〔第1の実施形態〕
以下、図面を参照して開示する技術の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1には、第1の実施形態に係るインパルス無線通信装置10の一例を示す。インパルス無線通信装置10は、インパルス無線伝送装置(以下、伝送装置12という)及びインパルス無線受信装置(以下、受信装置14という)を含む。インパルス無線通信装置10は、伝送装置12と受信装置14とが一体であっても良く、また、別体であっても良い。伝送装置12は、開示の技術におけるインパルス無線伝送装置の一例として機能する。
伝送装置12は、伝送信号生成部16、電力増幅部18、及びアンテナ20を含む。受信装置14は、アンテナ22、受信増幅部24、バンドパスフィルタ(BPF26)、検波部28を含む。
伝送装置12は、伝送用のデータのデータ信号Dinが、バースバンド部等から伝送信号生成部16に入力される。伝送信号生成部16は、データ信号Dinに応じた伝送信号Dpmを出力する。この時、伝送信号生成部16は、伝送に使用する周波数(以下、伝送周波数Fとする)の伝送信号Dpmを出力する。また、伝送信号生成部16は、出力する伝送信号Dpmに、伝送周波数Fを中心周波数とし、データ信号Dinの伝送容量(伝送速度Tr)に応じた周波数帯域幅(以下、帯域幅Bとする)の周波数成分を含むパルス信号の波束30を含む。
電力増幅部18は、第1の実施形態おいて電力増幅部の一例として機能する。電力増幅部18には、例えば、固体素子増幅器(SSPA:Solid State Power Amplifier)などを用いたHPA(High Power Amplifier)が適用される。電力増幅部18は、伝送信号Dpmを伝送に必要な電力まで増幅する。伝送装置12は、電力増幅部18で電力増幅した送信信号DpをANT20から送出する。
受信装置14は、アンテナ22により受信された受信信号を受信増幅部24において増幅する。BPF26は、増幅した受信信号に含まれる伝送周波数Fの送信信号Dpから波束30を含む信号を抽出する。検波部28は、波束30を含む信号に対し、例えば包絡線検波を行う。これにより、受信装置14は、伝送装置12から送信された送信信号Dpに含まれるデータ信号Dinを復調して出力する。なお、受信装置14としては、波束30を含む送信信号Dpを受信して復調し得る一般的機能を含むものであれば良い。
インパルス無線通信装置10は、伝送周波数Fとして、マイクロ波(0.3GHz〜3GHz)、準ミリ波(3GHz〜30GHz)、ミリ波(30GHz〜300GHz)などと呼ばれる帯域の周波数が用いられる。本実施形態では、伝送周波数Fの一例として、ミリ波の帯域の周波数(例えば、60GHz)を用いて説明する。
インパルス無線通信装置10は、データ信号Dinの伝送容量(伝送速度Tr)として、例えば10Gbpsなどの任意の伝送速度Trが適用される。本実施形態では、データ信号Dinの伝送速度Trの一例として、10Gbpsに比べて小容量となる2Gbps(Tr=2Gbps)として説明する。
図2に示すように、伝送装置12の伝送信号生成部16は、直並列変換部32、低周波パルス発生部34、周波数逓倍部36、及びパルス合成部38を含む。直並列変換部32は、第1の実施形態において、直並列変換部の一例として機能し、低周波パルス発生部34は、本実施形態において、低周波波束生成部の一例として機能する。また、周波数逓倍部36は、本実施形態において、周波数逓倍部の一例として機能し、パルス合成部38は、本実施形態において、合成部の一例として機能する。
伝送装置12は、データ信号Dinとしてデータがシリアルに連続するシリアルデータが用いられ、データ信号Dinが直並列変換部32に入力される。直並列変換部32は、入力されたデータ信号Dinに対してシリアル−パラレル変換を行うことにより、n列のデータ信号(並列データ信号)を生成する。nは、2以上の整数となるようにしており、以下では、並列データ信号の列を特定しない場合、並列データ信号Dj(jは、1≦j≦n)とする。
第1の実施形態に係る低周波パルス発生部34は、各列の並列データ信号Djのデータ値に基づいて短パルスを生成し、この短パルスから周波数fcの低周波波束40を含むn列の低周波信号Dj−pを生成して出力する。
周波数逓倍部36は、n列の低周波信号Dj−pの各々に対し、周波数逓倍を行うことにより周波数fcの低周波波束40を伝送周波数Fの波束30に変換し、波束30を含む伝送信号Dj−pmを出力する。パルス合成部38は、各列の伝送信号Dj−pmを合成することにより、伝送周波数Fの伝送信号Dpmを生成する。
伝送装置12では、直並列変換部32における並列数nに基づいて周波数逓倍部36における逓倍数mを設定している。また、伝送装置12は、伝送周波数F及び逓倍数mに基づいて、低周波波束40の周波数fcを設定している。伝送装置12は、この周波数fcの低周波波束40に対して帯域制限を行う。伝送装置12は、データ信号Dinの伝送速度Trが低い場合でも、伝送周波数Fにおける比帯域幅が小さくQ値の高いBPFを用いることなく、データ信号Dinの伝送速度Trに応じた周波数帯域に制限した伝送信号Dpm(送信信号Dp)を得る。
以下に、伝送装置12を具体的に説明する。伝送装置12に設けられる直並列変換部32は、一例として、1列のデータ信号Dinを4列(n=4)の並列データ信号Djに変換する。なお、以下では、4列に変換した並列データ信号Djを個別に指す場合、第1列目(j=1)の並列データ信号Djは、並列データ信号Daと表記し、第2列目(j=2)の並列データ信号Djは、並列データ信号Dbと表記する。また、以下では、第3列目(j=3)の並列データ信号Djは、並列データ信号Dcと表記し、第4列目(j=4)の並列データ信号Djは、並列データ信号Ddと表記する。
直並列変換部32は、例えば、並列数nに応じた1サイクル分のデータ(n=4ビットのデータ)をパラレルに出力することを繰り返すことで、並列データ信号Dj(Da〜Dd)を出力する。これにより、図3に示すように、データ信号Dinが、Din=D1、D2、D3、・・・である場合、直並列変換部32から出力される並列データ信号Daは、Da=D1、D5、D9、・・・となる。また、直並列変換部32から出力される並列データ信号Dbは、Db=D2、D6、D10、・・・となり、並列データ信号Dcは、Dc=D3、D7、D11、・・・となる。さらに、並列データ信号Ddは、Dd=D4、D8、D12、・・・となる。なお、データD1、D2、・・は、個々のデータ値を示す。
直並列変換部32は、例えば、1サイクル分のデータ信号DinのデータD1、D2、D3、D4を格納すると、格納したデータを並列データ信号Da、Db、Dc、Ddとして出力する。データ信号Dinの直並列変換を行う1サイクル分の時間Tcは、並列データ信号Dj(Da〜Dd)の各々のシンボル時間Tsとなる。
並列データ信号Da〜Ddのシンボル時間Tsは、データ信号Dinのシンボル時間Tsoのn(n=4)倍となる。また、シンボル時間Tsは、並列数n及びデータ信号Dinの伝送速度Trにより定まり、シンボル時間Tsは、Ts=n/Trとなる。従って、並列数n=4、伝送速度Tr=2Gbpsである場合、シンボル時間Tsは、Ts=Tc=n/Tr=2nsecとなる。
また、直並列変換部32から出力される並列データ信号Djの伝送速度Trnは、データ信号Dinの伝送速度Trに対してTrn=Tr/nとなっている。従って、データ信号Dinの伝送速度Tr=2Gbpsである場合、並列データ信号Da、Db、Dc、Ddの各々の伝送速度Trnは、Trn=0.5Gbpsとなる。
図2に示すように、伝送信号生成部16は、並列データ信号Da〜Ddの各々に対応してn台の低周波パルス発生部34及びn台の周波数逓倍部36を含む。低周波パルス発生部34は、並列データ信号Da、Db、Dc、Ddの各々に対応する低周波パルス発生部34A、34B、34C、34Dを含む。また、周波数逓倍部36は、並列データ信号Da、Db、Dc、Ddの各々に対応する周波数逓倍部36A、36B、36C、36Dを含む。低周波パルス発生部34A〜34Dは、基本的構成が同じであり、第1の実施形態では、低周波パルス発生部34A〜34Dを区別しない場合、低周波パルス発生部34として説明する。また、周波数逓倍部36A〜36Dは、基本的構成が同じであり、第1の実施形態では、周波数逓倍部36A〜36Dを区別しない場合、周波数逓倍部36として説明する。
図4に示すように、低周波パルス発生部34は、遅延回路42、短パルス発生器44、及びバンドパスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)46を含む。直並列変換部32から出力された並列データ信号Dj(Da〜Dd)は、低周波パルス発生部34(34A〜34D)に設けた遅延回路42に入力される。遅延回路42は、第1の実施形態において、遅延部の一例として機能する。
遅延回路42は、入力された並列データ信号Djを所定のタイミングで短パルス発生器44へ出力する。短パルス発生器44は、第1の実施形態においてパルス発生器の一例として機能する。短パルス発生器44は、遅延回路42から入力された並列データ信号Djのデータ値に応じて、短パルス48を発生する。短パルス48は、第1の実施形態において複数の周波数成分を含むパルスの一例として機能する。短パルス発生器44は、例えば、入力される並列データ信号Djのデータ値が0、1のうちの1の場合に、当該データが入力されたタイミングに合わせて短パルス48を出力する。
短パルス発生器44で生成する短パルス48は、所謂インパルスと呼ばれ、半値幅の極めて小さい信号となっている。インパルス無線通信装置10は、短パルス48に基づいて生成した伝送信号Dpmを用いてデータ信号Dinの伝送を行う。
BPF46は、中心周波数fc、及び周波数帯域幅(以下、帯域幅Bwとする)が予め設定されている。BPF46は、短パルス48が入力されることにより、中心周波数fc及び帯域幅Bwに応じた周波数成分のパルスを抽出して出力する。
図5に示すように、短パルス48は、低周波数域から高周波数域の全周波数域に亘る周波数成分(スペクトル)を有する。また、短パルス48は、低周波数域から高周波数域の全周波数域に亘るスペクトルエネルギーを有する。短パルス48は、少なくともBPF46の帯域幅Bwを超える周波数成分を含むものであれば良い。また、短パルス発生器44は、並列データ信号Djのシンボル時間Tsの時間幅で短パルス48を発生する。
BPF46は、短パルス48から中心周波数fc及び帯域幅Bwに応じた周波数成分のパルスを抽出し、抽出したパルス波形の信号を低周波波束40として出力する。BPF46から出力される低周波波束40は、中心周波数fcの近傍で振幅する波形(パルス波形)の信号となる。低周波波束40に含まれるパルスは、周波数が、BPF46の中心周波数fcを中心としBPF46の通過帯域である周波数f1〜f2(f1<fc<f2、f2−f1=Bw)の範囲となる。なお、以下では、BPF46の中心周波数fcを低周波波束40の周波数fcともいう。
短パルス48は、開示の技術において、複数の周波数成分を含むパルスの一例として機能する。開示の技術において、パルスに含まれる複数の周波数成分は、波束40の周波数帯域より低い周波数域から、波束40の周波数帯域よりも高い周波数域までの範囲の周波数成分を含む。
これにより、並列データ信号Djは、データ値に応じた低周波波束40を含む低周波信号Dj-p(Da−pm、Db−pm、Dc−pm、Dd−pm)としてBPF46から出力される。図6(B)に示すように、並列データ信号Daは、データ信号DinのデータD1、D5、D9、・・・に基づいて生成された信号D1−p、D5−p、D9−p、・・・を含む低周波信号Da−pに変換される。並列データ信号Dbは、データ信号DinのデータD2、D6、・・・に基づいて生成された信号D2−p、D6−p、・・・を含む低周波信号Da−pに変換される。また、並列データ信号Dcは、データ信号DinのデータD3、D7、・・・に基づいて生成された信号D3−p、D7−p、・・・を含む低周波信号Dc−pに変換される。さらに、並列データ信号Ddは、データ信号DinのデータD4、D8、・・・に基づいて生成された信号D4−p、D8−p、・・・を含む低周波信号Dc−pに変換される。なお、データD5、D8は、データ値が0であることで、インパルス46が出力されないため、図6(B)では、信号D5−p、D8−pの位置を二点鎖線で示している。
図3に示すように、並列データ信号Da〜Ddは、直並列変換部32から並行して出力される。図4に示す遅延回路42は、入力された並列データ信号Djを、所定の遅延時間τjだけずらしたタイミングで短パルス発生器44へ出力する。低周波パルス発生部34A〜34Dの間では、遅延回路42に設定されている遅延時間τjが異なっている。なお、以下では、並列データ信号Da、Db、Dc、Ddの各々に対する遅延回路42を、遅延回路42A、42B、42C、42Dとして説明する。また、以下では、遅延回路42Aの遅延時間τj(j=1)を遅延時間τa、遅延回路42Bの遅延時間τj(j=2)を遅延時間τbとして説明する。さらに、以下では、遅延回路42Cの遅延時間τj(j=3)を遅延時間τc、及び遅延回路42Dの遅延時間τj(j=4)を遅延時間τdとして説明する。
図6(A)に示すように、第1列目の並列データ信号Daは、遅延回路42Aに入力された時間に対して遅延時間τaだけ遅れて短パルス発生器44へ出力される。これに対して、第2列目の並列データ信号Dbは、並列データ信号Daに対して、時間τsだけ遅れて短パルス発生器44へ出力されるように遅延時間τbが設定されている。また、第3列目の並列データ信号Dcは、並列データ信号Dbに対して、時間τsだけ遅れて短パルス発生器44へ出力されるように遅延時間τcが設定されている。さらに、第4列目の並列データ信号Ddは、並列データ信号Dcに対して、時間τsだけ遅れて短パルス発生器44へ出力されるように遅延時間τdが設定されている。
これにより、図6(B)に示すように、低周波信号Db−pは、低周波信号Da−pに対して、時間τsだけ遅れてBPF46から出力される。また、低周波信号Dc−pは、低周波信号Db−pに対して、時間τsだけ遅れてBPF46から出力され、低周波信号Dd−pは、低周波信号Dc−pに対して、時間τsだけ遅れてBPF46から出力される。すなわち、遅延回路42A〜42Dの遅延時間τa〜τdは、並列データ信号Da、Db、Dc、Ddの間で、時間τsずつ順にずれが生じるように設定されている。
時間τsは、データ信号Dinのシンボル時間Tsoに基づいて設定され、伝送信号Dpmのシンボル時間となる。また、時間τsは、並列データ信号Djの並列数n、伝送速度Trn、及び並列データ信号Djのシンボル時間Tsに基づいて設定される。時間τsは、並列データ信号Djの並列数n及びシンボル時間Tsから、τs=Ts/n=1/(n・Trn)として設定される。すなわち、並列データ信号Djの遅延時間τj(1≦j≦n)は、τj=(j−1)・Ts/nに設定される。
また、並列データ信号Djのシンボル時間Tsを、低周波信号Dj−pの1サイクルとすると、遅延時間τjは、並列データ信号Da〜Ddの位相として表すことができる。この場合、並列データ信号Da〜Ddの間には、2π/nの位相差Δθを設けるように並列データ信号Da〜Ddの位相を設定する。これにより、並列データ信号Daの位相θa=0に対して、並列データ信号Dbの位相θb=π/2、並列データ信号Dcの位相θc=π、並列データ信号Ddの位相θd=3・π/2となる。すなわち、並列データ信号Djの位相θjは、θj=(j−1)・2π/nに設定されれば良い。
図2及び図4に示すように、低周波パルス発生部34(34A〜34D)で生成された低周波信号Dj−p(Da−p〜Dd−p)は、周波数逓倍部36(36A〜36D)に入力される。周波数逓倍部36における逓倍数mは、低周波波束40の周波数fcを、伝送周波数Fとするように設定されている。すなわち、伝送装置12の伝送信号生成部16は、伝送周波数F及び直並列変換部32における並列数nから、周波数逓倍部36における逓倍数mが設定されている。また、周波数逓倍部36は、並列数n=4から、逓倍数mが、m=n2=16として設定される。開示の技術においては、逓倍数mを、データ信号Dinを直並列変換する際の並列数n(nは、2以上の整数)に基づいて設定することを含む。また、開示の技術においては、逓倍数mを、m=n2として設定することを含む。
図4に示すように、周波数逓倍部36は、逓倍器50及び逓倍器52を含む。前段の逓倍器50は、BPF46を通過した低周波波束40の周波数fcを4逓倍して、周波数fc4(fc4=fc×4)の信号を出力する。また、後段の逓倍器52は、逓倍器50から出力する周波数fc4の信号を4逓倍する。これにより、周波数逓倍部36は、低周波波束40の周波数fcを16(4×4)逓倍して、伝送周波数Fの波束30を生成して出力する。
逓倍器50は、逓倍回路50A、BPF50Bを含み、逓倍器52は、逓倍回路52A、BPF50Bを含む。逓倍回路50Aは、低周波波束40の周波数fcに対して高次数の周波数の信号を出力し、BPF50Bは、各次数の周波数の信号から4次の周波数fc4の信号を抽出して出力する一般的機能を備える。逓倍回路52Aは、周波数fc4に対して高次数の周波数の信号を出力し、BPF52Bは、各次数の周波数の信号から4次の周波数fc16(fc16=fc4×4=fc×16)の信号を抽出して出力する一般的機能を備える。
本実施形態では、一例として逓倍器50、52の各々で4逓倍して周波数Fの波束30を生成する周波数逓倍部36を設けているが、周波数逓倍部36の逓倍器の数及び各逓倍器の次数はこれに限るものではない。例えば、周波数逓倍部36は、一つの逓倍器によって16逓倍するものであっても良く、また、2つの逓倍器によって2逓倍ずつ行った後、一つの逓倍器により4逓倍するものであっても良い。さらに、周波数逓倍部36は、4つの逓倍器をシリアルに接続し、各々の逓倍器で2逓倍ずつ周波数逓倍を行うものであっても良い。
並列数nは、2以上の整数であり、並列数nが素数である場合、周波数逓倍部36は、2台のn逓倍器を用いて形成することができる。また、並列数nが非素数である場合、n=p1・k1・p2・k2・…・pq・kq(ただし、p1、p2、…pqは素数、k1、k2・…・kqは正の整数)に素因数分解できる。従って、周波数逓倍部36は、並列数nが非素数である場合、pi逓倍器をki×2(ただしi=1〜q)段ずつ直列接続して形成することができる。
図2に示すように、パルス合成部38には、周波数逓倍部36Aが出力する伝送信号Da−pm、及び周波数逓倍部36Bが出力する伝送信号Db−pmが入力される。また、パルス合成部38には、周波数逓倍部36Cが出力する伝送信号Dc−pm、及び周波数逓倍部36Dが出力する伝送信号Dd−pmが入力される。パルス合成部38は、伝送信号Da−pm、Db−pm、Dc−pm、Dd−pmが入力されることにより、例えば一般的電流合成により伝送信号Da−pm、Db−pm、Dc−pm、Dd−pmを合成した伝送信号Dpmを出力する。これにより、伝送装置12は、データ信号Dinに基づいて伝送信号Dpmが生成され、生成された伝送信号Dpmを電力増幅した送信信号Dpがアンテナ20から送出される。
ところで、BPF46を通過した低周波波束40は、ガウシアンパルスとなっている。図7には、時間に対するガウシアンパルスの波形(時間波形)を示している。低周波波束40の時間軸上の幅(以下、パルス幅Twとする)は、BPF46の帯域幅Bwに応じて定まる。ガウシアンパルスの波形は、パルス幅Twに対応する時間内で変化する。また、パルス幅Twは、BPF46の帯域幅Bwの変化に反比例して変化する(Bf∝1/Tw)。なお、図7では、パルス幅Twに対応する時間幅を示しており、時間幅は、周波数上の低周波波束40の半値幅に対応する。
短パルス発生器44は、並列データ信号Djのシンボル時間Ts内で短パルス48を発生する。伝送速度Trnが0.5Gbpsであると、BPF46を通過した低周波波束40のパルス幅Twは、Tw=Ts=2nsecとなる。
本実施形態では、伝送周波数F及び並列数nに基づいて、BPF46の中心周波数fcを設定している。伝送周波数Fに対して、BPF46の中心周波数fcを、fc=F/n2としている。これにより、伝送周波数F=60GHz、並列数n=4から、中心周波数fc=3.75GHzとなっている。また、BPF46の帯域幅Bwは、中心周波数fc=3.75GHz、伝送速度Trn=0.5Gbpsから、Bw=0.5GHz(f1=3.50GHz、f2=4.0GHz)となっている。
一般に、ガウシアンパルス(hG(t))は、帯域幅Bo、中心の周波数foとすると(1)式で表される。なお、tは時間、AGはピーク振幅、kは予め設定される係数としている。
逓倍の際に非線形項のうち2乗特性を利用する場合、例えば、2逓倍されたガウシアンパルス(h2G(t))は、(2)式で表される。なお、(2)式においてA2Gはピーク振幅を示す。
また、帯域幅Boとガウシアンパルスのパルス幅Twとは、反比例関係にあり(Bo∝1/Tw)、ガウシアンパルスの周波数foを2逓倍(2倍)した場合、帯域幅Boは(√2)倍となり、パルス幅Twは、1/(√2)となる。また、図7に示すように、ガウシアンパルスは、周波数foが4逓倍されると、帯域幅Boが2倍となり、これに伴い、パルス幅Twが1/2となる。なお、(√2)は、2の平方根を示す。
また、例えば、n=3の場合などにおいては3逓倍を含むが、3逓倍の場合、逓倍器の非線形特性のうちの3乗特性が利用される。これにより、ガウシアンパルスの周波数foを3逓倍(3倍)した場合、帯域幅Boは、(√3)倍となり、パルス幅Twは、1/(√3)となり、3逓倍器を2段通過することで、帯域幅Boは3倍となり、パルス幅Twは、1/3となる。
すなわち、ガウシアンパルスは、周波数逓倍した後も形状が保持されるが、パルス幅Twの圧縮が生じ、周波数逓倍後の波形が、周波数逓倍前の波形に対してパルス幅Twを狭めた形状となる。
ここから、低周波波束40をm逓倍した場合(mは、2以上の整数)、帯域幅Bw、周波数fcの低周波波束40に対応するガウシアンパルス(hmG(t))は、(3)式で示すことができる。なお、(3)式において、AmGはピーク振幅を示す。
従って、低周波波束40は、m逓倍されることにより、パルス幅Twが1/(√m)倍に減少し、帯域幅Bwが(√m)倍となる。例えば、低周波波束40の周波数fcを4逓倍した場合、パルス幅Twが1/2となり、帯域幅Bwが2倍となる。また、低周波波束40は、周波数fcが16逓倍(4逓倍×4逓倍)されることにより、パルス幅Twが1/4となり、帯域幅Bwが4倍となる。
開示の技術においては、短パルス(インパルス)をm逓倍することにより、帯域幅Bを(√m)倍に広げ、パルス幅Twを1/(√m)倍に減少させることを含む。
図8(A)及び図8(B)に示すように、低周波信号Da−pは、周波数逓倍部36Aにより、データD1、D5、D9、・・・に基づく波束30を含む伝送信号Da−pmに変換される。低周波信号Db−pは、周波数逓倍部36Bにより、データD2、D6、・・・に基づく波束30を含む伝送信号Db−pmに変換される。また、低周波信号Dc−pは、周波数逓倍部36Cにより、データD3、D7、・・・に基づく波束30を含む伝送信号Dc−pmに変換される。さらに、低周波信号Dd−pは、周波数逓倍部36Dにより、データD4、D8、・・・に基づく波束30を含む伝送信号Dd−pmに変換される。
また、図6(B)に示すように、低周波信号Da−p〜Dd−pの間には、時間τsの時間差が設けられている。これにより、図8(B)に示すように、低周波信号Da−p〜Dd−pを周波数逓倍した伝送信号Da−pm〜Dd−pmの間にも、時間τsの時間差が生じている。従って、図8(C)に示すように、伝送信号Dpmは、伝送信号Da−pm〜Dd−pmが、時間τsずつずれて合成される。
伝送信号Dpmのシンボル時間Tsoは、時間τsとなっている。時間τsは、データ信号Dinのシンボル時間tsに対応しており、伝送信号Dpmでは、シンボル時間Tso=1/Tr=0.5nsecとなる。
低周波波束40を16逓倍することにより得られる波束30は、周波数fcを16倍した伝送周波数Fとなり、帯域幅Bが低周波波束40の帯域幅Bwの4倍(B=4・Bw)となっている。低周波波束40の帯域幅BwがBw=0.5GHzであることから、波束30の帯域幅Bは、B=4・Bw=2.0(GHz)となっている。
また、低周波波束40は、16逓倍されることによりパルス幅Tw(波束30のパルス幅)が、Tw=0.5nsecとなる。低周波波束40を16逓倍した場合のパルス幅Twは、データ信号Dinのシンボル時間Tsoに応じた時間となる。
従って、伝送信号Da−pm〜Dd−pmを合成した伝送信号Dpmでは、隣接する波束30に重なりが生じることがなく、遅延時間τa〜τdにより、データの順序が変化することもない。また、伝送信号Dpmの帯域幅Bは、2.0GHzとなる。
ここで、伝送速度Tr=2Gbpsのデータ信号Dinを、伝送周波数Fで伝送する場合、伝送信号Dpmの帯域幅Bを2GHzとする必要がある。伝送周波数F=60GHzにおいて、帯域幅B=2GHzのBPFは、比帯域幅Brを、Br=3.3%とする必要がある。
このような比帯域幅BrのBPFは、Q値を高くする必要があり、低コスト化を図ることは困難となる。また、ミリ波の周波数帯におけるBPFとしては、導波管があるが、導波管を用いることは伝送装置12の小型化の妨げとなる。
これに対して、伝送装置12は、伝送周波数Fより低い周波数fcにおいて、BPF46を用いている。このBPF46は、周波数fc=3.75GB、帯域幅Bw=0.5GHzであることから、比帯域幅BrnがBrn=13.3%となる。すなわち、伝送装置12に用いるBPF46は、比帯域幅Brの4倍の比帯域幅Brnを有するものであれば良く、中心周波数fcが伝送周波数Fよりも低いことから、容易にかつ低コストで製造することができる。
また、伝送装置12は、データ信号Dinに対して直並列変換を行って生成した並列データ信号Djの各々に対して、周波数fcの低周波波束40を周波数逓倍した後に合成して伝送信号Dpを生成している。これにより、伝送周波数Fの伝送信号Dpは、データ信号Dinの伝送速度Trが保持され、かつ、帯域幅Bが、伝送速度Trに応じた2.0GHzとなっている。
従って、伝送装置12は、伝送周波数Fの信号に対してBPFを用いたのと同等の帯域幅が確保されている。また、伝送装置12は、伝送周波数Fの信号に対して帯域制限を加えるBPFを設ける必要がないため、装置の低コスト化、小型化が可能となり、また、製造の容易性が得られる。
ミリ波などの周波数帯の信号処理回路が形成される半導体集積回路には、モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC:monolithic microwave integrated circuit)がある。モノリシックマイクロ波集積回路には、各機能素子を半導体基板上に配置したマイクロ波集積回路(MIC:microwave integrated circuit)がある。また、モノリシックマイクロ波集積回路には、アルミナなどの誘電体基板を用いた混成マイクロ波集積回路(HMIC:hybrid microwave integrated circuit)がある。伝送装置12は、導波管等を用いる必要がなくなるため、モノリシックマイクロ波集積回路などの半導体集積回路を用いて形成することができる。
例えば、微細CMOS技術には、130nmCMOSプロセスなどの安価で製造性の高い技術がある。伝送装置12は、2Gbpsのデータ信号Dinに対して0.5GHzの並列データ信号Djを生成する。2Gbpsのデータ信号Dinから0.5GHzの並列データ信号Djを生成する直並列変換には、130nmCMOSプロセスを用いたデコーダ回路などを適用することできる。従って、伝送装置12は、130nmCMOSという安価で製造性の高い技術を用いて形成することが可能となる。
また、伝送装置12は、周波数逓倍を行うことで、半値幅の広い短パルス48を用いることができる。例えば、周波数逓倍を行わずに60GHzの波束30を形成するためには、短パルス48に60GHzの周波数成分を含む必要がある。60GHzの周波数成分を含むためには、短パルス48として、パルス幅Tw(半値幅)が16.7psec(=1/60GHz)の超短パルスを発生させる必要がある。
これに対して、伝送装置12は、短パルス48により周波数fc=F/m(例えば、fc=3.75GHz)の低周波波束40を生成すれば良い。このために、伝送装置12は、パルス幅Tw(半値幅)として100psecが得られる短パルス48を発生すれば良い。
従って、伝送装置12は、超短パルスを必要とするミリ波の周波数帯の伝送信号を用いる場合でも、短パルス48を発生させるデバイスとして、超短パルスを発生するデバイスよりも製造性に有利なデバイスを使用することができる。伝送装置12は、短パルスを発生する回路においても、製造の容易化、製造コストの低減を図ることができる。
第1の実施形態では、遅延部として、短パルス発生器44の前段に遅延回路42を設け、直並列変換されたn個の並列データ信号Djの間に時間τsの時間差を生じるようにしたが、遅延回路42の位置はこれに限るものではない。遅延回路42は、少なくともパルス合成部38に入力される伝送信号Dj−pmに、データ信号Dinのシンボル時間Tsoに対応する時間τsの時間差を生じさせるものであれば良い。ここから、遅延回路42は、短パルス発生器44とBPF46との間に設けても良く、また、BPF46と周波数逓倍部36との間に設けても良い。さらに、遅延回路42は、周波数逓倍部36の出力側に設けても良い。
〔第2の実施形態〕
次に第2の実施形態を説明する。なお、第2の実施形態の基本的構成は、第1の実施形態と同じであり、第2の実施形態において第1の実施形態と同等の機能部品については、同一の符号を付与してその説明を省略する。
図9には、第2の実施形態に係る伝送装置60を示す。伝送装置60は、伝送装置12に替えてインパルス無線通信装置10に用いられる。伝送装置60は、伝送装置12の伝送信号生成部16に替えて伝送信号生成部16Aが設けられている。
伝送信号生成部16Aは、直並列変換部32、周波数逓倍部36(36A、36B、36C、36D)、及びパルス合成部38を含む。また、伝送信号生成部16Aは、低周波パルス発生部34に替えて、低周波パルス発生部62を含む。低周波パルス発生部62は、並列データ信号Da、Db、Dc、Ddに各々に対応する波束発生部64(波束発生部64A、64B、64C、64D)を含む。波束発生部64は、第2の実施形態において波形生成部の一例として機能する。波束発生部64A〜64Dの各々は、並列データ信号Da〜Ddに基づき、低周波波束40を含む低周波信号Da−p〜Dd−pを生成して出力する。なお、波束発生部64A〜64Dは、基本的機能は同じであり、以下では、特に区別しない場合、並列データ信号Djに対応する波束発生部64として説明する。
低周波パルス発生部62は、データメモリ66及び周波数シンセサイザ68を含む。データメモリ66は、第2の実施形態において記憶部の一例として機能する。データメモリ66は、ROM(read only memory)などの不揮発性メモリが用いられ、予め設定された波形データWdataが記憶される。データメモリ66に格納された波形データWdataは、波束発生部64(64A〜64D)の各々に読み出される。
周波数シンセサイザ68は、例えば、PLL(phase-locked−loop)方式などを用いて予め設定された周波数fcの信号(デジタル信号)を発生する。周波数シンセサイザ68が発生した周波数fcの信号は、波束発生部64A〜64Dの各々に入力される。周波数シンセサイザ68は、第2の実施形態において、発振部の一例として機能する。なお、発振部は、PLL方式を用いた周波数シンセサイザ68に限らず、予め設定した周波数fcのデジタル信号を発生し得る機能を有するものであればよい。
伝送装置60では、直並列変換部32が、データ信号Dinをn列(n=4)の並列データ信号Dj(Da〜Dd)に直並列変換する。また、伝送装置60は、周波数逓倍部36において、低周波信号Dj−pをm逓倍(m=16)して伝送周波数F(F=60GHz)を発生する。ここから、伝送装置60は、周波数シンセサイザ68の周波数fcを、fc=F/m=3.75GHzとしている。
図10に示すように、波束発生部64は、コントローラ70、DDS(direct digital synthesis)72、及びLPF(Low‐pass filter)74を含む。また、DDS72は、位相アキュムレータ76、データ読出部78、DAC(digital‐to‐analog converter)80を含む。
伝送装置60は、データメモリ66に低周波波束40の波形データWdataが格納されている。低周波波束40の波形データWdataは、例えば、第1の実施形態において、短パルス発生器44で発生させた短パルス48がBPF46を通過することにより得られる低周波波束40における各位相(時間)に対するデータ値が用いられる。DDS72は、波形データWdataに基づいた波形の信号を発生して出力する機能を備える。波束発生部64は、DDS72を用いることで周波数fcの低周波波束40を生成する。
DDS72は、データメモリ66を例えばルックアップテーブルとして用い、データメモリ66に格納されている波形データWdataのデータ値を順に読み出して出力する。なお、波束発生部64は、DDS72のデータ読出部78に替えてデータメモリ66を用いても良い。
位相アキュムレータ72は、例えば、データメモリ66に格納されている波形の位相を順に指定し、対応する位相のデータ値をデータ読出部78で読み出してDAC80へ出力させる。DAC80は、データ読出部78から出力されるデータ値に対して順にD−A変換を行うことにより波形データWdataのデータ値に応じたアナログ信号を生成して出力する。LPF74は、DAC80から出力されるアナログ信号の波形から高調波成分を除去することで波形整形を行う。
コントローラ70には、直並列変換部32から出力される並列データ信号Dj、及び周波数シンセサイザ68から出力される周波数fcの信号が入力される。コントローラ70は、並列データ信号Djのデータ値及び周波数fcに基づき、位相アキュムレータ76を制御する。このとき、コントローラ70は、並列データ信号Djのデータ値が1となるときに低周波波束40を発生させる。また、コントローラ70は、低周波波束40の周波数(中心周波数)が周波数fcとなるように位相アキュムレータ76によるデータの位相変化を制御する。さらに、コントローラ70は、低周波波束40のパルス幅Twに対応する時間が、並列データ信号Djのシンボル時間Tsとなるように位相アキュムレータ76によるデータの位相変化を制御する。
これにより、波束発生部64は、周波数fc、パルス幅Twの低周波波束40を含み、並列データ信号Djに応じた伝送信号Dj―Pmを、並列データ信号Djの伝送速度Trnで出力する。
また、コントローラ70は、第2の実施形態において、遅延部の一例として機能する。コントローラ70は、低周波信号Da−p〜Dd−pに対して設定された遅延時間τa〜τdに基づいて、低周波信号Da−p〜Dd−pの出力タイミングを制御する。すなわち、波形発生部64Bのコントローラ70は、波束発生部64Aから出力する低周波信号Da−pに対して、波束発生部64Bから出力する低周波信号Db−pを時間τsだけ遅らせる。また、波形発生部64Cのコントローラ70は、波束発生部64Bから出力する低周波信号Db−pに対して、波束発生部64Cから出力する低周波信号Dc−pを時間τsだけ遅らせる。さらに、波形発生部64Dのコントローラ70は、波束発生部64Cから出力する低周波信号Dc−pに対して、波束発生部64Dから出力する低周波信号Dd−pを時間τsだけ遅らせる。
伝送装置60は、波束発生部64、周波数逓倍部36及びパルス合成部38を用いることで、データ信号Dinに基づいた伝送周波数Fの波束30を含む送信信号Dpを生成して送出する。このとき、伝送装置60では、伝送速度Trに応じて帯域幅Bを制限した伝送周波数Fの伝送信号Dpmを発生させる。
伝送装置60は、DDS機能を用いて周波数fcの低周波波束40を生成することで、短パルス48を発生する必要がない。また、伝送装置60は、DDS機能を用いることで、周波数fcに対するBPF46が不要となっている。このような伝送装置60は、低周波パルス発生部62を、データ信号Dinを出力するベースバンド部と一体で形成することができる。
〔第3の実施形態〕
次に第3の実施形態を説明する。なお、第3の実施形態の基本的構成は、第2の実施形態と同じとなっており、第3の実施形態において第1又は第2の実施形態と同一の機能部品については、第1又は第2の実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図11には、第3の実施形態に係る低周波パルス発生部62Aに設けられる波束発生部82を示す。低周波パルス発生部62Aは、第2の実施形態に係る低周波パルス発生部62に替えて設けられる。波束発生部82は、第2の実施形態の波束発生部64に替えて用いられる。なお、波束発生部82は、並列データ信号Dj(Da、Db、Dc、Dd)の各々に対して設けられる。すなわち、低周波パルス発生部62Aは、並列データ信号Daに対する波束発生部82A、並列データ信号Dbに対する波束発生部82B、並列データ信号Dcに対する波束発生部82C、及び並列データ信号Ddに対する波束発生部82Dを含む。
波束発生部82(82A〜82D)は、DDS72、LPF74、位相アキュムレータ76、データ読出部78、DAC80を含む。また、波束発生部82は、バッファ部84及びコントローラ86を含む。バッファ部84は、メモリ機能を備え、直並列変換部32から入力される並列データ信号Djをバッファリングする。また、バッファ部84は、コントローラ86から要求されるタイミングで、並列データ信号Djを出力する。
コントローラ86は、第2の実施形態におけるコントローラ70に替えて用いられる。コントローラ86は、周波数シンセサイザ68から入力される周波数fcの信号に基づき、周波数fcの低周波波束40を生成するように制御する。
低周波パルス発生部62Aは、伝送信号Dpmの伝送速度Trを可変する。低周波パルス発生部62Aは、伝送信号Dpの伝送速度Trを指定する伝送速度データTdが、波束発生部82のコントローラ86に入力される。コントローラ86は、並列数n、逓倍数m、周波数fc、及び伝送速度データTdに基づき、バッファ部84から並列データ信号Djを読み出す際の遅延時間τj、低周波波束40のパルス幅Twを設定する。
コントローラ86は、伝送速度データTdにより伝送信号Dpmの伝送速度Trが指定されると、伝送速度データTdにより特定される伝送速度Trと並列数nに基づいて、並列データ信号Djのシンボル時間Tsを設定する。伝送信号Dpmの伝送速度Trとするための並列データ信号Djの伝送速度Trnは、Trn=Tr/nであり。シンボル時間Tsは、Ts=1/Trn=n/Trにより設定される。
また、コントローラ86は、並列データ信号Djのシンボル時間Tsに基づき、並列データ信号Djの間の時間差となる時間τsを設定する。また、波束発生部82A〜82Dの間では、各々のコントローラ86が、時間τsに基づき、遅延時間τj(τa、τb、τc、τd)を設定する。時間τsは、τs=Ts/nとして設定される。従って、各並列データ信号Djの遅延時間τj(1≦j≦n)は、τj=(j‐1)・Ts/nとして設定される。この遅延時間τjは、第1列目の並列データ信号Daの遅延時間τa(j=1)を基準とすると、第2列目の並列データ信号Dbの遅延時間τb(j=2)がτb=τsに設定されることを示す。また、第3列目の並列データ信号Dcの遅延時間τc(j=3)は、τc=2・τs、第4列目の並列データ信号Ddの遅延時間τd(j=4)は、τd=3・τsに設定されることを示す。
コントローラ86は、設定した遅延時間τj及びシンボル時間Tsに基づき、バッファ部84にバッファリングされた並列データ信号Djのデータ値を順に読み込む。また、コントローラ86は、シンボル時間Tsに基づき低周波波束40のパルス幅Twを設定し、DAC80から出力される低周波波束40がパルス幅Twとなるように制御する。すなわち、コントローラ86は、シンボル時間Ts内に一つの低周波波束40が生成されるように制御する。
これにより、例えば、伝送速度TrがTr=2Gbpsのデータ信号Dinを、並列数n=4で直並列変換して生成した伝送信号Dpmを、伝送速度Tr=1Gbpsで伝送する場合、並列データ信号Djの伝送速度Trnは、Trn=Tr/n=0.25Gbpsとなる。また、並列データ信号Djのシンボル時間Tsは、Ts=1/Trn=4nsecとなり、時間τsは、τs=1nsecとなる。
また、低周波波束40の帯域幅Bwは、Bw=0.25GHzとなり、この帯域幅Bwの低周波波束40が16逓倍される。これにより、伝送信号Dpmの帯域幅Bは、B=Bw・(√16)=1GHzとなる。また、伝送信号Dpmは、伝送速度Trが、Tr=1Gbpsとなる。
このように、波束発生部82は、波形データWdataに基づいて低周波波形40を生成するので、伝送信号Dpmの伝送速度Trを可変することができる。この時、伝送信号Dpmは、伝送速度データTdに基づく伝送速度Trに応じた帯域幅Bとなる。
〔第4の実施形態〕
次に第4の実施形態を説明する。なお、第4の実施形態の基本的構成は、第2の実施形態と同じとなっており、第4の実施形態において第1又は第2の実施形態と同一の機能部品については、第1又は第2の実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図12には、第4の実施形態に係る伝送装置90を示す。伝送装置90は、伝送装置12又は伝送装置60に替えてインパルス無線通信装置10に用いられる。伝送装置90は、伝送装置60の低周波パルス発生部62に替えて、低周波パルス発生部92が設けられている。
低周波パルス発生部92は、直並列変換部32、DDS72を用いた波束発生部64(64A〜64D)、周波数逓倍部36(36A〜36D)、データメモリ66、及びパルス合成部38を含む。また、低周波パルス発生部92は、周波数シンセサイザ68に替えてチャネル切替部94が設けられている。伝送装置90は、チャネル切替部94から出力される周波数fcに基づいて低周波波束40を発生させる。
チャネル切替部94は、第4の実施形態において発振部の一例として機能する。チャネル切替部94は、周波数選択部96及び複数の周波数シンセサイザ98を備える。周波数シンセサイザ98は、第4の実施形態において、発振器の一例として機能する。周波数シンセサイザ98は、例えば、PLL方式により所定の周波数の信号を発生する。周波数選択部96は、複数の周波数シンセサイザ98の何れかを選択し、選択した周波数シンセサイザ98が発生する周波数の信号を、周波数fcの信号として、波束発生部64A〜64Dの各々に出力する。
IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers,Inc.)には、無線PAN(Personal Area Network)/WPAN(Wireless Personal Area Network)に関する標準規格としてIEEE802.15.3cがある。IEEE802.15.3cでは、例えば、60GHz帯について、58.32GHz、60.48GHz、62.64GHz、64.8GHzの4つを含むサブバンドが規定されている。伝送装置90のチャネル切替部94は、一例として、4台の周波数シンセサイザ98A、98B、98C、98Dを用い、4つのサブバンドに対応する周波数の信号を発生する。
チャネル切替部94は、例えば、周波数シンセサイザ98Aが58.32GHzのサブバンドに対応する周波数fc1を発生し、周波数シンセサイザ98Bが、60.48GHzのサブバンドに対応する周波数fc2を発生する。また、チャネル切替部94は、周波数シンセサイザ98Cが、62.64GHzのサブバンドに対応する周波数fc3を発生し、周波数シンセサイザ98Dが、64.8GHzのサブバンドに対応する周波数fc4を発生する。
伝送装置90は、データ信号Dinを直並列変換する際の並列数nを4(n=4)とし、周波数逓倍部36において周波数逓倍を行う際の逓倍数mを16(m=16)としている。ここから、チャネル切替部94では、周波数シンセサイザ98Aの周波数fc1が、fc1=3.0645GHzに設定され、周波数シンセサイザ98Bの周波数fc2が、fc2=3.78GHzに設定されている。また、チャネル切替部94では、周波数シンセサイザ98Cの周波数fc3が、fc3=3.915GHzに設定され、周波数シンセサイザ98Dの周波数fc4が、fc4=4.03GHzに設定されている。
また、伝送装置90では、チャネル切替部94の周波数選択部96に、伝送周波数Fのチャネルを指定するチャネル指定信号Csが入力される。周波数選択部96は、チャネル指定信号Csが入力されることで、チャネル指定信号Csで指定されたチャネルの周波数を発生する周波数シンセサイザ98を選択する。チャネル切替部94は、周波数選択部96が選択した周波数シンセサイザ98により発生させる周波数(周波数fc1〜fc4)の信号を、周波数fcの信号として出力する。
ここで、伝送周波数Fの波束30又は周波数fcの低周波波束40を生成する際に、BPF46などを用いる場合、伝送周波数Fの切り替えに合わせてBPF46の中心周波数、帯域幅等を切り替える必要がある。
伝送装置90は、DDS機能を用いて周波数fcの低周波波束40を生成する際、周波数fcに対するBPF46が不要となっている。これにより、伝送装置90は、周波数fcを切り替えるのみで、伝送周波数F(伝送周波数のチャネル)を切り替えることができる。伝送装置90は、複数のサブチャネルの伝送周波数Fの何れかを用いてデータ信号Dinを伝送するときに、装置の小型化、低コスト化が図られる。また、サブチャネルを監視し、空きチャネルに基づいてチャネル選択信号Csが入力されるようにすれば、効率的なデータ伝送が可能となる。
また、伝送装置90は、短パルス発生器44、BPF46等を用いていないため、伝送周波数F(チャネル)の切り替に時間を要しない。従って、伝送装置90は、例えば、データ信号Dinごとに伝送周波数Fを切り替えることができる。また、伝送装置90は、一群のデータ信号Dinの伝送中に、伝送周波数Fを切り替えることができる。
なお、第4の実施形態に係る伝送装置90は、波形発生部64に替えて、第3の実施形態に適用した波形発生部82を用いても良い。これにより、伝送装置90は、伝送周波数Fの切り替えに加え、伝送速度Trを可変することができる。
〔第5の実施形態〕
次に第5の実施形態を説明する。なお、第5の実施形態の基本的構成は、第3の実施形態と同じとなっている。また、第5の実施形態において第1から第4の実施形態と同一の機能部品については、第1から第4の実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図13には、第5の実施形態に係る低周波パルス発生部100を示す。低周波パルス発生部100は、第3の実施形態に係る低周波パルス発生部62Aに替えて用いられる。低周波パルス発生部100は、n列の並列データ信号Dj(Da、Db、Dc、Dd)の各々に対応する波束発生部102を含む。波束発生部102は、第5の実施形態において波形生成部の一例として機能する。波束発生部102は、並列データ信号Daに対応する波束発生部102A、並列データ信号Dbに対応する波束発生部102B、並列データ信号Dcに対応する波束発生部102C、及び並列データ信号Ddに対応する波束発生部102Dを含む。なお、波束発生部102A〜102Dの基本的構成が同じであり、以下では、特に区別しない場合、波束発生部102として説明する。
波束発生部102(102A〜102D)は、DDS72、LPF74、位相アキュムレータ76、データ読出部78、DAC80を含む。また、低周波パルス発生部100は、データメモリ66及びチャネル切替部104を含む。チャネル切替部104は、第5の実施形態において発振部の一例として機能する。
データメモリ66及びチャネル切替部104は、波束発生部102A〜102Dの各々に接続され、チャネル切替部104は、波束発生部102へ周波数fcの信号を出力する。波束発生部102(102A〜102D)は、並列データ信号Dj(Da、Db、Dc、Dd)に基づき、中心周波数が周波数fcの低周波波束40を含む低周波信号Dj−p(Da−p、Db−p、Dc−p、Dd−p)を生成して出力する。
周波数逓倍部36(36A〜36D)は、波束発生部102から入力される低周波信号Dj−pをm逓倍して出力する。これにより、低周波信号Dj−mは、周波数fcの低周波波束40が伝送周波数Fの波束30に変換され、伝送信号Dj−pmとして出力される。伝送信号Dj−pmは、パルス合成部38へ入力されることにより、伝送周波数Fの伝送信号Dpmとして出力され、伝送信号Dpmは、電力増幅されることで、送信信号DpとしてANT20から送出される。
第5の実施形態に係る波束発生部102は、コントローラ106を含む。コントローラ106は、第3の実施形態に係るコントローラ86に替えて設けられる。コントローラ106は、チャネル切替部104から入力される周波数fcの信号に基づき、周波数fcの低周波波束40が生成されるように位相アキュムレータ74を制御する。
また、低周波パルス発生部100では、各波束発生部102のコントローラ106にデータ信号Din(送信信号Dp)の伝送速度Trを指定する伝送速度データTdが入力される。伝送速度データTdは、データ信号Dinの伝送速度Tr(伝送容量)に基づいて設定される。なお、伝送速度データTdは、第3の実施形態に示すように、データ信号Dinの伝送速度と異なるものであっても良い。
コントローラ106は、伝送速度データTdに基づいて、低周波波束40のパルス幅Tw、及び並列データ信号Djに対応する遅延時間τjを設定する。送信信号Dpの伝送速度Trは、伝送速度データTdにより定まり、低周波信号Dj−pの伝送速度Trnは、並列数nと伝送速度Trから得られる。また、低周波信号Dj−pのシンボル時間Tsは、伝送速度Trnから得られ、並列データ信号Djの間の時間差である時間τsは、シンボル時間Tsから得られる。コントローラ106は、時間τsに基づき、並列データ信号Dj(Da、Db、Dc、Dd)ごとの遅延時間τj(τa、τb、τc、τd)を設定する。
コントローラ106は、シンボル時間Ts及び遅延時間τjに基づいて位相アキュムレータ74を制御することで、並列数n及び伝送速度データTdに応じたパルス幅Twの低周波波束40を生成する。
チャネル切替部104は、周波数選択部108及び複数の周波数シンセサイザ98を含む。第5の実施形態において、周波数シンセサイザ98の各々は、発振器の一例として機能する。第5の実施形態では、一例として、チャネル切替部104が、60GHz帯において予め設定されたサブチャネルの周波数F1、F2、F3、F4に対応する周波数fc1〜fc4の信号を発生する周波数シンセサイザ98A〜98Dを含む。また、第5の実施形態では、周波数F1〜F4のサブチャネルに加え、周波数F1と周波数F2の中間の周波数F5、周波数F2と周波数F3の中間の周波数F6、及び周波数F3と周波数F4の中間の周波数F7を、サブチャネルとして設定している。
チャネル切替部104は、各サブチャネルの中間の周波数F5〜F7に対応する周波数fc5〜fc7の信号を発生する周波数シンセサイザ98E〜98Gを含む。周波数シンセサイザ98Eは、周波数fc1と周波数fc2との中間の周波数fc5の信号を発生し、周波数シンセサイザ98Fは、周波数fc2と周波数fc3との中間の周波数fc6の信号を発生する。周波数シンセサイザ98Gは、周波数fc3と周波数fc4との中間の周波数fc7の信号を発生する。
例えば、サブチャネルを周波数F1=58.32GHz、周波数F2=60.48GHz、周波数F3=62.64GHz、周波数F4=64.8GHzとする。周波数シンセサイザ98Eは、周波数F5=59.4GHzに対応する周波数fc5(fc5=3.7125GHz)の信号を発生する。また、周波数シンセサイザ98Fは、周波数F6=61.56GHzに対応する周波数fc6(fc6=3.8457GHz)の信号を発生し、周波数シンセサイザ98Gは、周波数F7=63.72GHzに対応する周波数fc7(fc7=3.9825GHz)の信号を発生する。なお、チャネル切替部104に設ける周波数シンセサイザ98の数、及び各々の周波数シンセサイザ98が発生する周波数は、一例を示すものであり、周波数シンセサイザ98の数及び各周波数シンセサイザが発生する周波数は、任意に設定することができる。また、第5の実施形態では、各々が予め設定された周波数の信号を発生する周波数シンセサイザ98を用いているが、発振周波数を可変とする発振器を用いても良い。
一般に、使用する周波数帯域を制限(以下、許容帯域幅Bpとする)することにより、伝送信号の干渉が防止される。ここから、周波数F1〜F4のサブチャネルに対しては、許容帯域幅Bpが設定されており、送信信号Dpの帯域幅Bを許容帯域幅Bp以下(B≦Bp)とする必要がある。
隣接する2つのサブチャネルを用いることで、2つのサブチャネルに設定されている許容帯域幅Bpを用いることが許容される。例えば、周波数F1、F2のサブチャネルに対する許容帯域幅Bpが2GHzであると、伝送周波数Fを周波数F1と周波数F2の中間の周波数F5のサブチャネルを設定する。この周波数F5のサブチャネルの許容帯域幅Bpは、周波数F1及び周波数F2のサブチャネルの許容帯域幅Bpの2倍の4GHzとなる。
サブチャネルの周波数F1〜F4の何れか一つのサブチャネルを用いる場合、帯域幅Bが2GHz以下となり、伝送速度Trが2GHz以下となる。これに対して、周波数F1〜F4のサブチャネルの帯域内で周波数F5〜F7のサブチャネルを設定し、隣接する周波数F1〜F4のうちの連続する2つのサブチャネルを用いることで、帯域幅Bが4GHzまで広げ、伝送速度Trを4GHz(2・Bp)まで高めることができる。
コントローラ106は、データ信号Dinの伝送速度データTdが入力されることで、伝送速度データTdに応じて、周波数fcを設定する。例えば、コントローラ106は、伝送速度データTdに基づいて、データ信号Dinの伝送に必要な帯域幅Bを設定する。また、コントローラ106は、設定した帯域幅Bが周波数F1〜F4のサブチャネルに設定されている許容帯域幅Bp以下(B≦Bp)であれば、周波数fcとして周波数fc1〜fc4の何れかに設定する。コントローラ106は、設定した帯域幅Bが周波数F1〜F4のサブチャネルに設定されている許容帯域幅Bpを超え、かつ許容帯域幅Bpの2倍(2・Bp)以下(Bp<B≦2・Bp)であれば、周波数fcとして周波数fc5〜fc7の何れかに設定する。
なお、周波数fc1〜fc4、又は周波数fc5〜fc7の間での周波数fcの設定は、予め優先順位を設定しておいて、優先順位に基づいて設定しても良く、予め設定した順番で順に設定するなどの任意の設定方法を適用することができる。また、周波数F1〜F4のサブチャネルの使用状況を監視するなどし、周波数F1〜F4のサブチャネルから使用されていないサブチャネル(空きチャネル)を用いるように、周波数fc1〜fc4又は周波数fc5〜fc7を設定するようにしても良い。
コントローラ106は、周波数fcを設定すると、設定した周波数fcに対応するチャネル指定信号Csを設定する。また、コントローラ106は、設定したチャネル指定信号Csを、チャネル切替部104へ出力する。チャネル切替部104は、チャネル指定信号Csが入力されることで、周波数選択部108が、チャネル指定信号Csで指定された周波数を発生する周波数シンセサイザ98を選択する。チャネル切替部104は、周波数選択部108が選択した周波数シンセサイザ98により発生される周波数(周波数fc1〜fc7)の信号を、周波数fcの信号として、低周波パルス発生部102へ出力する。
これにより、低周波パルス発生部100は、データ信号Dinの伝送速度Trに応じた帯域幅Bの送信信号Dpを生成するための低周波信号Dj−pを生成することができる。この低周波信号Dj−pに対して周波数逓倍、パルス合成及び電力増幅を行うことで、適切な帯域制限を施した送信信号Dpが得られ、データ信号Dinを効率的に伝送することができる。
したがって、低周波パルス発生部100は、データ信号Dinの伝送速度Trに応じた伝送周波数F及び帯域幅Bの送信信号Dpが得られる低周波波束40を生成することができ、伝送速度Trに応じたデータ信号Dinの効率的な伝送が可能となる。また、低周波パルス発生部100は、DDS機能を用いて低周波波束40を発生するので、BPFが不要となり、周波数fcの切り替えが容易となる。
なお、コントローラ106は、帯域幅Bがサブチャネルに設定されている許容帯域幅Bpの2倍(2・Bp)を超え、かつ、3倍(3・Bp)以下(2・Bp<B≦3・Bp)であれば、周波数fcとして周波数fc2又は周波数fc3に設定しても良い。これにより、周波数F1、F2、F3に対応するサブチャネル、又は周波数F2、F3、F4に対応するサブチャネルを用いたデータ信号Dinの伝送を行うことができる。また、コントローラ106は、帯域幅Bがサブチャネルに設定されている許容帯域幅Bpの3倍(3・Bp)を超え、かつ、4倍(4・Bp)以下(3・Bp<B≦4・Bp)であれば、周波数fcとして周波数fc6に設定しても良い。これにより、周波数F1〜F4の4つのサブチャネルを用いたデータ信号Dinの伝送を行うことができる。
開示の技術は、上記実施の形態に記載に限らず、各部分が目的とする機能を含む形態であれば良い。また、本明細書に記載された全ての特許出願及び特許出願に開示される技術文献は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に、参照により取り込まれる。
開示の技術は、以下の付記を含む。
(付記1)
直列に伝送する直列データ信号を複数列の並列データ信号に変換する直並列変換部と、
前記並列データ信号の各々について、複数の周波数成分を含むパルスから所定の周波数及び周波数帯域幅で抽出したパルス波形の低周波波束を生成する低周波波束生成部と、
前記並列データ信号の各々に対して前記低周波波束を所定の逓倍数で周波数逓倍することにより、前記周波数を伝送周波数に変換した波束を生成する周波数逓倍部と、
前記伝送周波数の波束に変換された前記並列データ信号の各々を合成して、前記直列データ信号に基づいた伝送信号を生成する合成部と、
を含むインパルス無線伝送装置。
(付記2)
前記伝送信号に対して無線伝送に必要な電力に増幅する電力増幅部を含む付記1記載のインパルス無線伝送装置。
(付記3)
前記直並列変換部が、並列数n(nは2以上の整数)の並列データ信号に変換し、
前記周波数逓倍部が、前記並列数nに基づいて設定した逓倍数mで逓倍する、付記1又は付記2記載のインパルス無線伝送装置。
(付記4)
前記並列数nに対して、前記逓倍数mをm=n2としている、付記3記載のインパルス無線伝送装置。
(付記5)
前記直並列変換部が、並列数n(nは2以上の整数)の並列データ信号に変換し、
前記周波数逓倍部が、前記並列数nに基づいてm=n2として設定された逓倍数mで逓倍する、付記1又は付記2記載のインパルス無線伝送装置。
(付記6)
前記合成部による合成に先立って、前記並列データ信号の各々の間に所定の時間差が生じるように遅延させる遅延部を含む、
付記1から付記5の何れかに記載のインパルス無線伝送装置。
(付記7)
前記遅延部は、前記伝送信号の伝送速度Tr(bps)、及び前記並列数nに基づき、j列目(ただし、jは、1≦j≦n)の前記並列データ信号に対する遅延時間τj(sec)を、
τk=(k−1)/(n×(1/Tr))
とする、付記6記載のインパルス無線伝送装置。
(付記8)
前記低周波波束生成部は、
前記並列データ信号のデータ値に基づいて前記パルスを発生するパルス発生器と、
前記周波数及び周波数帯域幅が、前記伝送周波数、及び前記周波数逓倍部の前記逓倍数に基づいて設定され、前記パルスが通過することで前記低周波波束を生成するバンドパスフィルタと、
を含む付記1から付記7の何れかに記載のインパルス無線伝送装置。
(付記9)
前記低周波波束生成部は、
前記低周波波束に対応する波形データを記憶する記憶部と、
前記周波数の信号を発生する発振部と、
前記並列データ信号の各々について、前記発振部が発生する前記周波数及び前記波形データに基づき前記低周波波束を生成する波形生成部と、
を含む付記1から付記7の何れかに記載のインパルス無線伝送装置。
(付記10)
前記伝送信号の伝送速度を設定する設定部を含み、前記波形生成部が前記設定部で設定された前記伝送速度に応じた前記周波数帯域幅の前記低周波波束を生成する、付記9記載のインパルス無線伝送装置。
(付記11)
前記発振部が、
互いに異なる周波数の信号を発生する複数の発振器と、
前記異なる周波数から何れか一つの周波数を選択して出力する周波数選択部と、
を含む付記10記載のインパルス無線伝送装置。
(付記12)
複数の前記周波数の各々に対応する前記伝送周波数に設定された許容帯域幅、及び前記直列データ信号の伝送速度に基づいて前記周波数を設定する周波数設定部を含み、
前記周波数選択部が前記周波数設定部で設定された前記周波数の信号を出力する、付記11記載のインパルス伝送装置。
(付記13)
前記低周波波束が、ガウシアンパルスである付記1から付記12の何れかに記載のインパルス無線伝送装置。
(付記14)
直列に伝送する直列データ信号を複数列の並列データ信号に変換し、変換した前記並列データ信号の各々について、複数の周波数成分を含むパルスから所定の周波数及び周波数帯域幅で抽出したパルス波形の低周波波束を生成し、
前記並列データ信号の各々に対して前記低周波波束を所定の逓倍数で周波数逓倍することにより、前記周波数を伝送周波数に変換した波束を生成し、
前記伝送周波数の波束に変換された前記並列データ信号の各々を合成して、前記直列データ信号に基づいた伝送信号を生成する、
ことを含む伝送信号の生成方法。
(付記15)
前記データ信号を並列数nの前記並列データ信号に変換し、
前記並列数nに基づいてm=n2として設定された逓倍数mで逓倍する、
ことを含む付記14記載の伝送信号の生成方法。
(付記16)
前記並列データ信号のデータ値に基づいて前記パルスを発生し、
前記周波数及び周波数帯域幅が、前記伝送周波数、及び前記周波数逓倍部の前記逓倍数に基づいて設定したバンドパスフィルタを用いて前記パルスから前記低周波波束を生成する、
ことを含む付記14又は付記15記載の伝送信号の生成方法。
(付記17)
発振部により発振した周波数、及び予め記憶された前記低周波波束に対応する波形データを用い、デジタル波形生成により前記並列データ信号の各々について前記低周波波束を生成する、
ことを含む付記14又は付記15記載の伝送信号の生成方法。
(付記18)
前記発振部により異なる複数の周波数を発生し、
前記異なる周波数から選択した周波数に基づいて前記低周波波束を生成する、
ことを含む付記17記載の伝送信号の生成方法。
(付記19)
複数の前記周波数の各々に対応する前記伝送周波数に設定された許容帯域幅、及び前記直列データ信号の伝送速度に基づいて選択する前記周波数を設定し、
前記設定された前記周波数に基づいて前記低周波波束を生成する、
ことを含む付記18記載の伝送信号の生成方法。