JP6068050B2 - 透明形状記憶ゲルとそれを用いたレンズおよびレンズの焦点調節方法 - Google Patents

透明形状記憶ゲルとそれを用いたレンズおよびレンズの焦点調節方法 Download PDF

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本発明は、透明形状記憶ゲルとそれを用いたレンズおよびレンズの焦点調節方法に関するものである。
従来、レンズは各種の分野に使用されているが、ほとんどのレンズは硬く変形することができないことから、焦点調節と小型化の要請を満足する変形機能が求められている。
こうした点を改善する技術として、ゲルを材料とするゲルレンズが提案されている(特許文献1)。
しかしながら、ゲル材料は脆弱であることが多く、レンズ形状を作製しても小さい力で破損してしまう。また合成するのに時間がかかり、合成後に歪みや破損などの欠陥が出る場合が多い。
またゲルレンズの変形も困難をともなう。ゲルレンズは小型化をすることに意味があり、その変形機構にも小型化が必要になる。しかしモータや歯車などが必要になるため大きく、複雑なシステムになる。またゲルと変形装置の接着が困難であり、多孔質物質との接着に成功したとしてもゲルレンズを所望のとおりに変形させることは難しい。
このように、ゲルレンズは生体高分子とは異なり強度が非常に低く、変形をさせると非常に壊れやすく実用的ではなかった。またゲルで曲面を制御することは難しく、曲面を維持することも難しい。
また、ゲルレンズの材料としては、形状記憶ゲル(Shape-memory gels; SMG)の適用も考えられる。形状記憶ゲルは結晶性の成分とアモルファスゲルの成分を合わせ持つ複合材料である(非特許文献1、特許文献2)。ゲルを転移温度にまで加熱すると、ゲルの結晶成分が融解し、ヤング率は急激に低下し、ゲルは柔らかくなる。柔らかい状態では変形することが可能になる。ゲルを低温条件に置くと結晶性の成分が結晶化するため、変形させた形のまま固定することができる。その後、また転移温度までに加熱すると元の形に戻る。
従来、形状記憶ゲルは、疎水性のステアリル酸アクリレート(SA)と親水性のアクリル酸(AA)の2種類のモノマーを、メチレンビスアクリルアミド(MBAA)で架橋させた共重合ゲルなどが知られている。
特開平6−27305号公報 特開平7−292040号公報
Y. Osada, A. Matsuda, Nature, 376, 219 (1995)
しかしながら、従来の形状記憶ゲルは、いずれも透明性が低く、合成の熱などで白濁していた。そのためレンズとしての使用は困難であった。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、透明な形状記憶ゲルと、強度が高く変形および焦点調整が容易なレンズとその焦点調節方法を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明の透明形状記憶ゲルは、アクリルアミド系親水性モノマーおよびアクリル系疎水性モノマーを架橋剤の存在下に共重合することによって得られることを特徴としている。
本発明のレンズは、2枚の前記透明形状記憶ゲルが対向配置され、これらによってレンズ外形が構成されていることを特徴としている。
本発明のレンズの焦点調節方法は、2枚の前記透明形状記憶ゲルを、中央部に開口部を有する一対の保持部材で挟んで固定する工程と、この保持部材で固定された2枚の透明形状記憶ゲルを転移温度以上に加熱し、前記2枚の透明形状記憶ゲルの間に液体を注入し、その圧力で前記2枚の透明形状記憶ゲルを外方に膨らむ凸形状とする工程と、この凸形状を保持したまま前記2枚の透明形状記憶ゲルを転移温度未満に冷却する工程とを含むことを特徴としている。
本発明によれば、高強度で透明な形状記憶ゲルが提供される。
また本発明のレンズによれば、透明形状記憶ゲルのプレートを2枚使用してレンズを構成することで、高強度で変形可能なレンズを容易に作製することができる。
本発明のレンズの焦点調節方法によれば、液圧制御により簡便に焦点を調節することができ、透明形状記憶ゲルの形状記憶機能を用いて焦点距離を調整し固定することができる。
実施例1で合成したゲルの写真である。 実施例1における引張り試験の応力−ひずみのグラフである。 実施例1で合成したゲルの形状記憶機能の例を示す写真である。 実施例1で合成したゲルの引張りサイクル試験の結果を示すグラフである。 実施例1で合成したゲルのX線解析結果を示すグラフである。 (a)はレンズホルダ、(b)は2枚の透明形状記憶ゲルで弾性スペーサを挟んだ状態を示し左は液体注入前、右は注入後の状態を示す。 実施例2の試験結果を示す写真であり、(a)はレンズホルダにゲルプレートを装着した状態(水なし)、(b)は水を入れた状態、(c)は丸ごと透明形状記憶ゲルの転移温度以上に加熱してお湯を注入しレンズ化した状態、(d)は注入針を抜いた状態、(e)はレンズなしの背後の「画」を示す。 実施例2においてホルダからレンズを外した後の状態を示す写真であり、(a)はレンズホルダから外した直後、(b)は2枚のゲルプレートを離して水を抜いた状態、(c)はこの2枚のゲルプレートを加熱しガラス板2枚で矯正した後の状態を示す。 実施例3で合成したSAとLAの比率をSA:LA=0:1に変更した各ゲル試料の引張り試験の応力−伸度のグラフである。測定は3回行った。 実施例3で合成したSAとLAの比率を変更した各ゲル試料の屈折率を測定した結果を示すグラフである。測定は各条件について3回行った。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の透明形状記憶ゲルは、アクリルアミド系親水性モノマーおよびアクリル系疎水性モノマーを架橋剤の存在下に無溶媒あるいはエタノールなどの溶媒存在下に共重合することによって得られる。
アクリルアミド系親水性モノマーとしては、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリルアミドなどを用いることができる。特にN,N-ジメチルアクリルアミドは常温で液体のため、無溶媒での共重合が可能になり溶媒が反応を阻害することがなく均一に反応が進むので透明度が高くなる。また、溶媒を使わないと最大応力、最大ひずみの両方を大きくすることができる。親水性モノマーとして中性のアクリルアミド系化合物を用いることで、pH変化の影響を受けにくい安定なゲルが作製でき、また透明なゲルを作製することができる。
アクリル系疎水性モノマーとしては、例えば、疎水性基として炭素数8〜18のアルキル基またはその誘導体を側鎖に含むアクリレート、メタクリレートなどを用いることができる。特にステアリルアクリレートの場合は、形状記憶の転移温度が60℃程度になり、使用しやすい。炭素数を小さくすると転移温度が低くなり、炭素数を大きくすると転移温度が高くなる。
架橋剤としては、例えば、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコールなどを用いることができる。
これらのモノマーを原料として、無溶媒またはエタノールなどの溶媒存在下に共重合を行う。アクリルアミド系親水性モノマーおよびアクリル系疎水性モノマーの量比は、例えば、モル比で10:1〜1:1の範囲内とすることができる。透明度を高くするには、アクリル系疎水性モノマーの比率を低くする方が良く、10:1〜3:1程度が良い。
架橋剤の量は、例えば、モノマー全量に対して0.005〜5mol%の範囲内とすることができる。架橋剤を減らすと破断ひずみが増加する。
重合法は、特に限定されるものではないが、例えば、ラジカル重合により合成することができる。反応開始剤には、光開始剤にベンゾフェノン、α-ケトグルタル酸などを用いることができる。
例えば、上記の各成分を配合したゲル溶液を、ナフロンスペーサを貼ったガラス板2枚でシリコンスペーサを挟んだ鋳型に流し込み、パラフィルムで導入口を閉じた後、UV照射を約9時間行い、ゲルを合成することができる。得られたゲルは、純水中に静置し、十分に平衡膨潤に達してからレンズ作製などに使用することができる。
この透明形状記憶ゲルは、転移温度付近で高弾性率から低弾性率に変化する。ゲル中ではアクリルアミド系親水性モノマーが豊富なアモルファスドメインの中にアクリル系疎水性モノマーが豊富な結晶ドメインが点在している。
結晶ドメイン中ではアクリル系疎水性モノマーに由来するラメラ構造が存在している。アクリル系疎水性モノマーが豊富な結晶ドメインは、転移温度以上に温めると融解し、急激なヤング率の低下を示し柔らかくなる。
この透明形状記憶ゲルを転移温度以上に加熱してから引張ると、容易に変形できる。このとき結晶ドメインのラメラ構造には変化が起こるが、結晶のコンフォメーションは維持される。変形させた後に冷却すると、アクリル系疎水性モノマーが再び結晶化し変形した形を維持することができる。
さらに、形状記憶ゲルを再び転移温度以上に加熱すると結晶ドメインが溶解しゲルは元の位置に戻る。これを再び冷却すると、アクリル系疎水性モノマーが再び結晶化しラメラ構造が回復することによりゲルは合成時の形状に修復される。
このように転移現象はこれら疎水性基の配列構造または結晶構造−非晶構造転移に基づくものであるが、本発明の透明形状記憶ゲルは、転移温度未満の結晶状態でもゲルが非常に高い透明性を有している点で従来の形状記憶ゲルとは大きく相違している。
本発明の透明形状記憶ゲルは、その変形温度、弾性率、屈折率、色などを変化させることで、様々な分野への応用が期待できる。例えば、ゲルレンズのレンズ機器への実用化、生体治療への応用、新規な光学ソリューション産業、医療機器、分析機器、新規ハイテク製品(ロボットカメラ、人工眼球、製品の小型化)などへの応用が期待できる。
本発明の透明形状記憶ゲルを用いたレンズは、この透明形状記憶ゲルを2枚用いて、これらによってレンズ外形が構成される。このレンズを作製する際には、図6(a)に示す焦点調節装置としてのレンズホルダ1を用いることができる。
このレンズホルダ1は、中央部に開口部3a,3bを有する一対の保持部材2a,2bを備えている。保持部材2aは蓋状で、受け皿状の保持部材2bに嵌め込んで蓋をする形で2枚の透明形状記憶ゲルを固定する。
保持部材2a,2bの開口部3a,3bの周縁部にある環状の突起部4a,4bは、挟んだ透明形状記憶ゲルが滑らないようにするために設けられている。
保持部材2bの側面部には、水などの液体の注入口や空気を逃す穴として機能する穴6が設けられており、これらの穴6は、ねじで開閉できるようになっている。
このレンズホルダ1は、プレート状の2枚の透明形状記憶ゲルを一対の保持部材2a,2bで挟み、手動でねじ穴5a,5bにねじを締めることで固定して使用される。
例えば図6(b)に示すように、これらの2枚の透明形状記憶ゲル7,7は、液体をシリンジなどにより注入するための切り欠き8aを設けたシリコン樹脂などの環状の弾性スペーサ8を介して重ねることができる。
この保持部材2a,2bで固定された2枚の透明形状記憶ゲルを転移温度以上、例えば50℃程度に加熱し、2枚の透明形状記憶ゲルの間に水などの液体を注入し、その圧力で2枚の透明形状記憶ゲル7,7を外方に膨らむ凸形状に変形させる(図6(b)右)。流量や液圧の制御は所望の焦点調節などを考慮して行うことができる。液の注入には間接的にモータやポンプを使用することもできるが、手動調整も可能である。また用いる液体によって、それぞれの液体の持つ屈折率に依存して焦点距離を調節することができる。
そしてこの凸形状を保持したまま2枚の透明形状記憶ゲルを転移温度未満に冷却することで、焦点調節されたレンズを得ることができる。
この透明形状記憶ゲルによるレンズは、加熱変形および冷却して焦点を固定した後にレンズホルダ1から外しても、液体が密封されている限りレンズとしての使用が可能である。また記憶したレンズ形状は再加熱をすることでリセットされる。
このように高強度の透明形状記憶ゲルを2枚用いた液体収容構造のレンズとすることで、合成の難易度が格段に低減される。そして高強度の透明形状記憶ゲルを用いることで焦点調節に必要な大幅な変形が可能になる。
そしてレンズの大きさを変形機構に依存させることができ、必要に応じた大きさのゲルレンズを作製することができる。また合成に用いるプレートの板厚に勾配をつけることで多様な変形も可能である。さらに焦点を固定した後も再び加熱することで自由に変形させることができ、繰り返し焦点を調節することができる。また部分的に加熱することで、レンズに微細な凹凸をつけることが可能であり、複雑な乱視矯正などにも対応できる。
本発明のレンズは、レンズ自体の変形を利用することによってシステムを簡略化でき、携帯電話などの小型機器での高解像度化、大型レンズシステムの小型化が可能である。すなわちレンズシステムの厚さのうちレンズの可動範囲の厚さを、レンズの移動ではなく変形により確保できることから、厚さを短縮できる。例えば、現在使用されている携帯機器に内蔵されているカメラレンズを変形制御することでアナログズームを可能とする。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
1.透明形状記憶ゲルの合成
モノマーにステアリルアクリレート(SA)とN,N-ジメチルアクリルアミド(DMAAm)を用いてゲルを合成した。SAとDMAAmのモル比は1:3とした。2つのモノマーを結合させる架橋剤にはN,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAA)、反応開始剤にはベンゾフェノンを用いた(和光純薬工業)。
溶媒としてエタノールを使用する場合と溶媒を使用しない場合の2種類の条件でゲルを調製した。エタノールを用いた場合には、全モノマー濃度を3Mとしこれらをエタノールに溶解した。
また架橋剤MBAAの添加量とゲルの力学物性の関係を調べるため、架橋剤の添加量を1%, 0.05%, 0.01%に設定し合成を行った。
モノマー溶液に架橋剤と反応開始剤をそれぞれ添加して撹拌し、得られたゲルの溶液をナフロンスペーサを貼った2枚のガラス板に2mmのシリコンスペーサを挟んだ鋳型に流し込み、パラフィルムで導入口を閉じた後、UV照射を約9時間行い、ゲルを合成した。
調製したゲルは図1に示すように透明になった。これまでの形状記憶ゲルは本発明者の知る限りにおいて全て白濁していたが、初めて透明な形状記憶ゲルが得られた。
ゲルは純水で2日間以上静置し、十分に平衡膨潤に達してから次の試験を行った。
2-1.試験片の作製
試験片はJISK6251引張り7号型であり、ダンベル形状の型抜き機を用いて作製した。試験片の厚さは2mmである。
2-2.引張り試験
合成した透明形状記憶ゲルの強度を引張試験により評価した。試験には卓上型材料試験機STA-1150(オリエンテック)を用いた。全試験のクロスヘッド速度を50mm/min、標線間距離12mmとして測定した。測定は3〜5回ずつ行い、その平均から最大応力と破断ひずみを求めた。
2-3.回復率と固定率
ゲルの回復機能を評価するために次の試験を行った。
(1) ゲルを60℃で30秒加熱する。
(2) ひずみ100%(εm)まで引張る。
(3) 引張りしたまま20℃で30秒冷却する。
(4) 徐荷した後、ひずみを測定する(εμ)。
(5) 60℃で30秒加熱して、ひずみを測定する(εp
ゲルの回復率(Rr)と固定率(Rf)は次の式で算出できる。
Rr=εm−εp/εm [1]
Rf=εμ/εm [2]
2-4.自己修復評価試験
変形させた後の加熱による修復を評価するため次の試験を行った。
(1) 試験片を試験機に挟み破断しない程度まで伸長させ力学的強度を測定する(1st)。
(2) 試験片を試験機に装着したまま元の位置まで戻す。
(3) (1)(2)と同様の操作を繰り返す(2nd)。
(4) 治具から試験片を取り外し高温水槽に入れる。
(5) 60℃で30秒加熱後、20℃で30秒冷却する。
(6) 試験片を冶具に取り付け破断するまで引張る(3rd)。
2-5.X線構造解析
X線散乱によりゲルの結晶面間隔を測定した。X線小角散乱(SAXS)手法により、X線解析を光源波長λ=0.15418 nmで行った。結晶の面間隔dは次のBragg式より算出した。
d=λ/2sinθ [3]
ここで、θは視野角である。
4.実験結果および考察
4-1.引張り試験
図2に引張り試験の応力−ひずみのグラフを示す。グラフより、溶媒を使用せずに調製した場合のSA-DMAAmゲルは最大応力が増加した。架橋剤MBAAの添加量を減らすとゲルの最大応力と最大ひずみが増加した。特にMBAAの添加量を0.01mol%とすると、ゲルの最大応力と最大ひずみは最も高い値を示した。
4-2.回復率と固定率
図3は得られたゲルの形状記憶機能の例を示す。60℃の水に入れるとゲルはコイル形状から元の直線形状に戻った。そして表1に回復率と固定率の結果を示す。
MBAAの添加量を減らすと、ゲルの回復率が減少した。一方、固定率はMBAAの添加量を減らすと高くなった。
4-3.自己修復評価試験
引張りサイクル試験の結果を図4に示す。1stと2ndの引張り試験を比較すると1stの引張りによって塑性変形が起こり、2ndの最大応力は減少することがわかった。回復した後(3rd)、ゲルの強度が戻る。これは、1stの引張りで生じた結晶粒中の転位が回復するためと考えられる。つまり変形させた後の加熱による修復が確認された。
4-4.X線解析
X線解析結果を図5に示す。この新規なSA-DMAAmゲルにも結晶構造の存在を確認できた。得られたラメラ構造の散乱角は2θ=1.59°となった。式[3]より、結晶面間隔はd=5.5nmとなった。
<実施例2>
シリコンスペーサを厚さ1mmとした以外は実施例1と同様にしてゲルを合成し、厚さ1mmのゲルプレートを得た。
このゲルプレートを2枚用意し、図6(a)のレンズホルダを用いてレンズの作製および焦点調節を行った。レンズホルダ1の保持部材2aは外径60mm、厚さ8mm,開口部の直径30mmのものを用いた。保持部材2bは外径60mm、厚さ10mm、開口部の直径30mmのものを用いた。
このレンズホルダ1にゲルプレートを挟み、手動でねじ穴5a,5bにねじを締めることで固定した。ゲルプレートは厚さ1mmのものを径45mmにサークルカッターで切り取り使用した。2枚のゲルの間には、空間を作るために厚さ2mmのシリコンスペーサを介在させた。このシリコンスペーサは水を注入するための切り欠きを設けた環状の弾性スペーサである(図6(b))。
液体は純水を使用し、シリコンスペーサの切り欠きから2枚のゲルの間にシリンジで注入した。ゲルの加熱はホットバスに入れたビーカー内で行い、純水をかけることで冷却を行った。
その結果を図7に示す。(a)はレンズホルダにゲルプレートを装着した状態(水なし)、(b)は水を入れた状態、(c)は丸ごと透明形状記憶ゲルの転移温度以上に加熱してお湯を注入しレンズ化した状態、(d)は注入針を抜いた状態、(e)はレンズなしの背後の「画」を示す。
このように、レンズホルダを用いて2枚の透明形状記憶ゲルの間に純水を注入することで、液圧によってそれぞれの透明形状記憶ゲルが凸状に膨出し、これらによってレンズ外形が構成された。また液の注入量は制御することができるため、液圧によって2枚の透明形状記憶ゲルの外方への膨出形状を制御し、焦点距離を調節することができる。そしてこの膨出形状を保持したまま2枚の透明形状記憶ゲルを転移温度未満に冷却することで、焦点調節されたレンズを得ることができる。
図8は、ホルダからレンズを外した後の状態を示し、(a)はレンズホルダから外した直後、(b)は2枚のゲルプレートを離して水を抜いた状態、(c)はこの2枚のゲルプレートを加熱しガラス板2枚で矯正した後の状態を示す。このように形状記憶ゲルレンズの場合、加熱変形および冷却して焦点を固定した後にレンズホルダから取り外しても、密封されている限りレンズとしての使用が可能になる。そして記憶した形状は再加熱をすることでリセットされる。
<実施例3>
アクリル系疎水性モノマーにラウリルアクリレート(LA)とステアリルアクリレート(SA)を用いて、実施例1と同様に透明形状記憶ゲルを合成した。
実施例1のモノマー比率(DMAAm:SA=0.75:0.25)から、LA:SA=0:0.25を(1) LA:SA=0:1に換算し、LA:SA=(2) 1:4, (3) 2:3, (4) 3:2, (5) 4:1, (6) 1:0の各比率に変更して合成を行った(例 DMAAm:LA:SA=0.75:0.05:0.2のとき、LA:SA=1:4)。
SA,LAの合計とDMAAmとのモル比は上記のとおり1:3とし、架橋剤MBAAの添加量を0.05mol%、反応開始剤ベンゾフェノンの添加量を0.1mol%とした。
モノマー溶液に架橋剤と反応開始剤をそれぞれ添加して撹拌し、得られたゲルの溶液をナフロンスペーサを貼った2枚のガラス板に2mmのシリコンスペーサを挟んだ鋳型に流し込み、パラフィルムで導入口を閉じた後、UV照射を約9時間行い、ゲルを合成した。
調製したゲルは実施例1と同様に透明になり、透明な形状記憶ゲルが得られた。ゲルは純水で2日間以上静置し、十分に平衡膨潤に達してから試験を行った。実施例1と同様の試験片により透明形状記憶ゲルの引張り試験を行った。図9にSAとLAの比率を0:1にした試料の引張り試験の応力−伸度のグラフを示す。またSAとLAの比率を変更した各試料の屈折率を測定した。その結果を図10に示す。
これらの結果より、ラウリルアクリレートを使用することで、実施例1のステアリルアクリレート単独の場合に比べて、ヤング率が低くて柔らかく、伸張率20倍以上の高延性で、形状記憶性温度の異なるゲルが得られることが示唆された。破断時の真ひずみは約3、真応力は約6MPaであり、SAのみを用いたLA:SA=0:1の時(図2参照)と比べて、破断応力は同程度の強さを維持していることがわかる。また、SAとLAを混合することにより、屈折率変化を実現した。LAの比率が高くなると、屈折率は1.42程度に減少するが、水の屈折率1.34に比べると十分に高屈折率であり、水中で用いるレンズ材料としても利用可能な範囲である。
1 レンズホルダ
2a,2b 保持部材
3a,3b 開口部
4a,4b 環状の突起部
5a,5b ねじ穴
6 穴
7 透明形状記憶ゲル
8 弾性スペーサ
8a 切り欠き

Claims (4)

  1. アクリルアミド系親水性モノマーおよびアクリル系疎水性モノマーを架橋剤の存在下に共重合することによって得られる2枚の透明形状記憶ゲルが対向配置され、これらによってレンズ外形が構成されているレンズ。
  2. 前記2枚の透明形状記憶ゲルの間に液体が収容されている請求項1に記載のレンズ。
  3. アクリルアミド系親水性モノマーおよびアクリル系疎水性モノマーを架橋剤の存在下に共重合することによって得られる2枚の透明形状記憶ゲルを、中央部に開口部を有する一対の保持部材で挟んで固定する工程と、この保持部材で固定された2枚の透明形状記憶ゲルを転移温度以上に加熱し、前記2枚の透明形状記憶ゲルの間に液体を注入し、その圧力で前記2枚の透明形状記憶ゲルを外方に膨らむ凸形状とする工程と、この凸形状を保持したまま前記2枚の透明形状記憶ゲルを転移温度未満に冷却する工程とを含むことを特徴とするレンズの焦点調節方法。
  4. 前記液体を注入するための切り欠きを設けた環状の弾性スペーサを介して前記2枚の透明形状記憶ゲルを重ねることを特徴とする請求項3に記載のレンズの焦点調節方法。
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