以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は、本実施形態に限られるものではない。図1は、本実施形態に係る気体処理装置1の一例を示す説明図である。図1に示すように、気体処理装置1は、処理構造体20と、当該処理構造体20を収容するケーシング30と、当該処理構造体20と当該ケーシング30との間に配置された保持材10とを備えている。図1においては、説明の便宜のため、ケーシング30の一部を省略して、当該ケーシング30に収容されている処理構造体20及び保持材10を露出させて示している。
図2は、気体処理装置1を、矢印Xの指す方向に切断した断面の一例を示す説明図である。この矢印Xの指す方向は、気体処理装置1の処理構造体20内を、処理対象となる気体が流通する方向(気体流通方向)である。
気体処理装置1は、気体の浄化等、気体を処理するために使用される。すなわち、気体処理装置1は、例えば、気体に含まれる有害物質及び/又は粒子を除去するために使用される。
具体的に、気体処理装置1は、例えば、排気ガスを浄化する排気ガス処理装置である。この場合、気体処理装置1は、例えば、自動車等の車両において、内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)から排出される排気ガスに含まれる有害物質及び/又は粒子を除去するために設けられる。
すなわち、気体処理装置1は、例えば、ガソリンエンジンの排気ガスに含まれる有害物質を除去するために使用される触媒コンバータである。また、気体処理装置1は、例えば、ディールエンジンの排気ガスに含まれる粒子を除去するために使用されるDPF(Diesel particulate filter)である。
気体処理装置1を使用した気体の処理方法においては、処理の対象となる気体を、当該気体処理装置1の処理構造体20の内部に流通させることにより、当該気体を処理する。すなわち、図1及び図2に示す気体処理装置1においては、矢印Xで示す方向に、排気ガス等の気体がケーシング30の一方端から流入し、当該気体は処理構造体20の内部を流通する間に浄化され、浄化された気体は当該ケーシング30の他方端から当該気体処理装置1外に流出する。
なお、自動車等の車両に配置された気体処理装置1の一方端及び他方端には、排気ガス等の気体を上流側から当該気体処理装置1に導く配管、及び浄化された気体を当該気体処理装置1から下流側に導く配管がそれぞれ接続される。
処理構造体20は、気体を処理する機能を有する構造体である。すなわち、気体処理装置1が触媒コンバータである場合、処理構造体20は、気体を浄化するための触媒と、当該触媒を担持する担体とを有する触媒担体である。触媒は、例えば、排気ガス等の気体に含まれる有害物質(一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物等)を除去するための触媒である。より具体的に、触媒は、例えば、貴金属触媒等の金属触媒である。触媒を担持する担体は、例えば、セラミックス(コージェライト等)製の無機材料製の筒状成形体(例えば、円筒状のハニカム状成形体)である。
また、気体処理装置1が、DPF等の気体に含まれる粒子を除去するための装置である場合には、処理構造体20は、当該気体中の当該粒子を捕捉するフィルターを有する構造体である。この場合、処理構造体20は、触媒をさらに含むこととしてもよいし、触媒を含まないこととしてもよい。
ケーシング30は、その内部に処理構造体20を収容可能な空間が形成された筒状体である。ケーシング30は、例えば、金属製である。ケーシング30を構成する金属は、特に限られないが、例えば、ステンレス、鉄及びアルミニウムからなる群より選択される。本実施形態において、ケーシング30は、分割されない一体型の筒状体である。
保持材10は、処理構造体20をケーシング30内に保持するために使用される。すなわち、保持材10は、処理構造体20とケーシング30との間隙において圧縮された状態で配置されることにより、当該処理構造体20を当該ケーシング30内に安定して保持する。
保持材10には、例えば、気体処理装置1において振動等により処理構造体20がケーシング30に衝突して破損することを回避するよう当該ケーシング30内で当該処理構造体20を安全に保持する機能と、未だ浄化されていない気体が当該処理構造体20とケーシング30との間隙から下流側に漏出しないよう当該間隙を封止する機能と、を兼ね備えることが要求される。また、気体処理装置1内に排気ガス等の高温(例えば、200〜900℃)の気体が流通する場合、保持材10には、耐熱性及び断熱性を備えることが要求される。
このため、保持材10は、無機繊維製の成形体である。すなわち、保持材10は、無機繊維を主成分として含む。具体的に、保持材10は、例えば、無機繊維を90質量%以上含む。
保持材10を構成する無機繊維は、気体処理装置1の使用において劣化しない又は劣化しにくい無機繊維であれば特に限られないが、例えば、アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミノシリケート繊維、シリカ繊維、溶解性無機繊維、ガラス繊維及びロックウールからなる群より選択される1種以上であることとしてもよい。
保持材10は、無機繊維に加えて、バインダーを含むこととしてもよい。バインダーは、特に限られず、有機バインダー及び/又は無機バインダーが使用される。すなわち、例えば、保持材10は、無機繊維製であって、有機バインダーを含むこととしてもよい。また、保持材10は、無機繊維製であって、有機バインダー及び無機バインダーを含むこととしてもよい。
具体的に、保持材10は、例えば、無機繊維100質量部に対して、0.1〜10質量部の有機バインダー及び/又は無機バインダーを含むこととしてもよい。保持材10が有機バインダーを含み無機バインダーを含まない場合、当該保持材10は、例えば、無機繊維100質量部に対して、0.1〜10質量部、0.2〜6質量部、又は0.2〜3質量部の当該有機バインダーを含むこととしてもよい。保持材10が無機バインダーを含み有機バインダーを含まない場合、当該保持材10は、例えば、無機繊維100質量部に対して、0.1〜10質量部、0.2〜6質量部、又は0.2〜4質量部の当該無機バインダーを含むこととしてもよい。保持材10が有機バインダー及び無機バインダーを含む場合、当該保持材10は、例えば、無機繊維100質量部に対して、0.05〜5質量部、0.1〜3質量部、又は0.1〜1.5質量部の当該有機バインダーと、0.05〜5質量部、0.1〜3質量部、又は0.1〜2質量部の当該無機バインダーとを含むこととしてもよい。
保持材10の形状は、処理構造体20をケーシング30内に保持できれば特に限られない。すなわち、保持材10は、例えば、板状体(フィルム、シート、ブランケット、マット等)であることとしてもよく、筒状体であることとしてもよい。
保持材10が板状体である場合、当該保持材10の一方端と他方端とは嵌合可能な対応する形状に形成されることとしてもよい。すなわち、図1に示す例において、板状の保持材10の一方端及び他方端は、対応する凸状及び凹状にそれぞれ形成され、当該保持材10が処理構造体20の外周面に巻き付けられた状態で、当該一方端と他方端とは嵌合される。
図3Aは、本実施形態に係る保持材10の一例を平面視で示す説明図であり、図3Bは、図3Aに示すIII−III線で切断した当該保持材10の断面を示す説明図である。図4Aは、保持材10の他の例を平面視で示す説明図であり、図4Bは、図4Aに示すIV−IV線で切断した当該保持材10の断面を示す説明図である。図5Aは、保持材10のさらに他の例を平面視で示す説明図であり、図5Bは、図5Aに示すV−V線で切断した当該保持材10の断面を示す説明図である。図6Aは、保持材10のさらに他の例を平面視で示す説明図であり、図6Bは、図6Aに示すVI−VI線で切断した当該保持材10の断面を示す説明図である。図7Aは、保持材10のさらに他の例を平面視で示す説明図であり、図7Bは、図7Aに示すVII−VII線で切断した当該保持材10の断面を示す説明図である。図8Aは、保持材10のさらに他の例を平面視で示す説明図であり、図8Bは、図8Aに示すVIII−VIII線で切断した当該保持材10の断面を示す説明図である。
ここで、本実施形態において特徴的なことの一つは、キャニング前の保持材10が、厚さT1が気体処理装置1における処理構造体20の外周面20aとケーシング30の内周面30aとの距離(ギャップ)G(図2参照)より大きい基部11と、厚さT2が当該基部11の当該厚さT1より小さい肉薄部12と、を有し、当該肉薄部12の外周面12aは、当該基部11の外周面11aより当該保持材10の内周面10b側に形成され、当該気体処理装置1において当該ケーシング30と接することである。
基部11は、保持材10の一部を構成し、肉薄部12は、当該保持材10の他の一部を構成する。すなわち、基部11の外周面11aは、保持材10の外周面10aの一部を構成し、肉薄部12の外周面12aは、当該保持材10の当該外周面10aの他の一部を構成する。また、基部11の内周面は、保持材10の内周面10bの一部を構成し、肉薄部12の内周面は、当該保持材10の当該内周面10bの他の一部を構成する。
本実施形態において、保持材10は、基部11と肉薄部12とから構成されている。このため、保持材10の外周面10aは、基部11の外周面11aと肉薄部12の外周面12aとから構成されている。また、保持材10の内周面10bは、基部11の内周面と肉薄部12の内周面とから構成されている。
なお、保持材10が基部11及び肉薄部12を有することにより、当該保持材10の外周面10aには、凹凸が形成されることとなるが、当該保持材10の内周面10bは、平坦であることとしてもよい。すなわち、本実施形態において、保持材10の内周面10bは、基部11及び肉薄部12に亘る平坦な表面である。
また、本実施形態において、基部11の外周面11aは、保持材10の内周面10bと平行で平坦な表面である。また、肉薄部12の外周面12aは、その少なくとも一部が保持材10の内周面10bと平行で平坦な表面であることとしてもよいし、その全体が当該保持材10の当該内周面10bと平行で平坦な表面であることとしてもよいし、後述するように、その少なくとも一部がテーパー形状に形成されることとしてもよい。
肉薄部12は、その外周面12aがキャニング後の気体処理装置1においてケーシング30の内周面30aと接する範囲で、当該外周面12aを、基部11の外周面11aより保持材10の内周面10b側(気体処理装置1においては、ケーシング30から遠ざかる側、処理構造体20側、及び径方向内側)に形成することにより、当該基部11に比べて厚みを減じた部分である。
すなわち、例えば、基部11の厚さT1は、処理構造体20とケーシング30とのギャップGに基づき、従来と同様、キャニング後の保持材10が所望の面圧等の所望の特性を示すよう設定されるのに対し、肉薄部12の厚さT2は、従来よりも小さく設定される。
具体的に、例えば、処理構造体20とケーシング30とのギャップGが4.0mmである場合、基部11の厚さT1は、6.0〜12.0mmに設定され、肉薄部12の厚さT2は、当該基部11の厚さT1より小さく、4.0〜4.4mmに設定される。すなわち、この場合、基部11の外周面11aから肉薄部12の外周面12aまでの深さ(当該基部11の厚さT1から当該肉薄部12の厚さT2を減じた差分)は、例えば、1.6〜8.0mmに設定されることとしてもよいし、2.0〜7.6mmに設定されることとしてもよい。
保持材10が肉薄部12を有することにより、キャニングに伴う問題の発生を効果的に回避することができる。すなわち、例えば、保持材10が基部11及び肉薄部12を有することにより、当該保持材11が当該肉薄部12を有さず当該基部11のみから構成される場合に比べて、キャニング時における当該保持材10の外周面10aとケーシング30の内周面30aとの摩擦抵抗を効果的に低減することができる。このため、例えば、気体処理装置1において高い面圧を達成する保持材10を使用する場合であっても、キャニングをスムーズに行うことができる。
また、例えば、保持材10が基部11及び肉薄部12を有することにより、キャニング後に、当該保持材10の挿入方向における当該保持材10の後端部が処理構造体20の後端部からさらに後方にはみ出してしまうといった問題の発生も効果的に回避することができる。
キャニング前の保持材10において、肉薄部12の厚さT2は、気体処理装置1における処理構造体20の外周面20aとケーシング30の内周面30aとの距離(ギャップ)Gと同一又は当該ギャップGより大きく、且つ基部11の厚さT1より小さい範囲であれば、特に限られないが、例えば、当該ギャップGと実質的に同一であることとしてもよい。
すなわち、この場合、処理構造体20とケーシング30とのギャップGに対する、キャニング前の肉薄部12の厚さT2の割合は、100〜110%であり、好ましくは100〜105%である。具体的に、例えば、ギャップGが4.0mmの場合、キャニング前の肉薄部12の厚さT2は、4.0〜4.4mmに設定され、好ましくは4.0〜4.2mmに設定される。
キャニング前の肉薄部12の厚さT2が、ギャップGと実質的に同一であることにより、例えば、キャニング時に保持材10をケーシング30内に特にスムーズに挿入することができる。また、例えば、キャニング時において、肉薄部12の圧縮される程度は、基部11のそれに比べて小さいため、キャニング前の当該肉薄部12の厚さT2が、ギャップGと実質的に同一であることにより、キャニングによって保持材10の挿入方向における当該保持材10の後端部が処理構造体20の後端部からさらに後方にはみ出してしまうといった問題の発生をより効果的に回避することができる。
保持材10の嵩密度は、当該保持材10が処理構造体20とケーシング30との間に配置された状態で所望の範囲となるように適宜設定されるが、例えば、0.2〜0.5g/cm3であることとしてもよい。また、保持材10の坪量は、例えば、1000〜1800g/cm2であることとしてもよい。
また、例えば、キャニング前において、肉薄部12の嵩密度は、基部11の嵩密度と実質的に同一であることとしてもよい。すなわち、この場合、基部11の嵩密度に対する、肉薄部12の嵩密度の割合は、95〜105%であり、好ましくは97〜103%である。このため、保持材10が基部11と肉薄部12とから構成される場合、当該保持材10の嵩密度は、当該保持材10の全体に亘って実質的に均一となる。
キャニング前において、肉薄部12の嵩密度が、基部11の嵩密度と実質的に同一であることにより、例えば、キャニング後の保持材10の外周面10a内における面圧のバラツキを効果的に軽減することができる。なお、キャニング前において、肉薄部12の嵩密度は、基部11の嵩密度と実質的に同一に限られず、例えば、当該基部11の嵩密度より大きいこととしてもよい。
なお、例えば、図3A及び図3Bに示す例において、基部11は、保持材10のうち、図3Aに示す平面視で当該基部11の外周面11aを投影した部分、すなわち、図3Bにおいて基部11の外周面11aと肉薄部12の外周面12aとの境界から内周面10b側に引いた2本の一点鎖線で囲まれた部分)であり、肉薄部12は、それ以外の部分である。同様に、他の例についても、図4B〜図8Bにおいて、基部11の外周面11aと肉薄部12の外周面12aとの境界から内周面10b側に下ろした一点鎖線は、当該基部11と当該肉薄部12との境界を示す。
肉薄部12の外周面12aの面積は、当該肉薄部12による効果が得られる範囲であれば特に限られないが、例えば、保持材10の外周面10a全体の面積(保持材10の外周面10aが、基部11の外周面11aと肉薄部12の外周面12aとから構成される場合には、当該基部11の外周面11aの面積と当該肉薄部12の外周面12aの面積との合計)の50%以下であることとしてもよく、40%以下であることとしてもよく、30%以下であることとしてもよく、25%以下であることとしてもよい。
保持材10の外周面10a全体の面積に対する肉薄部12の外周面12aの面積の割合の下限値は、当該肉薄部12による効果が得られる範囲であれば特に限られないが、当該割合は、例えば、15%以上であることとしてもよい。
肉薄部12の外周面12aの面積が上述した範囲内であることにより、薄い部分である当該肉薄部12を設けたことによる問題の発生(例えば、保持材10の坪量が比較的大きい場合に、薄い部分である肉薄部12の占める割合が大きいと、当該保持材10を構成する無機繊維の破壊が生じる)を効果的に回避することができる。
肉薄部12は、処理構造体20内の気体流通方向において不連続に設けられていることとしてもよい。すなわち、図3A、図4A、図5A、図6A、図7A及び図8Aに示す例では、肉薄部12の気体流通方向(矢印Xの指す方向)の上流側及び/又は下流側に基部11が設けられることにより、当該肉薄部12は、当該気体流通方向において不連続に設けられている。
気体流通方向において肉薄部12を不連続に設けることにより、気体処理装置1において、未処理の気体が処理構造体20とケーシング30との間の当該肉薄部12を通り抜けて保持材10の下流側に漏れ出ることを効果的に防止することができる。
また、肉薄部12は、保持材10をケーシング30内に挿入する方向における当該保持材10の前端部の少なくとも一部に設けられていることとしてもよい。すなわち、この場合、肉薄部12は、キャニング時の挿入方向における保持材10の前端部の一部又は全部に設けられる。
具体的に、図3A及び図3Bに示す例、図5A及び図5Bに示す例では、キャニング時の挿入方向(矢印Xの指す方向)における保持材10の前端部の全部に肉薄部12が設けられている。すなわち、この肉薄部12は、保持材10の前端部において、周方向(キャニング時の挿入方向に直交する方向)の一方端から他方端まで設けられている。
また、図4A及び図4Bに示す例では、キャニング時の挿入方向(矢印Xの指す方向)における保持材10の前端部の一部に肉薄部12が設けられている。すなわち、この肉薄部12は、保持材10の前端部において、周方向に不連続に設けられている。
なお、本実施形態においては、キャニング時の挿入方向は気体流通方向と同一であるとして共通の矢印Xの指す方向として図示しているが、キャニング時の挿入方向は、気体流通方向と反対の方向であることとしてもよい。
肉薄部12が、キャニング時の挿入方向における保持材10の前端部の少なくとも一部に設けられることにより、キャニング時において当該保持材10をケーシング30内に特にスムーズに挿入することができる。
さらに、厚さT2が処理構造体20とケーシング30とのギャップGと実質的に同一である肉薄部12が、キャニング時の挿入方向における保持材10の前端部の少なくとも一部に設けられている場合には、キャニング時において当該保持材10を当該ケーシング30内に極めてスムーズに挿入することができる。
また、肉薄部12は、保持材10をケーシング30内に挿入する方向における当該保持材10の後端部の少なくとも一部に設けられていることとしてもよい。すなわち、この場合、肉薄部12は、キャニング時の挿入方向における保持材10の後端部の一部又は全部に設けられる。
具体的に、図3A及び図3Bに示す例、図5A及び図5Bに示す例、図7A及び図7Bに示す例では、キャニング時の挿入方向(矢印Xの指す方向)における保持材10の後端部の全部に肉薄部12が設けられている。すなわち、この肉薄部12は、保持材10の後端部において、周方向(キャニング時の挿入方向に直交する方向)の一方端から他方端まで設けられている。
また、図4A及び図4Bに示す例では、キャニング時の挿入方向(矢印Xの指す方向)における保持材10の後端部の一部に肉薄部12が設けられている。すなわち、この肉薄部12は、保持材10の後端部において、周方向に不連続に設けられている。
肉薄部12が、キャニング時の挿入方向における保持材10の後端部の少なくとも一部に設けられていることにより、例えば、キャニング後に、保持材10の当該挿入方向における当該保持材10の後端部が処理構造体20の後端部からさらに後方にはみ出してしまうといった問題の発生を効果的に回避することができる。
さらに、厚さT2が処理構造体20とケーシング30とのギャップGと実質的に同一である肉薄部12が、キャニング時の挿入方向における保持材10の後端部の少なくとも一部に設けられている場合には、キャニング後に、当該挿入方向における当該保持材10の後端部が処理構造体20の後端部からさらに後方にはみ出してしまうといった問題の発生を極めて効果的に回避することができる。
また、肉薄部12の外周面12aの少なくとも一部は、保持材10をケーシング30内に挿入する方向に傾斜するテーパー形状に形成されていることとしてもよい。すなわち、この場合、肉薄部12の外周面12の一部又は全部が、キャニング時の挿入方向に傾斜するテーパー形状に形成される。
具体的に、図7A及び図7Bに示す例において、肉薄部12の外周面12aの一部は、キャニング時の挿入方向(矢印Xの指す方向)に傾斜するテーパー形状に形成されている。より具体的に、肉薄部12の外周面12aは、キャニング時の挿入方向に傾斜するテーパー形状に形成されたテーパー部12bと、基部11の外周面11aと平行で平坦な表面である平坦部12cとを有している。
また、このテーパー部12bは、キャニング時の挿入方向における基部11の外周面11aの後端部から、当該挿入方向と反対の方向に向けて保持材10の内周面10b側に傾斜するよう形成されている。そして、テーパー部12bの内周面10b側に最も近い端部から、キャニング時の挿入方向と反対の方向に向けて当該内周面10bと平行な平坦部12cが形成されている。
すなわち、キャニング時の挿入方向における保持材10の後端部において、基部11の外周面11a、肉薄部12のテーパー部12b及び当該肉薄部12の平坦部12cが当該挿入方向と反対の方向に順次連なって形成されている。
キャニング前の肉薄部12の外周面12aが、上述したようなテーパー部12bを有することにより、例えば、キャニング後に、保持材10の挿入方向における当該保持材10の後端部が処理構造体20の後端部からさらに後方にはみ出してしまうといった問題の発生を効果的に回避することができる。
また、図8A及び図8Bに示す例において、肉薄部12は、その全部がキャニング時の挿入方向(矢印Xの指す方向)に傾斜するテーパー形状に形成されている外周面12aを有している。具体的に、肉薄部12の外周面12aは、キャニング時の挿入方向における基部11の外周面11aの後端部から、当該挿入方向と反対の方向に向けて内周面10b側に傾斜するよう形成された第一テーパー部12bと、当該第一テーパー部12bの当該内周面10bに最も近い端部から、当該挿入方向と反対の方向に向けて当該内周面10bと反対側に傾斜するよう形成された第二テーパー部12dとを有している。
すなわち、キャニング時の挿入方向における保持材10の後端部において、基部11の外周面11a、肉薄部12の第一テーパー部12b、当該肉薄部12の第二テーパー部12d及び他の基部11の外周面11aが当該挿入方向と反対の方向に順次連なって形成されている。すなわち、この例において、肉薄部12の外周面12aは、図8Bに示すように、断面V字状に形成されている。
なお、第一テーパー部12b及び第二テーパー部12dを有する肉薄部12は、図8Bに示す断面V字状に限られず、例えば、当該第一テーパー部12bと第二テーパー部12dとの間に、図7Bに示す平坦部12bのような平坦な表面が形成されることとしてもよい。
肉薄部12の外周面12aが、上述したような第一テーパー部12b及び第二テーパー部12dを有することにより、例えば、キャニング後に、保持材10の挿入方向における当該保持材10の後端部が処理構造体20の後端部からさらに後方にはみ出してしまうといった問題の発生を効果的に回避することができる。
また、肉薄部12の外周面12aが第一テーパー部12b及び第二テーパー部12dを有することにより、例えば、保持材10を処理構造体20の外周面20aに巻きつける際に、引張力によって当該保持材10の外周面10aが割れるという問題を、図7A及び図7Bに示す例に比べて、より効果的に回避することができる。
また、肉薄部12は、図3A及び図3B,図5A及び図5B、図7A及び図7B、図8A及び図8Bに示すように、周方向において保持材10の一方端から他方端まで設けられることとしてもよいし、図4A及び図4B、図6A及び図6Bに示すように、当該周方向において不連続に設けられることとしてもよい。
具体的に、図6A及び図6Bに示す例では、基部11に囲まれたスポット状の肉薄部12が複数設けられている。スポット状の肉薄部12の外周面12aの形状は、図6Aに示す例に限られず、楕円形や多角形等、円形以外の形状であってもよい。なお、この例において、肉薄部12の外周面12aは、基部11の外周面11aと平行で平坦な表面である。
また、肉薄部12が周方向において保持材10の一方端から他方端まで設けられる場合、当該肉薄部12は、図7A及び図7Bに示すように、周方向に延びる1つの帯状に設けられることとしてもよいし、図3A及び図3B、図5A及び図5B、図8A及び図8Bに示すように、キャニング時の挿入方向において互いに離間しつつ、周方向に延びる複数の帯状に設けられることとしてもよい。図5A及び図5B、図8A及び図8Bに示す例において、複数の帯状の肉薄部12の各々は、周方向における保持材10の一方端から他方端まで連続的に設けられている。
保持材10の製造方法は、上述のような基部11及び肉薄部12を有する当該保持材10を得られる方法であれば、特に限られないが、例えば、無機繊維製の保持材10は、湿式法又は乾式法により製造される。
すなわち、湿式法においては、まず、所定の形状を有する脱水成形用型内に、保持材10を構成するための無機繊維と、有機バインダー(例えば、ゴム、水溶性有機高分子化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等)とを含む水性スラリーを流し込む。次いで、脱水成形を行うことにより、型の形状に対応する形状の無機繊維製の成形体(湿式成形体)を得る。その後、湿式成形体を、その嵩密度等の特性が所望の範囲となるように圧縮し、乾燥することにより、最終的に無機繊維製の成形体である保持材10が得られる。
ここで、基部11及び肉薄部12を有する保持材10は、例えば、まず、当該基部及び肉薄部12に対応する形状の内面を有する脱水成形用金型に、当該内面と接するように水性スラリーを流し込み、次いで、脱水成形し、その後、熱プレスして圧縮することにより製造される。この場合、肉薄部12の嵩密度が、基部11の嵩密度と実質的に同一である保持材10を簡便に製造することができる。
また、基部11及び肉薄部12を有する保持材10は、例えば、まず、上方が開口した箱状の脱水成形金型に水性スラリーを流し込み、次いで、脱水成形し、その後、当該基部11及び肉薄部12に対応する形状の型で熱プレスして圧縮することにより製造される。この場合、肉薄部12の嵩密度が、基部11の嵩密度より大きい保持材10を簡便に製造することができる。
また、乾式法においては、例えば、集綿された無機繊維をニードル加工することにより、当該無機繊維製の成形体である保持材10が得られる。すなわち、基部11及び肉薄部12を有する保持材10は、例えば、当該肉薄部12に対応する部分に対するニードルパンチの密度を、当該基部11に対応する部分のそれに比べて大きくすることにより製造することができる。
気体処理装置1は、上述した保持材10及び処理構造体20をケーシング30内に配置することにより製造される。すなわち、本実施形態に係る気体処理装置1の製造方法(以下、「本方法」という。)は、処理構造体20と、当該処理構造体20を収容するケーシング30と、当該処理構造体20と当該ケーシング30との間に配置される保持材10とを備えた気体処理装置1の製造方法であって、厚さT1が当該気体処理装置1における当該処理構造体20の外周面20aと当該ケーシング30の内周面30aとの距離Gより大きい基部11と、厚さT2が当該基部11の当該厚さT1より小さく当該基部11の外周面11aより当該保持材10の内周面10b側に形成された外周面12aを有する肉薄部12とを有する当該保持材10を、当該処理構造体20と当該ケーシング30との間に、当該基部11を圧縮しながら、当該肉薄部12の当該外周面12aが当該ケーシング30と接するよう挿入することを含む。
具体的に、ここでは、スタッフィング方式により、分割されない一体型の筒状体であるケーシング30内に、図3A及び図3Bに示す保持材10を挿入する場合を例として説明する。
図9は、処理構造体20と、当該処理構造体20の外周面20aに沿って配置された保持材10とを有する組立体40の一例を示す説明図である。図10は、組立体40を気体流通方向(矢印Xの指す方向)に切断した断面の一例を示す説明図である。図11A、図11B及び図11Cは、治具50を使用して、図9及び図10に示す組立体40をケーシング30内に挿入するキャニングの過程を示す説明図である。なお、本実施形態において、矢印Xの指す方向は、上述のとおり、キャニング時の挿入方向であり、気体流通方向である。
まず、処理構造体20の外周面20aに保持材10を配置することにより、図9及び図10に示すような組立体40を製造する。ここで、保持材10が板状である場合には、当該保持材10を処理構造体20の外周面20aに巻き付ける。また、保持材10が筒状である場合には、当該保持材10の内空内に処理構造体20を挿入する。
次いで、この組立体40をケーシング30内に挿入する。すなわち、図11A、図11B及び図11Cに示す例では、キャニング時の挿入方向において内径を減じるように傾斜したテーパー状の内周面50aを有する筒状の治具50を介して、組立体40をケーシング30内に挿入する。キャニング時の挿入方向において、治具50の前方端の内径はケーシング30の内径と同一であり、当該治具50の後方端の内径は当該ケーシング30の内径及び組立体40の外径より大きくなっている。
まず、図11Aに示すように、挿入前の保持材10において、基部11の厚さT1(図3B参照)は、処理構造体20とケーシング30とのギャップG(図2参照)より大きい。次いで、図11Bに示すように、治具50内において組立体40をケーシング30側に進めることにより、保持材10の基部11は、処理構造体20と治具50との間、及び当該処理構造体20とケーシング30との間で順次圧縮される。
ここで、保持材10の肉薄部12の厚さT2(図3B参照)がギャップGより大きい場合には、当該肉薄部12もまた、処理構造体20と治具50との間、及び当該処理構造体20とケーシング30との間で順次圧縮される。一方、保持材10の肉薄部12の厚さT2がギャップGと実質的に同一の場合には、当該肉薄部12は、実質的に圧縮されることなく、しかし、その外周面12aを、ケーシング30の内周面30aと接触させながら、当該ケーシング30内に挿入される。
そして、最終的に、図11Cに示すように、組立体40の全体を、ケーシング30内に挿入する。保持材10が処理構造体20とケーシング30との間に挿入された状態において、当該保持材10の基部11の外周面11a及び肉薄部12の外周面12aは、当該ケーシング30の内周面30aと接している(図11Cに示す一点鎖線は、基部11と肉薄部12との境界を示している。)。また、保持材10は、圧縮された状態で処理構造体20とケーシング30とに挟まれているため、当該保持材10の厚さは、基部11及び肉薄部12に亘り、ギャップGと同一となっている。
このため、キャニング前に肉薄部12の嵩密度が基部11のそれと実質的に同一であった場合、キャニング後の処理構造体20とケーシング30との間において、当該肉薄部12の嵩密度は、当該基部11のそれより小さくなっている。また、キャニング前に肉薄部12の嵩密度が基部11のそれより大きい場合、キャニング後の処理構造体20とケーシング30との間において、当該肉薄部12の嵩密度は、当該基部11のそれと実質的に同一であることとしてもよい。
本方法により、図1及び図2に示すような、処理構造体20と、当該処理構造体20を収容するケーシング30と、当該処理構造体20と当該ケーシング30との間に配置された上述の保持材10と、を備える気体処理装置1が製造される。
なお、図1及び図2に示す例において、気体流通方向におけるケーシング30の上流端部及び下流端部にはそれぞれテーパー部分が形成されているが、当該テーパー部分は、例えば、図11Cに示すように組立体40を金属製の当該ケーシング30内に挿入した後に、当該ケーシング30の当該上流端部及び下流端部に絞り加工を施すことにより形成する。
本方法によって気体処理装置1を製造することにより、キャニングに伴う問題の発生を効果的に回避することができる。すなわち、例えば、キャニング前の保持材10が基部11及び肉薄部12を有することにより、当該保持材11が当該肉薄部12を有さず当該基部11のみから構成される場合に比べて、キャニング時における当該保持材10の外周面10aとケーシング30の内周面30aとの摩擦抵抗を効果的に低減することができる。このため、例えば、気体処理装置1において高い面圧を実現する保持材10を使用する場合であっても、キャニングをスムーズに行うことができる。
また、例えば、キャニング前の保持材10が基部11及び肉薄部12を有することにより、キャニング後に、当該保持材10の挿入方向における後端部が処理構造体20の後端部からさらに後方にはみ出してしまうといった問題の発生も効果的に回避することができる。
また、本方法では、上述したように、処理構造体20とケーシング30との間に挿入される前の保持材10において、肉薄部12の厚さT2は、気体処理装置1における処理構造体20の外周面20aとケーシング30の内周面30aとの距離(ギャップ)Gと実質的に同一であることとしてもよい。
キャニング前の肉薄部12の厚さT2が、ギャップGと実質的に同一であることにより、例えば、キャニング時に保持材10をケーシング30内に特にスムーズに挿入することができる。
また、本方法では、上述したように、処理構造体20とケーシング30との間に挿入される前の保持材10において、肉薄部12の嵩密度は、基部11の嵩密度と実質的に同一であることとしてもよく、この場合、当該処理構造体20と当該ケーシング30との間に挿入された後の当該保持材10において、当該肉薄部12の嵩密度は、当該基部11の嵩密度より小さくなる。
この場合、例えば、キャニング前においては、基部11と実質的に同一の嵩密度の肉薄部12の厚さT2が、当該基部11の厚さT1より小さいため、保持材1のケーシング30内への挿入を、当該保持材10が当該肉薄部12を有しない場合(例えば当該保持材10が当該基部11のみから構成される場合)に比べてスムーズに行うことができるとともに、キャニング後においては、圧縮されて高密度となった当該基部11の一部が、低密度の当該肉薄部12の方へ逃げることができるため、当該保持材10の挿入方向における当該保持材10の後端部が処理構造体20の後端部からさらに後方にはみ出してしまうといった問題の発生も効果的に回避することができる。
また、本方法では、上述したように、保持材10の肉薄部12の外周面12aの面積は、当該保持材10の外周面10a全体の面積の50%以下であることとしてもよく、40%以下であることとしてもよく、30%以下であることとしてもよく、25%以下であることとしてもよい。また、上述のとおり、保持材10の肉薄部12の外周面12aの面積は、当該保持材10の外周面10a全体の面積の15%以上であることとしてもよい。
肉薄部12の外周面12aの面積が上述した範囲内であることにより、薄い部分である当該肉薄部12を設けたことによる問題の発生(例えば、保持材10の坪量が比較的大きい場合に、薄い部分である肉薄部12の占める割合が大きいと、当該保持材10を構成する無機繊維の破壊が生じる)を効果的に回避することができる。
また、本方法では、上述したように、保持材10の肉薄部12は、処理構造体20内の気体流通方向において不連続に設けられていることとしてもよい。気体流通方向において肉薄部12を不連続に設けることにより、気体処理装置1において、未処理の気体が当該肉薄部12を透過してそのまま保持材10の下流側に漏れ出ることを効果的に防止することができる。
また、本方法では、上述したように、保持材10の肉薄部12は、当該保持材10をケーシング30内に挿入する方向における当該保持材10の前端部の少なくとも一部に形成されていることとしてもよい。
肉薄部12が、キャニング時の挿入方向における保持材10の前端部の少なくとも一部に形成されていることにより、当該保持材10をケーシング30内に特にスムーズに挿入することができる。
さらに、厚さT2が処理構造体20とケーシング30とのギャップGと実質的に同一である肉薄部12が、キャニング時の挿入方向における保持材10の前端部の少なくとも一部に形成されている場合には、当該保持材10を当該ケーシング30内に極めてスムーズに挿入することができる。
また、本方法では、上述したように、保持材10の肉薄部12は、当該保持材10をケーシング30内に挿入する方向における当該保持材10の後端部の少なくとも一部に形成されていることとしてもよい。
肉薄部12が、キャニング時の挿入方向における保持材10の後端部の少なくとも一部に形成されていることにより、例えば、当該キャニング後に、保持材10の当該挿入方向における当該保持材10の後端部が処理構造体20の後端部からさらに後方にはみ出してしまうといった問題の発生を効果的に回避することができる。
さらに、厚さT2が処理構造体20とケーシング30とのギャップGと実質的に同一である肉薄部12が、キャニング時の挿入方向における保持材10の後端部の少なくとも一部に設けられている場合には、キャニング後に、当該挿入方向における当該保持材10の後端部が処理構造体20の後端部からさらに後方にはみ出してしまうといった問題の発生を極めて効果的に回避することができる。
また、本方法では、上述したように、処理構造体20とケーシング30との間に挿入される前の保持材10の肉薄部12の外周面12aの少なくとも一部は、当該保持材10を当該ケーシング30内に挿入する方向において傾斜するテーパー形状に形成されていることとしてもよい。
キャニング前の肉薄部12の外周面12aが、上述したようなテーパー部12bを有することにより、例えば、キャニング後に、保持材10の挿入方向における当該保持材10の後端部が処理構造体20の後端部からさらに後方にはみ出してしまうといった問題の発生を効果的に回避することができる。
また、肉薄部12の外周面12aが、上述したような第一テーパー部12b及び第二テーパー部12dを有することにより、例えば、キャニング後に、保持材10の挿入方向における後端部が処理構造体20の後端部からさらに後方にはみ出してしまうといった問題の発生を効果的に回避することができる。
また、図8A及び図8Bに示すように肉薄部12の外周面12aが第一テーパー部12b及び第二テーパー部12dを有することにより、例えば、保持材10を処理構造体20の外周面20aに巻きつける際に、引張力によって当該保持材10の外周面10aが割れるという問題を、図7A及び図7Bに示す例に比べて、より効果的に回避することができる。