JP6034053B2 - 植物の種子総量の増産方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子を制御することで植物の種子総量を増産する方法に関する。
従来において、遺伝子工学的に植物のバイオマス、種子量等を増産させる方法が開発されている。バイオマス、種子量等を増産させる技術は、産業上の重要性が高い。例えば、油糧作物において種子量を増産させることができれば、種子に含まれる油脂の増産につながる。
遺伝子工学的に植物のバイオマス、種子量等を増産させる方法として以下の方法が知られている。
例えば、特許文献1は、プロテインホスファターゼ2Cをコードする遺伝子を導入した植物に対してグルタチオンを供給することで、植物のバイオマス量及び/又は種子量を増産させる方法を開示する。また、特許文献2は、植物においてプロテインホスファターゼ2Cをコードする遺伝子及びグルタチオン結合性プラスチド型フルクトース1,6-ビスリン酸アルドラーゼをコードする遺伝子を過剰発現させることで、バイオマス量及び/又は種子量を増産させる方法を開示する。さらに、特許文献3は、植物においてプロテインホスファターゼ2Cをコードする遺伝子を過剰発現させることで、野生型と比較してバイオマス量を有意に向上させる方法を開示する。
特許文献4及び5は、植物において転写因子と転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合したキメラタンパク質を発現させることで、種子に含まれる油脂の生産性を向上させる方法を開示する。また、特許文献6は、転写促進活性が抑制された転写因子を発現させることで、植物体個体当たりの植物体重量や特定の組織重量を増加させるか、植物体個体当たりの特定の物質生産性を向上させるか、又は植物体の特定の組織当たりの特定の物質含量を増加させる方法を開示する。
特許文献7は、植物中の成長調節因子(GRF)ポリペプチドをコードする核酸配列及び滑膜肉腫転座(SYT)ポリペプチドをコードする核酸配列の発現を増加させることを含む、植物収穫高関連形質を増強する方法を開示する。また、特許文献8は、植物における滑膜肉腫転座(SYT)ポリペプチド又はそのホモログをコードする核酸の発現を調節することにより、植物の収量を増加させる方法を開示する。
特許文献9及び10は、イネ等の植物においてサイトカイニン酸化酵素(CKX)の機能の欠失により植物の着粒数を増加させる方法を開示する。
特許文献11は、植物にLOV domain、F-box及びKelch repeat等の機能領域をコードする塩基配列を導入することで、植物体重量、葉数又は種子収量を増加させる方法を開示する。
特許文献12は、穀物の種子収量に関する遺伝子tgw6を用いた穀物収量の増加方法を開示する。
特許文献13は、植物にラン藻由来のフルクトース-1,6-ビスホスファターゼ/セドヘプツロース-1,7-ビスホスファターゼをコードする塩基配列を含むDNAフラグメントを導入することにより、光合成産物の生産性を向上させる方法を開示する。
特許文献14は、初期胚発生中の種子において植物の生長と発生関連遺伝子を過剰発現させることを含む、植物において種子サイズを増大させる方法を開示する。
特許文献15は、植物にγ-グルタミルシステインシンセターゼ遺伝子を導入することで、花の数及び種子の数を増加し、種子収量を向上させる方法を開示する。
特許文献16は、D型サイクリン依存性キナーゼ(CDKD)をコードする核酸を植物に導入することで、植物収量を増加させる方法を開示する。
特許文献17は、種子優先プロモーターに連結されたサイクリンAタンパク質をコードする核酸を植物に導入することで、植物の収穫高を増加させる方法を開示する。
非特許文献1及び2は、バイオマス増加のための遺伝子改変作物に関連する遺伝子群について記載する。
非特許文献3は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)及びタバコ(Nicotiana tabacum)において、ホスホリボシルピロリン酸シンテターゼ活性を増加することによってバイオマス蓄積が高まることを開示する。
非特許文献4は、液胞モノサッカリド輸送体TMT1の活性の増加によりシロイヌナズナにおいて細胞糖分配、糖シグナリング及び種子収量が改変されることを開示する。
非特許文献5は、サリチル酸欠損シロイヌナズナ系統が種子収量を増加させることを開示する。
非特許文献6は、サイトカイニンがシロイヌナズナにおいて生殖分裂組織、花器官サイズ、種子形成及び種子収量を調節することを開示する。
特開2011-055780号公報 特開2010-207199号公報 国際公開第2009/113684号 特開2010-279298号公報 特開2010-279297号公報 国際公開第2009/072608号 特表2010-538670号公報 特表2008-528014号公報 特許第4462566号公報 特許第4448031号公報 特許第4452876号公報 特開2010-115176号公報 特許第3735709号公報 特表2009-519719号公報 国際公開第2008/087932号 特表2007-525229号公報 特表2007-515167号公報
Rojas C.A.ら, GM Crops, 2010年, 1(3), pp. 137-142 Gonzalez N.ら, Current Opinion in Plant Biology, 2009年, 12, pp. 157-164 Koslowsky S.ら, Plant Biotechnology Journal, 2008年, 6, pp. 281-294 Wingenter K.ら, Plant Physiology, 2010年, Vol. 154, pp. 665-677 Abreu M.E.ら, Journal of Experimental Botany, 2009年, Vol. 60, No. 4, pp. 1261-1271 Bartrina I.ら, Plant Cell, 2011年, Vol. 23, pp. 69-80
上記のように、遺伝子工学的に植物のバイオマス、種子量等を増産させる方法が知られている。
一方、植物個体全体の油脂収量を考慮した場合には、植物個体当たりの種子数を増加させることが重要である。しかしながら、上記の植物のバイオマス、種子量等を増産させる方法では、植物個体当たりの種子数を増加させるのに十分ではなかった。
そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、植物個体当たりの種子収量(総重量)を増加させる方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制することで、植物個体当たりの種子収量を増加できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、植物において種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する工程を含む、植物の種子総量の増加方法である。
種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子としては、12Sグロブリン又はクルシフェリンをコードする遺伝子を挙げることができる。また、12Sグロブリン又はクルシフェリンをコードする遺伝子としては、下記の(a)〜(g)のいずれかの遺伝子を挙げることができる:
(a) 配列番号1、3、5、7、9、11及び13記載の塩基配列から成る群より選択される塩基配列から成る遺伝子;
(b) 配列番号1、3、5、7、9、11及び13記載の塩基配列から成る群より選択される塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列から成り、且つ種子貯蔵タンパク質として機能するタンパク質をコードする遺伝子;
(c) 配列番号1、3、5、7、9、11及び13記載の塩基配列から成る群より選択される塩基配列に対して80%以上の配列同一性を有する塩基配列から成り、且つ種子貯蔵タンパク質として機能するタンパク質をコードする遺伝子;
(d) 配列番号1、3、5、7、9、11及び13記載の塩基配列から成る群より選択される塩基配列と相補的な塩基配列から成るDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ種子貯蔵タンパク質として機能するタンパク質をコードする遺伝子;
(e) 配列番号2、4、6、8、10、12及び14記載のアミノ酸配列から成る群より選択されるアミノ酸配列から成るタンパク質をコードする遺伝子;
(f) 配列番号2、4、6、8、10、12及び14記載のアミノ酸配列から成る群より選択されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つ種子貯蔵タンパク質として機能するタンパク質をコードする遺伝子;
(g) 配列番号2、4、6、8、10、12及び14記載のアミノ酸配列から成る群より選択されるアミノ酸配列に対して80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列から成り、且つ種子貯蔵タンパク質として機能するタンパク質をコードする遺伝子。
さらに、本発明に係る植物の種子総量の増加方法において対象とする植物としては、アブラナ科に属する植物を挙げることができる。
本発明によれば、非常に簡便且つ低コストな処理により、植物個体の種子収量を増加させ、また植物個体当たりの油脂の増産が可能となる。
実施例において使用したシロイヌナズナのT-DNA挿入変異株における12Sグロブリンをコードする遺伝子の構造の模式図((A)のパネル)、RNAiによる12Sグロブリンをコードする遺伝子の発現抑制株の作製に使用したRNAiコンストラクトの模式図((B)のパネル)、並びに12Sグロブリン変異株における12SグロブリンmRNAのRT-PCR結果((C)のパネル)を示す。 T-DNA挿入変異株(SALK_002668)のCRA1の塩基配列(ORF)におけるT-DNAの挿入位置を示す。 T-DNA挿入変異株(SALK_045987C)のCRBの塩基配列(ORF)におけるT-DNAの挿入位置を示す。 T-DNA挿入変異株(GK-283D09)のCRCの塩基配列(ORF)におけるT-DNAの挿入位置を示す。 12Sグロブリン変異株における12Sグロブリンタンパク質減少を示す電気泳動ゲル画像である。 12Sグロブリン変異株における主茎数((A)のパネル)並びに分枝数の増加((B)のパネル)を示すグラフである。 12Sグロブリン変異株における花及び実の増加を示すグラフである。 12Sグロブリン変異株における莢当たりの種子数((A)のパネル)及び種子1粒当たりの種子重量((B)のパネル)を示すグラフである。 12Sグロブリン変異株における種子収量の増加を示すグラフである。 12Sグロブリン変異株における種子の油脂(トリアシルグリセロール(TG))総生産量を示すグラフである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る植物の種子総量の増加方法(以下、「本方法」と称する)は、植物において種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子(以下、「種子貯蔵タンパク質コード遺伝子」と称する)の発現を抑制し、植物を生育させることで、植物の種子総量を増加させる方法である。本方法によれば、植物の種子中の種子貯蔵タンパク質量を減少させることで、分枝を増加し、当該分枝の増加に伴い花及び実の数が多くなり、植物個体当たりの種子総量が増加する。
Kohno-Murase J.ら(Thcor. Appl. Genet., 1995年, 91: pp. 627-631)は、ナタネにおいて種子貯蔵タンパク質であるクルシフェリンに対してアンチセンス遺伝子を形質転換することにより種子貯蔵タンパク質量を低下させたことを開示する。また、Kawakatsu T.ら(Plant Physiology, 2010年, Vol. 154, pp. 1842-1854)は、イネにおいて種子貯蔵タンパク質(グルテリン、グロブリン及びプロラミン)の蓄積の低下が種子の栄養品質及び貯蔵オルガネラ形成を変化させることを開示する。さらに、Schmidt M.A.ら(Plant Physiology, 2011年, Vol. 156, pp. 330-345)は、ダイズにおける種子貯蔵タンパク質(グリシニン及びコングリシニン)の低下により種子タンパク質含量を保存するタンパク質組成の調整が生じることを開示する。しかしながら、これら文献には、種子貯蔵タンパク質の蓄積の低下による植物個体当たりの種子総量の増加という表現型が得られたことを記載していない。このように、本願において、植物の種子中の種子貯蔵タンパク質量を減少させることで、分枝を増加し、当該分枝の増加に伴い花及び実の数が多くなり、植物個体当たりの種子総量が増加することを初めて見出したのである。
ここで、種子貯蔵タンパク質とは、種子特異的に貯蔵されるタンパク質を意味する。種子貯蔵タンパク質コード遺伝子としては、例えば12Sグロブリン又はクルシフェリンをコードする遺伝子(以下、「12Sグロブリン又はクルシフェリンコード遺伝子」と称する)等が挙げられる。12Sグロブリンとクルシフェリンとは、同義的に用いられる場合がある。
12Sグロブリン又はクルシフェリンコード遺伝子としては、例えばシロイヌナズナの12Sグロブリンコード遺伝子CRA1(At5g44120、塩基配列(cDNA):配列番号1、アミノ酸配列:配列番号2)、CRB(At1g03880、塩基配列(cDNA):配列番号3、アミノ酸配列:配列番号4)、CRC(At4g28520、塩基配列(cDNA):配列番号5、アミノ酸配列:配列番号6)及びRmlC-like cupins superfamily protein(At1g03890、塩基配列(cDNA ORF):配列番号7、アミノ酸配列:配列番号8);ナタネ(セイヨウアブラナ(Brassica napus))のクルシフェリン(塩基配列(ORF):配列番号9、アミノ酸配列:配列番号10)、クルシフェリンBnC1(塩基配列(ORF):配列番号11、アミノ酸配列:配列番号12)及びクルシフェリンBnCRU4(塩基配列(ORF):配列番号13、アミノ酸配列:配列番号14);その他の植物種に由来する12Sグロブリン又はクルシフェリンコード遺伝子等が挙げられる。従って、これら列挙した塩基配列から成る12Sグロブリン又はクルシフェリンコード遺伝子又はこれら列挙したアミノ酸配列から成る12Sグロブリン又はクルシフェリンをコードする遺伝子を本方法における発現抑制対象の遺伝子とすることができる。
また、上記に列挙した12Sグロブリン又はクルシフェリンコード遺伝子の機能的に等価な遺伝子又は相同遺伝子を本方法における発現抑制対象の遺伝子とすることができる。例えば、当該機能的に等価な遺伝子又は相同遺伝子は、上記に列挙した12Sグロブリン又はクルシフェリンコード遺伝子の塩基配列又はコードされるアミノ酸配列をBLAST検索に供することで得ることができる。あるいは、上記に列挙した12Sグロブリン又はクルシフェリンコード遺伝子の機能的に等価な遺伝子又は相同遺伝子としては、例えば以下の(i)〜(v)の遺伝子が挙げられる。
(i) 上記に列挙した12Sグロブリン又はクルシフェリンコード遺伝子の塩基配列において、1又は数個(例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個)の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列から成り、且つ種子貯蔵タンパク質として機能するタンパク質をコードする遺伝子。
(ii)上記に列挙した12Sグロブリン又はクルシフェリンコード遺伝子の塩基配列に対して、例えば80%以上、85%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の配列同一性を有し、且つ種子貯蔵タンパク質として機能するタンパク質をコードする遺伝子。塩基配列の同一性(%)は、例えば当業者に周知のプログラム(例えば、BLAST)を用いたアラインメントにより決定することができる。
(iii)上記に列挙した12Sグロブリン又はクルシフェリンコード遺伝子の塩基配列と相補的な塩基配列から成るDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ種子貯蔵タンパク質として機能するタンパク質をコードする遺伝子。ここで、ストリンジェントな条件は、例えば、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。換言すれば、ストリンジェントな条件とは、90%以上、特に好ましくは95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の配列同一性を有する塩基配列ハイブリダイズする条件ということができる。ハイブリダイゼーションは、J. Sambrook et al. Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法等、従来公知の方法で行うことができる。
(iv)上記に列挙した12Sグロブリン又はクルシフェリンのアミノ酸配列において、1又は数個(例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個)のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つ種子貯蔵タンパク質として機能するタンパク質をコードする遺伝子。
(v) 上記に列挙した12Sグロブリン又はクルシフェリンのアミノ酸配列に対して、例えば80%以上、85%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の配列同一性を有し、且つ種子貯蔵タンパク質として機能するタンパク質をコードする遺伝子。アミノ酸配列の同一性(%)は、例えば当業者に周知のプログラム(例えば、BLAST)を用いたアラインメントにより決定することができる。
12Sグロブリン又はクルシフェリンコード遺伝子の機能的に等価な遺伝子又は相同遺伝子によりコードされるタンパク質が種子貯蔵タンパク質として機能するか否かは、例えば当該機能的に等価な遺伝子又は相同遺伝子を由来する植物において破壊又は発現抑制し、SDS-PAGE解析等により、当該機能的に等価な遺伝子又は相同遺伝子によりコードされるタンパク質が種子において有意に欠失されるか否かを評価することにより決定することができる。例えば、機能的に等価な遺伝子又は相同遺伝子を破壊又は発現抑制した植物が、陰性対照(破壊又は発現抑制されていない植物)と比較して、種子において当該機能的に等価な遺伝子又は相同遺伝子によりコードされるタンパク質量が有意に(50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上)低下した場合に、当該機能的に等価な遺伝子又は相同遺伝子を12Sグロブリン又はクルシフェリンコード遺伝子として判断することができる。
本発明における対象植物は、上述した種子貯蔵タンパク質コード遺伝子を有するものであればいずれの植物であってよく、例えば、アブラナ科(シロイヌナズナ、ナタネ、シロガラシ、ハツカダイコン等)、ヤナギ科(ポプラ等)、モクレン科(モクレン等)、トウダイグサ科(トウゴマ(ヒマ)等)、アカザ科(キノア等)、ゴマ科(ゴマ等)、クルミ科(ペカン等)、カバノキ科(ハシバミ等)、サガリバナ科(ブラジルナッツ等)、ウルシ科(ピスタチオ等)、ブナ科(オウシュウナラ等)、イネ科(イネ、トウモロコシ等)、マメ科(ダイズ等)等に属する植物が挙げられる。特にアブラナ科(シロイヌナズナ、ナタネ、シロガラシ、ハツカダイコン等)に属する植物が好ましい。
本方法においては、植物において上述した種子貯蔵タンパク質コード遺伝子の発現を抑制する。本方法では、植物1個体において、複数種(例えば2、3種以上)の種子貯蔵タンパク質コード遺伝子の発現を抑制してもよい。ここで、種子貯蔵タンパク質コード遺伝子発現抑制とは、種子貯蔵タンパク質コード遺伝子発現をmRNAレベル又はタンパク質レベルで抑制することを意味する。mRNAレベルでの種子貯蔵タンパク質コード遺伝子発現抑制は、例えば種子貯蔵タンパク質コード遺伝子に特異的なプライマーやプローブを用いたRT-PCR、定量的PCR、ノーザンハイブリダイゼーション等によって種子貯蔵タンパク質コード遺伝子から転写されたmRNAの量を測定することにより評価することができる。タンパク質レベルでの種子貯蔵タンパク質発現抑制は、例えばSDS-PAGE及びCBB染色後の電気泳動ゲル画像におけるバンドの濃さに基づく種子貯蔵タンパク質量の測定、あるいは種子貯蔵タンパク質に特異的な抗体を用いたELISA、フローサイトメトリー、ウエスタンブロッテイング等の免疫学的方法による種子貯蔵タンパク質量の測定により評価することができる。
本方法では、mRNAレベル若しくはタンパク質レベルにおいて、種子貯蔵タンパク質コード遺伝子発現抑制に供した植物が、陰性対照の植物と比較して、有意(例えば、1/5以下、好ましくは1/10以下)に対象種子貯蔵タンパク質コード遺伝子の発現を抑制するか、あるいは対象種子貯蔵タンパク質コード遺伝子の発現を欠失させる。
種子貯蔵タンパク質コード遺伝子発現を抑制する方法としては、例えば種子貯蔵タンパク質コード遺伝子を破壊する方法、種子貯蔵タンパク質コード遺伝子の発現を転写レベル又は翻訳レベルで低下させる方法が挙げられる。
種子貯蔵タンパク質コード遺伝子を破壊する方法としては、例えばT-DNAの挿入、トランスポゾンの挿入、速中性子線照射、イオンビーム照射、EMS等の化学変異剤処理等により植物の発現抑制対象の種子貯蔵タンパク質コード遺伝子に変異又は欠失を導入し、ノックアウト変異株を作製する方法が挙げられる。
また、種子貯蔵タンパク質コード遺伝子の発現を転写レベル又は翻訳レベルで低下させる方法としては、例えば、アンチセンスRNAを用いる方法、RNAi(RNA interference)、速中性子線照射、イオンビーム照射、EMSなどの化学変異剤処理等が挙げられる。アンチセンスRNAの発現を、例えば種子特異的プロモーター(種子貯蔵タンパク質コード遺伝子に由来する種子特異的プロモーター(ナタネのクルシフェリンやナピンをコードする遺伝子のプロモーター等)、FAE1プロモーターProFAE1(脂肪酸伸長酵素Fatty acid elongation 1のプロモーター:配列番号15)等)を用いて種子特異的に行い、種子特異的に遺伝子発現を抑制してもよい。
次いで、種子貯蔵タンパク質コード遺伝子発現抑制に供した植物を生育させることで、種子総量が増加した植物を得ることができる。種子総量の増加の評価方法として、例えば種子貯蔵タンパク質コード遺伝子発現抑制に供していない植物と比較して、種子貯蔵タンパク質コード遺伝子発現抑制に供した植物が、植物個体当たりの種子総数又は種子総重量が有意に多い場合には、種子総量増加能を植物に付与できたと判断することができる。
以上に説明したように、本方法によれば、種子総量増加能を植物に付与することができる。例えば、種子に油脂を貯蔵するナタネ等の油糧作物に本方法を適用することで、種子総量を増加させ、種子に貯蔵される油脂を増産することができる。また、種子を食用とする穀物に、本方法を適用することで、種子総量を増加させ、穀物を増産することができる。さらに、種子が食材又は工業製品として利用される植物種に本方法を適用し、食材又は工業製品の材料を増産することができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕シロイヌナズナの12Sグロブリン遺伝子破壊株及び12Sグロブリン遺伝子発現抑制株における種子収量及び油脂生産量の増加の評価
1.材料及び方法
1−1.解析に用いたシロイヌナズナ由来の12Sグロブリン変異株の構造(T-DNA挿入位置)と、RT-PCRによるヌル変異株の確認
T-DNA挿入位置及びRNAiコンストラクトを図1にまとめた。図1において、T-DNA挿入変異株の12Sグロブリンコード遺伝子の模式図((A)のパネル)における各ボックスはエキソンを示し、各ボックス間の線はイントロンを示す。
シロイヌナズナの12Sグロブリンコード遺伝子のT-DNA挿入ライン(T-DNA挿入変異株)として、CRA1(SALK_002668)とCRB(SALK_045987C)をSALK研究所から、シロイヌナズナのCRC変異株(GK-283D09)の種子をGABI-Katから取り寄せた。CRA1(塩基配列:配列番号1)、CRB(塩基配列:配列番号3)及びCRC(塩基配列:配列番号5)におけるT-DNAの挿入位置をそれぞれ図2〜4に示す。図2〜4において、下線箇所の斜体の塩基の3'側にT-DNAが挿入されている。
また、CRA1のRNAiライン(RNAiによる遺伝子発現抑制株)は、pPZP221プラスミドにFAE1プロモーター(ProFAE1:配列番号15)及びCRA1のセンス及びアンチセンス配列を挿入したコンストラクトを、シロイヌナズナに導入し、異なる2つの形質転換体を得た。形質転換は、アグロバクテリウムを介した花序浸し法による形質転換を定法に従って行った。
CRA1のRNAiライン作製用のコンストラクトの作製に使用したプライマーリストを以下の表1に示す。
Figure 0006034053
表1に示す配列の確認(ProFAE1FW2)は、プラスミド作製の際の配列確認、及びRNAi植物を薬剤選抜後、PCRジェノタイピング(12SloopRVとの組み合わせ)する際に使用した。また、12SloopRVとProFAE1FW2の組み合わせでRNAiコンストラクトの導入された植物体を確認した。
一方、CRCのRNAiラインは、AGRIKOLA(N222668)から入手した。
なお、以下では、12Sグロブリンコード遺伝子のT-DNA挿入ライン(T-DNA挿入変異株)とRNAiライン(RNAiによる遺伝子発現抑制株)とを合わせて、「12Sグロブリン変異株」と称する場合がある。
各系統のシロイヌナズナを、16時間明期(60〜80μmol m-2 s-1)及び8時間暗期の長日条件で、23℃及び湿度60%の栽培環境下で培養土(ゴールデンピートバン、サカタのタネ社製)を用いて生育させた。
生育後、若い植物個体の葉からゲノムDNAを抽出し、PCRジェノタイピングにより各個体の遺伝子型の調査を行った。RNAiラインについては、薬剤耐性の分離比(CRA1iについてはゲンタマイシン、CRCiについてはカナマイシン)でホモラインと予想されたものについてPCRジェノタイピングによる確認を行った。
野生株及び12Sグロブリン変異株の開花から12〜14日後の莢を開き、登熟過程の未成熟種子を回収した。次いで、RNeasy植物用のキット(プロメガ社製)の種子用のプロトコールに従って、当該未成熟種子からRNAを調製し、DNase処理でゲノムDNAを排除した後、cDNA合成を行った。
PCRにはExTaq(Takara社製)を使用した。先ず、ユビキチン(UBI10)のcDNA量(RT-PCR産物量)を比較し、各サンプルのcDNA量がほぼ揃っていることを確認してから、目的遺伝子のRT-PCR解析を行った。遺伝子毎にPCR産物の増幅が飽和しないように、PCRのサイクル数も予備実験で見積もっており、定量性は担保されていた。
1−2.シロイヌナズナの各系統からのゲノムDNAの抽出
発芽後2週間ほどの植物から本葉1枚を1.5 mlチューブにとり、200μlのDNA抽出バッファー(0.2M Tris-HCl (pH9.0)、0.4M塩化リチウム、25 mM EDTA及び1%SDS)を加え、ペッスルでよくすりつぶした。これに25:24:1(v/v/v)フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールを200μl加え、30秒間ボルテックスミキサーで撹拌した。
撹拌後の混合物を15,000rpm、5分間及び室温で遠心分離に供し、上清150μlを1.5mlチューブに移した。当該上清に等量のクロロホルムを加えボルテックスミキサーで撹拌し、15,000rpm、5分間及び室温で遠心分離に供した後、再び上清を新しい1.5mlエッペンチューブに移した。当該上清に等量のイソプロパノールを加え、チューブを転倒撹拌した後、15,000rpm、5分間及び室温で遠心分離に供し、上清を取り除いた。150μlの70%エタノールで沈殿をリンスした後、15,000rpm、5分間及び室温で遠心分離に供し、再び上清を取り除いた。沈殿を、デシケーター内で真空ポンプを用いて10分間乾燥した後、50μlのTEバッファー(10mM Tris-HCl(pH8.0)及び1mM EDTA)を加え、再度懸濁した。
1−3.PCRによる遺伝子型の決定
上記第1−2節で抽出したシロイヌナズナゲノムDNA 1.0μlを鋳型として、10x ExTaq buffer(Takara、Tokyo)1.0μl、2.5mM dNTP Mix 1.0μl、10μMプライマー(各0.5μl)及び0.1μlのTaq polymeraseを加え、最終容量が10μlになるように滅菌水を加え、反応液を調製した。
PCR反応は、サーマルサイクラー(PTC-100(Bio-Rad), MJ Research, USA;又はApplied Biosystems社製の2720)を用いて、94℃で1分間加熱してから、94℃で30秒間、56℃で30秒間及び72℃で1分間の反応サイクルを30回行い、続いて72℃で5分間の伸長反応を行った。遺伝子型決定に使用したプライマーリストを以下の表2に示す。
Figure 0006034053
表2に列記したプライマーは、それぞれ野生型のゲノム遺伝子を増幅するためのプライマーセットである。T-DNA挿入株ではこれらのプライマーセットでPCR産物が増幅されないことにより確認した。
また、T-DNAの挿入を確認するためのPCR反応を、T-DNAの配列(ベクター部分)に設計したLBa1プライマー(tggttcacgt agtgggccat cg:配列番号29)と、cra1についてはKP5.CRA-SALK5プライマー、crbについてはCRB Fw genotypingプライマー、crcについてはKP1.CRC.5UTRプライマーとの組み合わせを用いて行い、T-DNAの挿入を確認した後、それぞれ表2に示すプライマーセットで本来の遺伝子が増幅できなくなっていることを確認した。
1−4.RT-PCRによる転写産物量の解析
植物体の開花した花序に糸で目印を着け、12〜14日後に角果を回収した。ピンセットを用いて角果から種子のみを取り出し、1.5mlサンプルチューブに移した後、液体窒素により瞬間凍結させたものをサンプルとした。乳鉢に液体窒素を入れ、液面にサンプルが入ったエッペンチューブを漬けながら、モーター付きのペッスルで種子を破砕した。Total RNAの抽出は、QIAGENEのRNAeasyR Plant Mini Kitを使用し、付属のプロトコールに沿って行った。次いで、1%アガロースゲル電気泳動によりRNAの精度と収量を検定した。
次に、RocheのTranscriptor First Strand cDNA Synthesis Kitを使用し、付属のプロトコールに沿って、First strand cDNAを合成した。
さらに、合成したFirst strand cDNAを使用して、PCR反応を行った。PCR反応液は、滅菌水13.3μl、10x ExTaq buffer(Takara、Tokyo)2μl、dNTP mix(2.5mM)1.6μl、10μMプライマー溶液(各1μl)並びにEx-taq polymerase(5U/μl、Takara、Tokyo)0.1μlを混合した液に、作製したcDNAを加え、調製した。PCRの反応サイクルの条件は、上記1−3節と同様であった。
PCR反応後、1%アガロースゲル電気泳動でPCR産物を分離し、EtBr染色を行った。下記の表3にプライマーリスト及びPCRのサイクル数を示す。
Figure 0006034053
1−5.12Sグロブリン変異株の種子貯蔵タンパク質の解析
SDSバッファーで種子総タンパク質を抽出し、SDS-PAGEにより分離後、CBB染色によって野生株と12Sグロブリン変異株で種子貯蔵タンパク質の比較を行った。ゲルのアクリルアミド濃度は12.5%とし、ゲルの各レーン当たり種子3粒相当のタンパク質を泳動した。
1−6.種子総タンパク質の抽出
乾燥種子を50粒数え、1.5ml丸底エッペンチューブに入れた。乳鉢に液体窒素を入れ、その中でエッペンに入った種子を凍結させ、ペッスルでよくすりつぶした。サンプルに100μlタンパク質抽出用バッファー(100mM Tris-HCl(pH8.0)、0.5%SDS、10% glycerol及び2% 2-mercaptoethanol)を加え再びよくすりつぶした。次に、沸騰した湯でこのサンプルを3分間加熱し、氷冷後、14,500rpmで3分間遠心分離に供し、上清を新しい1.5mlエッペンチューブに回収し、回収した上清を種子タンパク質サンプルとした。
タンパク質濃度の測定は、Bio-Rad protein assay reagent(Bio-Rad、Hercules)を用いて行った。スタンダードは1.35mg/ml γ-グロブリンを用いた。
1−7.植物(シロイヌナズナの各系統)1個体当たりの分枝数及び花・実の総数の測定並びに種子数の計測
植物を、16時間明期の長日条件で23℃及び湿度60%の栽培環境下で生育させ、これらの種子を株毎に採種した。
栽培開始後5週目及び6週目に、植物個体ごとに主茎(一次茎)、並びに二次及び三次茎を含む茎(分枝)総数を数えた。また開花した花と実の総数を数えた。さらに、莢一つ当たりに含まれる種子数の計測も行った。
また、6週以降、植物体の地上部に袋をかけ、種子がこぼれないようにした状態で栽培を継続し、植物1個体が生産する全ての種子を回収し、乾燥後、種子の重量を精密天秤で計測した。
1−8.12Sグロブリン変異株における油脂総生産の増強
T-DNA挿入変異株及びRNAiラインの種子からFolch法(Folch J., Lees M., and Sloane-Stanley G.H., J. Biol. Chem., 1957年, 226:497-509)によりトリアシルグリセロール(TG)を抽出し、ガスクロマトグラフィーにより分析定量した。
乾燥させた成熟種子500粒を数え、重量を精密天秤で計測した。種子を沸騰した2-プロパノールに5分間浸漬し、氷冷した後にクロロホルムを加え、ポリトロンで破砕した。遠心分離により上清を回収し、KCl洗浄後に、下層のクロロホルム層をナシ型フラスコに回収し、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮乾固し、総脂質を得た。
得られた総脂質を薄層クロマトグラフィーにより展開し(展開溶媒;ヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸=80:30:1)、TG画分を回収した後、当該画分を塩酸性メタノールと共に80℃で3時間加熱してメタノリシスを行った。氷冷後にヘキサンを加え、脂肪酸メチルエステルを回収し、濃縮乾固した後、ガスクロマトグラフィー(GC-18A, Shimazu Corporation, Kyoto, Japan)により分離定量を行った。これにより種子重量当たり(又は個数当たり)のTG含量を計測できた。植物1個体から回収した種子総重量(又は種子数)をもとに、植物1個体が生産する油脂総量を計算した。
2.結果
下記で説明する図面における略語は、以下の通りである;「WT」:野生株、「cra1」:cra1のT-DNA挿入変異株、「crb」:crbのT-DNA挿入変異株、「crc」:crcのT-DNA挿入変異株、「CRA1i」:CRA1のRNAi株(CRA1i-1及びCRA1i-2はCRA1のRNAi株の2つの独立した形質転換体である)、「CRCi」:CRCのRNAi株、「M」:分子量マーカー。
2−1.12Sグロブリン変異株の種子貯蔵タンパク質の解析
3つの12Sグロブリンコード遺伝子について、シロイヌナズナの各々T-DNA挿入変異株又はRNAi株を選抜し、野生株へのバッククロスを3回行って純化した後、ホモ変異株をPCRジェノタイピングにより確認した。
RT-PCRによってcra1、crb及びcrcのT-DNA挿入変異株は、それぞれ遺伝子破壊された標的遺伝子の転写産物の蓄積が起こらないことを確認した(図1の(C)のパネル)。CRA1及びCRCのRNAi株でも転写産物レベルの著しい低下が見られた(図1の(C)のパネル)。
さらに、種子貯蔵タンパク質の蓄積レベルを調べたところ、CRA1、CRB又はCRCの遺伝子破壊又は発現抑制により、それぞれに対応する遺伝子産物(12Sグロブリンαサブユニット)の欠損が確認された(図5;各変異株で欠失した遺伝子産物をアローヘッドで示す)。これにより、cra1、crb及びcrcはいずれもヌル変異株であり、これらの変異株を用いることで種子貯蔵タンパク質の蓄積量を減少させられることが明らかとなった。CRA1及びCRCのRNAi株もmRNAの発現抑制は完全ではないが、遺伝子産物の蓄積は殆ど見られず、種子貯蔵タンパク質の減少に成功したと判断した。
2−2.12Sグロブリン変異株における種子収量増加
栽培室で5週間、長日条件で生育させた植物体で主茎(一次茎)、及び主茎から分枝した二次茎や三次茎等の分枝した茎の総数をそれぞれ数えた。その結果、主茎の数は植物個体間で大差はないものの、12Sグロブリン変異株では分枝の本数が増加していることが明らかとなった(図6)。観察に用いた植物個体の栽培を続け、1週間後(栽培開始から6週目)、再度、分枝の本数を数えた。この時点では地上部の発育はほぼ終わっているので、分枝の本数はわずかに増えたのみだが、12Sグロブリン変異株で最終的な分枝の数が多い傾向が確認された。
12Sグロブリン変異株では、植物個体当たりの花・実の総数が増えていた(図7)が、莢(実)1本に含まれる種子数や、種子1粒あたりの重量は野生株と変異体で大差がなかった(図8)。そのため、植物体1個体が生産する最終的な種子総重量が12Sグロブリン変異株で多くなった理由(図9)は、12Sグロブリン変異株が分枝の増加に伴って実を多くつけた結果だと考えられた。
種子貯蔵タンパク質の遺伝子破壊による種子収量の増加はこれまでに報告がなく、バイオマス増産の新たなアプローチとして今後の応用が期待される。
2−3.12Sグロブリン変異株における油脂総生産の増加
種子収量の増加を確認した植物体(図9)の種子を用いて、油脂(TG)含量を測定した。図10に示すように、T-DNA変異株及びRNAi発現抑制株のいずれも野生株より1個体あたりの油脂の総生産量が増加していた。

Claims (1)

  1. アブラナ科に属する植物において種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する工程を含む、アブラナ科に属する植物の種子総量の増加方法であって、前記種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子が、以下の(a)〜(g)のいずれか1つの12Sグロブリン又はクルシフェリンをコードする遺伝子である、前記方法
    (a) 配列番号3、5、9及び13記載の塩基配列から成る群より選択される塩基配列から成る遺伝子
    (b) 配列番号3、5、9及び13記載の塩基配列から成る群より選択される塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列から成り、且つ種子貯蔵タンパク質として機能するタンパク質をコードする遺伝子
    (c) 配列番号3、5、9及び13記載の塩基配列から成る群より選択される塩基配列に対して90%以上の配列同一性を有する塩基配列から成り、且つ種子貯蔵タンパク質として機能するタンパク質をコードする遺伝子
    (d) 配列番号3、5、9及び13記載の塩基配列から成る群より選択される塩基配列と相補的な塩基配列から成るDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ種子貯蔵タンパク質として機能するタンパク質をコードする遺伝子
    (e) 配列番号4、6、10及び14記載のアミノ酸配列から成る群より選択されるアミノ酸配列から成るタンパク質をコードする遺伝子
    (f) 配列番号4、6、10及び14記載のアミノ酸配列から成る群より選択されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つ種子貯蔵タンパク質として機能するタンパク質をコードする遺伝子
    (g) 配列番号4、6、10及び14記載のアミノ酸配列から成る群より選択されるアミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列から成り、且つ種子貯蔵タンパク質として機能するタンパク質をコードする遺伝子
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