JP6000767B2 - 学習装置、判別装置、行動状態判別システム、および判別方法 - Google Patents
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1.はじめに
近年、日本では高齢化が進み、2010年10月1日の調査では総人口1億2806万人のうち、実に23.1%が65歳以上の高齢者となっており、2055年には40%を上回ると見られている。さらに、世帯構造別に見ると、平成21年には65歳以上の高齢者がいる世帯のうちの23.0%が独居世帯となっている[1]。そして、2009年に内閣府が全国の60歳以上に行った調査によると、誰にも看取られることなく死亡する孤独死を身近な問題と感じている人が42.9%と少なくないことが分かる[2]。
2.1 DTW法
DTW法は予め与えた問い合わせシーケンスと毎時刻更新される被監視データシーケンス間の動的計画法によって計算されるDTW距離を最小化するように時間軸方向の調整をしながら比較し、閾値以下をとる類似度の高い部分シーケンスを取り出す既知の手法である。特徴として、周期の変化や異なるサンプリングレートにも対応することができる他、フレームを用いることなくマッチングを行うことができることが挙げられる。
詳細は成書[4]などに譲ることにするが、簡潔に述べると特徴空間中のデータの座標の明示的な計算を経由せず、特徴空間における内積を直接計算するカーネル関数と凸2次計画問題を組み合わせた教師あり学習に基づく既知の識別手法である。分類及び回帰に適用することができ、C−SVC、nu−SVC、one−classSVM、epsilon−SVR、nu−SVRといった5つのタイプ[5]がある。近年その識別精度の高さから非連続データにとどまらず、波形や画像といった様々なデータを扱い、幅広い分野[6]で用いられている。他の機械学習とは異なり、学習に時間がかかるものの、局所解がないことが最大の特長として挙げられる。
リアルタイム性を持たせることで即時の検出を可能とし、複数の入力源データを同時に処理することで検出精度向上を目指す。尚、本実施の形態においてはアルゴリズム構築のため、入力源データはとして取得済みのオフラインデータを用いたが、リアルタイムに更新されるデータを適用することもできる。
把握したい状態のデータを予め取得して問い合わせシーケンスとし、被監視データシーケンスである入力源データに対してDTW法によるリアルタイムでの比較を行い、マッチングが成立する範囲を検出する。この際、範囲の重複による局所解の問題があるが、本実施の形態においては検出漏れのないことを保証しているSPRING−optimal[3]アルゴリズムを適応することで対応する。
DTW法でマッチングが成立した後、判断精度を高めるためにSVMを適用する。タイプとしては学習の作業負担が少なく、あるクラスとそれ以外を識別するone−classSVMを利用する。特徴ベクトルには、ある状態における先の検出手法で報告された部分シーケンスXの長さLXの、問い合わせシーケンスYに対する長さLYの比LX/LYを用い、既知の状態同士の比較結果から識別に必要なデータの集合体であるモデルを構築して判別器を生成し、未知の入力に対する判断を行う。
図2は、実施の形態に係るセンシング環境を示す図である。本実施の形態に係る方式の有用性を検証するため、赤外線人感センサを用いてデータ取得を行い、取得したデータを基に処理時間や各パターンの分類精度、失報・誤報率の評価を行った。本実施の形態では、見守りに適用するという目的のもと、背景温度に対する移動体の熱を感知するという動作原理のために環境の変化にロバストであり、かつ、検出範囲が部屋全体をカバーすることができ、低価格である赤外線人感センサを用いることとし、出力電圧の波形を対象とすることとした。赤外線人感センサには耐外乱光機能や感度調整機能、小動物対策機能の他、FLASH表示機能によりエリア調整が容易な株式会社日本アレフのXP−40シリーズ室内壁面設置型パッシブセンサ、XP−43を選択した。
部屋全体をカバーするように2つの赤外線人感センサを壁に高さ1800mmに設置することで観測エリアを構築する。また、赤外線人感センサと人体の距離の影響を見るために構築した空間を3つに分け、被験者はその個別空間にて行動する。
本実施の形態において把握する状態として、センサの観測エリアを通過する歩行と走行、観測エリアを通過しないしゃがみと立ち上がり、転倒という5つのパターンについて、被験者A〜Fの6名に対して図2中の赤外線人感センサ1のみを用いた場合(被験者A〜C)、赤外線人感センサ1、2の両方を用いた場合(被験者D〜F)で被験者に各状態をエリア毎に5回行うことで取得した。尚、簡易化のために進行方向は図2における右側から左側への片方向のみ、非通過型の3パターンについては右側から歩いてきて真ん中の場所で行動してもらい、その後左側に歩いて観測エリアを歩いて抜けることで取得している。
データ取得後、状態に該当する範囲のみを問い合わせシーケンスとした。データシーケンスには問い合わせシーケンスの前後に全体の長さ600ms、かつ、解析を容易にするために状態に該当する範囲が350ms地点で終わるようにセンサの定常値を詰めるパディング処理を行ったシーケンスを利用した。
DTW法の閾値を設定するため、ある被験者での同一状態、同一エリアで差異の大きいデータにて総当たりで適用したところ図3の結果を得た。上述した「所定の閾値」の値は大きくしすぎると比較精度が低下するため、全体の94.4%を満たす20に設定した。
事前知識を学習するため、センサ1つの場合と2つの場合とのそれぞれにおいて、被験者3名中2名の相互比較によるSVMのモデルを構築した。SVMはone−classSVM、カーネルに関してはLIBSVMのマニュアルがカーネルよりもカーネルパラメータの選択が重要だとしているためにRBFカーネルを用いることとし、カーネルパラメータであるγはデフォルトの1/特徴ベクトルの次元数とした。図4にモデルの構築結果を示す。
作成した問い合わせシーケンスとデータシーケンスを用いてセンサ1つの場合と2つの場合において、SVMのモデル構築の際の相互比較に含まれない被験者のデータを未知の入力データとすることで評価を行う。すなわち、被験者Cに対しては被験者AとBの相互比較で学習した結果を基に提案手法を適用する。図5、図6、図7、図8、図9および図10に被験者それぞれの場合の同一エリアでの正答率、エリアに依らない正答率の他、失報・誤報率についても評価するため、報告数を分母とした指標として報告全体に占める同一エリアでの正答率、報告全体に占めるエリアに依らない正答率を示す。
本実施の形態では、DTW法とSVMを融合させた手法を独居高齢者向け危険行動検出に適用し、有用性を検証した。現在の実験ではデータ入力源が1つの場合のみでの検証に留まるが、更なるアルゴリズム改良やSVMのタイプやカーネル、カーネルパラメータの設定を変えるなどをすることによって、複数の場合での検証を行ってもよい。
[1].内閣府、"平成23年版高齢社会白書"、2011。
[2].内閣府、平成21年度高齢者の地域におけるライフスタイルに関する調査結果、2009。
[3].櫻井保志、Christos Faloutsos、山室雅司、“ダイナミックタイムワーピング距離に基づくストリーム処理、”電子情報通信学会論文誌D、vol. J92-D、no. 3、pp. 338-350、2009。
[4].阿部重夫、パターン認識のためのサポートベクトルマシン入門。東京:森北出版株式会社、2011。
[5].Chih-Chung Chang and Chih-Jen Lin、“LIBSVM--A Library for Support Vector Machines”。[HTML](last updated November 2011) Available at http://www.csie.ntu.edu.tw/~cjlin/libsvm/。
[6].小野田崇、サポートベクターマシン。東京:オーム社、2007。
実施の形態
図12は、実施の形態に係る行動状態判別システム600の全体構成を模式的に示す図である。実施の形態に係る行動状態判別システム600は、学習装置100、判別装置200、判別器格納部300、センサ400、通知部500を含む。行動状態判別システム600は、例えばインターネット等のネットワーク700を介して、行動状態判別システム600の外部にある監視部800と通信可能となっている。
Claims (5)
- 1または複数のセンサが取得した1または複数のデータシーケンスであって、各データシーケンスが示す行動状態が既知である固定長の問い合わせシーケンスを取得する問い合わせシーケンス取得部と、
前記1または複数のセンサが取得した、行動状態が既知である教師用データシーケンスを取得する教師シーケンス取得部と、
前記センサが取得した教師用データシーケンスそれぞれについて、前記問い合わせシーケンス取得部が取得した問い合わせデータシーケンスをもとにDTW法(Dynamic Time Warping法)を適用するDTW法適用部と、
前記問い合わせシーケンスにマッチした前記教師用データシーケンスの長さの、前記問い合わせシーケンスの長さに対する比を、前記センサ毎に並べた数列を要素とするベクトルを生成する特徴ベクトル取得部と、
前記特徴ベクトル取得部が生成したベクトルのうち、前記問い合わせシーケンスの状態と前記教師用データシーケンスの状態とが一致するベクトルをひとつのクラス、前記問い合わせシーケンスの状態と前記教師用データシーケンスの状態とが不一致のベクトルを他のクラスとしてSVM(Support Vector Machine)による学習を実行して判別器を生成するSVM学習部とを含むことを特徴とする学習装置。 - 前記問い合わせシーケンス取得部が取得する問い合わせシーケンスは、あらかじめ定められた行動を実行する被験者をセンサで計測することによって取得されたデータシーケンスであることを特徴とする請求項1に記載の学習装置。
- 1または複数のセンサが取得した1または複数のデータストリームを取得するストリーム取得部と、
データシーケンスが示す行動状態が既知である固定長の問い合わせシーケンスを取得する問い合わせシーケンス取得部と、
前記ストリーム取得部が取得した1または複数の各データストリームにおいて、前記問い合わせシーケンスとマッチする部分シーケンスをDTW法により取得するDTW法適用部と、
前記部分シーケンスの長さの前記問い合わせシーケンスの長さに対する比を前記センサ毎に並べた数列を要素とするベクトルを生成する特徴ベクトル取得部と、
前記特徴ベクトル取得部が取得したベクトルに対するSVMの学習により得られた判別器の出力値をもとに、前記部分シーケンスの前記問い合わせシーケンスに対するマッチングの正否を判別する判別部とを含むことを特徴とする判別装置。 - 観察対象とする被験者の行動をデータシーケンスとして計測する1または複数のセンサと、
請求項3に記載の判別装置と、
前記判別装置によるマッチングの正否の判別結果が正しい場合、マッチングした問い合わせシーケンスに対応する行動状態を前記観察対象とする被験者の行動として通知する通知部とを含むことを特徴とする行動状態判別システム。 - 1または複数のセンサが取得した1または複数のデータストリームを取得するステップと、
データシーケンスが示す行動状態が既知である固定長の問い合わせシーケンスを取得するステップと、
前記1または複数の各データストリームにおいて、前記問い合わせシーケンスとマッチする部分シーケンスをDTW法により取得するステップと、
前記部分シーケンスの長さの、前記問い合わせシーケンスの長さに対する比を前記センサ毎に並べた数列を要素とするベクトルを生成するステップと、
取得したベクトルに対するSVMの学習により得られた判別器の出力値をもとに、前記部分シーケンスの前記問い合わせシーケンスに対するマッチングの正否を判別するステップとをプロセッサに実行させることを特徴とする判別方法。
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