以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るサイロ内壁面ライニング方法の工程を表す流れ図である。図2は、本実施の形態のサイロ内壁面ライニング方法により内壁面にライニング材を配設するサイロの概略構成を表すものである。図3から図8及び図10は、本実施の形態のサイロ内壁面ライニング方法における各工程を表すものである。本実施の形態に係るサイロ内壁面ライニング方法は、サイロ10の内壁面に複数枚の平板状のライニング板20を配設するものである。
サイロ10は、例えば、穀物やその加工品等の被貯蔵物を貯蔵するサイロ本体11と、サイロ本体11に空調エアを供給する空調エア供給手段12とを備えている。サイロ本体11は、例えば、略円筒状の周壁部11Aと、周壁部11Aの下端に連なり下方へ向けて内側に傾斜された略円錐状のホッパー11Bと、周壁部11Aの上端部を閉鎖する略円板状の上壁部11Cとを有している。ホッパー11Bの下端部には被貯蔵物をサイロ本体11の外へ排出するための排出シュート13が形成されている。また、ホッパー11Bの途中部には、例えば、傘状のインレットカバー14が設けられ、このインレットカバー14を介して空調エア供給手段12からの空調エアがサイロ本体11に供給されるようになっている。インレットカバー14は二本のカバーが同一平面において十字に交差した形状となっている。
本実施の形態では、使用されているサイロ10について、ホッパー11Bの内壁面を補修する場合について説明する。まず、例えば、図3に示したように、サイロ10内に配設されたインレットカバー14の交差部にレーザー照射器30を設置し、ホッパー11Bの内壁面にレーザー光Lを照射して水平ラインを印す(ステップS101;水平ライン罫書き工程)。具体的には、例えば、レーザー照射器30によりレーザー光Lを照射する方向を回転させながらレーザー光を内壁面に照射し、照射されたレーザー光Lに従って、作業員が内壁面にトレースする。
次いで、例えば、図4に示したように、インレットカバー14の最上部の高さにおいて、内壁面との間に隙間を開けて、内壁面に沿って一周する環状足場32を組む(ステップS102;環状足場組み工程)。具体的には、例えば、予め作業するホッパー11Bの内径よりもやや小さい大きさで8分割した足場板32Aを作製し、足場板32Aをインレットカバー14に載せながらボルトで繋ぎ環状に組んだのち、内壁面から均等に位置させながら、要所を三角ブラケットで支える。なお、図4は環状足場32を上から見た図である。
続いて、例えば、図5に示したように、環状足場32に2本のアングル33Aを渡し、その間にピケ足場板33Bを並べて中央部作業床33を作製する(ステップS103;中央部作業床作成工程)。中央部作業床33の表面には、防炎シートを広げて固定することが好ましい。なお、図5は中央部作業床33を上から見た図である。次に、例えば、図6に示したように、サイロ10内においてライニングする領域の上にシート34を張り、ライニング領域とその上の領域とを分離する(ステップS104;天井シート張り工程)。具体的には、例えば、ホッパー11Bの中央部にポール35を立て、ポール35から内壁面に向かって複数の骨組み36を広げ、骨組み36の上にシート34を広げて張る。シート34には、防炎シートを用いることが好ましい。また、シート34の縁部を内壁面にテープで貼り、目張りすることが好ましい。
その後、例えば、ホッパー11Bの内壁面を清掃し(ステップS105;内壁面清掃工程)、各種配線を行う(ステップS106;配線工程)。次いで、例えば、図7に示したように、水平ライン罫書き工程(ステップS101)で印した水平ラインを基準ラインSLとし、又は、この水平ラインから一定距離あけた位置に基準ラインSLを印し、この基準ラインSLにライニング板20の上端を合わせて、内周方向に複数枚のライニング板20を配設することにより一段目を形成する(ステップS107;一段目配設工程)。ライニング板20は、例えば、合成樹脂により構成することが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン或いはフッ素樹脂等の熱可塑性合成樹脂、又は、繊維強化プラスチック等により構成すればより好ましい。ライニング板20は、予め、ホッパー11Bの形状に合わせて、例えば、上辺が下辺よりも長い台形状に形成しておくことが好ましい。
また、一段目配設工程(ステップS107)では、例えば、インレットカバー14と内壁面との接合部からライニング板20の配設を行うことが好ましい。インレットカバー14と内壁面との接合部においては、例えば、図8に示したように、接合部の位置を示すガイド板37を用い、このガイド板37を接合部に当てて、接合部とガイド板37との形状のずれを測定し、それに基づいてライニング板20を加工して配設することが好ましい。例えば、図8に示した場合であれば、ガイド板37のA点、C点、D点が接合部からどれだけ離れているか、又は、B点をどれだけ削ればよいか等を測定し、加工用のライニング板20にガイド板37を合わせ、測定した各点のずれを印して加工ラインを引き、加工ラインに沿って切断し配設する。
インレットカバー14と内壁面との接合部に沿って加工したライニング板20を配設したのち、その隣に次のライニング板20を配設する。具体的には、例えば、次に配設するライニング板20の上端を基準ラインSLに合わせつつ、既に配設したライニング板20にぶつかるまで寄せて配設する。その際、例えば、2枚のライニング板20の下端側に隙間ができる時には、ライニング板20の上端を基準ラインSLに合わせた状態で隙間ができないように一部を切断して形状を合わせる。これを順に繰り返して一段目を形成する。なお、ライニング板20の配設は、例えば、サイロ10がスチール等の金属製である場合には、ライニング板20に穴をあけ、この穴にスタッドボルトを挿入して内壁面に溶接し、皿ナットで締め付けて固定する。
ライニング板20に穴をあける場合には、例えば、図9に示したような穴あけ部材38を用いることが好ましい。この穴あけ部材38は、例えば、本体38Aの先端に設けられた皿穴キリ部38Bと、皿穴キリ部38Bの先に設けられたねじ穴キリ部38Cと、本体38Aの周りに設けられた深さ制御部38Dとを備えている。皿穴キリ部38Bは皿穴21を形成するためのもの、ねじ穴キリ部38Cはねじ穴22を形成するためのものであり、これにより1回の作業で皿穴21とねじ穴22を開けることができるようになっている。深さ制御部38Dは皿穴21の深さを制限するものであり、例えば、ねじ穴キリ部38C及び皿穴キリ部38Bによりライニング板20に穴をあけていったときに、深さ制御部38Dの一端部がライニング板20に当接することにより、皿穴21の深さを一定とすることができるようになっている。
このようにして一段目を配設したのち、一段目の上に、基準ラインSLを基準として、内周方向に複数枚のライニング板20を配設することにより二段目を形成する(ステップS108;二段目配設工程)。なお、図10に示したように、一段目配設工程(ステップS107)では、ライニング板20の上端面を外周側から内周側に向かい下に傾斜するように加工したものを用い、二段目配設工程(ステップS108)では、ライニング板20の下端面を外周側から内周側に向かい下に傾斜するように加工したものを用いて、一段目の上端面に二段目の下端面を合わせて配設することが好ましい。被貯蔵物が一段目と二段目との境目で引っ掛かってしまうことを抑制することができるからである。その他のライニング板20の配設方法は、一段目と同様である。二段目を配設したのち、必要に応じて、二段目の上に、三段目のライニング板20を配設する。これにより、ホッパー11Bの内壁面がライニングされる。
このように本実施の形態によれば、サイロ10の内壁面に水平ラインを罫書き、この水平ラインに基づき、複数枚の平板状のライニング板20を配設するようにしたので、ライニング板20を隙間なく配設することができる。よって、穀物等の被貯蔵物の滑りを良くすることができ、かつ、ライニング板20を用いるので、塗装に比べて耐久性を向上させることができ、補修の手間を削減することができる。
また、一段目配設工程(ステップS107)では、インレットカバー14と内壁面との接合部からライニング板20の配設を行い、接合部では、ガイド板37を接合部に当ててガイド板37からの形状のずれを測定し、それに基づいてライニング板20を加工するようにすれば、より容易に隙間なくライニング板20を配設することができる。
更に、一段目配設工程(ステップS107)では、ライニング板20の上端面を外周側から内周側に向かい下に傾斜するように加工したものを用い、二段目配設工程(ステップS108)では、ライニング板20の下端面を外周側から内周側に向かい下に傾斜するように加工したものを用い、一段目の上端面に二段目の下端面を合わせて配設するようにすれば、穀物等の被貯蔵物が一段目と二段目との境目で引っ掛かってしまうことを抑制することができる。
加えて、一段目配設工程(ステップS107)の前に、サイロ10内においてライニングする領域の上にシート34を張り、ライニング領域とその上の領域とを分離するようにすれば、既に使用しているサイロ10の補修を行う場合に、上方から穀物等の被貯蔵物の固まりや粉塵が落下してくることを抑制することができる。
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、既に使用されているサイロ10について、ホッパー11Bの内壁面を補修する場合について説明したが、新しくサイロ10を作る場合にも本発明のサイロ内壁面ライニング方法を用いることができる。また、上記実施の形態では、各構成要素について具体的に説明したが、全ての構成要素を備えていなくてもよく、また、他の構造を有するように構成してもよい。