JP6083745B2 - 植物水分動態センサ - Google Patents

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Description

本発明は、植物水分動態センサに関する。さらに詳しくは、植物の新梢末端などの細部における水分動態測定を行うことができる植物水分動態センサに関する。
作物や果樹等の生産では、生産性の観点から植物の生育状態に合わせて適切な時期に灌水や養分補給を行う必要がある。このため、植物の生育に影響を与えず、その生育状態を的確に把握することが非常に重要となる。
一般的に、多くの農業現場では、例えば無降雨日数に基づいた経験や勘によって植物の生育状態を把握しているというのが現状である。
しかし、経験等に基づく方法によって植物の生育状況を管理するには、熟練が必要であり手間や時間がかかる。また、基準となる指標が個人的な経験等に基づくものである。したがって、このような経験等に基づいて植物の生育状態を把握する方法は、誰もが簡便に実施することは難しい。
一方、近年、植物の生体情報に基づいて作物や果樹の水分制御や施肥管理を行うための様々な技術が開発されている。その中でグラニエ法を利用した測定方法が、注目を集めている。この測定方法は、植物の樹液流量を直接測定することができるので、植物の生体情報をより正確に把握することができるという測定方法である(例えば、特許文献1)。
特許文献1には、樹木の主幹にドリル等によって形成した孔の中に配置することができる棒状の温度センサおよび棒状のヒータ付センサとを備えた装置が開示されている。そして、特許文献1には、この装置の両センサを樹木の辺材部に形成した孔の中に配置し、所定の時間経過後に両センサ間における温度差に基づいて樹木中を流れる樹液流量を測定するという技術が開示されている。
しかし、特許文献1の装置は、そもそも茎径が大きい樹木(具体的には、20cm以上)を測定するために開発されたものであり、装置に用いられる棒状のセンサもその大きさが直径2〜3mm以上、長さ2〜3cm以上となるように形成されている。このため、特許文献1の装置では、茎径が20cmよりも小さい植物には適用できない。しかも、樹液流量を測定するためには、ドリル等によって樹木に孔を形成する必要がある。このため、装置設置した後、数日後でなければ、特許文献1の装置を用いて樹液流量を測定することができないし、樹木の表皮を削り取り、ドリルで孔を開けてセンサを挿入するため、破壊試験である。
そこで、茎径の小さな植物にも適用可能な装置が開発されている(例えば、特許文献2)。
特許文献2には、平面視長方形の薄膜基材であって、縦(長手方向)の長さが約15mm〜20mm程度、横の長さが10mm程度、厚さが数百μm〜1mm程度、の茎液流測定センサが開示されている。この茎液流測定センサは、基材上に一対の薄膜金属測温抵抗体とこの一対の抵抗体の間に薄膜金属ヒータが配設されている。そして、特許文献2には、この茎液流測定センサをトマトの茎の軸方向に沿って形成した切り込みに長手方向の面から約2/3程度挿入し、抵抗体とヒータが茎の内部の導管内に位置するように配置することによって、植物への悪影響を小さくしつつ、茎液流を測定することができる旨の記載がある。
特開平6−273434号公報 特開 2008−233047号公報
上述したように、植物の生育状態を把握するには、植物の液流量を直接測定することが重要である。とくに、作物や果樹等の生産性および品質を向上させる上では、植物の新梢末端や果柄など作物や果樹等の近傍に位置する太さが数mm程度の植物細部中の水分の動き(つまり水分動態)を測定することが非常に重要である。
しかるに、特許文献2の茎液流測定センサは、特許文献1の装置に比べて小型化されているので茎径が20cmよりも小さな植物に対しても適用することが可能であり、植物へ取付ける際の測定対象部位の破壊も特許文献1の装置に比べて小さくなる。しかしながら、特許文献2の茎液流測定センサでは、茎に縦約20mm、深さ約5〜10mmの切り込みを形成する必要があるので、茎径が数mmの新梢末端などに取付けることができない。しかも、仮に取付けが可能であったとしても、特許文献2のセンサを取付ける際に新梢末端など植物の生育において重要となる部位に上記のごとき傷を形成するので、かかる傷が原因となる感染や枝枯れなどを引き起こす可能性がある。
現状では、植物の新梢末端や果柄などの細部中の水分動態を測定することができる水分動態センサは開発されておらず、新梢末端等の細部に障害を与えることなく、細部中の水分動態を精度よく測定することができるセンサの開発が望まれている。
本発明は上記事情に鑑み、新梢末端や果柄などの植物細部内を流れる水分(液体)の動態(水分動態)を、植物にダメ−ジ(損傷)を与えることなく誰でも簡単に測定することができる植物水分動態センサを提供することを目的とする。
第1発明の植物水分動態センサは、植物中の水分動態を測定するためのセンサであって、前記植物に突き刺して設置する一対のプローブと、該一対のプローブを支持する支持部と、を備えており、前記各プローブは、前記植物に突き刺して設置した状態において、先端部が該植物の導管または師管に配置し得る長さに形成されており、その軸径が、50μm〜300μmとなるように形成されており、前記一対のプローブのうちの一方には温度センサとヒータとが接続されており、他方には温度センサが接続されていることを特徴とする。
第2発明の植物水分動態センサは、植物中の水分動態を測定するためのセンサであって、前記植物に突き刺して設置する一対のプローブと、該一対のプローブを支持する支持部と、を備えており、前記各プローブは、前記植物に突き刺して設置した状態において、先端部が該植物の導管または師管に配置し得る長さに形成されており、その軸径が、50μm〜300μmとなるように形成されており、前記支持部と前記一対のプローブは、一体形成されており、該支持部は、その背面に、前記一対のプローブの基端近傍に設けられた温度センサと、前記一対のプローブのうちの一のプローブの基端近傍に設けられたヒータと、を備えていることを特徴とする。
第3発明の植物水分動態センサは、第1または第2発明において、前記一対のプローブは、両者間の距離が1mm〜20mmとなるように形成されていることを特徴とする。
第4発明の植物水分動態センサは、第1、第2または第3発明において、前記一対のプローブは、その基端から先端まで距離が50μm〜1mmとなるように形成されていることを特徴とする。
第5発明の植物水分動態センサは、第1、第2、第3または第4発明において、前記一対のプローブは、その先端部が円錐状に形成されていることを特徴とする
第1発明によれば、プローブを植物に突き刺すだけで植物に設置することができるので、取付作業が容易になる。また、プローブの軸径が所定の太さに形成されているので、プローブを植物に突き刺して設置しても、植物に与えるストレスを小さくすることができる。言い換えれば、プローブの設置前後における植物の設置部位内の水分動態の変動を小さくできる。このため、プローブを植物に設置したのち、すぐに設置部位内を流れる水分(液体)の水分動態を測定することができる。しかも、従来のセンサでは設置することが困難であった植物の新梢末端や果柄などの細部にも容易に取付けることができる。
第2発明によれば、プローブと支持部と温度センサとヒータとを一体に形成しているので、本発明の植物水分動態センサを小型化することができる。このため、かかるセンサを植物に設置しても植物に対するダメ−ジ(損傷)を小さくできるので、長期間設置させておくことができる。すると、植物の水分動態を長期間に渡ってモニタリングすることができるので、植物の生育状態に合わせて適切な水分供給や養分補給(施肥)を行うことができる。
第3発明によれば、一対のプローブ間の距離が所定の距離となるように形成されているので、植物にプローブを設置した状態において、プローブ間を流れる水分の水分動態を精度よく測定することができる。
第4発明によれば、プローブを所定の長さとなるように形成しているので、支持部の表面と植物の表面が接触またはほぼ接触させるように配置するだけで、プローブを植物に簡単に取付けることができる。しかも、プローブの長さを植物の表面から導管または師管までの距離とほぼ同じまたは若干長くなるように形成するので、マイクロメータなどの特殊機器等を用いることなく、プローブの先端部を所望の位置に配置することができる。このため、プローブを突き刺して設置するだけで、植物の水分動態をより精度よく測定することができる。
第5発明によれば、プローブの先端部が円錐状に形成されているので、プローブを植物に挿入するときの挿入抵抗を小さくすることができる。つまり、プローブを植物にスムースに突き刺して設置することができる。このため、プローブを植物に突き刺す際にプローブ先端部が破損等することを防止することができる
本実施形態の植物水分動態センサ1の概略断面説明図である。 本実施形態の植物水分動態センサ1の使用状況の概略説明図である。 本実施形態の植物水分動態センサ1の使用状況の概略拡大説明図である。 実験で使用した植物水分動態センサの支持部の製作フローチャートである。 実験で使用した植物水分動態センサのプローブの製作フローチャートである。 実験で使用した植物水分動態センサプローブと温度センサおよびヒータの外観のSEM画像である。 実験で使用した植物水分動態センサプローブの外観のSEM画像の拡大図である。 温度センサの温度特性実験の結果を示した図である。 プローブの温度上昇実験の結果を示した図である。 疑似植物実験系の実験結果(樹液流速の測定値と樹液流速の絶対値との関係)を示した図である。 師管内を流れる液体の水分動態を測定するために実験で使用した植物水分動態センサの概略図および概略使用状況を示した図である。 実験に使用した擬似植物実験系の概略図である。 実験結果(流れの向きに関する実験結果)を示した図である。 実験結果(流量に関する実験結果)を示した図である。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の植物水分動態センサは、植物中の水分動態を測定するためのセンサであって、植物に突き刺して設置するだけで、すぐに設置部位内を流れる水分の水分動態を測定することができるようにしたことに特徴を有する。
とくに、本発明の植物水分動態センサは、植物の新梢末端や果柄などの植物の細部にも容易に取付けることができるようにしたことに特徴を有する。
まず、本発明の植物水分動態センサは、グラニエ法の原理を利用して植物の水分動態を測定する。そこで、本発明の植物水分動態センサを説明する前に、グラニエ法の原理について簡単に説明する。
グラニエ法は、グラニエセンサを用いて樹液流速Fを算出する方法である。このグラニエセンサは、一対の棒状のプローブを備えている。この一対のプローブには、それぞれ温度センサが設けられており、この一対のプローブのうち、一のプローブには、ヒータが設けられている(以下、単にヒータ付温度センサHSという)。なお、他のプローブは、リファレンス用として使用するプローブであり、単に温度センサRSという。
以下、グラニエセンサを樹木に設置して、樹木中の樹液流速を測定する方法について説明する。
まず、グラニエセンサのヒータ付温度センサHSとリファレンス用の温度センサRSを樹木の主幹にドリル等によって形成された孔に挿入して樹木に設置した後、1日以上静置する。なお、グラニエセンサのリファレンス用の温度センサRSとヒータ付温度センサHSは、樹液流速の流れ方向に沿って下方からこの順に配置する。つまり、地面に近い方の孔にリファレンス用の温度センサRSを配設し、その上方の孔にヒータ付温度センサHSを配設する。
ついで、グラニエセンサのヒータ付温度センサHSのヒータを作動させる。このとき、一対のプローブに設けられた温度センサ間には、温度差Δtが生じる。この温度差Δtが樹液流速Uの関数となるので、かかる関数に基づけば、樹木中に流れる樹液流速Fを算出することができる。
例えば、樹木中に流れる樹液流量が多い(つまり樹液流速Fが早い)場合、グラニエセンサの一対のプローブに設けられた温度センサ間の温度差Δtは、小さくなる。なぜなら、ヒータ付温度センサHSには、ヒータによって一定のジュール熱がかけられるが、ヒータ付温度センサHS近傍を流れる多量の樹液流量によって熱が運び去られるからである。一方、樹液流量が少ない(つまり樹液流速Fが遅い)場合、グラニエセンサの一対のプローブに設けられた温度センサ間の温度差Δtは、大きくなる。なぜなら、ヒータ付温度センサHSには、ヒータによって一定のジュール熱がかけられるが、ヒータ付温度センサHS近傍を流れる樹液流量が少ないので、ヒータ付温度センサHSに供給された熱が樹液流量によって運び去られず溜まったような状態となるからである。
なお、樹液流速Uは、1.19×10−4・K1.23(m/s)、樹液流速Fは、U×S(m/s)で表すことができる。
ここで、Kは、ヒータ付温度センサHSとリファレンス用の温度センサRSの温度差Δtから得られる係数であり、Sは、プローブが茎の円周方向に形成する断面積(m)である。
つぎに、本実施形態の植物水分動態センサ1の構造について説明する。
図1に示すように、本実施形態の植物水分動態センサ1(以下、本センサ1という)は、一対のプローブ2A、2Bと、支持部5と、を備えている。
(支持部5の説明)
まず、支持部5は、一対のプローブ2A、2Bを支持する部材であり、支持するプローブ2A、2Bの温度差を測定するための機能を有する部材である。具体的には、支持部5は、一対のプローブ2A、2Bを支持するための支持面5Sを有するベース部6と、このベース部6の支持面5Sに対向する面を含む背面5BS側に配設された温度センサ7と、ヒータ8と、を備えた構造を有している。
支持部5は、その形状が平面視長方形の略矩形状を有する部材の場合、その長手方向の長さが後述する一対のプローブ2A、2Bの軸間距離Wよりも長くなるように形成されていれば、長手方向に直交する辺の長さや厚さはとくに限定されない。
例えば、一対のプローブ2A、2Bの軸間距離Wが約2mm、プローブ2の軸径が約100μmの場合、支持部5は、平面視において、長手方向の長さが約3mm、長手方向に直交する辺の長さが約1mmとなるように形成することができる。そして、支持部5の厚さも、上記プローブ2を支持することができ、後述する温度センサ7と、ヒータ8とを配設することができる厚さとなるように形成されていれば、とくに限定されず、例えば、600μm程度となるように形成することができる。
つまり、支持部5は、平面視において、一辺が数ミリ程度の長さであって、厚さが1mm以下となるように形成されたものを使用することができる。
(ベース部6について)
図1に示すように、支持部5は、一対のベース部6を備えており、それぞれのベース部6の上面がプローブ2を立設するための面を有する構造のものを使用することができる。
なお、この一対のベース部6の上面が、支持部5の支持面5Sに相当する。また、ベース部6は、その材質は熱伝導性を有する部材であれば、とくに限定されず、例えば、シリコン(Si)製の部材を採用することができる。
この一対のベース部6は、断面長方形の部材であって、その背面5BS側に温度センサ7と、ヒータ8を備えた構造を有している。
具体的には、一対のベース部6の背面5BS側、つまり、ベース部6の支持面5Sに対向する面を有する部分には、一対のプローブ2A、2Bの中心軸CL近傍に位置する背面5BS側にそれぞれ温度センサ7A、7Bが配設されている。そして、一対のベース部6のうち一のベース部6の背面5BS側には、プローブ2Bの中心軸CL近傍に位置する部分にヒータ8が配設されている。
(絶縁部材5cについて)
図1に示すように、一対のベース部6は、両者間において、両者を熱的に絶縁する機能を有する絶縁部材5cを備えている。
具体的には、この絶縁部材5cは、一対のベース部6の支持面5Sに立設された一対のプローブ2A、2Bの中心軸CLからほぼ等距離に位置するように配置されている。例えば、一対のベース部6がそれぞれ平面視長方形の部材であって長手方向に直交する面同士を対向するように配置する場合であって、対向面から略等距離の位置にそれぞれのプローブ2A、2Bが立設されている場合、絶縁部材5cは、その対向面同士によって挟み込まれるようにして配置することができる。言い換えれば、絶縁部材5cは、ほぼ真ん中で一対のベース部6を分離するように配置されている。
なお、絶縁部材5cは、一対のベース部6を熱的に分離することができる部材であれば、とくに限定されず、例えば、略矩形状の断熱性を有する部材を上記のごとき一対のベース部6間に配置してもよいし、断熱性を有する樹脂を一対のベース部6間に流し込むようにして形成してもよい。
(温度センサ7について)
なお、温度センサ7A、7Bは、温度を感知する機能を有しており、上記のごとき支持部5の背面5BS側に配設することができる大きさのものであれば、とくに限定されない。
例えば、酸化拡散炉を用いたpn接合ダイオードによって形成したものを温度センサ7として採用することができる。
(ヒータ8について)
また、ヒータ8は、支持部5のベース部6(図1では左側のベース部6)に熱を供給することができる機能を有しており、上記のごとき支持部5の背面5BS側に配設することができる大きさのものであれば、とくに限定されない。
例えば、ヒータ8として、チタン(Ti)製の薄膜ヒータを採用すれば、プローブ2Bを約60〜70℃まで加熱することができる。しかも、かかる薄膜ヒータを使用すれば、プローブ2Bを上記温度に加熱するための消費電力を0.1〜0.2W程度にすることができる。さらに、ヒータ8として、Ti製の薄膜ヒータを採用すれば、プローブ2Bを常温から約70℃の範囲内で制御することができる。
(プローブ2A、2Bについて)
図1に示すように、プローブ2A、2Bは、支持部5のベース部6の支持面5Sに立設するように形成された棒状の部材である。プローブ2A、2Bは、その大きさが、植物の新梢の末端(以下、単に新梢末端という)や果柄など茎径または軸径が数ミリ程度の植物の細部に突き刺して配置することができる大きさに形成されている。具体的には、プローブ2A、2Bは、軸径Dと軸方向の長さLが、植物の細部に突き刺して設置した状態において、その先端部4が植物の細部の導管CTおよび/または師管STに配置し得るような太さD(例えば、50μm〜300μm)、長さL(例えば、50μm〜1mm)に形成されている。
例えば、図2または図3に示すように、プローブ2A、2Bは、茎径約3mmの植物の新梢末端に突き刺して配置する場合、その軸径Dが約100μm、軸方向の長さLが300μmとなるように形成することができる。この場合、プローブ2A、2Bを植物の細部である新梢末端に突き刺して設置した状態において、プローブ2の先端部4が、新梢末端内に形成されている導管CT内に収容させておくことができる。
以上のごとき構成であるので、支持部5に立設するように形成された一対のプローブ2A、2Bを植物に突き刺すだけで植物に設置することができる。このため、従来の植物の水分動態を測定するためのセンサのように、植物に設置するために茎にドリルで孔を開けたり、植物に切り込み等を形成したりする操作が不要となるので、本センサ1の植物への取付作業が容易になる。
しかも、プローブ2A、2Bは、その軸径Dが、植物の細部に突き刺して設置した状態において、その先端部4が植物の細部の導管CTおよび/または師管STに配置することができる太さとなるように形成されている。このため、プローブ2A、2Bを植物に突き刺して設置しても、植物に与えるストレスを小さくすることができる。
例えば、プローブ2の軸径Dが植物の細部内に形成された導管CTの内径よりも小さくなるように形成すれば、植物に突き刺して設置した状態において、プローブ2の先端部4が植物の細部内に形成された導管CT内に収容されるように配置することができる。
すると、プローブ2の先端部4によって、プローブ2の先端部4に位置する導管CT内を流れる水分等の流れを止めないので、プローブ2の設置前後における植物の設置部位(つまりプローブ2の先端部4に位置する導管CT)内の水分動態の変動を小さくできる。
さらに、プローブ2A、2Bは、その軸方向の長さLが、植物の細部に突き刺して設置した状態において、その先端部4が植物の細部の導管CTおよび/または師管STに配置することができる長さとなるように形成されている。具体的には、プローブ2A、2Bは、基端から先端までの長さL、言い換えれば、ベース部6の支持面5Sから先端までの長さLが、プローブ2を設置対象となる植物の細部の表面から内部に形成された複数の導管CTのうち一の導管CTの略中心までの距離とほぼ同じとなるように形成する。
例えば、図3に示すように、プローブ2Aの長さL1が、植物の細部の表面から導管CTの略中心までの距離L2とほぼ同じ長さとなるように形成する。そして、図3に示すように、プローブ2を基端近傍まで突き刺すように支持部5のベース部6の支持面5Sと植物の細部の表面が接触またはほぼ接触させるように配置すれば、プローブ2の先端部4を所望の位置(つまり植物の細部の導管CTおよび/または師管ST)に配置することができる。すると、プローブ2を突き刺して植物に設置するだけで、植物、より具体的には植物の細部内を流れる水分の水分動態をより精度よく測定することができる。しかも、プローブ2を植物の細部に挿入する長さをマイクロメータなどの特殊機器等を用いて計測する必要もないため、プローブ2を植物に簡単に取付けることができる。
つぎに、本センサ1によって植物の水分動態を測定する方法について以下説明する。
(本センサ1の取付方法)
まず、測定対象となる植物の新梢末端に、本センサ1を取付ける。
具体的には、本センサ1のプローブ2A、2Bを植物の細部に突き刺して配置する。このとき、上述したグラニエ法と同様に植物の細部中に流れる水分(液体Lq)の流れ方向に沿って、プローブ2A、2B配置する。このとき、上流側には、ヒータ8を配設していない支持部6(図1では右側の支持部6)に立設したプローブ2A(図1では右側のプローブ2A)を配置する。一方、下流側には、ヒータ8が配設された支持部6(図1では左側の支持部6)に立設したプローブ2B(図1では左側のプローブ2B)を配置する。つまり、図2に示すように、植物の新梢末端が地面に対して略す鉛直方向に上方に向かって伸びている場合、地面に近い方にプローブ2Aを配置し、その上方にプローブ2Bが配置されるように取付ける。
(測定方法)
ついで、ベース部6の背面5BS側に配設されたヒータ8を作動させる。ヒータ8を作動すれば、ヒータ8から供給された熱エネルギは、ベース部6を介してプローブ2Bに供給される。プローブ2Bに供給された熱エネルギは、プローブ2B表面からプローブ2B近傍に位置する新梢末端内に存在する導管CT内を流れる液体Lqに放出される。
例えば、図2および図3に示すように、プローブ2Bの先端部が新梢末端の導管CT内に位置するようにプローブ2Bを配置した場合、ヒータ8から供給された熱エネルギは、プローブ2Bを介して導管CT内を流れる液体Lq(図3では紙面に対して手前方向に向かって流れる液体Lq)に放出される。
このときの各プローブ2A、2Bの温度は、一対のベース部6の背面5BS側に配設された対応する温度センサ7A、7Bによって検出することができるようになっている。そして、各温度センサ7A、7Bが検出した温度値から両者の温度差を算出し、上述したグラニエ法に基づいて新梢末端内を流れる液体Lqの流速(または流量)を測定することができる。
例えば、導管CT内を流れる液体Lqの流速が早い(つまり液体Lqの流量が多い)場合には、プローブ2B近傍の液体Lqは、常に新しい液体Lqに置き換えられた状態となる。このため、プローブ2Bに供給する熱エネルギを一定とすれば、プローブ2Bの温度は、プローブ2B近傍の液体Lqによって運び去られる。一方、導管CT内を流れる液体Lqの流速が遅い(つまり液体Lqの流量が少ない)場合には、プローブ2B近傍の液体Lqは、滞留したような状態となるので、プローブ2Bに供給する熱エネルギを一定とすれば、プローブ2Bの温度は、蓄積されたような状態となる。
したがって、導管CT内を流れる液体Lqの流速(または流量)をプローブ2A、2B間の温度差Δtを測定することによって算出することができるのである。
なお、ヒータ8からプローブ2Bに供給された熱エネルギは、他方のプローブ2Aに供給されない。なぜなら、一対のベース部6間に設けられた絶縁部材5cによって、ヒータ8から供給された熱エネルギがプローブ2Aが立設したベース部6に供給されるのを遮断するからである。しかも、プローブ2Aとプローブ2Bを導管CT内を流れる液体Lqの流路方向に沿って順に配置(つまり、液体Lqの上流側にプローブ2Aを配置し、下流側にプローブ2Bを配置)しているので、プローブ2Bの表面から放出された熱エネルギが液体Lqの流れに乗ってプローブ2Aに供給されるのを防止できる。
以上のごとく、プローブ2が上記のごとき構造であるので、プローブ2を植物の新梢末端などの細部に設置しても、かかる細部に与えるストレスを小さくできるので、設置後すぐにかかる細部内を流れる水分(液体Lq)の水分動態を測定することができる。しかも、従来のセンサでは設置することが困難であった植物の新梢末端や果柄などの細部にも容易に取付けることができる。
なお、プローブ2A、2Bは、上述したように軸径Dおよび長さLが、それぞれ50μm〜300μm、50μm〜1mmとなるように形成されているのが好ましく、軸径Dが50μm〜100μm、長さLが250μm〜300μmとなるように形成するのがより好ましい。
プローブ2A、2Bの軸径が50μmよりも細い場合には、植物の細部にプローブ2A、2Bを取付けるとくにプローブ2A、2Bが破損する可能性が高くなる。一方、プローブ2A、2Bの軸径が300μmよりも太い場合には、植物の細部にプローブ2A、2Bを取付けた状態において、植物の細部へ与えるストレスが大きくなる。
また、プローブ2A、2Bの長さLが、50μmよりも短い場合にはプローブ2A、2Bの先端部4が植物の細部内の導管CTなどの所望の位置までとどかなくなる可能性がある。一方、プローブ2A、2Bの長さLが1mmよりも長い場合には先端部4が導管CTが存在する部位よりもさらに芯材方向に位置する部分に配置される可能性がある。つまり、プローブ2A、2Bは、その長さが上記範囲となるように形成すれば、支持部5の支持面5Sと植物の細部の表面が接触またはほぼ接触させるように配置するだけで、プローブ2A、2Bを植物の細部に簡単に取付けることができる。しかも、プローブ2A、2Bの長さを植物の表面から導管CTおよび/または師管STまでの距離とほぼ同じまたは若干長くなるように形成するので、マイクロメータなどの特殊機器等を用いることなく、プローブ2A、2Bの先端部4を所望の位置(例えば、配置対象の細部内に存在する導管CT内)に配置することができる。このため、プローブ2A、2Bを突き刺して設置するだけで、植物の細部の水分動態をより精度よく測定することができる。
したがって、植物の細部内を流れる水分(液体Lq)の水分動態を測定するには、プローブ2A、2Bは、その軸径が50μm〜300μm、より好ましくは50μm〜100μmであり、その長さLが50μm〜1mm、より好ましくは250μm〜300μmである。
また、プローブ2A、2Bは、両者間の距離Wが、プローブ2A、2Bを植物の細部に取付けた状態において、かかる細部内を流れる水分(液体Lq)の流速(流量)を測定することができる距離となるように形成する。具体的には、各プローブ2A、2Bの中心軸CLの中心間距離Wが1mm〜20mmであればよいが、1mm〜5mmが好ましく、より好ましくは1〜2mmである。
プローブ2A、2Bの中心間距離Wが1mmよりも短い場合にはヒータ8から供給された熱エネルギが植物の組織等を介してプローブ2Aに供給される可能性がある。一方、プローブ2A、2Bの中心間距離Wが20mmよりも長くなる場合には植物の細部内を流れる水分(液体Lq)の流れを精度よく検出できなかったりする可能性がある。したがって、各プローブ2A、2Bの中心軸CLの中心間距離Wは、1mm〜20mm、好ましくは1mm〜5mm、より好ましくは1〜2mmである。プローブ2A、2Bの中心間距離Wを上述した範囲とすれば、植物の新梢末端などの細部にプローブ2A、2Bを設置した状態において、プローブ2A、2B間を流れる水分(液体Lq)の水分動態を精度よく測定することができる。
なお、プローブ2A、2Bは、円柱状の軸部3と先端部4とから形成されたものを使用することができる。この先端部4は、その形状が円錐状に形成されているのが好ましい。プローブ2A、2Bの先端部4が円錐状に形成されていれば、プローブ2A、2Bを植物の細部に挿入するときの挿入抵抗を小さくすることができる。つまり、プローブ2A、2Bを植物の細部にスムースに突き刺して設置することができる。このため、プローブ2A、2Bを植物の細部に突き刺す際にプローブ2A、2Bの先端部4が破損等することを防止することができる。
また、支持部5とプローブ2A、2Bは一体形成されているのが好ましい。プローブ2A、2Bと支持部5(温度センサ7とヒータ8も含む)を一体に形成すれば、本センサ1を小型化することができる。このため、かかる本センサ1を植物の細部に設置しても植物に対する負担を小さくできるので、長期間設置させておくことができる。すると、植物の細部内を流れる水分(液体Lq)の水分動態を長期間に渡ってモニタリングすることができるので、植物の生育状態に合わせて適切な水分供給や養分補給(施肥)を行うことができる。
しかも、植物の新梢末端などの細部は水分供給等の影響を受けやすい部位である。本センサ1を使用すれば、かかる部位内を流れる水分(液体Lq)の水分動態を長期間に渡り、かつほぼリアルタイムに把握することができるので、植物の生育状態に合わせてより適切に水分供給や養分補給(施肥)を行うことができる。
なお、本センサ1は、植物の新梢末端などの細部内を流れる水分(液体Lq)の流量(流速)などの測定データを配線や無線通信装置等を介して植物に水分供給や養分補給(施肥)等を行う機能を有する補給手段に送信することができる機能を設けてもよい。この場合、本センサ1から送信された測定データに基づいて補給手段を作動させることができるので、植物栽培が自動化することが可能となる。
また、図1に示すように、支持部5は、ベース部6と外部を熱的に絶縁する機能を有する絶縁部材5aを備えた構造を採用してもよい。具体的には、絶縁部材5aは、ベース部6の背面を覆うように形成する。絶縁部材5aを備えた構造を採用すれば、プローブ2A、2Bの温度の温度をより精度よく検出できるから、プローブ2A、2Bを植物の細部に取付けた状態において、プローブ2A、2Bの温度差Δtをより精度よく測定することができる。
さらになお、図1に示すように、支持部5は、ベース部6と絶縁部材5aとの間に両者間を電気的に絶縁する機能を有する電気絶縁部材5bを備えた構造を採用してもよい。具体的には、電気絶縁部材5bは、その表面に絶縁膜(例えば、シリコン酸化膜)を有しており、その絶縁膜表面に温度センサ7を配設している。
例えば、図1に示すように、電気絶縁部材5bは、表裏を貫通する貫通孔が複数形成されており、この貫通孔内に配線が配設された部材である。この電気絶縁部材5bの表面には温度センサ7が配設されており、背面にはヒータ8が配設されている。そして、両者は電気絶縁部材5bに配設された配線によって外部と電気的に接続することができるように形成されている。なお、電気絶縁部材5bの配線は、端部を外部の温度モニタなどの検出器等と電気的に接続することができるものであればとくに限定されない。
(製造方法)
本実施形態の植物水分動態センサ1のプローブ2および支持部5を製造する方法は、上述した大きさおよび機能を有するように形成することができれば、とくに限定されない。例えば、支持部5をフォトリソグラフィや、エッチング、スパッタ法や真空蒸着法等の薄膜形成を用いたMEMS技術に基づいて形成することができる。
なお、MEMS技術に基づく製造方法は、特開2012−84737に開示された方法を採用することができる。
以下では、プローブ2および支持部5をMEMS技術に基づいて一体形成する場合について簡単に説明する。
(支持部5の製造方法について)
まず、ベース部6の背面側に酸化拡散炉を用いてpn接合を用いた温度センサ7と、ヒータ8および配線を配設する。具体的には、ベース部6の背面側において、拡散用ホールを形成した後、N拡散を形成する。その後、配線用ホールを形成した後、金およびクロムなどの金属薄膜を形成する。その後、配線層およびヒータ8を形成した後、レジストを除去すれば、ベース部6の背面側にpn接合を用いた温度センサ7と、ヒータ8および配線を配設することができる。
(プローブ2の製造方法について)
ついで、ベース部6の表面(つまり支持面5S側)にプローブ2を形成する。
まず、プローブ2の水平断面形状にレジストマスクを形成し、その後、結晶異方性エッチングにより円錐形状加工を行う(先端部4の形成)。その後、垂直方向性エッチングにより円筒状形状加工を行う(軸部3の形成)。最後に、マスク材料を除去すれば、先端部4が円錐状に形成された円筒状のプローブ2を形成することができる。
(他の実施形態)
上記例では、プローブ2A、2B間の温度差Δtを測定する場合について説明したが、プローブ2A、2B間の温度差Δtを測定することができれば、プローブ2をさらに追加した構造を採用することもできる。つまり、支持部5が複数のベース部6を有する構造としてもよい。
例えば、温度センサ7Aとプローブ2Aを備えたベース部6(センサベース部6という)を2つ設け、この2つのセンサベース部6の間に、温度センサ7Bとヒータ8とプローブ2Bとを備えたベース部6を配置する構造を採用してもよい。なお、かかる構成とした場合には、隣接するプローブ2の軸間距離が全て同じになるようにしてもよいし、それぞれ異なるようにしてもよく、とくに限定されない。
そして、上記構造を有する本実施形態の植物水分動態センサのプローブ2A、2B、2Aを植物の細部に突き刺して配置する。このとき、各プローブ2A、2B、2Aの先端部4が植物の細部内に存在する師管ST内に位置するように配置する。すると、各プローブ2を植物の細部に配置した状態において、ヒータ8を作動すれば、師管ST内を流れる水分(液体)の水分動態、例えば、上下方向の流動を測定することができる。なぜなら、師管ST内を流れる水分(液体)が新梢末端の先端方向に向かって流れている場合、プローブ2Bを一対のプローブ2Aで挟むように配置しているので、新梢末端の先端側に位置するプローブ2Aは他方のプローブ2Aに比べて温度が高く検出されるからである。
なお、各プローブ2A、2B、2Aは、その軸径Dが師管STの内径と略同じまたはやや小さくなるように形成し、長さLが植物の細部表面から師管STが存在する部位までの長さよりもやや長くなるように形成する。
本発明の植物水分動態センサの有効性を確認するために、下記(1)(2)の試験を行った。
(1)動作検証試験
(2)比較試験
実験に使用した植物水分動態センサは、以下の製造プロセスに基づいて作成した。
温度センサおよびヒータの製作フロー(図4では紙面上方から下方へ)を図4に、プローブの製作フロー(図5では紙面上方から下方へ)を図5に示す。
(温度センサおよびヒータの製作プロセス)
図4に示すように、Siチップ(支持部のベース部に相当)上に工程(1)、(2)において、酸化拡散炉を用いてpn接合を用いた温度センサを製作した。その後、工程(3)でマイクロヒータ(Ti薄膜ヒータ:消費電力が約0.1〜0.2W)や配線形成を行なった。
なお、図4において、温度センサおよびヒータは、Siチップの背面に形成されているが、一対のプロ−ブが形成されたSiチップの表面であっても良い。
(プローブの製作プロセス)
図5に示すように、工程(1)において、プローブの形状の型となるレジストマスクを形成した後、工程(2)で、結晶異方性エッチングにより円錐形状加工を行なった。その後、工程(3)および工程(4)で、垂直方向性エッチングにより円筒形状を形成した。そして、最後に工程(5)で不要となるマスク材料を除去することによって、プローブを形成した。
なお、この際、Siチップの表面(支持面に相当)上に絶縁膜を形成し、一のプローブのみにヒータの熱を伝達させたり、他のプローブのみで熱を検出したりする構成にしても良い。
上記製作フローに基づくことによって、プローブとヒータと温度センサとをSi基板上に一括形成することができた。
上記製作フローに基づいて製作したプローブの外観のSEM写真を図6(A)および図7に示す。また、温度センサおよびヒータの外観のSEM写真を図6(B)に示す。
図6および図7に示すように、プローブは、その先端部形状が円錐状に形成することができた。また、プローブは、軸径が約100μm、長さが約300μmとなるように形成することができた。
(動作検証試験)
(1)動作検証試験
つぎに、上記製作フローに基づいて製作したプローブと温度センサおよびヒータの動作検証試験を行った。
(温度センサの温度特性実験)
まず、温度センサの温度特性実験を行った。
結果を図8に示す。
図8に示すように、20℃〜85℃の範囲で測定可能であることが確認できた。また、かかる温度センサの温度特性つまり感度は、−4.4(mV/℃)であった。
(プローブの温度上昇実験)
つぎに、プローブの温度上昇実験を行った。
実験では、プローブの温度をより直接的に測定を行うために、赤外線サーモグラフィ(NEC Avio赤外線テクノロジー(株)社製、型番;InfReC Thermography R300)を用いた。
結果を図9に示す。
図9には、プローブの温度とヒータ駆動電圧の関係を示した。
図9に示すように、DC4V(ヒータ電力0.12W)をヒータに印加することによって、プローブの温度を常温〜約70℃まで制御することができることが確認できた。つまり、植物内を流れる液体の水分動態の測定に必要と考えられる常温〜50℃の範囲でプローブの温度を制御することができることが確認できた。
以上の結果から、本発明の植物水分動態センサを用いることによって、植物の細部(例えば、新梢末端や果柄)にプローブを突き刺して設置すれば、植物の細部内を流れる液体の水分動態の測定することができることが確認できた。
(比較試験)
(2)比較試験
つぎに、本発明の植物水分動態センサ(以下、単に本センサという)の有効性を評価するために、従来から樹木の樹液流量の測定方法として信頼性が高いグラニエセンサを用いて比較した。
実験では、(I)孟宗竹を用いた樹液流速の比較実験、(II)疑似植物実験系を用いた樹液流速の比較実験、を行い評価した。
(I)孟宗竹を用いた樹液流速の比較実験
まず、孟宗竹を用いた樹液流速の比較実験を行い、グラニエセンサの樹液流速Uの実験式を用いて、グラニエセンサと同等の精度で樹液流速が測定可能か否かを検証した。
実験に使用したプローブは、軸径が300μmのものを使用した。
実験に使用したグラニエセンサは、軸径が2.0mmと1.3mmのものを使用した。
実験に用いた孟宗竹は、香川県高松市西植田のドングリランド内の竹林より採取したものを使用した。孟宗竹を用いた理由は、径方向(深さ方向)に維管束が比較的均一に配列している植物であり、最近、樹液流速の測定報告例が多いためである。
なお、グラニエセンサの樹液流速Uの実験式は以下の式に示す。

U=1.19×10−4・K1.23(m/s)

ここで、Kは、グラニエセンサのヒータ付温度センサHSとリファレンス用の温度センサRSの温度差Δtから得られる係数である。
また、樹液流量Fは、以下の式で表すことができた。

F=U×S(m/s)

ここで、Sは、プローブが茎の円周方向に形成する断面積(m)である。
実験では、本センサのプローブとグラニエセンサを切り出した孟宗竹に挿し込んで樹液流速の同時測定を行った。
なお、本実験系を用いて測定した樹液流速Ubambooの導出には以下の補正式を使用した。

bamboo=1.61×10−4・K1.23(m/s)
その結果、樹液流速Ubambooは,プローブの軸径によらず一定になると予想したが、実験では,プローブの軸径を細くすると、樹液流速が僅かに増大する結果となった。しかし、本センサのプローブを用いた樹液流速の測定結果は、グラニエセンサを用いた測定結果である小野澤らによる既報の報告結果(日本森林学会誌、91(5)(2009)366−370)の偏差内に入っていることから、概ね良好に測定できていることが確認できた。
(II)疑似植物実験系を用いた樹液流速の比較実験
つぎに、疑似植物実験系を用いた樹液流速の比較実験を行った。
なお、本実験は、以下の理由から行った。
比較実験(I)では、植物ごとに個体差があり、更に季節や天候の影響を受け易い等の理由から、実験結果の再現性に問題が残る可能性があった。また、植物維管束を流れる樹液流量の絶対値の把握が必要なことは言うまでもない。このため、本センサのプローブを細くした場合の樹液流量に関する定量的な議論を行なう上では、流量を任意に変更でき、かつ安定した樹液流量を流すことが可能であり、しかもその流量の絶対値を検出可能なマイクロ電子天秤等が組み込まれた疑似植物実験系を準備する必要があったからである。
実験に使用した疑似植物実験系は、シリコンチューブ内におが屑を詰め込み、その中に水を流し込むことで疑似的な植物維管束を形成した。そして、この疑似的な植物維管束にグラニエセンサと本センサのプローブ(テストセンサという)を挿し込んで樹液流速の同時測定を行った。
なお、流量の絶対値測定には、マイクロ電子天秤(島津製作所製、型番;AUW220D、最少表示:0.01mg)を使用した。
グラニエセンサと本センサのプローブ(テストセンサ)の測定データを上述した樹液流速Uの式に代入して求められた樹液流速の測定値とマイクロ電子天秤の重量変化から算出された樹液流速の絶対値との関係を調べた。
その結果、本センサのプローブの軸径を300μmよりも細くした場合であっても、グラニエセンサ(軸径 1.3mm、Ref)とほぼ同程度の測定精度で樹液流速を測定可能なことが確認できた。
なお、樹液流速の測定値は、樹液流速の絶対値の6割程度であった。この差異が生じた理由としては、測定を行なった樹液流速が比較的微少領域であり、そのために樹液流速の測定精度が低下したことが原因と考えられる。
図10は、本センサのプローブ(テストセンサ)(軸径300μm)について上述した樹液流速Uの式に基づいて導出した樹液流速の測定値とマイクロ電子天秤の重量変化から算出した樹液流速の絶対値との関係をプロットした図である。
図10に示すように、本センサのプローブ(テストセンサ)で測定された樹液流速の測定値は、樹液流速の絶対値との比較から、過少評価されていることが確認できた。
そこで、本センサのプローブ(テストセンサ)による疑似植物実験系での樹液流速Uは、上述した比較試験(I)の補正式と同様に、上述したグラニエ法におけるグラニエセンサの樹液流速Uの実験式に基づいて、以下の式で表すことができた。

U=1.98×10−4・K1.23(m/s)
以上の実験結果から、本センサのプローブの軸径を300μmよりも小さくしても、グラニエセンサとほぼ同等の精度で樹液流速の測定が可能であることが確認できた。
以下では、プローブを3つ備えた構造の植物水分動態センサの有効性を確認した。
実験では、図11に示すように、3つのセンサを有する植物水分動態センサを使用することによって師管内を流れる液体の水分動態(流れ方向と流量)が検出できるか否かを評価した。
実験では、図12に示すような、流れの向きと流量を計測するために擬似植物実験系を使用した。
実験に使用した本センサのプローブは、その軸径が300μmであった。
なお、リファレンスとなる流量の絶対量は、マイクロ電子天秤を用いて測定した。
結果を図13および図14に示す。
図13は、流れの向きに関する実験結果である。
図14は、流量に関する実験結果である。
なお、データ取得間隔は5分間隔として、その時点の測定値をプロットした。
図13に示すように、温度センサ1と温度センサ2の温度差から流れの向きを推定できることが確認できた。
また、図14に示すように、温度センサ1、2とヒータ付温度センサの温度差から流量を算出することができた。算出した流量は、絶対量に対して約60%を示していることが確認できた。このため、上述した基本実験の場合と同様に補正式を導出することによって、師管内を流れる液体の流量を算出できることが確認できた。
したがって、本発明の植物水分動態センサを用いることによって、師管内を流れる液体の水分動態(流れ方向と流量)を検出できることが確認できた。
本発明の植物水分動態センサは、植物の水分動態を測定することに適している。
1 植物水分動態センサ
2 プローブ
3 軸部
4 先端部
5 支持部
6 ベース部
7 温度センサ
8 ヒータ
D プローブの軸径
L プローブの長さ
W プローブ間の距離

Claims (5)

  1. 植物中の水分動態を測定するためのセンサであって、
    前記植物に突き刺して設置する一対のプローブと、
    該一対のプローブを支持する支持部と、を備えており、
    前記各プローブは、
    前記植物に突き刺して設置した状態において、先端部が該植物の導管または師管に配置し得る長さに形成されており、
    その軸径が、50μm〜300μmとなるように形成されており、
    前記一対のプローブのうちの一方には温度センサとヒータとが接続されており、他方には温度センサが接続されている
    ことを特徴とする植物水分動態センサ。
  2. 植物中の水分動態を測定するためのセンサであって、
    前記植物に突き刺して設置する一対のプローブと、
    該一対のプローブを支持する支持部と、を備えており、
    前記各プローブは、
    前記植物に突き刺して設置した状態において、先端部が該植物の導管または師管に配置し得る長さに形成されており、
    その軸径が、50μm〜300μmとなるように形成されており、
    前記支持部と前記一対のプローブは、一体形成されており、
    該支持部は、
    その背面に、前記一対のプローブの基端近傍に設けられた温度センサと、前記一対のプローブのうちの一のプローブの基端近傍に設けられたヒータと、を備えている
    ことを特徴とする植物水分動態センサ。
  3. 前記一対のプローブは、
    両者間の距離が1mm〜20mmとなるように形成されている
    ことを特徴とする請求項1または2記載の植物水分動態センサ。
  4. 前記一対のプローブは、
    その基端から先端まで距離が50μm〜1mmとなるように形成されている
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の植物水分動態センサ。
  5. 前記一対のプローブは、
    その先端部が円錐状に形成されている
    ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の植物水分動態センサ。
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