透析患者の生命予後を改善させる可能性があり、以下に3つの理由を述べる。
第一に、目標範囲に多くの症例を導いたことがより良い生命予後につながる可能性がある。透析患者のHbは高すぎても低すぎても生命予後に悪影響が出るとされており、日本透析医学会の報告によるとHb 10〜11 g/dLで最も5年生存率が良好で、若年者に限るとHb 10〜11 g/dLに対して有意差は無いもののHb 11〜12 g/dLで5年生存率が最も良好であった。このことから今回の目標範囲内であるHb 10〜12 g/dLは患者の予後の面で妥当な範囲と考えられ、この範囲に多くの症例を導くことができたことはより良い生命予後につながる可能性が考えられた。
第二に、Hbの標準偏差が有意に低下したことが生命予後の改善につながる可能性がある。PisoniらはDialysis Outcomes And Practice Patterns Study(DOPPS)の患者データと2002年のMedicare & Medicaid Servicesの患者データを解析し、Hbの標準偏差は透析患者の死亡率と強く正の相関をするという報告をしている。このことから今回Hbの標準偏差が有意に低下したことは生命予後を改善させる可能性が考えられた。
第三に、鉄の投与量を抑え、フェリチン値を有意に低下させたことが生命予後を改善させる可能性がある。Kuoらは6か月で800mgを超える鉄投与は心血管イベントや死亡率を増加させるとしている。我々のアルゴリズムでは理論上は6ヶ月間で960mgの鉄投与が可能となるが、今回の調査期間内では鉄投与量が800mgを超えた症例は無かった。我々の鉄アルゴリズムではHbの値や変化量に応じて鉄投与を制御し、鉄の連続投与を制限する仕組みを有することから鉄の総投与量を抑えることができたものと考えられ、このことは生命予後を改善させる可能性がある。
また、Hasuikeらは90例の透析患者を107か月追跡し、フェリチン100 ng/mL以上の高フェリチン群(中央値161.9 ng/mL)とフェリチン100 ng/mL以下の低フェリチン群(中央値37.0 ng/mL)を比較したところ、高フェリチン群で有意に死亡率が高かったと報告している。この低フェリチン群と我々の貧血管理アルゴリズム導入6ヶ月後のフェリチン値が類似しており、低いフェリチン値にコントロールしたことも生命予後を改善する可能性が考えられる。
これまでにも透析患者の貧血を管理するアルゴリズムを作成することによってより良いHbコントロールを行おうとする研究が行われてきが、これまでに広く受け入れられているアルゴリズムは無い。これまでの他のアルゴリズムの多くは赤血球寿命を無視し、鉄とESAの連携をすることなくESAの投与量のコントロールのみに重点を置いている。
Kalicki とUehlingerはアルゴリズムでは少なくとも赤血球寿命分のすべての情報が考慮されるべきだと主張している。これを基にLinesらは赤血球寿命を考慮し、ESAを変更した90日後のHb変化を予測するアルゴリズムを作成し報告しているが、このアルゴリズムは短い期間のHb変化を軽視しており、予期せぬHbの変化には対応しきれないものと考えられる。他方で、鉄指標を考慮したアルゴリズムもいくつかあるが、これらのESAと鉄の連携は弱く不十分であると考えられる。
我々のアルゴリズムはHbのコントロールに成功したが、これは赤血球の寿命を考慮し、ESAと鉄を連携させて管理することによって、適切にESAの量を管理したためと考えている。
赤血球の寿命を考慮するために我々のアルゴリズムは最近のESA変更状況に応じて1か月間のHbの変化量(ΔHb)や半月間のHb変化量(δHb)に対する感度を変えるという仕組みを取り入れた。上記の通り、Kalickiらはアルゴリズムを作る際には少なくとも赤血球の寿命分の期間の情報を考慮しないと上手くいかないと主張しており、赤血球の寿命はおよそ60〜90日とされていることから、最近3か月のESAの変更状況に応じてHbの変化量に対する感度を変える仕組みを設けた。
なお、赤血球への分化には時間がかかるため、ESAの投与量を変更してからその効果がHbに現れるまでには1週間以上を要するとされている。このためESA増量1か月後はあまり増量の効果が出ない可能性があり、ESA増量1か月後のアルゴリズムはESA増量1.5〜3ヶ月後のアルゴリズムとは区別し、比較的Hb上昇が不十分な場合にもESAを増量せずに待つ設定とした。
ESAを減量した1か月後にも同様のことが考えられるが、Hbが低下する要因はESA減量以外にも様々なものがありESA減量へのHbの反応の遅れによる影響は無視できるものと考えた。ESAを増減した0.5か月後のアルゴリズムは中間採血と同様にあくまで大きなHbの変動を是正するのみの設定とした。
さらに、ESAと鉄の連携を重視するために我々のアルゴリズムは鉄の投与状況を確認してからESAの増減を行う仕組みを取り入れた。一般に鉄投与後にはHb上昇、鉄不足時にはHb低下を来すが、このようなHbの増減をESAの過不足によるものと誤認してしまうと不必要なESA変更を招きその後の安定したHbコントロールは期待できない。そのため、我々のアルゴリズムでは鉄の投与状況を確認してからESAの増減を決定した(条件B,D,E,F)。以下に詳細を示す。
まず、条件Bでは鉄の投与状況を確認することによって不必要なESAの減量を防ぐ仕組みを備えている。具体的には最近鉄投与をしてHbが上昇している状況であれば、ESA量が過剰ではないと考えられESAの減量は行わないものとする。鉄投与後にはHbの上昇が予想され、Nakanishiらによれば、30-50mgの鉄を投与しそれが赤血球生成に利用されたとするとHb は0.2-0.3 g/dL増えるとしている。
これを基に考えると我々の鉄投与の1コース分(160mg)を投与した後はHbが0.6-1.6 g/dl程度上昇する可能性がある。条件Bはおおよそこの上昇範囲内に設定しており、鉄投与後のHbの上昇とESAの過剰によると考えられるHbの上昇を区別し、不必要なESA減量を防ぐことができる。
次に、条件D、E、Fでは鉄剤の投与状況を確認することによって不必要なESA増量を防ぐ仕組みを備えている。具体的にはHbが低下しており最近の鉄補充が不十分な場合、今後鉄補充が行えるのであればESA増量を行わない。なお、条件E、Fは条件Dと比べESAを増量する判断を行いやすく設定しており、特に条件Fでその傾向が強くなる。
条件Eでは3か月連続で鉄を入れることになる場合は鉄にはあまり反応していないと判断し、ESAを増量する設定とした。条件Fでは過去2か月鉄が入らず今後鉄を開始するという鉄への反応が期待できる状況のみESAを変更せず、それ以外ではESAを増量する設定とした。このように条件D、E、Fでは鉄不足によると考えられるHb低下とESAの不足によると考えられるHb低下を鉄投与状況によって区別し、ESAの不必要な増量を防ぐことができる。
(結論)
赤血球の寿命を考慮しESAと鉄剤を連携して管理することにより適切にESA投与量を管理し、また過剰な鉄投与を防ぐことのできる貧血管理アルゴリズムを導入した。その結果Hbの平均値は目標中央値付近で安定し、Hbの目標達成率は上昇し、Hb標準偏差は有意に低下し、フェリチンは有意に低下した。これらのことは透析患者の生命予後を改善させる可能性がある。