JP6044920B2 - 酸化ldl受容体に作用するリポソーム - Google Patents

酸化ldl受容体に作用するリポソーム Download PDF

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Description

動脈硬化発症に関わる酸化LDL受容体(LOX−1)へのリガンドの結合阻害、LOX−1を介した細胞内への物質送達を実現する方法に関する。
酸化LDL受容体であるLOX−1は、動脈硬化症に関係する酸化LDL(Low density lipoprotein)などを認識する受容体である。LOX−1の機能阻害により、動脈硬化の初期反応である血管内皮機能不全の誘導を抑制し、動脈硬化発症を抑制する可能性があるが、効果的な阻害剤の開発は達成されていない。また、LOX−1を介した血管内皮機能不全を誘導する真に重要な分子構造の特定は、食生活などによる予防のための重要な知見であるが、LOX−1を介した送達システムは開発されておらず、LOX−1特異的な物質送達システムの開発が求められている。
1,2−ジオレオイル−sn−グリセロー3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](DOPG)を成分としたリポソーム製剤、ならびに、薬物送達システムは、複数報告されている(特許文献1および2)。
なお、LOX−1抗体を埋め込んだ小単層膜リポソーム(SUV)を作製し、ラット生体内におけるLOX−1への送達媒体としての活用を示した論文が存在する(非特許文献1)が、これは単に抗原抗体反応を利用したものに過ぎない。
特表2011−500520 特表2008−533016 J Neurosurg. Vol. 115,720−727,2011
本発明は、抗体などの煩雑な手段を使用しないLOX−1特異的な送達システムは開発されていない状況において、開発のためにLOX−1に特異的、かつ、強い親和性を持つ、リポソームの製造を実現した。また、開発の過程で、DOPGのみで安定なリポソーム、特にSUVを製造できることを見出した。
1つの局面において、本発明は、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロー3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](DOPG)を含む小単層膜リポソーム(SUV)および/または大単層膜リポソーム(LUV)を含む、酸化LDL受容体に対して物質を特異的に送達するための媒体を提供する。
1つの実施形態では、本発明の前記SUVおよび/またはLUVは実質的にDOPGから構成される。
1つの実施形態では、前記酸化LDL受容体は細胞に含まれるものである。
1つの実施形態では、前記細胞は、血管内皮細胞である。
1つの実施形態では、前記細胞は、微小血管内皮、静脈内皮または動脈内皮細胞(例えば、大動脈内皮細胞)である。
1つの実施形態では、前記送達は、前記酸化LDL受容体のうちLOX−1にのみ特異的である。
1つの実施形態では、前記SUVおよび/またはLUVの粒径は70nm〜150nmである。
1つの局面では、本発明は、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロー3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](DOPG)からなる、単層膜リポソームを提供する。
1つの実施形態では、前記単層膜リポソームは、小単層膜リポソーム(SUV)または大単層膜リポソーム(LUV)である。
1つの実施形態では、粒径が70nm〜150nmである。
1つの局面では、本発明は、DOPGを含むSUVまたはLUVを生産する方法であって、該方法は:
(A)DOPG溶液を容器上で薄膜化する工程;
(B)該薄膜化したDOPGを乾燥後水和させる工程
(C)(B)で水和したDOPG溶液を攪拌しつつ凍結させ、その後加熱して溶解し、必要に応じてこれを繰り返す工程;および
(D)該DOPG溶液をサイジングフィルターに通す工程
を包含する、方法を提供する。
1つの局面では、本発明は、DOPGを含むSUVまたはLUVを含む、血管内皮の機能不全を調節しうる因子をスクリーニングまたは分析するための組成物を提供する。
1つの局面では、本発明は、DOPGを含むSUVまたはLUVを含む、血管内皮の機能不全を調節しうる因子を、該因子を必要とする被験体に送達するための組成物を提供する。
1つの実施形態では、前記因子は、前記機能不全を誘導する因子である。
1つの実施形態では、前記因子は、前記機能不全の誘導を抑制する因子である。
1つの局面では、本発明は、変性LDLのLOX−1への結合を阻害するための、DOPGを含むSUVまたはLUVを含む組成物を提供する。
1つの局面では、本発明はLOX−1を特異的に標識するための、DOPGを含むSUVまたはLUVを含む組成物を提供する。
1つの実施形態では、前記標識は、LOX−1の過剰発現部位の可視化または動脈硬化巣形成の前段階の検出に用いられる。
1つの実施形態では、前記標識は磁気共鳴画像化(MRI)のためのものである。
1つの局面では、本発明は、血管内皮機能不全を抑制するための、DOPGを含むSUVまたはLUVを含む組成物を提供する。
1つの実施形態では、前記組成物は、血管内皮機能不全に対する薬剤を含む。
1つの実施形態では、前記組成物は、血管内皮機能不全に関連するsiRNA、遺伝子導入キャリアまたはシグナル伝達調節剤を含む。
本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
LOX−1に対する解離定数Kが10−12以下である極めて強い親和性を示すリポソーム(DOPG SUVまたはLUV)を製造した。この親和性は、LOX−1リガンドとして知られている他の分子に比べ10倍以上高く、非共有結合としては最強である抗原・抗体間の親和性に匹敵する。
DOPG SUVまたはLUVのLOX−1への強い親和性は細胞上でも再現され、細胞上では、従来知られているリガンドのLOX−1への結合を強力に阻害した。
従来報告のあるリポソームは、LOX−1以外の様々な酸化LDL受容体に結合する可能性が高かったが、本発明のDOPG SUVまたはLUVは、LOX−1への特異性が極めて高く、他の受容体を介した取り込みは認められなかった。
DOPG SUVまたはLUVは、LOX−1を介して細胞内に速やかに取り込まれ、かつ、他のLOX−1リガンドに認められる血管内皮の機能不全を誘導する活性が認められなかった。
図1は、変性LDLとDOPG単層膜リポソームの構造を示す。(a)は、LDLの構造を示す。(b)は、本発明の1,2−ジオレオイル−sn−グリセロー3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](DOPG)の構造を示す。DOPGは、2本のアルキル鎖と負電荷を帯びた 極性頭部から成る。(c)は、30nmフィルターで製造したDOPG SUVを示す。(d)は、100nmフィルターで製造したDOPG LUVを示す。 図2A〜Cは、実施例1における粒子サイズの経時変化を示す。サイジングフィルターは、30nmを、脂質は、DOPGを使用し、作製した単層膜リポソームは25℃で保存した。図2Aは、サイズ分布を示している。96nm前後に粒子サイズのピークが観察される。 図2A〜Cは、実施例1における粒子サイズの経時変化を示す。サイジングフィルターは、30nmを、脂質は、DOPGを使用し、作製した単層膜リポソームは25℃で保存した。図2Bは作製当日からの粒子サイズの変化を追跡した結果であり、横軸が経過日数、縦軸が粒子サイズを示す。濃い四角はロット1を示し、薄い四角はロット2を示す。 図2A〜Cは、実施例1における粒子サイズの経時変化を示す。サイジングフィルターは、30nmを、脂質は、DOPGを使用し、作製した単層膜リポソームは25℃で保存した。図2Cは、作製当日からのPdIの経時変化を示す。PdI<0.3ならば、粒子サイズが均一であるといえる。図2A〜Cの測定結果からDOPG 単層膜リポソームは、作製後60日までは、粒子サイズに大きな変化が無く、均一性も保たれており、安定であることが示された。図2Cでは、図2Bの印に加えPdI閾値を線(0.3のところ)で示す。 図3は、実施例2における表面電位(ゼータ電位)の経時変化を示す。サイジングフィルターは30nmを、脂質は、DOPGを使用し、作製した単層膜リポソームは25℃で保存した。横軸は作製日からの経過日数、縦軸がゼータ電位を示す。表面電位は、作製後60日までは、安定であることが示された。濃い四角はロット1を示し、薄い四角はロット2を示す。 図4A〜Bは、実施例3における表面プラズモン共鳴によるLOX−1集積単相チップとAcLDLの相互作用解析結果を示す。左にSAM(self−assembly monolayer)上にLOX−1の細胞外領域(ECD)が固定化されたLOX−1集積単相チップが、AcLDLを結合している模式図を示す。図4Aに示す(a)は、濃度の異なるAcLDLが、LOX−1集積単相チップに結合し、解離する様子を示すセンサーグラムである。ランニング緩衝液として、10mM HEPE(pH7.4)、150mM NaCl、50μM EDTA、0.05%(v/v)Tween20を用いた。解離が遅く結合が強いことが分かる。解離速度が非常に遅いことから、カイネティクス解析により解離定数を求めることが困難なため、アフィニティー解析により解離定数を求めた。上から順に、有効数字三桁で、625pM、313pM、157pM、78.1pM、39.1pM、19.5pMおよび9.77pMを示す。なお、その結果は図4Bに示す。 図4A〜Bは、実施例3における表面プラズモン共鳴によるLOX−1集積単相チップとAcLDLの相互作用解析結果を示す。図4Bには(b)としてその結果(アフィニティー評価)が示される。SAM上に固定化されたLOX−1細胞外領域(ECD)とAcLDLの親和性は、解離定数がK=95×10−12Mと求められ、強い結合であることが示された。 図5A〜Bは、実施例4の表面プラズモン共鳴によるLOX−1集積単相チップとDOPG単層膜リポソームとの相互作用解析結果を示す。図5Aは、粒子サイズ96.6±33.6nmのDOPG単層膜リポソーム(SUV)の結果を示し、図5Bは、143.6±29.6nmのDOPG単層膜リポソーム(LUV)の結果を示す。いずれも、ランニング緩衝液として、10mM HEPE(pH7.4)、150mM NaCl、50μM EDTAを用いた。(a)濃度の異なるDOPG単層膜リポソームが、LOX−1集積単相チップに結合し、解離する様子を示すセンサーグラムである。解離速度が極めて遅く結合が強いことが分かる。ほとんど解離が観察されないことから、カイネティクス解析により解離定数を求めることが不可能なため、アフィニティー解析により解離定数を求めた。図5A(a)上から、DOPG SUVの濃度が、有効数字三桁で、47.5pM、23.8pM、11.9pM、5.94pM、2.97pM、1.49pM、0.742pM、0.371pMおよび0.00pMのものを示す。(b)がその結果(アフィニティー評価)である。LOX−1集積単相チップとDOPG SUVとの解離定数は K=4.4×10−12 M、DOPG LUVとでは、K=5.0×10−12 Mとなり、いずれも極めて強い結合であり、DOPG SUVとDOPG LUVでは、粒子サイズは50%の差があるが、LOX−1に対する親和性には大きな差がないことが明らかになった。 図5A〜Bは、実施例4の表面プラズモン共鳴によるLOX−1集積単相チップとDOPG単層膜リポソームとの相互作用解析結果を示す。図5Aは、粒子サイズ96.6±33.6nmのDOPG単層膜リポソーム(SUV)の結果を示し、図5Bは、143.6±29.6nmのDOPG単層膜リポソーム(LUV)の結果を示す。いずれも、ランニング緩衝液として、10mM HEPE(pH7.4)、150mM NaCl、50μM EDTAを用いた。(a)濃度の異なるDOPG単層膜リポソームが、LOX−1集積単相チップに結合し、解離する様子を示すセンサーグラムである。解離速度が極めて遅く結合が強いことが分かる。ほとんど解離が観察されないことから、カイネティクス解析により解離定数を求めることが不可能なため、アフィニティー解析により解離定数を求めた。図5B(a)上から、POPG LUVの濃度が、有効数字三桁で、20.0pM、5.00pM、1.25pM、0.300pM、および0.00pMのものを示す。(b)がその結果(アフィニティー評価)である。LOX−1集積単相チップとDOPGSUVとの解離定数は K=4.4×10−12 M、DOPG LUVとでは、K=5.0×10−12 Mとなり、いずれも極めて強い結合であり、DOPG SUVとDOPG LUVでは、粒子サイズは50%の差があるが、LOX−1に対する親和性には大きな差がないことが明らかになった。 図6は、実施例2〜4の表面プラズモン共鳴(SPR)による解析結果と表面電位のデータをまとめた一覧表である。DOPG単層膜リポソームは、AcLDLに比べ粒子径が大きく表面電荷も強いことからAcLDL以上に、LOX−1への結合能が強いことが示された。 図7は、実施例5の細胞上におけるAcLDL、DOPG SUVのLOX−1への結合を解析した結果を示す。30nmのフィルターを用いて調製したDiI標識DOPG SUV (DiI−DOPG SUV)、または、DiD標識AcLDL(DiD−AcLDL)を、CHO細胞、若しくは、CFP融合LOX−1安定発現株(T株)と15分間反応させ、細胞への取り込みを評価した。(a)は、CHO+DiD−AcAcLDLを示し、(b)は、CHO+DiI−DOPG SUVを示し、(c)は、T+160×10−12M DiD−AcLDLを示し、(d)は、T+0.25×10−12M DiI−DOPG SUVを示す。CHOは、DiD−AcLDLもDiI DOPG SUVも取り込まず(a,bにおいて、取り込まれたDiD−AcLDL、ならびにDiI−DOPG SUV由来の蛍光が全く観察されない)、LOX−1に依存した取り込みが確認された(c,dでは、各々DiD、DiIの蛍光が観察される)。 図8は、実施例6のDOPG SUVとAcLDLのT株への結合の競合を示す。AcLDLとDOPG SUVを同時にT株に添加し、15分反応させた際の取り込みの様子である。下段は、細胞上でLOX−1への両者の結合が競合する様子を示す模式図である。(a)は、160×10−12M DiD−AcLDL+2.5×10−12M DiI−DOPG SUVを示し、(b)は160×10−12M DiD−AcLDL+5×10−12M DiI−DOPG SUVを示し、(c)は1600×10−12M DiD−AcLDL+0.25×10−12 MDiI−DOPG SUVを示し、(d)は、3200×10−12M DiD−AcLDL+0.25×10−12M DiI−DOPG SUVを示す。DOPG SUV存在下で、AcLDLを添加した場合、2オーダー以下のDOPG SUV添加によりAcLDLの結合が顕著に阻害された(a,b)。このことは、DOPG SUVが、表面プラズモン共鳴による計測結果と同様に、細胞上でもAcLDL以上にLOX−1に対する高い親和性を有していることを示している。 図9は、実施例7のヒト大動脈内皮細胞(Human Aortic Endothelial Cell:HAEC)へのAcLDLとDOPG SUVの結合を検証した結果を示す。A:HAEC+1.6nM DiD−AcLDL;B:HAEC+DiI−DOPG SUV;C:HAEC+23C11+1.6nM DiD−AcLDL(23C11:LOX−1中和抗体);D:HAEC+23C11+DiI−DOPG SUV(0.25nM)。各パネルにおいて、左は位相差像を示し、右は、DiD−AcLDLを示す。A:HAECにDiD−AcLDLを15分間取り込ませた細胞像。B:HAECにDiI−DOPG SUVを15分間取り込ませた細胞像。C:HAECにLOX−1中和抗体(23C11)存在下でDiD−AcLDLを15分間取り込ませた細胞像。D:HAECにLOX−1中和抗体(23C11)存在下でDiI−DOPG SUVを15分間取り込ませた細胞像。中和抗体処理によりDiD−AcLDLの取り込みは減少するが完全に阻害されない。一方、中和抗体処理により、DiI−DOPG SUVの取り込みはほぼ完全に阻害された。このことからHAEC上で、DOPG SUVがLOX−1を介して特異的に取り込まれることが確認された。 図10は、実施例8のHAECへのAcLDLとDOPG SUVの結合の競合を示す。A:HAEC+AcLDL(1.6nM)+DOPG SUV(2.5nM);B:HAEC+AcLDL(1.6nM)+DOPG SUV(5nM);C:HAEC+AcLDL(8nM)+DOPG SUV(0.25nM);D:HAEC+AcLDL(16nM)+DOPG SUV(0.25nM)。各パネルは左から、位相差像、取り込まれたDiI−DOPG SUV;取り込まれたDiD−AcLDLを示す。A:HAECにx10倍濃度のDiI−DOPG SUVと通常濃度のDiD−AcLDLを添加し15分間取り込ませた細胞像、B:HAECにx20倍濃度のDiI−DOPG SUVと通常濃度のDiD−AcLDLを添加し15分間取り込ませた細胞像、過剰なDiI−DOPG SUVの添加によりDiDAcLDLの取り込みが阻害されることが観察された。C: HAECにx5倍濃度のDiD−AcLDLと通常濃度のDiI−DOPG SUVを添加し15分間取り込ませた細胞像、D: HAECにx10倍濃度のDiD−AcLDLと通常濃度のDiI−DOPG SUVを添加し15分間取り込ませた細胞像、過剰なDiD−AcLDLの添加によりDiI−DOPG SUVの取り込みが阻害されることが観察された。 図11は、実施例8の画像データを定量化し、さらに統計処理した実施例9の結果である。MetaMorph software(Universal Imaging)により細胞毎の蛍光強度を計測し、統計処理(ANOVA)した。*P<0.05。計測した細胞数は、各実験群で20細胞程度である。バックグランド値がやや高い(平均147)が、DiI−DOPG SUVの取り込みは有意に高く、さらに、中和抗体でバックグランドレベルまで押さえられることが示された。左からバックグラウンド、Dil−DOPG SUV、23C11+DiI−DOPG SUV、x10AcLDL+DiI−DOPG SUVである。 図12は、実施例10のOxLDL,DOPG SUVによる血管内皮細胞機能不全誘導の結果を示す。上から、コントロール(リガンドなし)、Dil標識OxLDL(DiI OxLDL)、Dil−DOPG SUVを示す。上段のコントロールについては、左に位相差像、右に細胞表層に誘導されたVCAM−1を示す。中段は、左から順に、位相差像、取り込まれたDil−OxLDL、細胞表層に誘導されたVCAM−1を示す。下段は、左から順に、位相差像、取り込まれたDil−DOPG SUV、細胞表層に誘導されたVCAM−1を示す。HAECを10% FCSのみを含む培地(通常の培養時に使用する成長因子などを含まない)で5時間前培養し、0.2%FCSを含む培地に交換し、DiI−OxLDL(1.6nM)、または、DiI−DOPG SUV(25pM)を添加した。16時間後に、2%ホルムアミド/PBS(−)で固定し、間接蛍光抗体法による観察に供した。一次抗体:anti VCAM−1(Abcam社、Rabbit polyclonal)、5μg/ml(10%FCS含PBS(−))で2時間室温で反応後、二次抗体:Alexa 633標識、anti Rabbit IgG(Molecular Probes)5μg/ml(10%FCS含PBS(−))と室温で1時間反応させた。抗体との反応溶液中にTriton X−100などを添加していないため、細胞表層に発現しているVCAM−1のみを検出している。OxLDLの取り込みにより血管内皮機能不全誘導の指標である接着分子(VCAM−1)の発現と細胞表層への提示が確認されたが、DOPG SUVの取り込みによる発現は確認されなかった。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞または形容詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書において用語「リポソーム」は、当該分野において周知の意味と同様に用いられ、脂質人工膜の閉鎖小胞であり、「ベシクル」とも呼ばれるものである。リポソームには、単層のものおよび多重層のものがあり、単層のものは単層膜リポソームと呼ばれ、多重層のものは多重層リポソームまたはマルチラメラリポソーム(multilamellar liposome)と呼ばれる。本発明のリポソームは、リポソーム形成脂質から形成されており、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロー3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](DOPG)を特に含む。本発明のリポソームにこのほかに含まれうる「リポソーム形成脂質」としては、代表的に、頭部基にあるヒドロキシル基のうちの少なくとも1つ、好ましくは2つが、アシル、アルキルまたはアルケニル基のうちの1つ以上のものにより置換されているグリセロール主鎖、リン酸基、好ましくはアシル鎖(アシルまたはジアシル誘導体を形成するためのもの)、以上のもののいずれかの組合せ、および/または以上のものの誘導体を有する脂質であり、頭部基に化学反応性基(アミン、酸、エステル、アルデヒドまたはアルコールなど)を含むことにより極性頭部基を提供してもよい。スフィンゴ脂質、特にスフィンゴミエリンはグリセロリン脂質の優れた代替物である。標準的には、置換鎖(例えばアシル、アルキルおよび/またはアルケニル鎖)は、長さが炭素原子約14〜約24個の間にあり、さまざまな飽和度を有し、このようにして完全水素化、部分水素化または非水素化リポソーム形成脂質を結果としてもたらす。さらに、リポソーム形成脂質は天然供給源のものであっても、半合成または完全合成脂質であってよく、中性、負または正の電荷を有し得る。ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、ジステアロイルホスファチジル コリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルセリン(PS)、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン(POPC)および炭素原子12〜24個のアシルまたはアルキル鎖をもつスフィンゴミエシン(SM)といったスフィンゴ リン脂質などの(本発明による好ましい脂質である)リン脂質を含め、さまざまな合成リポソーム形成脂質および天然発生リポソーム形成脂質が存在する。さまざまな飽和度を有する炭化水素鎖(例えばアシル/アルキル/アルケニル鎖)をもつ上述の脂質およびリン脂質は市販されているものを入手でき、そうでなければ公表された方法に従って調製することもできる。リポソーム中に内含され得るその他の適切な脂質は、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質およびステロール(例えばコレステロールまたは植物ステロール)である。本発明に従って形成されたリポソームは、脂質の混合物を含む。従って本発明はで使用する上述の脂質リストは、網羅的であり制限的な意味をもたず、本明細書で開示するその他の脂質を本発明に従って使用することも可能である。
本発明のリポソームに含まれうる1,2−ジオレオイル−sn−グリセロー3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](DOPG)の含有量はリポソーム膜構成物質の総配合量の通常25〜100%(モル比)、好ましくは50〜100%(モル比)、さらに好ましくは70〜100%(モル比)、80〜100%(モル比)、90〜100%(モル比)、95〜100%(モル比)、98〜100%(モル比)、99〜100%(モル比)、99.5〜100%(モル比)、99.9〜100%(モル比)である。
本明細書において「小単層膜(SUV;small unilamellar vesicle)型リポソーム」「SUV」は、粒径(直径)が概して100nm以下である一枚膜リポソームである。SUV型リポソームの粒径(直径)は概して100nm以下である限り特に限定されるものではないが、通常30〜100nm、好ましくは50〜100nm、さらに好ましくは70〜100nmである。
本明細書において「大単層膜(LUV;large unilamellar vesicle)型リポソーム」「LUV」は、粒径(直径)が概して100nm以上である一枚膜リポソームである。LUV型リポソームの粒径(直径)は概して100nm以上である限り特に限定されるものではないが、通常100〜500nm、好ましくは100〜300nm、さらに好ましくは100〜200nm、さらに好ましくは100〜150nmである。
多重膜リポソーム(MLV)、LUV(large unilamellar vesicle)、GUV(giant unilamellar vesicle)等の一枚膜リポソームは、粒子径が100nm以上であるため(一般的に100nm以上の粒子径を有するリポソーム膜は平面膜として考えられる)、膜の曲率および表面エネルギーが小さく、リポソーム同士の凝集が生じ難い。これに対して、SUV型リポソームは、粒子径が100nm以下であるため、膜の曲率および表面エネルギーが大きく、リポソーム同士の凝集が生じ易い。したがって、SUV型リポソームを用いると、膜中の界面活性剤を除去したときに効率よくリポソーム同士を膜融合させることができる。
本発明のリポソームに使用されうるその他の脂質としては、例えば、リン脂質、糖脂質、ステロール、飽和または不飽和の脂肪酸等が挙げられる。
本発明のリポソームに使用されうるその他のリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン(例えば、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン等)、ホスファチジルグリセロール(例えば、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジグリセロール等)、ホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホ スファチジエタノールアミン等)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン、これらの水素添加物等が挙げられる。特に、本発明では、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロー3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](DOPG)を用いることが好ましい。
本発明において使用されうる糖脂質としては、例えば、グリセロ糖脂質(例えば、スルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド)、スフィンゴ糖脂質(例えば、ガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシド)等が挙げられ る。
本発明において使用されうるステロールとしては、例えば、動物由来のステロール(例えば、コレステロール、コレステロールコハク酸、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、ジヒドロコレステロール)、植物由来のステロール(フィトステロール)(例えば、スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ブ ラシカステロール)、微生物由来のステロール(例えば、チモステロール、エルゴステロール)等が挙げられる。
本発明において使用されうる飽和または不飽和の脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸等の炭素数12〜20の飽和または不飽和の脂肪酸が挙げられる。
本発明において使用されうる脂質は、中性脂質、カチオン性脂質およびアニオン性脂質に分類され、中性脂質としては、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、コレステロール、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、セレブロシド等が挙げられ、カチオン性脂質としては、例えば、例えば、 DODAC(dioctadecyldimethylammoniumchloride)、DOTMA(N-(2,3-dioleyloxy)propyl-N,N,N-trimethylammonium)、 DDAB(didodecylammoniumbromide)、DOTAP(1,2-dioleoyloxy-3-trimethylammonio propane)、DC−Chol(3β-N-(N',N',-dimethyl-aminoethane)-carbamolcholesterol)、DMRIE(1,2-dimyristoyloxypropyl-3-dimethylhydroxyethyl ammonium)、DOSPA(2,3-dioleyloxy-N-[2(sperminecarboxamido)ethyl]-N,N-dimethyl−1-propanaminum trifluoroacetate)等が挙げられ、アニオン性脂質としては、例えば、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N−スクシニルホスファチジルエタノールアミン(N−スクシニルPE)、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセ ロール、ホスファチジルエチレングリコール、コレステロールコハク酸等が挙げられる。
本発明において使用されうる追加の脂質としては、膜融合性が高い脂質を用いることが好ましい。膜融合性が高い脂質を用いると、目的物質が封入されたリポソームが細胞に取り込まれたときに、エンドソームからの脱出効率を向上させることができる。膜融合性が高い脂質としては、例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、カルジオリピン、コレステロールコハク酸等が挙げられる。
本発明においてリポソーム形成脂質およびその他の脂質ならびに非脂質構成要素(使用される場合)は、通常プロトン性有機溶媒中に溶解される。本発明の状況下では、プロトン性有機溶媒は標準的にはアルコール、クロロホルムをあげることができる。溶媒は好ましくは水中で混和性をもつ。プロトン性有機溶媒の制限がない例としては、メタノール、エタノール、および第3級ブタノール(tert−ブタノール)、クロロホルムが含まれる。クロロホルムが好ましい溶媒である。
溶媒は、脂質または脂質混合物を溶解させて、溶液または分散液を形成する。「溶解する」または「溶液」という用語は、脂質が好ましくは溶媒内部で均質に混合されるというふうに理解されるべきである。それでも、本発明の状況下で、均質でない混合物(分散液)を形成させ使用することも可能である。
本明細書において「実質的に」または「本質的に」(からなる、構成される)は交換可能に使用され、その組成を構成する成分を主として含み、その成分以外の微量成分が、その成分の機能を阻害しない限り微量に含まれうることをいう。たとえば、「実質的にDOPGから構成される」とは、DOPGの構成濃度が少なくとも90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.9%以上、99.99%以上であり得、微量成分は、DOPGの機能(たとえば、LOX−1との結合)を阻害しない限り量を増やしてもよいことが理解される。
本明細書において使用される場合、用語「受容体」とは、1個以上のリガンドと可逆的、かつ特異的に複合体化する1個以上の結合ドメインを備える生物学的な構造であって、ここで、この複合体化は生物学的な構造を有する。受容体は、完全に細胞の外部(細胞外の受容体)、細胞膜の中(しかし、受容体の部分を細胞外部の環境および細胞質ゾルに向けている)、または完全に細胞の中(細胞内の受容体)に存在し得る。これらはまた、細胞と独立的に機能し得る。細胞膜中の受容体は、細胞を、その境界の外部の空間と連絡(例えば、シグナル伝達)させ、そして細胞の内側および外側への分子およびイオンの輸送において機能させることを可能とする。本明細書において使用する場合、受容体は、受容体全長であっても、受容体のフラグメントであってもよい。
本明細書において使用される場合、用語「リガンド」とは、特異的な受容体または受容体のファミリーに対する結合パートナーである。リガンドは、受容体に対する内因性のリガンドであるか、またはその代わりに、薬剤、薬剤候補、もしくは薬理学的手段のような受容体に対する合成リガンドであり得る。
本明細書において使用される場合、「変性LDL」とは、LDLが体内で活性酸素、酸化的酵素、Fe3+などと接触すること、あるいは、血管内皮細胞やマクロファージなどによる細胞依存性化学変化によって発生する種々の分子修飾を有する任意のLDL改変体である。生体内に存在する変性LDLとしては、代表的には、酸化LDL(本明細書中、OxLDLといい、例としては完全酸化LDL(本明細書中F−OxLDLともいう)および部分酸化LDL(本明細書中M−OxLDLともいう)が挙げられる)、マロンジアルデヒド化LDL(MDA−LDL)、アクロレイン修飾LDL、ノネナール修飾LDL、クロトンアルデヒド(CRA)修飾LDL、4−ヒドロキシノネナール(HNE)修飾LDL、ヘキサノイル(HEL)修飾LDL、小粒子LDL(直径255nm以下のLDL)、糖化LDL、アセチル化LDLなどが挙げられるが、これらに限定されない。酸化LDLが異常値を示す場合、動脈硬化症、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症など)、脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血発作など)、大動脈瘤、腎梗塞、高脂血症などのような疾患が予想されるがこれらに限定されない(「今日の臨床検査 2007−2008」発行所 株式会社 南江堂、参照)。一般に使用される検査方法では、基準物質としては、MDA−LDL(正常範囲:10〜80ΜL)および酸化ホスファチジルコリン(正常範囲:8.4U/mL〜17.6U/mL)が使用されている。本明細書において「OxLDL様活性を示す分子」とは、少なくとも上述のOxLDLの活性(本明細書において「OxLDL様活性」という。)の一つを有する分子をいう。そのようなOxLDL様活性としては、LOX−1に対する結合活性(リガンド活性)を挙げることができるが、それに限定されない。
本明細書において「酸化LDL受容体」とは、酸化LDLを受容する任意の受容体を言う。酸化LDL受容体には、たとえば、以下で説明するLOX−1のほか、SR−A,SR−B,CD36のようなスカベンジャー受容体、等が含まれるがこれらに限定されない。当該分野では、ときに「変性LDL受容体」と称されることがあるが「酸化LDL受容体」と同一である。
本明細書において使用される場合、用語「レクチン様酸化低密度リポタンパク質(LDL)受容体1(Lectin−like Oxidized LDL receptor)」とは、LOX−1ともいわれ、(1)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号2に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(3)上記配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(5)配列番号1に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(6)上記配列番号1に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(7)上記配列番号1に示される核酸配列において1または数個のヌクレオチドの置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(8)上記配列番号1に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;および(9)上記配列番号1に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド、のうちの1つである。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。また、LOX−1としては、ヒトLOX−1(hLOX−1ともいう)、ウシLOX−1(b−LOX1ともいう)、ブタLOX−1、マウスLOX−1、ウサギLOX−1のような哺乳動物のLOX−1が挙げられるが、これらに限定されない。bLOX−1は、C型レクチンファミリーに属する273アミノ酸残基からなる分子量約50kDaの糖タンパク質であり、N末端が細胞質内にあり、C末端が細胞外に出ている細胞膜1回貫通型のII型膜タンパク質である。hLOX−1はまた、C型レクチンファミリーに属する273アミノ酸残基からなる分子量約50kDaの糖タンパク質であり、N末端が細胞質内にあり、C末端が細胞外に出ている細胞膜1回貫通型のII型膜タンパク質である。LOX−1は、構造的には、以下の4つのドメイン:N末端側の細胞質ドメイン、疎水性膜貫通ドメイン、ネックドメイン、およびC型レクチン様ドメインからなる。
本明細書において使用される場合、「複合体」とは、2以上の部分を含む任意の構成体を意味する。例えば、一方の部分がポリペプチドである場合は、他方の部分は、ポリペプチドであってもよく、それ以外の物質(例えば、糖、脂質、核酸、他の炭化水素等)であってもよい。本明細書において複合体を構成する2以上の部分は、共有結合で結合されていてもよくそれ以外の結合(例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス力等)で結合されていてもよい。2以上の部分がポリペプチドの場合は、キメラポリペプチドとも称しうる。したがって、本明細書において「複合体」は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、脂質、糖、低分子などの分子が複数種連結してできた分子を含む。そのような複合体としては、例えば、糖脂質、糖ペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書では、LOX−1についていえば、配列番号2のアミノ酸を有するポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントであって、LOX−1に関する生物学的な活性を有する限り、それぞれの改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸分子も使用することができる。また、そのような核酸分子を含む複合体も使用することができる。
本明細書において「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。
本明細書において「血管内皮細胞」は、任意の血管に存在する任意の内皮細胞をいい、たとえば、微小血管内皮、静脈内皮または動脈内皮細胞(例えば、大動脈内皮細胞)などを挙げることができる。
本明細書において「生物学的機能」とは、ある物質について言及するとき、その物質が生物学的反応について有し得る特定の機能をいい、本発明においては、例えば、LOX−1が変性LDLを認識する機能、酸化LDL受容体または変性LDL受容体に対して結合しあるいは物質を特異的に送達する機能などを挙げることができるがそれらに限定されない。本明細書において、生物学的機能は、「生物学的活性」によって発揮され得る。本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質など)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含され、例えば、ある分子との相互作用によって別の分子が活性化または不活化される活性も包含される。2つの因子が相互作用する場合、その生物学的活性は、その二分子との間の結合およびそれによって生じる生物学的変化、例えば、一つの分子を抗体を用いて沈降させたときに他の分子も共沈するとき、2分子は結合していると考えられる。したがって、そのような共沈を見ることが一つの判断手法として挙げられる。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。
したがって、「活性」は、結合(直接的または間接的のいずれか)を示すかまたは明らかにするか;応答に影響する(すなわち、いくらかの曝露または刺激に応答する測定可能な影響を有する)、種々の測定可能な指標をいい、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに直接結合する化合物の親和性、または例えば、いくつかの刺激後または事象後の上流または下流のタンパク質の量あるいは他の類似の機能の尺度が、挙げられる。
本明細書において第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」とは、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して、第二の物質または因子以外の物質または因子(特に、第二の物質または因子を含むサンプル中に存在する他の物質または因子)に対するよりも高い親和性で相互作用することをいう。物質または因子について特異的な相互作用としては、例えば、核酸におけるハイブリダイゼーション、タンパク質における抗原抗体反応、リガンド−レセプター反応、酵素−基質反応など、核酸およびタンパク質の両方が関係する場合、転写因子とその転写因子の結合部位との反応など、タンパク質−脂質相互作用、核酸−脂質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。従って、物質または因子がともに核酸である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」ことには、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して少なくとも一部に相補性を有することが包含される。また例えば、物質または因子がともにタンパク質である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」こととしては、例えば、抗原抗体反応による相互作用、レセプター−リガンド反応による相互作用、酵素−基質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。2種類の物質または因子がタンパク質および核酸を含む場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」ことには、転写因子と、その転写因子が対象とする核酸分子の結合領域との間の相互作用が包含される。したがって、本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドなどの生物学的因子に対して「特異的に相互作用する因子」とは、そのポリヌクレオチドまたはそのポリペプチドなどの生物学的因子に対する親和性が、他の無関連の(特に、同一性が30%未満の)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対する親和性よりも、代表的には同等またはより高いか、好ましくは有意に(例えば、統計学的に有意に)高いものを包含する。そのような親和性は、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ、結合アッセイなどによって測定することができる。
本明細書中で使用される「接触(させる)」とは、化合物を、直接的または間接的のいずれかで、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して物理的に近接させることを意味する。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、多くの緩衝液、塩、溶液などに存在し得る。接触とは、核酸分子またはそのフラグメントをコードするポリペプチドを含む、例えば、ビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコまたはマイクロアレイ(例えば、遺伝子チップ)などに化合物を置くことが挙げられる。
本明細書において「薄膜化」は、リポソーム形成脂質を薄膜にすることをいい、たとえば、クロロホルム溶液を試験管に入れ窒素ガスを緩やかに吹き付けクロロホルムをとばし、脂質を試験管壁に薄膜として付着させ、さらに、デシケータ内に試験管を入れ真空ポンプで引き、一晩乾燥させることにより、薄膜を完成させることによって実現することができる。
本明細書において「サイジングフィルター」は、リポソームをサイズごと(例えば、100nm以上、200nm以上等)にふるいにかけるフィルターをいい、たとえば、Corning社のNucleopore Track−Etch Membraneや、Avanti社のサイジングフィルター等を使用することができる。
本明細書において使用される場合、用語「検出剤」とは、広義には、目的の物質または状態(例えば、変性LDL、LOX−1、細胞、組織、病態など)を検出できるあらゆる因子をいう。
本明細書において使用される場合、用語「固相」とは、本明細書中において「基板」および「基材」と互換的に使用され、本発明のデバイスが構築される材料をいう。抗体のような分子が固定され得る平面状の支持体をいう。本発明において表面プラズモン共鳴の原理を用いて検出する場合、固相は、金、銀またはアルミニウムを含む金属薄膜を片面に持つガラス基板の基材であることが好ましい。本発明において水晶発振子マイクロバランスの原理を用いて検出する場合は、周波数変換素子(例えば水晶発振子、表面弾性波素子)を固相として用い、直接受容体を結合させる。水晶板の片面はシリコーンで被覆し、もう一方の面は金電極を施したものを固相として用いる。本発明において酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)のような機構を使用する場合、一般に、固相(基材)としては、マイクロタイタープレートが使用される。基板の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。適切な基材としては、ビーズ、金粒子、プレート(例えば、マイクロタイタープレート)、試験管、チップ、磁性粒子、膜、繊維、スライドガラス、金属薄膜、フィルター、チューブ、ボール、ダイアモンド様炭素被膜ステンレスなどが挙げられるが、これらに限定されない。
(好ましい実施形態の説明)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者はまた、以下のような好ましい実施例を参考にして、本発明の範囲内にある改変、変更などを容易に行うことができることが理解されるべきである。
(リポソーム)
1つの局面において、本発明は、実質的に1,2−ジオレオイル−sn−グリセロー3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](DOPG)からなる、単層膜リポソーム、例えば、小単層膜リポソーム(SUV)または大単層膜リポソーム(LUV)(本明細書においてDOPG SUV、DOPG LUV、あるいはDOPG SUVまたはLUVともいう。)を提供する。好ましくは、本発明のリポソームは、粒径が70nm〜150nmである。
実質的にDOPGのみでできたSUVまたはLUVに関して、文献上の報告は発明者の知るところない。従来汎用されるSUVまたはLUVとしては、DOPCを基本にして、正電荷を帯びるようなDOPEなどを混ぜるタイプが圧倒的に多い。DOPCを基本にして、負電荷を帯びさせたい場合に、DOPGを10:1〜3:1程度の割合で混ぜる例、さらにコレステロール(chol)を添加したDOPC/DOPG/cholの活用が知られる。DOPG単独でSUVまたはLUVを作製しようとすると、不安定であると考えられており、特に一定の粒径を維持するのが困難であると考えられていたため、実質的にDOPGのみでできたSUVまたはLUVの作製をしようと考えられていなかったのが現状であった。本発明では、DOPG SUVまたはLUVで目的を達成でき、また、実施例で示したように、2ヶ月弱は安定であることも予想外に示された。
SUVまたはLUVについての粒径は、特にSUVは一般にSUVは100nm以下、厳密には、20−50nm程度と言われている。LUV (large unilamellar vesicle)が、100−200nm程度といわれているものの、DOPG単独で、サイズの異なるSUVまたはLUVを作製した報告はなかった。長期にわたり一定の粒径を保つDOPG SUVまたはLUVは作製し難いと考えられていたこと、DOPC/DOPGで通常の目的が達成されていたことが理由であると考えられる。
(特異的送達媒体)
本発明は、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロー3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](DOPG)を含む単層膜リポソーム(小単層膜リポソーム(SUV)および/または大単層膜リポソーム(LUV)を含む)を含む、酸化LDL受容体に対して物質を特異的に送達するための媒体を提供する。DOPGがLOX−1等の酸化LDL受容体に対して特異的な相互作用を示すことは従来知られておらず、本発明において初めて見出された知見であり、本発明はこれを利用することによって、酸化LDL受容体に対して物質を特異的に送達することを達成した。
1つの実施形態では、本発明の媒体に含まれるSUVまたはLUVは、実質的にDOPGから構成される。DOPG単独でSUVを作製しようとすると、不安定であると考えられていたため、特に一定の粒径を維持するのが困難であると考えられていたため、実質的にDOPGのみでできたSUVが製造できたこと自体、驚くべきことである。
1つの実施形態では、前記酸化LDL受容体は細胞に含まれるものである。
別の実施形態では、前記細胞は、大動脈内皮細胞である。
好ましい実施形態では、本発明の媒体が達成する送達は、前記酸化LDL受容体のうちLOX−1にのみ特異的である。
LOX−1のリガンドである変性LDLは、酸化などの修飾を受けたLDLの総称であり、不均一で巨大な分子である(修飾の程度、分子種は一定していない)。AcLDLは変性LDLのモデル分子として使用されている。酸化LDL(OxLDL)を使用している例も多いものの、酸化度の違いにより部分酸化LDL、完全酸化LDLなどがあり、実験期間を通じて一定の品質を維持し続けることが難しく、本発明者らは、LOX−1の認識能などに関する実験では、構造としては比較的安定なAcLDLを変性LDLモデルとして使用している。LOX−1−AcLDL間で生じる現象は、LOX−1−OxLDLでも同様に認められる(既に論文として発表されている。Chen,M.,Inoue,K.,Narumiya,S.,Masaki,T.,and Sawamura,T.(2001) FEBS Lett. 499,215-219.;Shi,X.,Niimi,S.,Ohtani,T.,and Machida,S.(2001) J. Cell Sci. 114,1273-1282.;Ohki,I.,Ishigaki,T.,Oyama,T.,Matsunaga,S.,Xie,Q.,Ohnishi-Kameyama,M.,Murata,T.,Tsuchiya,D.,Machida,S.,Morikawa,K.,and Tate,S.(2005) Structure 13,905-917.;およびMatsunaga,S.,Xie,Q.,Kumano,M.,Niimi,S.,Sekizawa,K.,Sakakibara,Y.,Komba,S.,and Machida,S.(2007) Exp. Cell Res. 313,1203-1214.)。いずれの文献もSUVとLOX−1に関しては全く触れていないが、AcLDLを変性LDLのモデルとして使用することは周知慣用されており、本明細書においてこれらを参考として援用する。変性LDLとしては、種々挙げられるが、例としてAcLDLを挙げることができる。変性LDLのモデルとしてAcLDL、場合によっては、OxLDLを用いることができる。たとえば、血管内皮機能不全などの変性LDLの代謝が関係する可能性がある実験では、OxLDLが使用されている。
本発明では、DOPG SUVまたはLUVのLOX−1への特異性が認められるが、これはまさに予想外のものであった。LOX−1に特異的に作用するSUVの作製を目指し、DOPC SUVを最初に作製したがLOX−1に対する特異的作用は認められなかった。DOPGは負電荷を帯びたリン脂質であるものの、DOPG SUVまたはLUVにLOX−1への強い結合が認められることは、全く期待していなかった。DOPGを用いたSUVまたはLUVにLOX−1への特性的で強い結合能を賦与するために、何らかの分子をSUV上や脂質二重膜内に導入することを計画し、DOPC SUV,DOPG SUVまたはLUVを先ず作製したところ、予想に反して、DOPG SUVまたはLUVにLOX−1に対する極めて高い親和性が観察された。以下に実施例において測定された各物性値のまとめを示す。
(DOPC SUVとの比較は表を参照。DOPC SUVとDOPG SUVまたはLUVで、K (M)に3桁の差が観られる)。そこで、特段の分子の導入無しに作製した粒径のDOPG SUVまたはLUVのLOX−1への特異性などを解析したところ、実施例に示すような、
・LOX−1への極めて高い結合能
・LOX−1への特異的結合
・血管内皮細胞上で、LOX−1に特異的に認識され、取り込まれるが(他の変性LDL受容体による認識・取り込みは認められない)、変性LDLと異なり、細胞の機能不全を誘導することはない等
LOX−1を標的とした物質送達系等として使用可能なSUVが、簡単に得られたことが明らかになった。なお、DOPGおよびDOPCの構造は以下に示す。
DOPG:1,2-di-(9Z-octadecenoyl)-sn-glycero-3-phospho-(1'-rac-glycerol) (sodium salt)



DOPC:1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine



本明細書において実証されるような、AcLDLに対する10倍の特異性は従来の知見から予想可能なことはなく、単純なDOPG SUVまたはLUVが変性LDL以上に強くLOX−1に結合することは全く予想できなかったといえる。理論に束縛されることは望まないが、DOPGが負電荷を帯びていること、作製したSUVの粒径が変性LDLの数倍あること等が、LOX−1への結合に最適であったのか、原理は不明であるものの、予期せず得られた結果である。理論に束縛されることを望まないが、特異性は一部結合の強さに起因しているとも思われるが、特異性を純粋に評価することも可能であり、特異性も顕著に強い。特異性を純粋に評価したのが、実施例8(HAECへのDOPG SUVまたはLUVの結合・取り込みがLOX−1中和抗体によって阻害される実験)に例示されている。LOX−1中和抗体によりHAECを処理することにより、変性LDLの取り込みは多少減少する(減少分がLOX−1依存的な取り込み。残りは、LOX−1以外の酸化LDL受容体等の他の受容体による取り込みと解釈される)。他方、DOPG SUVまたはLUVは、LOX−1中和抗体処理により、取り込みは全く観察されなくなる(取り込まれたSUVの蛍光が観察されず、画像は真っ暗)。これは、DOPG SUVまたはLUVが、他の受容体に認識し取り込まれることなく、LOX−1に特異的に認識され、取り込まれていることを示している。
(リポソームの生産法)
本発明は、別の局面において、本発明のDOPGを含むSUVを生産する方法を提供する。この方法は、たとえば、(A)DOPG溶液を容器上で薄膜化する工程;(B)該薄膜化したDOPGを乾燥後水和させる工程(C)(B)で水和したDOPG溶液を攪拌しつつ凍結させ、その後加熱して溶解し、必要に応じてこれを繰り返す工程;および(D)該DOPG溶液をサイジングフィルターに通す工程を包含する。
1つの例示的な実施形態では以下の手順が用いられる。
1.試験管に脂質DOPGクロロホルム溶液(Avanti)(50mg/ml)を100μLとる。
2.試験管を回しながら、窒素を緩やかに吹き付けてクロロホルムを乾かし、脂質を試験管に薄膜として付着する。
3.デシケーターに試験管を入れて真空ポンプで引き、一晩乾燥する。
4.ミリQを1mL加えて30分静置し、脂質DOPGを水和した。蛍光色素を入れる場合は、ここでDiIストック溶液(蛍光色素DiI(invitrogen)を濃度50mg/mlでDMSOに溶かしたもの)を32μl加える。
5.試験管をボルテックスで攪拌しながら液体窒素に潜らせ、試験管壁に溶液が張り付くように凍結させる。その後42℃の恒温槽に入れて溶解する。これを5回繰り返す。
100、50、30nmのサイジングフィルター(Avanti)に10回ずつ順に通し、リポソームのサイズを均一にする。
各工程については以下のように実施することができる。
(A)工程で使用されるDOPG溶液は、市販のもの(例えば、−20℃保存のクロロホルム溶液)を利用するか、あるいは、凍結乾燥品等をクロロホルム等の適切な溶媒に溶解して調製することができる。溶解する場合は、溶解条件としては、例えば、クロロホルムを氷上で添加することにより、速やかに溶解させて溶液を調製することができる。
(A)該DOPG溶液を容器上で薄膜化する工程では、容器としては、ガラス試験管等を使用することができ、薄膜化としては、試験管を回しながら、窒素ガスを緩やかに吹き付けクロロホルムをとばし、脂質を試験管壁に薄膜として付着させる。さらに、デシケータ内に試験管を入れ真空ポンプで引き、一晩乾燥させることにより、薄膜を完成させる方法等を使用することができる。これらの条件は例示であり当業者は適宜改変することができる。
(B)該薄膜化したDOPGを乾燥後水和させる工程は、薄膜化した容器に水または水含有溶媒を加えることによって実施することができる。水和に際しては、例えば、超純水(例えば、ミリQ水)を1ml加え室温で30分間静置し、脂質DOPGを水和し、この段階でDiIストック溶液(DiI(Invitrogen)、50mg/ml DMSO溶液)を加えることによって水和を達成することができる。これらの条件は例示であり当業者は適宜改変することができる。
(C)(B)で水和したDOPG溶液を攪拌しつつ凍結させ、その後加熱して溶解する工程は、例えば、攪拌条件としてはボルテックスミキサを適宜の回転数で使用することができ、凍結は、撹拌しながら液体窒素に潜らせ、試験管壁に溶液が張り付くように凍結させることによって達成するができ、加熱条件としては42℃の恒温槽に入れて溶解させる条件を挙げることができる。これらの条件は例示であり当業者は適宜改変することができる。
必要に応じてこれを繰り返す工程は、例えば、1回〜5回ほど繰り返すことができ、例えば、溶液がほぼ透明になる状態になるまで繰り返すことができ、5回以上繰り返してもよい。これらの条件は例示であり当業者は適宜改変することができる。
(D)該DOPG溶液をサイジングフィルターに通す工程は、サイジングフィルターとしては、Corning社のNucleopore Track−Etch Membrane や Avanti社のサイジングフィルター等を使用することができ、フィルタの通過は、2本のシリンジの中間にフィルターの装着が可能なアダプターが装着されたリポソーム作製装置により、100,50,30nmのサイジングフィルターに10回ずつ順の通し、リポソームのサイズを均一にすることで達成することができる。あるいは、窒素ガスにより圧力をかけてフィルターを通す装置(LIPEX社、Biomembranes extruder)を使用することができる。
(血管内皮の機能不全の改善)
本発明は、1つの局面において、DOPGを含むSUVまたはLUVを含む、血管内皮の機能を調節しうる因子をスクリーニングまたは分析するための組成物を提供する。血管内皮の機能に悪影響がないことの特徴については、AcLDLの知見からは予想できなかった。本明細書において「血管内皮の機能を調節しうる因子」は、血管内皮の機能を調節しうる限りどのような因子でも用いることができる。例えば、血管内皮の機能を調節しうる因子は、血管内皮の機能不全を誘導する因子または誘導を抑制する因子であってもよい。「血管内皮の機能不全を誘導する因子」は、血管内皮の機能不全を誘導することができるものであればどのような因子を用いてもよい。「血管内皮の機能不全の誘導を抑制する因子」としては血管内皮の機能不全の誘導を抑制することができる限りどのような因子を用いてもよい。血管内皮の機能不全を誘導する因子は動物モデル等を作製するために用いることができる。血管内皮の機能不全の誘導を抑制する因子は、疾患の治療等に用いることができ、本明細書において「血管内皮機能不全に対する薬剤」とも称される。そのような因子としては、例えば、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、チアジリン誘導体等、種々のアンタゴニスト等の医薬を挙げることができるがこれらに限定されない。このような実施形態の例としては、動脈硬化に抑制的に働く一酸化窒素(NO)の産生に関わる血管内皮型NO産生酵素(endothelial NO synthase:eNOS)の活性を上昇させる作用のあるジヒドロピリジン系Ca拮抗剤などを封入したDOPG 単層膜リポソームを内皮上に発現しているLOX−1を介して効率的に血管内皮に導入することができ、内皮細胞機能不全に伴い誘導される血管細胞接着分子−1(VCAM−1)、細胞間接着分子−1(ICAM−1),E−セレクチンなどの接着因子、単球走化性因子−1(MCP−1)などのサイトカインの発現を抑制するために、siRNAをDOPG 単層膜リポソームをキャリアとして内皮細胞内に導入する遺伝子サイレンシングによる治療を想定することができる。
別の局面において、本発明は、DOPGを含むSUVまたはLUVを含む、血管内皮の機能を調節しうる因子を、該因子を必要とする被験体に送達するための組成物を提供する。
血管内皮の機能としては、様々な生理活性因子を産生・分泌することにより、血管の収縮・拡張、血管壁への炎症細胞の接着、血管透過性などの抗炎症作用や凝固系線溶系などの調節を挙げることができる。
血管内皮の機能不全が生じると、動脈硬化を経て脳梗塞、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患という症状、疾患、障害等が起こる。
微小血管内皮の機能不全の代表例として、糖尿病合併症である糖尿病腎症、網膜症、神経症という症状、疾患、障害等を挙げることができる。
静脈内皮の機能不全が生じると、静脈血栓症等の症状、疾患、障害等が起こる。
大動脈内皮細胞の機能不全が生じると、動脈硬化を経て大動脈瘤、脳梗塞、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患という症状、疾患、障害等が起こる。
スクリーニングをする具体的な手法としては以下が挙げられる。例えば、OxLDL構成成分などをDOPG SUV中に封入もしくは、膜中に挿入し、LOX−1を介して取り込ませることにより、血管内皮機能不全の誘導を解析し、機能不全を誘導する因子を明らかにすることができる。あるいは、機能障害抑制効果が期待される分子をDOPG SUV中に封入もしくは、膜中に挿入し、OxLDLと同時に細胞に取り込ませ、OxLDLにより誘導される機能不全を抑制する効果を評価することができる。これらの条件は例示であり当業者は適宜改変することができる。
血管内皮の機能の分析の具体的手法としては例えば、動脈硬化に抑制的に働く一酸化窒素(NO)産生に関わる血管内皮型NO産生酵素(endothelial NO synthase:eNOS)の活性低下、血管細胞接着分子−1(vascular cell adhesion molecule−1;VCAM−1),細胞間接着分子−1(intercellular adhesion molecule−1;ICAM−1),E−セレクチンなどの接着因子の発現誘導、単球走化性因子−1(monocyte chemoattractant protein−1;MCP−1)などのサイトカインの産生を挙げることができるがこれらに限定されない。
(変性LDLのLOX−1への結合阻害、標識、イメージング)
別の局面において、本発明は、変性LDLのLOX−1への結合を阻害するための、DOPGを含むSUVまたはLUVを含む組成物を提供する。LOX−1への結合阻害を試薬(種々のアンタゴニスト)として利用することのほか、LOX−1の変性LDLへの結合に起因する状態(例えば、動脈硬化性疾患の初期過程)および/または当該分野で公知で本明細書に例示されるような血管内皮状態の悪化に起因する状態、障害または疾患等を抑制することができる。
別の局面において、本発明は、LOX−1を特異的に標識するための、DOPGを含むSUVまたはLUVを含む組成物を提供する。
本明細書において「標識」とは、目的となる分子または物質を他から識別するための存在(たとえば、物質、エネルギー、電磁波など)をいう。そのような標識方法としては、RI(ラジオアイソトープ)法、蛍光法、ビオチン法、化学発光法等を挙げることができる。上記のSUVまたはLUVを蛍光標識する場合は、脂溶性の蛍光色素の脂質二重膜内への挿入による。2種類以上の蛍光標識リポソームを同時に使用する場合には、蛍光発光極大波長が互いに異なる蛍光物質によって標識を行う。蛍光発光極大波長の差は、10nm以上であることが好ましい。蛍光色素としては脂溶性蛍光色素であれば何れも用いることができるが、カルボシアニン膜プローブ(例えばDiO、DiI等)等を使用することが好ましい。蛍光発光極大波長の差が10nm以上である蛍光物質としては、例えばDiIとDiDとの組み合わせ等を挙げることができる。蛍光発光極大波長の差が10nm以上である蛍光物質としては、例えば、Cy5とローダミン6G試薬との組み合わせ、Cy3とフルオレセインとの組み合わせ、ローダミン6G試薬とフルオレセインとの組み合わせ等を挙げることができる。本発明では、このような標識を利用して、使用される検出手段に検出され得るように目的とする対象を改変することができる。そのような改変は、当該分野において公知であり、当業者は標識におよび目的とする対象に応じて適宜そのような方法を実施することができる。
本発明の好ましい実施形態において、使用される手段は、質量分析装置、核磁気共鳴測定装置、X線解析装置、SPR、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー)、免疫学的手段(例えば、ウェスタンブロッティング、ELISA、RIA)、生化学的手段(例えば、pI電気泳動、サザンブロッティング、二次元電気泳動)、電気泳動機器、化学的分析機器、蛍光二次元ディファレンシャル電気泳動法(2DE−DIGE)、同位体標識法(ICAT)、タンデムアフィニティ精製法(TAP法)、物理学的手段、レーザーマイクロダイセクションおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
好ましい実施形態では、本発明では、対象となるサンプルを精製する手段を用いてもよい。このような精製手段としては、例えば、クロマトグラフィーなどを挙げることができる。精製することによって、診断の精度を上げることができることから、好ましい実施形態において使用され得るが、これは必須ではない。
本発明において、被験体は、哺乳動物を含み、1つの実施形態では、被験体は、齧歯類を含む。このような齧歯類(例えば、ラット、マウスなど)は、モデル動物、特に、脂質異常症や動脈硬化性疾患のモデル動物が作製されていることから好ましい。好ましい実施形態では、被験体は、ヒトを含む。
1つの実施形態では、本発明で用いられる前記標識は、LOX−1の過剰発現部位の可視化または動脈硬化巣形成の前段階の検出に用いられる。具体的な実施形態としては、蛍光標識したDOPG 単層膜リポソームを想定することができる。
別の実施形態では、本発明の組成物は、前記標識は磁気共鳴画像化(MRI)のために用いられる。具体的な使用例としては、MRI造影効果をもつGd3+ドープしたDOPG単層膜リポソーム、蛍光標識したDOPG 単層膜リポソームを想定することができる。この場合、MRI造影効果をもつGd3+ドープしたDOPG蛍光標識したDOPG 単層膜リポソームや分子イメージングに有効な99mTC標識DOPG単層膜リポソームを投与し、動脈硬化初期病変や動脈硬化巣の存在位置を確認することができる。
本発明の検出用途での利用としては、図12に示したようなMRI イメージング(LOX−1は通常発現量が低いので過剰発現部位の可視化、動脈硬化巣形成の前段階の検出)のための薬剤としての使用が想定されるがそれらに限定されない。このほかの検出用途としては、例えば、分子イメージングに有効な99mTC標識DOPG単層膜リポソームを想定することができる。
(治療剤)
本発明は、DOPG SUVまたはLUVのLOX−1への特異的結合および変性LDLとの競合阻害特性から、それ自体を治療剤として使用することのほか、これを特異的送達媒体として医薬組成物として使用することができる。
さらに別の局面において、本発明は、血管内皮機能不全を抑制するための、DOPGを含むSUVを含む組成物を提供する。AcLDLと競合するのであれば、すなわち変性LDLと同視することができ、また、AcLDLとOxLDLとにLOX−1との相互作用特性に差はないことから、OxLDLとも競合するものと考えられるため、血管内皮機能不全等の疾患の原因であるOxLDLを阻害することによって、血管内皮機能不全を抑制することができることが理解される。
1つの実施形態では、本発明の組成物は、血管内皮機能不全に対する薬剤を含む。そのような薬剤としては、本明細書において「血管内皮機能不全に対する薬剤」は血管内皮機能不全に対する薬剤であればどのような薬剤を用いてもよく、そのような薬剤としては、例えば、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、チアジリン誘導体等、種々のアンタゴニストを挙げることができる。このような実施形態の例としては、動脈硬化に抑制的に働く一酸化窒素(NO)の産生に関わる血管内皮型NO産生酵素(endothelial NO synthase:eNOS)の活性を上昇させる作用のあるジヒドロピリジン系Ca拮抗剤などを封入したDOPG 単層膜リポソームを内皮上に発現しているLOX−1を介して効率的に血管内皮に導入することができ、内皮細胞機能不全に伴い誘導される血管細胞接着分子−1(VCAM−1)、細胞間接着分子−1(ICAM−1),E−セレクチンなどの接着因子、単球走化性因子−1(MCP−1)などのサイトカインの発現を抑制するために、siRNAをDOPG 単層膜リポソームをキャリアとして内皮細胞内に導入する遺伝子サイレンシングによる治療を想定することができる。
さらに別の実施形態では、本発明の組成物は、血管内皮機能不全に関連するsiRNA、プラスミド等の遺伝子導入剤またはシグナル伝達調節剤を含む。そのような薬剤としては、遺伝子サイレンシング試薬を挙げることができる。
このような実際の薬剤の利用例としては、Expert Opin. Drug Deliv. 5,459-470 (2008);Biomaterials32,3487-3498 (2011)に記載されている例を挙げることができ、これらの文献は、本明細書においてその全体を参考として援用する。
本明細書において、「siRNA」とは、15〜40塩基からなる二本鎖RNA部分を有するRNA分子であり、前記siRNAのアンチセンス鎖と相補的な配列をもつ標的遺伝子のmRNAを切断し、標的遺伝子の発現を抑制する機能を有する。詳細には、本発明におけるsiRNAは、標的となる遺伝子のmRNA中の連続したRNA配列と相同な配列からなるセンスRNA鎖と、該センスRNA配列に相補的な配列からなるアンチセンスRNA鎖とからなる二本鎖RNA部分を含んでなるRNAである。かかるsiRNAおよび後述の変異体siRNAの設計および製造は当業者の技量の範囲内である。
二本鎖RNA部分の長さは、塩基として、15〜40塩基、好ましくは15〜30塩基、より好ましくは15〜25塩基、更に好ましくは18〜23塩基、最も好ましくは19〜21塩基である。これらの上限および下限は、これら特定のものに限定されず、これら列挙されているものの任意の組み合わせであってもよいことが理解される。siRNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖の末端構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平滑末端を有するものであってもよいし、突出末端(オーバーハング)を有するものであってもよく、3’端が突き出したタイプが好ましい。センスRNA鎖およびアンチセンスRNA鎖の3’末端に数個の塩基、好ましくは1〜3個の塩基、さらに好ましくは2個の塩基からなるオーバーハングを有するsiRNAは、標的遺伝子の発現を抑制する効果が大きい場合が多く、好ましいものである。オーバーハングの塩基の種類は特に制限はなく、RNAを構成する塩基あるいはDNAを構成する塩基のいずれであってもよい。好ましいオーバーハング配列としては、3’末端にdTdT(デオキシTを2bp)等を挙げることができる。例えば、好ましいsiRNAとしては、全てのsiRNAのセンス・アンチセンス鎖の、3’末端にdTdT(デオキシTを2bp)をつけているものが挙げられるがそれに限定されない。
さらに、上記siRNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖の一方または両方において1〜数個までのヌクレオチドが欠失、置換、挿入および/または付加されているsiRNAも用いることができる。ここで、1〜数塩基とは、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜4塩基、さらに好ましくは1〜3塩基、最も好ましくは1〜2塩基である。かかる変異の具体例としては、3’オーバーハング部分の塩基数を0〜3個としたもの、3’−オーバーハング部分の塩基配列を他の塩基配列に変更したもの、あるいは塩基の挿入、付加または欠失により上記センスRNA鎖とアンチセンスRNA鎖の長さが1〜3塩基異なるもの、センス鎖および/またはアンチセンス鎖において塩基が別の塩基にて置換されているもの等が挙げられるが、これらに限定されない。ただし、これらの変異体siRNAにおいてセンス鎖とアンチセンス鎖とがハイブリダイゼーションしうること、ならびにこれらの変異体siRNAが変異を有しないsiRNAと同等の遺伝子発現抑制能を有することが必要である。
さらに、該siRNAは、一方の端が閉じた構造の分子、例えば、ヘアピン構造を有するsiRNA(Short Hairpin RNA;shRNA)であってもよい。shRNAは、標的遺伝子の特定配列のセンス鎖RNA、該センス鎖配列に相補的な配列からなるアンチセンス鎖RNA、およびその両鎖を繋ぐリンカー配列を含むRNAであり、センス鎖部分とアンチセンス鎖部分がハイブリダイズし、二本鎖RNA部分を形成する。
siRNAは、臨床使用の際には、いわゆるoff−target効果を示さないことが望ましい。off−target効果とは、標的遺伝子以外に、使用したsiRNAに部分的にホモロジーのある別の遺伝子の発現を抑制する作用をいう。off−target効果を避けるために、候補siRNAについて、予めDNAマイクロアレイなどを利用して交差反応がないことを確認することが可能である。また、NCBI(National Center for Biotechnology Information)などが提供する公知のデータベースを用いて、標的となる遺伝子以外に候補siRNAの配列と相同性が高い部分を含む遺伝子が存在しないかを確認する事によって、off−target効果を避けることが可能である。
本発明のsiRNAを作製するには、化学合成による方法および遺伝子組換え技術を用いる方法等、公知の方法を適宜用いることができる。合成による方法では、配列情報に基づき、常法により二本鎖RNAを合成することができる。また、遺伝子組換え技術を用いる方法では、センス鎖配列やアンチセンス鎖配列をコードする発現ベクターを構築し、該ベクターを宿主細胞に導入後、転写により生成されたセンス鎖RNAやアンチセンス鎖RNAをそれぞれ取得することによって作製することもできる。また、標的遺伝子の特定配列のセンス鎖、該センス鎖配列に相補的な配列からなるアンチセンス鎖、およびその両鎖を繋ぐリンカー配列を含み、ヘアピン構造を形成するshRNAを発現させることにより、所望の二本鎖RNAを作製することもできる。
siRNAは、標的遺伝子の発現抑制活性を有する限りにおいては、siRNAを構成する核酸の全体またはその一部は、天然の核酸であってもよいし、修飾された核酸であってもよい。
本明細書において「遺伝子導入」は、目的となる遺伝子を細胞、組織、または動物中に導入することをいい、概念として、「形質転換」、「形質導入」および「トランスフェクション」などを包含するものであり、当該分野において公知の任意の手法によって実現することができる。そのような遺伝子導入を可能にするキャリアを「遺伝子導入キャリア」という。また、「遺伝子導入」には導入部位を限定しない導入および導入部位を限定する相同組換による導入のいずれも含むものである。遺伝子導入の手法としては、たとえば、レトロウイルス、プラスミド、ベクター等を用いた手法、あるいは、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法、リン酸カルシウム法、未分化細胞(たとえば、繊維芽細胞など)等の細胞を用いる方法が挙げられるがそれに限定されない。
本発明はまた、血管内皮機能不全を抑制するための、DOPGを含むSUVまたはLUVを含む組成物を提供する。ここで、本発明は変性LDL(例えば、AcLDL、OxLDL等)とも競合するため、本件リポソーム自体に治療効果はあり得ることが理解される。また、本発明においてDOPG SUVまたはLUVには、顕著な誘導が観察されず、DOPGはLOX−1を介して取り込まれるが、DOPG自体が機能不全を誘導することは無いことが確認された。このことは、血管内皮の機能不全を誘導する分子のスクリーニングや解析するためのツール、さらには、機能不全を抑制する分子のスクリーニングや導入のツールとしてDOPG SUVまたはLUVが有用であることを示している。
上述のようなsiRNAや他の薬剤をリポソームに入れることは、「カプセル化」とも呼ばれる。「カプセル化」には、薬剤と脂質基剤の送達媒体との共有結合または非共有結合が含まれる。例えば、これは、薬剤と、リポソームの外層もしくは複数の外層との相互作用、またはリポソーム内での薬剤の捕捉によるものとすることができ、そのときリポソームの異なる部分間で平衡状態に達する。それ故、薬剤のカプセル化は、脂質成分との共有結合もしくは非共有結合的相互作用を介するか、またはリポソームの水性内部への捕捉を介するか、あるいは内部水相と二分子膜との間の平衡状態において、薬剤が、リポソームの二分子膜との相互作用によって会合することによるものとすることができる。「充填」とは、1以上の薬剤を送達媒体にカプセル化する行為をいう。
治療用薬剤を、受動的および能動的充填方法の両方を使用して、リポソームに充填してもよい。有効因子をリポソームにカプセル化する受動的方法には、リポソームの調製中に薬剤をカプセル化することが含まれる。これには、Bangham,et al. (J. Mol. Biol. (1965) 12 : 238)に記載の受動的捕捉方法が含まれる。この技術により、押し出し成形時に大きな単層ベシクル(LUV)または小さな単層ベシクル(SUV) に変換することができる多層ベシクル(MLY)の形成が生じる。受動的カプセル化のさらなる適切な方法として、Deamer and Bangham (1976)に記載のエーテル注入技術、およびSzoka and Paphadjopoulos (1978)に記載の逆相蒸発技術が挙げられる。
カプセル化の能動的方法として、米国特許第No. 5,616,341号、米国特許第5,736,155号および米国特許第5,785,987号に記載のpH勾配充填技術ならびに能動的金属充填が挙げられる。pH勾配充填の好適な方法は、4.0のpHで内部緩衝液としてクエン酸、および中性の外部緩衝液を利用するクエン酸に基づく充填方法である。リポソームを横断するpH勾配を確立および維持するために用いられる他の方法には、リポソーム膜に挿入することができ、そしてプロトンとの交換で膜を横断してイオンを輸送することができるイオノフォアの使用が含まれる(米国特許第5,837,282号を参照のこと)。また、イオノフォアの非存在下で、錯体化を介して薬剤のリポソームへの取り込みを推進するために遷移金属を利用する最近の技術を使用してもよい。この技術は、薬物の取り込みを推進するために、pH勾配の確立ではなく、薬物−金属錯体の形成に依存する。金属に基づく能動的充填は、典型的に、(受動的に充填された治療用薬剤を伴うまたは伴わずに)受動的にカプセル化された金属イオンと共にリポソームを使用する。金属イオンの様々な塩が使用されるが、これらの塩は、薬学的に許容でき、かつ水溶液に可溶性であるであるという仮定に立っている。能動的に充填される薬剤は、金属イオンと錯体を形成することが可能であること、それ故、リポソーム内でそのような錯体形成がなされた場合、保持されること、さらに、金属イオンに錯体形成されない場合、リポソームに充填することが可能であることに基づいて選択される。金属に配位可能な薬剤は、典型的に、アミン、カルボニル基、エーテル、ケトン、アシル基、アセチレン、オレフィン、チオール、ヒドロキシルもしくはハライド基、または電子を金属イオンに供与することによって、金属イオンと錯体を形成することが可能な他の適切な基のような配位部位を含む。
一般に、受動的取り込みおよび能動的(遠隔)装填を含め、活性作用物質が取り込まれているリポソームを調製するために、さまざまな利用可能な装填方法が存在する。ここで用いられる「取り込み」という用語は、作用物質の少なくとも実質的部分がリポソームの内部水性コア内部に封入されるような形での、リポソーム上への、作用物質のあらゆる装填形態を意味している。内部コアの中で、作用物質は遊離していても、又脂質二重層の内部表面に会合させられていてもよい。この ようにして、本発明の状況下では、「取り込み」という用語は、時として「封入」または「担持」または「充填」という用語と互換的に使用され得る。
医薬組成物のリポソームの濃度は、例えば、約0.05重量%未満から、通常、約2〜5重量%または少 なくとも約2〜5重量%、多い時で10〜30重量%まで幅広く変動させることができ、そして主として、選択される特定の投与形態に応じて、液量、粘度などによって選択されるであろう。例えば、治療に伴う液体充填量を低減させるために、濃度を増加させてもよい。
本明細書において「有効量」または「〜に有効な量」という用語は、リポソームが投与された時点で所与の治療的投薬計画内で治療対象の疾病または障害に関して、所望の治療効果を達成するのに充分である作用物質の量を表わすように用いられている。この量は、当該分野において既知の通りの考慮事項によって判定され、治療対象の身体条件の種類および重症度および治療投薬計画に依存する。有効量は、標準的には、適切に設計された臨床試験(用量範囲研究)の中で判定され、当業者であれば、有効量を判定する目的でかかる臨床試験をいかにして適切に行なうかがわかるだろう。一般に知られているように、有効量は、投与様式、両親媒性弱酸/塩基を担持する賦形剤の種類、活性作用物質(弱両親媒性酸または塩基)の反応度、体内でのリポソームの分布プロファイル、例えばリポソームから放出された後の体内の半減期、存在する場合には望ましくない副作用、治療対象の年令および性別などの因子などを含めた種々の因子を含んだ様々な薬理学的パラメータに依存する。
本明細書において「投与する」(または「投与」)という用語は、経口、非経口(皮下、筋内および静脈内、動脈内、腹腔内など)および鼻腔内投与、ならびに髄腔内および注入技術を含んだ、患者体内の所望の場所へのあらゆる適切な送達経路による、患者へのリポソーム処方物の接触または調剤、供給または塗布を表わすために使用されている。
本明細書で使用する「治療」(または「治療する」)という用語は、望ましくない病態の治癒またはある疾患の進行の予防を表わす。治癒を目的とする場合、「治療」という用語は、その疾患に付随する望ましくない症候の改善、疾患の進行の減速、疾患の進行期の発症の遅延、かかる症候の悪化の減速、疾患の寛解期開始の増強、存在する場合には進行期の発症の遅延、生存率の改善または疾患からのより急速な回復、疾患の重症度の削減またはその治癒などを含む。治療は疾患または障害の予防も含む。「予防」という用語は、疾患の発生の予防または疾患によりひき起こされる不可逆的損傷の予防、発生前の疾患に付随する症候の発現の予防、疾患の進行の阻害などの目的で一定量の組成物を投与することを含んでいるが、これらに限定されない。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
必要な場合、以下の実施例で用いる動物の取り扱いは、食品総合研究所において規定される基準を遵守する。
(実施例1:リポソームの製造)
(リポソームの製造)
酸化LDL受容体(LOX−1)に高い親和性を有し、LOX−1を介して細胞内に取り込まれる1,2−Dioleoyl−sn−Glycero−3−[Phospho−rac−(1−glycerol)](DOPG)から構成される単層膜リポソーム(small unilamellar vesicles:SUVまたはlarge unilamellar vesicles:LUV)を作製した。単層膜リポソームは最終的に30nmのフィルターを通した粒径約100nmのサイズのものと、100nmのフィルターを通した粒径約150 nmのサイズのものを調製した(図1参照)。
単層膜リポソームの作製法
1.試験管に脂質DOPGクロロホルム溶液(Avanti)(50mg/ml)を100μLとった。
2.試験管を回しながら、窒素を緩やかに吹き付けてクロロホルムを乾かし、脂質を試験管に薄膜として付着した。
3.デシケーターに試験管を入れて真空ポンプで引き、一晩乾燥した。
4.ミリQを1mL加えて30分静置し、脂質DOPGを水和した。蛍光色素を入れる場合は、ここでDiIストック溶液(蛍光色素DiI(invitrogen)を濃度50mg/mlでDMSOに溶かしたもの)を32μl加えた。
5.試験管をボルテックスで攪拌しながら液体窒素に潜らせ、試験管壁に溶液が張り付くように凍結させた。その後42℃の恒温槽に入れて溶解した。これを5回繰り返した。
6.100、50、30nmのサイジングフィルター(Avanti)に10回ずつ順に通し、リポソームのサイズを均一にした。
(室温での安定)
得られた単層膜リポソームの粒子サイズは、製造後60日以上を経ても室温で安定であった(図2)。
安定性はDOPG SUV(濃度 2.5mg/ml)の粒子サイズを25℃でゼータサイザーナノ(マルバルーン社)により測定した。
結果を図2に示す。
図2は、作製日からの日数経過を示す。サイジングフィルター:30nmであり、脂質はDOPG(lot1,2)を使用し、保存は、25℃で行った。Aは、サイズ分布を強度(%)で見たグラフである。7回の記録(Record)の結果である。Bは作製からの経過日数による粒子サイズを示す。Cは、作製からの経過日数によるPdI変化を示す。PdI<0.3ならば、粒子サイズが均一であるといえる:作製後60日は、安定であることが示された。
(実施例2:表面電位の測定)
表面電位も60日以内であれば室温で変化がないことを確認した。表面電位は、DOPG SUV(濃度 2.5mg/ml)の表面電位を25℃でゼータサイザーナノ(マルバルーン社)により測定した。
図3には、表面電位:経過日数を示す。サイジングフィルターは30 nmを、脂質は、DOPG(lot1,2)を使用し、保存は、25℃で行った。作製からの経過日数によるゼータ電位変化を示す。表面電位は、作製後60日以内は、安定であることが示され、安定なキャリアとして活用可能なことが示された。
(実施例3:表面プラズモン共鳴測定)
次に、表面プラズモン共鳴によるLOX−1集積単相チップとAcLDLの相互作用解析を行った。以下にそのプロトコルを示す。
NTA−SAM(self assembly monolayer)sensorは、下記の手順で作製した。金薄膜をピランハ溶液(H:濃硫酸=3:7)中に30分間浸漬した後、ミリQ水で洗浄し、さらにエアガンで乾燥させた。続いてOEG−NTA:OGE−OH=0.1mM:0.9mM溶液中に、遮光して24時間放置した。エタノールで洗浄後にエアガンで乾燥し、Biacore用の専用ケースに入れ窒素封入して完成させた。NTA−SAM sensorは、1週間以内に使用した。測定は、Biacore Xを用いて行った。測定温度は25℃、流速は 特に断りが無い限り20μl/minとした。ランニング緩衝液として、10mM HEPES (pH7.4),150mM NaCl,50 μM EDTAを使用した。NTA−SAM sensorをBiacore Xに設置し、再生溶液1(50mM NaOH)を20μl流した。続いて再生溶液2(10mM HEPES,150 mM NaCl,0.35M EDTA,0.05% Surfactant P20)を20μl流した。次にNiCl活性化溶液(500mM NiCl)を流速10μl/minで20μl流した。さらに、LOX−1溶液(100μg/ml LOX−1 ECD/ランニング緩衝液)を80μl流すことにより、NTA−SAM sensor上にLOX−1を固定した“LOX−1集積単相チップ”を完成させた。続いて、9.77pM〜625pMの各濃度のAcLDL溶液80μlを順に流し、LOX−1集積単相チップ上のLOX−1 ECDへのAcLDLの結合と解離の様子を測定した。測定結果は、センサーグラムとしてリアルタイムに観察される。得られたセンサーグラムを基に、解析用ソフト(Bia evaluation)によりアフィニティー解析を行い、解離定数を求めた。
図4は、表面プラズモン共鳴によるLOX−1集積単相チップとAcLDLの相互作用解析結果を示す。左に試料として用いたAcLDLとLOX−1集積単相チップとの相互作用の模式図を示す。ランニング緩衝液として、10mM HEPE(pH7.4)、150mM NaCl、50μM EDTA、0.05%(v/v)Tween20を用いた。(a)はLOX−1ECDへのAcLDLの結合と解離をリアルタイムで計測したセンサーグラムであり、(b)はアフィニティー解析のグラフを示す。アフィニティー解析により、LOX−1 ECDとAcLDLの結合の強さは、K=95×10−12 Mであることが明らかとなった。 本実施例では、DOPG単層膜リポソームのLOX−1への結合を、LOX−1集積単相チップを用いた表面プラズモン共鳴により解析したところ、LOX−1の通常のリガンドであるAcLDL(酸化LDL:OxLDLは構造が一定せず不安定なため、モデルリガンドとして安定なアセチル化LDL:AcLDLを変性LDLモデルとして使用)との解離定数K=95 x 10−12Mであった(図4)。
(実施例4:粒子サイズごとの測定)
複数の粒子サイズのDOPG単層膜リポソームについて、LOX−1への親和性を分析した。本実施例では、実施例3と基本的に同様の手順で行った。ただし、AcLDLの代わりに、DOPG SUV,DOPG LUVそれぞれについて同様のことを行った。
図5は、表面プラズモン共鳴によるDOPG単層膜リポソームとの相互作用解析結果を示す。ランニング緩衝液として、10mM HEPE(pH7.4)、150mM NaCl、50μM EDTAを用いた。(a)はLOX−1 ECDへの単層膜リポソームの結合と解離をリアルタイムで計測したセンサーグラムであり、(b)はアフィニティー解析のグラフを示す。上は、粒子サイズ96.6±33.7nmのDOPG SUVのものを示し、下は、粒子サイズ143.6±29.6nmのDOPG LUVの結果を示す。アフィニティー解析により、LOX−1 ECDとDOPG SUVとの解離定数K=4.4×10−12M、DOPG LUVとの解離定数K=5.0×10−12Mと求められ、いずれの粒子サイズのDOPG単層膜リポソームもAcLDLと同等以上の極めて強いLOX−1への親和性を示した(図5)。
図6に、実施例2〜4の結果を整理して一覧表にしたものを示す。図6には、表面プラズモン共鳴(SPR)による解析結果を示す。DOPG単層膜リポソームは、AcLDLに比べ粒子径が大きく表面電荷も強いことから、AcLDLよりも10倍以上LOX−1に対する結合能が強いことが示された。
(実施例5:蛍光顕微鏡による観察)
DOPG SUVに蛍光色素DiIを導入し、細胞上におけるDOPG単層膜リポソームのLOX−1への結合と取り込みを蛍光顕微鏡により観察した。
CHO(LOX−1を発現していない野生株)、T株(CFP融合LOX−1安定発現株)は実験の48時間前に、カバーガラスを入れた培養シャーレに播き(10% FCS(牛胎児血清)含F12,T株の場合、2mg/ml G418も添加)、COインキュベーター(5% CO,37℃)内で培養した。観察日当日の細胞密度は80%コンフルエントになるようにした。FCSを含まないF12にて洗浄後に、DiD標識AcLDL(DiD−AcLDL),もしくは、DiI標識DOPG SUV(DiI−DOPG SUV)を添加し、15分間反応させた後、2%ホルマリン/PBS(−)で固定した。スライドガラス上にマウントした後、リガンド(DiD−AcLDL、DiI−DOPG SUV)の取り込みを蛍光顕微鏡にて観察した。
図7には、細胞上におけるAcLDL、DOPG SUVのLOX−1への結合の確認を示す。30nm のフィルターを用いて調製したDOPG SUVにDiI蛍光標識、AcLDLをDiDで蛍光標識し、CHO細胞、若しくは、CFP融合LOX−1安定発現株(T株)と15分間反応させ、細胞への取り込みを評価した。(a)は、CHO +DiD−AcAcLDLを示し、(b)は、CHO+DiI−DOPG SUVを示し、(c)は、T+160×10−12M DiD−AcLDLを示し、(d)は、T+0.25×10−12M DiI−DOPG SUVを示す。 LOX−1を発現していない野生型CHO細胞には、DiD(赤の蛍光として観察される)で標識したAcLDL同様に、DiIで標識したDOPG SUV(緑の蛍光として観察される)の結合も取り込みも観察されなかった(a,b)。一方、CFP融合LOX−1(青色の蛍光として観察される)を安定発現しているCHO株(T株)と反応させたところ、AcLDL同様にDOPG SUVも取り込まれることが確認され(c,d)、DOPG SUVはLOX−1を介して細胞内に取り込まれることが明らかとなった。
なお、この実施例は、SUVのみを用いているが、LUVでも同様の結果が期待できる。
(実施例6:DOPG SUVとAcLDLの結合の競合解析)
本実施例では、DOPG単層膜リポソームとAcLDLの結合の競合を解析した。以下にプロトコルを示す。
T株(CFP融合LOX−1安定発現株)は実験の48時間前に、カバーガラスを入れた培養シャーレに播き(10% FCS、4mg/ml G418含F12)、CO2インキュベーター(5% CO2,37℃)内で培養した。観察日当日の細胞密度は80%コンフルエントになるようにした。FCSを含まないF12にて洗浄後に、DiD−AcLDLとDiI−DOPG SUVを同時に添加し(DiD−AcLDL とDiI−DOPG SUVは、どちらかが大過剰になるように組み合わせを変えて添加)、15分間反応させた後、2%ホルマリン/PBS(−)で固定した。スライドガラス上にマウントした後、リガンド(DiD−AcLDL,DiI− DOPG SUV) の取り込みを蛍光顕微鏡にて観察した。
上述のように、T株に対するDOPG SUVとAcLDLの結合の競合を解析した。両者と濃度比を変えて同時に添加したところ、AcLDLのDOPG SUVは100分の1程度の濃度で、AcLDLの結合を阻害することが観察され、実施例5の結果で示されたのと同様、DOPG SUVは、細胞上でもAcLDL以上にLOX−1に対する高い親和性を示した(図8)。
図8には、DOPG SUVとAcLDLのT株への結合の競合を示す。AcLDLとDOPG SUVを同時にT株に添加し、15分反応させた際の取り込みの様子である。模式図を示す。(a)は、160×10−12M DiD−AcLDL+2.5×10−12 M DiI−DOPG SUVを示し、(b)は160×10−12M DiD−AcLDL +5×10−12 M DiI−DOPG SUVを示し、(c)は1600×10−12M DiD−AcLDL +0.25×10−12M DiI−DOPG SUVを示し、(d)は、3200×10−12 M DiD−AcLDL+0.25×10−12 M DiI−DOPG SUVを示す。DOPG SUV存在下で、AcLDLを添加した場合、2オーダー以下DOPG SUV添加によりAcLDLの結合が顕著に阻害された(a,b)。このことは、DOPG SUVが、表面プラズモン共鳴による計測結果と同様に、細胞上でもAcLDL以上にLOX−1に対する高い親和性を有していることを示している。
なお、この実施例は、SUVのみを用いているが、LUVでも同様の結果が期待できる。
(実施例7:DOPG SUVのヒト大動脈内皮細胞(human aortic endothelial cell:HAEC)への結合と取り込みの観察)
本実施例では、DOPG SUVのヒト大動脈内皮細胞(HAEC)への結合と取り込みの観察を行った。以下にプロトコルを示す。
HAECは、実験の3日前にカバーガラスを入れた培養シャーレに播き(添加因子、および2%FCSを含む内皮細胞用基本培地:EGM−2)、CO2インキュベーター(5% CO2,37℃)内で培養した。観察日当日の細胞密度は80%コンフルエントになるようにした。増殖因子などを含まない基本培地(EBM−2)にて洗浄後に、DiD標識AcLDL,もしくは、DiI標識DOPG SUVを添加し、15分間反応させた。必要に応じて、LOX−1の認識能を阻害する効果が知られている中和抗体(23C11)を添加して5分間培養した後にリガンドを加えた。2%ホルマリン/PBS(−)で固定後にスライドガラス上にマウントし、リガンド(DiD−AcLDL,DiI− DOPG SUV) の取り込みを蛍光顕微鏡にて観察した。
図9には、HAECへのAcLDLとDOPG SUVの結合の確認を示す。A:HAEC+1.6nM DiD−AcLDL;B:HAEC+DiI−DOPG SUV;C:HAEC+23C11+1.6nM DiD−AcLDL(23C11:LOX−1中和抗体);D:HAEC+23C11+DiI−SUV(0.25mM)。各パネルにおいて、左は位相差像を示し、右は、DiD−AcLDLを示す。A:HAECにDiD−AcLDLを15分間取り込ませた細胞像。B:HAECにDiI−DOPG SUVを15分間取り込ませた細胞像。C:HAECにLOX−1中和抗体(23C11)存在下でDiD−AcLDLを15分間取り込ませた細胞像。D:HAECにLOX−1中和抗体(23C11)存在下でDiI−DOPG SUVを15分間取り込ませた細胞像。中和抗体処理によりDiD−AcLDLの取り込みは減少するが完全に阻害されない。一方、中和抗体処理により、DiI−DOPG SUVの取り込みはほぼ完全に阻害された。HAEC上で、DOPG SUVがLOX−1を介して特異的に取り込まれることが確認された。
LOX−1は血管内皮細胞上に存在し、酸化LDLを認識し取り込むことにより、動脈硬化発症の最も初期の反応と考えられている血管内皮機能不全を誘導する。DOPG SUVのHAECへの結合と取り込みを観察した。AcLDLはHAECに結合し取り込まれるが(実施例8−A、図9A)、DOPG SUVも同様に取り込まれることが確認された(実施例8−B、図9B)。さらに、LOX−1に結合し、その機能を阻害することが知られている中和抗体(23C11)でHAECを処理することにより、AcLDLの結合と取り込みは抑制されたが(実施例8−C、図9C)、DOPG SUVの結合と取り込みは同様の処理により完全に阻害された(実施例 8−D、図9D)。HAECには複数の酸化LDL受容体が発現しているため、AcLDLの取り込みは23C11により部分的にしか阻害されないのに対して、DOPG SUVの取り込みが、ほぼ完全に阻害されることから、HAECにおけるDOPG SUVの取り込みはLOX−1に依ることが明らかとなった。
なお、この実施例は、SUVのみを用いているが、LUVでも同様の結果が期待できる。
(実施例8:HAECへのAcLDLとDOPG SUVの結合の競合を解析)
本実施例では、HAECへのAcLDLとDOPG SUVの結合の競合を解析した。以下にプロトコルを示す。
HAECは、実験の3日前にカバーガラスを入れた培養シャーレに播き(添加因子、および2%FCSを含む内皮細胞用基本培地:EGM−2)、CO2インキュベーター(5% CO2,37℃)内で培養した。観察日当日の細胞密度は80%コンフルエントになるようにした。増殖因子などを含まない基本培地(EBM−2)にて洗浄後に、DiD−AcLDLとDiI−DOPG SUVを同時に添加し(DiD−AcLDL とDiI−DOPG SUVは、どちらかが大過剰になるように組み合わせを変えて添加)、15分間反応させた後、2%ホルマリン/PBS(−)で固定した。スライドガラス上にマウントした後、リガンド(DiD−AcLDL,DiI− DOPG SUV)の取り込みを蛍光顕微鏡にて観察した。
図10には、HAECへのAcLDLとDOPG SUVの結合の競合を示す。A:HAEC+AcLDL(1.6nM)+(2.5nM);B:HAEC+AcLDL(1.6nM)+DOPG SUV(5nM);C:HAEC+AcLDL(8nM)+DOPG SUV(0.25nM);D:HAEC+AcLDL (16nM)+DOPG SUV(0.25nM)。各パネルは左から、位相差像、DiI−DOPG SUV;DiD−AcLDLを示す。A:HAECにx10倍濃度のDOPG SUVと通常濃度のDiD−AcLDLを添加し15分間取り込ませた細胞像、B:HAECにx20倍濃度のDiI−DOPG SUVと通常濃度のDiD−AcLDLを添加し15分間取り込ませた細胞像、過剰なDiI−DOPG SUVの添加によりDiDAcLDLの取り込みが阻害されることが観察された。C: HAECにx5倍濃度のDiD−AcLDLと通常濃度のDiI−DOPG SUVを添加し15分間取り込ませた細胞像、D: HAECにx10倍濃度のDiD−AcLDLと通常濃度のDiI−単層膜リポソームを添加し15分間取り込ませた細胞像、過剰なDiD−AcLDLの添加によりDiI−DOPG SUVの取り込みが阻害されることが観察された。
HAECへのAcLDLとDOPG SUVの結合の競合を解析したところ、過剰量のDOPG SUVの添加によりAcLDLの結合が阻害され、逆に、過剰量のAcLDLによりDOPG SUVの結合が阻害されることが確認され、HAEC上でも両者の競合が観察された(図10)。
なお、この実施例は、SUVのみを用いているが、LUVでも同様の結果が期待できる。
(実施例9:DOPG SUVのヒト大動脈内皮細胞(HAEC)への結合と取り込みの定量解析)
本実施例9ではDOPG SUVのHAECへの結合と取り込みの定量解析を行った。
実施例8で得られた画像データを基に、各条件下に置ける細胞のDOPG SUVの取り込み量を定量した。測定対象の細胞を選択し、DiI由来の蛍光強度をMetaMorph software(Universal Image)を用いて測定した。各細胞のDiI由来の蛍光強度(ex535/em 610)が取り込んだDOPG SUV量を反映しているので、各実験群から20細胞程度の蛍光強度を定量し、統計処理(ANOVA)した。
図11は、実施例9の結果である。MetaMorph software(Universal Imaging)により細胞の蛍光強度を計測し、統計処理(ANOVA)した結果。*P<0.05。計測した細胞数は、各実験群で20細胞程度である。左からバックグラウンド、Dil−DOPG SUV、23C11+DiI−DOPG SUV、x10AcLDL+DiI−DOPG SUVである。
図11は、このように、HAECへのDOPG SUVの結合と取り込みにおける23C11と過剰量のAcLDLの影響を定量的に示してある。単層膜リポソームは分子内の空洞に種々の分子を充填したり、膜内に脂溶性分子を挿入させたりすることにより、細胞内へのキャリアとしての活用が可能である。HAECを対象としたLOX−1を介したキャリアとして、DOPG単層膜リポソームが有用であることが示された。
なお、この実施例は、SUVのみを用いているが、LUVでも同様の結果が期待できる。
(実施例10:のDOPG SUVの血管内皮機能不全の誘導の不在)
本実施例では、のDOPG SUVの血管内皮機能不全の誘導がないことを実証した。以下にプロトコールを示す。
HAECは、実験の3日前ににカバーガラスを入れた培養シャーレに播き(添加因子、および2%FCSを含む内皮細胞用基本培地:EGM−2)、COインキュベーター(5% CO2,37℃)内で培養した。観察日当日の細胞密度は80%コンフルエントになるようにした。HAECを10% FCSのみを含む培地(EBM−2)で5時間前培養し、0.2%FCSを含む培地に交換し、DiI−OxLDL(1.6nM)、または、DiI−DOPG SUV(25pM)を添加した。16時間後に、2%ホルムアミド/PBS(−)で固定し、間接蛍光抗体法による観察に供した。一次抗体:抗体VCAM−1(Abcam社、Rabbit polyclonal)、5μg/ml(10% FCS含PBS(−))で2時間室温で反応後、二次抗体:Alexa 633標識、抗ウサギIgG (Molecular Probes)5μg/ml(10%FCS含PBS(−))と室温で1時間反応させた(抗体との反応溶液中にTriton X−100などを添加していないため、細胞表層に発現しているVCAM−1のみを検出している)。
図12には、OxLDL,DOPG SUVによる血管内皮細胞機能不全誘導の結果を示す。上から、コントロール(リガンドなし)、Dil−OxLDL、Dil−DOPG SUVを示す。上のコントロールについては、左に位相差像、右にVCAM−1を示す。中のものは、左から、位相差像、Dil−OxLDLおよびVCAM−1を示す。下のものは、左から、位相差像、Dil−DOPG SUV、VCAM−1を示す。OxLDLの取り込みにより血管内皮機能不全誘導の指標である接着分子(VCAM−1)の発現が確認されたが、DOPG SUVの取り込みによる発現は確認されなかった。HAECを10% FCS のみを含む培地(通常の培養時に使用する成長因子などを含まない)で5時間前培養し、0.2%FCSを含む培地に交換し、DiI−OxLDL(1.6nM)、または、DiI−DOPG SUV(25pM)を添加した。16時間後に、2%ホルムアミド/PBS(−)で固定し、間接蛍光抗体法による観察に供した。一次抗体:anti VCAM−1 (Abcam社、Rabbit polyclonal)、5μg/ml(10% FCS含PBS(−))で2時間室温で反応後、二次抗体:Alexa 633標識、anti Rabbit IgG(Molecular Probes)5μg/ml(10%FCS含PBS(−))と室温で1時間反応させた。抗体との反応溶液中にTriton X−100などを添加していないため、細胞表層に発現しているVCAM−1のみを検出している。
このように、DOPG SUVがOxLDL同様に、血管内皮機能不全を誘導するか確認した。機能不全誘導の指標の一つとして、接着分子であるICAM−1、VCAM−1の発現誘導が知られている。間接蛍光抗体法により、VCAM−1の発現を検出した。OxLDLの添加により、VCAM−1が細胞表層に提示されることが確認された(実施例11)。これに対し、DOPG SUVには、顕著な誘導が観察されず、DOPGはLOX−1を介して取り込まれるが、DOPG自体が機能不全を誘導することは無いことが確認された。このことは、血管内皮の機能不全を誘導する分子のスクリーニングや解析するためのツール、さらには、機能不全を抑制する分子のスクリーニングや導入のツールとしてDOPG SUVが有用であることを示している。
なお、この実施例は、SUVのみを用いているが、LUVでも同様の結果が期待できる。
(実施例11:治療剤の例)
実際の治療剤の例としては以下が考えられる。
LOX−1の拮抗阻害としてのDOPG 単層膜リポソームの投与を想定することができる。
また、動脈硬化に抑制的に働く一酸化窒素(NO)の産生に関わる血管内皮型NO産生酵素(endothelial NO synthase:eNOS)の活性を上昇させる作用のあるジヒドロピリジン系Ca拮抗剤などを封入したDOPG 単層膜リポソームを内皮上に発現しているLOX−1を介して効率的に血管内皮に導入することができる。
内皮細胞機能不全に伴い誘導される血管細胞接着分子−1(VCAM−1)、細胞間接着分子−1(ICAM−1),E−セレクチンなどの接着因子、単球走化性因子−1(MCP−1)などのサイトカインの発現を抑制するために、siRNAをDOPG 単層膜リポソームをキャリアとして内皮細胞内に導入する遺伝子サイレンシングによる治療を想定することができる。
(実施例12:診断剤の例)
MRIなどリポソーム製剤の診断での例として以下のような利用法が例示されうる。
MRI造影効果をもつGd3+ドープしたDOPG単層膜リポソーム、蛍光標識したDOPG 単層膜リポソームや分子イメージングに有効な99mTC標識DOPG単層膜リポソームを投与し、動脈硬化初期病変や動脈硬化巣の存在位置を確認することができる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
利用分野としては、食品産業、農林水産業、医療などの生物・生命関連分野が考えられる。また、LOX−1を介した送達媒体としての活用が考えられる。
配列番号1:PR−LOX−1またはLOX−1をコードする核酸配列
配列番号2:PR−LOX−1またはLOX−1のアミノ酸配列

Claims (13)

  1. 実質的に1,2−ジオレオイル−sn−グリセロー3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](DOPG)から構成される小単層膜リポソーム(SUV)および/または大単層膜リポソーム(LUV)を含む、血管内皮の機能不全を誘導せずに酸化LDL受容体に対して物質を特異的に送達するための媒体。
  2. 前記酸化LDL受容体は細胞に含まれるものである、請求項に記載の媒体。
  3. 前記細胞は、血管内皮細胞である、請求項に記載の媒体。
  4. 前記細胞は、微小血管内皮、静脈内皮または動脈内皮細胞である、請求項に記載の媒体。
  5. 前記送達は、前記酸化LDL受容体のうちLOX−1にのみ特異的である、請求項1〜のいずれか1項に記載の媒体。
  6. 前記SUVおよび/またはLUVの粒径は70nm〜150nmである、請求項1〜のいずれか1項に記載の媒体。
  7. 前記SUVおよび/またはLUVはLOX−1に対する解離定数Kが5.0×10−12以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の媒体。
  8. 実質的にDOPGから構成されるSUVまたはLUVを含む、血管内皮の機能不全を調節しうる因子を、該因子を必要とする被験体に送達するための組成物。
  9. 前記因子は、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、チアジリン誘導体、ならびに血管細胞接着分子−1(VCAM−1)、血管内皮機能不全に関連するsiRNAからなる群より選択される、請求項に記載の組成物。
  10. 変性LDLのLOX−1への結合を阻害するための、実質的にDOPGから構成されるSUVまたはLUVを含む組成物であって、該SUVまたはLUVはLOX−1に対する解離定数Kが5.0×10−12以下である、組成物。
  11. 血管内皮機能不全を抑制するための、実質的にDOPGから構成されるSUVまたはLUVを含む組成物。
  12. 前記組成物は、血管内皮機能不全に対する薬剤を含む、請求項11に記載の組成物。
  13. 前記組成物は、血管内皮機能不全に関連するsiRNA、遺伝子導入キャリアまたはシグナル伝達調節剤を含む、請求項11に記載の組成物。
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