JP6036174B2 - 心音情報処理装置、心音情報処理方法および心音情報処理プログラム - Google Patents
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(第1実施形態)
図1は、心音情報処理装置の第1実施形態を示す図である。なお、心音情報処理装置は、コンピュータにより実行可能なプログラムとして実施するようにしてもよい。
ここで、2RSBは第二肋間胸骨右縁の意である。
本実施形態において、処理対象となるのは、聴診位置2RSBで集音された心音信号だけである。
信号入力部110は、入力された信号を信号処理部120に出力する。
なお信号処理部120は、この他に心雑音検出に用いる信号などを生成してもよく、生成する信号は一つに限られない。
信号処理部120では、生成した信号をデータ処理部140に出力する。
ここで「所定の周波数帯域」とは、図2に示すような、正常心音の周波数帯域である0〜200Hz内の所定の周波数帯域や、駆出性雑音の周波数帯域である50〜600Hz内の所定の周波数帯域や、逆流性雑音の周波数帯域である150〜800Hz内の所定の周波数帯域である。周波数帯域パワー抽出部151は、各帯域のパワーを算出し、それぞれP0、P1、P2とする。
ここで周波数帯域パワー割合とは、信号Sにおける周波数帯域パワー(ここではP0、P1、P2)のそれぞれの割合を表した値で、例えば、100〜200Hzの周波数帯域のパワーを、0〜1000Hzの周波数帯域のパワーで割るなど、ある周波数帯域(第一の周波数帯域)において、第一の周波数帯域の一部を構成する周波数帯域(第二の周波数帯域)が占める割合を示す値とする。
なお、第二の周波数帯域は100〜200Hzに限らず、0〜100Hz、100〜500Hz等他の周波数帯域を用いても良いし、前記第一の周波数帯域は0〜1500Hz、0〜2000Hz等他の周波数帯域を用いても良い。
また、連続した周波数帯域ではなく、100〜150Hzと180〜200Hzとの和など、断続的な周波数帯域や特定の周波数成分の和などを用いても良い。
MR(僧帽弁閉鎖不全症)の心雑音の各周波数分布区間の割合としては、P0が87%、P1が11%、P2が2%となる。
これに対し、AS(大動脈弁狭窄症)の心雑音の各周波数分布区間の割合としては、P0が52%、P1が41%、P2が7%となる。
この他のデータにおいても、MR(僧帽弁閉鎖不全症)とAS(大動脈弁狭窄症)とでは、P0とP1との割合に顕著な違いが見られる為、P0とP1とを比較対象とすればよい。
図4は、MR(僧帽弁閉鎖不全症)と、AS(大動脈弁狭窄症)と、心雑音のその他の症例と、でP0の割合を表した図である。また、図5は、MR(僧帽弁閉鎖不全症)と、AS(大動脈弁狭窄症)と、心雑音のその他の症例と、でP1の割合を表した図である。
MR(僧帽弁閉鎖不全症)とAS(大動脈弁狭窄症)とその他の症例とでは、P0の割合やP1の割合に差があることがわかる。
図6は、症例判定方法のフローチャートである。
図6(a)に示すように症例判定部153は、まずP0の割合が75%以上の範囲にあるかどうかを判定し(ステップS701)、その範囲にあれば症例をMR(僧帽弁閉鎖不全症)とする。
また、P0の割合が75%以上の範囲になければ、P0の割合が60%以上75%未満の範囲にあるか判定し(ステップS702)、P0の割合が60%以上75%未満の範囲になければ症例をAS(大動脈弁狭窄症)と判定し、P0の割合が60%以上75%未満の範囲にあればその他の症例と判定する。あるいは図6(b)のフローチャートを用いてもよい。
すなわち、症例判定部153は、P1の割合が30%以上の範囲にあるか否かを判定し(ステップS711)、その範囲にあれば症例をAS(大動脈弁狭窄症)と判定する。
この様に、P0、P1どちらを用いても症例を判別することが可能である。
表示情報生成部160は、判定結果を示す表示情報を生成して表示部170に出力し、表示部170は判定結果を表示する。
判定結果をどのように示すかは設計的事項であるが、例えば、本発明と同じ出願人による特願2011−173291号に記載の方法を用いてもよい。
そして、このような第1実施形態の構成であっても、心雑音の症例であるMR(僧帽弁閉鎖不全症)、AS(大動脈弁狭窄症)および心雑音のその他の症例を正しく判定できる。すなわち、本第1実施形態によれば、複数の聴診位置で心音を取得しなくても良いので短時間で症例の判定ができ、さらに、装置を小型化できることになる。したがって、在宅医療などで利用しやすく、医療の拡充に多大に貢献できるという格別の効果を奏する。
第1実施形態では、周波数帯域のパワーの割合から、MR(僧帽弁閉鎖不全症)、AS(大動脈弁狭窄症)および心雑音のその他の症例、を判断する方法を説明した。
本第2実施形態では、周波数帯域のパワーの比較からAS(大動脈弁狭窄症)を判別する方法を示す。
図7に第2実施形態に係る心雑音症例分類部157の構成を示す。
なお、第1実施形態と共通する構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
第2実施形態においては、図7に示すように、心雑音症例分類部157は、周波数帯域パワー抽出部151と、周波数帯域パワー割合算出部155と、AS判定部156と、を備える。
ここで本実施形態における所定の周波数帯域について補足する。
0〜150Hz内の周波数帯域のパワーをP3とし、100〜250Hz内の周波数帯域のパワーをP4とする。
図8は、症例ごとのP3とP4とを示すであるが、図8で示されるように、MR(僧帽弁閉鎖不全症)のピークは0〜150Hzにあり、AS(大動脈弁狭窄症)のピークは100〜250Hzに存在する。
(逆にいうと、このことから0〜150Hz内の周波数帯域のパワーをP3とし、100〜250Hz内の周波数帯域のパワーをP4とした。)
図8で示したように、MR(僧帽弁閉鎖不全症)ではP4はP3に比べて減少している。これに対し、AS(大動脈弁狭窄症)のP4はP3に比べて増加する。これは、2RSB(第二肋間胸骨右縁)において、AS(大動脈弁狭窄症)にはP3の周波数帯域と比較してP4の周波数帯域に強いパワーがあることを示している。そこで、周波数帯域パワー割合算出部155は、式(2)からP4とP3との比R1を算出し、AS判定部156に出力する。
図9は、いくつかのMR(僧帽弁閉鎖不全症)、AS(大動脈弁狭窄症)および心雑音のその他の症例に関してR1の分布の例を示したものである。この図から、MR(僧帽弁閉鎖不全症)やその他の症例のR1の分布は、AS(大動脈弁狭窄症)のR1から分かれていることがわかる。このことから本実施形態では、AS判定部156は、R1の値が1以上であればAS(大動脈弁狭窄症)と判定する。
第3実施形態として、心雑音検出、心雑音症例分類に関して説明を加える。
上記第1実施および第2実施形態のなかで説明した心雑音検出の方法は、心雑音が強く、I音II音が弱い、いわゆる収縮期雑音と呼ばれる心雑音の検出に適していた。
本第3実施形態では更に、心雑音が弱く、I音II音が強い、いわゆる拡張期雑音と呼ばれる心雑音の検出処理を追加することによって、より精度の高い心雑音の検出が可能となっている。
(なお、心音情報処理装置を構成するその他の要素は、第1実施形態の図1や第2実施形態の図7と同様であるので、図示および説明を省略する。)
まず、S01にてI音II音検出を行う。
ここで拡張期雑音の特徴を説明する。
図12(A)に拡張期雑音の周波数特性を示す。このように拡張期雑音はI音とII音とが強くはっきりと聞き取れる。
そしてII音の後の点線で囲んだ部分に雑音としては弱く、聴感上聞き取りにくいが「サーッ」という雑音が存在している。
これが拡張期雑音である。これに対し、拡張期雑音のない心音データの周波数特性は、図12(B)に示すように、II音の後に雑音が存在しない。
第一の方法としては、200〜1100Hzの線形近似曲線(回帰直線)の傾きを算出することが挙げられる。
本実施形態では線形近似曲線の傾きは公知である最小二乗法を用いて算出する。
図14(A)が図13(A)の周波数分析から求めた200〜1000Hzの線形近似曲線であり、図14(B)が図13(B)の周波数分析から求めた200〜1000Hzの線形近似曲線である。拡張期雑音の線形近似曲線は200〜1000Hzに雑音の信号が存在し、信号が弱まる1000Hz以降との変化が大きいので図14(A)の様に傾きが大きくなる。反対に、拡張期雑音でない信号の場合200〜1000Hzに雑音の信号が存在しない為、信号が弱くなり、1000Hz以降との変化が少ないので、図14(B)のように傾きが小さくなる。
最小二乗法での傾きを求める場合、想定する関数が測定値に対してよい近似となるように、残差の二乗和を最小とするような係数を決定する為、200〜1000Hzに雑音信号が含まれる拡張期雑音は傾きが大きくなる。
上述したように拡張期雑音の信号は100〜1000Hzにかけて周波数帯域毎の傾き(差分)は一定を保ち緩やかに信号が弱くなっているが、拡張期雑音でない信号は100Hz付近で傾きが大きく、200Hz以降は傾きが小さくなっている。これは周波数帯域毎の傾きを求めてみると、拡張期雑音の信号ではバラツキが小さく、拡張期雑音でない信号はバラツキが大きいということが言える。
(3/5)×100=60%
という値が算出できる。
心雑音症例分類部の構成は、第1実施形態で述べた心雑音症例分類部(すなわち図1参照)と同様で、周波数帯域パワー抽出部151と、周波数帯域パワー割合算出部152と、症例判定部153と、を有している。しかし、心雑音検出部130にて拡張期雑音と判断されたか否かで、参照する周波数帯域を変更する。拡張期雑音が存在しない場合は、上記第1実施形態と同様の処理になるので説明は省略する。
以下では、拡張期雑音と判断された場合の症例分類方法を説明する。
ここで本第3実施形態の所定の周波数帯域について説明する。
MS(僧帽弁狭窄症)は0〜200Hzに強い信号が存在し200Hz以降は徐々に信号が弱まる。これに対しAR(大動脈弁閉鎖不全症)は0〜400Hzのパワーの差は少なくなっている。よって、0〜200Hzのパワーと200〜400Hzのパワーを比較することで症例を分類することが可能となる。
0〜200Hzの周波数帯域のパワーの和と200〜400Hzの周波数帯域のパワーの和とをそれぞれをP5、P6とする。
図16(A)は、第1実施形態および第2実施形態による症例分類である。
第1実施形態と第2実施形態とでは収縮期雑音を検出し、MR(僧帽弁閉鎖不全症)と、AS(大動脈弁狭窄症)と、その他に症例と、を分類することが可能であった。
Claims (9)
- 1つの位置から集音された心音から心雑音を検出する心雑音検出部と、
前記心雑音検出部にて検出された心雑音の区間を利用し、心音データから抽出した分析信号を生成するデータ処理部と、
前記分析信号の周波数成分に基づいて心雑音の症例を分類する心雑音症例分類部と、を備え、
前記心雑音症例分類部は、
前記分析信号の、所定の周波数成分である第一の周波数成分と、前記第一の周波数成分の一部を構成する所定の周波数成分である第二の周波数成分と、の比、または、
前記第二の周波数成分と、前記第一の周波数成分の一部を構成する所定の周波数成分であって前記第二の周波数成分と異なる第三の周波数成分と、の比、に基づいて心雑音の症例を分類するとともに、
前記分析信号における心雑音の数とII音及びI音の数とをカウントし、カウントした数に基づいて心雑音が周期性を有しているか否かを判定し、心雑音が周期性を有しているか否かに基づいて心雑音の症例を分類する
ことを特徴とする心音情報処理装置。 - 前記心雑音検出部は、前記1つの位置として、2RSB(第二肋間胸骨右縁)において集音された心音から心雑音を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の心音情報処理装置。 - 前記データ処理部は、前記心雑音の区間として収縮期雑音区間および拡張期雑音区間のうち、両方もしくはどちらか一方を抽出した分析信号を生成する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の心音情報処理装置。 - 前記データ処理部は、前記拡張期雑音区間として、II音からI音区間の信号の0〜1500Hzの周波数範囲に含まれる一または複数における周波数帯域中の周波数分布の特徴に基づいて抽出した分析信号を生成する、
ことを特徴とする請求項3に記載の心音情報処理装置。 - 前記心雑音症例分類部は、前記第二の周波数成分を、0〜200Hz、50〜600Hz、および、150〜800Hzの周波数成分のうちのいずれかの周波数成分を含むものとして心雑音の症例を分類する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の心音情報処理装置。 - 前記心雑音症例分類部は、
前記分析信号の、所定の周波数成分である第一の周波数成分の一部を構成する所定の周波数成分である第二の周波数成分と、前記第一の周波数成分の一部を構成する所定の周波数成分であって前記第二の周波数成分と異なる第三の周波数成分と、の比、に基づいて心雑音の症例を分類し、
前記第二の周波数成分は、0〜150Hzの周波数範囲のなかのいずれかの周波数成分を含み、
前記第三の周波数成分は100〜250Hzの周波数範囲のなかのいずれかの周波数成分を含む
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の心音情報処理装置。 - 前記心雑音症例分類部は、
前記分析信号の、所定の周波数成分である第一の周波数成分の一部を構成する所定の周波数成分である第二の周波数成分と、前記第一の周波数成分の一部を構成する所定の周波数成分であって前記第二の周波数成分と異なる第三の周波数成分と、の比、に基づいて心雑音の症例を分類し、
前記第二の周波数成分は、0〜200Hzの周波数範囲のなかのいずれかの周波数成分を含み、
前記第三の周波数成分は、200〜1000Hzの周波数範囲のなかのいずれかの周波数成分を含む
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の心音情報処理装置。 - 心音情報処理装置の作動方法であって、
1つの位置から集音した心音から心雑音を検出する心雑音検出部が作動し、
前記心雑音検出部にて検出された心雑音の区間を利用し、心音データから抽出した分析信号を生成するデータ処理部が作動し、
前記分析信号の周波数成分に基づいて心雑音の症例を分類する心雑音症例分類部が作動し、
前記心雑音症例分類部は、
前記分析信号の、所定の周波数成分である第一の周波数成分と、前記第一の周波数成分の一部を構成する所定の周波数成分である第二の周波数成分と、の比、または、
前記第二の周波数成分と、前記第一の周波数成分の一部を構成する所定の周波数成分であって前記第二の周波数成分と異なる第三の周波数成分と、の比、に基づいて心雑音の症例を分類するとともに、
前記分析信号における心雑音の数とII音及びI音の数とをカウントし、カウントした数に基づいて心雑音が周期性を有しているか否かを判定し、心雑音が周期性を有しているか否かに基づいて心雑音の症例を分類する
ことを特徴とする心音情報処理方法。 - 心音情報処理装置が備えるコンピュータに、
1つの位置から集音した心音から心雑音を検出する心雑音検出ステップ、
前記心雑音検出ステップにおいて検出された心雑音の区間を利用し、心音データから抽出した分析信号を生成するデータ処理ステップ、
前記データ処理ステップにおいて生成された前記分析信号の周波数成分に基づいて心雑音の症例を分類する心雑音症例分類ステップ、を実行させ、
前記心雑音症例分類ステップは、
前記分析信号の、所定の周波数成分である第一の周波数成分と、前記第一の周波数成分の一部を構成する所定の周波数成分である第二の周波数成分と、の比、または、
前記第二の周波数成分と、前記第一の周波数成分の一部を構成する所定の周波数成分であって前記第二の周波数成分と異なる第三の周波数成分と、の比、に基づいて心雑音の症例を分類するとともに、
前記分析信号における心雑音の数とII音及びI音の数とをカウントし、カウントした数に基づいて心雑音が周期性を有しているか否かを判定し、心雑音が周期性を有しているか否かに基づいて心雑音の症例を分類する
ことを特徴とする心音情報処理プログラム。
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