以下、添付図面に基づき、本発明による実施形態について詳述する。
以下の説明は、本発明による実施形態を理解し易くするためのものに過ぎず、保護範囲を制限するためのものではない。
本発明の実施形態において、PCRは、特定の塩基配列を有する核酸を増幅する反応の一種を意味する。例えば、特定の塩基配列を有するデオキシリボ核酸(DNA:deoxyribonucleic acid)を増幅するために、PCR装置は、鋳型核酸である二本鎖のDNAを含むPCR試料及び試薬を含む溶液を特定の温度、例えば、約95℃に加熱して前記二本鎖のDNAを一本鎖のDNAに分離する変性段階(denaturing step)、増幅しようとする塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーを提供し、前記分離された一本鎖のDNAとともに特定の温度、例えば、55℃に冷却して前記一本鎖のDNAの特定の塩基配列に前記プライマーを結合して部分的なDNA−プライマー複合体を形成するアニーリング段階(annealing step)及び前記アニーリング段階後に前記溶液を適正な温度、例えば、72℃に維持してDNAポリメラーゼによって前記部分的なDNA−プライマー複合体のプライマーに基づいて二本鎖のDNAを形成する延長(又は、増幅)段階(extension step)を行い、前記3つの段階を、例えば、20回〜40回繰り返し行うことによって前記特定の塩基配列を有するDNAを幾何級数的に増幅することができる。場合によって、前記PCR装置は、前記アニーリング段階及び前記延長(又は、増幅)段階を同時に行ってもよく、この場合、PCR装置は、前記延長段階と前記アニーリング及び延長(又は、増幅)段階からなる2つの段階を行うことによって、第1の循環を完成してもよい。このため、本発明の実施形態によるPCR熱ブロック及びこれを備えるPCR装置とは、前記段階を行うためのモジュールを有する装置のことをいい、この明細書に記載されていない細部モジュールは、PCRを行うための従来の技術に開示されているか、あるいは、自明な範囲内において全て備えていることを前提とする。
図1は、2以上のヒーター111、121が繰り返し配置されたPCR熱ブロック100を示し、図2乃至図6は、本発明の実施形態によるPCR熱ブロック100を構成するヒーターの配置構造を示す。
図1を参照すると、本発明の実施形態は、PCR溶液に熱を供給するPCR熱ブロック100の上に2以上のヒーター111、121が繰り返し配置されていることを前提とする。前記PCR熱ブロック100は、PCR溶液、すなわち、PCRを行うために試料及び試薬に特定の温度で熱を供給するモジュールであり、少なくとも片面に試料及び試薬が収容されているPCR部900の接触面を設けて前記PCR部900の片面との熱接触を用いてPCR溶液に熱を供給してPCRを行う。
図2乃至図6を参照すると、前記PCR熱ブロック100は、基板99をベースとする。前記基板99は、その表面に配置されたヒーター111、121の加熱などによってその物理的又は化学的な性質が変わることなく、2以上のヒーターの間において熱交換が頻繁に行われない材質によって製作される。例えば、前記基板99は、プラスチック、ガラス、シリコンなどの材質によって製作され、必要に応じて、透明又は半透明に製作される。前記PCR熱ブロック100は、装置の小型化及び集積化を図るために全体的に薄い板状に、例えば、約50nm〜1mmの厚さ、好ましくは、約250μmを有するように製作されるが、本発明はこれに何ら制限されない。前記PCR熱ブロック100の上には2以上のヒーターが繰り返し配置されるが、例えば、前記PCR熱ブロック100は、1以上のヒーターを有するヒーター群、前記ヒーター群を2以上有するが、前記2以上のヒーター群が隔設されたヒーターユニットが2以上繰り返し配置されてもよい。また、前記PCR熱ブロック100のPCR部900の接触面は、PCR溶液が収容されているPCR部900に効率よく熱を供給するために、様々な形状、例えば、体積当たりの表面積の割合(Surface to Volume Ratio)を増やすように平面状、流路状又は柱状に形成される。
前記ヒーター111、112、121、122、131、132は、前記基板99に配置又は印刷される伝導性の発熱素子であり、ジュール熱を用いるヒーター、ペルティエ効果を奏するサーモ素子によって製作される。前記ヒーター111、112、121、122、131、132は、所定の温度を維持するために様々な電源モジュール及び制御モジュールと駆動自在に連結されてもよく、前記ヒーター111、112、121、122、131、132の温度をモニターリングするためのセンサーと駆動自在に連結されてもよい。前記ヒーター111、112、121、122、131、132は、その内部温度を一定に維持するために、単位電極、すなわち、ヒーター電極が前記ヒーター111、112、121、122、131、132の表面中心点を基準として上下及び/又は左右の方向に対称状に配置される。また、前記ヒーター111、112、121、122、131、132は、高い伝熱性及び伝導性を得るための金属材質、例えば、クロム、アルミニウム、銅、鉄、銀及び炭素よりなる群から選ばれるいずれか一種以上又はこれらの複合材料によって製造可能であるが、本発明はこれに何ら制限されない。さらに、前記ヒーター111、112、121、122、131、132は、透光性発熱素子、例えば、酸化物半導体物質又は前記酸化物半導体物質にIn、Sb、Al、Ga、C及びSnよりなる群から選ばれる不純物が添加された物質を含む導電性ナノ粒子、インジウム錫酸化物、伝導性高分子物質、炭素ナノチューブ及びグラフェンよりなる群から選ばれるいずれか一種以上の物質を含んでいてもよい。
前記ヒーター群110、120、130は、前記1以上のヒーター111、112、121、122、131、132を有する単位であり、PCRを行うための変性段階と、アニーリング段階及び/又は延長段階を行うための温度を維持する領域を意味する。前記ヒーター群110、120、130は、前記PCR熱ブロック100に2以上配置され、前記2以上のヒーター群110、120、130は、前記基板99の上に隔設されるが、好ましくは、前記PCR熱ブロック100に2つ〜4つが配置される。もし、前記PCR熱ブロック100が2つのヒーター群を有するとしたとき、前記第1のヒーター群はPCR変性段階の温度を維持し、前記第2のヒーター群はPCRアニーリング/延長段階温度を維持するものであるか、あるいは、前記第1のヒーター群はPCRアニーリング/延長段階温度を維持し、前記第2のヒーター群はPCR変性段階の温度を維持するものであってもよい。また、もし、前記PCR熱ブロック100が3つのヒーター群を有するとしたとき、前記第1のヒーター群はPCR変性段階の温度を維持し、前記第2のヒーター群はPCRアニーリング段階の温度を維持し、前記第3のヒーター群はPCR延長段階の温度を維持するものであるか、あるいは、前記第1のヒーター群はPCRアニーリング段階の温度を維持し、前記第2のヒーター群はPCR延長段階の温度を維持し、前記第3のヒーター群はPCR変性段階の温度を維持するものであるか、あるいは、前記第1のヒーター群はPCR延長段階の温度を維持し、前記第2のヒーター群はPCR変性段階の温度を維持し、前記第3のヒーター群はPCRアニーリング段階の温度を維持するものであってもよい。好ましくは、前記ヒーター群は、前記PCR熱ブロック100に3回配置されてPCRを行うための3つの段階、すなわち、変性段階と、アニーリング段階及び延長段階を行うための温度をそれぞれ維持し、さらに好ましくは、前記熱ブロック100に2回配置されてPCRを行うための2つの段階、すなわち、変性段階及びアニーリング/延長段階を行うための温度をそれぞれ維持するものであってもよい。前記ヒーター群が前記PCR熱ブロック100の上に2回配置されてPCRを行うための2つの段階、すなわち、変性段階及びアニーリング/延長段階を行う場合、PCRを行うための3つの段階、すなわち、変性段階と、アニーリング段階及び延長段階を行う場合よりもPCR時間を短縮することができ、ヒーター数が減ることによって構造の単純化及び集積度の増加を図ることができるというメリットがある。一方、この場合、PCRを行うための3つの段階において、変性段階を行うための温度は85℃〜105℃、好ましくは、95℃であり、アニーリング段階を行うための温度は40℃〜60℃、好ましくは、50℃であり、延長段階を行うための温度は50℃〜80℃、好ましくは、72℃であり、さらに、PCRを行うための2つの段階において、変性段階を行うための温度は85℃〜105℃、好ましくは、95℃であり、アニーリング/延長段階を行うための温度は50℃〜80℃、好ましくは、72℃である。但し、前記PCRを行うための特定の温度及び温度範囲は、PCRを行うに当たって公知の範囲内において調節可能であるということはいうまでもない。前記ヒーター群110、120、130は、温度の緩衝役割を果たすためのヒーターをさらに備えてもよい。
前記ヒーターユニット10、20は、前記1以上のヒーターを有する前記2以上のヒーター群を有する単位であり、PCRを行うための変性段階と、アニーリング段階及び/又は延長段階を含む第1の循環が終わる領域を意味する。前記ヒーターユニット10、20は、必要に応じて、前記PCR熱ブロック100に2以上繰り返し配置されるが、好ましくは、前記PCR熱ブロック100に10回、20回、30回又は40回繰り返し配置される。
図2を参照すると、前記PCR熱ブロック100は、その上部面に繰り返し配置されたヒーターユニット10、20と、そこにそれぞれ配設された2つのヒーター群110、120と、そこにそれぞれ配設された1つのヒーター111、121と、を備えることによって、PCRを行うための2段階温度、すなわち、変性段階の1温度及びアニーリング/延長段階の1温度を順次に繰り返し提供することができる。例えば、第1のヒーター111は、85℃〜105℃の範囲内の1温度、好ましくは、95℃を維持して第1のヒーター群110は、変性段階を行うための温度を提供し、第2のヒーター121は50℃〜80℃の範囲内の1温度、好ましくは、72℃を維持して第2のヒーター群120は、アニーリング/延長段階を行うための温度を提供して、前記PCR熱ブロック100は、第1のヒーターユニット10及び第2のヒーターユニット20においてPCRを行うための2段階温度を順次に繰り返し提供することができる。
図3を参照すると、前記PCR熱ブロック100は、その上部面に繰り返し配置されたヒーターユニット10、20と、そこにそれぞれ配設された2つのヒーター群110、120と、そこにそれぞれ配設された2つのヒーター111、112、121、122を備えることによって、PCRを行うための2段階温度、すなわち、変性段階の2温度及びアニーリング/延長段階の2温度を順次に繰り返し提供することができる。例えば、第1のヒーター111は、85℃〜105℃の範囲内の1温度、第2のヒーター112は、85℃〜105℃の範囲内の前記第1のヒーター111の温度と同一又は異なる1温度を維持して第1のヒーター群110は、変性段階を行うための温度を提供し、第3のヒーター121は、50℃〜80℃の範囲内の1温度、第4のヒーター122は50℃〜80℃の範囲内の前記第3のヒーター121の温度と同一又は異なる1温度を維持して前記第2のヒーター群120は、アニーリング/延長段階を行うための温度を提供し、前記PCR熱ブロック100は、第1のヒーターユニット10及び第2のヒーターユニット20においてPCRを行うための2段階温度を順次に繰り返し提供することができる。
図4を参照すると、前記PCR熱ブロック100は、その上部の表面に繰り返し配置されたヒーターユニット10、20と、そこにそれぞれ配設された3つのヒーター群110、120、130と、そこにそれぞれ配設された1つのヒーター111、121、131を備えることによって、PCRを行うための3段階温度、すなわち、変性段階の1温度、アニーリング段階の1温度及び延長段階の1温度を順次に繰り返し提供することができる。例えば、第1のヒーター111は、85℃〜105℃の範囲内の1温度、好ましくは、95℃を維持して前記第1のヒーター群110は、変性段階を行うための温度を提供し、第2のヒーター121は、40℃〜60℃の範囲内の1温度、好ましくは、50℃を維持して前記第2のヒーター群120は、アニーリング段階を行うための温度を提供し、第3のヒーター131は、50℃〜80℃の範囲内の1温度、好ましくは、72℃を維持して前記第3のヒーター群130は、延長段階を行うための温度を提供することによって、前記熱ブロック100は、第1のヒーターユニット10及び第2のヒーターユニット20においてPCRを行うための3段階温度を順次に繰り返し提供することができる。
図5を参照すると、前記PCR熱ブロック100は、その上部の表面に繰り返し配置されたヒーターユニット10、20と、そこにそれぞれ配設された3つのヒーター群110、120、130と、そこにそれぞれ配設された2つのヒーター111、112、121、122、131、132と、を備えることによって、PCRを行うための3段階温度、すなわち、変性段階の2温度と、アニーリング段階の2温度及び延長段階の2温度を順次に繰り返し提供する。例えば、第1のヒーター111は、85℃〜105℃の範囲内の1温度、第2のヒーター112は、85℃〜105℃の範囲内の前記第1のヒーター111の温度と同一又は異なる1温度を維持して前記第1のヒーター群110は、変性段階を行うための温度を提供し、第3のヒーター121は、40℃〜60℃の範囲内の1温度、第4のヒーター122は、40℃〜60℃の範囲内の前記第3のヒーター121の温度と同一又は異なる1温度を維持して第2のヒーター群120は、アニーリング段階を行うための温度を提供し、第5のヒーター131は、50℃〜80℃の範囲内の1温度、第6のヒーター132は50℃〜80℃の範囲内の前記第5のヒーター131の温度と同一又は異なる1温度を維持して前記第3のヒーター群130は、延長段階を行うための温度を提供して、前記PCR熱ブロック100は、第1のヒーターユニット10及び第2のヒーターユニット20においてPCRを行うための3段階温度を順次に繰り返し提供することができる。
図2乃至図5に示すように、所定の温度を維持する2以上のヒーター111、112、121、122、131、132がPCR熱ブロック100の上に繰り返し配置されることによって、1時間当たりの温度の変化率を大幅に高めることができる。例えば、既存の単一のヒーター方式によれば、1時間当たりの温度の変化率が1秒当たりに3℃〜7℃の範囲内であるのに対し、本発明の実施形態による繰り返し配置式のヒーターの構造によれば、前記ヒーター間の1時間当たりの温度の変化率が1秒当たりに20℃〜40℃の範囲内であるため、PCR時間を大幅に短縮することができる。本発明の実施形態による繰り返し配置式のヒーターの構造によれば、PCRの変性段階と、アニーリング段階及び延長段階(又は、前記変性段階及びアニーリング/変性段階)において正確に温度を制御することが可能になり、しかも、前記ヒーターから熱が供給される部位においてのみ所望の温度又は温度範囲を維持することが可能になる。また、前記PCR熱ブロック100の上に様々な数のヒーターユニット10、20を繰り返し配置してPCR循環周期を多様化させることができる。例えば、循環周期が10回であるPCRに適用しようとする場合、前記ヒーターユニットを10回繰り返し配置することができる。すなわち、意図されたPCR循環周期を考慮して、前記PCR熱ブロック100の上に前記ヒーターユニットを10回、20回、30回、40回、50回などのように繰り返し配置することができる。加えて、前記ヒーターユニットを所定のPCR循環周期の半分の数だけ繰り返し配置することもできる。例えば、循環周期が20回であるPCRに適用しようとする場合、前記ヒーターユニットを10回繰り返し配置することができる。この場合、試料及び試薬溶液は後述するPCR部の反応チャンネル内において流入部から流出部に向かってPCR循環周期を10回繰り返し行うが、次いで、逆に、流出部から流入部に向かってPCR循環周期を10回繰り返し行うことができる。
図6は、本発明の実施形態によるPCR熱ブロック100及び前記PCR熱ブロック100に繰り返し配置されたヒーターに電力を供給する電力供給部200を示す。
具体的に、図6の上段は、前記PCR熱ブロック100の垂直断面図であり、図6の下段は、前記PCR熱ブロック100の平面図である。図6のPCR熱ブロック100は、10回繰り返し配置されたヒーターユニットを備え、前記ヒーターユニットは、第1のヒーター群及び第2のヒーター群を備え、前記第1のヒーター群及び第2のヒーター群は、それぞれ1つのヒーター、すなわち、第1のヒーター110及び第2のヒーター120を備える。前記電力供給部200は、電力供給源から前記PCR熱ブロック100に電力を供給して加熱するモジュールであって、前記各ヒーター110、120に電力を分配する配線210、220を備える。例えば、図6を参照すると、前記PCR熱ブロック100の前記第1の配線210は、前記第1のヒーター110に電力を供給するように連結され、前記第2の配線220は、前記第2のヒーター120に電力を供給するように連結されている。もし、前記第1のヒーター110がPCR変性段階温度、例えば、85℃〜105℃を維持し、前記第2のヒーター120がPCRアニーリング/延長段階温度、例えば、50℃〜80℃を維持する場合、前記第1の配線210には、前記電力供給部200からPCR変性段階温度を維持するための電力が供給され、前記第2の配線220には、前記電力供給部200からPCRアニーリング/延長段階温度を維持するための電力が供給される。前記第1の配線210及び前記第2の配線220は、金、銀、銅など伝導性材質によって形成されるが、本発明はこれに何ら制限されない。
図7は、補償型パターンが適用されていない個別のヒーターに電力を供給する場合に発生する不均一な放射状の熱の分布を示す写真であり、図8は、PCR熱ブロックの上に補償型パターンが適用されていない2以上のヒーターが繰り返し配置された状態で電力を供給する場合に個別のヒーターから発せられる不均一な放射状の熱の分布による隣り合うヒーター111、121間の不均一な熱の重なり合いを示す写真である。
図7を参照すると、全体的な周縁が長方形に形成された単一のヒーターが電力供給によって発熱するときに放射状の熱分布が形成される。一般に、全体的な周縁が長方形に形成された単一のヒーターは、電力を供給した後に所定の温度を維持するときにヒーターの中央領域において熱の偏り現象が発生して高温にて発熱し、ヒーターの周縁に進むにつれて熱損失現象が発生して前記ヒーターの中央領域に比べて周縁部が低温にて発熱する。このような不均一な発熱現象によって、図7に示すように、単一のヒーターの周りにおいて放射状の熱分布が観察される。このような放射状の熱分布は、長方形のヒーターが2以上繰り返し配置されたPCR熱ブロックにおいて隣り合うヒーター間の熱の重なり合いによる熱のばらつきを増大させる原因となる。図8を参照すると、第1のヒーター111と第2のヒーター121との間に、個別のヒーターから発せられる放射状の熱分布現象によって不均一な熱の重なり合い現象が生じるということを確認することができる。例えば、長方形のヒーターの幅が約4mmであり、前記隣り合うヒーター間の距離が約8mmである2以上のヒーターが繰り返し配置されたPCR熱ブロックにおいて、上記の如き不均一な熱の重なり合い現象が発生するということを容易に確認することができる。このような不均一な熱の重なり合い現象は、図1乃至図4に示すように、2以上のヒーターが繰り返し隔設された熱ブロックにおいて各ヒーターが維持すべき正確な温度の生成を妨げ、しかも、各ヒーターの温度を制御し難くする他、正確なPCRを行い難くし、その結果、PCR効率が低下する。
このような隣り合うヒーター間の不均一な熱の重なり合い現象による問題を解消するために、隣り合うヒーター間の距離を十分に確保したり、隣り合うヒーター間の空間に熱遮断物質などを処理したりするが、この場合、PCR熱ブロックが全体的に肥大化して装置の小型化及び集積化が図られ難く、製造工程が複雑になって経済性が確保され難い。
図9は、補償型パターン1000が適用された本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロック100を示す。
図9を参照すると、本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロック100は、個別のヒーター111、121から発せられる放射状の熱の分布による隣り合うヒーター間の不均一な熱の重なり合いを防ぐために、前記ヒーター111、121の少なくとも一部分の抵抗を調節して前記ヒーターの表面の熱の均一度を調節する補償型パターン1000を備える。前記補償型パターン1000とは、長方形のヒーターの少なくとも一部分の形状、材質、大きさ、配置などを変形してそのヒーター部分の抵抗及び放熱量を調節するための加工されたパターンの構造のことをいう。前記補償型パターン1000は、長方形のヒーターの特徴に応じて様々に形成されるが、例えば、前記ヒーターの少なくとも一部分に間隙を繰り返し形成して間隙パターン又は波長形パターンを形成したり、前記ヒーターの少なくとも一部分の材質を他の部分と異ならせたり、前記ヒーターの少なくとも一部分の大きさを他の部分と異ならせたり、前記ヒーターの少なくとも一部分の単位電極、すなわち、ヒーター電極の配置を他の部分と異ならせたりする。また、前記補償型パターン1000は、前記ヒーターの全体の領域に均一に適用されるが、場合によって、前記ヒーターの一部の領域に限って適用されたり、繰り返し配置された各ヒーターに異なる形状に形成されたりする。一方、本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロックにおいて、前記補償型パターンを有するヒーターは、前記基板にフォトリソグラフィ(Photo lithography)、電気めっき(Electro Plating)、シャドーマスク(Shadow Mask)及び蒸発蒸着(Evaporator Deposition)、シャドーマスク(Shadow Mask)及びスパッター蒸着(Sputter Deposition)、インクジェット(Inkjet)、グラビア(Gravure)、グラビア−オフセット(Gravure−Offset)、スクリーン印刷(Screen Printing)、計算機数値制御工作機械(computerized numerically controlled machine tool)、レーザービーム加工(Laser beam Machining)及び放電加工(Electric Discharge Machining)よりなる群から選ばれるいずれか一種を施して製作する。
図10は、本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロックにおいて、ヒーター111の一部分に形成された間隙1100を有する補償型パターンを示す。
図10を参照すると、前記補償型パターン1000は、前記ヒーター111の少なくとも一部分に間隙1100を繰り返し形成して間隙パターンによる抵抗を調節して前記ヒーターの表面の熱の均一度が調節されたものであってもよい。前記間隙1100は、前記ヒーター111の少なくとも一部分の形状を変形したものであり、凹状領域又は凸状領域又は隙間のようにヒーター状の加工パターンを意味する。図10を参照すると、前記間隙1100は、ヒーター111の表面に多種多様に形成されるが、識別番号1100aは凸状の間隙を示し、識別番号1100bは凹状の間隙を示し、識別番号1100cは隙間状間隙を示す。また、前記間隙1100は、ヒーターの周縁の表面に繰り返し配置されて波長形に形成されるが、これは、前記ヒーター111の周縁の表面が連続的な凹状領域及び凸状領域の繰り返し形成されたものである。このため、前記様々な間隙1100の構造によってヒーターの表面が様々な形状に形成され、これによって、前記ヒーターの少なくとも一部分の抵抗が調節されて放熱量が調節される。一方、前記間隙1100は、前記ヒーター111の少なくともある表面に配置されるが、様々な規格に形成される。例えば、前記間隙1100の大きさ又は間隙の線幅は、各ヒーター111の任意の表面に様々に実現される。このように、ヒーターの2以上の表面において前記間隙1100の規格を調節して前記ヒーターの少なくとも2以上の領域の抵抗をそれぞれ調節することができ、その結果、放熱量を調節して各ヒーターの均一な熱分布が得られる。
図11は、本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロックにおいて、ヒーター111の一部分に形成された間隙の線幅を異ならせた補償型パターンを示す。
前記補償型パターン1000は、前記ヒーター111の少なくとも一部分に繰り返し形成された間隙の線幅を異ならせることによって抵抗を調節して前記ヒーターの表面の熱の均一度が調節されたものであってもよい。上記のように線幅による抵抗の調節によって熱の均一度が調節された補償型パターン1000は、前記ヒーター111の少なくとも一部分の線幅を異ならせることによって前記ヒーターの少なくとも一部分の抵抗を変形してヒーターの各位置別の発熱量を調節するための加工形態を意味する。前記線幅が補償されたパターンは、前記ヒーターの表面に間隙が繰り返し形成された構造において様々に形成される。前記線幅が補償されたパターンは、前記ヒーター111の全体の領域に均一に適用されるが、場合によって、前記ヒーター111の一部の領域に適用されてもよい。一方、本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロック100は、前記ヒーター111の少なくとも2以上の表面に形成された任意の区間において異なる線幅に形成される。すなわち、前記ヒーターの表面に多数の区間A、B、Cを定め、各区間A、B、Cに相当するヒーター領域の発熱量を調節することができる。例えば、図11に示す本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロック100において、区間A、B、Cの凸状の間隙の線幅を比較すると、区間A及びCは、区間Bに比べて線幅が狭いため相対的に高い抵抗を有する結果、発熱量が増大するのに対し、区間Bは、区間A及びCに比べて線幅が広いため相対的に低い抵抗を有する結果、発熱量が低減される。このように、ヒーターの表面に形成された間隙の線幅を調節して、既存の長方形のヒーターのうち高温の部分は抵抗を低く調節し、低温の部分は抵抗を高く調節して放熱量を調節して全体的な温度のばらつきを改善することができる。
図12は、本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロックにおいて、ヒーター111の一部分の厚さを異ならせた補償型パターンを示す。
前記補償型パターン1000は、前記ヒーター111の少なくとも一部分の厚さを異ならせて抵抗を調節することによって前記ヒーターの表面の熱の均一度が調節されたものであってもよい。上記のように、前記ヒーター111の少なくとも一部分の厚さが補償されたパターン1000は、前記ヒーター111の少なくとも一部分の厚さを異ならせることによって前記ヒーター111の少なくとも一部分の抵抗を変形して前記ヒーター111の位置別の発熱量を調節するための加工形態を意味する。例えば、前記厚さが補償されたパターン1000は、前記ヒーター111の表面に凸面及び凹面を連続的に繰り返し配置するが、その凸面又は凹面の厚さを異ならせるものであってもよく、その厚さは約0.001μm〜1mmの範囲内に収まるが、本発明はこれに何ら制限されない。また、前記厚さが補償されたパターン1000は、前記ヒーター111の全体の領域に均一に適用されるが、場合によって、前記ヒーターの一部の領域に適用されてもよい。一方、本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロック100は、前記ヒーター111の少なくとも2以上の表面に形成された任意の区間において異なる厚さを有してもよい。すなわち、前記ヒーターの表面に多数の区間A、B、Cを定め、各区間A、B、Cに相当するヒーター領域の発熱量を調節することができる。例えば、図12に示す本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロック100において、区間A、B、Cの凸面の厚さを比較すると、区間A及びCは、区間Bに比べて薄いため相対的に高い抵抗を有する結果、発熱量が増大されるのに対し、区間Bは、区間A及びCに比べて厚いため相対的に低い抵抗を有する結果、発熱量が低減される。上記のように、ヒーターの任意の一部分の厚さを調節して、既存の長方形のヒーターのうち高温の部分は抵抗を低く調節し、低温の部分は抵抗を高く調節して放熱量を調節して全体的な温度のばらつきを改善することができる。
図13は、本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロックにおいて、前記ヒーター111の少なくとも一部分の材質を異ならせた補償型パターンを示す。
前記補償型パターン1000は、前記ヒーター111の少なくとも一部分の材質を異ならせて抵抗を調節することによって前記ヒーターの表面の熱の均一度が調節されたものであってもよい。上記のように材質が補償されたパターン1000は、前記ヒーター111の少なくとも一部分の材質を異ならせることによって前記ヒーター111の少なくとも一部分の抵抗を変形してヒーターの位置別の発熱量を調節するための加工形態を意味する。前記ヒーターの材質は、クロム、アルミニウム、銅、鉄、銀及び炭素よりなる群から選ばれるいずれか一種以上又はこれらの複合材料によって製造可能であり、伝導性を有する物質であれば、特に制限はない。また、前記材質が補償されたパターン1000は、前記ヒーター111の全体の領域に均一に適用されるが、場合によって、前記ヒーターの一部の領域に適用されてもよいということはいうまでもない。一方、本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロック100は、前記ヒーター111の少なくとも2以上の表面に形成された任意の区間に異なる材質によって製作される。すなわち、前記ヒーターの表面に多数の区間A、B、Cを定め、各区間A、B、Cに相当するヒーター領域の発熱量を調節することができる。例えば、図13に示す本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロック100において、区間A、B、Cの凸面又は凸状の間隙の材質を比較すると、区間A及びCは、区間Bに比べて比抵抗の高い材質によって製造されて相対的に高い抵抗を有するため発熱量が増大されるのに対し、区間Bは、区間A及びCに比べて比抵抗の低い材質によって製造されて相対的に低い抵抗を有するため発熱量が低減される。上記のように、ヒーターの任意の一部分の材質を調節して、既存の長方形のヒーターのうち高温の部分は抵抗を低く調節し、低温の部分は抵抗を高く調節して放熱量を調節して全体的な温度のばらつきを改善することができる。
図14は、本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロックにおいて、前記ヒーター111の少なくとも一部分の配置を異ならせた補償型パターンを示す。
前記補償型パターン1000は、前記ヒーター111の少なくとも一部分の配置を異ならせて抵抗を調節することによって前記ヒーターの表面の熱の均一度が調節されたものであってもよい。本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロック100は、前記ヒーター111のある表面及びこれに対応する他の表面に間隙1100、例えば、凸状間隙又は凹状間隙が配置されるが、互いに双方向に千鳥状に形成されたヒーター電極1110a、1110bを有してもよい。例えば、前記間隙1100は、前記ヒーター電極1110a、1110bの対応する表面に千鳥状に形成されてもよい。また、本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロック100は、長方形のヒーター電極1500と、前記長方形のヒーター電極1500から離れて配置されるが、前記補償型パターン1000が適用されたヒーター電極1110a、1110bと、を備えてもよい。さらに、図14に示すように、前記長方形のヒーター電極1500は、前記ヒーター111の中心領域に配置されるが、前記補償型パターンが適用されたヒーター電極1110a、1110bは、前記長方形のヒーター電極1500から両方向に離れて配置されるが、前記補償型パターンが適用されたヒーター電極1110a、1110bは、前記長方形のヒーター電極1500の位置を基準として対称状に形成されてもよい。すなわち、本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロック100は、補償型パターン1000を有するヒーター電極のみを備えるが、必要に応じて、補償型パターン1000が適用されたヒーター電極と既存の長方形のヒーター電極1500を様々に組み合わせてなることによって、既存の長方形のヒーターのうち高温の部分は抵抗を低く調節し、低温の部分は抵抗を高く調節して放熱量を調節して全体的な温度のばらつきを改善することができる。
図15は、本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロックから発せられる熱の分布を示す写真であり、図16は、本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロックから発せられる熱の分布を示すグラフである。
既存の長方形のヒーターに比べて本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロック100の熱の均一度の改善効果を確認するために、図11に示すPCR熱ブロックを製作した。
前記PCR熱ブロックは、凸状間隙及び凹状間隙が連続的に繰り返し配置された補償型パターンを有するヒーターが基板の上に繰り返し配置されるように製作した。また、前記PCR熱ブロックは、区間A及びCの凸状間隙の線幅及び間隙間距離を両方とも200μmに形成し、区間Bの凸状間隙の線幅及び間隙間距離を両方とも400μmに形成してヒーターの各区間の発熱量を調節した。この場合、凸状間隙の線幅及び間隙間距離は約50nm〜1mmの範囲内において調節可能であることが確認され、前記ヒーターの厚さは10μmに形成するが、約10nm〜1mmの範囲内において調節可能であることが確認された。
図15を参照すると、本発明の一実施形態によるPCR熱ブロックの熱分布は、図7及び図8に示す既存の長方形のヒーターの熱分布に比べてかなり均一であることを確認することができる。また、図16を参照すると、本発明の一実施形態によるPCR熱ブロックの第1のヒーター111及びこれと隣り合う第2のヒーター121の温度ピーク点(円形の点線)がはっきりと区別されることから、不均一な熱の重なり合い現象がかなり低減されて熱の均一度が増加したことを確認することができる。これに基づいて、上記の補償型パターンが適用されたヒーターに電力を供給した後に所定の温度を維持した状態で確認すれば、ヒーターの中央領域と周縁部分との間の温度差が減って全体的に均一な熱分布が形成されていることを確認することができた。また、上記の補償型パターンが適用されたヒーターが2以上繰り返し配置されたPCR熱ブロックに電力を供給した後に所定の温度を維持した状態で確認すれば、隣り合うヒーター間の熱の均一度がかなり増加することを確認することができた。さらに、上記の補償型パターンが適用されたヒーターが繰り返し配置されたPCR熱ブロックを用いて2段階PCRを行ったところ、隣り合う2つのヒーターはそれぞれ変性段階温度(95℃)及びアニーリング/延長段階温度(72℃)を正確に維持することが把握された。上述したように、本発明の第1の実施形態によるPCR熱ブロックを用いると、温度を精度よく制御することができてPCR過程を用いてPCR効率をかなり高めることができ、さらに、制御モジュールを単純化及び集積化させることができてPCR装置の小型化が図られ、製造工程が単純になって経済性が確保されることが予想される。
図17は、PCR熱ブロックと熱接触するPCR部300を示す。
図17を参照すると、前記PCR部300は、前記PCR熱ブロック100に貼着される第1の板310と、前記第1の板310の上に配置され、前記1以上の反応チャンネル303を有する第2の板320と、前記第2の板320の上に配置され、前記1以上の反応チャンネル303の両末端にそれぞれ流入部304及び流出部305が設けられる第3の板330と、を備える。このように、前記PCR部300を薄膜状の積層構造に形成して製造方式が簡単であり、コストを大幅に削減することができる他、前記PCR熱ブロック100と手軽に熱交換を行うことができる。前記PCR部300は、様々な材質によって形成されるが、全体的にプラスチック材質の薄膜状に形成されることが好ましい。また、前記PCR部300は、透光性材質によって形成され、もし、蛍光(Fluorescence)、リン光(Phosphorescence)、発光(Luminescence)、ラマン分光法(Raman Spectroscopy)、表面強化ラマン散乱(Surface Enhanced Raman Scattering)及び表面プラスモン共鳴(Surface Plasmon Resonance)などの光学測定に基づくリアルタイムPCR用途に用いられる場合、前記PCR部300は、透光性材質によって形成されることが好ましい。
前記第1の板310は、前記PCR熱ブロック100に貼着されて前記PCR熱ブロック100から熱の供給を受ける。前記第1の板310は、様々な材質によって形成されるが、好ましくは、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane;PDMS)、シクロオレフィンコポリマー(cycle olefin copolymer:COC)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmetharcylate;PMMA)、ポリカーボネート(polycarbonate;PC)、ポリプロピレンカーボネート(polypropylene carbonate;PPC)、ポリエーテルスルホン(polyether sulfone;PES)及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる材質であってもよい。また、前記第1の板310の上断面には親水性物質(図示せず)が処理され、これによって、PCRが円滑に行われる。前記親水性物質の処理によって前記第1の板310の上に親水性物質を含む単一層が形成される。前記親水性物質は様々な物質であるが、好ましくは、カルボキシ基(−COOH)、アミン基(−NH2)、ヒドロキシ基(−OH)及びスルホン基(−SH)よりなる群から選ばれるものであり、前記親水性物質の処理は、当業界における公知の方法によって行われる。
前記第2の板320は、前記第1の板310の上に配置される。前記第2の板320は、1以上の反応チャンネル303を有する。前記1以上の反応チャンネル303は、前記第3の板330に形成された流入部304及び流出部305に対応する部分と連結される。このため、前記1以上の反応チャンネル303に増幅しようとする標的サンプル溶液が取り込まれた後にPCRが行われる。また、前記1以上の反応チャンネル303は、使用目的及び範囲に応じて2以上存在してもよく、図1を参照すると、5つの反応チャンネル303が例示されている。さらに、前記第2の板320は、様々な材質によって形成されるが、好ましくは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリアミド(polyamide;PA)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリフェニレンエーテル(polyphenylene ether;PPE)、ポリスチレン(polystyrene;PS)、ポリオキシメチレン(polyoxymethylene;POM)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone;PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene;PTFE)、ポリビニールクロライド(polyvinylchloride;PVC)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride;PVDF)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate;PBT)、フッ素化エチレンプロピレン(fluorinated ethylenepropylene;FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(perfluoralkoxyalkane;PFA)及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の材質であってもよい。また、前記第2の板320の厚さは様々であるが、0.01μm〜5mmの範囲内である。さらに、前記反応チャンネル303の幅及び長さは様々であるが、好ましくは、前記反応チャンネル303の幅は0.001mm〜10mmの範囲内であり、前記反応チャンネル303の長さは1mm〜400mmの範囲内である。加えて、前記第2の板320の内壁は、DNA、たんぱく質の吸着を防ぐためにシラン系、ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin;BSA)などの物質によってコーティングされ、前記物質の処理は当業界における公知の方法によって行われる。
前記第3の板330は、前記第2の板320の上に配置される。前記第3の板330は、前記第2の板320に形成された1以上の反応チャンネル303上のある領域に形成された流入部304及び他のある領域に形成された流出部305を備える。前記流入部304は、増幅しようとする核酸を含む標的サンプル溶液が流入する部分である。前記流出部305は、PCRが終わった後に前記標的サンプル溶液が排出される部分である。このため、前記第3の板330は、前記第2の板320に形成された1以上の反応チャンネル303を覆うが、前記流入部304及び前記流出部305は前記1以上の反応チャンネル303の流入部及び流出部の役割を果たす。また、前記第3の板330は、様々な材質によって形成されるが、好ましくは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる材質である。さらに、前記流入部304は様々な大きさに形成されるが、好ましくは、0.001mm〜10mmの範囲内の直径を有する。加えて、前記流出部305は様々な大きさに形成されるが、好ましくは、0.001mm〜10mmの範囲内の直径を有する。加えて、前記流入部304及び貫通開口流出部305は別途のカバー手段(図示せず)を備えて、前記1以上の反応チャンネル303内において標的サンプル溶液に対するPCRが行われるときに標的サンプル溶液が漏れ出ることを防ぐことができる。前記カバー手段は、様々な形状及び大きさに様々な材質によって形成される。また、前記第3の板330の厚さは様々であるが、好ましくは、0.001mm〜10mmの範囲内である。なお、前記流入部304及び流出部305は、2以上存在する。
前記PCR部300は、機械的な加工を用いて前記流入部304及び前記流出部305を形成して前記第3の板330を提供する段階と、前記第3の板330の下部面と対応する大きさを有する板材に前記第3の板330の流入部304と対応する部分から前記第3の板330の流出部305に対応する部分まで機械的な加工を用いて1以上の反応チャンネル303を形成して第2の板320を提供する段階と、前記第2の板320の下部面と対応する大きさを有する板材の上部面に表面処理加工を施して親水性物質(図示せず)によって形成された表面を形成して第1の板310を提供する段階と、前記第3の板330の下部面を前記第2の板320の上部面に貼着し、前記第2の板320の下部面を前記第1の板310の上部面に貼着する段階と、を含む方法によって容易に製造される。
前記第3の板330の流入部304及び流出部305と、前記第2の板320の1以上の反応チャンネル303は、射出成形(injection molding)、ホットエンボシング(hot−embossing)、鋳造(casting)及びレーザーアブレーション(laser ablation)よりなる群から選ばれる加工方法によって形成される。また、前記第1の板310の表面の親水性物質は、酸素及びアルゴンプラズマ処理、コロナ放電処理及び界面活性剤の塗布よりなる群から選ばれる方法によって処理され、当業界における公知の方法によって行われる。さらに、前記第3の板330の下部面と前記第2の板320の上部面、及び前記第2の板320の下部面と前記第1の板310の上部面は、熱貼り合わせ(Thermal bonding)、超音波融着(Ultrasonic Welding)、溶媒貼り合わせ(Solvent Bonding)、熱板溶着(Hot Plate Welding)、UV貼り合わせ(Ultraviolet Bonding)及びプレス貼り合わせ(Press Bonding)工程によって貼り合わせられ、当業界における公知の方法によって行われる。前記第3の板330と第2の板320との間及び前記第2の板320と第1の板310との間には両面接着剤又は熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂(図示せず)が処理される。
図18は、PCR熱ブロック100とPCR部300が一体に形成されたPCRチップを示し、図19は、PCR熱ブロック100とPCR部300が別途に形成されたPCR装置を示す。
本発明の第1の実施形態による補償型パターンを有するPCR熱ブロックは、様々なPCRモジュール又は装置に適用される。例えば、前記補償型パターンを有するPCR熱ブロックは、PCR溶液を収容するPCR部に取り付けられてPCRチップとして製造されてもよく(チップ内蔵型、図18)、前記PCR部を有する別個のPCRチップと熱接触又は分離されるPCR装置として製造されてもよい(チップ外付け型、図19)。前記チップ内蔵型の場合、前記補償型パターンを有するPCR熱ブロックの上部面にはPCR溶液の電気分解を防ぐための絶縁膜306が形成され、前記チップ外付け型の場合、前記補償型パターンを有するPCR熱ブロックの上部面にはヒーター保護用絶縁膜307が形成される。前記絶縁膜306、307の厚さは約20μmであることが好ましいが、約50nm〜1mmの範囲内の厚さを有してもよいことが確認された。
前記絶縁膜は、PCR溶液の電気分解を防ぐための様々な材質によって形成されるが、例えば、酸化物(Oxide)、窒化物(Nitride)、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及びUV硬化樹脂よりなる群から選ばれる。具体的に、前記酸化物は、シリコン酸化物(SiO2)、チタン酸化物(TiO2)、アルミニウム酸化物(Al2O3)、ハフニウム酸化物(HfO2)、バナジウム酸化物(V3O4)、ジルコニウム酸化物(ZrO2)、アンチモン酸化物(Sb2O3)及びイットリウム酸化物(Y2O3)よりなる群から選ばれ、前記窒化物は、シリコン窒化物(Si3N4)、チタン窒化物(TiN)、アルミニウム窒化物(AlN)、タンタル窒化物(Ta3N5)、ハフニウム窒化物(HfN)、バナジウム窒化物(VN)及びジルコニウム窒化物(ZrN)よりなる群から選ばれ、前記熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ヨウ素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アニリン、ポリイミド及びシリコン樹脂よりなる群から選ばれ、前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリ塩化ビニール樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン及びポリプロピレンよりなる群から選ばれ、前記UV硬化樹脂は、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコンアクリレート及びアルキルアクリレートよりなる群から選ばれる。一方、前記絶縁膜は、前記PCR熱ブロックの上部面にフォトリソグラフィ、電気めっき、シャドーマスク及び蒸発蒸着、シャドーマスク及びスパッター蒸着、インクジェット、グラビア、グラビア−オフセット、スクリーン印刷よりなる群から選ばれるいずれか一種を施して形成する。
図20は、本発明の第1の実施形態による補償型パターンが適用されたヒーターが繰り返し配置されたPCR熱ブロック100を有するPCR装置によって行われるPCRを示す。
図20を参照すると、本発明の一実施形態によるPCR装置は、PCR部300と、電力供給源400及びポンプ500を備える。具体的に、前記PCR部300は、前記PCR熱ブロックの上に接触される。
前記電力供給源400は、前記電力供給部200に電力を供給するためのモジュールであり、前記電力供給部200の第1の配線210及び第2の配線220とそれぞれ連結される。例えば、PCRを行うに当たって前記電力供給源400の第1の電力ポート(図示せず)は前記第1の配線210と電気的に接続され、前記電力供給源400の第2の電力ポート(図示せず)は前記第2の配線220と電気的に接続される。次いで、PCRを行うためのユーザーの指示がある場合、前記電力供給源400は、前記第1の配線210及び前記第2の配線220にそれぞれ電力を供給して前記PCR熱ブロックの第1のヒーター及び第2のヒーターを速やかに加熱することができ、各ヒーターが所定の温度に達すると、電力供給量を制御して前記所定の温度を維持する。例えば、前記所定の温度は、前記第1のヒーターにおいてはPCR変性段階温度(85℃〜105℃、好ましくは、95℃)であり、且つ、前記第2のヒーターにおいてはPCRアニーリング/延長段階温度(50℃〜80℃、好ましくは、72℃)であるか、あるいは、前記第1のヒーターにおいてはPCRアニーリング/延長段階温度(50℃〜80℃、好ましくは、72℃)であり、且つ、前記第2のヒーターにおいてはPCR変性段階温度(85℃〜105℃、好ましくは、95℃)である。
前記ポンプ500は、前記PCR部300の1以上の反応チャンネル303内において流動する流体の流量及び流速を制御するためのモジュールであり、正圧ポンプ又は負圧ポンプであってもよく、例えば、シリンジポンプであってもよい。前記ポンプ500は、前記反応チャンネル303の一部分に駆動自在に配置されるが、好ましくは、前記反応チャンネル303の両末端に形成された流入部304及び/又は流出部305に連結されるように配置される。前記ポンプ500が前記流入部304及び/又は流出部305に連結されるように配置された場合、ポンプの役割を果たすだけではなく、前記流入部304及び/又は流出部305を介して標的サンプル溶液が漏れ出ることを防ぐ栓の役割も果たす。また、前記反応チャンネル303内において流動する流体、すなわち、標的サンプル溶液の流量及び流速を一方向に制御しようとする場合、前記ポンプ500は、前記流入部304及び前記流出部305のうちのいずれか一方にのみ連結されるように配置され、残りの一方には通常の栓が密封状態で連結され、前記反応チャンネル303内において流動する流体、すなわち、標的サンプル溶液の流量及び流速を両方向に制御しようとする場合には、前記ポンプ500は、前記流入部304及び前記流出部305の両方に連結されるように配置される。
前記PCR部300と、前記電力供給源400及び前記ポンプ500を有するPCR装置内におけるPCR溶液の核酸増幅反応は、例えば、下記の段階を経て行われる。
1.所望の二本鎖標的DNA、増幅しようとする特定の塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドプライマー、DNA重合酵素、デオキシリボヌクレオチド3リン酸(deoxyribonucleotide triphosphates;dNTP)、PCR緩衝液を含むPCR溶液を準備する。
2.前記PCR溶液をPCR部300に取り込む。この場合、前記PCR溶液は、前記流入部304を介して前記PCR部300の内部の反応チャンネル303に配置される。
3.前記電力供給部200、具体的に、第1の配線210及び第2の配線220を前記電力供給源400とそれぞれ連結し、前記PCR部300の前記流入部304及び前記流出部305をポンプ500と密封状態で連結する。
4.前記電力供給部400に電力供給の指示をして前記第1の配線210及び前記第2の配線220を用いて前記第1のヒーター及び前記第2のヒーターを発熱させ、特定の温度、例えば、第1のヒーターの場合にPCR変性段階温度(95℃)及び第2のヒーターの場合にPCRアニーリング/延長段階温度(72℃)を維持する。
5.前記流入部304と連結されたポンプ500によって正圧が提供されるか、あるいは、前記流出部305と連結されたポンプ500によって負圧が提供されれば、前記標的サンプル溶液は、前記反応チャンネル303の内部において水平方向に流動する。この場合、前記PCR溶液の流量及び流速は、前記ポンプ500によって提供される正圧又は負圧の強さを調節することによって制御される。
前記段階を行うことによって、前記PCR溶液は、前記反応チャンネル303の流入部304の末端から流出部305の末端まで前記第1のヒーターの上側との対応部分及び前記第2のヒーターの上側との対応部分を長手方向に移動しながらPCRを行う。図20を参照すると、前記PCR溶液は、前記第1のヒーター及び前記第2のヒーターを有するヒーターユニットが10回繰り返し配置された熱ブロック100から熱の供給を受けて前記第1のヒーターの上側との対応部分におけるPCR変性段階及び前記第2のヒーターの上側との対応部分におけるPCRアニーリング/延長段階を経て10回のPCR循環周期を終える。次いで、選択的に、前記PCR溶液は、前記反応チャンネル303の流出部305の末端から流入部304の末端まで前記第1のヒーターの上側との対応部分及び前記第2のヒーターの上側との対応部分を長手方向に逆移動しながらPCRを再び行う。
図21は、本発明の第1の実施形態による補償型パターンが適用されたヒーターが繰り返し配置されたPCR熱ブロック100と、光源150及び光検出部600を備えるPCR装置によって行われる光学的リアルタイムPCRを示す。
図21を参照すると、本発明の一実施形態によるPCR装置は、透光性材質のPCR部300及びこれを備えるが、第1のヒーター110及び第2のヒーター120の間に光源150が配置された熱ブロック100と、電力供給部400と、ポンプ500及び光検出部600を備える。
図21に示すPCR部300は、透光性材質によって形成され、前記PCR熱ブロック100の第1のヒーター110及び第2のヒーター120の間に光源150が配置されることを特徴とする。また、前記PCR装置は、前記光源150から発せられる光を検出するための光検出部600をさらに備える。このため、前記PCR装置は、PCRを行うに当たって核酸増幅過程をリアルタイムにて測定及び分析することができる。この場合、前記PCR溶液には別途の蛍光物質がさらに添加されてもよく、これは、PCR産物の生成に伴い特定の波長の光によって発光して、測定及び分析可能な光信号を誘発する。前記光源150は、水銀アーク灯、キセノンアーク灯、タングステンアーク灯、金属ハライドアーク灯、金属ハライド光ファイバ及び発光ダイオードよりなる群から選ばれる。また、前記光源150の波長は約200nm〜1300nmの範囲内であり、多重光源又はフィルターを用いた多重波長であってもよい。さらに、前記光検出部600は、電荷結合素子(CCD:Charge−coupled Device)、電荷注入素子(CID:Charge−injection Device)、相補性金属酸化膜半導体検出器(CMOS:Complementary−metal−oxide−semiconductor Detector)及び光電子増倍管(PMT:Photo Multiplier Tube)よりなる群から選ばれる。本発明の一実施形態における前記光源150は、前記第1のヒーター110及び第2のヒーター120の間の空間に配置される。なお、前記光源150は、前記光源150から発せられる光を捕集するレンズ(図示せず)及び特定の波長帯の光をろ過する光フィルター(図示せず)と駆動自在に連結されるように配置される。
図21を参照すると、本発明の一実施形態によるPCR装置によって核酸増幅反応がリアルタイムにて測定される段階を確認することができる。例えば、PCR溶液は、前記反応チャンネル303内において前記第1のヒーター110の上側との対応部分301及び前記第2のヒーター120の上側との対応部分302を連続して通過しながらPCR変性段階及びPCRアニーリング/延長段階を行うが、この場合、PCR溶液は、前記第1のヒーター110と前記第2のヒーター120との間及び前記第1のヒーター110と前記第2のヒーター120を有するヒーターユニットの間において前記光源150の上側との対応部分を通過する。PCR溶液が前記光源150の上側との対応部分を通過するとき、流体を制御して前記PCR溶液の流速を遅らせたりしばらくの間停止状態に維持した後に前記光源150から光を発したりし、前記発せられた光は前記光透明性のPCR部300、具体的に、前記反応チャンネル330を通過し、前記反応チャンネル330内の核酸増幅によって発生する光信号を前記光検出部600が測定及び分析することができる。このため、PCRの各循環周期が進行される間に前記反応チャンネル303内において(蛍光物質が結合された)核酸の増幅による反応結果をリアルタイムにてモニターリングして標的核酸の量をリアルタイムにて測定及び分析することができる。
図22乃至図25は、図12乃至図16のPCR熱ブロックと熱接触する他のタイプのPCR部900を示す。
図22乃至図25に示すPCR部900は、前記反応チャンネルの長手方向にその下断面を横切って繰り返し隔設されるが、前記反応チャンネルの内部における増幅核酸及び活性物質間の結合によって発生する電気化学的な信号を検出する検出電極を有するものであり、前記熱ブロックとの熱接触に際して、前記検出電極は、前記2以上のヒーター群の間に配置される。前記PCR部900は、板状を呈し、両末端に流入部931及び流出部932が形成された1以上の反応チャンネル921と、前記反応チャンネル921の長手方向にその下断面を横切って繰り返し隔設されるが、前記反応チャンネル921の内部における増幅核酸及び活性物質間の結合によって発生する電気化学的な信号を検出する検出電極950を有するものであり、前記PCR熱ブロック100との熱接触に際して、前記検出電極950は、前記2以上のヒーター群110、120、130の間に配置される。前記PCR部900は、核酸、例えば、PCR試料である鋳型核酸二本鎖DNA、PCR試薬である増幅しようとする特定の塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドプライマー、DNA重合酵素、デオキシリボヌクレオチド3リン酸(dNTP)、PCR緩衝液を含む溶液を収容する。前記PCR部900は、前記試料及び試薬を取り込むための流入部931と、核酸増幅反応を終えた溶液を排出するための流出部932及び前記試料及び試薬の核酸増幅反応が行われる反応チャンネル921を備える。図22を参照すると、前記反応チャンネル921は、前記第1のヒーターの上側との対応部分及び前記第2のヒーターの上側との対応部分を長手方向に通過するように延設される。前記PCR部900には、前記熱ブロック100から熱が提供され、前記PCR部900の反応チャンネル921に含まれているPCR試料及び試薬は加熱及び維持される。また、前記PCR部900は、熱伝導率を高めるとともに2以上の反応チャンネル921を有するように全体的に板状に形成される。さらに、前記PCR部900は、透明又は不透明な材質のプラスチック材質によって形成されるが、プラスチック材質の特性上、厚さが調節し易いので厚さの調節だけで熱伝達効率を増大させることができ、製作工程が単純であるので製造コストを節減することができる。
一方、前記活性物質は、増幅核酸と化学的に反応(結合)して電気化学的な信号を誘発する物質であり、前記電気化学的な信号とは、核酸の連続的な増幅によって連続的に検出及び測定される信号のことをいう。例えば、二本鎖核酸DNAの場合、全体的に陰電荷を帯びるが、活性物質が陽電荷を帯びる場合、核酸の連続的な増幅によって増幅核酸と前記活性物質とが反応して総電荷量の変化によって検出可能な信号が導き出される。このため、前記電気化学的な信号は、前記増幅核酸の陰電荷及び前記活性物質の陽電荷間の結合による総電流値の変化に起因し、前記活性物質は、イオン結合性物質のイオン化産物のうち陽イオン物質であってもよい。より具体的に、前記イオン結合性物質は、メチレンブルーであり、前記活性物質は、メチレンブルーのイオン化産物のうち陽イオン物質であってもよい。前記メチレンブルー(C16H18N3SCl・3H2O)は、溶媒に溶かすとイオン化されてC16H18N3S+及びCl−にイオン化され、前者の場合に硫黄原子(S)によって陽電荷を帯びる。二本鎖核酸DNAは、糖と、塩基及びリン酸からなるが、これらのうちリン酸基が陰電荷を帯びているため二本鎖核酸DNAは全体的に陰電荷を帯びる。メチレンブルーの陽イオンがDNAのリン酸基と結合して、メチレンブルーの見かけ上の拡散率よりも二本鎖核酸と結合したメチレンブルーの見掛け上の拡散率が減少され、これは、電流のピーク値を減少させる。このため、PCR周期が進行されることによって二本鎖核酸DNAが増幅され、二本鎖核酸DNAと結合されるメチレンブルーの量が増えて電流のピーク値が減少され、その結果、リアルタイムPCRの増幅産物及びメチレンブルー間の化学的な結合による電気的な信号を用いて増幅核酸をリアルタイムにて定量することができる。
前記検出電極950は、前記1以上の反応チャンネル921の内部における増幅核酸及び活性物質間の結合によって発生する電気化学的な信号を検出するように様々な材質によって形成されるが、例えば、金(Au)、コバルト(Co)、白金(Pt)、銀(Ag)、炭素ナノチューブ、グラフェン及び炭素よりなる群から選ばれる一種以上によって形成される。前記検出電極950は、前記反応チャンネル921の長手方向にその下断面を横切って繰り返し隔設されるが、前記熱ブロック100との熱接触に際して、前記検出電極950は、前記2以上のヒーター群110、120、130の間に配置される。図22を参照すると、前記検出電極950は、前記流入部931から流出部932までの反応チャンネル921領域に所定の間隔を隔てて繰り返し隔設されているが、このような構造を用いて、前記反応チャンネル921を長手方向に通過しながら順次に増幅される核酸から電気化学的な信号を繰り返し検出することができる。また、図23を参照すると、前記検出電極950は、前記反応チャンネル921の下断面に配置されていることを確認することができる。一方、図23を参照すると、前記PCR部900は、垂直断面図を基準として大きく3つの層に仕切られる。前記PCR部900は、前記検出電極950付き第1の板910と、前記第1の板910の上に配置されるが、前記1以上の反応チャンネル921が設けられた第2の板920と、前記第2の板920の上に配置されるが、前記流入部931及び流出部932が設けられた第3の板930と、を備える。
前記検出電極950が設けられた第1の板910の上部面は、前記第2の板920の下部面に貼着されて配置される。前記第1の板910が前記反応チャンネル921を有する第2の板920に貼着されて配置されることによって、前記反応チャンネル921に関する空間が確保され、さらに、前記反応チャンネル921の少なくともある領域(表面)に前記検出電極950が配置される。一方、前記第1の板910は、様々な材質によって形成されるが、好ましくは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる材質によって形成される。また、前記第1の板910の上部面には親水性物質(図示せず)が処理されてPCRを円滑に行うことができる。前記親水性物質の処理によって前記第1の板910の上に親水性物質を含む単一層が形成される。前記親水性物質は、様々な物質であるが、好ましくは、カルボキシ基−(COOH)、アミン基(−NH2)、ヒドロキシ基(−OH)及びスルホン基(−SH)よりなる群から選ばれるものであり、前記親水性物質の処理は、当業界における公知の方法によって行われる。
前記第2の板920の上部面は、前記第3の板930の下部面と接触されるように配置される。
前記第2の板920は、前記反応チャンネル921を有する。前記反応チャンネル921は、前記第3の板910に形成された流入部931及び流出部932に対応する部分と連結されて両末端に流入部931及び流出部932が設けられた1以上の反応チャンネル921を完成する。このため、前記反応チャンネル921にPCR試料及び試薬が取り込まれた後にPCRが行われる。また、前記反応チャンネル921は、使用目的及び範囲に応じて2以上存在する。なお、前記第2の板920は、様々な材質によって形成されるが、好ましくは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリスチレン(PS)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニールクロライド(PVC)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の材質によって形成される。また、前記第2の板920の厚さは様々であるが、10μm〜2000μmの範囲内である。さらに、前記反応チャンネル921の幅及び長さは様々であるが、好ましくは、前記反応チャンネル921の幅は0.001mm〜10mmの範囲内であり、前記反応チャンネル921の長さは1mm〜400mmの範囲内である。加えて、前記第2の板920の内壁は、DNA、たんぱく質の吸着を防ぐためにシラン系、ウシ血清アルブミン(BSA)などの物質によってコーティングされ、前記物質の処理は当業界における公知の方法によって行われる。
前記第3の板930の下部面は、前記第2の板920の上部面に配置される。前記第3の板930は、前記第2の板920に形成された反応チャンネル921上のある領域に形成された流入部931及び他のある領域に形成された流出部932を備える。前記流入部931は、PCR試料及び試薬が流入する部分である。前記流出部932は、PCRが終わった後にPCR産物が流出される部分である。このため、前記第3の板930は、前記第2の板920に形成された反応チャンネル921を覆うが、前記流入部931及び流出部932は、前記反応チャンネル921の流入部及び流出部の役割を果たす。さらに、前記第3の板930は、様々な材質によって形成されるが、好ましくは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる材質によって形成される。加えて、前記流入部931は、様々な大きさを有するが、好ましくは、 1.0mm〜3.0mmの範囲内の直径を有する。また、前記流出部932は、様々な大きさを有するが、好ましくは、1.0mm〜1.5mmの範囲内の直径を有する。さらに、前記流入部931及び流出部932は、別途のカバー手段(図示せず)を備えて、前記反応チャンネル921内においてPCR試料及び試薬に対するPCRが行われるときに溶液が漏れ出ることを防ぐことができる。前記カバー手段は、様々な形状及び大きさに様々な材質によって形成される。また、前記第3の板330の厚さは様々であるが、好ましくは、0.1mm〜2.0mmの範囲内である。なお、前記流入部931及び前記流出部932は、2以上存在する。
一方、前記PCR部900は、機械的な加工を用いて前記流入部931及び前記流出部932を形成して前記第3の板930を提供する段階と、前記第3の板930の下部面と対応する大きさを有する板材に前記第3の板930の流入部931と対応する部分から前記第3の板930の流出部932に対応する部分まで機械的な加工を用いて反応チャンネル921を形成して第2の板920を提供する段階と、前記第2の板920の下部面と対応する大きさを有する板材の上部面に表面処理加工を施して親水性物質922によって形成された表面を形成して第1の板910を提供する段階と、前記第3の板930の下部面を前記第2の板920の上部面に貼着し、前記第2の板920の下部面を前記第1の板910の上部面に貼着する段階と、を含む方法によって容易に製造される。前記第3の板930の流入部931及び流出部932、及び前記第2の板920の反応チャンネル921は、射出成形、ホットエンボシング、鋳造及びレーザーアブレーションよりなる群から選ばれる加工方法によって製造される。また、前記第1の板910の表面の親水性物質922は、酸素及びアルゴンプラズマ処理、コロナ放電処理及び界面活性剤の塗布よりなる群から選ばれる方法によって処理され、当業界における公知の方法によって行われる。さらに、前記第3の板930の下部面と前記第2の板920の上部面、及び前記第2の板920の下部面と前記第1の板910の上部面は、熱貼り合わせ、超音波融着、溶媒貼り合わせ、熱板溶着、UV貼り合わせ及びプレス貼り合わせ工程によって貼り合わせられ、当業界における公知の方法によって行われる。前記第3の板930と第2の板920との間及び前記第2の板920と第1の板910との間には両面接着剤又は熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂500が処理される。
一方、図22の「a」部分を拡大した図24及び図25を参照すると、前記検出電極950は、様々な構造を有する。例えば、図24に示すように、前記増幅核酸及び活性物質間の結合が起こる作業電極950a及び前記増幅核酸及び活性物質間の結合が起こらないことによって電極電位の測定基準となる基準電極950bを備える2電極モジュール、又は、図25に示すように、前記作業電極950aと、前記基準電極950b及び前記作業電極から発生する電流が流れる対電極950cを備える3電極モジュールとして製造される。このように、前記検出電極950が、上述したように、多電極モジュールの構造を有するように製造されれば、前記反応チャンネル921の内部において発生する電気化学的な信号の感度を高めることができ、しかも、発生信号の検出及び測定を容易に行うことができる。
図26は、本発明の第1の実施形態による補償型パターンが適用されたヒーターが繰り返し配置されたPCR熱ブロック100及び図22乃至図25のPCR部900を有するPCR装置によって行われるPCRを示す。
図26を参照すると、前記PCR部900は、前記PCR熱ブロック100の上に配置され、前記検出電極950は、前記熱ブロック100の上部表面に繰り返し配置された第1のヒーター及び第2のヒーターの間に繰り返し配置されている。前記PCR部900及びここに配設された構成要素については、上述した通りである。
前記電力供給源400は、前記電力供給部200に電力を供給するためのモジュールであり、前記電力供給部200の第1の配線210及び第2の配線220とそれぞれ連結される。例えば、PCRに際して、前記電力供給源400の第1の電力ポート(図示せず)は前記第1の配線210と電気的に接続され、前記電力供給源400の第2の電力ポート(図示せず)は前記第2の配線220と電気的に接続される。次いで、PCRを行うためのユーザーの指示がある場合、前記電力供給源400は、前記第1の配線210及び前記第2の配線220にそれぞれ電力を供給して前記PCR熱ブロック100の第1のヒーター及び第2のヒーターを速やかに加熱することができ、各ヒーターが所定の温度に達すると、電力供給量を制御して前記所定の温度を維持する。例えば、前記所定の温度は、前記第1のヒーターにおいてはPCR変性段階温度(85℃〜105℃、好ましくは、95℃)であり、且つ、前記第2のヒーターにおいてはPCRアニーリング/延長段階温度(50℃〜80℃、好ましくは、72℃)であるか、あるいは、前記第1のヒーターにおいてはPCRアニーリング/延長段階温度(50℃〜80℃、好ましくは、72℃又は60℃)であり、且つ、前記第2のヒーターにおいてはPCR変性段階温度(85℃〜105℃、好ましくは、95℃)である。
前記ポンプ500は、前記PCR部900の1以上の反応チャンネル921内において流動する流体の流量及び流速を制御するためのモジュールであり、正圧ポンプ又は負圧ポンプであってもよく、例えば、シリンジポンプであってもよい。前記ポンプ500は、前記反応チャンネル921の一部分に駆動自在に配置されるが、好ましくは、前記反応チャンネル921の両末端に形成された流入部931及び/又は流出部932に連結されるように配置される。前記ポンプ500が前記流入部931及び/又は流出部932に連結されるように配置された場合、ポンプの役割を果たすだけではなく、前記流入部931及び/又は流出部932を介して試料及び試薬溶液が漏れ出ることを防ぐ栓の役割も果たす。また、前記反応チャンネル921内において流動する流体、すなわち、試料及び試薬溶液の流量及び流速を一方向に制御しようとする場合、前記ポンプ500は、前記流入部931及び前記流出部932のうちのいずれか一方にのみ連結されるように配置され、残りの一方には通常の栓が密封状態で連結され、前記反応チャンネル921内において流動する流体、すなわち、試料及び試薬溶液の流量及び流速を両方向に制御しようとする場合には、前記ポンプ500は、前記流入部931及び前記流出部932の両方に連結されるように配置される。
前記リアルタイムPCR装置内におけるPCR溶液の核酸増幅反応は、例えば、下記の段階を経て行われる。
1.所望の二本鎖標的DNA、増幅しようとする特定の塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドプライマー、DNA重合酵素、デオキシリボヌクレオチド3リン酸(dNTP)、PCR緩衝液を含むPCR溶液を準備する。
2.前記PCR溶液をPCR部900に取り込む。この場合、前記PCR溶液は、前記流入部931を介して前記PCR部900の内部の反応チャンネル921に配置される。
3.前記電力供給部200、具体的に、第1の配線210及び第2の配線220を前記電力供給源400とそれぞれ連結し、前記PCR部900の前記流入部931及び前記流出部932をポンプ500と密封状態で連結する。
4.前記電力供給部400に電力供給の指示をして前記第1の配線210及び前記第2の配線220を用いて前記第1のヒーター及び前記第2のヒーターを発熱させ、特定の温度、例えば、第1のヒーターの場合にPCR変性段階温度(95℃)及び第2のヒーターの場合にPCRアニーリング/延長段階温度(72℃)を維持する。
5.前記流入部931と連結されたポンプ500によって正圧が提供されるか、あるいは、前記流出部932と連結されたポンプ500によって負圧が提供されれば、前記試料及び試薬溶液を前記反応チャンネル921の内部において水平方向に流動させる。この場合、前記試料及び試薬溶液の流量及び流速は、前記ポンプ500によって提供される正圧又は負圧の強さを調節することによって制御される。
前記段階を行うことによって、前記PCR溶液は、前記反応チャンネル921の流入部931の末端から流出部932の末端まで前記第1のヒーターの上側との対応部分及び前記第2のヒーターの上側との対応部分を長手方向に移動しながらPCRを行う。図26を参照すると、前記PCR溶液は、前記第1のヒーター及び前記第2のヒーターを有するヒーターユニットが10回繰り返し配置された熱ブロック100から熱の供給を受けて前記第1のヒーターの上側との対応部分におけるPCR変性段階及び前記第2のヒーターの上側との対応部分におけるPCRアニーリング/延長段階を経て10回のPCR循環周期を終える。次いで、選択的に、前記PCR溶液は、前記反応チャンネル921の流出部932の末端から流入部931の末端まで前記第1のヒーターの上側との対応部分及び前記第2のヒーターの上側との対応部分を長手方向に逆移動しながらPCRを再び行う。
図27は、本発明の第1の実施形態による補償型パターンが適用されたヒーターが繰り返し配置されたPCR熱ブロック100と、図22乃至図25のPCR部900と、検出電極950及び信号測定モジュール800を備えるPCR装置によって行われる電気化学的なリアルタイムPCRを示す。
図27を参照すると、本発明の一実施形態によるPCR装置は、第1のヒーター110及び第2のヒーター120が水平方向に繰り返し配置されたPCR熱ブロック100と、前記第1のヒーター110及び第2のヒーター120間の空間に検出電極950が対応するように繰り返し配置されたPCR部900と、前記チップホルダー(図示せず)の連結ポート(図示せず)と電気的に接続されて前記PCR部900の反応チャンネル921の内部において発生する電気化学的な信号をリアルタイムにて測定する電気化学的信号測定モジュール800と、図示はしないが、電力供給部及びポンプなどを備える。前記電気化学的信号測定モジュール800は、前記チップホルダーの連結ポートと電気的な接続手段700、例えば、リード電線を介して電気的に疎通可能なように連結される。このため、前記PCR部900の反応チャンネル921の内部における順次的な核酸増幅によって繰り返し発生する電気化学的な信号は、前記PCR部900の検出電極950によって順次に検出され、前記検出された信号は、前記チップホルダーの連結ポートと前記電気的な接続手段700を経て前記電気化学的信号測定モジュール800において測定され、さらに、加工又は分析される。前記電気化学的信号測定モジュール800は、様々であるが、陽極溶出ボルタンメトリー(anodic stripping voltammetry;ASV)、クロノアンペロメトリ(chronoamperometry;CA)、サイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry)、矩形波ボルタンメトリー(square wave voltammetry;SWV)、示差パルスボルタンメトリー(differential pulse voltammetry;DPV)及びインピーダンス計よりなる群から選ばれる。このため、本発明の一実施形態によるリアルタイムPCR装置によれば、PCRを行うに当たって核酸増幅過程をリアルタイムにて測定及び分析することができる。この場合、前記PCR溶液は、光学的なリアルタイムPCR装置とは異なり、別途の蛍光物質が添加される必要がない。なお、本発明の一実施形態によるリアルタイムPCR装置によって核酸増幅反応がリアルタイムにて測定される段階を確認することができる。例えば、PCR溶液は、前記反応チャンネル921内における前記第1のヒーター110の上側との対応部分301及び前記第2のヒーター120の上側との対応部分302を連続的に通過しながらPCR変性段階及びPCRアニーリング/延長段階を行うが、この場合、PCR溶液は、前記第1のヒーター110と前記第2のヒーター120との間、及び前記第1のヒーター110と前記第2のヒーター120を有するヒーターユニットの間に繰り返し配置された前記検出電極950領域を通過する。前記PCR溶液が前記検出電極950の上側との対応部分を通過するとき、流体を制御して前記PCR溶液の流速を遅らせたりしばらくの間停止状態に維持した後に増幅核酸及び活性物質間の結合によって発生する電気化学的な信号を前記検出電極950を用いて順次にリアルタイムにて検出及び測定することができる。このため、PCRの各循環周期が進行される間に前記反応チャンネル921内において(蛍光物質及び光検出システムなしに)核酸の増幅による反応結果をリアルタイムにてモニターリングして標的核酸の量をリアルタイムにて検出及び測定することができる。
図28乃至図31は、図12乃至図16のPCR熱ブロックと熱接触する他のタイプのPCR部900を示す。
図28乃至図31に示すPCR部900は、前記反応チャンネルの長手方向にその断面を横切って繰り返し隔設されるが、前記反応チャンネルの内部のある領域に形成されて増幅標的核酸のある領域と相補的に結合し得る捕捉プローブが表面処理された固定化層及び前記反応チャンネルの内部の他のある領域に形成されて電気化学的な信号を検出する検出電極を有するものであり、金属ナノ粒子及び前記金属ナノ粒子に連結されるが、前記増幅標的核酸の他のある領域と相補的に結合し得る信号プローブを有する複合体を備える。
前記PCR部900は、前記PCR熱ブロック100の上部に配置されたものであり、両末端に流入部931及び流出部932が設けられた1以上の反応チャンネル921と、前記反応チャンネル921の長手方向にその断面を横切って繰り返し隔設されるが、前記反応チャンネル921の内部のある領域に形成されて増幅標的核酸のある領域と相補的に結合し得る補足プローブが表面処理された固定化層940及び前記反応チャンネル921の内部の他のある領域に形成されて電気化学的な信号を検出する検出電極950を備える。
前記反応チャンネル921は、PCR溶液によってPCRが行われる空間であり、前記PCR部900の内部に形成される。前記反応チャンネル921は、空き円柱状、バー状、四角柱状など様々な形状及び構造を有する。前記反応チャンネル921は、その内部のある領域に配置されるが、増幅標的核酸のある領域と相補的に結合し得る補足プローブが表面処理された固定化層940と、その内部の他のある領域に配置されるが、電気化学的な信号を検出する検出電極950と、を備えるが、前記固定化層940及び前記検出電極950は、前記反応チャンネル921の内部における様々な個所に配置されるが、図29に示すように、上下又は左右に向かい合うように配置されることが好ましい。さらに、前記反応チャンネル921は、その内部に金属ナノ粒子及び前記金属ナノ粒子に連結されるが、前記増幅標的核酸の他のある領域と相補的に結合し得る信号プローブを有する複合体を収容する。この場合、前記複合体は、鋳型核酸などを含むPCR試料を取り込む前に前記反応チャンネル921に予め収容されてもよく、プライマー、重合酵素など含むPCR試薬に含まれている状態で前記反応チャンネル23に一緒に取り込まれる。前記固定化層940は、その片面に補足プローブが蒸着されて露出されるように様々な材質、例えば、シリコン、プラスチック、ガラス、金属材質などによって形成される。この場合、前記固定化層940の表面には、例えば、補足プローブが蒸着される前にアミン(NH3 +)、アルデヒド(COH)、カルボキシル基(COOH)などの物質が先に表面処理されてもよい。前記補足プローブは、前記増幅標的核酸の一部位(領域)と相補的に結合するように設けられ、金属ナノ粒子と結合して複合体を形成する。前記金属ナノ粒子は様々であるが、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、金(Au)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)、砒素(As)、セレニウム(Se)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)及び銀(Ag)よりなる群から選ばれる一種以上である。前記信号プローブは、前記増幅標的核酸のある領域と相補的に結合し得るように設けられるが、この場合、前記増幅標的核酸において、前記信号プローブの相補的な結合領域は、前記補足プローブの相補的な結合領域とは異なる。このため、前記補足プローブ及び信号プローブは、増幅標的核酸に一緒に相補的に結合し得る。すなわち、PCRが行われながら前記反応チャンネル921の内部において標的核酸が増幅されれば、増幅標的核酸は、前記固定化層940に表面処理された補足プローブと相補的に結合し、且つ、金属ナノ粒子に連結された信号プローブと相補的に結合して前記金属ナノ粒子を前記固定化層940の近くの領域に集中させる。その結果、前記金属ナノ粒子は、前記検出電極26に達せず、これによって、前記金属ナノ粒子と前記検出電極26との間の電流の変化(減少)が引き起こされて標的核酸の増幅に伴う検出可能な電気化学的な信号が発生する。一方、前記増幅標的核酸、前記補足プローブ及び前記信号プローブは、一本鎖DNAであってもよい。
前記検出電極950は、前記反応チャンネル921の少なくともある領域に配置されるが、前記反応チャンネル921の内部において発生する電気化学的な信号を検出するように設けられる。前記検出電極950は、上記の機能を行うために様々な材質によって形成されるが、例えば、金(Au)、コバルト(Co)、白金(Pt)、銀(Ag)、炭素ナノチューブ、グラフェン及び炭素よりなる群から選ばれる一種以上によって形成される。また、前記検出電極950は、前記反応チャンネル921の内部において発生する電気化学的な信号を効率よく検出するために、様々な形状及び構造を有するが、例えば、図28に示すように、前記反応チャンネル921の内部の表面に沿って配置される金属製の板状を呈する。一方、前記電気化学的な信号は、後述する電気化学的信号測定モジュールによって測定されるが、前記電気化学的信号測定モジュールは様々であり、陽極溶出ボルタンメトリー(ASV)、クロノアンペロメトリ(CA)、サイクリックボルタンメトリー、矩形波ボルタンメトリー(SWV)、示差パルスボルタンメトリー(DPV)及びインピーダンス計よりなる群から選ばれる。前記電気化学的な信号は、前記増幅標的核酸が前記補足プローブ及び信号プローブと相補的に結合することによって発生する電流の変化に起因する。本発明の一実施形態によるPCR装置の電気化学的な信号の発生過程は、下記の通りである。第1の段階は、PCRの開始前であり、固定化層に表面処理された補足プローブと信号プローブ及び金属ナノ粒子を含む複合体の元の状態を含み、第2の段階は、前記検出電極と金属ナノ粒子との間の還元又は酸化によって発生する電流の変化(信号)を含み、第3の段階は、PCRの開始後であり、増幅標的核酸が前記補足プローブ及び前記複合体(Signaling probe−metal nano particle)の信号プローブと結合して電流の変化の減少(信号の減少)を引き起こす段階を含む。具体的に、前記複合体 の金属ナノ粒子に還元電圧が加えられると、前記金属ナノ粒子は前記検出電極の近くの表面に集まって蓄積層を形成しながら還元され (Accumulation of metal nano particle)、次いで、前記検出電極に電圧を印加すると、前記還元金属ナノ粒子が酸化されながら電流の変化、すなわち、信号が発生し、前記電流の変化は、酸化電流ピークが示す電圧値を用いて容易に測定することができる。この場合、前記反応チャンネル921の内部における電流の変化値、すなわち、電気化学的な信号は、標的核酸の変化量を示す。なお、前記金属ナノ粒子が酸化される電圧値は、金属ナノ粒子の種類ごとに異なるため、2以上の金属ナノ粒子を用いる場合に2以上の試料に対する同時信号の検出も行うことができる。次いで、PCRが行われると、鋳型核酸から標的核酸が増幅され、前記増幅標的核酸は、前記補足プローブ及び前記複合体の信号プローブと相補的に結合することによって、上述したように前記複合体の金属ナノ粒子の電極表面蓄積(Accumulation of metal nanoparticle)を妨げ、前記電流値を減少させ、さらに、PCR周期が進行されるにつれて増幅標的核酸の量が増加し、これに伴い、前記補足プローブ及び前記複合体の信号プローブ間の相補的な結合(Hybridized target DNA)も増大されて前記電流値(信号)はなお一層減少される。このため、上記の電流の減少現象、すなわち、電気化学的な信号を検出及び測定することによってリアルタイムPCRが行われる。
図28及び図29を参照すると、前記固定化層940及び前記検出電極950は、前記反応チャンネル921の長手方向にその断面を横切って繰り返し隔設されるが、前記PCR熱ブロック100との熱接触に際して、前記固定化層940及び前記検出電極950は、前記2以上のヒーター群110、120、130の間に配置される。前記PCR部900の平面図である図28を参照すると、前記固定化層940及び検出電極950は、前記流入部931から流出部932までの反応チャンネル921領域に所定の間隔を隔てて繰り返し配置されているが、このような構造を用いて、前記反応チャンネル921を長手方向に通過しながら順次に増幅される核酸から電気化学的な信号を繰り返し検出することができる。また、前記PCR部900の垂直断面図である図29を参照すると、前記固定化層940及び検出電極950は、前記反応チャンネル921の断面に向かい合うように配置されたことを確認することができるが、前記固定化層940及び検出電極950の位置は上下に変動可能である。
図29を参照すると、前記PCR部900は、垂直断面図を基準として大きく3つの層に仕切られる。前記PCR部900は、前記検出電極950付き第1の板910と、前記第1の板910の上に配置されるが、前記1以上の反応チャンネル921が設けられた第2の板920と、前記第2の板920の上に配置されるが、前記固定化層940と、前記流入部931及び流出部932が設けられた第3の板930と、を備える。この場合、前記検出電極950が前記第3の板930に配置され、前記固定化層940が前記第1の板910に配置されてもよいということはいうまでもない。
前記検出電極950が設けられた第1の板910の上部面は、前記第2の板920の下部面に貼着されて配置される。前記第1の板910が前記反応チャンネル921を有する第2の板920に貼着されて配置されることによって、前記反応チャンネル921に関する空間が確保され、さらに、前記反応チャンネル921の少なくともある領域(表面)に前記検出電極950が配置される。一方、前記第1の板910は、様々な材質によって形成されるが、好ましくは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる材質によって形成される。また、前記第1の板910の上部面には親水性物質(図示せず)が処理されてPCRを円滑に行うことができる。前記親水性物質の処理によって前記第1の板910の上に親水性物質を含む単一層が形成される。前記親水性物質は、様々な物質であるが、好ましくは、カルボキシ基−(COOH)、アミン基(−NH2)、ヒドロキシ基(−OH)及びスルホン基(−SH)よりなる群から選ばれるものであり、前記親水性物質の処理は、当業界における公知の方法によって行われる。
前記第2の板920の上部面は、前記第3の板930の下部面と接触されるように配置される。前記第2の板920は、前記反応チャンネル921を有する。前記反応チャンネル921は、前記第3の板910に形成された流入部931及び流出部932に対応する部分と連結されて両末端に流入部931及び流出部932が設けられた1以上の反応チャンネル921を完成する。このため、前記反応チャンネル921にPCR試料及び試薬が取り込まれた後にPCRが行われる。また、前記反応チャンネル921は、使用目的及び範囲に応じて2以上存在する。なお、前記第2の板920は、様々な材質によって形成されるが、好ましくは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリスチレン(PS)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニールクロライド(PVC)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の材質によって形成される。また、前記第2の板920の厚さは様々であるが、100μm〜200μmの範囲内である。さらに、前記反応チャンネル921の幅及び長さは様々であるが、好ましくは、前記反応チャンネル921の幅は0.001mm〜10mmの範囲内であり、前記反応チャンネル921の長さは1mm〜400mmの範囲内である。加えて、前記第2の板920の内壁は、DNA、たんぱく質の吸着を防ぐためにシラン系、ウシ血清アルブミン(BSA)などの物質によってコーティングされ、前記物質の処理は当業界における公知の方法によって行われる。
前記第3の板930の下部面は、前記第2の板920の上部面に配置される。前記第3の板930は、前記第2の板920に形成された反応チャンネル921の上に形成された固定化層940と、流入部931及び流出部932を備える。前記流入部931は、PCR試料及び試薬が流入する部分である。前記流出部932は、PCRが終わった後にPCR産物が流出される部分である。このため、前記第3の板930は、前記第2の板920に形成された反応チャンネル921を覆うが、前記流入部931及び流出部932は、前記反応チャンネル921の流入部及び流出部の役割を果たす。さらに、前記第3の板930は、様々な材質によって形成されるが、好ましくは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる材質によって形成される。加えて、前記流入部931は、様々な大きさを有するが、好ましくは、 1.0mm〜3.0mmの範囲内の直径を有する。また、前記流出部932は、様々な大きさを有するが、好ましくは、1.0mm〜1.5mmの範囲内の直径を有する。さらに、前記流入部931及び流出部932は、別途のカバー手段(図示せず)を備えて、前記反応チャンネル921内においてPCR試料及び試薬に対するPCRが行われるときに溶液が漏れ出ることを防ぐことができる。前記カバー手段は、様々な形状及び大きさに様々な材質によって形成される。また、前記第3の板330の厚さは様々であるが、好ましくは、0.1mm〜2.0mmの範囲内である。なお、前記流入部931及び前記流出部932は、2以上存在する。
一方、前記PCR部900は、機械的な加工を用いて前記流入部931及び前記流出部932を形成して前記第3の板930を提供する段階と、前記第3の板930の下部面と対応する大きさを有する板材に前記第3の板930の流入部931と対応する部分から前記第3の板930の流出部932に対応する部分まで機械的な加工を用いて反応チャンネル921を形成して第2の板920を提供する段階と、前記第2の板920の下部面と対応する大きさを有する板材の上部面に表面処理加工を施して親水性物質922によって形成された表面を形成して第1の板910を提供する段階と、前記第3の板930の下部面を前記第2の板920の上部面に貼着し、前記第2の板920の下部面を前記第1の板910の上部面に貼着する段階と、を含む方法によって容易に製造される。前記第3の板930の流入部931及び流出部932、及び前記第2の板920の反応チャンネル921は、射出成形、ホットエンボシング、鋳造及びレーザーアブレーションよりなる群から選ばれる加工方法によって製造される。また、前記第1の板910の表面の親水性物質922は、酸素及びアルゴンプラズマ処理、コロナ放電処理及び界面活性剤の塗布よりなる群から選ばれる方法によって処理され、当業界における公知の方法によって行われる。さらに、前記第3の板930の下部面と前記第2の板920の上部面、及び前記第2の板920の下部面と前記第1の板910の上部面は、熱貼り合わせ、超音波融着、溶媒貼り合わせ、熱板溶着、UV貼り合わせ及びプレス貼り合わせ工程によって貼り合わせられ、当業界における公知の方法によって行われる。前記第3の板930と第2の板920との間及び前記第2の板920と第1の板910との間には両面接着剤又は熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂500が処理される。
一方、図28の「a」部分を拡大した図30及び図31を参照すると、前記検出電極950は、様々な構造を有する。例えば、図30に示すように、酸化又は還元反応が起こる作業電極950a及び酸化又は還元反応が起こらない個順電極950bを備える2電極モジュール、又は、図31に示すように、前記作業電極950aと、前記基準電極950b及び前記指示電極から発生する電子バランスを調節する対電極950cを備える3電極モジュールとして製造される。このように、前記検出電極950が、上述したように、多電極モジュールの構造を有するように製造されれば、前記反応チャンネル921の内部において発生する電気化学的な信号の感度を高めることができ、しかも、発生信号の検出及び測定を容易に行うことができる。
図32は、本発明の第1の実施形態による補償型パターンが適用されたヒーターが繰り返し配置されたPCR熱ブロック100及び図28乃至図31のPCR部900を有するPCR装置によって行われるPCRを示す。
図32を参照すると、前記PCR部900は、前記PCR熱ブロック100の上に配置され、具体的に、前記検出電極950は、前記PCR熱ブロック100の上部表面に繰り返し配置された第1のヒーター及び第2のヒーターの間に繰り返し配置されている。前記電力供給源400は、前記電力供給部200に電力を供給するためのモジュールであり、前記電力供給部200の第1の配線210及び第2の配線220とそれぞれ連結される。例えば、PCRを行うに当たって前記電力供給源400の第1の電力ポート(図示せず)は前記第1の配線210と電気的に接続され、前記電力供給源400の第2の電力ポート(図示せず)は前記第2の配線220と電気的に接続される。次いで、PCRを行うためのユーザーの指示がある場合、前記電力供給源400は、前記第1の配線210及び前記第2の配線220にそれぞれ電力を供給して前記PCR熱ブロックの第1のヒーター110及び第2のヒーター120を速やかに加熱することができ、各ヒーター110、120が所定の温度に達すると、電力供給量を制御して前記所定の温度を維持する。例えば、前記所定の温度は、前記第1のヒーター110においてはPCR変性段階温度(85℃〜105℃、好ましくは、95℃)であり、且つ、前記第2のヒーター120においてはPCRアニーリング/延長段階温度(50℃〜80℃、好ましくは、72℃)であるか、あるいは、前記第1のヒーター110においてはPCRアニーリング/延長段階温度(50℃〜80℃、好ましくは、72℃又は90℃)であり、且つ、前記第2のヒーター120においてはPCR変性段階温度(85℃〜105℃、好ましくは、95℃)である。
前記ポンプ500は、前記PCR部900の1以上の反応チャンネル921内において流動する流体の流量及び流速を制御するためのモジュールであり、正圧ポンプ又は負圧ポンプであってもよく、例えば、シリンジポンプであってもよい。前記ポンプ500は、前記反応チャンネル921の一部分に駆動自在に配置されるが、好ましくは、前記反応チャンネル921の両末端に形成された流入部931及び/又は流出部932に連結されるように配置される。前記ポンプ500が前記流入部931及び/又は流出部932に連結されるように配置された場合、ポンプの役割を果たすだけではなく、前記流入部931及び/又は流出部932を介して試料及び試薬溶液が漏れ出ることを防ぐ栓の役割も果たす。また、前記反応チャンネル921内において流動する流体、すなわち、試料及び試薬溶液の流量及び流速を一方向に制御しようとする場合、前記ポンプ500は、前記流入部931及び前記流出部932のうちのいずれか一方にのみ連結されるように配置され、残りの一方には通常の栓が密封状態で連結され、前記反応チャンネル921内において流動する流体、すなわち、試料及び試薬溶液の流量及び流速を両方向に制御しようとする場合には、前記ポンプ500は、前記流入部931及び前記流出部932の両方に連結されるように配置される。
前記リアルタイムPCR装置内におけるPCR溶液の核酸増幅反応は、例えば、下記の段階を経て行われる。
1.所望の二本鎖標的DNA、増幅しようとする特定の塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドプライマー、DNA重合酵素、デオキシリボヌクレオチド3リン酸(dNTP)、PCR緩衝液を含むPCR溶液を準備する。
2.前記PCR溶液をPCR部900に取り込む。この場合、前記PCR溶液は、前記流入部931を介して前記PCR部900の内部の反応チャンネル921に配置される。
3.前記電力供給部200、具体的に、第1の配線210及び第2の配線220を前記電力供給源400とそれぞれ連結し、前記PCR部900の前記流入部931及び前記流出部932をポンプ500と密封状態で連結する。
4.前記電力供給部400に電力供給の指示をして前記第1の配線210及び前記第2の配線220を用いて前記第1のヒーター110及び前記第2のヒーター120を発熱させ、特定の温度、例えば、第1のヒーター110の場合にPCR変性段階温度(95℃)及び第2のヒーター120の場合にPCRアニーリング/延長段階温度(72℃)を維持する。
5.前記流入部931と連結されたポンプ500によって正圧が提供されるか、あるいは、前記流出部932と連結されたポンプ500によって負圧が提供されれば、前記試料及び試薬溶液を前記反応チャンネル921の内部において水平方向に流動させる。この場合、前記試料及び試薬溶液の流量及び流速は、前記ポンプ500によって提供される正圧又は負圧の強さを調節することによって制御される。
前記段階を行うことによって、前記PCR溶液は、前記反応チャンネル921の流入部931の末端から流出部932の末端まで前記第1のヒーター110の上側との対応部分及び前記第2のヒーター120の上側との対応部分を長手方向に移動しながらPCRを行う。前記PCR溶液は、前記第1のヒーター110及び前記第2のヒーター120を有するヒーターユニットが10回繰り返し配置された熱ブロック100から熱の供給を受けて前記第1のヒーター110の上側との対応部分301におけるPCR変性段階及び前記第2のヒーター120の上側との対応部分302におけるPCRアニーリング/延長段階を経て10回のPCR循環周期を終える。次いで、選択的に、前記PCR溶液は、前記反応チャンネル921の流出部932の末端から流入部931の末端まで前記第1のヒーター110の上側との対応部分及び前記第2のヒーター120の上側との対応部分を長手方向に逆移動しながらPCRを再び行う。
図33は、本発明の第1の実施形態による補償型パターンが適用されたヒーターが繰り返し配置されたPCR熱ブロック100と、図28乃至図31のPCR部900と、固定化層940と、検出電極950及び信号測定モジュール800を備えるPCR装置によって行われる電気化学的なリアルタイムPCRを示す。
図33を参照すると、前記本発明の一実施形態によるPCR装置は、第1のヒーター110及び第2のヒーター120が水平方向に繰り返し配置されたPCR熱ブロック100と、前記第1のヒーター110及び第2のヒーター120間の空間に固定化層940及び検出電極950が対応するように繰り返し配置されたPCR部900と、を備えるが、前記チップホルダー(図示せず)の連結ポート(図示せず)と電気的に接続されて前記PCR部900の反応チャンネル921の内部において発生する電気化学的な信号をリアルタイムにて測定する電気化学的信号測定モジュール800と、図示はしないが、電力供給部及びポンプなどを備える。前記電気化学的信号測定モジュール800は、前記チップホルダーの連結ポートと電気的な接続手段700、例えば、リード電線を介して電気的に疎通可能なように連結される。このため、前記PCR部900の反応チャンネル921の内部における順次的な核酸増幅によって繰り返し発生する電気化学的な信号は、前記PCR部900の検出電極950によって順次に検出され、前記検出された信号は、前記チップホルダーの連結ポートと前記電気的な接続手段700を経て前記電気化学的信号測定モジュール800において測定され、さらに、加工又は分析される。前記電気化学的信号測定モジュール800は、様々であるが、陽極溶出ボルタンメトリー(ASV)、クロノアンペロメトリ(CA)、サイクリックボルタンメトリー、矩形波ボルタンメトリー(SWV)、示差パルスボルタンメトリー(DPV)及びインピーダンス計よりなる群から選ばれる。このため、図33に示す本発明の一実施形態によるリアルタイムPCR装置によれば、PCRを行うに当たって核酸増幅過程をリアルタイムにて測定及び分析することができる。この場合、前記PCR溶液は、従来のリアルタイムPCR装置とは異なり、別途の蛍光物質が添加される必要がない。例えば、PCR溶液は、前記反応チャンネル921内における前記第1のヒーター110の上側との対応部分301及び前記第2のヒーター120の上側との対応部分302を連続的に通過しながらPCR変性段階及びPCRアニーリング/延長段階を行うが、この場合、PCR溶液は、前記第1のヒーター110と前記第2のヒーター120との間、及び前記第1のヒーター110と前記第2のヒーター120を有するヒーターユニットの間に繰り返し配置された前記検出電極950領域を通過する。前記PCR溶液が前記検出電極950の上側との対応部分を通過するとき、流体を制御して前記PCR溶液の流速を遅らせたりしばらくの間停止状態に維持した後に増幅標的核酸と、前記補足プローブ及び前記複合体の信号プローブ間の相補的な結合によって発生する電気化学的な信号(電流の変化)を前記検出電極950を用いて順次にリアルタイムにて検出及び測定することができる。このため、PCRの各循環周期が進行される間に前記反応チャンネル921内において(蛍光物質及び光検出システムなしに)核酸の増幅による反応結果をリアルタイムにてモニターリングして標的核酸の量をリアルタイムにて検出及び測定することができる。