JP6041151B2 - 粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法、計算装置、計算プログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体 - Google Patents
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Description
(1)実現可能なエネルギーで達成できる高密度なベントナイト系材料の透水係数は1E−10〜1E−13m/sであり、一般的な地盤材料の透水係数(1E−5〜1E−8m/s)に比べて難透水性に優れている。ここで、符号Eは10のべき乗を意味している。例えば「E−5」は「10のマイナス5乗」を意味し、「1E−5」は「0.00001」を意味している。
(2)ベントナイトはコンクリートに比べて柔軟性があるため、ひび割れが発生しにくく、かつ、存在していたひび割れは、周囲から地下水が浸入していた時点で、ベントナイトの有する吸水膨潤挙動によりシールされるので、卓越する水みちにならない。
(3)ベントナイトは天然に存在する粘土材料であることから、数万年以上の長期間を経ても材料劣化が生じにくい。
図11に示すように、放射性廃棄物を格納した廃棄体2は、その周囲を取り囲んでいる粘土材料1よりも大きな密度を有しているので、長期間の間に次第に沈下して位置が変化し、やがてはバリア材(粘土材料)の厚さが小さく変化するので、放射性物質の移流拡散を抑制する能力が減じることになる。したがって、将来の安全性を評価する上で廃棄体2の沈下を正しく予測することが求められていた。
(1)粘土材料を純粘性流体としてモデル化
本発明では、以下のように、ベントナイト系粘土材料を純粘性流体とみなしてモデル化する。ここで、弾性、あるいは塑性的な性質を有していない粘性流体を純粘性流体という。純粘性流体の構成方程式は次式で表現される。
(2−1)支配方程式
計算に用いる支配方程式としては、非圧縮性流体を仮定し、以下に示すナビエ・ストークスの運動方程式と連続式を扱う。
上記の純粘性流体の構成方程式を再記すると、
上述の問題を有限要素法により解析するため、粘性流体の流速と圧力を未知量とし、流速に対しては要素の頂点の節点による一次補間、圧力については要素内一定とした、いわゆる混合補間を採用するものとする。
粘性流体(以下、粘性体ということがある。)内に埋設される物体の沈降速度は、図1に示すように物体に作用する荷重(自重−浮力)と流体抗力との釣り合い条件から、次式を用いて評価する。
前述の方法である時点における物体の沈下速度を精度良く推定計算することができるので、次は下記の方法で所定時間経過後の沈下量の累計値を計算する。
(2)最初の時間区間における物体の粘性体の中における位置を境界条件に反映して、物体の沈下速度を前述(図2のフローチャート)の方法で計算する。
(3)最初の時間区間における物体の沈下速度は上記(2)で計算された一定の沈下速度で沈下するものとみなして、沈下量を時間積分して計算する。
(4)最初の時間区間における物体の沈下量を反映して、物体と粘性体の境界の座標位置をシフトした場合の各要素の幾何学形状に節点情報を修正する(有限要素解析では「リメッシュ」と称す。)。この修正によって、例えば図5−1と図5−2の違いのように、粘性体の流動する領域幅が狭い条件に変わる部位と広い条件に変わる部位が計算モデルに反映される。
(5)物体および粘性体の修正した位置情報に基づいて、次の第2の時間区間における上記(2)(3)の計算を実施し、再び上記(4)の計算条件の修正を実施して、さらにその次の第3の時間区間の沈下予測計算を実施する。
(6)上記(5)の計算を繰り返して、所定の期間までの沈下量計算を実施したら、計算を終了する。
ここでは、前節(2−4)で示した本発明の抗力評価方法の妥当性をストークスの法則に基づき検証した結果を示す。
図5−1は、本発明による計算方法で沈下現象を予測計算する解析モデル(その1)の計算開始時における流動場の幾何学形状を示したものである。図5−1に示すように、解析対象は高レベル放射性廃棄物を粘性材料1内に縦置き定置した場合の廃棄体オーバーパック2の沈下である。計算条件を表3に示す。なお、図5−2は計算ステップの途中における流動場の違いの一例として、廃棄体オーバパックが0.3m沈下したときの幾何学形状を示している。
図7は、本発明による計算方法で沈下現象を予測計算する別の解析モデル(その2)を示したものである。図7に示すように、このモデルは上記の特許文献1に示された沈下抑制対策を、高レベル放射性廃棄物を縦置きした場合に適用した場合を模擬している。左右下部に配置してある沈下抑制材3は、縦置き処分孔の底部にリング状に配置した岩石である。
2 廃棄体
3 沈下抑制材
Claims (7)
- 粘性材料で囲まれた物体の沈下を予測計算する方法であって、
粘性材料を粘性流体とみなして、この粘性流体で囲まれている物体の沈下力を、物体に作用する重力から、粘性流体から受ける浮力を差し引いた値として設定するステップ1と、
物体の沈下速度を任意の速度である仮の沈下速度に設定して、設定した仮の沈下速度で物体が沈下するときの物体周囲の粘性流体の粘性流れ速度を、粘性流体を単純な粘性流体とみなして計算するとともに、粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ2と、
計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも大きい場合には、仮の沈下速度を若干小さく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ3と、
計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも小さい場合には、仮の沈下速度を若干大きく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ4と、
前記ステップ3と前記ステップ4を繰り返して、計算された抗力の積分値が事前に設定した沈下力の誤差範囲に収束した時点で計算を停止し、そのときの仮の沈下速度を沈下力に相当する沈下速度値として求めるステップ5とを有することを特徴とする粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法。 - あらかじめ沈下量を予測したい時間を複数の一定時間間隔に分割して、請求項1に記載の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法によって沈下速度値を求めるステップ6と、
複数の一定時間間隔に分割したときの最初の時間区間の一定時間間隔において、求めた沈下速度値に等しい沈下速度で物体が移動するものとみなして、沈下変位量を時間積分することにより、この一定時間間隔における沈下量を計算するステップ7と、
前記ステップ7で計算した沈下量に応じて、粘性流体の移動に見合った位置に当初設定した有限要素解析における計算要素の節点が移動したとみなして、節点の座標を補正し、粘性流体の流動場の違いを計算条件に反映して次の時間区間の一定時間間隔における沈下量を前記ステップ7と同様にして計算するステップ8と、
前記ステップ8をあらかじめ沈下量を予測したい時間として設定した時間まで繰り返して最終的な沈下量を計算するステップ9とをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法。 - 粘性材料で囲まれた物体の沈下を予測計算する装置であって、
粘性材料を粘性流体とみなして、この粘性流体で囲まれている物体の沈下力を、物体に作用する重力から、粘性流体から受ける浮力を差し引いた値として設定する第1演算手段と、
物体の沈下速度を任意の速度である仮の沈下速度に設定して、設定した仮の沈下速度で物体が沈下するときの物体周囲の粘性流体の粘性流れ速度を、粘性流体を単純な粘性流体とみなして計算するとともに、粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算する第2演算手段と、
計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも大きい場合には、仮の沈下速度を若干小さく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算する第3演算手段と、
計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも小さい場合には、仮の沈下速度を若干大きく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算する第4演算手段と、
第3演算手段と第4演算手段による計算を繰り返して、計算された抗力の積分値が事前に設定した沈下力の誤差範囲に収束した時点で計算を停止し、そのときの仮の沈下速度を沈下力に相当する沈下速度値として求める第5演算手段とを有することを特徴とする粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算装置。 - あらかじめ沈下量を予測したい時間を複数の一定時間間隔に分割して、請求項3に記載の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算装置によって沈下速度値を求める第6演算手段と、
複数の一定時間間隔に分割したときの最初の時間区間の一定時間間隔において、求めた沈下速度値に等しい沈下速度で物体が移動するものとみなして、沈下変位量を時間積分することにより、この一定時間間隔における沈下量を計算する第7演算手段と、
第7演算手段で計算した沈下量に応じて、粘性流体の移動に見合った位置に当初設定した有限要素解析における計算要素の節点が移動したとみなして、節点の座標を補正し、粘性流体の流動場の違いを計算条件に反映して次の時間区間の一定時間間隔における沈下量を第7演算手段と同様にして計算する第8演算手段と、
第8演算手段をあらかじめ沈下量を予測したい時間として設定した時間まで繰り返して最終的な沈下量を計算する第9演算手段とをさらに有することを特徴とする請求項3に記載の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算装置。 - 粘性材料で囲まれた物体の沈下を予測計算する方法をコンピュータに実行させる計算プログラムであって、
粘性材料を粘性流体とみなして、この粘性流体で囲まれている物体の沈下力を、物体に作用する重力から、粘性流体から受ける浮力を差し引いた値として設定するステップ1と、
物体の沈下速度を任意の速度である仮の沈下速度に設定して、設定した仮の沈下速度で物体が沈下するときの物体周囲の粘性流体の粘性流れ速度を、粘性流体を単純な粘性流体とみなして計算するとともに、粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ2と、
計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも大きい場合には、仮の沈下速度を若干小さく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ3と、
計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも小さい場合には、仮の沈下速度を若干大きく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ4と、
前記ステップ3と前記ステップ4を繰り返して、計算された抗力の積分値が事前に設定した沈下力の誤差範囲に収束した時点で計算を停止し、そのときの仮の沈下速度を沈下力に相当する沈下速度値として求めるステップ5とをコンピュータに実行させることを特徴とする粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算プログラム。 - あらかじめ沈下量を予測したい時間を複数の一定時間間隔に分割して、請求項5に記載の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法によって沈下速度値を求めるステップ6と、
複数の一定時間間隔に分割したときの最初の時間区間の一定時間間隔において、求めた沈下速度値に等しい沈下速度で物体が移動するものとみなして、沈下変位量を時間積分することにより、この一定時間間隔における沈下量を計算するステップ7と、
前記ステップ7で計算した沈下量に応じて、粘性流体の移動に見合った位置に当初設定した有限要素解析における計算要素の節点が移動したとみなして、節点の座標を補正し、粘性流体の流動場の違いを計算条件に反映して次の時間区間の一定時間間隔における沈下量を前記ステップ7と同様にして計算するステップ8と、
前記ステップ8をあらかじめ沈下量を予測したい時間として設定した時間まで繰り返して最終的な沈下量を計算するステップ9とをコンピュータに実行させることを特徴とする請求項5に記載の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算プログラム。 - 請求項5または6に記載の計算プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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JP2013124669A JP6041151B2 (ja) | 2013-06-13 | 2013-06-13 | 粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法、計算装置、計算プログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体 |
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