AMTECにおいて、大型化を図らずに、BASEの単位容積当たりの発電電圧(出力密度)を高くするには、前記圧力差を更に大きくしてイオン駆動力を増大する必要がある。このことに対して従来のAMTECでは、イオン駆動力を増大させるために、アルカリ金属の飽和蒸気圧を利用して受熱部の更なる高温化を図る必要がある。しかし、密閉容器等を構成する材料の熱的耐久性の観点から受熱部の更なる高温化には限界があり、廃熱利用によって受熱部を高温化する場合には、高温の廃熱が必要で、利用できる廃熱源が限られることにもなる。
圧力差を大きくする方法としては、ウィックポンプや電磁ポンプのポンプ能力を大きくすることが考えられる。しかし、ウィックポンプには表面張力に限界があり、電磁ポンプ(〜1気圧)では高効率化が課題になり、また電磁発熱によるエネルギ損失を伴う。
本発明が解決しようとする課題は、受熱部の更なる高温化を図ることなくイオン駆動力を増大し、BASEの単位容積当たりの発電電圧を高くすること、また、これまでは大きい圧力差を得ることが困難であった低温熱源の利用を可能にすることである。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器は、高温流体に曝される受熱部(B)と低温流体に曝される放熱部(C)とを有し、前記受熱部(B)と前記放熱部(C)とを通過するようにアルカリ金属の循環路が画定された密閉容器(12)と、前記循環路の前記受熱部(B)に対応する部分である高温部において前記循環路を上流側の高温部上流側と下流側の高温部下流側とに区切るように前記密閉容器(12)内に配置されたβアルミナ固体電解質部材(30)と、前記高温部上流側に配置された陰極部材(34)と、前記高温部下流側に配置された陽極部材(31)とを有するアルカリ金属熱電気変換器であって、遠心力によって前記アルカリ金属の前記高温部下流側における圧力に対する前記高温部上流側における圧力の差が増大するように所定の回転軸線(A)周りに前記密閉容器(12)を回転させる回転装置(42)を有する。
この構成によれば、遠心力を利用してβアルミナ固体電解質部材(30)の両側の高温部上流側と高温部下流側との圧力差が高くなり、アルカリ金属のイオンがβアルミナ固体電解質部材(30)を通過する駆動力が増大する。これに伴いβアルミナ固体電解質部材(30)の陰極側におけるアルカリ金属のイオンと電子との分離が促進され、受熱部(B)の更なる高温化を図ることなくβアルミナ固体電解質部材(30)の単位容積当たりの発電電圧が高くなる。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器は、好ましくは、前記高温部上流側は、前記低温部よりも前記回転軸線Aの径方向外方に配置されている部分を含んでいる。
この構成によれば、回転軸線(A)周りの密閉容器(12)の回転による遠心力によって、低温部から高温部上流側へアルカリ金属が輸送され、βアルミナ固体電解質部材(30)の両側の高温部上流側と高温部下流側との圧力差が高まる。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器は、好ましくは、前記低温部が前記高温部上流側に連通する部分は、当該低温部が前記高温部下流側に連通する部分に対して前記回転軸線(A)の径方向外方に配置されている。
この構成によれば、回転軸線(A)周りの密閉容器(12)の回転による遠心力によって、低温部から高温部上流側へアルカリ金属が輸送され、βアルミナ固体電解質部材(30)の両側の高温部上流側と高温部下流側との圧力差が高まる。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器は、好ましくは、前記高温部下流側は前記βアルミナ固体電解質部材(30)の配置位置より前記回転軸線(A)の径方向内方において前記低温部に連通している。
この構成によれば、低温部を回転軸線(A)の径方向に延在させることができる。なお、高温部下流側ではアルカリ金属は密度が低い気体であるため、遠心力の影響を受け難く、高温部下流側から低温部へと移動することができ、アルカリ金属の循環は阻害されない。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器は、好ましくは、前記高温部は前記密閉容器(12)の前記回転軸線(A)に沿う方向における一側に配置され、前記低温部は前記密閉容器の前記回転軸線(A)に沿う方向における他側に配置されている。
この構成によれば、高温部と低温部とが一つの回転軸線(A)上に存在するから、密閉容器(12)が回転軸線(A)周りに回転しても、高温部及び低温部の回転軸線(A)に沿う方向の位置が変わることがなく、受熱部は常に高温流体に曝される定位置に、放熱部は常に高温流体に曝される定位置に各々配置される。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器は、好ましくは、前記高温部は前記低温部に対して鉛直上方側に配置されている。
この構成によれば、高温部から低温部へのアルカリ金属の流れに重力が作用し、高温部から低温部へのアルカリ金属の流れが円滑になると共に、再始動に備えてアルカリ金属を低温部に溜められる。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器は、好ましくは、βアルミナ固体電解質(30)の前記高温部上流側の面に凸部(33、37)が一体形成されている。
この構成によれば、凸部(33、37)によってβアルミナ固体電解質(30)の高温部上流側、つまりアノード側におけるβアルミナ固体電解質(30)とアルカリ金属との接触面積が増大する。それに伴いβアルミナ固体電解質(30)を通過するイオン量が増加することに応じてアノード側で分離する電子量が増え、発電容量が増大する。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器は、好ましくは、前記密閉容器(12)は、円盤状中空部(16)を内部に画定する円盤部(14)と、前記円盤部(14)の一方の盤面側の外周部から軸線方向に突出するように周方向に間隔をおいて配置され、前記円盤状中空部に連通する第1の円柱状中空部(20)を内部に画定する複数の外側筒部(18)と、前記円盤部(14)の他方の盤面側の中心部から軸線方向に突出し、前記円盤状中空部(16)に連通する第2の円柱状中空部(24)を内部に画定する中心筒部(22)と、前記円盤状中空部(16)を、それぞれ、前記一方の盤面側及び前記他方の盤面側に位置する第1の円盤状中空部(16A)及び第2の円盤状中空部(16B)に区画する円盤状内部隔壁(26)と、前記円盤状内部隔壁(26)の中心部から、前記中心筒部(22)の内部を径方向に区分するように、前記中心筒部(22)の突出端近傍に至るまで延出し、前記第1の円盤状中空部(16A)を前記第2の円柱状中空部(24)の突出端近傍に連通させる筒状内部隔壁(28)とを有し、前記βアルミナ固体電解質部材(30)は、前記円盤状内部隔壁(26)から前記第1の円柱状中空部(20)内に、前記外側筒部(18)の内部を径方向に区分するように突出し、かつ、先端を閉じられ、前記第2の円盤状中空部(16B)に連通する内室(20A)を有する筒体により構成される。
この構成によれば、回転する一つの密閉容器(12)に複数個のβアルミナ固体電解質部材(30)が組み込まれていることにより、発電電圧が高い変換器が得られる。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器は、好ましくは、前記中心筒部(22)は前記回転軸線(A)と同心に配置されている。
この構成によれば、密閉容器(12)の回転軸線(A)周りの回転において、偏心荷重による回転バランスの不均衡が生じない。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器は、好ましくは、前記第1の円盤状中空部(16A)と前記中心筒部(22)の内部との連通部に、前記の流れを絞る絞り部(32)が形成されている。
この構成によれば、密閉容器(12)の回転時に、中心筒部(22)内のアルカリ金属が第1の円盤状中空部(16A)へ逆流することが抑制される。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器は、好ましくは、前記中心筒部(22)は、円筒体により構成され、内周面(22B)が前記円盤部(14)の側から突出端側に向かうに従って内径が小さくなるテーパ形状になっている。
この構成によれば、遠心力によって内周面(22B)に押し付けられたアルカリ金属に上向きの流れ成分が与えられ、中心筒部(22)内より円盤部(14)の側へ向かうアルカリ金属の流れが円滑になる。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器は、好ましくは、前記筒状内部隔壁(28)は、円筒体により構成され、内周面(28A)が前記円盤状内部隔壁(26)の側から延出端側に向かうに従って内径が大きくなるテーパ形状になっている。
この構成によれば、遠心力によって内周面(28A)に押し付けられたアルカリ金属に下向きの流れ成分が与えられ、中心筒部(22)内を降下するアルカリ金属の流れが円滑になる。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器は、一つの使用例として、前記受熱部が内燃機関の排気ガスと熱交換可能に配置され、排気ガスを熱源として動作する。
この使用例によれば、廃熱利用によってアルカリ金属熱電気変換器が動作する。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器の運転方法は、高温流体に曝される受熱部(B)と低温流体に曝される放熱部(C)とを有し、前記受熱部(B)と前記放熱部(C)とを通過するようにアルカリ金属の循環路が画定された密閉容器(12)と、前記循環路の前記受熱部(B)に対応する部分である高温部において前記循環路を上流側の高温部上流側と下流側の高温部下流側とに区切るように前記密閉容器(12)内に配置されたβアルミナ固体電解質部材(30)と、前記高温部上流側に配置された陰極部材(34)と、前記高温部下流側に配置された陽極部材(31)とを有するアルカリ金属熱電気変換器の運転方法であって、前記アルカリ金属の前記高温部下流側における圧力に対する前記高温部上流側における圧力の差が増大するように、前記密閉容器(12)を所定の回転軸線(A)周りに回転させ、前記アルカリ金属に遠心力を与える。
この運転方法によれば、遠心力を利用してβアルミナ固体電解質部材(30)の両側の高温部上流側と高温部下流側との圧力差が高くなり、アルカリ金属のイオンがβアルミナ固体電解質部材(30)を通過する駆動力が増大する。これに伴いβアルミナ固体電解質部材(30)の陰極側におけるアルカリ金属のイオンと電子との分離が促進され、受熱部(B)の更なる高温化を図ることなくβアルミナ固体電解質部材(30)の単位容積当たりの発電電圧が高くなる。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器の運転方法は、好ましくは、前記密閉容器(12)を前記βアルミナ固体電解質部材(30)の配置位置に対して回転半径方向に離れた位置にある回転軸線(A)周りに回転させる。
この運転方法によれば、密閉容器(12)の回転軸線(A)周りの回転によってβアルミナ固体電解質部材(30)の配置位置に遠心力が作用し、βアルミナ固体電解質部材(30)の両側の高温部上流側と高温部下流側との圧力差が高くなる。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器の運転方法は、好ましくは、前記遠心力によって前記βアルミナ固体電解質部材(30)の上流側と下流側との前記アルカリ金属の圧力差を高め、前記βアルミナ固体電解質部材(30)の陰極側における前記アルカリ金属のイオンと電子との分離を促進するように前記遠心力の大きさを設定する。
この運転方法によれば、遠心力によってβアルミナ固体電解質部材(30)の陰極側における前記アルカリ金属のイオンと電子との分離が促進される。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器によれば、遠心力を利用してβアルミナ固体電解質部材の両側の高温部上流側と高温部下流側との圧力差が高くなり、アルカリ金属のイオンがβアルミナ固体電解質部材を通過する駆動力が増大する。受熱部の更なる高温化を図ることなくβアルミナ固体電解質部材の単位容積当たりの発電電圧が高くなる。
以下に、本発明によるアルカリ金属熱電気変換器の第1の実施形態を、図1、図2を参照して説明する。
アルカリ金属熱電気変換器(AMTEC)10は、外殻をなす密閉容器12を有する。密閉容器12は、ステンレス鋼等、高熱伝導性と高耐熱性とを備えた金属により構成されている。
密閉容器12は水平に配置された一つの円盤部14を有する。円盤部14は円盤状中空部16を内部に画定している。
円盤部14の上方の盤面側(上側盤面)には、当該円盤部14の外周部から軸線方向上側に鉛直に突出した複数の外側円筒部18が周方向に等間隔をおいて、円盤部14の中心に対して点対称の位置に配置されている。複数の外側円筒部18は、各々、上端を上部端壁18Aによって閉じられ、下端側にて円盤状中空部16に連通する第1の円柱状中空部20を内部に画定している。
円盤部14の下方の盤面側(下側盤面)には、当該円盤部14の中心部から軸線方向下側に鉛直に突出した一つの中心円筒部22が配置されている。中心円筒部22は、下端を下部端壁22Aによって閉じられ、上端側にて円盤状中空部16に連通する第2の円柱状中空部24を内部に画定している。
円盤部14内には円盤状内部隔壁26が水平に設けられている。円盤状内部隔壁26は、円盤状中空部16を、上方の盤面側に位置する上側円盤状中空部(第1の円盤状中空部)16Aと、下方の盤面側に位置する下側円盤状中空部(第2の円盤状中空部)16Bとに区画している。
中心円筒部22内には当該中心円筒部22と同心に円筒状内部隔壁28が鉛直に設けられている。円筒状内部隔壁28は、中心円筒部22の内部を径方向に区分するように、円盤状内部隔壁26の中心部から第2の円柱状中空部24内を中心円筒部22の突出端(下端)近傍に至るまで延出し、自身の筒内空間(内側中空部24A)をもって上側円盤状中空部16Aを第2の円柱状中空部24の突出端(下端)近傍に連通させる。
つまり、円筒状内部隔壁28は、第2の円柱状中空部24を、上端側にて上側円盤状中空部16Aに連通する内側中空部24Aと、上端側にて下側円盤状中空部16Bに連通する外側中空部24Bとに区画している。円筒状内部隔壁28は下部端壁22Aに接合することはなく、円筒状内部隔壁28の下端と下部端壁22Aとの間に間隙があることにより、内側中空部24Aと外側中空部24Bとは、円筒状内部隔壁28の下端側にて互いに連通している。
円盤状内部隔壁26には円盤状内部隔壁26から第1の円柱状中空部20内に鉛直に延出したβアルミナ固体電解質部材(BASE)30が取り付けられている。BASE30は、好ましいものとして、高温雰囲気中でナトリウム(Na)等のアルカリ金属のイオンを伝導する特性(イオン導電性)を有するβ"アルミナの焼結材によって構成されている。
BASE30は、先端(上端)を閉じられた円筒体をなし、外側円筒部18内に当該外側円筒部18と同心に配置されて外側円筒部18内を径方向に区分し、下端側にて下側円盤状中空部16Bに連通する内室20Aを有する。BASE30の外側には外側円筒部18との間に下端側にて上側円盤状中空部16Aに連通する外室20Bが画定されている。つまりBASE30は、第1の円柱状中空部20を、下端側にて下側円盤状中空部16Bに連通する内室20Aと、下端側にて上側円盤状中空部16Aに連通する外室20Bとに区画している。
外室20Bには導電性と通気性とを有する三次元網目構造の発泡金属体(多孔質金属体)が充填されている。発泡金属体は、BASE30の外周面(カソード側)と外側円筒部18の内周面とに導電関係で接触する円筒部分を含み、陽極(カソード)部材31をなしている。陽極部材31は同時にBASE30を外側円筒部18内の所定位置に支持する支持部材を兼ねている。
上述したように、密閉容器12内には、上側円盤状中空部16A、下側円盤状中空部16B、内室20A、外室20B、内側中空部24A、外側中空部24Bが画成され、これらの空間には、真空雰囲気で、ナトリウム等のアルカリ金属が封入されている。なお、図1において、水平破線模様部分は液体のアルカリ金属の存在を、網点模様部分は気体のアルカリ金属の存在を各々示している。
密閉容器12のうち、内室20A、外室20Bに対応する部分(外側円筒部18)、すなわち密閉容器12の鉛直上方側は、高温流体に曝される受熱部Bになっている。これに対して内側中空部24A、外側中空部24Bに対応する部分(中心円筒部22)、すなわち密閉容器12の鉛直下方側は、低温流体に曝される放熱部Cになっている。
このようにして、アルカリ金属が内側中空部24Aから外側中空部24Bと下側円盤状中空部16Bと内室20AとBASE30と外室20B(陽極部材31)と上側円盤状中空部16Aとを経て内側中空部24Aに戻り、途中で放熱部Cと受熱部Bとを通過する、閉じられたループによるアルカリ金属の循環路が画定される。BASE30は、上述の循環路の受熱部Bに対応する部分である高温部において、当該循環路を上流側の高温部上流側(内室20A)と下流側の高温部下流側(外室20B)とに区切るように密閉容器12内に配置されることになる。上側円盤状中空部16Aと内側中空部24Aとの連通部にはアルカリ金属の流れを絞る絞り部32が形成されている。
円盤部14には、高温部上流側、つまり内室20A内に位置する棒状の陰極(アノード)部材34が電気絶縁部材36を介して取り付けられている。陰極部材34は、内室20Aに充満される液体のアルカリ金属の導電性によってBASE30の内周面(アノード側))に導通接続される。
密閉容器12の下底部、つまり中心円筒部22の下部端壁22Aには、下部端壁22Aから下方に延出した中心円筒部22と同心の回転中心軸38が設けられている。回転中心軸38はカップリング40によって回転装置である電動モータ42の回転出力軸(ロータ軸)44にトルク伝達関係で連結されている。電動モータ42のステータ側のケーシング46は、固定側部材48に固定されている。電動モータ42は中心円筒部22の中心を通って鉛直に延在する回転軸線A周りに密閉容器12を回転させる。BASE30は回転軸線Aより半径方向外方に離れた位置にある。
回転中心軸38の外周部には電気絶縁部材50を介して陰極用スリップリング52が取り付けられている。陰極用スリップリング52は密閉容器12の外周面に電気絶縁部材54を介して形成された導電部56及びリード線58によって陰極部材34に導通接続されている。回転中心軸38の外周部には陽極用スリップリング60が直接に取り付けられている。陽極用スリップリング60は密閉容器12自体の導電性によって陽極部材31に導通接続されている。陰極用スリップリング52と陽極用スリップリング60とは、各々集電ブラシ(図示省略)が個別に摺接し、回転している密閉容器12より外部(固定側)に集電できる構造になっており、外部負荷(図示省略)が接続される。
なお、本実施形態では、密閉容器12自体の導電性を利用して陽極部材31と陽極用スリップリング60との電気的導通を取るものにおいて、低温側のアルカリ金属との短絡を避けた電極導通構造が成立するよう、円盤状内部隔壁26及び円筒状内部隔壁28は電気絶縁材料によって構成され、円盤部14が下側円盤状中空部16Bの底面をなす面と中心円筒部22の内周面22Bは電気絶縁被膜層23によって絶縁被覆されている。
上述の構成によるAMTEC10には、密閉容器12が電動モータ42によって回転軸線A周りに回転されることにより、遠心力が生じる。ここでは、遠心力によってアルカリ金属の高温部下流側(外室20B)における圧力に対する高温部上流側(内室20A)における圧力の差が増大し、BASE30の陰極側におけるアルカリ金属のイオンと電子との分離を促進する大きさの遠心力が得られるように密閉容器12の回転速度を設定する。
前述した循環路中のアルカリ金属は、放熱部Cに対応する低温部である外側中空部24Bにおいて、放熱によって気体より凝縮して液体になる。気体アルカリ金属より高密度である液体アルカリ金属は、遠心力によって中心円筒部22の内周面22Bに押し付けられながら液面が上昇するようにして中心円筒部22の内周面22Bに沿って外側中空部24Bを上昇し、下側円盤状中空部16Bに至る。そして液体アルカリ金属は下側円盤状中空部16Bを径方向外方へ流れて高温部上流側である内室20Aに輸送される。
内室20Aに輸送された液体アルカリ金属は内室20Aにおいてアルカリ金属イオンと電子とに分離し、イオンのみがBASE30中を移動する。分離した電子は、陰極部材34より陰極用スリップリング52を経て図示されていない外部負荷へ移動し、外部負荷より陽極用スリップリング60を経て陽極部材31へ向かう。BASE30を通過したイオンは高温部下流側である外室20Bにおいて陽極部材31上の電子と再結合し、気体のアルカリ金属になる。
気体アルカリ金属は、陽極部材31を通過して上側円盤状中空部16Aを遠心力に抗して拡散するように径方向内方に移動し、絞り部32を通過して内側中空部24Aを下方に流れ、外側中空部24Bに戻る。この気体アルカリ金属の流れは、遠心力によって外側中空部24Bを上昇するアルカリ金属の流れに引かれるようにして生じる。絞り部32は、密閉容器12の回転時及び回転始動時に、内側中空部24Aのアルカリ金属が上側円盤状中空部16Aへ逆流することを抑制する。
密閉容器12が回転軸線A周りに回転することにより生じる遠心力は、BASE30の高温部上流側(内室20A)の気体アルカリ金属と高温部下流側(外室20B)の気体アルカリ金属との圧力差を高めるように作用する。すなわち、遠心力によって高温部上流側(内室20A)に十分な液体アルカリ金属が供給されると共に、遠心力によって気体アルカリ金属がBASE30の界面に集められることによって、アルカリ金属の高温部下流側における圧力に対する高温部上流側における圧力の差が増大する。なお、外室20Bは内室20Aより径方向外方に位置する部分を含むが、外室20Bのアルカリ金属は液体より密度が低い気体であるから、この部分の遠心力による圧力上昇は極めて低く、この部分でもアルカリ金属の高温部下流側における圧力に対する高温部上流側における圧力差の増大が図られる。
これにより、BASE30の両側の高温部上流側(アノード側)と高温部下流側(カソード側)との圧力差が増大し、イオンがBASE30を通過する駆動力(イオン駆動力)が増大する。これに伴いBASE30のアノード側(陰極側)におけるアルカリ金属のイオンと電子との分離が促進され、受熱部Bの更なる高温化を図ることなくBASE30の単位容積当たりの発電電圧が高くなる。
これにより、低温熱源の利用が可能になる。廃熱利用によって受熱部Bを加熱する場合には、廃熱の低温化が可能になり、自動車の内燃機関の排気ガス等、利用できる廃熱源が拡大される。
また、密閉容器12が回転することにより、受熱部Bにおける受熱効果と放熱部Cにおける放熱効果とが高まり、放熱部Cと受熱部Bとの温度差の拡大によっても、BASE30の高温部下流側における圧力に対する高温部上流側における圧力の差が増大する。このことによってもBASE30の単位容積当たりの発電電圧が高くなる効果が得られる。
また、アルカリ金属をBASE30の高温部上流側に輸送する力は遠心力によって得られるので、ウィックポンプや電磁ポンプを省略することができる。
また、高温部上流側(内室20A)は、放熱部Cに対応する低温部、つまり内側中空部24Aおよび外側中空部24Bより回転軸線Aの径方向外方に配置されているので、更には低温部が下側円盤状中空部16Bを介して高温部上流側(内室20A)に連通する部分(外側中空部24B)は、低温部が上側円盤状中空部16Aを介して高温部下流側(外室20B)に連通する部分(内側中空部24A)に対して回転軸線Aの径方向外方に配置されているから、更には、高温部下流側(外室20B)は、BASE30の配置位置より回転軸線Aの径方向内方において低温部(内側中空部24A)に連通しているので、密閉容器12の回転軸線A周りの回転による遠心力が、BASE30の両側の高温部上流側と高温部下流側とのアルカリ金属の圧力差を高めるように効率よく有効に作用する。
また、高温部(受熱部B)と低温部(放熱部C)とが一つの回転軸線A上に存在するから、密閉容器12が回転軸線A周りに回転しても、高温部及び低温部の回転軸線Aに沿う方向の位置が変わることがなく、高温部は常に高温流体に曝される定位置に、低温部は常に高温流体に曝される定位置に各々配置される。そして、高温部が低温部に対して鉛直上方側に配置されていることにより、高温部から低温部へのアルカリ金属の流れに重力が作用し、高温部から低温部へのアルカリ金属の流れが円滑になると共に、再始動に備えてアルカリ金属を低温部に溜めることができる。
また、回転する一つの密閉容器12に複数個のBASE30が組み込まれていることにより、発電電圧が高い変換器が得られる。
また、中心円筒部22が回転軸線Aと同心に配置され、しかも、円盤部14上における複数の外側円筒部18の配置が回転軸線Aに対して点対称の配置であることにより、密閉容器12の回転軸線A周りの回転において、偏心荷重による回転バランスの不均衡を生じることがない。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器の第2の実施形態を、図3を用いて説明する。なお、図3において、図1に対応する部分は、図1に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
この実施形態では、中心円筒部22の内周面22Bが円盤部14の側から突出端(下端)側に向かうに従って内径が小さくなるテーパ形状になっている。
このテーパ形状により、遠心力によって内周面22B側に移動したアルカリ金属に上向きの流れ成分が与えられ、外側中空部24Bを下側円盤状中空部16Bへ向かうアルカリ金属の流れが円滑になる。
また、円筒状内部隔壁28の内周面28Aが円盤状内部隔壁26の側から延出端(下端)側に向かうに従って内径が大きくなるテーパ形状になっている。
このテーパ形状により、遠心力によって内周面28A側に移動したアルカリ金属に下向きの流れ成分が与えられ、内側中空部24Aを降下するアルカリ金属の流れが円滑になる。
これらの構成及び効果以外は前述の実施形態と同じであり、前述の実施形態と同様の効果が得られる。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器の第3の実施形態を、図4、図5を用いて説明する。なお、図4、図5において、図1に対応する部分は、図1に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
この実施形態では、BASE30に、BASE30の内周面、つまり高温部上流側の面よりBASE30の中心に向けて突出して軸線方向(BASE30の母線方向)に延在する板状の複数個のフィン37が円周方向に等間隔をおいて一体形成されている。
このBASE30によれば、フィン37によってBASE30の内周面、つまり高温部上流側であるアノード側の表面積が増大し、この表面積の増大に応じてBASE30のアノード側が内室20A内の液体のアルカリ金属と接触する面積が増大する。
ナトリウム等のアルカリ金属が電子を放出してBASE30内に進入する際のメカニズムは、BASE30のアノード側面の近傍に存在するアルカリ金属のうち、一定以上の運動エネルギを有するものが電子を放出してBASE30内に進入するものと考えられる。そのため、BASE30のアノード側面(内周面)とアルカリ金属との接触面積を増大させるほど、高い運動エネルギを有するアルカリ金属がBASE30のアノード側面に近傍に位置する確率が高くなるため、BASE30内へ進入するイオンの数が増大する。これに応じてBASE30のアノード側にて分離する電子量が増え、このことと、密閉容器12の回転による遠心力によってBASE30の高温部上流側(アノード側)と高温部下流側(カソード側)との圧力差を増大することにより、BASE30のアノード側におけるアルカリ金属のイオンとほ電子との分離が促進されることとが相まって発電効率が向上し、BASE30の大型化や受熱部Bの高温化を図ることなく、AMTEC10の発電容量が増大する。
アノード側では液体のアルカリ金属を導体として陰極部材34との導通が取られるから、BASE30の内周面がフィン37によって凹凸を有する形状でも、その形状に拘らずアノード側の導通が取られる。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器の第4の実施形態を、図6、図7を用いて説明する。なお、図6、図7において、図1、図2に対応する部分は、図1、図2に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
この実施形態では、円盤部14と中心円筒部22とが別部材によって構成されている。円盤部14は、合成樹脂製で、円筒状内部隔壁28と一体形成されている。中心円筒部22は、金属製で、回転中心軸38と一体形成されている。
外側円筒部18とBASE30との間に画定された外室20Bは、BASE30毎に円盤部14に放射に形成された入口通路27によって中心円筒部22内の内側中空部24Aに連通している。BASE30内の内室20Aは、BASE30毎に円盤部14に放射に形成された出口通路29によって円筒状内部隔壁28内の外側中空部24Bに連通している。
この通路構造では、外側中空部24Bより入口通路27を通って外室20Bに液体のアルカリ金属が供給され、BASE30の外周側から内周側へアルカリ金属のイオンが通過し、内室20Aより出口通路29を通って内側中空部24Aに気体のアルカリ金属が戻される。
これにより、BASE30の外周面がアノード側になり、BASE30の内周面がカソード側になる。BASE30の外周面にはBASE30の外周を取り囲むように円盤板状のフィン33が一体形成されている。フィン33はBASE30の軸線方向に間隔をおいて複数個設けられ、各々、BASE30の外周面より外方へ突出している。
外側円筒部18は、陰極部材を兼ねており、リード線53によって陰極用スリップリング52に導通接続されている。アノード側では外室20Bに存在する液体のアルカリ金属を導体として陰極部材をなす外側円筒部18との導通が取られるから、BASE30の外周面がフィン33によって凹凸を有する形状であっても、その形状に拘らずアノード側の導通が取られる。なお、この実施形態では、外室20Bには発泡金属体が装填されておらず、外室20Bは液体のアルカリ金属を満たされる空間になっている。
BASE30の内周面、つまり内室20Aを画定する内周面は軸線方向の全長に亘って同一横断面形状の円周面であり、この内周面には通気性を有する薄膜構造による陽極層35がスパッタリング等によって形成されている。内室20Aには通気性を有する多孔質(三次元網目構造)の金属による接続部材45が充填されている。接続部材45は外周面にて陽極層35に導通接続されている。円盤部14には、バルク金属体によって構成された非通気性の接続端子39が、出口通路29の下側を密閉容器12の内外に貫通するように取り付けられている。接続端子39の一方の端部は内室20A内に位置して接続部材45に導通接続されている。接続端子39の他方の端部は、密閉容器12外にあり、リード線61によって陽極用スリップリング60に導通接続されている。接続端子39が円盤部14を貫通する部分には出口通路29の気密性を保つためのシール部材41が取り付けられている。なお、接続端子39が省略されてリード線61が内室20A内にまで延長され、リード線61の延長端が接続部材45に直接に導通接続されていてもよい。
また、AMTEC10の受熱部Bである外側円筒部18の外周には受熱フィン15が、AMTEC10の放熱部Cである中心円筒部22の外周には放熱フィン25が各々形成されている。
この実施形態でも、密閉容器12が電動モータ42によって回転軸線A周りに回転されることにより、AMTEC10に遠心力が生じる。密閉容器12中のアルカリ金属は、放熱部Cに対応する低温部である外側中空部24Bにおいて、放熱によって気体より凝縮して液体になる。気体アルカリ金属より高密度である液体アルカリ金属は、遠心力によって中心円筒部22の内周面22Bに押し付けられながら液面が上昇するようにして中心円筒部22の内周面22Bに沿って外側中空部24Bを上昇し、入口通路27に至る。そして液体アルカリ金属は、入口通路27を径方向外方へ流れ、高温部上流側である外室20Bに輸送される。
外室20Bに輸送された液体アルカリ金属は外室20Bにおいてアルカリ金属イオンと電子とに分離し、イオンのみがBASE30中を移動する。分離した電子は、陰極部材をなす外側円筒部18より陰極用スリップリング52を経て図示されていない外部負荷へ移動し、外部負荷より陽極用スリップリング60を経て陽極層35へ向かう。BASE30を通過したイオンは高温部下流側である内室20Aにおいて陽極層35上の電子と再結合し、気体のアルカリ金属になり、出口通路29を通って内側中空部24Aへ向かう。
このBASE30によれば、フィン33によってBASE30の外周面、つまり高温部上流側であるアノード側の表面積がカソード側の表面積に比して増大し、この表面積の増大に応じてBASE30のアノード側が外室20B内の液体のアルカリ金属と接触する面積が増大する。
これにより、この実施形態でも、高い運動エネルギを有するアルカリ金属がBASE30のアノード側面に近傍に位置する確率が高くなるため、BASE30内へ進入するイオンの数が増大する。これに応じてBASE30のアノード側にて分離する電子量が増え、このことと、密閉容器12の回転による遠心力によってBASE30の高温部上流側(アノード側)と高温部下流側(カソード側)との圧力差を増大することにより、BASE30のアノード側におけるアルカリ金属のイオンとほ電子との分離が促進されることとが相まって発電効率が向上し、BASE30の大型化や受熱部Bの高温化を図ることなく、AMTEC10の発電容量が増大する。
なお、BASE30のアノード側の表面積は、カソード側の表面積の2倍以上で、カソード側の表面積より大きいほど、アノード側にて分離する電子量の増加、つまり発電出力の増大に関して好ましい。
図7は、廃熱である内燃機関の排気ガスを熱源とするAMTEC10の使用例を示している。AMTEC10の受熱部Bは、内燃機関の排気管100のメイン通路102内にあってメイン通路102を流れる排気ガスと熱交換可能に配置されている。これにより、受熱部Bは排気ガスによって加熱される。排気ガスによる受熱部Bの加熱温度は500℃以上であればよい。
AMTEC10の放熱部Cはメイン通路102と並列のバイパス通路104内に配置されている。バイパス通路104の排気ガス入口106は開閉弁108によって開閉される構造になっている。バイパス通路104には外気取入口110が形成されており、外気取入口110には外気取入用のリード弁112が取り付けられている。なお、この使用例のものでは、AMTEC10の受熱部Bに受熱フィン15が、AMTEC10の放熱部Cに放熱フィン25が各々形成されている。なお、符号114、115は各々の気密用の回転シール部である。
AMTEC10の始動時には、放熱部Cの予熱のために、開閉弁108を開いてバイパス通路104に排気ガスを流し、排気ガスによって放熱部Cを加熱する。放熱部Cの予熱は、低温部において固体となったアルカリ金属を液体化させるために行われる。放熱部Cの予熱が完了した後は、開閉弁108を閉じ、リード弁112によってバイパス通路104に外気を取り込み、放熱部Cを受熱部Bより低い温度に保つ。放熱部Cの適正温度は受熱部Bの温度により決まり、100〜500℃程度であればよい。
これにより、AMTEC10は内燃機関の排気ガスを熱源として動作する。
以上、本発明を、その好適な形態実施例について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明は上記実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、受熱部Bにおける高温流体との熱交換効率と、放熱部Cにおける低温流体との熱交換効率とを更に高めるために、密閉容器12の外周部に、受熱フィン、放熱フィンが形成されていてもよい。この場合、密閉容器12の回転と共に受熱フィン、放熱フィンも回転するので、熱伝達効率が増大し、熱エネルギの授受、放出を促進することが期待できる。
また、必ずしも高温部上流側の全体が低温部よりも回転軸線Aの径方向外方に配置されている必要はなく、高温部上流側の少なくとも一部が低温部よりも回転軸線Aの径方向外方に配置されていればよい。つまり、高温部上流側は低温部よりも回転軸線Aの径方向外方に配置される部分を含んでいればよい。
また、AMTEC10は、円盤部14の上側に中心円筒部22が位置し、円盤部14の下側に外側円筒部18が位置する上下反転の配置であっても、上下に傾斜した配置であってもよい。
本発明によるアルカリ金属熱電気変換器は、図8に示されているように、高温流体に曝される受熱部Bと低温流体に曝される放熱部Cとを通過するようにアルカリ金属の循環路72が画定された密閉容器70を具備し、循環路72の受熱部Bに対応する部分である高温部において循環路72を上流側の高温部上流側と下流側の高温部下流側とに区切るようにβアルミナ固体電解質部材(BASE)74が密閉容器70内に配置された基本的構成のものにも適用できる。
この場合には、BASE74の配置位置が回転半径の外側位置に位置するように回転中心軸76を密閉容器70に取り付け、回転中心軸76を電動モータ78によって回転させればよい。なお、BASE74の高温部上流側には多孔質金属体によって構成された陰極部材80が、高温部下流側には多孔質金属体によって構成された陽極部材82が設けられている。
また、BASE30のアノード側におけるアルカリ金属との接触面積を増大するための凸部は、フィン33、37に限られることなく、蛇腹形状であったり、半球状等の突起であってもよい。
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。