JP6003783B2 - 製品の品質検査方法 - Google Patents

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Description

この発明は、例えば、窒化処理により表面硬度を高めた金属製薄板材等、鋼材製の母材に表面処理を施した製品の表層状態を、X線回折装置により検査を行い、その検査結果に基づき、製品の表層状態の良否を判定するための製品の品質検査方法に関するものである。
例えば、自動車に搭載される無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)に構成される環状の金属製薄板材(CVTリング)のほか、変速機や差動機構に構成される歯車等、強度を大きく必要とする部品には、その母材である鋼材の表面硬度を高めた窒化処理等の表面処理が施されている。表面処理後の鋼材(母材)は、製品として、品質管理上、ムラなく表面処理されていることが重要であり、作業者は、製品の品質を検査で確認するため、例えば、製品の表面から十数〜数十μmまでの窒化処理層の状態(表層状態)等について、X線回折装置により計測を行っている。そして、作業者は、X線回折装置による計測データに基づき、製品の表層状態の良否を判断する品質検査を行っている。
X線回折装置を利用した製品の表層状態の検査は、例えば、特許文献1,2に開示されている。特許文献1は、ライン上において、表面硬度を高める表面処理を製品(歯車)に施した後、この歯車にX線発生装置でX線を照射し、制御手段により、X線の回折角を求めた後、歯車の残留応力を求め、残留応力の許容値に基づいて、歯車を良品と不良品とに選別する技術である。特許文献1では、歯車に照射し回折したX線について、照射位置によって異なるX線の強度分布を示す電気信号が、制御手段に出力される。そして、制御手段は、この電気信号とX線強度との関係を示すX線強度波形について、歯車に残留応力がない場合との相対的な波形のズレを検出することにより、回折角2θを演算で求め、sinψ(歯車のX線照射点におけるX線の照射角度ψ)とX線の回折角2θとの関係から、演算処理により残留応力を求めている。特許文献1は、ライン上で送られてくる歯車の残留応力を、上述したように、非破壊検査により歯車を、残留応力の許容値に基づく判断基準で良品と不良品とに選別できている。
また、特許文献2は、窒化処理を施した合金工具鋼からなる金型を検査対象に、X線回折装置でX線を照射し、表面に窒化処理された表面層とその内部で窒化処理されていないα相とから得られる回折角の値と半値幅の値を用いて窒化処理条件を選定する技術である。特許文献2では、金型表面のα相からの回折角を、内部で得られる回折角より低角側に0.3°以上移行し、半値幅が0.3°以上広がるように、窒化処理に用いるガス比、塩浴組成比、処理温度または処理時間を選定することにより、金型表面に適切な範囲の圧縮残留応力が付与できるとされている。
特開平3−0276040号公報 特開2005−344202号公報
しかしながら、特許文献1,2のような従来技術には、以下のような問題があった。特許文献1では、歯車は、X線の照射位置から得られる回折角2θに基づいて残留応力を求め、その値と、判断基準となる残留応力値とを対比して、良品と不良品とに分けて選別しているため、X線照射位置の違いによって、良品と不良品との判別を誤認する虞がある。すなわち、表面処理された歯車(製品)において、良品と不良品との良否判断は一般的に、例えば、傷やバリの有無等による外観上の欠陥のほか、表面硬化層の深さやその範囲等の製品内部状態についても、設定された品質基準を満たしているかの検査基準となっている。作業者は、このような製品の内部状態を検査しようとするとき、製品を外観視しただけでは、X線照射位置を特定できない。そのため、製品が、所定のX線照射位置から外れた位置の内部で、品質基準を満たしていない状態になっていると、たとえ上記所定のX線照射位置で良品と判断されても、実質的に不良品であるため、製品の品質検査の信頼性は低い。
また、一般的に製品は、厳密に言うと、生産された製品の品質が一品ごとに異なっているほか、窒化処理を施した製品一つをとっても、窒化層の深さが規定深さを満たさず不十分となっている部分を有することや、窒化層の範囲が規定範囲を満たさないこと等、窒化処理層に部分的な品質ムラが生じることがある。このような窒化処理層の品質ムラは、製品の品質を低下させてしまうため、品質管理上、製品の品質検査により、許容範囲外の品質ムラを有した不良品である製品を、良品である製品と選別して排除する必要がある。特許文献2の技術は、生産設備である金型を対象とするには好適であるが、生産設備で生産される複数の製品を対象にして、このような不良品だけを排除することに適用できない。
本出願人は、窒化処理された製品をより高い信頼性で品質保証するため、X線回折装置により、製品の残留応力や窒化処理層の深さを検査するほか、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により、前述したように、製品において、X線照射位置から外れた位置の内部状態を画像化して視覚的に確認している。しかしながら、製品の内部状態を検査したい検査部位の画像化を走査型電子顕微鏡で行うのにあたり、検査部位を含む被検査対象試料として、製品は、走査型電子顕微鏡にセットできる大きさまで破壊され、使用できない状態になってしまう。特に、生産ラインで製造される製品には、内部状態までを確認する品質検査が、インライン上で実施できない。また、製品に破壊を伴う品質検査や、生産ラインからライン外に製品を抜き取る品質検査では、工程数が増えてしまうため、コスト高となっていた。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、表面処理を施した製品に、信頼性の高い品質検査を、非破壊でかつ低コストで行うことができる製品の品質検査方法を提供することを目的とする。
本発明に係る製品の品質検査方法は、上記目的を達成するために、以下の構成を有する。
(1)X線回折法により、鋼材に表面処理を施した製品の表層状態を品質検査する製品の品質検査方法において、サンプリングした製品に対し、表面からの表面処理層の深さと、X線回折法によるX線の回折角度2θの値との相関関係を、少なくとも予め把握しておき、かつ表層状態の評価には、少なくとも表面処理層の深さを含む表層状態判定尺度が用いられ、予め規定した表層状態判定尺度の許容値に対応する回折角度2θの値を、閾値である回折角度閾値として、設定する事前工程と、X線回折法により、被測定対象物である製品に対し、表面処理層の表層状態を判定したい部位の回折角度2θの値を取得する第1工程と、被測定対象物である製品に対し表層状態の良否を、第1工程で得られた回折角度2θの値と回折角度閾値との大小関係に基づいて、判断する第2工程を有すること、を特徴とする。
なお、本発明に係る製品の品質検査方法の表層状態の品質検査とは、表面に、例えば、窒化処理等の表面処理を施した製品において、その外観から視覚的に確認できる傷や、窒化処理炉等の表面処理設備内で付着した異物の残渣等の表面上の外観不具合部のほか、例えば、表面から製品内部組織に及ぶ窒化層のうち、所望の硬度を満たす硬度で硬化している有効層の深さがどの程度になっているか等を把握することを意味する。また、窒化層等の表面処理層の上記有効層の深さのほか、例えば、窒化処理により鋼材の内部組織が何らか変化した窒化処理影響層(鋼材の内部組織が窒化処理により硬化し変質した窒化層を含む)と、窒化処理の影響を受けていない鋼材の内部組織との界面までの深さ、製品内部組織の結晶構造等が、製品表面の面方向に広がる別々の部位で、どのように変化して分布しているのか等を把握することを意味する。また、本発明に係る製品の品質検査方法で、表層状態判定尺度の許容値とは、製品の品質保証を担保できる最低の数値であり、許容値を満たす製品であれば、良品と判断され、許容値に満たない製品であれば、不良品として判断される良否の境界値を意味する。
(2)(1)に記載する製品の品質検査方法において、事前工程では、サンプリングした製品に負荷を繰り返しかける疲労試験を行った後、疲労試験後の製品のS−N線図に基づくサイクル数と、X線回折法によるX線の回折角度2θの値との相関関係を予め把握しておくこと、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する製品の品質検査方法において、事前工程では、表面処理層の深さは、X線の前記回折角度2θの値を得る測定部位を含む製品の断面を画像化して、表面処理層を採寸することにより、測定されること、を特徴とする。
(4)(2)または(3)に記載する製品の品質検査方法において、事前工程で、表層状態の評価には、表面処理層の深さと、サンプリングした製品に負荷を繰り返しかける疲労試験を行った後、疲労試験後の製品のS−N線図に基づくサイクル数とを一元化して処理された表層状態複合判定尺度が用いられ、予め規定された表層状態複合判定尺度の許容値に対応する回折角度2θの値が、閾値である複合要因回折角度閾値として、設定されること、第2工程では、第1工程で得られた回折角度2θの値と複合要因回折角度閾値との大小関係を演算し、表層状態複合判定尺度の許容値を満たしているか否かを判別することにより、被測定対象物である製品の表層状態の良否が判断されること、特徴とする。
なお、本発明に係る製品の品質検査方法で、表層状態複合判定尺度の許容値とは、製品の品質保証を担保できる最低の数値であり、許容値を満たす製品であれば、良品と判断され、許容値に満たない製品であれば、不良品として判断される良否の境界値を意味する。
上記構成を有する本発明の製品の品質検査方法の作用・効果について説明する。
(1)X線回折法により、鋼材に表面処理を施した製品の表層状態を品質検査する製品の品質検査方法において、サンプリングした製品に対し、表面からの表面処理層の深さと、X線回折法によるX線の回折角度2θの値との相関関係を、少なくとも予め把握しておき、かつ表層状態の評価には、少なくとも表面処理層の深さを含む表層状態判定尺度が用いられ、予め規定した表層状態判定尺度の許容値に対応する回折角度2θの値を、閾値である回折角度閾値として、設定する事前工程と、X線回折法により、被測定対象物である製品に対し、表面処理層の表層状態を判定したい部位の回折角度2θの値を取得する第1工程と、被測定対象物である製品に対し表層状態の良否を、第1工程で得られた回折角度2θの値と回折角度閾値との大小関係に基づいて、判断する第2工程を有すること、を特徴とするので、例えば、製品を製造している生産ラインから、任意の製品を定期的に抜き取る品質検査をインライン上で行う場合、表面処理層として、被測定対象物である製品の窒化層等の表層状態が、非破壊で検査でき、表層状態の良否が、より短い検査時間で迅速に判定できる。そのため、被測定対象物である製品の表層状態の良否を判断することが、低コストで実現できる。
すなわち、製品に施された表面処理が窒化処理である場合を例示して説明すると、事前工程では、サンプリングした製品として、例えば、稼動する製品の生産ラインから、目視で確認できる外観上の製品の傷や、窒化処理炉内で付着した異物の残渣が製品に付着している等の外観不具合部を有し、廃棄または再資源化される予定の不具合製品が複数用いられる。不具合製品一つひとつには、外観不具合部以外に勿論、窒化層(表面処理層)において、品質規定深さを満たす深さで処理されている処理正常部が含まれ、品質規定深さを満たさない深さで処理されている処理異常部をも含んでいる蓋然性がある。このような不具合製品において、窒化層(表面処理層)の表面状態を検査したい部位として、例えば、外観不具合部や、外観に不具合がなくても品質管理上、特に注意を払っておく必要がある部位等の所定部位を、好ましくは複数箇所選択しておき、この所定部位を、X線回折法によるX線の照射・回折を行う測定部位に設定する。そして、この測定部位において、X線の回折角度2θの値を取得する。他方、この測定部位において、不具合製品表面から窒化層(表面処理層)の深さを測定しておく。回折角度2θの値の取得と窒化層(表面処理層)の深さの測定は、サンプリングした製品(不具合製品)全てについて行う。
ここで、X線回折法による回折角度2θの値と表面処理層(窒化層等)の深さとの相関関係について、説明する。本出願人はこれまで、例えば、前述した無段変速機に構成されるCVTリングで、厚さt、窒化処理を母材に施した窒化層の深さを十数〜数十μmのCVTリング1つ等を、本発明の製品の対象として、本発明の事前工程に相当する数々の実験を行ってきた。そして、例示するCVTリングのように、母材である鋼材に窒化層が形成された製品の場合、本出願人は、浸炭焼入れ層等とは異なる窒化層固有の内部組織に着眼し、X線回折法により、数十μmの深さで形成された窒化層に照射し、回折したX線の回折角度2θの値を調べてみると、回折角度2θの値が小さい程、窒化層は深く形成されている傾向にある一方、回折角度2θの値が大きくなるにつれて、窒化層が浅くなる傾向にあることを把握した。つまり、例示するCVTリングのように、鋼材に窒化処理を施した製品の場合には、X線回折法によるX線の照射・回折する測定部位を含む窒化層の深さと、回折角度2θの値との間に、相関関係があることが確認された。
このような相関関係が確認できていることから、X線の回折角度2θの値と、表層状態判定尺度である表面処理層(窒化層等)の深さとの相関関係が、複数の不具合製品の全測定部位を母集団とするデータベースで得られる。そして、表層状態判定尺度の許容値は、品質管理上、保証できる硬度を確保した品質規定深さとして設定され、この許容値に対応する回折角度2θの値が、回折角度2θの回折角度閾値として設定できる。
このような事前工程を前もって行った上で、第1工程の実施後、第2工程では、被測定対象物である製品の表面処理層(窒化層等)の深さは、事前工程でデータベース化されたX線の回折角度2θの値と表層状態判定尺度との相関関係に基づき、第1工程で取得したX線の回折角度2θの値に対応する表面処理層の深さから得られる。第1工程で取得したX線の回折角度2θの値が、回折角度2θの回折角度閾値と比べ、例えば、小さい場合、被測定対象物である製品の表面処理層の深さが品質規定深さを満たすと判断できる一方、大きい場合には、品質規定深さを満たさない等と判断できる。そのため、被測定対象物である製品の表層状態の良否は、当該製品を破壊することなく、第1工程でX線の回折角度2θの値を取得した後、第2工程で、取得した回折角度2θの値と回折角度閾値と大小関係を単に比較するだけで、より短い検査時間で簡単に、信頼性の高い判定を行うことができる。ひいては、第1工程及び第2工程の実施により、被測定対象物である製品が、良品か不良品であるかを、簡単に選別できる。また、本発明の製品の品質検査方法は、生産ラインから排除された不具合製品を用いて上記データベースを取得しておき、出荷に向けた製品を破壊せずに品質検査を行っており、製品を製造・出荷するのに、工程数の削減と、製品の製造コストの抑制に貢献できる。
従って、本発明の製品の品質検査方法によれば、表面処理を施した製品に、信頼性の高い品質検査を、非破壊でかつ低コストで行うことができる、という優れた効果を奏する。
(2)(1)に記載する製品の品質検査方法において、事前工程では、サンプリングした製品に負荷を繰り返しかける疲労試験を行った後、疲労試験後の製品のS−N線図に基づくサイクル数と、X線回折法によるX線の回折角度2θの値との相関関係を予め把握しておくこと、を特徴とするので、例えば、引張り応力、圧縮応力、曲げ応力、捻りによる応力等の応力が被測定対象物である製品に概ねどの程度かかっているかが、事前工程において、疲労試験後の製品のS−N線図に基づくサイクル数と、X線の回折角度2θの値をデータベース化した相関関係と、第1工程で取得したX線の回折角度2θの値とを照合することにより、推察できる。これにより、被測定対象物である製品が、その材料疲労の観点に基づいて、良品か不良品であるかを非破壊で選別することができる。
すなわち、本出願人はこれまで、前述で例示したCVTリングのような、鋼材に窒化処理を施した製品を用いて、本発明の事前工程に相当する数々の実験を行うことにより、疲労試験後の製品のS−N線図に基づくサイクル数と、X線の回折角度2θの値とについて、相関関係があることを把握している。製品が、例示するCVTリング等の場合、本出願人は、浸炭焼入れ層等とは異なる窒化層固有の内部組織に着眼し、X線回折法により、数十μmの深さで形成された窒化層に照射し、回折したX線の回折角度2θの値を調べてみると、回折角度2θの値が小さい程、疲労試験後の製品にかかる応力が大きく、S−N線図に照合するとその応力に対応するサイクル数は小さくなる傾向を確認した。その一方、回折角度2θの値が大きくなる程、疲労試験後の製品にかかる応力が小さく、S−N線図に照合するとその応力に対応するサイクル数は増加する傾向を確認した。つまり、例示するCVTリングのように、鋼材に窒化処理を施した製品の場合には、X線回折法によるX線の照射・回折する測定部位を含む窒化層を有した製品のS−N線図に基づくサイクル数と、X線の回折角度2θの値との間に、相関関係があることが確認された。
このような相関関係が確認できていることから、X線の回折角度2θの値と、疲労試験後の製品のS−N線図に基づくサイクル数との相関関係が、複数の不具合製品の全測定部位を母集団とするデータベースで得られる。そして、事前工程において、表層状態判定尺度の許容値は、品質管理上、保証できる耐久性を確保した品質規定サイクルを満たすことができる品質規定サイクル数として設定され、この許容値に対応する回折角度2θの値が、回折角度2θの回折角度閾値として設定できる。これにより、残留応力が被測定対象物である製品に概ねどの程度かかっているかが、当該製品を破壊することなく、第1工程でX線の回折角度2θの値を取得した後、第2工程で、取得した回折角度2θの値と回折角度閾値と大小関係を単に比較するだけで、より短い検査時間で簡単に、信頼性の高い判定を行うことができる。
(3)(1)または(2)に記載する製品の品質検査方法において、事前工程では、表面処理層の深さは、X線の前記回折角度2θの値を得る測定部位を含む製品の断面を画像化して、表面処理層を採寸することにより、測定されること、を特徴とするので、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により、表面処理層である窒化層等の様子を高解像度で拡大して画像化すれば、窒化層等のうち、品質管理上、保証できる硬度を確保した有効な窒化層等の深さが高精度で測定できると共に、測定された窒化層等の深さは、信頼性が高い。また、これと同時に、窒化層の断面の様子が可視化されて視覚的に観察できる。
(4)(2)または(3)に記載する製品の品質検査方法において、事前工程で、表層状態の評価には、表面処理層の深さと、サンプリングした製品に負荷を繰り返しかける疲労試験を行った後、疲労試験後の製品のS−N線図に基づくサイクル数とを一元化して処理された表層状態複合判定尺度が用いられ、予め規定された表層状態複合判定尺度の許容値に対応する回折角度2θの値が、閾値である複合要因回折角度閾値として、設定されること、第2工程では、第1工程で得られた回折角度2θの値と複合要因回折角度閾値との大小関係を演算し、表層状態複合判定尺度の許容値を満たしているか否かを判別することにより、被測定対象物である製品の表層状態の良否が判断されること、特徴とするので、製品の表層状態を良否判断するのに、表面処理層の深さと、製品にかかる応力の概ねの大きさが評価要因となっていることから、被測定対象物である製品が、真に良品なのか不良品なのかを、精度良く判断できる。
すなわち、例えば、表面処理層である窒化層の深さが品質規定深さを満たしていても、この製品に、残留応力が、品質管理上、保証できる許容範囲の応力値を超えてしまうこと等が生じる場合がある。この場合、窒化層の表層状態の評価要因が窒化層の深さのみとなっていると、表層状態の良否判定では、この製品は良品扱いとなり、表層状態の品質検査は信頼性の低い検査となる。この事態を回避するため、別途、製品の疲労を観点とした検査を行うとなると、工程数が増えてコスト高になってしまう。これに対し、本発明に係る製品の品質検査方法は、窒化層等の表面処理層の深さと、製品にかかる応力の概ねの大きさとの両観点で同時に、製品の表層状態の良否を簡単に判定できるため、より短い検査時間で、信頼性のより高い判定を行うことができる。また、本発明に係る製品の品質検査方法は、表層状態の品質検査に掛かる工程数を削減でき、第1工程でX線の回折角度2θの値を取得した後、第2工程で、取得した回折角度2θの値と複合要因回折角度閾値と大小関係を単に比較するだけで、表面処理層の表層状態の品質検査を低コストで実現できる。
実施形態に係る製品の品質検査方法により、製品の表層状態の品質良否を判定する選別基準を示すグラフである。 窒化処理を施した製品の表層状態を部分的に示す断面図であり、(a)窒化層の深さが品質管理基準を満たしている場合の表層状態を示す図、(b)窒化層の深さが品質管理基準を満たしていない場合の表層状態を示す図である。 図2と同様の断面図であり、窒化層の深さが局所的に品質管理基準を満たしていない場合の表層状態を示す図である。 X線回折装置における回折角度2θ値と、回折強度と、回折パターンとの関係をグラフ化して示す説明図である。 X線回折法による回折角度2θ値のうち、実施形態に係る製品の品質検査方法で用いるメインピークを示す説明図である。 実施形態に係る製品の品質検査方法の第2工程で、一の要因である窒化層の深さの良否判定に用いる選別基準として、測定データである回折角度2θ値と第1回折角度閾値との関係を示すグラフである。 実施形態に係る製品の品質検査方法の第2工程で、他の要因であるS−N線図に基づくサイクル数の良否判定に用いる選別基準として、測定データである回折角度2θ値と第2回折角度閾値との関係を示すグラフである。 実施形態に係る製品の品質検査方法で、複合要因回折角度閾値を決定するまでのフローを示すブロック図である。 X線回折装置により製品の表層状態の分析結果を例示して示すグラフであり、製品の表層状態を、回折角度2θの値と、窒化層の深さとサイクル数とを一元化して処理した表層状態複合判定尺度との関係により、表層状態を判定したグラフである。 本発明に係る製品の品質検査方法の応用例を示すブロック図である。
以下、本発明に係る製品の品質検査方法について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、製品の品質検査方法は、本発明の製品を、一例として、自動車の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)に構成される環状の鋼材製薄板材(CVTリング)を挙げて説明する。なお、製品は、薄板状の鋼材に、本実施形態では、表面処理として窒化処理を施した後、CVTの組み付け前に、リング幅を拡げリング周長を引き伸ばす周長調整工程を行っていない状態である場合について説明するが、周長調整工程後の状態であっても良い。
製品は、1つにつき、例えば、幅W、厚みt、引き伸ばし前の周長L等、薄板状のCVTリング(図示せず)であり、その母材である鋼材を窒化処理炉で窒化処理することにより、硬度が母材より大きくなった窒化層が、CVTリング(以下、「製品」と称する。)表面からその内部組織にかけて所定の深さで形成されている。図2は、窒化処理を施した製品の表層状態を部分的に示す断面図であり、(a)窒化層の深さが品質管理基準を満たしている場合の表層状態を示す図、(b)窒化層の深さが品質管理基準を満たしていない場合の表層状態を示す図である。図3は、図2と同様の断面図であり、窒化層の深さが局所的に品質管理基準を満たしていない場合の表層状態を示す図である。
なお、表層状態とは、製品1の外観から視覚的に確認できる表面1aの傷や、窒化処理炉内で付着した異物の残渣等が表面1aに付着していないかどうかの外観不具合部のほか、例えば、製品1の表面1aから十数〜数十μmまでの製品内部組織に及ぶ窒化層2のうち、所望の硬度を満たす硬度で硬化している有効層の深さがどの程度になっているか等、製品1の表面1aから内部組織にかけての状態を意味するものである。また、窒化層2の上記有効層の深さのほか、窒化処理により鋼材3の内部組織が何らか変化した窒化処理影響層(鋼材3の内部組織が窒化処理により硬化し変質した窒化層2を含む)と、窒化処理の影響を受けていない鋼材3の内部組織との界面までの深さ、製品1内部組織の結晶構造等が、製品1の表面1aの面方向に広がる別々の部位で、どのように変化して分布しているのか等、製品1の表面1aから内部組織にかけての状態を意味するものである。
製品1は、窒化処理工程において、厳格な品質管理の下で窒化処理されており、図2(a)に示すように、製品1の表面1aから内部組織にかけて形成される窒化層2は、品質管理上、保証できる硬度を確保した品質規定深さを満たす深さh1で処理される。しかしながら、実際の製品1には、窒化層2は、何らかの誤差要因により、品質上のバラツキとして、図2(b)及び図3に示すように、品質規定深さを満たさない深さh2で形成された処理異常部を含むことがある。このような処理異常部は、生産された製品1一品ごとや、製品1一つをとっても、図3に示すように、窒化処理を施した部位に、局部的に生じる場合や、図2(b)に示すように、窒化層2が規定範囲を満たして形成されていない場合等、製品1を外観視しただけでは判別不可な部分であり、このような処理異常部を有した製品1は、不良品として排除される。本実施形態に係る製品の品質検査方法は、このような製品1の表層状態の良否について、X線回折法により非破壊で品質検査を行う表層状態検査工程において、製品1が良品か不良品かを、例えば、製品1の生産ライン上等で判別する。
表層状態検査工程には、X線回折法による市販のX線回折装置が用いられる。このX線回折装置は、被測定対象物に対しX線の照射角度を自在に変更できる構成となっている。図4は、X線回折装置における回折角度2θ値と、回折強度と、回折パターンとの関係をグラフ化して示す説明図である。X線回折装置では、サンプリングした製品1や、被測定対象物の製品1を測定試料として、照射・回折するX線の回折角度2θ値で、第1次ピーク(メインピークPk)となる2θ値Mxの大きさが取得される。このメインピークPkとなる回折角度2θ値Mxは、図4に示すように、X線を照射し回折させる測定部位P(図2及び図3参照)の位置の違いにより、小さくなったり、大きくなったりと変化する特性となっており、窒化層2の深さの違いや、残留応力がかかっている状態の違いを判別する一種のパラメータとなっている。また、このX線回折装置には、主としてメインピークPkとなる2θ値Mxの大きさが、測定対象物の材質や結晶構造の違いによって異なることを利用し、回折パターン化(図4中、A,B,C参照、パターンA,B,Cは例示列挙)して測定対象物の結晶構造や材質を特定(判定)できる市販の材質解析ソフトが具備されている。
図5は、X線回折法による回折角度2θ値のうち、実施形態に係る製品の品質検査方法で用いるメインピークを示す説明図である。図6は、実施形態に係る製品の品質検査方法の第2工程で、一の要因である窒化層の深さの良否判定に用いる選別基準として、測定データである回折角度2θ値と第1回折角度閾値との関係を示すグラフである。図7は、実施形態に係る製品の品質検査方法の第2工程で、他の要因であるS−N線図に基づくサイクル数の良否判定に用いる選別基準として、測定データである回折角度2θ値と第2回折角度閾値との関係を示すグラフである。本実施形態に係る製品の品質検査方法は、事前工程、第1工程、及び第2工程を有し、この順に各工程を実施する。
事前工程は、図6に示すように、後述する、サンプリングした製品1に対し、表面1aからの窒化層2の深さと、X線回折法によるX線の回折角度2θDxの値との相関関係を、予め把握しておく。また、事前工程では、後述するように、サンプリングした製品1に負荷を繰り返しかける疲労試験を行った後、図7に示すように、疲労試験後の製品1のS−N線図に基づくサイクル数と、X線回折法によるX線の回折角度2θCxの値との相関関係を予め把握しておく。つまり、本実施形態では、事前工程は、表面1aからの窒化層2の深さと、X線回折法によるX線の回折角度2θDxとの相関関係と、疲労試験後の製品1のS−N線図に基づくサイクル数と、X線回折法によるX線の回折角度2θCxの値との相関関係とを考慮したものである。
第1工程は、X線回折法により、被測定対象物である製品1に対し、窒化層2の表層状態を判定したい測定部位Pの回折角度2θの測定値Mrを取得する。この測定値Mrは、図5に示すように、複数ある回折角度2θ値のうち、第1次ピーク(メインピークPk)となる2θ値を選択する。
事前工程において、回折角度2θDxと窒化層2の深さとの相関関係から導き出される表層状態の評価には、窒化層2の深さを含む窒化層深さ判定尺度D(本発明の表層状態判定尺度に対応)が用いられ、予め規定した窒化層深さ判定尺度Dの許容値Daに対応する回折角度2θDxの値が、閾値である第1回折角度閾値Dc1(本発明の回折角度閾値に対応)回折角度閾値として、設定される。その一方で、回折角度2θCxと製品1のS−N線図に基づくサイクル数との相関関係から導き出される表層状態の評価には、疲労試験後の製品1のS−N線図に基づくサイクル数を含むサイクル数判定尺度C(本発明の表層状態判定尺度に対応)が用いられる。そして、予め規定したサイクル数判定尺度Cの許容値Caに対応する回折角度2θCxの値が、閾値である第2回折角度閾値Dc2(本発明の回折角度閾値に対応)回折角度閾値として、設定される。
第2工程では、このような2つの相関関係を考慮した回折角度2θの回折角度閾値が用いられる。すなわち、表層状態の評価には、窒化層2の深さとS−N線図に基づくサイクル数とを一元化して処理された表層状態複合判定尺度M(本発明の表層状態複合判定尺度に対応)が用いられる。また、予め規定された表層状態複合判定尺度Mの許容値Maに対応する回折角度2θMxの値が、閾値である複合要因回折角度閾値Mcとして、設定される。そして、第2工程では、第1工程で得られた回折角度2θの測定値Mrと複合要因回折角度閾値Mcとの大小関係を演算し、表層状態複合判定尺度Mの許容値Maを満たしているか否かを判別することにより、被測定対象物である製品1の表層状態の良否が判断される。
なお、回折角度2θDxと窒化層2の深さとの相関関係のみから導き出される表層状態を評価する場合には、第2工程は、被測定対象物である製品1に対し表層状態の良否を、第1工程で得られた回折角度2θの測定値Mrと第1回折角度閾値Dc1との大小関係に基づいて、判断する。
次に、事前工程、第1工程、及び第2工程に関する具体的な内容と、複合要因回折角度閾値Mcを決定するまでの過程について、図8を用いて説明する。図8は、実施形態に係る製品の品質検査方法で、複合要因回折角度閾値を決定するまでの工程フローを示すブロック図である。
事前工程は、図8に示すように、製品サンプリング工程11と、X線回折角度2θ値取得工程12と、製品断面観察工程13と、第1回折角度閾値設定工程14と、製品疲労試験実施工程15と、第2回折角度閾値設定工程16と、複合要因回折角度閾値決定工程17とを有する。
事前工程のうち、まず製品サンプリング工程11を行う。製品サンプリング工程11は、稼動する製品1の生産ラインから、様々な観点で外観不良とされる複数の製品1を、目視検査により選択して入手する。入手する外観不良の製品1の数量は、なるべく数多くすることが好ましい。その理由として、入手する製品1の数である母集団が多くなればなる程、窒化層2の表層状態について、より数多くの情報が取得でき、このような数多くの情報を基に、製品1の表層状態をデータベース化して蓄積されれば、第2工程において複合要因回折角度閾値Mcが、信頼性を高くして設定できるようになる。
製品サンプリング工程11で入手した各製品1(以下、「サンプリングした製品1」と称する。)は、目視判断による外観不具合部を含んでいるが、各製品1一つひとつには、外観不具合部以外に勿論、窒化層2において、品質規定深さを満たす深さh1で処理されている処理正常部が含まれ、品質規定深さを満たさない深さh2で処理されている処理異常部をも含んでいる蓋然性がある。X線回折角度2θ値取得工程12では、サンプリングした各製品1を検査対象に、窒化層2の表面状態を検査したい所定の検査部位(外観不具合部のほか、外観に不具合がなくても品質管理上、特に注意を払っておく必要がある部位等で、好ましくは複数の部位)を選択する。
選択された検査部位の窒化層2には、前述したように、表面1aからの目視検査では判断できない処理正常部や処理異常部が含まれており、X線回折装置は、図2及び図3に示すように、このような検査部位を検査対象とした測定部位Pにおいて、照射し回折したX線の回折角度2θ値を取得する。また、測定部位Pを含む窒化層2の結晶構造が、X線回折装置に具備された材質解析ソフトにより、例えば、図4に示すパターンA,B,C等の何れに相当するのか、測定部位Pで取得したX線の回折角度2θの測定値Mxに基づいて特定し知得する。
次に、製品断面観察工程13を行う。製品断面観察工程13は、事前工程において、サンプリングした製品1における表面1aからの窒化層2の深さと、X線回折法によるX線の回折角度2θDxとの相関関係を把握するため、窒化層2の表層状態を、視覚で観察し確認する。具体的には、製品サンプリング工程11において、サンプリングした1つの製品1を、測定部位Pで回折角度2θ値を取得した検査部位を含む小さな被検査試験片にカットし、複数の測定部位P毎に、被検査試験片を作製する。この作業を、サンプリングした製品1全てについて行う。作業者は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、この被検査試験片において測定部位Pを含む窒化層2の断面を画像化し、窒化層2の表層状態を視覚的に観察する。観察事項として、窒化層2を構成する内部組織のうち、特に製品1の強度に影響を与える所定部位の立体的な形状やその範囲等について、観察する。また、事前工程で必要とする窒化層2の深さを知得する。この窒化層2の深さは、上述したように、走査型電子顕微鏡により、X線の回折角度2θの値を得る測定部位Pを含む製品1の断面を画像化して、窒化層2を採寸することにより、測定される。
なお、窒化層2の深さ測定を可能とする深さ測定機能が、回折角度2θの値の測定に用いるX線回折装置に具備されていれば、事前工程で行う窒化層2の深さ測定は、測定部位PでX線の回折角度2θの値を得ると同時に、窒化層2の深さを取得しても良い。
次に、第1回折角度閾値設定工程14を行う。第1回折角度閾値設定工程14では、製品断面観察工程13において、製品1の窒化層2の表面状態の観察から得られた窒化層2の深さである窒化層深さ判定尺度Dと、測定部位Pから得られたX線の回折角度2θDxとの相関関係が、図6に示すように、回折角度2θDxを横軸、窒化層深さ判定尺度Dを縦軸とするグラフに表示される。
ここで、X線回折法による回折角度2θDxの値と窒化層2の深さとの相関関係について、説明する。本出願人はこれまで、前述したように、無段変速機向けのCVTリングで、厚さt、窒化処理を母材に施した窒化層2の深さを十数〜数十μm等のCVTリング1つを製品1の対象として、事前工程のうち、製品サンプリング工程11、X線回折角度2θ値取得工程12、製品断面観察工程13、及び第1回折角度閾値設定工程14に対応する数々の実験を行ってきた。そして、CVTリングのような製品1の場合、本出願人は、浸炭焼入れ層等とは異なる窒化層2固有の内部組織に着眼し、X線回折法により、数十μmの深さで形成された窒化層2に照射し、回折したX線の回折角度2θの値を調べてみると、図4に示すように、回折角度2θのMx値が小さい程、窒化層2は深く形成されている傾向にある一方、回折角度2θのMx値が大きくなるにつれて、窒化層2が浅くなる傾向にあることを把握した。つまり、CVTリング(製品1)をX線回折法で品質検査すると、X線回折法によるX線の照射・回折する測定部位Pを含む窒化層2の深さと、回折角度2θの値Mx(回折角度2θDxの値)との間に、相関関係があることが確認された。
そこで、製品断面観察工程13では、サンプリングした全ての製品1について、1つの製品1で複数の測定部位Pで取得した回折角度2θDxの値と、これらの測定部位Pにそれぞれ対応する窒化層2の深さとが、図6に示すグラフにプロットされ、所定の演算手法により線図として処理される。なお、図6に示す線図は、一例として直線で処理されたものであるが、曲線で処理されることあり、窒化層2の深さDと回折角度2θDxとの相関関係を示す線図は、本実施形態の図6に限定されるものではない。
窒化層2の深さは、前述したように、品質管理上、保証できる硬度を確保した品質規定深さを満たすことが必須要件となる。そのため、窒化層深さ判定尺度Dの許容値Daが、このような品質規定深さを満たすと共に、製品断面観察工程13で、窒化層2の深さ以外の観察事項として、特に製品1の強度に影響を与える所定部位で、注意を払う必要がある部位の有無等を考慮して設定される。この許容値Daは、製品1の品質保証を担保できる最低の数値であり、当該許容値Daを満たす製品1であれば、良品と判断され、当該許容値Daに満たない製品1であれば、不良品として判断される良否の境界値を意味する。
窒化層深さ判定尺度Dと回折角度2θDxとの相関関係を示す線図で、窒化層深さ判定尺度Dの許容値Daに対応する回折角度2θDxの値が、前述した第1回折角度閾値Dc1となる。この線図では、サンプリングした製品1の測定部位Pにおける回折角度2θDxの値が、第1回折角度閾値Dc1以下であれば、この測定部位Pを含む窒化層2の深さが許容値Daを満たすため、サンプリングした製品1は、良品のエリアOK(図6では、ドット表示が粗いエリア)に属し、良品のエリアOKに属する製品1は、全て良品とみなされる。その反対に、回折角度2θDxの値が、第1回折角度閾値Dc1未満であれば、測定部位Pを含む窒化層2の深さが許容値Daを満たさないため、サンプリングした製品1は不良品のエリアNG(図6では、ドット表示が細かいエリア)に属し、不良品のエリアNGに属する製品1は、全て不良品とみなされる。
次に、製品疲労試験実施工程15を行う。製品疲労試験実施工程15は、事前工程において、サンプリングした疲労試験後の製品1のS−N線図に基づくサイクル数と、X線の回折角度2θCxの値との相関関係を把握するため、サンプリングした製品1に、疲労試験を実施する。具体的には、疲労試験は、その試験種として、例えば、引張り、圧縮、曲げ、捻り等の負荷を繰り返しかける試験であり、このような疲労試験後の製品1のS−N線図は、これらの試験種毎に作成する。なお、疲労試験は、製品断面観察工程13で用いるサンプリングした製品1を対象に、製品断面観察工程13を行う前に予め実施しても良い。あるいは、疲労試験は、サンプリングした全ての製品1の中で、製品断面観察工程13を行う製品1と、行わない製品1とを区別して、製品断面観察工程13を行わない製品1を対象に実施されても良い。
次に、第2回折角度閾値設定工程16を行う。第2回折角度閾値設定工程16では、製品疲労試験実施工程15において、疲労試験後の製品1のS−N線図に基づくサイクル数であるサイクル数判定尺度Cと、測定部位Pから得られたX線の回折角度2θCxとの相関関係が、図7に示すように、回折角度2θCxを横軸、サイクル数判定尺度Cを縦軸とするグラフに表示される。
ここで、X線回折法による回折角度2θDxの値と疲労試験後の製品1のS−N線図に基づくサイクル数との相関関係について、説明する。本出願人はこれまで、前述したように、事前工程のうち、製品サンプリング工程11、X線回折角度2θ値取得工程12、製品断面観察工程13、及び第1回折角度閾値設定工程14に対応する数々の実験とは別に、事前工程のうち、製品サンプリング工程11、X線回折角度2θ値取得工程12、製品疲労試験実施工程15、及び第2回折角度閾値設定工程16に対応する数々の実験を行ってきた。製品1の対象は、前述した無段変速機向けのCVTリングで、厚さt、窒化処理を母材に施した窒化層2の深さを十数〜数十μm等のCVTリング1つである。そして、本出願人は、疲労試験後の製品1のS−N線図に基づくサイクル数と、X線の回折角度2θの値とについて、相関関係があることを把握した。
すなわち、製品1が、例示するCVTリングの場合、本出願人は、浸炭焼入れ層等とは異なる窒化層2固有の内部組織に着眼し、X線回折法により、数十μmの深さで形成された窒化層2に照射し、回折したX線の回折角度2θの値を調べてみると、図4に示すように、回折角度2θのMx値が小さい程、疲労試験後の製品1にかかる応力が大きく、S−N線図に照合するとその応力に対応するサイクル数は小さくなる傾向を確認した。その一方で、回折角度2θのMx値が大きくなるにつれて、疲労試験後の製品1にかかる応力が小さく、S−N線図に照合するとその応力に対応するサイクル数は増加する傾向を確認した。つまり、例示するCVTリングのように、鋼材に窒化処理を施した製品1の場合には、X線回折法によるX線の照射・回折する測定部位Pを含む窒化層2を有した製品1のS−N線図に基づくサイクル数と、X線の回折角度2θの値Mx(回折角度2θMxの値)値との間に、相関関係があることが確認された。
そこで、製品疲労試験実施工程15では、サンプリングした疲労試験後の製品1全てについて、1つの製品1で複数の測定部位Pで取得した回折角度2θCxと、これらの測定部位Pにそれぞれ対応する位置の窒化層2において、疲労試験でかかった負荷のサイクル数(サイクル数判定尺度C)とが、図7に示すグラフにプロットされ、所定の演算手法により線図として処理される。なお、図7に示す線図は、一例として直線で処理されたものであるが、曲線で処理されることあり、疲労試験後の製品1のサイクル数判定尺度Cと、X線回折法によるX線の回折角度2θCxの値との相関関係を示す線図は、本実施形態の図7に限定されるものではない。
製品1の耐久性(疲労強度)の指針となるサイクル数判定尺度Cは、品質管理上、保証できる耐久性を確保した品質規定サイクルを満たすことが必須要件となる。そのため、サイクル数判定尺度Cの許容値Caが、このような品質規定サイクルを満たすことを前提に設定される。この許容値Caは、製品1の品質保証を担保できる最低の数値であり、当該許容値Caを満たす製品1であれば、良品と判断され、当該許容値Caに満たない製品1であれば、不良品として判断される良否の境界値を意味する。
サイクル数判定尺度Cと回折角度2θCxとの相関関係を示す線図で、サイクル数判定尺度Cの許容値Caに対応する回折角度2θCxの値が、前述した第2回折角度閾値Dc2となる。この線図では、サンプリングした製品1の測定部位Pにおける回折角度2θCxの値が、第2回折角度閾値Dc2以下であれば、この測定部位Pでサイクル数判定尺度Cが許容値Caを満たすため、サンプリングした製品1は、良品のエリアOK(図7では、ドット表示が粗いエリア)に属し、良品のエリアOKに属する製品1は、全て良品とみなされる。その反対に、回折角度2θCxの値が、第2回折角度閾値Dc2未満であれば、測定部位Pでサイクル数判定尺度Cが許容値Caを満たさないため、サンプリングした製品1は不良品のエリアNG(図7では、ドット表示が細かいエリア)に属し、不良品のエリアNGに属する製品1は、全て不良品とみなされる。
次に、複合要因回折角度閾値決定工程17を行う。図9は、X線回折装置により製品の表層状態の分析結果を例示して示すグラフであり、製品の表層状態を、回折角度2θの値と、窒化層の深さとサイクル数とを一元化して処理した表層状態複合判定尺度との関係により、表層状態を判定したグラフである。
複合要因回折角度閾値決定工程17はまず、第1回折角度閾値設定工程14で用いた窒化層深さ判定尺度Dと、第2回折角度閾値設定工程16で用いたサイクル数判定尺度Cとを、所定の処理方法で一元化した表層状態複合判定尺度Mを得る。また、回折角度2θDxと回折角度2θCxとの区別を解除し、それぞれの回折角度2θの表記を、共通化した回折角度2θMxに統一して置換する。そして、表層状態複合判定尺度Mと回折角度2θMxとの相関関係が、図9に示すように、回折角度2θMxを横軸、表層状態複合判定尺度Mを縦軸とするグラフに表示される。
すなわち、回折角度2θMxの横軸座標値は、製品断面観察工程13で、サンプリングした全ての製品1の測定部位Pで取得した回折角度2θDxの第1測定値と、製品疲労試験実施工程15で、サンプリングした全ての製品1の測定部位Pで取得した回折角度2θCxの第2測定値を、座標値として用いている。また、表層状態複合判定尺度Mの縦軸座標値は、製品断面観察工程13で、サンプリングした全ての製品1の窒化層深さ判定尺度D(窒化層2の深さ)を、表層状態複合判定尺度Mに換算した第1換算値と、製品疲労試験実施工程15で、サンプリングした全ての製品1のサイクル数判定尺度Cを、表層状態複合判定尺度Mに換算した第2換算値を、座標値として用いている。
そして、製品断面観察工程13及び製品疲労試験実施工程15において、横軸座標値として、上記第1測定値と上記第2測定値とが、縦軸座標値として、上記第1換算値と上記第2換算値とが、図9に示すグラフにそれぞれプロットされ、所定の演算手法により線図として処理される。具体的には、製品断面観察工程13と製品疲労試験実施工程15とから得られた表層状態複合判定尺度Mの縦軸座標値と、回折角度2θMxの横軸座標値とのプロット点が、図9に示すように、例示するm1、m2、m3、m4、m5、m6、m7、m8、m9の分布で得られたなら、これらのm1〜m9に基づき、例えば、最小二乗法等、所定の演算手法により、線図として処理される。
この図9に示す線図を、サンプリングの製品1(m1〜m9となる製品1)を用いて説明すると、プロット点m1、m2、m3、m5等は、回折角度2θMxの値が比較的小さく、品質管理上、保証できる硬度を確保した品質規定深さを満たす窒化層2の深さと、保証できる耐久性を確保した残留応力の大きさであることから、表層状態が「良」で、良品であるとみなすことができる。その反対に、プロット点m7、m8、m9、m10、m11等は、回折角度2θMxの値が比較的大きく、品質管理上、保証できる硬度を確保した品質規定深さを満たさない窒化層2の深さか、または保証できる耐久性を確保できない残留応力の大きさであることから、表層状態が「否」で、不良品であるとみなすことができる。あるいは、品質規定深さと、耐久性の双方で、品質管理上、保証できないものであることから、表層状態に問題があり、不良品であるとみなすことができる。また、プロット点m4、m6については、判断が微妙であり、後述する図1に示す表層状態複合判定尺度Mの許容値Maと回折角度2θMxの複合要因回折角度閾値Mcとを対比して、許容値Maを満たしていれば表層状態が「良」で、良品であるとみなされ、許容値Maを満たしていなければ表層状態が「否」で、不良品であるとみなされる。
なお、図9に示す線図は、一例として直線で処理されたものに過ぎず、曲線で処理されることあり、回折角度2θMxと表層状態複合判定尺度Mとの相関関係を示す線図は、本実施形態の図9に限定されるものではない。図1は、実施形態に係る製品の品質検査方法により、製品の表層状態の品質良否を判定する選別基準を示すグラフである。
次いで、図9に示す線図を基に、図1に示すように、許容値Maが表層状態複合判定尺度Mに設定される。許容値Maは、窒化層2の深さと疲労試験後の製品1の疲労強度(耐久性)等の観点を勘案し、窒化層深さ判定尺度Dの許容値Daとサイクル数判定尺度Cの許容値Ca等とを何れも満たして、製品1の品質保証を担保できる最低の数値である。許容値Maを満たす製品1であれば、良品と判断され、許容値Maに満たない製品1であれば、不良品として判断される良否の境界値を意味する。
回折角度2θMxと表層状態複合判定尺度Mとの相関関係を示す線図で、表層状態複合判定尺度Mの許容値Maに対応する回折角度2θMxの値が、前述した複合要因回折角度閾値Mcとなる。すなわち、図1に示す線図で、サンプリングした製品1の測定部位Pにおける回折角度2θMxの値が、複合要因回折角度閾値Mc以下であれば、この測定部位Pで表層状態複合判定尺度Mが許容値Maを満たすため、サンプリングした製品1は、良品のエリアOK(図1では、ドット表示が粗いエリア)に属すとみなされる。その反対に、回折角度2θMxの値が、複合要因回折角度閾値Mcを超えれば、測定部位Pで表層状態複合判定尺度Mが許容値Maを満たさないため、サンプリングした製品1は不良品のエリアNG(図1では、ドット表示が細かいエリア)に属すとみなされる。
ここまで説明したように、サンプリングした製品1を用いて、図1に示すように、回折角度2θMxと表層状態複合判定尺度Mとの相関関係を把握しておいた上で、第1工程と第2工程が実施される。前述したように、第1工程は、生産ラインで実際に製造されている製品1の中で、被測定対象物として、窒化層2の表層状態の良否の品質検査を行う製品1に対し、判定したい窒化層2の測定部位Pにおいて、X線回折法により、複数ある回折角度2θ値のうち、メインピークPkとなる測定値Mrを選択し取得する。そして、第2工程では、第1工程で得られた回折角度2θの測定値Mrと複合要因回折角度閾値Mcとの大小関係を演算し、表層状態複合判定尺度Mの許容値Maを満たしているか否かを判別することにより、被測定対象物である製品1の表層状態の良否が判断される。
すなわち、被測定対象物である製品1で、回折角度2θMxの測定値Mrが複合要因回折角度閾値Mc以下になっていれば、表層状態複合判定尺度Mの許容値Maを満たすため、窒化層2の表層状態は「良」と判断される。その反対に、回折角度2θMxの測定値Mrが複合要因回折角度閾値Mcを超えていれば、表層状態複合判定尺度Mの許容値Maを満たさないため、窒化層2の表層状態は「否」と判断される。かくして、本実施形態に係る製品の品質検査方法により、被測定対象物である製品1の表層状態の良否が判断される。
前述した構成を有する本実施形態に係る製品の品質検査方法の作用・効果について説明する。
(1)本実施形態では、X線回折法により、鋼材3に窒化処理を施した製品1の表層状態を品質検査する製品1の品質検査方法において、サンプリングした製品1に対し、表面1aからの窒化層2の深さと、X線回折法によるX線の回折角度2θDxの値との相関関係を、少なくとも予め把握しておき、かつ表層状態の評価には、少なくとも窒化層2の深さを含む窒化層深さ判定尺度Dが用いられ、予め規定した窒化層深さ判定尺度Dの許容値Daに対応する回折角度2θDxの値を、閾値である第1回折角度閾値Dc1として、設定する事前工程と、X線回折法により、被測定対象物である製品1に対し、窒化層2の表層状態を判定したい測定部位Pの回折角度2θの測定値Mrを取得する第1工程と、被測定対象物である製品1に対し表層状態の良否を、第1工程で得られた回折角度2θの測定値Mrと第1回折角度閾値Dc1との大小関係に基づいて、判断する第2工程を有すること、を特徴とするので、例えば、製品1を製造している生産ラインから、任意の製品1を定期的に抜き取る品質検査をインライン上で行う場合等、被測定対象物である製品1の窒化層2の表層状態が、非破壊で検査でき、表層状態の良否が、より短い検査時間で迅速に判定できる。そのため、被測定対象物である製品1の表層状態の良否を判断することが、低コストで実現できる。
すなわち、事前工程では、サンプリングした製品1として、例えば、稼動する製品1の生産ラインから、目視で確認できる外観上の製品1の傷や、窒化処理炉内で付着した異物の残渣が製品1に付着している等の外観不具合部を有し、廃棄または再資源化される予定の不具合製品1が複数用いられる。不具合製品1一つひとつには、外観不具合部以外に勿論、窒化層2において、品質規定深さを満たす深さh1で処理されている処理正常部が含まれ、品質規定深さを満たさない深さh2で処理されている処理異常部をも含んでいる蓋然性がある。このような不具合製品1において、窒化層2の表面状態を検査したい部位として、例えば、外観不具合部や、外観に不具合がなくても品質管理上、特に注意を払っておく必要がある部位等の所定部位を、好ましくは複数箇所選択しておき、この所定部位を、X線回折法によるX線の照射・回折を行う測定部位Pに設定する。そして、この測定部位Pにおいて、X線の回折角度2θDxの値を取得する。他方、この測定部位Pにおいて、不具合製品1の表面1aから窒化層2の深さを測定しておく。回折角度2θDxの値の取得と窒化層2の深さの測定は、サンプリングした製品1(不具合製品)全てについて行う。これにより、X線の回折角度2θDxの値と、窒化層深さ判定尺度Dである窒化層2の深さとの相関関係が、複数の不具合製品1の全測定部位Pを母集団とするデータベースで得られ、回折角度2θDxの第1回折角度閾値Dc1は、品質管理上、保証できる硬度を確保した品質規定深さ、すなわち窒化層深さ判定尺度Dの許容値Daに対応する回折角度2θの値として設定できる。
このような事前工程を前もって行った上で、第1工程の実施後、第2工程では、被測定対象物である製品1の窒化層2の深さは、事前工程でデータベース化されたX線の回折角度2θDxの値と窒化層深さ判定尺度Dとの相関関係に基づき、第1工程で取得したX線の回折角度2θの測定値Mrに対応する窒化層2の深さから得られる。第1工程で取得したX線の回折角度2θの測定値Mrが、第1回折角度閾値Dc1と比べ、小さい場合、被測定対象物である製品1の窒化層2の深さが品質規定深さを満たすと判断できる一方、大きい場合には、品質規定深さを満たさない等と判断できる。そのため、被測定対象物である製品1の表層状態の良否は、当該製品1を破壊することなく、第1工程でX線の回折角度2θの測定値Mrを取得した後、第2工程で、取得した回折角度2θの測定値Mrと第1回折角度閾値Dc1と大小関係を単に比較するだけで、より短い検査時間で簡単に、信頼性の高い判定を行うことができる。ひいては、第1工程及び第2工程の実施により、被測定対象物である製品1が、良品か不良品であるかを、簡単に選別できる。また、本実施形態の製品1の品質検査方法は、生産ラインから排除された不具合製品1を用いて上記データベースを取得しておき、出荷に向けた製品1を破壊せずに品質検査を行っており、製品1を製造・出荷するのに、工程数の削減と、製品の製造コストの抑制に貢献できる。
従って、本実施形態の製品1の品質検査方法によれば、窒化処理を施した製品1に、信頼性の高い品質検査を、非破壊でかつ低コストで行うことができる、という優れた効果を奏する。
(2)また、本実施形態では、(1)に記載する製品1の品質検査方法において、事前工程では、サンプリングした製品1に負荷を繰り返しかける疲労試験を行った後、疲労試験後の製品1のS−N線図に基づくサイクル数と、X線回折法によるX線の回折角度2θCxの値との相関関係を予め把握しておくこと、を特徴とするので、例えば、引張り応力、圧縮応力、曲げ応力、捻りによる応力等の応力が被測定対象物である製品1に概ねどの程度かかっているかが、事前工程において、疲労試験後の製品1のS−N線図に基づくサイクル数と、X線の回折角度2θCxの値をデータベース化した相関関係と、第1工程で取得したX線の回折角度2θの測定値Mrとを照合することにより、推察できる。これにより、被測定対象物である製品1が、その材料疲労の観点に基づいて、良品か不良品であるかを非破壊で選別することができる。
(3)また、本実施形態では、(1)または(2)に記載する製品1の品質検査方法において、事前工程では、窒化層2の深さは、X線の回折角度2θDxの値を得る測定部位Pを含む製品1の断面を画像化して、窒化層2を採寸することにより、測定されること、を特徴とするので、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)等により、窒化層2の様子を高解像度で拡大して画像化すれば、窒化層2のうち、品質管理上、保証できる硬度を確保した有効な窒化層の深さが高精度で測定できると共に、測定された窒化層2の深さは、信頼性が高い。また、これと同時に、窒化層2の断面の様子が可視化されて視覚的に観察できる。
(4)また、本実施形態では、(2)または(3)に記載する製品1の品質検査方法において、事前工程で、表層状態の評価には、窒化層2の深さとサイクル数とを一元化して処理された表層状態複合判定尺度Mが用いられ、予め規定された表層状態複合判定尺度Mの許容値Maに対応する回折角度2θMxの値が、閾値である複合要因回折角度閾値Mcとして、設定されること、第2工程では、第1工程で得られた回折角度2θの測定値Mrと複合要因回折角度閾値Mcとの大小関係を演算し、表層状態複合判定尺度Mの許容値Maを満たしているか否かを判別することにより、被測定対象物である製品1の表層状態の良否が判断されること、を特徴とするので、製品1の表層状態を良否判断するのに、窒化層2の深さと、製品1にかかる応力の概ねの大きさが評価要因となっていることから、被測定対象物である製品1が、真に良品なのか不良品なのかを、精度良く判断できる。
すなわち、例えば、窒化層2の深さが品質規定深さを満たしていても、この製品1に、残留応力が、品質管理上、保証できる許容範囲の応力値を超えてしまうこと等が生じる場合がある。この場合、窒化層2の表層状態の評価要因が窒化層2の深さのみとなっていると、表層状態の良否判定では、この製品1は良品扱いとなり、表層状態の品質検査は信頼性の低い検査となる。この事態を回避するため、別途、製品1の疲労を観点とした検査を行うとなると、工程数が増えてコスト高になってしまう。これに対し、本実施形態の製品1の品質検査方法は、窒化層2の深さと、製品1にかかる応力の概ねの大きさとの両観点で同時に、製品1の表層状態の良否を簡単に判定できるため、より短い検査時間で、信頼性のより高い判定を行うことができる。また、本実施形態の製品1の品質検査方法は、表層状態の品質検査に掛かる工程数を削減でき、第1工程でX線の回折角度2θの測定値Mrを取得した後、第2工程で、取得した回折角度2θの測定値Mrと複合要因回折角度閾値Mcと大小関係を単に比較するだけで、窒化層2の表層状態の品質検査を低コストで実現できる。
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
(1)例えば、実施形態では、製品1は、薄板状の鋼材に窒化処理を施した後、CVTの組み付け前に、リング幅を拡げリング周長を引き伸ばす周長調整工程を行っていない状態のCVTリングを例示して説明したが、本発明の製品の品質検査方法により、製品の表層状態の良否を判断する検査工程は、実施形態に限らず、次述する応用例のように、製品の製造工程のうち、表層状態の良否を判断する必要がある段階で実施されるものであれば良い。図10は、本発明に係る製品の品質検査方法の応用例を示すブロック図である。鋼材に窒化処理を施して製品をなす表面処理工程31を経て、本発明の製品の品質検査方法により、窒化層の表層状態の良否を判断する表層状態検査工程32が行われる。表面処理工程31で形成された製品が、表層状態検査工程32において、良品であることを示す「OK」と判断されれば、その製品を出荷する出荷工程33に送り出される。一方、製品が、表層状態検査工程32において、不良品であることを示す「NG」と判断されれば、その製品を廃棄または資源として再利用する廃棄・再利用工程34に送り出される。
(2)また、前述したが、事前工程において、サンプリングした製品1の表面1aからの窒化層2の深さの測定は、走査型電子顕微鏡により窒化層を採寸するほか、X線回折装置で測定しても良い。
(3)また、実施形態では、表面処理の一つである窒化処理を鋼材に施した製品1を挙げて説明したが、鋼材に施す表面処理は、実施形態の窒化処理に限定されるものではなく、例えば、浸炭焼入れ等、母材となる鋼材の表面を硬化させる処理技術も適用の対象である。
1 製品
1a 表面
2 窒化層
h1,h2 窒化層の深さ
3 鋼材
P 測定部位
Mr 第1工程で得られた回折角度2θの値
D 窒化層深さ判定尺度(表層状態判定尺度)
Da 窒化層深さ判定尺度の許容値(表層状態判定尺度の許容値)
2θDx (窒化層深さ判定の)回折角度
Dc1 第1回折角度閾値(回折角度2θの回折角度閾値)
C サイクル数判定尺度(表層状態判定尺度)
Ca サイクル数判定尺度の許容値(表層状態判定尺度の許容値)
2θCx (サイクル数判定の)回折角度
Dc2 第2回折角度閾値(回折角度2θの回折角度閾値)
M 表層状態複合判定尺度
Ma 表層状態複合判定尺度の許容値
2θMx (表層状態複合判定の)回折角度
Mc 複合要因回折角度閾値

Claims (4)

  1. X線回折法により、鋼材に表面処理を施した製品の表層状態を品質検査する製品の品質検査方法において、
    サンプリングした前記製品に対し、表面からの表面処理層の深さと、前記X線回折法によるX線の回折角度2θの値との相関関係を、少なくとも予め把握しておき、かつ
    前記表層状態の評価には、少なくとも前記表面処理層の深さを含む表層状態判定尺度が用いられ、予め規定した前記表層状態判定尺度の許容値に対応する前記回折角度2θの値を、閾値である回折角度閾値として、設定する事前工程と、
    前記X線回折法により、被測定対象物である前記製品に対し、前記表面処理層の前記表層状態を判定したい部位の前記回折角度2θの値を取得する第1工程と、
    被測定対象物である前記製品に対し前記表層状態の良否を、前記第1工程で得られた前記回折角度2θの値と前記回折角度閾値との大小関係に基づいて、判断する第2工程を有すること、
    を特徴とする製品の品質検査方法。
  2. 請求項1に記載する製品の品質検査方法において、
    前記事前工程では、サンプリングした前記製品に負荷を繰り返しかける疲労試験を行った後、疲労試験後の前記製品のS−N線図に基づくサイクル数と、前記X線回折法による前記X線の前記回折角度2θの値との相関関係を予め把握しておくこと、
    を特徴とする製品の品質検査方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載する製品の品質検査方法において、
    前記事前工程では、前記表面処理層の深さは、前記X線の前記回折角度2θの値を得る測定部位を含む前記製品の断面を画像化して、前記表面処理層を採寸することにより、測定されること、
    を特徴とする製品の品質検査方法。
  4. 請求項2または請求項3に記載する製品の品質検査方法において、
    前記事前工程で、前記表層状態の評価には、前記表面処理層の深さと、サンプリングした前記製品に負荷を繰り返しかける疲労試験を行った後、疲労試験後の前記製品のS−N線図に基づくサイクル数とを一元化して処理された表層状態複合判定尺度が用いられ、予め規定された前記表層状態複合判定尺度の許容値に対応する前記回折角度2θの値が、閾値である複合要因回折角度閾値として、設定されること、
    前記第2工程では、前記第1工程で得られた前記回折角度2θの値と前記複合要因回折角度閾値との大小関係を演算し、前記表層状態複合判定尺度の許容値を満たしているか否かを判別することにより、被測定対象物である前記製品の前記表層状態の良否が判断されること、
    を特徴とする製品の品質検査方法。
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