JP6057180B2 - 生細胞操作用の装置及び方法 - Google Patents

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Description

関連出願
本出願は、引用によりその全体が本明細書に組み入れられる2010年6月14日出願の「Apparatus and Method for Living Cell Manipulation」と題する米国特許仮出願第61/354,479号の利益及び該出願に対する優先権を主張する。
生きた細胞を移動させる又は操作する方法は、幹細胞、体外受精、細胞及び組織の培養、組織再生並びにそれに類した分野に関連する治療に向けた研究を可能にする不可欠なツールである。例えば、広く用いられている幹細胞は、胚(ES)、人工多能性幹細胞(IPS)、臍帯血細胞、皮膚又は他の組織など成体細胞、のいずれに由来するものであっても、これらの多能性細胞が種々異なる終着の細胞型へと分化する能力ゆえに、治療作用に関して非常に有望である。この能力は組織移植治療における近年の発展を可能にしてきたが、幹細胞コロニーの操作は、非常に時間がかかり難しい場合がある。幹細胞の増殖を可能にする細胞操作、特に、輸送(継代)のために細胞又は細胞培養コロニーを単離することは、依然として非常に労力を要し、技術的に難しい(例えば、引用により本明細書に組み入れられる非特許文献1を参照のこと)。
コンフルエント層(シート)又はそれ以外にも組織培養皿の表面への付着物は、これらの細胞を移動させる又は操作する必要がある場合に厄介な問題を引き起こすので、培養内で維持された細胞を移動させる方法は、もっと少ない。幹細胞は特に、多くの場合ペトリ皿の中で、栄養豊富な増殖培地で囲まれた基質上で増殖したコロニー内に存在する。培養内でのこれらの細胞の正常な増殖には継代、即ち、細胞を分けて新鮮な増殖培地を入れた別のチャンバ内に入れることが必要である。細胞型によっては、大きな細胞集団から小さな細胞集団を単離するか、又は層の一部分を単離して、それらの細胞をさらなる試験、研究又は処置のために異なる場所に移すことがさらに望ましい場合がある。
しかし、未分化の幹細胞を長期間培養内で維持することは、特別な問題を示す。幹細胞コロニーは、インビトロでは時間が経つと分化する傾向がある。従って、幹細胞系を維持するために、又は細胞の数を著しく増加させるためには、未分化の部分(又は選択されたコロニー)を単離して新しい容器へと継代しなければならない。理想的には、切り出し及び継代は、コロニーを損なわずに、即ち、多数の細胞を死滅させずに行うべきである。付着した細胞をトリプシン又はコラゲナーゼのような酵素を用いてその基質から剥離する細胞継代は数十年にわたってルーチンに使用されているが、幹細胞培養における酵素の使用は、遺伝子改変のリスクが高まるので特に好ましくない。
細胞をそれが増殖された基質から切り出す又は切断するという目標を達成するための、非酵素的な機械的方法が記載されている。例えば、細く引き延ばしたガラスマイクロピペットでコンフルエント層に刻み目又は切り目を入れることにより細胞をコンフルエント層から切り出すことができることが、当該分野において周知である。切断後、層の「断片」即ち細胞の小クラスタを表面から持ち上げて取り出し、異なる環境内に置くことができる。引き延ばしたガラスマイクロピペットを用いた手作業の切断は、この方法が幹細胞の遺伝子改変の機会を最小にするので好ましい。
細胞を分離するための別の機械的方法は、圧電マイクロナイフ、例えば、マイクロチゼル(MicroChisel)圧電力マイクロダイセクション(Piezo−Power Microdissection)(PPMD)システムの使用を伴う(例えば、非特許文献2を参照のこと)。PPMDは、鋭利なタングステン針を、小さな圧電振動により振動して周囲組織から細胞を切り裂く顕微的ナイフとして使用する。この方法は、簡単であるが、細胞レベルでの精度及び正確さを欠き、横方向の振動及びマイクロピペット又はナイフとの接触により、間違いなく多数の細胞を死滅させ又は損傷する。
PPMDは特定の状況においては適切な技術であり得るが、他の用途においては機械的損傷を防ぐことが特に重要となる。これは、比較的少数の高価な細胞を単離する必要があり、過度の組織損傷によって失うことができない場合に特に当てはまる。他の場合には、細胞の損傷又は破壊により、細胞の増殖、生理、又は機能に悪影響を及ぼす可能性がある有害な化学物質が組織培養培地に放出されることがある。細胞操作のためのこれら物理的方法の別の不利な点は、切断器具が異物を細胞コロニーに導入することがあり、培養物を汚染するか又はそれ以外で培養物の完全性を損なう可能性があるということである。
レーザーは、生細胞及び組織の顕微操作のための代替手段を提供する。当該技術は、「光ピンセット」呼ばれることがある赤外レーザー「トラップ」を開示しており、これは、放射圧の力を用いて生細胞全体又は細胞内の細胞小器官を操作する(例えば、非特許文献3を参照のこと)。レーザーはまた、剥離した網膜を「溶接」するため、近視患者において角膜を彫刻して異なる光学的焦点を達成するため、及び培養内の不要な細胞を除去するためにも用いられている。
レーザーは、組織試料中の固定された細胞などの生体物質を切断するのにも有用である。細胞(又はその一部分)を、解剖刀として機能するレーザービームによって文字通り切断することができる「レーザーはさみ」が開発されている。レーザーを用いて、オプトポレーション(optoporation)と呼ばれるプロセスで細胞膜にミクロンサイズの穴を開けることができる。これらの小さな穴は、直ぐに閉じるので恒久的な損傷を生じないが、開いている間に、導入されると細胞の遺伝子構造を変え得るDNAのような大きい分子を含めて、普通は細胞膜によって排除される化学物質が細胞の内部に入ることを可能にすることができる。レーザー操作はまた、不妊治療支援プログラム及び治療院におけるヒトの卵子のアシステッドハッチングにも有用であることが証明されている。例えばZILOS−tk(λ=1450nm)を用いたレーザーアブレーションは、胚を囲む透明帯の小さい区域を薄くするか、さらには除去するために、インビトロで用いられており、この手技は、新しい胚を損傷することなく着床させることを促進するため、及び、胚の栄養外胚葉の一部を持ち上げて栄養外胚葉の着床前遺伝子診断のために取り出すことを可能にするために用いられる(例えば、非特許文献4を参照のこと)。
レーザーは、細胞操作のための酵素的又は機械的な方法に伴う上述の多くの問題を回避する。レーザー切断ビームは非物質であり、グロースチャンバ内にいかなる異物をも導入する可能性がないので、汚染がない。自動ステージを用いた顕微鏡ベースのレーザーシステムは、検体を、その後の継代のために、必要に応じて自動的に再実行できるパターンで、ミクロン精度で小区域に分割するように調整することができる。
しかし、レーザービームには大量のエネルギーが含まれるので、レーザー操作における1つの問題は、熱の発生及び隣接構造に対する損傷である。細胞操作に用いられるレーザーは、マイクロ秒以下の短パルスで作動されて短時間にエネルギー線量を送出する場合が多い。系に対する全エネルギーは、レーザー出力、パルスの持続時間、パルスの数などの1つ又はそれ以上のパラメータを変えることによって微調整することができる。局部加熱は、出力及び全パルス持続時間が増大するにつれて高まることになる。
米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)によって承認されている国際規格IEC 60825−1改正2(さらに21C.F.R.§1040.10も参照のこと)によれば、レーザーは、使用中に目又は皮膚に対して生物学的損傷を引き起こす能力によって分類される(例えば、FDA Laser Notice No.50を参照のこと)。レーザーの波長、ビーム出力、及びパルス持続時間に基づいて、分類は、全ての通常の使用条件下で安全なクラスIから、潜在的に壊滅的且つ恒久的な目の損傷を生じさせることに加えて、皮膚を焼灼し又は可燃物を発火させ得る高出力レーザーであるクラスIVへと進む。クラスIレーザーは一般に、切断又は焼灼のためには出力が不十分であると考えられる。
PALM(登録商標)と呼ばれるレーザーマイクロダイセクションシステムは、UVのN2レーザー(λ=337nm、パルス持続時間3ns、ピークパルス出力10kW超)を用いて、選択された細胞集団及び単一細胞を組織切片から回収するためのシステムを提供する(例えば、非特許文献5を参照のこと)。355nmの周波数3倍化Nd:YAGレーザーもまた、この目的のために使用されている。UVレーザーからのパルスは、顕微鏡を通して合焦され、組織切片内で細胞及び組織のレーザーアブレーションを生じさせる。有効試料質量を最小化することが必要とされるので、試料は、一般には媒質で覆われない。PALMは、生体物質を超音速で試料から吹き飛ばされる原子にまで分解する、光化学機構を通して動作すると考えられる。この切断作用は、レーザーのごく小さな焦点(<1μm)に限定され、隣接した細胞又は近くの核酸及びタンパク質のような近接した物質は無傷のまま残される(例えば、非特許文献6を参照のこと)。第2のパルスが、切り抜かれた試料を採取装置内へと推進する。
これらの業績にも関わらず、UV光子の使用は化学線の影響のリスクがあり、また、生体物質を切断するために必要な極短強力パルスを生成するのに必要なクラスIII又はクラスIVレーザーは、潜在的に危険であり、且つ、作動に費用がかかる。
米国特許第7,072,377号 米国特許出願公開第2007/0291798号 米国特許出願公開第2009/0316259号 米国特許出願公開第2010/0118395号
Cooke,J.A.及びMinger,S.L.著「Culture of Human Stem Cells」、第2章、2007年 Harsch,M.A.他、Am.J.Pathol.、2001年、第158巻、p.1985−090、。 Ashkin,A.及びDziedzic,J.M.、Nature、1987年、第330巻、p.769−71 Pangalos,C.G.他、Fetal Diagn.Ther.、2008年、第24巻、p.334−339 Vogel,A.他、Meth.Cell Biol.、2007年、第82巻、第5章 Schutze,K.他、Cell.Mol.Biol.(Noisy−le−grand)、1998年、第44巻、p.735−746 Douglass−Hamilton,D.H.及びConia,J.、J.Biomed.Optics、2001年、第6巻、p.205−213 Tadir,Y.及びDouglass−Hamilton,D.H.、Meth.Cell Biol.、2007年、第82巻、第14章
従って、安全に細胞を操作する(例えば、さらなる検査又は操作のための細胞の切断、細胞シートの切り出しなど)ための、信頼性が高く、費用効率が高い、クラスIレーザーに基づくシステム及び方法が、当該分野で必要とされている。
本発明は、クラスIレーザーからの目に安全な赤外エネルギーを用いて培養内の細胞を操作する方法及びシステムを提供する。レーザーエネルギーは、水性の細胞培地(aqueous cell medium)内で過熱水が蒸気に変化するときに1つ又はそれ以上の界面推進事象を生成し、焦点において細胞を操作するのに十分な流体力学的力を発生させる。
一態様において、本発明は、水性媒質(aqueous medium)内の焦点において界面推進(PBP)を誘発するための方法を提供し、この方法は、レーザー及び対物レンズを用いて1400nmより長い波長を有する赤外エネルギーを媒質内の焦点に供給するステップを含む。
1つ又はそれ以上の好ましい実施形態において、レーザーは、クラスIレーザーである。
種々の実施形態において、レーザーエネルギーは、1400nmと1500nmとの間の波長を有する。
特定の実施形態において、レーザーエネルギーは、約1450nmの波長を有する。幾つかの実施形態において、レーザーエネルギーは、1400nmと1450nmとの間の波長を有する。さらなる実施形態において、レーザーエネルギーは、1410nmと1430nmとの間の波長を有する。
他の実施形態において、レーザーエネルギーは、1850nmと1920nmとの間の波長を有する。
幾つかの実施形態において、水性媒質は、複数の浮遊細胞を含む。特定の実施形態において、細胞は幹細胞である。
種々の実施形態において、PBPは、1つ又はそれ以上の細胞を別の場所に移す。
幾つかの実施形態において、PBPは、1つ又はそれ以上の膜に貫入する。特定の実施形態において、貫入することは、外来性DNAを細胞内に組み入れることを含む。
幾つかの実施形態において、本方法は、媒質を通して焦点を移動させるステップと、前述の供給するステップを繰返すステップとをさらに含む。特定の実施形態において、移動させるステップは、毎秒10フレームに等しいか又はそれ以下の頻度で実施される。
幾つかの実施形態において、供給するステップは、100Hzと1000Hzとの間の複数のパルスを供給することを含む。特定の実施形態において、供給するステップは、毎秒約200パルスを供給することを含む。
特定の実施形態において、レーザーエネルギーは逐次的パルスで供給され、第1のパルスは1450nmと1490nmの間の波長を有し、第2のパルスは1400nmと1430nmとの間の波長を有する。
幾つかの実施形態において、前記の供給するステップは、赤外エネルギーを4ms未満の持続時間の1つ又はそれ以上のパルスで供給することを含む。特定の実施形態において、供給するステップは、赤外エネルギーを50μsと500μsとの間の持続時間の1つ又はそれ以上のパルスで供給することを含む。さらなる実施形態において、供給するステップは、赤外エネルギーを約150μsの持続時間の1つ又はそれ以上のパルスで供給することを含む。
別の態様において、本発明は、水性媒質内の焦点において界面推進を誘発するためのシステムを提供し、このシステムは、1400nmより長い波長を有する赤外エネルギーを供給するレーザーと、対物レンズとを備える。
1つ又はそれ以上の好ましい実施形態において、対物レンズは40×又は20×である。
幾つかの実施形態において、レーザーの出力は、200mWと400mWとの間である。特定の実施形態において、レーザーの出力は、約300mWである。
特定の実施形態において、レーザーは、赤外エネルギーを複数の繰返しパルスで供給し、パルスについて平均されたシステムの平均出力は、90mW未満である。
種々の実施形態において、システムは、機械式ステージ、ターレット、接眼レンズ及びカメラのうちの少なくとも一方、並びにダイクロイックミラーを有する顕微鏡をさらに備え、レーザーは、ターレットに取り付けられ、ミラーは、レーザーからの赤外エネルギーをステージに向けて反射し、可視光を接眼レンズ及びカメラのうちの少なくとも一方の中に向けて反射する。
1つ又はそれ以上の好ましい実施形態において、レーザーは、対物レンズに対して恒久的に固定される。
本発明の付加的な特徴及び利点を以下に説明する。この概要部は、本発明の特定の特徴を単に例証することを意図したものであり、本発明の範囲をいかようにも限定することを意図するものではない。本発明の特定の特徴又は実施形態を論じていないこと、又はこの概要部に1つ又はそれ以上の特徴を含めることは、特許請求される本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
前述の概要、並びに、本出願の好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明は、添付の図面との関連で読むと、より良く理解されるであろう。本出願の装置を説明するために、図中に好ましい実施形態を示す。しかし、本出願は、図示した通りの配置及び手段に限定されないことを理解されたい。
界面推進の第1段階の略図である(縮尺なし)。IRレーザーからの入射ビームが、ペトリ皿内の水性媒質内の焦点上に合焦され、その回りの水が沸点を超える温度に過熱される。 過熱水の相変化がトリガされた後で形成される大きな蒸気泡を示す略図である。蒸気泡の形成は、流体力学的力に応じて近くの物体を移動させる。 蒸気泡の崩壊後、溶解前の(ex−solved)気体(N2、O2)の小泡が、水性媒質内に再溶解するまで一時的に残る。 直径4μmの微小球の懸濁液中で形成された直後の相変化蒸気泡のストロボスコープ画像である。顕微鏡は、皿の床面の僅かに上方のPBP泡に焦点を合わせており、従って、床面上のビーズは僅かに焦点ぼけしている。 最大半径に近い相変化蒸気泡のストロボスコープ画像である(スケールバー=100μm)。 20×の対物レンズを用いて、水中の直径4μmの微小球(ポリスチレンビーズ)の層を切り開いた軌跡である。 ヘキスト(Hoechst)33342及びヨウ化プロピジウムで染色した網膜上皮細胞の厚いコロニーを切り開いた軌跡である。全ての細胞核はヘキスト(Hoechst)33342(青)で染色され、膜が損傷を受けた細胞はヨウ化プロピジウム(赤)で染色される。 ヘキスト33342及びヨウ化プロピジウムで染色された網膜上皮細胞の薄い層を切り開いた軌跡である。(スケールバー=100μm)。
レーザーは、材料、金属及びフィルムを切断するための有用なツールであることが長い間、知られている。レーザーは生体物質を切断するためにも同様に有用であることが証明されているが、レーザー系の高いエネルギーは、ユーザにとって重大な安全性の問題を引き起こす。おそらく最も重大なのは、可視光領域を含む1400nm未満の波長の光が目の角膜を透過し得るということである。レンズを通して合焦されると、焦点スポット内の高度にコヒーレントなレーザー光は、網膜の局所的領域を不可逆的に焼灼する可能性がある。非常に短いパルスの高エネルギー光であっても、恒久的な網膜損傷を生じさせる可能性がある。
そのうえ、より短波長の青及び紫外領域などの光は、化学結合を分断してフリーラジカルを生成するのに十分なエネルギーを運び、フリーラジカルは広範囲の組織損傷を引き起こす可能性がある。光放射から生じる化学的効果は「化学線」効果と呼ばれ、一般に、これらの効果は、生体組織及びDNAのような重要な分子に損傷を与えると考えられている。従って、生きた細胞を操作するときには、不可逆的な細胞損傷の可能性を最小にすることが非常に望ましく、光子のエネルギーが低すぎて化学線効果を生じさせない波長を用いことが好ましい。より長いレーザー波長は、化学線効果を最小にするという目標の達成を助長することができる。
レーザーの安全性に関連した別の関連因子は、レーザーのクラスである。前述のように、クラスIレーザーは一般に安全であると考えられ、日常的使用にはあまり注意を要しない。ワット(W)単位で通常計測される所与のビーム強度に対して、波長が長いレーザーほど、より安全である傾向がある。水は生体物質の主要な成分であるので、水とレーザービームとの相互作用は、生細胞に対するレーザーの影響の重大な決定因子である。1400nmより長い波長(光スペクトルの近赤外から中赤外(IR)部分における)の光子からのエネルギーは、水分子によって振動エネルギー(分子内伸縮及び変角による)として効率的に吸収され、直ぐに熱として放出される。水及び水性媒質内においては、ビームエネルギーは非常に短距離で急速に減衰する。この波長領域における光子は非常に強く吸収されるので、硝子体液を通過して網膜に達することはない。同様に、λ>1400の光子のエネルギーは低すぎて化学線効果を生じさせない。これらの特性のため、λ>1400nm(例えば、1400−1500nmの波長領域内)のクラスIレーザーは、典型的には「目に安全」と分類される。
今まで、1400−1500nm領域内のクラスIレーザーは、生体物質を切断するための有効なツールではなかった。近赤外レーザーはレーザーピンセットとして用いられているとはいえ、細胞の切断及び細胞コロニーの操作には短波長UV繰返しパルスレーザーが適用されている。これらの高強度ビームは、一般に、典型的には3ns又はそれ未満の非常に短いパルス持続時間しか必要とせず、パルスの間のエネルギーは10kW(30μJ)のオーダーであり、複数のパルスで所望の効果を生じさせる。合焦されたUVレーザービーム内の光子からの高強度の局所照射は、非常に小さい領域内の化学結合を壊すのに十分なエネルギーを与える。しかし、散乱したUV放射は、局所細胞に影響を及ぼすことがあり、周囲体積内の細胞を損なう可能性がある化学変化を誘発することがある。本発明は、もっぱら目に安全な領域のクラスI赤外放射を使用する。より長時間にわたってパルス化される、より低強度のビームにより、効果的な細胞コロニーの切断/操作が可能になる。
前述のように、水はIR放射の強力な吸収体となり得る。光子エネルギーと、H2O分子の対称及び非対称伸縮並びに変角振動モードの種々の倍音及び重ね合わせとの共鳴が、波長範囲1000nm<λ<2000nmにおける吸光度の大きな変動をもたらす。対称(ν1)及び非対称(ν3)基本振動モードに対応する強い吸光度ピークが、λ=1450nmに存在する。従って、水の吸収がλ=1450nmのレーザー光の透過を大いに制限する。
媒質が高度に吸収性である場合、媒質を透過した後に標的に達するのはIRビームのうちのわずかな部分のみである。高度に吸収されるIRレーザービームのエネルギーを細胞に送達するために、今まではコンタクトファイバを用いてビームを光ファイバで直接、標的に誘導した。しかし、この方法ではビームを合焦することができず、また前述の機械的方法と同様に、外部の物質(例えば、光ファイバ)がグロースチャンバ内に導入されるので、汚染のリスクがある。
顕微鏡光学系を用いて焦点に集光される適切な波長のレーザービームは、水の吸収によるエネルギーの減少を克服することが可能である。これは、光学的に透明な(ペトリ皿のような)基材が、倒立顕微鏡の光学系を通じて形成された収束光ビームを透過させて標的へと伝える、細胞培養において特に有用である。焦点においてビームのエネルギーは最強となり、近くの細胞及び物質に影響を及ぼすことができる。ビームの焦点は皿の床面から15μm以内に保持されることが好ましい。この目的のためには倒立顕微鏡が一般に用いられるが、同じ原理は正立顕微鏡にも当てはまる。適切な波長及び焦点強度の低出力IRレーザーは、細胞操作の目的のために十分なエネルギーを送出することが可能であり、前述の多くの望ましくない特性を有するUVレーザーへの依存を避けることができる。
水性媒質内での放射の吸収及び関連する加熱効果は、例えば、Douglas−Hamilton及びConiaによって、並びにTadir及びDouglas−Hamiltonによって論じられている(両方共に引用により本明細書に組み入れられる非特許文献7及び非特許文献8を参照のこと)。例えば、IRレーザー(>100mW、λ=1480、パルス長100−3000μs)を用いて胚の透明帯を操作するとき、水性媒質は著しく過熱され、急速に200℃を超える温度(例えば、約300℃)に達する。そのような高温において、水は非常に不安定である。核生成部位が存在すると、このような温度の水はほぼ爆発的な速度で液相から蒸気相に変化することになる。しかし、核生成部位が存在しないときには、パルスの終端において、過熱した水は、爆発的に気化する前に急速に(例えば、10−100μs以内に)沸点を下回るまで冷える。この、過熱とその後の冷却というプロセスは、普通のパルスレーザー条件下で発生し、その場合、エネルギーを送達するパルスは、冷却の期間によって中断される。
しかし、核生成部位又は付加的なエネルギーが過熱水に与えられると、沸騰が起こることがあり、即ち、液体水から水蒸気への相転移が発生することがある。過熱水における相転移は、泡と液体との間の急速に移動する界面の形成をもたらし、この界面が、細胞などの局所的物体を推進することができる(界面推進)。膨張に続いて、より冷たい大量の水への曝露により泡の急速な冷却が起る。この急速な冷却が、数ミリ秒以内に蒸気泡の再凝縮及び崩壊をもたらす。過熱水を加熱し冷却するこのサイクルは、本発明による物質を移動させる液相−気相転移を引き起こすものであり、これを本明細書では「界面推進」(PBP)と呼ぶ。本発明の幾つかの実施形態において、PBP泡は、30μs未満の寿命を有する。
PBP効果の概略の説明図を、図1Aから図1Cに示す。図1Aは、本発明による装置の構成要素の縮尺なしの略図を示す。適切な波長及び出力のレーザーからの平行光線が対物レンズを通して合焦され、過熱水を生成する。この結果、急激な相変化が生じる。本発明によるレーザー光を供給するための適切なシステムの例としては、Hamilton Thorne,Inc.によって提供されるZILOS−tk及びXYCloneレーザーシステムが挙げられ、これは、対物レンズに対して固定されたレーザーを有し、顕微鏡のターレット上に取り付け可能である。これら及び他の適切な例は、それぞれの全体が引用により本明細書に組み入れられる特許文献1、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4に記載されている。図1Aに示すように、レーザーからの光が、焦点近傍の領域を液体の沸点を超える温度まで加熱する。潜在期間の後、過熱水の大部分が急速に気化して比較的大きな蒸気泡を形成する(図1B)。泡は、急速に膨張して水蒸気がそれよりはるかに低温の周囲の水(例えば、約37℃)に接触した後、数マイクロ秒以内に再凝縮して消滅する。再凝縮プロセスは、典型的には30μsより短時間で起こる。溶解前の(ex−solved)N2及び/又はO2の非常に小さい泡が観察されることがあり、この泡は、これらの気体が溶液に再溶解するまでの間、典型的には約1s後まで、蒸気泡の位置に残っている(図1C)。相爆発によって引き起こされる急速な放射状の流れが、細胞などの物体を相爆発中心から引き離し、その際、流体速度は約10m/sに達する。
界面推進は速すぎて、標的の普通の観測中には見ることができないが、その形成及び効果は、例えば、ストロボスコープXeフラッシュランプを用いて直接研究することができる。図2は、4μmのラテックスビーズを含む水性媒質内で発達中のPBPのストロボスコープ顕微鏡画像を示す。蒸気泡の形成の最初期段階においても、外側に向かうマイクロビーズの放射状の移動が見られる。水蒸気泡は、典型的には10μsより短時間で最大半径に達する(図3)。一連の画像を分析して行った計算に基づいて、蒸気泡の膨張速度は約10m/sとなる。これは音速よりも十分に遅いので衝撃波は形成されないが、界面の動きは、周囲の水及びマイクロビーズをビーム経路から移動させるのに十分な力を及ぼす。この点で、界面推進は、船によって形成される船首波と類似の作用で細胞をレーザービームの焦点から押しのけることができる。
界面推進の特性は、過熱水に関連した相転移の予測挙動と一致する。過熱水の体積は、パルス時間が長くなると共に準線形的に増大する。潜在時間(界面膨張プロセスが始動するのにかかる時間)が長いほど、より多くの熱エネルギーが蓄積され、ひとたび形成されるとPBP泡はより大きくなることが見いだされた。直接計測は、蒸気泡の最大直径が、予想される通り、近似的に潜在時間の3乗根に比例して増大することを示す。
本明細書で説明するPBP効果は、細胞など近くの物体を、真の衝撃波には付随することがある損傷を引き起こすことなく移動させるのに十分な流体力学的力を生成する。重要なことは、これらの力が直接的なレーザー加熱ではなく界面推進によって生成されることである。
本明細書で説明する実施形態は、エネルギーを短時間蓄積してそれを急激な相変化で放出する水の能力を利用するものである。このことは、熱が拡散することができるよりも速く液体を加熱することによって達成される。本発明はさらに、水がそのIR吸収特性において著しい温度依存性を有するという事実を利用する。適切な波長を選択することにより、PBPを生成する確率を大幅に高めることができる。
本発明の好ましい実施形態は、クラスIレーザーと、効率的な赤外レーザービーム透過用に適合させた光学系を装備した倒立顕微鏡と、コンピュータ支援ステージ移動とを用いた、細胞コロニーを分断するため又は生体物質を切断するための方法を提供する。この実施形態を用いて、媒質が過熱水から蒸気に変化するときに、制御された界面推進事象を繰返し生成することができる。これらの事象は、細胞のような近くの物体を、著しく加熱することなく別の場所に移すのに十分な流体力学的力を生成する。従って、本明細書で説明する発明は、標的を熱的に弱め、融解させ又は蒸発させる従来のレーザー切断とは本質的に異なる。
本発明は、既知のUVレーザーに基づくマイクロダイセクションシステムよりも低強度で持続時間がより長いパルスを送出する、低エネルギーレーザーを規定する。本明細書で説明するレーザーの波長は、目に安全な範囲内にあることが好ましく、1400nm<λ<1500nmの範囲内にあることがより好ましい。適切なレーザーはまた、クラスI基準内に入る出力レベルを有する。
本発明の例示的な実施形態において、出力波長λが約1450nm、又は好ましくは1400nm<λ<1450nm、最も好ましくは1410nm≦λ≦1430nmの、InGaAsPダイオード赤外レーザーが用いられる。代替的に、出力波長λは1850nm≦λ≦1920nmである。レーザーは、繰返しモードでパルスを送出することができる。このモードでの動作中に許容されるパルスの最大数及びパルス速度は、レーザーをクラスI状態に維持するのに許容できる最大値とすることが好ましい。λ>1400nm(例えば、λ=1450nm)の放射に対する目及び皮膚の曝露のクラスI限界は、典型的には連続波照射に対して約100mW/cm2であり、パルス波ビーム対してはより高くなる。システムの平均出力は、繰返しパルスモードにおいて90mW未満に保たれることが好ましい。
本明細書で説明する機能に適した例示的なレーザー−対物レンズ系は、室温において約28cm-1の吸収率κ及び約360μmの光学的深さを有する、1450nm付近のλの出力を有するレーザーと、対物レンズとを備えることができる。これは、床面と試料との間の焦点距離が100μmを超えることを可能にすると同時に、高エネルギー密度が標的に適用されることを可能にする。幾つかの実施形態においては、赤外放射を試料に送達するための恒久的に結合された系として一緒に動作するレーザー−対物レンズ系を有することが好ましい。しかし、幾つかの用途又は目的に対しては、互換性のある一連の(例えば、異質のものを組み合わせた)レーザーと対物レンズとで構成されるレーザー−対物レンズ系を有することが好ましい場合がある。
本発明において有用な2つの例示的な好ましい対物レンズは、倍率20×(焦点距離=10mm)及び倍率40×(焦点距離=5mm)のものである。開口数(NA)はレーザーに実際に用いられる開口数よりも大きいことが好ましく、その理由は、対物後方レンズ(objective back lens)に入射する平行レーザービームは5mmのレンズ口径をいっぱいに満たさず、典型的には直径が約2mmであるためである。20×及び40×の対物レンズに対する対応する有効ビーム径は、それぞれ約3mm及び2mmであり、有効開口数(空気中で計測)は、それぞれNA=0.15及び0.2と見積られる。
特に好ましい実施形態において、本明細書で説明するレーザー−対物レンズ系は、顕微鏡と組み合せて使用される。このレーザー−対物レンズ系は、顕微鏡のターレット上に嵌め合わされ、45°のダイクロイックミラーから反射された赤外ビームが対物レンズを通って進み、標的に達する。ダイクロイックミラーは、IR波長を反射し、可視光波長を透過するように設計されており、レーザーからのIRビームを顕微鏡ステージ上の試料に向けて反射することができ、一方、可視光はミラーを真っ直ぐに通過して顕微鏡の接眼レンズ又は取り付けられたカメラに達するようになっている。このように、レーザー光が目に達する危険性なしに、同じ光路をレーザーによる操作と検体観察とに用いることができる。
実施例1:同じ位置における繰返しパルス
出力Pのレーザービームが時間t0にわたって液体標的に向けられる場合、対流を無視すれば、時間t(t>>t0)の後のビーム中心における温度Tは、近似的に式(1)によって与えられる。
(1)
式中、αは液体標的の吸収係数であり、Kは熱伝導率である。
n個のパルスが各々、時間間隔t後に追加される場合、n番目パルスの開始時における近似的な温度は、式(2)で与えられる
(2)
従って、レーザーの発射と発射の間でレーザースポットが僅かしか動かない場合、且つ、レーザーショット間の間隔が約10msである場合、後続のレーザーショットは、前のショットにより既に熱せられた液体中を進むことになる。1410nm<λ<1430nmの波長に対して、吸収係数(α)は温度とともに増大するので、第2及び後続のパルスの吸収は第1のパルスの場合よりも大きくなることになる。これらの特性の効果により、ひとたび最初のPBPが生じると、その後のPBP泡形成が促進されることになる。その結果、マルチパルスのビームは、進むにつれて各々の新しい位置においてPBPを再始動させ、ビーム焦点が動くにつれて粒子はビーム焦点から押しのけられる。
実施例2:移動する試料における繰返しパルス
本発明の好ましい実施形態において、レーザー−対物レンズ系によって生成される界面推進は、細胞切断のためにマルチパルスモードで用いられる。この実施形態において、繰返しパルスは、100−1000Hz、好ましくは約100−200Hzで送達され、媒質を通って焦点を移動させることで一連の隣接するPBP泡が生成される。細胞コロニーを通るこの移動の効果により、細胞が押しのけられ、ビーム経路によって二分されたコロニーの2つの側部の間に、広いクリアな分離部が残される。この効果は図4に示されており、この図はコンピュータ化されたステージ上のペトリ皿内の4μmビーズを用いて得られた画像を示す。このステージは、レーザーの焦点が細線で示される矩形パターンをたどって移動するようにプログラムされているが、任意のいかなる形状又は位置も可能である。切断部の幅は、潜在時間が長くなると蓄積されるエネルギーが増大して界面推進蒸気泡の体積が増大するので、潜在時間によって直接に変化する。図示されるように、レーザーによって生成される相爆発は、ビーズを両側に一様に移動させ、ギャップを残さない。ビームがたどる区域にはビーズがなく(後でそこに落ち着いた数個を除いて)、ビーズは、ビームの両側に流体力学的に押しやられ、軌跡の縁部に積み重なっているのが見える。
移動するPBP泡に伴う潜在的な困難は、合焦されたビームが標的区域内を移動する際に、推進バーストが連続的に始動することを確実にすることである。一般に、皿の表面から距離がある自由空間における媒質内でビームが合焦される場合には、比較的高出力(例えば、400mW)を用いてもPBPは生じない。PBPには十分な過熱水を蓄積する時間(αに強く依存する)が必要であり、始動は、境界に隣接したところの方が遙かに容易に起る。
界面推進は、媒質の塊を加熱することによって引き起こすことができる直接レーザー生成対流とは明確に区別することができる。これらの対流的加熱効果は、いかなる相変化も起こさずに媒質を熱する、パルス持続時間がより長く、強度がより低いビームを用いて生じさせることができる。しかし、対流だけでは、細胞コロニーを切り開く、細胞がレーザーの軌跡が一掃されたクリアな軌跡を生成することができない。この細胞の移動には、急激な界面の膨張によって生成される流体力学的力が必要である。
実施例3:二重パルス始動
幾つかの実施形態において、PBP泡は、最初に長い低出力IRパルスで媒質を過熱レベルまで加熱し、次いで非常に短い高出力パルスを用いて、必要とされる正確な時刻に加熱領域内に不連続部を誘発することによって始動させることができる。精度は、レーザー−対物レンズ系のエネルギー伝達機構とトリガ機構とを分離することによって得ることができる。
二重パルス始動法には、本明細書で説明された第1のレーザー−対物レンズ系と並んで動作する別のレーザーが有益である。337nmで動作するUVレーザーからの強力で非常に短いピコ秒又はフェムト秒パルスは、小さい蒸気泡を生成して相膨張をトリガすることができるが、そのようなシステムのコスト及び安全性の面での厄介な問題は、本発明によって開示される小型で簡単な装置によって与えられる利点を損なうものである。
しかし、他の始動波長が可能であり、より有用である。水は、赤外放射を約3μmの波長で特に良く吸収する。しかし、この波長のレーザー光は、大部分のガラスをほとんど透過せず、またIRスペクトルのこの部分に適応する顕微鏡を構築することは非常に難しい。水のエネルギー吸収の別のピークは1.9−2.1μmに現れるので、1450−1490nmでの先行照射の後の1.9μmの短く強いパルスにより、1450nmレーザーによって生成された過熱水中に蓄積されたエネルギーを放出させるのに必要な相変化を始動させることができる。同様のトリガは、例えば1410nm≦λ≦1430nm、例えばλ=1420nmで得ることができる。パルス間の時間及び2つのレーザーパルスの強度を調節することによって、相変化プロセスを制御することができる。
従って、2つ若しくはそれ以上のレーザーを用いて、又は2つ若しくはそれ以上の波長の光を照射して過熱事象及び相変化誘発事象を別々に生成する2重パルス始動法は、明確に本発明の範囲に入る。
実施例4:細胞生存度
マウス線維芽細胞基質上で増殖させた網膜上皮細胞及びヒト幹細胞を用いて、細胞生存度を試験した。界面推進用レーザーにより、コロニーを、熱的切除にはよらず、その周囲に及ぼされた流体力学的力に依拠して切断して、分離したパッチにすることができる。細胞生存度は、2つの蛍光DNA結合染料、即ち、細胞膜浸透性青色染料であるヘキスト(Hoechst)33342、及び細胞膜不浸透性赤色染料であるヨウ化プロピジウムを同時に用いて細胞を染色することによって評価した。生存細胞は、ヘキスト33342を吸収するがPIは吸収せず、青く見えることになる。他方、非生存細胞は、損傷した細胞膜を有しており、これによりPIが細胞内へと貫入してDNAに結合し、赤く見えることになる。従って、細胞生存度は、試料中の細胞の総数と赤色の細胞の数とを比較することによって決定することができる。
直径<5μmのレーザー焦点は、PBPから生じる流体力学的波動を生成することにより、比較的厚い細胞層(図5)及び薄い細胞層(図6)を一掃して軌跡を形成することができた。それぞれの場合において、一掃された軌跡は、おおよそ50−100μmの幅であった。細胞の標識により、大部分の細胞は単に一掃されただけで損傷を受けていないことが示された。軌跡の開けた部分に残っていた細胞(例えば、レーザースポットの経路から<1μm以内にあった細胞)は非生存であるが、PBPによって脇に押しのけられた厚い細胞塊の側壁上の細胞は無傷であるように見える。他の実験により、これらの細胞が機能を有し、培養内で自由に増殖することができる(ガラスピペットを用いて機械的に継代した細胞と同程度、トリプシン処理を用いて継代した細胞と比べて改善された)ことが示された。遺伝子発現及び核型分析により、このようにして継代した細胞が正常な転写及び翻訳機能を有し、遺伝的に安定であることがさらに示された。薄い細胞塊においては、レーザー切断後に非生存細胞はほとんど見出されなかった。この結果は、熱的切除を伴わない機構を通じて細胞切断(例えば、哺乳類細胞培養の継代のため)を達成することができること、そしてこれは、制御された界面推進から生成される流体力学的力によって引き起こされることを示す。
さらに、PBPによる(例えば、直接レーザービーム内にある細胞の)選択的な膜浸透/損傷を、例えば、細胞に形質移入する(外来DNAを組み込む)ため、又は塊の切除(形質移入後の細胞の単離、培養物中の汚染細胞の除去などのため)のために利用することができる。後者の用途において、PBPは、指定区域内の細胞を排除して、区域外の細胞を手つかずで残すように、又はその区域の外側の細胞を排除して、区域内の細胞を手つかずで残すように用いることができる。この排除は、例えば、レーザーを、各経路間の距離を短くして指定区域をカバーするようにプログラミングして、その結果、床面が閉じた格子で覆われるようにして、あらゆる細胞が、他の細胞から及びチャンバの床面から切り離されて取り去られるか、又は、レーザービームがその上を走行してそれにより死滅されるようにするか、いずれかによって達成することができる。実験により、15×15μmと30×30μmとの間の間隔を有する格子をそのような切除のために用いることができること、一方、35×35μmと40×40μmとの間の格子は、格子の正方形内で最小限の数の細胞が生き残ることを可能にすること、及び、40×40μmより大きい(例えば、100×150μm、200×300μm)格子は細胞の継代のために用いることができることが示された。
本発明の好ましい例示的な実施形態に適用される本発明の基本的な新規の特徴を示し説明したが、当業者であれば、開示された本発明の形態及び細部において、省略、置き換え、及び変更を、本発明の趣旨から逸脱せずに行うことができることが理解される。さらに、当業者であれば、多くの修正及び変更に容易に想到し得ることが明白である。従って、本発明を、図示して説明した通りの構造及び動作に限定することが望まれるものではなく、それゆえに、全ての適切な修正均等物は、特許請求される本発明の範囲に入るように再分類することができる。従って、添付の特許請求の範囲によって示されるようにのみ限定されることが意図されている。

Claims (13)

  1. 水性媒質内の焦点において界面推進(PBP)を誘発することにより、該水性媒質内に懸濁された複数の細胞の1つ又はそれ以上を別の場所に移す方法であって、1400nmより長い波長を有する赤外エネルギーを、国際規格IEC 60825−1によるクラスIレーザーから対物レンズを通して前記媒質に供給するステップ前記水性媒質を過熱し、相転移を誘発するステップ;前記媒質を通して前記焦点を移動させるステップ;及び、前記赤外エネルギーを供給するステップを繰り返して、一連の隣接する、各々が30μs未満の寿命を有するPBP泡を生成するステップを含み、
    前記レーザーの出力は、200mWと400mWとの間であり、
    前記供給するステップは、前記赤外エネルギーを4ms未満の持続時間の1つ又はそれ以上のパルスで供給することを含む、
    ことを特徴とする方法。
  2. 前記供給するステップは、前記赤外エネルギーを100Hz〜1000Hzの繰返しパルスで供給することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記供給するステップは、前記繰返しパルスを100〜200Hzで供給することを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  4. 前記供給するステップは、前記赤外エネルギーを異なる波長を有する少なくとも2回の逐次パルスで供給し、別個の過熱及び相転移事象を生成することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  5. 前記供給するステップは、前記赤外エネルギーを50μsと500μsとの間の持続時間の1つ又はそれ以上のパルスで供給することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  6. 前記供給するステップは、前記赤外エネルギーを150μsの持続時間の1つ又はそれ以上のパルスで供給することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  7. 前記供給するステップは、前記赤外エネルギーを繰返しパルスで供給することを含み、パルスで平均された前記レーザの平均出力は90mW未満であることを特徴とする、請求項1に記載の方法
  8. 前記逐次パルスは別個のレーザーから供給されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
  9. 前記逐次パルスは、1450nmと1490nmの間の波長を有する第1のパルスと、1410nmと1430nmとの間あるいは1.9μmと2.1μmとの間の波長を有する第2のパルスとを含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
  10. 前記第1のパルスは1450nmの波長を有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  11. 前記第2のパルスは1.9μmの波長を有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  12. 前記第2のパルスは1420nmの波長を有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  13. 前記焦点を移動させるステップは、所定のパターンに従うようにプログラムされたコンピュータ化された顕微鏡ステージ上の、水性媒質内に懸濁された複数の細胞を収容する皿を移動させることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
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