JP6031289B2 - 合成ガス製造方法および装置 - Google Patents

合成ガス製造方法および装置 Download PDF

Info

Publication number
JP6031289B2
JP6031289B2 JP2012165327A JP2012165327A JP6031289B2 JP 6031289 B2 JP6031289 B2 JP 6031289B2 JP 2012165327 A JP2012165327 A JP 2012165327A JP 2012165327 A JP2012165327 A JP 2012165327A JP 6031289 B2 JP6031289 B2 JP 6031289B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gas
reformed gas
carbon dioxide
carbon
reaction
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012165327A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014024696A (ja
Inventor
誠 寺井
誠 寺井
秀史 赤阪
秀史 赤阪
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Air Water Inc
Original Assignee
Air Water Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Air Water Inc filed Critical Air Water Inc
Priority to JP2012165327A priority Critical patent/JP6031289B2/ja
Publication of JP2014024696A publication Critical patent/JP2014024696A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6031289B2 publication Critical patent/JP6031289B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Hydrogen, Water And Hydrids (AREA)

Description

本発明は、天然ガス等の炭化水素系ガスを改質して一酸化炭素と水素を主体とした合成ガスを発生させる合成ガス製造方法および装置に関するものである。
水素と一酸化炭素を主成分とした合成ガスは、有機合成の原料用途で広く使用されている。今後は、水素と一酸化炭素のさまざまな配合比の合成ガスの需要が伸びてくるものと予測される。それらの中でも有機合成分野(例えばフィッシャー・トロプシュ合成やメタノール合成、ジメチルエーテル合成など)では、H/CO比が比較的低いもの(1〜2程度)が望まれるケースが出てきている。
ところで、H/CO比が1〜2程度の合成ガスやCOガスを、水素と一酸化炭素を主成分として製造する方法では、下式(1)を利用したメタンの炭酸ガス改質法が有用であるとされている。
CH+CO→2H+2CO …式(1)
その中でも、メタンと炭酸ガスに加えて酸素を原料ガスとし、反応器内の同一触媒上で燃焼反応と改質反応を進行させる熱中和式炭酸ガス改質プロセスが、設備の縮小や設備メンテナンス費の低減の面でも有利であると考えられる(例えば下記の特許文献1など)。
炭酸ガス改質プロセスでは、熱中和式か否かにかかわらず、改質反応で生じる改質ガス中の水素や一酸化炭素の含有比が高い。このため、改質ガスからのカーボン析出が起こりやすい。
カーボン析出は、反応に使用する改質触媒上で最も起こりやすいため、下記の特許文献2や特許文献3のように、カーボン析出が起こり難い改質触媒の開発が盛んに行われている。ところが、カーボン析出は、改質触媒上だけでなく、反応器後段の機器や配管内においても起こり得る現象であることがわかっている。
このように、カーボン析出が機器や配管内で起こると、ガス流路が閉塞して圧力損失が上昇するトラブルを招くことになる。熱交換器内で起こると、圧力損失が上昇するだけでなく、伝熱効率が低下するトラブルも招く。このように、カーボン析出により、合成ガス製造装置を安定的に運転することが不可能になってしまう。
ここで、改質ガスからのカーボン析出は、下記の式(2)(3)に表される2つの平衡反応によって生じる。したがって、ガス組成、圧力、温度によって析出の有無が決定される。
2CO⇔C+CO (ブドワール反応) …式(2)
+CO⇔C+HO (水性ガス反応) …式(3)
これらの反応におけるガス組成、圧力、温度の影響をそれぞれ説明する。
a)ガス組成
式(2)(3)に示すように、カーボンはCOもしくはHを原料とすることにより析出する。すなわち、化学平衡上、COリッチであるほど、Hリッチであるほど、そのガスからはカーボンが析出しやすい。逆に、COリッチであるほど、HOリッチであるほど、そのガスからカーボンは析出し難いと言える。
b)圧力
式(2)(3)のカーボン析出反応では、いずれも2molのガスから1molの固体(炭素)と1molのガス(COまたはHO)が発生する。このため、改質ガスの圧力が高いほど反応の平衡は右側ヘシフトし、カーボンが析出しやすくなる。
c)温度
式(2)(3)のカーボン析出反応は、いずれも発熱反応で、反応の平衡が右に進むと熱を発生する。このため、平衡上は温度が低いほど反応が進行しやすい。すなわち、改質ガスの温度が極端に高ければ、平衡上カーボンは析出できない。温度の閥値は、ガス組成および圧力によって決まる。
一方、改質ガスの温度が極端に低ければ、いかなる組成であっても、平衡上はカーボンの析出が起こり得る。しかしながら、温度が下がることによって反応速度が低下するため、一定の温度以下では、カーボンの析出が問題にならなくなる。例えば下記の特許文献4は、改質ガスの温度が400℃より低くなると、カーボンの析出が問題にならなくなる程度に反応速度が遅くなると開示する。
すなわち、カーボン析出は、改質ガスの温度が高すぎず低すぎない、具体的には400℃〜700℃程度の温度域で起こりやすいと言える。
改質反応の直後、改質ガスの温度は、一般に700℃以上の高温である。熱の有効利用を図る観点から、一般に、合成ガス製造装置では、改質ガスの熱を熱交換で回収することが行われる。このような熱回収により、700℃以上の高温域にあった改質ガスは冷却される。ところが、上述したように、カーボン析出反応は、改質反応直後の高温域よりもある程度冷却された400〜700℃程度の温度域で起こりやすい。このため、改質ガスの熱回収を行う熱交換器の内部で特に、カーボン析出によるトラブルが生じやすい。
このため、例えば下記の特許文献4や特許文献5には、改質ガスからのカーボン析出を抑制する手法として、改質ガスを急冷するプロセスが提案されている。
特許文献4:反応後の改質ガスを2000〜4000℃/秒の速度で冷却可能な熱回収ボイラを設置する。これにより、改質ガスを400℃以下まで急冷し、改質ガス温度がカーボン析出温度範囲(400℃〜850℃)内を速やかに脱する。
特許文献5:改質ガスから熱回収する排熱回収ボイラの形状に工夫を重ね、触媒層出口からボイラ入口までの流路を短縮する。これにより、カーボン析出温度範囲となる流路の長さを短くしている。
このように、炭酸ガス改質プロセスの改質ガスのように、高温の水素および一酸化炭素を豊富に含むガスを扱う装置では、カーボンの析出を抑えて安定的に装置稼動を行う必要がある。このため、特殊ボイラ等(熱交換器)を使って、改質ガスを急冷する必要があった。
特開2004−99363号公報 特開平11−079705号公報 特開2008−161873号公報 特開2005−281609号公報 特開2007−191367号公報
白井 裕三,財団法人電力中央研究所報告,研究報告W00010,(2001) 大木力,NTN TECHNICAL REVIEW;No.74,P42〜49,(2006) 石神逸男,大阪府立産業技術総合研究所報告,No.21,P9〜16,(2007)
従来技術における課題として、以下の事項が挙げられる。
1)本質的にカーボン析出は不可避である。
特許文献4にも述べられているように、カーボン析出反応の一つであるブドワール反応は、400℃以下まで冷却することで反応速度が極めて遅くなる。そのため、この文献の実施例では、反応直後(ガス温度:850〜900℃)の改質ガスを400℃以下(実際には260〜330℃)まで急冷することで、カーボンの析出量の低減を図っている。しかしながら、いかに急冷といっても、改質ガスを冷却する過程においてカーボンが析出する温度域を必ず通過する。このため、滞留時間が短いとはいえカーボンの析出は避けられない。
2)特殊な熱回収装置のため設備費が高価になる。
特許文献5では、反応器に直結する形状に特殊設計した熱回収装置(排熱回収ボイラ)を使用する。そして、カーボンが析出する温度域にある流路の長さ自体を短縮することにより、カーボン析出量の低減を図っている。
この技術は、流路を短縮するという構造的な工夫によりカーボン析出に対処しようとしたものである。ここにカーボン析出を回避するという思想はなく、カーボンの析出は避けられない。
一般に改質反応は反応が700〜800℃の高温で行われ、反応器も特殊な耐高温設計になる。加えて、この文献では、カーボンを析出する温度域にある流路の長さを短縮するため、構造的にも特殊設計が必要になる。このため、Ni系合金等の高価な耐熱材料を使用して特殊設計の反応器をつくらなければならない。具体的には、改質触媒を充填して反応を行う「筒状容器」、熱回収ボイラである「排熱回収部」、両者を接続する「合成ガス流路」等の機器には汎用品を採用できない。このような機器に特殊設計品を製作しなけれればならず、当然、設備費は高価にならざるをえない。
3)急冷するため有効な熱回収プロセスを構築し難い。
上述した特許文献4や特許文献5は、高温の改質ガスを急冷するプロセスである。この冷却の際には、熱交換器(ボイラ)で水等の低温流体を加熱する。高温の改質ガスを急冷するためには、ボイラの容量を大きなものとせざるを得ない。また、低温流体の受熱量が必要以上に大きくなり、回収した熱を利用できずに損失させることもある。さらに、水の加熱でスチームが過剰に発生してしまう。一方、特許文献4で述べられているように、改質ガスの温度は少なくとも400℃〜300℃以下まで急冷しなければならない。ここまで冷却されると、その改質ガスから熱回収を行ったとしても、有効利用できる熱量は少ない。そのうえ、熱交換する際の温度差が小さく、熱交換効率が悪いため、伝熱面積の大きな熱交換器が必要となる。
このように、従来のカーボン析出を抑制する技術では、本質的な析出抑制を達成することができないことに加え、高額な構成機器を必要とし、熱損失が大きくなりやすい。これらは、プラント製作費を含め、合成ガスの製造原価に跳ね返ることになる。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、熱交換器等に対するカーボン析出を防止しながら、有効な熱回収を行って、H/CO比が1〜2程度の合成ガスを発生させることができる合成ガス製造方法および装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の合成ガス製造方法は、
炭化水素系ガスと酸素系ガスと炭酸ガスを含む原料ガスを改質反応させて一酸化炭素と水素を主体とした合成ガスを製造する合成ガスの製造方法であって、
上記改質反応で生じる改質ガスにおいて起こるブドワール反応(2CO⇔C+COに対する改質ガスのカーボン活性値{A =K ×(pCO) /p(CO ):K は温度から求められる平衡定数である}を1以下とし、上記ブドワール反応の平衡を左辺へ移動させるよう、改質ガスが700℃以上の温度を保っている状態で改質ガスに対して炭酸ガスを導入し、
上記改質ガスへの炭酸ガスの導入は、改質反応を行う改質器の下流で、少なくとも上記炭酸ガスと改質ガスの熱交換を行う炭酸ガス熱交換器と、上記炭化水素と改質ガスの熱交換を行う炭化水素熱交換器よりも上流において行う
ことを要旨とする。
また、上記目的を達成するため、本発明の合成ガス製造装置は、
炭化水素系ガスと酸素系ガスと炭酸ガスを含む原料ガスを改質反応させて一酸化炭素と水素を主体とした合成ガスを製造する合成ガスの製造装置であって、
上記改質反応で生じる改質ガスにおいて起こるブドワール反応(2CO⇔C+COに対する改質ガスのカーボン活性値{A =K ×(pCO) /p(CO ):K は温度から求められる平衡定数である}を1以下とし、上記ブドワール反応の平衡を左辺へ移動させるよう、改質ガスが700℃以上の温度を保っている状態で改質ガスに対して炭酸ガスを導入し、
上記改質ガスへの炭酸ガスの導入は、改質反応を行う改質器の下流で、少なくとも上記炭酸ガスと改質ガスの熱交換を行う炭酸ガス熱交換器と、上記炭化水素と改質ガスの熱交換を行う炭化水素熱交換器よりも上流において行う
ように構成されていることを要旨とする。
本発明の合成ガス製造方法および装置では、改質反応で生じる改質ガスにおいて起こるブドワール反応(2CO⇔C+COに対する改質ガスのカーボン活性値{A =K ×(pCO) /p(CO ):K は温度から求められる平衡定数である}を1以下とし、上記ブドワール反応の平衡を左辺へ移動させるよう、改質ガスが700℃以上の温度を保っている状態で改質ガスに対して炭酸ガスを導入する。また、上記改質ガスへの炭酸ガスの導入は、改質反応を行う改質器の下流で、少なくとも上記炭酸ガスと改質ガスの熱交換を行う炭酸ガス熱交換器と、上記炭化水素と改質ガスの熱交換を行う炭化水素熱交換器よりも上流において行う。
ブドワール反応の平衡を左辺に移動させるため、改質ガス中のCO濃度が高くてH濃度が低い(H/CO比が低い)場合において有効である。
また、改質ガスと炭酸ガスがともに気相であるため、混合が容易である。加えて、蒸発潜熱も不要である。このため、改質ガスの温度が低下し難く、高温熱源が必要な熱回収にとって有利である。さらに、原料ガスに炭酸ガスが必要な炭酸ガス改質に採用すれば、その供給源が確保されていて、設備を増加しなくてよい。
炭酸ガス改質、水蒸気改質、部分酸化などのプロセスでは、改質ガスを精製して製品の合成ガスとする過程で不純物として分離される炭酸ガスをそのまま改質ガスに導入することが可能である。
また、改質ガスのカーボン活性値が1以下となるように炭酸ガスを導入するため、
改質ガスの組成がカーボン析出を確実に回避するものとなる。どのような改質方式を採用する場合であっても、カーボン析出を確実に回避するのに必要な炭酸ガスの添加量を算出することができる。
そして、上述した先行技術の各問題点は、つぎのように解決される。
1)本質的にカーボン析出が不可避である。
炭酸ガスを導入することにより、ブドワール反応の平衡が左辺に移動し、改質ガスの組成がカーボン析出の起こり難いように変化する。したがって、実質的にカーボン析出を完全に回避することが可能となる。
2)特殊な熱回収装置のため設備費が高価になる。
本発明においては、冷却速度や流路構造にたよるのではなく、改質ガスの組成そのものにおいてカーボン析出を回避する。このため、冷却方法や流路構造を問わずにカーボン析出は起こらない。したがって、熱交換器や配管について安価な汎用品を用いることができ、設備費を低減することができる。
3)急冷するため有効な熱回収プロセスを構築し難い。
本発明では、改質ガスを急冷する必要がない。このため、従来技術で問題になった熱損失等を考慮する必要がなく、有効な熱回収プロセスを構築することができる。また、炭酸ガスを導入することで改質ガスの温度が低下したとしても、流体が持つ熱量(エンタルピー)は低下しない。このため、本来改質ガスが保有している熱は損失されず、回収して利用できる。
本発明において、上記改質反応で生じる改質ガスにおいて起こる水性ガス反応(H+CO⇔C+HO)に対する改質ガスのカーボン活性値{A =K ×(pCO)×(pH )/p(H O):K は温度から求められる平衡定数である}を1以下とし、上記水性ガス反応の平衡を左辺へ移動させるよう、改質ガスが700℃以上の温度を保っている状態で改質ガスに対して水を導入し、
上記改質ガスへの水の導入は、改質反応を行う改質器の下流で、少なくとも上記炭酸ガスと改質ガスの熱交換を行う炭酸ガス熱交換器と、上記炭化水素と改質ガスの熱交換を行う炭化水素熱交換器よりも上流において行う場合には、
水性ガス反応の平衡を左辺に移動させるため、高圧の水蒸気改質プロセスなどのようにHリッチな改質ガスが発生するプロセスにおいて有効である。
また、多量の水を導入した場合でも、下流において行う気液分離で余剰の水分を簡単に取り除くことができる。したがって、改質ガスの精製工程に対する水分負荷は、飽和水分のみであり、導入しない場合と比較しても精製負荷は増大しない。また、気液分離の排水をポンプで昇圧して利用することができる。
また、炭酸ガスと水を併せて導入することにより、ブドワール反応と水性ガス反応の双方の平衡を左辺に移動させることができる。このため、H、COの濃度がともに高いガスを製造するプロセスにおいて有効である。
また、改質ガスのカーボン活性値が1以下となるように炭酸ガスや水を導入するため、
改質ガスの組成がカーボン析出を確実に回避するものとなる。どのような改質方式を採用する場合であっても、カーボン析出を確実に回避するのに必要な炭酸ガスや水の添加量を算出することができる。
本発明、炭酸ガスが導入された改質ガスから熱交換器で熱を回収するため
熱交換器におけるカーボン析出を確実に防止し、熱交換器のメンテナンスを大幅に低減できる。熱交換器については安価な汎用品を用いることができ、設備費を低減できる。
本発明を適用した合成ガス製造装置の第1実施形態を示す図である。 本発明を適用した合成ガス製造装置の第2実施形態を示す図である。 カーボン析出の抑制試験装置を示す図である。 カーボン析出の抑制試験評価装置を示す図である。
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
図1は、本発明を適用した合成ガス製造装置の一実施形態を示す図である。
この例は、四元系触媒を用いて外部加熱を行わない熱中和式炭酸ガス改質反応を利用し、炭化水素系ガスと酸素系ガスを含む原料ガスを改質反応させて一酸化炭素と水素を主体とした合成ガスを製造する合成ガスの製造装置である。
この装置は、酸素を導入する酸素導入路1、炭酸ガスを導入する炭酸ガス導入路2、炭化水素ガスとして天然ガスを導入する炭化水素導入路3が原料ガス導入路4に合流し、これらの原料ガスが改質器5に導入されるようになっている。
上記炭化水素導入路3は、改質器5から排出される改質ガスを搬送する改質ガス路27に設けられた炭化水素熱交換器15を通過する。これにより、炭化水素ガスを改質ガスと熱交換して予熱する。炭化水素導入路3のさらに下流には、予熱された炭化水素ガスを加熱する炭化水素ヒータ8が設けられている。炭化水素導入路3のさらに下流には、天然ガス中の付臭成分であるイオウ分を除去する脱硫器7が設けられている。上記炭化水素導入路3には、脱硫用の水素ガスを導入する水素ガス導入路を合流させることもできる。そして、炭化水素導入路3は、原料ガス導入路4に合流している。
上記炭酸ガス導入路2は、改質器5から排出される改質ガスを搬送する改質ガス路27に設けられた炭酸ガス熱交換器14を通過する。これにより、炭化水素ガスを改質ガスと熱交換して予熱する。炭酸ガス導入路2は、酸素導入路1に合流して予熱された炭酸ガスを酸素に混合する。炭酸ガス導入路2には、後述する第2リサイクル炭酸ガス路23が合流している。
炭酸ガス熱交換器14は、上述した炭化水素熱交換器15よりも上流に設けられている。炭酸ガス熱交換器14が炭化水素熱交換器15よりも改質器5に近い。改質ガスによる熱交換の順番は、炭酸ガス、炭化水素の順になる。こうすることで、炭酸ガスの予熱効率をあげることができる。炭酸ガス熱交換器14と炭化水素熱交換器15は、改質ガスの流れ方向に対する配置を逆にして設置することもできる。
酸素導入路1には、炭酸ガスと酸素の混合ガスを加熱する原料ヒータ6が設けられている。原料ヒータ6で予熱された炭酸ガスと酸素の混合ガスに対して炭化水素を合流させ、改質器5に導入する。
上記改質器5には、この例では、四元系の改質触媒が充填されている。
上記四元系の改質触媒としては、Rh修飾(Ni−CeO)−Pt触媒が使用される。そして、上記Rh修飾(Ni−CeO)−Pt触媒を使用することにより、炭化水素系ガスの燃焼反応と改質反応とを同じ反応領域内で同時に行なうようになっている。
すなわち、炭化水素の一部を完全燃焼させて炭化水素をCOとHOとに変換させる燃焼反応と、この燃焼反応により生成したCOとHO、および原料ガスとして導入したCOを、残余の炭化水素と反応させてHとCOとに変換させる改質反応とを、前記触媒上で進行させ、炭化水素をHとCOとに変換させる。
上記Rh修飾(Ni-CeO)-Pt触媒は、例えば、適当な表面積を有するアルミナ担体表面にRhを担持させ、ついでPtを担持させ、さらにNiとCeOとを同時担持させることにより得られる。ただし、担体の材質や形状の選択、被覆物形成の有無またはその材質の選択は、種々のバリエーションが可能である。
Rhの担持は、Rhの水溶性塩の水溶液を含浸後、乾燥、焼成、水素還元することにより行われる。また、Ptの担持は、Ptの水溶性塩の水溶液を含浸後、乾燥、焼成、水素還元することにより行われる。NiおよびCeOの同時担持は、Niの水溶性塩およびCeの水溶性塩の混合水溶液を含浸後、乾燥、焼成、水素還元することにより行われる。
上に例示した手順により、目的とするRh修飾(Ni−CeO)−Pt触媒が得られる。各成分の組成は重量比で、Rh:Ni:CeO:Pt=(0.05−0.5):(3.0−10.0):(2.0−8.0):(0.3−5.0)、望ましくは、Rh:Ni:CeO:Pt=(0.1−0.4):(4.0−9.0):(2.0−5.0):(0.3−3.0)に設定することが好ましい。
なお、上記における各段階での水素還元処理を省略し、実際の使用に際して触媒を高温で水素還元して用いることもできる。各段階で水素還元処理を行ったときも、さらに使用に際して触媒を高温で水素還元して用いることができる。
上記四元系の改質触媒が充填された改質器5で改質されて生成した改質ガスは、改質ガス路27によって取り出され、冷却器12で冷却され、気液分離器13で水分等の液体が除去される。
気液分離器13で分離された水は排水路24で排水される。その一部は、排水路24から分岐したリサイクル水路21Aに流れ、リサイクル水ポンプ16で昇圧されて後述する水添加路21Bに送られる。
気液分離器13で水分等の液体が除去された改質ガスは、改質ガス圧縮機9で昇圧され、PSA装置17により不純分が分離精製されて製品としての合成ガスとする。合成ガスは合成ガス取出路20から取り出され、図示しない合成ガス利用設備に送られて利用に供される。
PSA装置17で吸着分離された不純分である炭酸ガスは、真空ポンプ18で吸着塔から取り出され、リサイクル炭酸ガス圧縮機19で圧縮される。取り出されたリサイクル炭酸ガスの一部は、上述した第2リサイクル炭酸ガス路23を経由して炭酸ガス導入路2に送られて原料ガスの一部としてリサイクルされる。また、取り出されたリサイクル炭酸ガスの残りの一部は、第1リサイクル炭酸ガス路22Aを経由して後述する炭酸ガス添加路22Bに送られる。
このように、本実施形態の装置は、炭化水素系ガスと酸素系ガスを含む原料ガスを改質反応させて一酸化炭素と水素を主体とした合成ガスを製造する合成ガスの製造装置である。この装置によって合成ガスの製造方法が行われる。
本実施形態では、上記改質反応で生じる改質ガスにおいて起こるブドワール反応(2CO⇔C+CO)の平衡を左辺へ移動させるよう、改質ガスが700℃以上の温度を保っている状態で改質ガスに対して炭酸ガスを導入する。
改質ガスへの炭酸ガスの導入は、上述した炭酸ガス添加路22Bより行う。炭酸ガス添加路22Bは、第1リサイクル炭酸ガス路22Aと接続され、リサイクル炭酸ガスを改質ガスに導入するようになっている。炭酸ガス添加路22Bは、改質ガス路27における改質器5のすぐ下流に設けられている。改質ガスへの炭酸ガスの導入は、改質器5の下流で少なくとも炭酸ガス熱交換器14、炭化水素熱交換器15よりも上流において行われる。
また、本実施形態では、上記改質反応で生じる改質ガスにおいて起こる水性ガス反応(H+CO⇔C+HO)の平衡を左辺へ移動させるよう、改質ガスが700℃以上の温度を保っている状態で改質ガスに対して水を導入する。
改質ガスへの水の導入は、上述した水添加路21Bより行う。水添加路21Bは、リサイクル水路21Aと接続され、リサイクル水を改質ガスに導入するようになっている。水添加路21Bは、改質ガス路27における改質器5のすぐ下流に設けられている。改質ガスへの水の導入は、改質器5の下流で少なくとも炭酸ガス熱交換器14、炭化水素熱交換器15よりも上流において行われる。
このように、炭酸ガスおよび/または水が導入された改質ガスから、炭酸ガス熱交換器14、炭化水素熱交換器15によって熱を回収するようになっている。
この装置では、改質ガスのカーボン活性値が1以下となるように炭酸ガスおよび/または水を導入するのが好ましい。
図2は、本発明の第2実施形態の合成ガス製造装置を示す。
この例では、改質ガスに導入する炭酸ガスおよび/または水を、改質ガス路27に設けられた添加剤熱交換器25で予熱し、添加剤導入路26で改質器5のすぐ下流に導入するようになっている。添加剤熱交換器25は、炭酸ガス熱交換器14、炭化水素熱交換器15よりも下流に配置されている。
添加剤熱交換器25を設けることにより、所要の温度まで添加剤である炭酸ガスおよび/または水を予熱したうえで、改質ガスに添加することが可能となる。添加後の改質ガス温度の低下を抑えることができる。これにより、熱回収効率がさらに向上する。このように、改質ガスの温度低下を防止し、原料ガス流路に設置している電気ヒーターで熱を補う必要性が低下し、消費電力を節減して、合成ガスの製造原価を抑えることができる。それ以外は、上述した第1実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
上記各実施形態によれば、下記の作用効果を奏する。
改質反応で生じる改質ガスにおいて起こるブドワール反応(2CO⇔C+CO)の平衡を左辺へ移動させるよう、改質ガスが700℃以上の温度を保っている状態で改質ガスに対して炭酸ガスを導入する。
ブドワール反応の平衡を左辺に移動させるため、改質ガス中のCO濃度が高くてH濃度が低い(H/CO比が低い)場合において有効である。
また、改質ガスと炭酸ガスがともに気相であるため、混合が容易である。加えて、蒸発潜熱も不要である。このため、改質ガスの温度が低下し難く、高温熱源が必要な熱回収にとって有利である。さらに、原料ガスに炭酸ガスが必要な炭酸ガス改質に採用すれば、その供給源が確保されていて、設備を増加しなくてよい。
炭酸ガス改質、水蒸気改質、部分酸化などのプロセスでは、改質ガスを精製して製品の合成ガスとする過程で不純物として分離される炭酸ガスをそのまま改質ガスに導入することが可能である。
上記各実施形態では、具体的には下記の効果を奏する。
炭酸ガスを導入することにより、ブドワール反応の平衡が左辺に移動し、改質ガスの組成がカーボン析出の起こり難いように変化する。したがって、実質的にカーボン析出を完全に回避することが可能となる。
冷却速度や流路構造にたよるのではなく、改質ガスの組成そのものにおいてカーボン析出を回避する。このため、冷却方法や流路構造を問わずにカーボン析出は起こらない。したがって、熱交換器や配管について安価な汎用品を用いることができ、設備費を低減することができる。
改質ガスを急冷する必要がない。このため、従来技術で問題になった熱損失等を考慮する必要がなく、有効な熱回収プロセスを構築することができる。また、炭酸ガスを導入することで改質ガスの温度が低下したとしても、流体が持つ熱量(エンタルピー)は低下しない。このため、本来改質ガスが保有している熱は損失されず、回収して利用できる。
上記改質反応で生じる改質ガスにおいて起こる水性ガス反応(H+CO⇔C+HO)の平衡を左辺へ移動させるよう、改質ガスが700℃以上の温度を保っている状態で改質ガスに対して水を導入する。
このように、水性ガス反応の平衡を左辺に移動させるため、高圧の水蒸気改質プロセスなどのようにHリッチな改質ガスが発生するプロセスにおいて有効である。
また、多量の水を導入した場合でも、下流において行う気液分離で余剰の水分を簡単に取り除くことができる。したがって、改質ガスの精製工程に対する水分負荷は、飽和水分のみであり、導入しない場合と比較しても精製負荷は増大しない。また、気液分離の排水をポンプで昇圧して、改質ガスへ導入する水として利用することができる。
また、炭酸ガスと水を併せて導入することにより、ブドワール反応と水性ガス反応の双方の平衡を左辺に移動させることができる。このため、H、COの濃度がともに高いガスを製造するプロセスにおいて有効である。
炭酸ガスが導入された改質ガスから熱交換器で熱を回収する。
このため、熱交換器におけるカーボン析出を確実に防止し、熱交換器のメンテナンスを大幅に低減できる。熱交換器については安価な汎用品を用いることができ、設備費を低減できる。
改質ガスのカーボン活性値が1以下となるように炭酸ガスを導入する。
このため、改質ガスの組成がカーボン析出を確実に回避するものとなる。どのような改質方式を採用する場合であっても、カーボン析出を確実に回避するのに必要な炭酸ガスや水の添加量を算出することができる。
さらに、下記に示す効果を奏する。
・他プロセスヘの適用である。
上記説明では、熱中和式炭酸ガス改質プロセスにおける改質ガスからのカーボン析出抑制について記載した。本発明はこれに限定するものではなく、他のプロセスにも適用することができる。具体的には、例えば、外部加熱式炭酸ガス改質プロセスや、高圧で行う水蒸気改質プロセス、炭化水素の部分酸化プロセスなどに適用できる。
このようなプロセスでは、高温のHおよびCOリッチなガスが発生するため、カーボン析出によるトラブルが生じやすいと考えられる。そのような場合には、カーボン析出が起こり得ない高温状態のガスに、炭酸ガスおよび/または水を添加することで、析出によるトラブルを回避することができる。また、その炭酸ガスおよび/または水の添加方式は、ガス圧力や組成、熱回収プロセス、添加剤の利用し易さ等を考慮して、(1)CO添加、(2)純水添加、(3)CO+純水添加のうち、ケース毎に最適な方式を選択することができる。
本発明では、カーボン析出反応の特性を考慮し、高温の改質ガスに炭酸ガスおよび/または純水を添加し、改質ガスの組成を変えることで、カーボン析出を抑制する。その評価試験をつぎのようにして行った。
図3は、カーボン析出の抑制試験装置を示す図である。
この試験装置は、改質触媒が充填された改質器39に対し、酸素導入路31、炭酸ガス導入路32、炭化水素導入路33から、原料ガスである酸素、炭酸ガス、天然ガスを導入する。炭化水素導入路33には脱硫器37および炭化水素ヒータ38が設けられている。また、炭化水素導入路33には脱硫用の水素を添加する脱硫用水素導入路34が接続されている。
上記炭酸ガス導入路32には炭酸ガスヒータ36が設けられている。酸素導入路31、炭酸ガス導入路32、炭化水素導入路33が合流した原料導入路46には、原料ヒータ35が設けられている。改質器39から排出された改質ガスは、冷却器42で冷却され、気液分離器43で気液分離され、ベントスタック45から排出するようになっている。符号44はドレン管44である。
改質器39の下流の改質ガス路47には、炭酸ガス添加路40および水添加路41が接続され、それぞれ改質ガスに対して炭酸ガスと水を導入するようになっている。炭酸ガスと水は、常温の状態で改質ガスに添加した。
図4は、カーボン析出の抑制試験評価装置を示す図である。
上述した改質器39には、下流側に試験パイプ51が接続されている。試験パイプ51内には、カーボンが析出したときにそれを付着させるためのSUS310S製のメッシュ52が配置されている。メッシュ52を6枚積層したメッシュ束52Aを50mm間隔(t)で9束配置した。メッシュ束52Aの厚みは1mm程度である。したがって、9束のメッシュ束52Aが配置された距離(t)は約400mmである。上記9束のメッシュ束52Aを貫通するように、鞘管53が配置されている。この鞘管53内には温度計54が挿通されている。
改質ガスは9束のメッシュ束52Aを通過して送り出される。また、炭酸ガスと水は、9束のメッシュ束52Aよりも上流において改質ガスに導入する。このようにすることにより、炭酸ガスと水が添加された改質ガスが各メッシュ52を通過する。したがって、改質ガスからカーボンが析出すればメッシュ52に付着する。改質ガスからカーボンが析出しなければ、メッシュ52にカーボンは付着しない。試験後のメッシュ52のカーボンを測定することにより、カーボンの析出の有無を評価する。
この試験装置では、水素および一酸化炭素が高濃度で発生する炭酸ガス改質システム(熱中和式)を採用し、CO、Hリッチな改質ガスを発生させた。
試験に用いた天然ガスの組成は、CH=89〜90(mol%)、C=5〜6(mol%)、C=2〜3(mol%)、C10=1〜2(mol%)であって、合計で100%となる組成とした。
熱中和式炭酸ガス改質反応では、主として上述した式(1)および下記の式(4)〜(6)の反応が連続的に起こっていると考えられている。
CH+HO→3H+CO …式(4)
CO+HO→H+CO …式(5)
CH+2O→CO+2HO …式(6)
さらにガス内の微量成分であるC、C、C10は、上述した式(1)(4)(6)とともに、下記の式(7)の反応過程を経ていると考えられている。
2n+2+(3n+1)/2O2n→nCO+(n+1)HO(n=2〜4) …式(7)
本試験の条件は、合成ガス中のH/CO比が理論上およそ1となるように、原料ガス組成、温度、圧力を、前記天然ガス組成と式(1)および(4)〜(7)からの平衡計算結果を基に設定した。
具体的には、下記の条件に設定した。
CO/C=0.9〜1.1
/C=0.55〜0.60
改質触媒入口原料ガス温度:350〜400℃
改質器出口圧力:50〜100kPaG
CO/CとO/Cは、下記の式で定義される。
CO/C=(原料ガス中CO[mol]/(原料天然ガス中炭素[mol])
/C=(原料ガス中O[mol]])/(原料天然ガス中炭素[mol])
下記の表1において炭酸ガスおよび/または水の添加条件として記載したCO/CおよびS/Cについても同様に下記の式で定義される。
添加CO/C=(添加ガス中CO[mol]/(原料天然ガス中炭素[mol])
添加S/C=(添加ガス中HO[mol])/(原料天然ガス中炭素[mol])
本条件で運転した場合の、炭酸ガスおよび/または水を添加する前の、改質ガス組成の一例は、つぎのとおりである。
:33.9(mol%)
CO:35.0(mol%)
CO:16.1(mol%)
CH:0.2(mol%)
O:14.8(mol%)
〔カーボン活性値〕
本試験では、改質ガスからのカーボン析出の起こり易さを表す指標として、カーボン活性値を用いた。カーボン活性値は、析出反応毎に、CO、H、CO、HOの分圧、およびガス温度から求められる平衡定数を用いて計算される。カーボン活性値が1を超えていれば、平衡上は析出が起こることを意味する。
炭酸ガス改質プロセスにおいて、改質反応が進行し、反応器中のCO分圧、H分圧が上昇することにより、カーボンは析出し易くなる。
上述したように、カーボン析出は下記の反応式(2)(3)により発生する(非特許文献1)。
2CO⇔C+CO (ブドワール反応) …式(2)
+CO⇔C+HO (水性ガス反応) …式(3)
ここで、式(2)(3)で表される反応は平衡反応であり、カーボンが析出するか否かは反応ガス中のCO、CO、H、HOの分圧と反応ガス温度で決まる。
理論上、下記計算式で求められる「カーボン活性値」が1を上回る場合に、式(2)または(3)の反応に従ってカーボンが析出する。反対に、1を下回る場合には、式(2)または(3)の逆反応に従ってカーボンのガス化反応が起こり、カーボン析出は起こらない。
=K×(pCO)/p(CO) …式(A)
=K×(pCO)×(pH)/p(HO) …式(B)
:反応式(2)に対するカーボン活性値
:反応式(3)に対するカーボン活性値
およびKは、非特許文献2および非特許文献3に記されているように、温度から求められる平衡定数である。
本試験で発生する改質ガスは750℃以上の高温である。750℃におけるカーボン活性値は、上述した式(A)(B)より、A:0.5、A:0.4と計算される。このため、改質ガスがこの温度範囲にある時点では、カーボン析出は起こらない。
しかしながら、熱回収や外部への放熱により、同ガスの温度が低下した場合、カーボン活性値は上昇する。例えばガス温度が695℃になると、同じく計算により、A:1.7、A:1.0となり、同温度付近を境界として、カーボン析出が起こり始める。
すなわち、カーボン析出を抑制するためには、改質ガス温度が700℃以上の、高温状態のうちに、炭酸ガスおよび/または水を添加し、改質ガス組成を変化させることが必要になる。
炭酸ガスおよび/または水の添加量が少なければ、カーボン析出抑制の効果が十分に発揮されない。
反対に、炭酸ガスおよび/または水の添加量が多過ぎると、カーボンは析出し難くなるが、その一方で、ガスの温度が低くなってしまうため、実プラントにおいて熱回収が困難になる。また、炭酸ガスおよび/または水を不必要に消費する。さらに、炭酸ガスおよび/または水を添加した後のガス容積が増加するため、設備の肥大化にも繋がり、製品ガスの製造原価が高くなってしまう。
このため、カーボン析出を抑制し、かつ経済的にも効率の良い装置運転を可能にするためには、必要最低限だけの炭酸ガスおよび/または水を添加することが望ましい。このためには、改質ガスのカーボン活性値が1以下となるように炭酸ガスおよび/または水を導入するのが好ましい。
そこで、炭酸ガスおよび/または水の添加量を様々に変化させ、カーボン析出の抑制に対する効果を評価した。
〔評価手順〕
(1)図4に示す試験装置により、SUS310S製のメッシュ52をHおよびCO濃度が高い改質ガスに対して250時間暴露した。線径は0.1mm、孔径は100メッシュのメッシュ52を用いた。
(2)暴露中、温度計の測定位置を50mm間隔でずらし、各測定位置で1分静置することにより、各メッシュ52の設置高さにおけるガス温度を測定した。
(3)暴露後のメッシュ52のカーボン量を測定した。
(4)カーボン量の測定結果を検証し、量に増加が認められなければカーボンの析出が抑制されたと判断し、増加が確認されればカーボンが析出したと判断する。
メッシュ52材質のSUS310Sは、耐熱性、耐酸化性の高い高温用熱交換器材質としてボイラ等に使用されており、同材質のメッシュ52を用いることで、実機の熱交換器に対するカーボン付着を模擬した。
また、メッシュ52中のカーボン量の測定は、炭素分析装置(株式会社堀場製作所製、型番:EMIA−110)を用いて行った。測定原理は、試料中に含まれる炭素を酸素気流中で燃焼させ、発生したCOおよびCOガスを赤外線検出器で検出し、試料中の炭素含有量を測定するものである。赤外線検出器は20℃、試料燃焼部は1250℃として安定させた。酸素ガス供給圧力は0.2±0.05(MPaG)とした。
SUS310S材には、元来、微量にカーボン分が含まれており、JIS G4309等の規定では、その含有量は0.08wt%以下である。本試験に用いたメッシュ52中のカーボン含有量を事前に実測したところ、0.10wt%程度含まれていたため、分析結果が0.10wt%以下のときは、カーボンが析出していないと判断した。
ここで、6枚のメッシュ52により1層のメッシュ束52Aが構成され、そのメッシュ束52Aを9層配置して試験を行った。1層のメッシュ束52Aから2枚ずつメッシュ52を取り出して3回に分けて分析を行い、その平均値をその層の代表値とした。9層のメッシュ束52Aそれぞれの代表値のうち最大値(下記の表1に示す)が0.10wt%以上の場合にカーボンが析出したと判断した。
添加剤の組み合わせは、下記の3組とした。
(1)COのみを添加
(2)COと純水を混合して添加
(3)純水のみを添加
添加した炭酸ガスは、ボンベに充填された純度99.5%以上の炭酸ガスを用いた。添加した純水は、水道水を原水として活性炭フィルタ、逆浸透膜およびイオン交換樹脂から構成される純水装置(オルガノ株式会社製、製品名:ピュアライトPRO−0100004)で不純物を除去した水(電気伝導率を0.1mS/m以下)を用いた。
試験条件および試験結果を、下記の表1に示す。
Figure 0006031289
表1からわかるように、反応直後の改質ガスに炭酸ガスおよび/または水を添加することにより、カーボンが析出し難い(カーボン活性値が低い)組成に改質ガスを変化させ、カーボン析出を抑制することが可能である。また、400℃以上の温度域(カーボンが析出しやすい温度域)においても、析出は確認されていない。例えば試験番号(1)の実施例では、高温側流体の温度が470℃であるため、熱交換によって、低温側流体を450℃程度まで昇温することも可能である。
1:酸素導入路
2:炭酸ガス導入路
3:炭化水素導入路
4:原料ガス導入路
5:改質器
6:原料ヒータ
7:脱硫器
8:炭化水素ヒータ
9:改質ガス圧縮機
12:冷却器
13:気液分離器
14:炭酸ガス熱交換器
15:炭化水素熱交換器
16:リサイクル水ポンプ
17:PSA装置
18:真空ポンプ
19:リサイクル炭酸ガス圧縮機
20:合成ガス取出路
21A:リサイクル水路
21B:水添加路
22A:第1リサイクル炭酸ガス路
22B:炭酸ガス添加路
23:第2リサイクル炭酸ガス路
24:排水路
25:添加剤熱交換器
26:添加剤導入路
27:改質ガス路
31:酸素導入路
32:炭酸ガス導入路
33:炭化水素導入路
34:脱硫用水素導入路
35:原料ヒータ
36:炭酸ガスヒータ
37:脱硫器
38:炭化水素ヒータ
39:改質器
40:炭酸ガス添加路
41:水添加路
42:冷却器
43:気液分離器
44:ドレン管
45:ベントスタック
46:原料導入路
47:改質ガス路
51:試験パイプ
52:メッシュ
52A:メッシュ束
53:鞘管
54:温度計

Claims (4)

  1. 炭化水素系ガスと酸素系ガスと炭酸ガスを含む原料ガスを改質反応させて一酸化炭素と水素を主体とした合成ガスを製造する合成ガスの製造方法であって、
    上記改質反応で生じる改質ガスにおいて起こるブドワール反応(2CO⇔C+COに対する改質ガスのカーボン活性値{A =K ×(pCO) /p(CO ):K は温度から求められる平衡定数である}を1以下とし、上記ブドワール反応の平衡を左辺へ移動させるよう、改質ガスが700℃以上の温度を保っている状態で改質ガスに対して炭酸ガスを導入し、
    上記改質ガスへの炭酸ガスの導入は、改質反応を行う改質器の下流で、少なくとも上記炭酸ガスと改質ガスの熱交換を行う炭酸ガス熱交換器と、上記炭化水素と改質ガスの熱交換を行う炭化水素熱交換器よりも上流において行う
    ことを特徴とする合成ガス製造方法。
  2. 上記改質反応で生じる改質ガスにおいて起こる水性ガス反応(H+CO⇔C+HO)に対する改質ガスのカーボン活性値{A =K ×(pCO)×(pH )/p(H O):K は温度から求められる平衡定数である}を1以下とし、上記水性ガス反応の平衡を左辺へ移動させるよう、改質ガスが700℃以上の温度を保っている状態で改質ガスに対して水を導入し、
    上記改質ガスへの水の導入は、改質反応を行う改質器の下流で、少なくとも上記炭酸ガスと改質ガスの熱交換を行う炭酸ガス熱交換器と、上記炭化水素と改質ガスの熱交換を行う炭化水素熱交換器よりも上流において行う
    請求項1記載の合成ガス製造方法。
  3. 炭化水素系ガスと酸素系ガスと炭酸ガスを含む原料ガスを改質反応させて一酸化炭素と水素を主体とした合成ガスを製造する合成ガスの製造装置であって、
    上記改質反応で生じる改質ガスにおいて起こるブドワール反応(2CO⇔C+COに対する改質ガスのカーボン活性値{A =K ×(pCO) /p(CO ):K は温度から求められる平衡定数である}を1以下とし、上記ブドワール反応の平衡を左辺へ移動させるよう、改質ガスが700℃以上の温度を保っている状態で改質ガスに対して炭酸ガスを導入し、
    上記改質ガスへの炭酸ガスの導入は、改質反応を行う改質器の下流で、少なくとも上記炭酸ガスと改質ガスの熱交換を行う炭酸ガス熱交換器と、上記炭化水素と改質ガスの熱交換を行う炭化水素熱交換器よりも上流において行う
    ように構成されていることを特徴とする合成ガス製造装置。
  4. 上記改質反応で生じる改質ガスにおいて起こる水性ガス反応(H+CO⇔C+HO)に対する改質ガスのカーボン活性値{A =K ×(pCO)×(pH )/p(H O):K は温度から求められる平衡定数である}を1以下とし、上記水性ガス反応の平衡を左辺へ移動させるよう、改質ガスが700℃以上の温度を保っている状態で改質ガスに対して水を導入し、
    上記改質ガスへの水の導入は、改質反応を行う改質器の下流で、少なくとも上記炭酸ガスと改質ガスの熱交換を行う炭酸ガス熱交換器と、上記炭化水素と改質ガスの熱交換を行う炭化水素熱交換器よりも上流において行う
    請求項記載の合成ガス製造装置。
JP2012165327A 2012-07-26 2012-07-26 合成ガス製造方法および装置 Active JP6031289B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012165327A JP6031289B2 (ja) 2012-07-26 2012-07-26 合成ガス製造方法および装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012165327A JP6031289B2 (ja) 2012-07-26 2012-07-26 合成ガス製造方法および装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014024696A JP2014024696A (ja) 2014-02-06
JP6031289B2 true JP6031289B2 (ja) 2016-11-24

Family

ID=50198701

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012165327A Active JP6031289B2 (ja) 2012-07-26 2012-07-26 合成ガス製造方法および装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6031289B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017534624A (ja) * 2014-10-27 2017-11-24 サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ 水蒸気改質と乾式改質とによるシンガス生成の統合
JP6405275B2 (ja) * 2015-03-23 2018-10-17 住友精化株式会社 水素の製造方法、および水素製造システム
JP6779093B2 (ja) * 2016-10-20 2020-11-04 東京瓦斯株式会社 燃料電池システム、制御装置、及びプログラム
EP3573159B1 (en) 2018-05-25 2021-06-16 Panasonic Intellectual Property Management Co., Ltd. Fuel cell system and method for operating the same

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH1126001A (ja) * 1997-07-04 1999-01-29 Fuji Electric Co Ltd 燃料電池発電システム
JP5348938B2 (ja) * 2008-04-01 2013-11-20 エア・ウォーター株式会社 一酸化炭素ガス発生装置および方法
JP5731202B2 (ja) * 2010-03-08 2015-06-10 エア・ウォーター株式会社 合成ガス製造方法および装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014024696A (ja) 2014-02-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Alrashed et al. Comparative analysis of conventional steam methane reforming and PdAu membrane reactor for the hydrogen production
CA2929531C (en) Process for producing hydrogen with improved energy efficiency
BRPI0610246B1 (pt) Processo para sintetizar metanol
BR112018014726B1 (pt) Processo para produção de um gás de síntese de amônia
Wassie et al. Techno-economic assessment of membrane-assisted gas switching reforming for pure H2 production with CO2 capture
JP6031289B2 (ja) 合成ガス製造方法および装置
KR20110037639A (ko) 고효율 수소 생산을 위한 다단 수성가스 분리막 반응장치 및 이를 이용한 수소생산방법
JP2019507718A (ja) Soecにより最適化された一酸化炭素製造方法
US20240132428A1 (en) Conversion of carbon dioxide and water to synthesis gas for producing methanol and hydrocarbon products
Yang et al. Thermodynamic analysis of chemical looping coupling process for coproducing syngas and hydrogen with in situ CO2 utilization
Damanabi et al. Potential of tri-reforming process and membrane technology for improving ammonia production and CO2 reduction
Dolan et al. An experimental and techno-economic assessment of solar reforming for H2 production
Saadabadi et al. A solid oxide fuel cell fuelled by methane recovered from groundwater
CA2833697C (en) System and process for producing a h2-containing gas and purified water
Bernardo et al. Evaluation of membrane reactor with hydrogen-selective membrane in methane steam reforming
JP4473223B2 (ja) 改良されたシフト転化の構成と方法
Nalbant et al. An overview of hydrogen production from biogas
Wang et al. Membrane reactors for hydrogen production from coal
AU2013335985B2 (en) Saturator and natural gas reforming system provided with same
CN102781565A (zh) 浇注料中的硫化物的去除方法
JP2008207969A (ja) 水素製造装置、水素製造システムおよび水素製造方法
Uy An Exploration of Flow Deflection and Heated Length for Pelletized and Structured Catalysts in Steam-Reforming Reactors
US20240010580A1 (en) Process for the one-step conversion of carbon dioxide and renewable hydrogen to low-carbon methane
Giaconia Hydrogen production by solar steam reforming as a fuel decarbonization route
Baloyi The production of hydrogen from the Water Gas Shift Reaction through the use of a Palladium-Silver membrane reactor

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150622

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160208

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160216

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160331

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160517

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160715

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20161018

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20161024

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6031289

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250