次に、図面を参照して、実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
[第1の実施の形態]
(光学フィルタ)
第1の実施の形態に係る光学フィルタに用いられる半導体粒子の光学特性(拡散反射スペクトル)であって、波長250nm〜1000nmの範囲における特性は、図1(a)に示すように表され、波長300nm〜500nmの範囲における拡大特性は、図1(b)に示すように表される。図1(a)および図1(b)において、曲線X2は、MgZnOバルクの湿式粉砕処理した状態における特性に対応し、曲線X1は、MgZnOバルクの湿式粉砕処理後、600℃で熱処理した状態における特性に対応する。
また、第1の実施の形態に係る光学フィルタに用いられる半導体粒子に対応したSEM像であって、MgZnOバルクの焼結体をボールミルにて粒径1μm程度に乾式粗粉砕した状態は、図2(a)に示すように表され、図2(a)の状態から0.1μm程度に湿式微粉砕した状態は、図2(b)に示すように表され、図2(b)の状態から600℃で熱処理を行った後のMgZnOの微粉末の状態は、図2(c)に示すように表される。
第1の実施の形態に係る光学フィルタは、紫外領域に吸収端を有する直接遷移型半導体粒子と、直接遷移型半導体粒子が添加されたペースト状の物質とを備え、直接遷移型半導体粒子が粉体の状態における拡散反射スペクトルの反射率が可視光領域で平坦な特性を有する。
また、ペースト状の物質の主成分は、ガラス系材料、アクリル樹脂、シリコン樹脂、若しくは非晶性フッ素樹脂の内、いずれか1つ以上の物質で構成可能である。
また、ペースト状の物質は、ガラス系材料と直接遷移型半導体粒子とを混合したペーストからなるようにしても良い。
また、直接遷移型半導体粒子は、可視光領域の最小波長以下の粒径に形成されていても良い。
第1の実施の形態に係る光学フィルタは、ペースト状の物質を硬化させて形成される。ここで、ペースト状の物質として、紫外光を透過させる材料であれば何でも良く、例えば、アクリル樹脂、非晶性フッ素樹脂(アモルファスフルオロポリマー)、シリコン樹脂、フッ素系樹脂、ガラス等を用いることができる。
第1の実施の形態に係る光学フィルタでは、ペーストには、例えばフッ素樹脂を用いる。フッ素樹脂からなる光学フィルタは、紫外光、可視光、赤外光等を透過させるもので、特定の波長の光吸収がない材料である。一方、特定の波長域の光を吸収する光学フィルタを作製する場合は、フッ素樹脂に特定の波長の光を吸収する半導体粒子を混ぜたペーストを硬化させる。
第1の実施の形態に係る光学フィルタは、紫外領域の光を検出するために、フッ素樹脂ペーストに、例えば、直接遷移型半導体のMgxZn1-xO(0≦x<1)粒子が混ぜられる。MgZnOは、紫外光を吸収し、紫外光よりも長い波長の光を透過させる光学フィルタの役割を果たす材料である。また、MgZnOは直接遷移型半導体であるため、吸収端が急峻である。これにより、可視光を吸収することなく、紫外光のみを吸収することができる。
また、第1の実施の形態に係る光学フィルタは、ペースト状物質を主成分として半導体の粒子が添加された材料を硬化させて作製されている。この場合、半導体の粒子として、ペースト状物質に添加したときに白濁するような粒径の大きさを持つ半導体の粉体は望ましくない。白濁するような粒径の大きさを持つ半導体の粉体を適用した光学フィルタでは、フォトダイオードセンサのpn接合界面に形成されている空乏層に到達する光が減少し、光を検出することができなくなるためである。
ここで、紫外領域は、波長400nm以下で波長200nm程度までの波長をいうものとする。紫外領域は、さらに、UV−A(波長320nmより大きく、波長400nm以下)、UV−B(波長280nmより大きく、波長320nm以下)、UV−C(波長280nm以下)に分類される。
第1の実施の形態に係る光学フィルタにおいて、ペーストに半導体微粒子を添加する場合、半導体微粒子は、焼結体をボールミル等の粉砕機で粉砕して形成される。しかしながら、微粒子の状態によっては、着色する場合があり、光学フィルタの材料として使用できない場合がある。
例えば、図2(a)の例では、MgZnOバルクの焼結体をボールミルにて、粒径1μm程度に粗粉砕しているが、黄色に着色している。
さらに、図2(a)の状態から0.1μm程度に微粉砕した図2(b)の例では、光の波長と同レベルか、それ以下の微粒子サイズにするため、微粉砕のときに湿式が用いるが、やはり黄色に着色している。一方、微粉砕された図2(b)の状態から熱処理を行った後のMgZnOの微粉末の状態を示す図2(c)の例では、白色となる。
曲線X2では、図1(a)及び図1(b)に示すように、微粒子が着色しているために、反射率が可視光領域において一様ではなく、紫外領域からの反射率の立ち上がりが緩やかとなっている。これに対して、曲線X1は、反射率が可視光領域において平坦又は一様であり、紫外領域からの反射率の立ち上がりが急峻となっている。ここで、可視光領域とは、一般的に約400nm〜約850nm程度の波長範囲である。
第1の実施の形態に係る光学フィルタにおいては、紫外領域の光のみを吸収し、カットするために、直接遷移型半導体で吸収端が紫外領域にある半導体粒子を用い、粉砕された粉体(粉末)の状態で、可視光領域の波長範囲での反射率が平坦(一様)である。
(光学フィルタの製造方法)
第1の実施の形態に係る光学フィルタの製造方法は、直接遷移型半導体の焼結体を粗粉砕する粗粉砕工程と、粗粉砕された直接遷移型半導体粒子を微粉砕する微粉砕工程と、微粉砕された直接遷移型半導体粒子を乾燥させる乾燥工程と、乾燥させた直接遷移型半導体粒子をペースト状の物質に分散処理する分散処理工程とを有する。
また、乾燥工程と分散処理工程の間に、乾燥させた直接遷移型半導体粒子による粉体を熱処理する熱処理工程を有するようにしても良い。
また、直接遷移型半導体粒子はMgxZn1-xO(0≦x<1)を適用可能である。
また、熱処理工程における温度は500℃〜900℃の範囲とすることができる。
第1の実施の形態に係る光学フィルタの製造方法のフローチャートは、図3に示すように表される。特に、MgZnO半導体微粒子が添加されたペースト作製方法について説明する。
(a)第1工程S1では、乾式のMgZnO焼結体粗粉砕が行われる。まず、アルミナ製スタンパを用いて、例えば、約30分かけて、MgZnO焼結体の粗粉砕を行う。次に、アルミナ製自動乳鉢を用いて、例えば、約2時間かけて、MgZnO焼結体を粉砕する。次に、遊星ボールミルを用いて、MgZnO焼結体の微粉砕を行う。例えば、一つのアルミナポットにつきMgZnO粉末を、約40.0gを入れ、径約10mmのアルミナボール(重量約100g)を用いて、約250rpmの回転数で、約30分の粉砕を行い、径約5mmのアルミナボール(重量約90g)を用いて、約250rpmの回転数で、約30分の粉砕を行う。そして、ふるいにかけて分級し、約45μmサイズのMgZnO半導体粒子を回収する。この処理で得られたMgZnO微粉末のSEM観察像が図2(a)である。
(b)第2工程S2では、湿式の焼結体微粉砕を行う。これには、湿式ビーズミルを用いた。精製水約245gに、上記第1工程の焼結体粗粉砕により得られたMgZnO粉末を約105g(約30wt%)を加え、粉砕メディアとして径約0.1mmのZrO2のビーズを約456g、充填量約80%で添加して粉砕用溶液を生成する。運転条件は、例えば、周速約12m/s、流量約0.15L/minとした場合、運転時間により得られる粒子径が決定される。
ここで、焼結体微粉砕(湿式)におけるビーズミルの運転時間とメジアン粒子径との関係の一例は、図4に示すように表される。図4において、運転時間0のとき、最初の半導体粒子のメジアン径は1.53μmであり、運転時間を60分にすれば、メジアン径0.17μmのMgZnOの微粉末が含まれたスラリーが得られる。この処理で得られたスラリーのSEM観察像が図2(b)である。
(c)第3工程S3では、スラリーを乾燥させる。第2工程の湿式焼結体微粉砕で得られたスラリーをオーブンに入れ、温度約60℃で約1日乾燥させる。このスラリーを乾燥させた場合でも、図2(b)の場合と同様、着色されている状態である。このとき、粒子の凝集が強いときは、ボールミルで粗粉砕を行う。なお、スラリーはスプレードライ方式で乾燥させても良い。
(d)次に、第4工程S4として、MgZnO粉末の熱処理を行う。アルミナ製坩堝に第3工程で乾燥させたMgZnO粉末を入れて、温度約600℃〜約800℃で約1時間〜約10時間オーブンで熱処理する。これにより、図2(c)に示すように、MgZnO粉末は脱色し、白いMgZnO粉末が得られる。この粉末熱処理の過程では、第3工程S3で乾燥させた半導体微粒子が凝集して2次粒子を形成する。このため、900℃以上では、半導体微粒子が凝集して2次粒子の粒子径が大きくなりすぎてしまい、500℃以下では白くならない。したがって、熱処理温度は、500℃より大きく、900℃より小さい範囲で行うことが望ましい。
(e)次に、第5工程S5では、第4工程S4で熱処理を行って凝集された2次粒子をペースト中にダメージレスで分散させる。例えば、ペーストの主成分に、フッ素樹脂約85gを用いる場合、第4工程S4で得られたMgZnO粉末とフッ素樹脂に希釈用フッ素系溶媒約15gを混合してMgZnO粉末入りのフッ素樹脂ペーストを作製する。このときの粘度は、通常の範囲であり、例えば、約0.1mPas〜約500000mPasである。
(光学フィルタ特性)
―透過特性―
上記のように、第1工程S1〜第5工程S5により作製したMgZnO微粒子が含まれたペーストより作製される光学フィルタの光学特性を確認した。
粒子径が光学フィルタ特性に及ぼす影響を調べるために以下の実験を行った。ガラスペーストとZnO(X=0)粒子の比が10:1(重量比)となるように作製した。ZnO粒子入りガラスペーストをガラス基板上に塗布して硬化させて光学フィルタを形成し、透過スペクトルを調べた。ZnO粒子は、1000nm、200nm、50nmの3種類の粒子径を用い、これらをそれぞれ添加したガラスペーストによる光学フィルタを作製して透過スペクトルを測定した。
第1の実施の形態に係る光学フィルタにおいて、添加された半導体粒子の粒子径と光の透過率との関係は、図5に示すように表される。曲線D1・D2・D3は、粒子径50nm・200nm・1000nmに対応する。
D1〜D3のいずれの曲線も、紫外領域から波長約380nmまでは、急峻に立ち上がり、その後の可視光領域では、透過率が平坦(一様)である。紫外領域においては、透過率は、D1<D2<D3の関係がり、粒子径が小さい方が紫外領域での吸収が大きい。一方、可視光領域の透過率を見ると、D3<D2<D1の関係があり、粒子径が小さい方が、可視光領域での透過率が高い。
特に、透過率の差は、D1又はD2とD3との間で大きい。したがって、可視光領域の最小波長を約400nm、図5の例では、380nm程度を可視光領域の最小波長とすると、可視光領域の最小波長より小さい粒子径の半導体粒子を用いることで、紫外領域での吸収を大きく取り、可視光領域での光の透過率を大きくすることができる。この結果、光学フィルタの性能が向上している。
―受光感度特性―
紫外領域に異なる吸収端を有する直接遷移型半導体粒子を混合したペーストにより作製された光学フィルタを用いたフォトダイオードの光検出信号の差分信号PS1・PS2・PS3は、図6に示すように表される。縦軸は受光感度(任意単位)を、横軸は波長(nm)を示す。MgZnO半導体粒子の光学フィルタを使ったフォトダイオード(PD)の光検出信号と、Ga2O3半導体粒子を光学フィルタに使ったPDの光検出信号の差分信号を示すのがPS2である。差分信号PS2の感度曲線により、UV−Bを検出することができる。
また、ZnO半導体粒子の光学フィルタを使ったPDの光検出信号と、MgZnO半導体粒子を光学フィルタに使ったPDの光検出信号の差分信号を示すのがPS3である。差分信号PS3の感度曲線により、UV−Aを検出することができる。
また、ZnO半導体粒子の光学フィルタを使ったPDの光検出信号と、Ga2O3半導体粒子を光学フィルタに使ったPDの光検出信号の差分信号を示すのがPS1である。差分信号PS1の感度曲線により、UV−Cを検出することができる。
(光検出装置)
第1の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置は、紫外領域における一定の第1波長範囲λの光を吸収する第1の光学フィルタを有する第1の光検出部と、紫外領域において第1波長範囲λを含む第2波長範囲λ1の光を吸収する第2の光学フィルタを有する第2の光検出部とを備える。ここで、第1の光学フィルタ及び第2の光学フィルタは、紫外領域に吸収端を有する直接遷移型半導体粒子を含み、直接遷移型半導体粒子が粉体の状態における拡散反射スペクトルの反射率が可視光領域の波長範囲で平坦な特性を有する。さらに、第1の光検出部の信号と第2の光検出部の信号を用いて第1波長範囲λの光量を演算可能である。
また、第1の光学フィルタ及び第2の光学フィルタは、それぞれ紫外領域及び可視光領域に吸収端がないペースト状材料と吸収端の異なる半導体粒子との混合物であっても良い。
また、第1の光検出部及び第2の光検出部は、光電変換により光の検出を行なっても良い。
また、第1の光学フィルタと同じ特性の第3の光学フィルタと、第1の光検出部とは異なる面積の光電変換領域とを有する第3の光検出部とを備え、第1の光検出部、第2の光検出部および第3の光検出部により、第1波長範囲λの光量を算出しても良い。
さらに、第1の光検出部と第3の光検出部とで第1波長範囲λを除く光の単位受光面積当たりの第1光検出信号J0を算出する第1の算出手段と、第2の光検出部の受光面積Sと第1光検出信号J0の積と第2の光検出部の光検出信号との差を求めて第1波長範囲λの光量を算出する第2の算出手段とを備えていても良い。
第1の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置の模式的断面構造は、図7に示すように表される。
第1の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置は、図7に示すように、共通の支持基板40を備える。支持基板40は、例えばSi基板を適用可能である。支持基板40には、1つの光検出部に相当する受光素子100、1つの光検出部に相当する受光素子200が形成される。受光素子100・200は、図の上方から照射される光を検出する。pnの極性は、図7中の表示と逆転していても良く、以下同様である。
受光素子100では、p型層2が層間絶縁膜10を境界にして形成される。p型層2の表層部には、平面視において、p型層2の周縁から間隔を隔てた内方の領域に、その表面からn型不純物をドーピングして形成されたn型層3が埋設される。これにより、受光素子100には、p型層2とn型層3とのpn接合からなる光電変換領域Aが形成される。
p型層2の表面及びn型層3の表面は、SiO2またはSiN等からなる透明な保護膜7で覆われる。また、p型層2の側面は、層間絶縁膜10により覆われる。層間絶縁膜10は、保護膜7同様、SiO2またはSiN等からなる透明な膜で構成される。保護膜7上には、アノード電極5、カソード電極6が形成される。アノード電極5は、保護膜7に形成された開口部を介して、p型層2に接続され、カソード電極6は、保護膜7に形成された開口部を介して、n型層3に接続される。これにより、p型層2とn型層3のpn接合領域での光電変換によって生じる光電流は、カソード電極6から光検出信号として出力される。また、p型層2とn型層3とのpn接合からなる光電変換領域Aが形成される。
他方、受光素子200では、支持基板1上のp型層12の表層部には、平面視において、p型層12の周縁から間隔を隔てた内方の領域に、その表面からn型不純物をドーピングして形成されたn型層13が埋設される。これにより、受光素子200には、p型層12とn型層13とのpn接合からなる光電変換領域Bが形成される。
光電変換領域Aにおけるpn接合の深さと光電変換領域Bにおけるpn接合の深さは、同じに作製されるが、異なる深さに形成しても良い。また、pn接合面の深さは、短波長側の光をできるだけ検出するために、あまり深い位置には形成しないことが望ましい。
p型層12の表面及びn型層13の表面は、SiO2またはSiN等からなる透明な保護膜17で覆われる。また、p型層12の側面は、層間絶縁膜10により覆われる。保護膜17上には、アノード電極15、カソード電極16が形成される。アノード電極15は、保護膜17に形成された開口部を介して、p型層12に接続され、カソード電極16は、保護膜17に形成された開口部を介して、n型層13に接続される。これにより、p型層12とn型層13のpn接合領域での光電変換によって生じる光電流は、カソード電極16から光検出信号として出力される。
一方、カソード電極16を覆うようにして、保護膜17上に光学フィルタ14が形成される。光学フィルタ14は、紫外領域に吸収端を有する直接遷移型半導体粒子を含むペースト状物質を硬化して形成されており、紫外領域の光を吸収する光吸収層に相当する。一例として、光学フィルタ14は、ガラスペーストにZnO粒子を混ぜて作製した光吸収層とすることができる。
また、保護膜7・17については、紫外光だけでなく可視光から赤外光まで非常に高い透過率を有する透明な膜が望ましい。したがって、SiO2、ZrO2、Al2O3、Si3N4等の誘電体により構成することが望ましい。
また、受光面側に設けられた光学フィルタ14は、p型層12とn型層13とのpn接合からなる光電変換領域Bの全体を覆う広さに形成され、光学フィルタ14の面積は、光電変換領域Bの面積と同じか、あるいは光電変換領域Bの面積よりも大きく形成される。
以上のように、第1の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置は、半導体光電変換層をベースとした光電変換素子により構成することができる。ここで、半導体光電変換層とは、光を電流に変換する作用を持つ半導体層であり、例えば、pn接合やショットキー接合において空乏層を形成している半導体層が該当する。
Siフォトダイオードの場合、光電変換領域では、紫外光から、可視光、赤外光まで、幅広く吸収して光電流に変換する。したがって、第1の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置においては、受光素子100の光検出信号から受光素子200の光検出信号を引き算すると、紫外光全体(UV−A)+(UV−B)+(UV−C)を検出することができる。
このとき、光学フィルタ14を配置した受光素子200では、干渉フリンジの問題は発生しない。光学フィルタ14は、微粒子を分散させたペースト状物質を用いるため、光学フィルタ中に光散乱を発生させ、干渉フリンジを防止することができる。
一方、受光素子100の受光面にも、光学フィルタを形成しても良い。この場合の光学フィルタは、ガラスペーストのみをp型Si半導体2上にスクリーン印刷して、ZnO半導体粒子を含まないようにする。ガラスペーストからなる光学フィルタは、紫外光、可視光、赤外光等を透過させ、特定の波長の光吸収がない膜であり、ダミー層として用いることができる。また、この光学フィルタと光学フィルタ14は両方ともに同じように作製、焼成して、透明度を同じにすることで、散乱による光の透過率の違いがないようにし、受光感度が異ならないようにする。但し、受光面積を調整することで、透過率の違いを補正しても良い。
―光検出装置の製造方法―
第1の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置の製造方法について説明する。既に良く知られた製造手法を用いて作製できるものであるため、製造手順の一例を簡単に説明する。
(a)まず、支持基板40上にp型シリコン層2・12を形成する。
(b)次に、p型シリコン層2・12の表面(上面)を酸化させて、保護膜7・17となる酸化被膜(SiO2)を形成する。
(c)次に、この酸化被膜(SiO2)に穴を開けてイオン注入法等により、n型不純物を注入してn型層3・13を作製する。
(d)上記酸化被膜(SiO2)に形成された穴の領域は、アノード電極5・15、カソード電極6・16の各電極が接触するp型層及びn型層の領域となるので、イオン注入法等により接触抵抗が低減するようにコンタクト領域(図示省略)を形成する。
(e)その後、p型シリコン層2・12の中央部分や外側部分を酸化させて層間絶縁膜10となる酸化被膜(SiO2)を作製する。
(f)次に、アノード電極5・15、カソード電極6・16をスパッタ法又は蒸着法により形成する。
(g)次に、光学フィルタ14を形成する。光学フィルタ14は、図3の工程S1〜S5にしたがって、ZnO粉末入りのガラスペーストを作製した後、p型Si半導体12上にスクリーン印刷して形成する。光学フィルタの形成方法には、上記スクリーン印刷の他に、スピンコート法、ディップ法等により形成することもできる。
光学フィルタの作製に際して、特に、ペースト状物質の熱膨張係数が、光学フィルタ14が積層される半導体又は基板の熱膨張係数と近いと、剥がれにくくなるので好ましい。
また、光学フィルタ14の膜厚は、特に限定されるものではないが、光学フィルタ14が積層される半導体又は基板の熱膨張係数との差が大きい場合は、0.1〜10μm程度に形成することが望ましい。
(h)最後にアノード電極5・15、カソード電極6・16に対して配線などを行う。
次に、第1の実施の形態に係る光学フィルタを適用した別の光検出装置の模式的断面構造は、図8に示すように表される。
図8においては、図7の構成に、受光素子200と同様な構成の受光素子300・500が加えられて4つの受光素子により構成される。ただし、受光素子300・500の光学フィルタ24・44は、受光素子200の光学フィルタ14とは、光の吸収波長範囲が異なる。
光検出部としての受光素子300について、簡単に説明すると、支持基板40には、p型層22が層間絶縁膜10を境界にして形成される。p型層22の表層部には、p型層22の周縁から間隔を隔てた内方の領域に、その表面からn型不純物をドーピングすることによって形成されたn型層23が埋設される。これにより、受光素子300には、p型層22とn型層23とのpn接合からなる光電変換領域Cが形成される。この光電変換領域Cで光を電流に変換して出力する。
p型層22の表面及びn型層23の表面は、SiO2またはSiN等からなる透明な保護膜27で覆われている。また、p型層22の側面は、層間絶縁膜10により覆われる。保護膜27上には、アノード電極25、カソード電極26が形成される。アノード電極25は、保護膜27に形成された開口部を介して、p型層22に接続される。カソード電極26は、保護膜27に形成された開口部を介して、n型層23に接続される。これにより、p型層22とn型層23のpn接合領域での光電変換によって生じる光電流は、カソード電極26から光検出信号として出力される。また、カソード電極26を覆うようにして、保護膜37上に光学フィルタ24が形成される。
光学フィルタ24は、紫外領域に吸収端を有する半導体粒子を含むペースト状物質を硬化させて形成されており、紫外領域の光を吸収する光吸収層に相当する。
光検出部としての受光素子500について、簡単に説明すると、支持基板40には、p型層42が層間絶縁膜10を境界にして形成される。p型層42の表層部には、p型層42の周縁から間隔を隔てた内方の領域に、その表面からn型不純物をドーピングして形成されたn型層43が埋設される。これにより、受光素子500には、p型層42とn型層43とのpn接合からなる光電変換領域Eが形成される。この光電変換領域Dで光を電流に変換して出力する。
p型層42の表面及びn型層43の表面は、SiO2またはSiN等からなる透明な保護膜47で覆われる。また、p型層42の側面は、層間絶縁膜10により覆われる。保護膜47上には、アノード電極45、カソード電極46が形成される。アノード電極45は、保護膜47に形成された開口部を介して、p型層42に接続され、カソード電極46は、保護膜47に形成された開口部を介して、n型層43に接続される。これにより、p型層42とn型層43のpn接合領域での光電変換によって生じる光電流は、カソード電極46から光検出信号として出力される。また、カソード電極46を覆うようにして、保護膜47上に光学フィルタ44が形成される。
光学フィルタ44は、紫外領域に吸収端を有する半導体粒子を含むペースト状物質を硬化させて形成されており、紫外領域の光を吸収する光吸収層に相当する。
なお、受光素子100の受光面に、ダミー層として、非晶性フッ素樹脂(アモルファスフルオロポリマー)のみによるペーストを硬化させて形成した光学フィルタを配置しても良い。
ここで、光学フィルタ14・24・44は、例えば、以下のように構成することができる。光学フィルタ14は、例えば、Mg0.5Zn0.5O粒子又はGa2O3粒子が含まれた非晶性フッ素樹脂のペーストを硬化させて形成する。光学フィルタ24は、例えば、Mg0.3Zn0.7O粒子が含まれた非晶性フッ素樹脂のペーストを硬化させて形成する。光学フィルタ44は、例えば、ZnO粒子が含まれた非晶性フッ素樹脂のペーストを硬化させて形成する。
これにより、光学フィルタ14はUV−Cを、光学フィルタ24はUV−B及びUV−C(320nm以下)を、光学フィルタ44はUV−A及びUV−B及びUV−Cを吸収することができる。
第1の実施の形態に係る光学フィルタを適用したさらに別の光検出装置の模式的断面構造は、図9に示すように表される。
図9においては、図7の構成に加えて、受光素子100と同構成であるが、受光素子100とは受光面積を異なる受光素子400を備える。光検出部としての受光素子400について、簡単に説明すると、支持基板40には、p型層32が層間絶縁膜10を境界にして形成される。
p型層32の表層部には、p型層32の周縁から間隔を隔てた内方の領域に、その表面からn型不純物をドーピングして形成されたn型層33が埋設される。これにより、受光素子400には、p型層32とn型層33とのpn接合からなる光電変換領域Dが形成される。この光電変換領域Eで光を電流に変換して出力する。
p型層32の表面及びn型層33の表面は、SiO2またはSiN等からなる透明な保護膜37で覆われる。また、p型層32の側面は、層間絶縁膜10により覆われる。保護膜37上には、アノード電極35、カソード電極36が形成される。アノード電極35は、保護膜37に形成された開口部を介して、p型層32に接続され、カソード電極36は、保護膜37に形成された開口部を介して、n型層33に接続される。これにより、p型層32とn型層33のpn接合領域での光電変換によって生じる光電流は、カソード電極36から光検出信号として出力される。また、カソード電極36を覆うようにして、保護膜37上に光学フィルタ34が形成される。
光学フィルタ34は、紫外領域に吸収端を有する半導体粒子を含むペースト状物質を硬化させて形成されており、紫外領域の光を吸収する光吸収層に相当する。一例として、光学フィルタ34は、例えば、フッ素樹脂にZnO粒子を混ぜて作製した光吸収層とすることができる。
また、受光素子400の受光面に配置された光学フィルタ34は、受光素子200の光学フィルタ14と同じ材料(ZnO粒子入りフッ素樹脂)で構成されており、紫外領域の一定の波長範囲λ(下限波長λL〜上限波長λUの範囲)の光を吸収する光吸収層で構成される。したがって、光学フィルタ14も、同様に、波長範囲λ(下限波長λL〜上限波長λUの範囲)の光を吸収する光吸収層で構成される。
光学フィルタ34は、p型層32とn型層33とのpn接合からなる光電変換領域Eの全体を覆う広さに形成されており、光学フィルタ34の面積は、光電変換領域Eの面積と同じか、あるいは光電変換領域Eの面積よりも大きく形成される。ここで、受光素子100の光電変換領域Aの広さ(面積)と受光素子400の光電変換領域Eの広さ(面積)は異なるように形成される。
受光素子200の光電変換領域Bの面積(受光面積)をS1、受光素子400の光電変換領域Eの面積(受光面積)をS4とする。受光面積は、pn接合面の面積となる。受光素子200と受光素子400との差分信号より、紫外光〜赤外光までの波長範囲から波長範囲λを除いた波長範囲λ0の検出信号を計測することができる。
受光素子200と受光素子400は、それぞれ光学フィルタ14・34により波長範囲λ0の光はカットされている。したがって、受光素子200と受光素子400の検出光電流の差(I1−I4)は、紫外光〜赤外光の波長範囲から波長範囲λを除いた波長範囲λ0の光に基づくものである。
波長範囲λ0の光が受光面積S1の単位面積あたりに入射した場合の励起される光電流をJ0とすると、受光素子400における受光面積S4についても同様にJ0となり、以下の(1)式が成立する。すなわち、
(I1−I4)=(S1−S4)×J0 (1)
(1)式において、(I1−I4)の値は測定と計算によって求めることができ、(S1−S4)の値も設計により決まる値であるから、J0の値は容易に求められる。
J0の値が算出されると、紫外光〜赤外光の範囲で吸収域を持たない受光素子100の受光面積をS2とし、受光面積S2の単位面積あたりで励起される光電流をJ2とすると、J2の値は紫外光〜可視光〜赤外光の範囲に至るまでの光を検出した結果であることから、受光素子200の光電流量(J2×S2)から(J0×S2)を引き算すれば、その差が波長範囲λ0の光電流量を表わすことになる。すなわち、波長範囲λ0の光電流量は、以下の(2)式で表される。すなわち、
波長範囲λ0の光電流量={(J2×S2)−(J0×S2)}
(2)
ここで、受光面積S2は、受光面積S1と同じであっても良い。ただし、差分演算における数値有効数字の桁落ちをできるだけ防ぐことが望ましい。このため、受光素子100・200・400について、波長範囲λの光吸収を行なう光学フィルタを備え、かつ受光面積が異なる受光素子の組み合わせを複数用意し、それぞれの組み合わせに対して、全体の平均値と偏差を計算して、最終的な波長範囲λ0の光量を算出しても良い。
(分光感度特性)
第1の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置(図8)において、受光素子100(PD11)・200(PD12)・300(PD13)・500(PD14)の波長範囲200nm〜1200nmにおける分光感度特性は、図10に示すように表される。横軸は波長(nm)を、縦軸は受光感度(任意単位)を示す。受光素子100は、紫外光〜赤外光までを光電変換するため、PD11の感度曲線は、200〜1200nmにかけて、感度を有している。一方、受光素子200の光学フィルタ14は、UV−Cの波長を吸収するため、PD12の感度曲線は、UV−Cの波長に対しては感度がない曲線となっている。
他方、受光素子300の光学フィルタ24は、UV−BとUV−Cの波長を吸収するため、PD13の感度曲線は、UV−BとUV−Cの波長に対しては感度がない曲線となっている。
また、受光素子500の光学フィルタ44は、紫外光全体を吸収するため、PD14の感度曲線は、ほぼ紫外光全体に対しては感度がない曲線となっている。
(差分信号特性)
第1の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置(図8)において、受光素子100(PD11)・200(PD12)・300(PD13)・500(PD14)の分光感度特性(図10)に基づいて計算された差分信号特性であって、図10のPD11の曲線からPD12〜PD14をそれぞれ引き算した差分信号P1・P2・P3を示す図は、図11に示すように表される。横軸は波長(nm)を、縦軸は差分信号(任意単位)を示す。また、図12は、図11の波長範囲200nm〜500nmにおける拡大図を示す。
図11および図12に示すように、受光素子100と受光素子200との受光感度曲線の差を取ることにより、UV−Cの差分信号P3を求めることができる。すなわち、P3=(PD11−PD12)である。
また、受光素子100と受光素子300との受光感度曲線の差を取ることにより、UV−BとUV−Cの差分信号P2を求めることができる。すなわち、P2=(PD11−PD13)である。
また、受光素子100と受光素子500との受光感度曲線の差を取ることにより、UV−AとUV−BとUV−Cの差分信号P1を求めることができる。すなわち、P1=(PD11−PD14)である。
なお、UV−A+UV−Bの感度は、(PD12−PD14)により求めることができる。すなわち、受光素子200の感度曲線から受光素子400の感度曲線を引けば良い。
(UV−A,UV−B,UV−Cの各領域の感度曲線)
第1の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置(図8)において、図11・図12の3つの差分信号P1・P2・P3から(UV−A)・(UV−B)・(UV−C)の各領域の感度曲線P4・P5・P6を求めた結果は、図13に示すように表される。また、図13の波長範囲200nm〜500nmにおける拡大図は、図14に示すように表される。
図11・図12において、差分信号P3は、UV−Cの感度のみを表わしている。このため、P3=P4とした。すなわち、P4=(PD11−PD12)である。したがって、受光素子100の感度曲線から受光素子200の感度曲線を引けば良い。
UV−Bの感度のみを求めるためには、P2とP3との差を取れば良い。すなわち、UV−Bの感度曲線P5=(P2−P3)=(PD12−PD13)である。したがって、直接的には、受光素子200の感度曲線から受光素子300の感度曲線を引けば良い。
また、UV−Aの感度のみを求めるためには、P1とP2との差を取れば良い。すなわち、UV−Aの感度曲線P6=(P1−P2)=(PD13−PD14)である。したがって、直接的には、受光素子300の感度曲線から受光素子500の感度曲線を引けば良い。
以上のように、4つの受光素子のうち、2つの受光素子を組み合わせて、その感度曲線の差分を取ることにより、UV−A、UV−B、UV−Cの各領域の感度を別個に検出することができる。また、上述したように、(UV−A)+(UV−B)の感度、UV−Aの感度、UV−Bの感度のそれぞれを求めるだけの場合は、受光素子100は必要ではなく、第1の実施の形態に係る光検出装置(図8)を、受光素子200・300・500の3個だけで構成することができる。
また、第1の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置(図8)において、UV−A、UV−B、UV−Cの各領域の感度を別個に検出できるように、光学フィルタ14・24・44をそれぞれ受光素子200・300・500に配置したが、この構成に限定されるものではなく、他の半導体粒子を含むようにペースト状物質を形成しても良い。例えば、GaN、ZnSe、MgSe、SnO2、β−Ga2O3、hBN、cAlN等の紫外領域に吸収端を有する半導体粒子を用いることができる。
(光学フィルタに適用可能な半導体粒子の種類と吸収端波長)
第1の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置(図8)において、光学フィルタ14・24・44に適用可能な半導体粒子の種類と吸収端波長(nm)を示す図は、図15に示すように表される。図15において、横軸は、光学フィルタに添加される半導体の元素、又は化合物を、縦軸は吸収端波長、すなわちバンドギャップ相当波長(nm)を示す。
例えば、紫外領域を波長400nm以下とするならば、SiCから右側に記載された半導体が対象となる。
以上のように、光学フィルタに適用可能な半導体粒子としては、既に説明したMgxZn1-xO(0≦x<1)に加え、GaN、ZnSe、MgSe、SnO2、Ga2O3、hBN、cAlNなどを挙げることができる。
図15から明らかなように、Ga2O3は、UV−C(波長280nm以下)以下の波長を吸収する。ZnOは紫外光全体(UV−A+UV−B+UV−C:400nm以下)を吸収する。
また、MgxZn1-xO(0≦x<1)は、Mgの含有率Xが大きくなるほど、吸収端波長が紫外光領域内の短波長側に移動する。したがって、MgxZn1-xOのMgの含有率xを変化させて、光学フィルタの吸収波長領域を変化させることができる。
ここで、MgxZn1-xOのMg含有率Xが、0≦x<0.3の場合はUV−Aの領域に吸収端が、0.3≦x<0.5の場合はUV−Bの領域に吸収端が、0.5≦x<1の場合はUV−Cの領域に吸収端が存在する。
GaN、ZnSe、MgSe、SnO2、Ga2O3、hBN、cAlNの半導体を所望の粒子径にするには、図3と同様に、工程S1〜S3・S5の各工程を実施する。MgxZn1-xOと異なり、工程S4の粉末熱処理工程は必ずしも必要ではない。すなわち、スラリー乾燥(S3)の工程が終了した段階で、着色はなく、白い微粒子粉末が得られるため、これをペーストに分散処理させる(S5)。これにより、紫外光のみを十分に吸収してカットし、可視光領域に対しては一様に透明である光学フィルタを作製可能である。
例えば、ZnOの半導体粒子が含まれたペーストによる光学フィルタとGa2O3の半導体粒子が含まれたペーストによる光学フィルタを用いてセンサをそれぞれ形成すれば、差分により、図15の吸収端波長の差H1に相当する波長領域の紫外光を検出する光検出装置を構成可能である。
第1の実施の形態によれば、紫外領域において特定の波長域の光のみを選択的に吸収する光学フィルタ及びその製造方法並びに光検出装置を提供することができる。
[第2の実施の形態]
(光学フィルタ)
第2の実施の形態に係る光学フィルタの光透過率特性は、図16(a)に示すように表され、第2の実施の形態に係る光学フィルタ中の凝集粒子数と半導体粒子濃度との関係は、図16(b)に示すように表される。図16(a)は、ポリエステル樹脂のペーストにZnO粒子を添加したフィルタ層の光透過率特性に対応し、図16(b)は、ZnOの凝集粒子数と半導体粒子濃度との関係を示す。ZnO粒子の粒子径は50nmとした。図16(a)において、縦軸は正規化された光透過率を、横軸は波長(nm)を示す。ここで、ポリエステル樹脂のペーストにZnO粒子を添加した後、ダメージレス分散処理を行った曲線がZ1であり、分散処理を行っていない曲線がZ0である。ここで、ダメージレス分散処理とは、粒子表面を壊す、傷付けることなく分散する処理方法である。
一方、図16(b)には、ZnOの凝集粒子数とZnO濃度との関係が示されているが、ZG1、ZG2が分散処理無しの場合を示す。また、ZG11、ZG22が分散処理有りの場合を示す。図16(b)からわかるように、ZnO濃度を3wt%から6wt%に変化させた場合でも、ZnOの凝集粒子数に大きな変化はなく、ほぼ一定である。これは、分散処理を行った場合でも、分散処理を行わなかった場合でも同様である。
第2の実施の形態に係る光学フィルタは、硬化温度400℃以下かつ親水性を有する透光性の樹脂と、樹脂に分散され、特定の波長範囲の光を吸収する半導体粒子とを備える。
ここで、樹脂は、接触角が70度以下を有することが望ましい。
また、半導体粒子の粒子径は100nm以下であることが望ましい。
また、半導体粒子のレイリー散乱の凝集粒子数は100以下であることが望ましい。
また、半導体粒子の粒子濃度は30wt%以下であることが望ましい。
また、光学フィルタの膜厚は10μm以下であっても良い。
また、樹脂は、ポリエステル樹脂で形成可能である。
第2の実施の形態に係る光学フィルタは、ペースト状の物質を硬化させて形成される。ここで、ペースト状の物質として、紫外光から赤外光まで幅広く光を透過させる材料を用いる。例えば、ガラスペースト、アクリル樹脂、フッ素系樹脂、透明レジスト等の透明樹脂を適用可能である。
ここで、ペーストには、対象とする波長域(波長約300nm〜約1200nm)での光透過率が高い材料を用いることが、光センサの感度向上につながり、望ましい。すなわち、検出したい波長範囲を含み、この波長範囲よりも広い波長領域で光透過率が高い材料を用いることが望ましい。
また、光センサ上に光学フィルタを配置した構成の光センサを形成する場合、量産工程におけるリフロー時には、温度約280℃で1分間程度、加熱される。したがって、ペースト材料は温度約280℃の温度で安定性を有していることが必要である。
また、ペースト材料の硬化温度が、光センサを構成するICの耐熱上限温度約400℃以下であることが必要である。例えば、光センサを構成するICに良く用いられるシリコン等は、耐熱上限温度が約400℃である。
第2の実施の形態に係る光学フィルタにおいては、ペースト中に光吸収作用を持つ半導体粒子を均一分散させるために、半導体粒子と親媒性の高いペーストを有することが好ましい。しかし、金属酸化物の多くがフッ素系溶媒に対して親媒性が低く、フッ素系ペースト中で凝集してしまう。例えば、紫外光センサにおいては表面が親水性のZnO粒子、Ga2O3粒子等を用いるが、フッ素樹脂中に均一分散するに適した分散剤が必要である。分散剤を使えば、均一分散させることができるが、分散度の再現性の点では、分散剤を用いなければ均一分散できない樹脂は量産工程に適していない。
(レイリー散乱)
ペースト中に光吸収作用を持つ半導体粒子を均一分散させることが望ましい理由は、以下の通りである。ペースト中に添加する半導体粒子の粒子径は、対象とする波長領域約300nm〜約1200nmよりも十分小さいため、レイリー散乱が発生する。
一般的に、散乱係数の波長と散乱粒子の大きさに関わるパラメータとしてサイズα=(πD/λ)が知られている。ここで、Dは粒子直径、λは光の波長である。
α≪1のときレイリー散乱、αが1に近いときミー散乱、α≫1のとき幾何学近似で表現できる。
―レイリー散乱におけるサイズαをパラメータとする波長と粒子径との関係―
第2の実施の形態に係る光学フィルタにおいて、レイリー散乱におけるサイズαをパラメータとする波長と粒子径との関係は、図17に示すように表される。
一例として、紫外光を吸収するZnO粒子で、粒子径50nmのものを用いた場合、波長領域約400nm〜約1200nmよりも十分小さいため、レイリー散乱が発生する。図17では、波長約400nm以上においてレイリー散乱におけるサイズαが0.4以下の範囲に相当する。
―レイリー散乱の散乱係数kS―
また、レイリー散乱の散乱係数kSは、次の(3)式に示すように表される。
ks=(2π5n/3)×((R2−1)/(R2+2))×(d6/λ4) (3)
ここで、nは粒子数、Rは反射係数、dは粒子径、λは波長である。
(3)式から明らかなように、レイリー散乱では、散乱係数kS(散乱光強度)は波長の4乗に反比例して小さくなる。すなわち、波長が短くなると、波長の4乗に比例して散乱光強度は大きくなり、光の透過率は小さくなる。光透過率の低下は光センサの検出感度の低下を招く。
さらに、ペースト中に添加した半導体粒子は、凝集して2次粒子を形成する。例えば、1次粒子がc個凝集した2次粒子が形成されると、レイリー散乱の散乱係数kS2は、次の(4)式に示すように表される。
kS2=c2×(2π5n/3c)×((R2−1)/(R2+2))×(d6/λ4)=(2π5cn/3)×((R2−1)/(R2+2))×(d6/λ4) (4)
(4)式から明らかなように、1次粒子と2次粒子を含む散乱光強度は、1次粒子の散乱光強度のc倍となる。このため、2次粒子を構成する1次粒子数が増えると、さらに光透過率が低下して、ますます光センサの感度が低下して光を検出しにくくなる。
以上のような理由から、第2の実施の形態に係る光学フィルタにおいては、ペースト中に光吸収作用を持つ半導体粒子を均一分散させることが望ましい。
ここで、レイリー散乱に関する波長の4乗に反比例して散乱係数が小さくなるという作用は、粒子径50nmの半導体粒子だけでなく、厳密でないにしても約100nm〜約200nmの粒径の半導体粒子においても適用可能である。
ペースト中に光吸収作用を持つ半導体粒子を均一分散させるために、溶媒としてのペーストには、親水性の高い樹脂を用いることが望ましい。ポリエステル樹脂は親水性が高い。また、ポリエステル樹脂を溶かす溶媒には、シクロヘキサノン(C6H10O)が適用可能であるが、沸点が155℃と低く揮発性も高い。
ポリエステル樹脂を溶かす溶媒には、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)(C5H9NO:沸点202℃)の方が揮発性が低く、粘度変化を小さく抑えられるので好ましい。
第2の実施の形態に係る光学フィルタにおいて、レイリー散乱を仮定して描かれたフィティングカーブは、図18に示すように表される。図18においては、ZnO粒子分散ポリエステル樹脂について、ダメージレス分散処理を行った場合と分散処理を行わない場合との比較が示されている。また、ZnO粒子の濃度は6wt%とした。
図18において、曲線D1がダメージレス分散処理を行った場合の特性、曲線D0が分散処理を行わなかった場合の特性を示す。また、凝集粒子数はダメージレス分散処理を行わなかった場合には31個となったのに対し、ダメージレス分散処理を行った後には17個となった。この凝集粒子数cを考慮して上記(4)式よりレイリー散乱を仮定して曲線D0・D1の各場合についてフィッティングカーブを求めたのが破線で示された曲線F2・F1である。なお、上記のフィッティングカーブは、図16(a)においても破線で示されている。
(比較例)
比較例に係る光学フィルタの光透過率特性(FS3は、ダメージレス分散処理を行った場合、FS1・FS2・FS4は分散処理無しの場合)は、図19(a)に示すように表され、比較例に係る光学フィルタにおいて、フッ素樹脂中のZnO粒子の凝集粒子数とZnO粒子の濃度との関係(FG1、FG2、FG3が分散処理無しの場合、FG11が分散処理有りの場合)は、図19(b)に示すように表される。
図19(a)には、フッ素樹脂のペーストにZnO粒子を添加したフィルタ層の光透過率と波長との関係が示されている。ここで、ZnO粒子の粒子径は50nmとした。また、曲線FS3は、フッ素樹脂のペーストにZnO粒子を添加した後、ダメージレス分散処理を行った特性であり、曲線FS1・FS2・FS4は分散処理を行っていない特性である。また、破線は、フィッティングカーブを示す。
他方、図19(b)には、フッ素樹脂のペーストにZnO粒子を添加したフィルタ層のZnOの凝集粒子数とZnO濃度(wt%)との関係が示されている。FG1、FG2、FG3が分散処理無しの場合、FG11が分散処理有りの場合を示す。
ここで、図19(b)のFG1:ZnO濃度(1wt%)のときの特性が図19(a)の曲線FS1に対応する。また、図19(b)のFG2:ZnO濃度(3wt%)のときの特性が図19(a)の曲線FS2である。また、図19(b)のFG11:ZnO濃度(6wt%)のときの特性が図19(a)の曲線FS3に対応する。また、図19(b)のFG3:ZnO濃度(10wt%)のときの特性が図19(a)の曲線FS4に対応する。
図19(b)から明らかなように、FG1:ZnO濃度(1wt%)のとき凝集粒子数約180、FG2:ZnO濃度(3wt%)のとき凝集粒子数約90、FG3:ZnO濃度(10wt%)のとき凝集粒子数約110となっており、図16(b)と比較して凝集粒子数が大きい。これは、ダメージレス分散処理を行ったFG11:ZnO濃度(6wt%)のときの特性も同様に凝集粒子数が大きい。さらに、FG1〜FG3を見てもわかるように、ZnO粒子濃度を変化させた場合、凝集粒子数に大きなバラツキがある。このため、図19(a)の曲線FS1・FS2・FS4の各透過率に見られるように、可視光領域での透過率が大きく変動し、また、紫外領域においても透過率が大きく変動する。
上記(3)式のレイリー散乱の散乱係数kSからわかるように、粒子濃度が変化すると粒子数nが変化し、粒子数nに比例して散乱光強度も変化する。粒子濃度を大きくすると、光透過率が低下する。ところが、一般的には、粒子濃度を変化させたときに、2次粒子を構成する1次粒子数(凝集粒子数c)が変化する。このため、(4)式の散乱係数kS2が変化して光透過率等の光学特性の制御が困難になる。
第2の実施の形態に係る光学フィルタにおいて、ポリエステル樹脂中に分散した半導体粒子がAl2O3粒子の場合の光透過率特性(A1、A2、A3のいずれも分散処理無しの場合)は、図20(a)に示すように表され、ポリエステル樹脂中に分散した半導体粒子がAl2O3粒子の場合の凝集粒子数とAl2O3濃度の関係(AG1、AG2、AG3が分散処理無しの場合、AG11が分散処理有りの場合)は、図20(b)に示すように表される。ここで、Al2O3粒子の粒子径は50nmとした。また、AG1:Al2O3濃度(3wt%)のときの特性が図20(a)の曲線A3に対応し、AG2:Al2O3濃度(10wt%)のときの特性が曲線A2に対応し、AG3:Al2O3濃度(20wt%)のときの特性が曲線A1に対応する。
また、ポリエステル樹脂中では、Al2O3の粒子濃度を変えても、凝集粒子数は5の近辺に留まっている。このように、Al2O3においても、粒子濃度を変えても凝集粒子数は変わらないことがわかる。
また、第2の実施の形態に係る光学フィルタにおいて、ポリエステル樹脂中に分散した半導体粒子がSnO2粒子の場合の光透過率特性(分散処理有りの場合)は、図20(c)に示すように表され、ポリエステル樹脂中に分散した半導体粒子がSnO2粒子の場合の凝集粒子数とSnO2濃度の関係(分散処理有りの場合)は、図20(d)に示すように表される。SnO2粒子の粒子径は50nmとした。図20(b)には、SnO2の凝集粒子数とSnO2濃度(wt%)との関係が示されているが、やはり凝集粒子数の数値は小さいことがわかる。
ポリエステル樹脂にZnO粒子以外の半導体粒子としてAl2O3粒子・SnO2粒子を添加した場合でも、粒子濃度により凝集粒子数がほとんど変わらないことが明らかである。
このように、親水性を有する樹脂材料に半導体粒子を分散させた膜では、分散処理した場合も分散処理していない場合も共に、半導体粒子濃度の変化によって、凝集粒子数は、ほとんど変化しないことがわかる。
したがって、上記ポリエステル樹脂中では、一般的に半導体粒子濃度を変えることにより、散乱係数を制御することができる。これにより、光の透過率を制御することができる。
(接触角)
一般的に、水滴接触角度と物理的特性との対応関係は、図21に示すように表される。水滴接触角が0度〜10度のとき超親水性、10度〜70度のとき親水性、70度〜110度のとき撥水性、110度〜180度のとき超撥水性となる。
第2の実施の形態に係る光学フィルタにおいて、水滴接触角測定方法は、図22に示すように表される。
図22に示す水滴接触角測定方法を用いて、溶かしたポリエステル樹脂の接触角を調べた。基板112上に上記の溶解したポリエステル樹脂11を塗布して硬化させ、ポリエステル樹脂11の上方から水滴10を4μl滴下して、滴下3秒後にCCDカメラ13で撮影して、ポリエステル樹脂11上の水滴の接触角を測定した。また、ポリエステル樹脂に替えてフッ素樹脂をガラス基板上に形成して、同様に水滴の接触角を測定した。さらに、ガラス基板上の水滴の接触角も測定した。
第2の実施の形態に係る光学フィルタにおいて、異なる材料からなる基板上に水滴を滴下したときの接触角は、図23(a)〜図23(f)に示すように表される。ここで、図23(a)はポリエステル樹脂上の水滴を横から見た様子を示し、図23(b)はポリエステル樹脂上の水滴を真上から様子を示す。図23(a)および図23(b)に示すように、左側接触角θ1は68度、右側接触角θ2は68度であった。
また、図23(c)はフッ素樹脂上の水滴を横から見た様子を示し、図23(d)はフッ素樹脂上の水滴を真上から様子を示す。図23(c)および図23(d)に示すように、左側接触角θ1は105.4度、右側接触角θ2は105.5度であった。
また、図23(e)はガラス基板上の水滴を横から見た様子を示し、図23(f)はガラス基板上の水滴を真上から様子を示す。図23(e)および図23(f)に示すように、左側接触角θ1は28.3度、右側接触角θ2は29.2度であった。
上記の測定結果からわかるように、フッ素樹脂は撥水性であり、ガラスは親水性である。また、ポリエステル樹脂は親水性であり、撥水性側に近い親水性である。
ポリエステル樹脂のような親水性の樹脂をペーストに用いることにより、光吸収作用を持つ半導体粒子を均一分散させることができる。
第2の実施の形態に係る光学フィルタにおいて、波長(nm)をパラメータとしたときの透過率と凝集粒子数(個)との関係は、図24に示すように表される。図24は、ポリエステル樹脂中に粒子径50nmのZnO半導体粒子を添加したと仮定してシミュレーションにより算出した。また、光学フィルタの膜厚は1μmとした。図24には、波長300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200(nm)のそれぞれについて、透過率−凝集粒子数曲線が示されている。
図24において、例えば、λ1は波長300nmの場合の透過率−凝集粒子数曲線に対応し、λ2は波長400nmの場合の透過率−凝集粒子数曲線に対応する。例えば、λ2の曲線においてZnOの凝集粒子数が100個以下であれば、透過率50%以上(約60%)を保持することができる。
第2の実施の形態に係る光学フィルタにおいて、ポリエステル樹脂中のZnO粒子とフッ素樹脂中のZnO粒子を比較したときの透過率とZnO粒子濃度(wt%)との関係は、図25に示すように表される。図25においては、ZnO微粒子分散ポリエステル樹脂とZnO微粒子分散フッ素樹脂の紫外光遮蔽能力の差異が示されている。
ZnO微粒子分散ポリエステル樹脂における光透過率特性(図16(a))とZnO微粒子分散フッ素樹脂における光透過率特性(図19(a))との比較から明らかなように、ZnO微粒子分散フッ素樹脂ではZnO粒子濃度により凝集粒子数が大きく変化する。このため、紫外領域における透過率が大きく変化する。
ここで、図16(a)と図19(a)の光透過率特性において、波長350nmの場合の透過率を抜き出して、ZnO粒子濃度(wt%)との関係でプロットしたものが図25に対応している。図25において、プロットZF1〜ZF4がZnO微粒子分散フッ素樹脂の光透過率であり、図19(a)の曲線FS1〜FS4の波長350nmにおける透過率にそれぞれ対応している。また、プロットZP1〜ZP2がZnO微粒子分散ポリエステル樹脂の光透過率であり、図16(a)の曲線Z0〜Z1の波長350nmにおける透過率にそれぞれ対応している。
図25からわかるように、ZnO微粒子分散フッ素樹脂に比較して、ZnO微粒子分散ポリエステル樹脂の方が透過率が相対的に小さく、紫外光の遮蔽能力も高い。
第2の実施の形態に係る光学フィルタにおいて、半導体粒子の粒子径(nm)をパラメータとしたときの透過率特性は、図26に示すように表される。図26においては、ZnO微粒子分散ポリエステル樹脂においてZnO粒子の粒子径を変更した場合の透過率と波長の関係が示されている。粒子径は10nm、20nm、50nm、100nm、200nm、500nmと変化させている。粒子濃度は10wt%とし、ZnO粒子による紫外光吸収の影響を小さくした。また、光学フィルタの膜厚は1μmとした。この場合、粒子径が大きくなる程、散乱係数が大きくなり、光透過率が低下する。粒子径100nmでは、波長350nmの透過率は約60%となっている。したがって、粒子径100nm以下が望ましい。
第2の実施の形態に係る光学フィルタにおいて、半導体粒子の比重をパラメータとしたときの透過率特性は、図27に示すように表される。図27においては、半導体微粒子分散ポリエステル樹脂において半導体粒子の比重を変更した場合の透過率と波長の関係が示されている。半導体粒子の比重を変更するために、半導体粒子の種類をZnO(5.606g/cm3)、Al2O3(3.97g/cm3)、Ga2O3(5.9g/cm3)、SnO2(6.95g/cm3)と替えてシミュレーション解析を行った。それぞれの半導体粒子濃度は10wt%とし、それぞれの粒子径は50nm、光学フィルタの膜厚は1μmとした。半導体粒子の比重を変化させても、それほど透過率に変化がないことがわかる。
第2の実施の形態に係る光学フィルタにおいて、樹脂の膜厚(μm)をパラメータとしたときの透過率特性は、図28に示すように表される。図28においては、ZnO微粒子分散ポリエステル樹脂の膜厚(μm)を変化させた場合の透過率と波長(nm)との関係が示されている。膜厚は10nm以下の厚さで調べている。ZnO粒子濃度は10wt%、粒子径は50nmとした。膜厚を厚くしていくと、特に紫外領域における透過率の変化が大きくなる。例えば、この場合、膜厚が2μmの場合であれば、300nmの波長で透過率50%以上(約70%)を確保できる。
第2の実施の形態に係る光学フィルタにおいて、半導体粒子の凝集粒子数(個)をパラメータとしたときの透過率特性は、図29に示すように表される。図29においては、ZnO微粒子分散ポリエステル樹脂におけるZnO凝集粒子数を変化させたときの透過率と波長(nm)との関係が示されている。図29は、図24のグラフを、縦軸に透過率、横軸に波長(nm)を取り、ZnO凝集粒子数をパラメータにしたグラフに変換したものである。
第2の実施の形態に係る光学フィルタにおいて、半導体粒子の粒子濃度(wt%)をパラメータとしたときの透過率特性は、図30に示すように表される。図30においては、ZnO微粒子分散ポリエステル樹脂において、ZnO粒子濃度(wt%)をパラメータとしたときの透過率と波長(nm)との関係が示されている。ZnOの粒子径は50nm、ポリエステル樹脂の膜厚は1μmとした。粒子濃度が大きくなると、レイリー散乱により、紫外領域側の透過率が特に悪くなる。波長300nmにおける透過率は、ZnO粒子濃度20wt%の場合では50%以上(約70%)を確保することができる。ZnO粒子濃度50wt%の場合は、波長300nmにおいて透過率50%未満となる。したがって、ZnO粒子濃度30wt%以下が望ましい。
また、光学フィルタに用いる半導体粒子とペーストとの屈折率差が小さいほど、散乱係数が小さくなるので、光散乱は小さくなり、光センサの感度が向上する。したがって、ペースト材料に用いる樹脂は、半導体粒子の屈折率に近くなることが望ましい。
第2の実施の形態に係る光学フィルタにおいて、樹脂の屈折率をパラメータとしたときの透過率特性は、図31(a)に示すように表され、半導体粒子の屈折率をパラメータとしたときの透過率特性は、図31(b)に示すように表される。
図31(a)ではZnO微粒子分散樹脂において、樹脂の屈折率を変化させて、膜の透過率と波長(nm)との関係をシミュレーションした。ZnO粒子濃度は10wt%とし、粒子径は50nm、膜厚は10μmとした。樹脂の屈折率は、1.4〜1.9まで変化させた。ZnOの屈折率は1.95とした。樹脂の屈折率が1.4の場合は、ZnOの屈折率と開きがあるので透過率がやや低下する。
他方、図31(b)では半導体微粒子分散樹脂において、半導体の屈折率を変化させて、膜の透過率と波長(nm)との関係をシミュレーションした。半導体粒子濃度は10wt%とし、半導体の比重5.606g/cm3(ZnOの比重)、半導体粒子径は50nm、膜厚は10μmとした。半導体粒子の屈折率は、1.4〜1.9まで変化させた。樹脂の屈折率は1.65とした。この場合、半導体粒子と樹脂の屈折率差は大きくならないので、図に示すように、透過率に違いはほとんど見られない。このように、屈折率が違っても、透過率は、ほとんど影響を受けない。
(光検出装置)
第2の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置は、一定の第1波長範囲λの光を吸収する第1の光学フィルタを有する第1の光検出部と、第1波長範囲λを含む第2波長範囲λ1の光を吸収する第2の光学フィルタを有する第2の光検出部とを備え、第1の光学フィルタ及び第2の光学フィルタは上記光学フィルタにより構成され、第1の光検出部の信号と第2の光検出部の信号を用いて第1波長範囲λの光量を演算可能である。
また、第1の光検出部及び第2の光検出部は、光電変換により光の検出を行なう。
また、第1の光学フィルタ及び第2の光学フィルタは、それぞれ異なる吸収端を有する半導体粒子が分散されていても良い。
第2の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置の模式的断面構造は、図7と同様に表すことができる。すなわち、上記樹脂に特定の波長範囲の光を吸収する半導体粒子を分散させた光学フィルタを用いた光検出装置は、図7と同様に表すことができる。製造方法についても同様であるため、重複説明は省略する。
第2の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置においては、図7と同様に、カソード電極6を覆うようにして、保護膜7上に光学フィルタ4が形成されている。光学フィルタ4は、例えばポリエステル樹脂にSnO2粒子を分散させた膜で形成されており、紫外領域の特定の波長範囲(UV−B)+(UV−C)の光を吸収する光吸収層に相当するものである。
一方、第2の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置においても、図7と同様に、カソード電極16を覆うようにして、保護膜17上に光学フィルタ14が形成されている。光学フィルタ14は、例えばポリエステル樹脂にZnO粒子を分散させた膜で形成されており、紫外領域全体の光を吸収する光吸収層に相当するものである。
また、保護膜7、17については、紫外光だけでなく可視光から赤外光まで非常に高い透過率を有する透明な膜が望ましい。したがって、SiO2、ZrO2、Al2O3、Si3N4等の誘電体により構成することが望ましい。
Siにより構成されたフォトダイオードの場合、光電変換領域では、紫外光から、可視光、赤外光まで、幅広く吸収して光電流に変換する。したがって、光学フィルタ4と光学フィルタ14に異なる吸収波長域を有する半導体粒子が分散されたポリエステル樹脂を用いれば、受光素子100の光検出信号から受光素子200の光検出信号を引き算すると、特定の波長範囲の光を検出することができる。
第2の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置において、UV−Aセンサを構成する場合の光学フィルタの透過率特性は、図32に示すように表され、図32において、波長250nm〜500nmの範囲の拡大図は、図33に示すように表される。
図32においては、受光素子100の光学フィルタ4・受光素子200の光学フィルタ14の透過率が、曲線PD1・曲線PD2で示される。ここで、光学フィルタ4は、半導体粒子としてSnO2を分散したポリエステル樹脂で形成され、光学フィルタ14は、半導体粒子としてZnOを分散したポリエステル樹脂で形成される。
曲線PD1は受光素子100の感度曲線と等価であり、曲線PD2は受光素子200の感度曲線と等価である。受光素子100の光学フィルタ4は、UV−B及びUV−Cの波長を吸収するため、曲線PD1は、UV−B及びUV−Cの波長の光をカットした曲線となる。一方、受光素子200の光学フィルタ4は、UV−A及びUV−B及びUV−Cの波長を吸収するため、曲線PD2は、紫外光全体の波長の光をカットした曲線となる。
図32において、曲線P1は、曲線PD1と曲線PD2に基づいた差分による透過率を示す。すなわち、曲線P1=(曲線PD1−曲線PD2)である。
図32および図33に示すように、受光素子100と受光素子200との受光感度曲線の差を取ることにより、UV−Aの感度に相当する曲線P1を求めることができる。
第2の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置において、UV−Bセンサを構成する場合の光学フィルタの透過率特性は、図34に示すように表され、図34において、波長250nm〜500nmの範囲の拡大図は、図35に示すように表される。
図34においては、受光素子200の光学フィルタ14・受光素子100の光学フィルタ4の透過率が、曲線PD3・曲線PD4で示される。
図34においては、受光素子100の光学フィルタ4をポリエステル樹脂にSnO2粒子を分散させた膜のままとし、受光素子200の光学フィルタ14をZnO粒子に替えて、ポリエステル樹脂にAl2O3粒子を分散させた膜で構成する。これは、UV−Cの光を吸収する光吸収層に相当するものである。
曲線PD4は受光素子100の感度曲線と等価であり、曲線PD3は受光素子200の感度曲線と等価である。受光素子100の光学フィルタ4は、UV−B及びUV−Cの波長を吸収するため、曲線PD4の透過率はUV−B及びUV−Cの波長の光をカットした曲線となる。また、受光素子200の光学フィルタ14は、UV−Cの波長を吸収するため、曲線PD3の透過率は、UV−Cの波長の光をカットした曲線となる。
図34において、曲線P2は、曲線PD3と曲線PD4に基づいた差分による透過率を示す。すなわち、曲線P2=(曲線PD3−曲線PD4)である。
図34および図35に示すように、受光素子100と受光素子200との受光感度曲線の差を取ることにより、UV−Bの感度に相当する曲線P2を求めることができる。
上記の説明では、UV−A、UV−B、UV−Cの各領域の感度を別個に検出できるように光学フィルタ4および光学フィルタ14を構成したが、この例に限定されるものではなく、光学フィルタ4および光学フィルタ14は、他の半導体粒子を含むポリエステル樹脂を用いて形成しても良い。
第2の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置において、光学フィルタ4・14に適用可能な半導体粒子の種類と吸収端波長(nm)を示す図は、図15と同様の図36に示すように表される。図36において、横軸は、光学フィルタに添加される半導体の元素、又は化合物を、縦軸は吸収端波長、すなわちバンドギャップ相当波長(nm)を示す。ここで、例えば、図36に示される、GaN、ZnSe、MgSe、β−Ga2O3、hBN、cAlN等の様々な半導体粒子を用いることができる。
例えば、ZnOの半導体粒子が含まれたペーストによる光学フィルタとSnO2の半導体粒子が含まれたペーストによる光学フィルタを用いてセンサをそれぞれ形成すれば、差分により、図36の吸収端波長の差H2に相当する波長領域の紫外光を検出する光検出装置を構成可能である。
第2の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置において、光学フィルタに適用するZnO粒子分散ポリエステル樹脂のTEM観察結果を示す図(ZnO濃度6wt%、分散処理有り)は、図37(a)に示すように表され、図37(a)の拡大図は、図37(b)に示すように表される。
また、第2の実施の形態に係る光学フィルタを適用した光検出装置において、光学フィルタに適用するZnO粒子分散ポリエステル樹脂のTEM観察結果を示す図(ZnO濃度12wt%、分散処理有り)は、図38(a)に示すように表され、図38(a)の拡大図は、図38(b)に示すように表される。
図37および図38においては、いずれの場合も、シリコン基板上にZnO粒子分散ポリエステル樹脂を塗布して形成し、TEM(透過型電子顕微鏡)により観察を行った。
図37の場合は、ZnO濃度は6wt%であり、分散処理を行っている。図38の場合は、ZnO濃度は12wt%であり、分散処理を行っている。各図の左下に記載されている数字が、スケールを示している。各図で、黒く見える部分がZnO粒子を表しているが、ZnO濃度を6wt%から12wt%に増加させても均一に分散されていることがわかる。
このように、親水性を有するポリエステル樹脂にZnO粒子を分散させた場合、ZnO粒子の濃度を変化せても凝集粒子数は、ほとんど変わらない。したがって、上記式(4)より、半導体粒子の濃度を変化させることで、凝集粒子数cに関係なく、散乱係数kS2を制御することができる。
第2の実施の形態によれば、検出の対象となる波長範囲を含む波長領域の光の透過率を高めることができる光学フィルタ及び、この光学フィルタを用いて特定の波長の光を選択的に高感度で検出することができる光検出装置を提供することができる。
第2の実施の形態によれば、紫外領域において特定の波長域の光のみを選択的に吸収する光学フィルタ及びその製造方法並びに光検出装置を提供することができる。
[第3の実施の形態]
(光学フィルタ)
第3の実施の形態に係る光学フィルタに用いられる可視光カットガラスの透過率T、反射率Rと波長との関係は、図39に示すように表される。
第3の実施の形態に係る光学フィルタは、可視光カットガラスの微粒子と、可視光カットガラスの微粒子を分散させた可視光吸収層とを備える。
第3の実施の形態に係る光学フィルタにおいて、可視光カットガラスの透過率Tは、図39に示すように、約350nm近辺でピークとなり、可視光領域(約360nm〜約400nm)において高い透過率を有する。また、反射率Rについては、図39に示すように、測定した約200nm〜約1200nmの全域で0.05程度と低い特性を示す。
(光学フィルタの製造方法)
第3の実施の形態に係る光学フィルタに適用される可視光カットガラスの微粒子は、粒子径が、例えば、約1μm〜約10μmとすることができ、以下の製造方法によって、形成可能である。
(a)まず、可視光カットガラスの板ガラスをハンマークラッシャー、乳鉢、乾式ボールミル等を用いて粒子径約5μmまで粗粉砕する。
(b)次に、ビーズミル等を用いて、粒子径約0.1μmまで微粉砕する。
(c)次に、スプレードライ法により、2次粒子径、例えば、約1μm〜約10μm程度に乾燥させる。
(d)このようにして作製された可視光カットガラスの微粒子を、例えば、ポリエステル樹脂にホモジナイザ等を用いて遊星分散などして、均一分散処理する。
(e)次に、可視光カットガラスの微粒子を均一分散処理したポリエステル樹脂等を、スクリーン印刷やインクジェット印刷等の手法により、素子受光部に塗布し、可視光吸収層92を形成する(図47参照)。
可視光吸収層92は、複合酸化微粒子を分散させたフィルタ層(第1の光学フィルタ74及び第2の光学フィルタ76)の上に配置可能である(図47参照)。
複合酸化微粒子は、SnO2の微粒子およびZnOの微粒子で構成され、UV−A領域の紫外線を透過するようにできる。
なお、複合酸化微粒子は、(MgyZn1-y)O(但し、x≦y≦1)または同等のエネルギーギャップを有する半導体の微粒子、および(MgxZn1-x)O(但し、0≦x≦0.15)または同等のエネルギーギャップを有する半導体の微粒子で構成され、UV−A領域の紫外線を透過するようにしても良い。
なお、複合酸化微粒子は、Ba、Na、Si、Niなどの酸化物の微粒子を含むようにすることができる。
また、可視光吸収層は、可視光カットガラスの微粒子を分散させる樹脂を備え、この樹脂は、透明レジスト、ポリエステル樹脂、若しくはアクリル樹脂のいずれかで形成可能である。
また、可視光吸収層の層厚は、例えば、約2μm〜約30μmである。
(可視光カットガラスを用いた光検出装置)
第3の実施の形態に係る光学フィルタを用いた光検出装置の模式的鳥瞰構成は、図40(a)に示すように表され、図40(a)の側方断面構成は、図40(b)に示すように表され、パッケージングした光検出装置の概略断面構成は、図40(c)に示すように表される。
第3の実施の形態に係る光検出装置は、紫外領域における一定の第1波長範囲λの光を吸収する第1の光学フィルタ74を有する第1の光検出部(フォトダイオードPD1)と、紫外領域において第1波長範囲λを含む第2波長範囲λ1の光を吸収する第2の光学フィルタ76を有する第2の光検出部PD2とを備える。ここで、第1の光学フィルタ74及び第2の光学フィルタ76は、上記の第3の実施の形態に係る光学フィルタにより構成される。また、第1の光検出部PD1の信号と第2の光検出部PD2の信号を用いて、第1波長範囲λの光量を演算可能である(図47参照)。
また、第1の光検出部及び第2の光検出部は、光電変換により光の検出を行なう。
また、第1の光学フィルタ及び第2の光学フィルタは、フッ素樹脂からなる保護膜を備えていても良い。
また、第1の光学フィルタ及び第2の光学フィルタの光入射側に設けられる可視光カットガラスからなるカバーガラスを備えていても良い。
なお、図40の構成例においては、第1の光学フィルタおよび第2の光学フィルタは、一つの光学フィルタ70で構成されているが、第1の光検出部と第2の光検出部とで別のフィルタを設けるようにしても良い。
また、第1の光検出部と第2の光検出部とで別のフォトダイオードを用いるようにしても良い。
第3の実施の形態に係る光検出装置は、図40に示すように、センサLSIチップ58上にフォトダイオード54が形成され、このフォトダイオード54上に光学フィルタ70が配置される構成を備えていても良い。
尚、図40(a)のフォトダイオード54は、図40(b)のセンサLSIチップ58の表面部分に配置されるが、図40(b)では、図示を省略している。また、図40(b)のフィルタ70は、図40(a)のフォトダイオード54上に配置されるが、図40(a)では、図示を省略している。
また、図40(b)に示すように、光学フィルタ70に対向させて、所定の隙間52挟んで、接着層56を介して可視光カットガラスからなるカバーガラス50が設けられている。
センサLSIチップ58の周縁部にはボンディングパッド62が配置されている。
また、センサLSIチップ58の周縁部には、その表面から裏面に貫通するシリコン貫通電極 (TSV:Through-Silicon Via)64が形成され、ボンディングパッド62は、TSV64を介して、裏面電極に接続される。
センサLSIチップ58の裏面側にはバックサイドコネクタ66が設けられている。
バックサイドコネクタ66には、各ボンディングパッド62に接続されるハンダ球60と、センサLSIチップ58の素子に接続されるハンダ・バンプ68とが形成されている。
また、図40(c)に示すように、受光素子としてのフォトダイオード54を樹脂やガラス等から成るパッケージ72に収容し、可視光カットガラスからなるカバーガラス50で封止するようにしても良い。
ここで、可視光カットガラスからなるカバーガラス50は、可視光領域の感度を低減することができる。
(比較例:UV−Aセンサ)
比較例としてのUV−Aセンサのフィルタ74、76に用いられる2種類の微粒子分散ポリエステル樹脂の透過特性E1・E2は、図41に示すように表される。図41において、E1−E2は、微粒子分散ポリエステル樹脂の透過特性E1・E2の差分を示す。
図41に示すように、微粒子分散ポリエステル樹脂の透過特性E1・E2の差分は所定の幅(約250nm〜約450nm)を有し、一部に可視光領域(約360nm〜約400nm)を含む。
光学フィルタ74・76を設けないシリコン・フォトダイオード(Si−PD)の感度特性は、図42に示すように表され、光学フィルタ74・76を設けたシリコン・フォトダイオードPD1・PD2の感度特性は、図43に示すように表される。
図43に示すように、光学フィルタ74・76を設けたシリコン・フォトダイオードPD1・PD2の感度特性には所定の差が存在する。
比較例としてのUV−Aセンサの模式的断面構造は、図44に示すように表される。
比較例としてのUV−Aセンサは、図44に示すように、p型のSi基板84と、p型のSi基板84にPやAs等のドナーがドープされたn型領域86・88と、Si基板84の表面に配置された絶縁膜80と、絶縁膜80上に配置された光学フィルタ74・76と、絶縁膜80上に光学フィルタ74・76を被覆して配置された保護膜78とを備える。
p型のSi基板84とn型領域86・88とのpn接合によって、フォトダイオードPD1、PD2が形成される。
絶縁膜80は、SiO2またはSiN等から形成されている。なお、絶縁膜80の一部には、Alパッド電極82a・82bが形成されている。
絶縁膜80上において、フォトダイオードPD1と対向する位置には第1の光学フィルタ74が、フォトダイオードPD2と対向する位置には第2の光学フィルタ76が配置されている。
光学フィルタ74・76は、複合酸化微粒子を所定の樹脂またはガラスに分散させた膜で構成される。
複合酸化微粒子は、例えばSnO2の微粒子およびZnOの微粒子で構成され、UV−A領域の紫外線を透過可能である。
なお、保護膜78は、フッ素樹脂を塗布して形成可能である。
比較例としてのUV−Aセンサの差分受光感度と波長の関係は、図45に示すように表される。図45においては、光学フィルタ74・76を設けたシリコン・フォトダイオードPD1、PD2の感度特性の差分が示されている。
図45に示すように、光学フィルタ74・76を設けたシリコン・フォトダイオードPD1・PD2の感度特性の差分には、可視光領域(約360nm〜約400nm)が含まれている。
比較例としてのUV−Aセンサは、可視光領域の光の入射によってUV−Aの測定結果に可視光の影響を受ける。
(第3の実施の形態に係る光検出装置:UV−Aセンサ)
第3の実施の形態に係る光検出装置において、フォトダイオード(PD1〜PD4)の配列の例は、図46に示すように表される。
図46においては、例えば2mm角(X,Y=2mm)の基板上に、幅W=10μmの分離層を介して、例えば50μm角(W1,L1,W2,L2=50μm)の4つのフォトダイオード(PD1〜PD4)を形成されている。
第3の実施の形態に係る光検出装置(UV−Aセンサ)の模式的断面構造は、図47に示すように表される。
第3の実施の形態に係る光検出装置(UV−Aセンサ)は、図47に示すように、p型のSi基板84と、p型のSi基板84に配置されたn型領域86・88と、Si基板84の表面に配置された絶縁膜80と、絶縁膜80上に配置された光学フィルタ74・76と、絶縁膜80上に光学フィルタ74・76を被覆して配置された可視光吸収層92と、可視光吸収層92を被覆して配置された保護膜78とを備える。
p型のSi基板84とn型領域86・88とのpn接合によって、フォトダイオードPD1・PD2が形成される。
n型領域86・88には、PやAs等のドナーがドープされている。
絶縁膜80は、SiO2またはSiN等から形成されている。なお、絶縁膜80の一部には、Alパッド電極82a・82bが形成されている。
絶縁膜80上において、フォトダイオードPD1と対向する位置には光学フィルタ74が、フォトダイオードPD2と対向する位置には光学フィルタ76が形成されている。
光学フィルタ74・76は、複合酸化微粒子を所定の樹脂またはガラスに分散させた膜で構成される。
複合酸化微粒子は、例えばSnO2の微粒子およびZnOの微粒子で構成され、UV−A領域の紫外線を透過するようにできる。
また、複合酸化微粒子は、(MgyZn1-y)O(但し、x≦y≦1)または同等のエネルギーギャップを有する半導体の微粒子、および(MgxZn1-x)O(但し、0≦x≦0.15)または同等のエネルギーギャップを有する半導体の微粒子で構成され、UV−A領域の紫外線を透過するようにしても良い。
なお、可視光吸収層92の層厚は、例えば、約2μm〜約30μmとすることが望ましい。
可視光吸収層92は、上述したように可視光カットガラスの微粒子の均一分散処理が行われたポリエステル樹脂等をスクリーン印刷やインクジェット印刷等の手法により光学フィルタ74・76を覆うように形成される。
保護膜78は、フッ素樹脂を塗布することによって形成される。
可視光カットガラスの透過特性は、図48に示すように表される。
図48から分かるように、可視光カットガラスの透過率は、図48に示すように、約350nm近辺でピークとなり、可視光領域(約360nm〜約400nm)において高い透過率を示す。
第3の実施の形態に係る光検出装置(UV−Aセンサ)において、差分受光感度と波長の関係は、図49に示すように表される。図49において、曲線WOは可視光吸収層92を設けない場合、曲線Wは可視光吸収層92を設けた場合を示す。
可視光吸収層92を設けた場合には、図49に示すように、可視光吸収層92を設けないに比べて、波長約360nm近辺をピークに急激に受光感度が低減し、約400nmより長い波長や250nm近辺の波長に対する感度は、ピーク値に比べて約2桁低下する。
可視光カットガラスの微粒子の均一分散処理を実施したポリエステル樹脂等で構成される可視光吸収層92は、可視光領域(約360nm〜約400nm)の光を有効に低減することができる。
第3の実施の形態に係る光検出装置(UV−Aセンサ)においては、可視光による影響を有効に低減してUV−Aをより精度良く計測することができる。
第3の実施形態によれば、所定の樹脂またはガラスに可視光カットガラスの微粒子を分散させ、UV−Aセンサに適用可能な光学フィルタ及びその製造方法並びに光検出装置を提供することができる。
第3の実施の形態によれば、紫外領域において特定の波長域の光のみを選択的に吸収する光学フィルタ及びその製造方法並びに光検出装置を提供することができる。
[第4の実施の形態]
(光学フィルタ)
第4の実施の形態に係る光学フィルタは、可視光カットガラスの微粒子と、可視光カットガラスの微粒子を分散させた可視光吸収層とを備える。
第4の実施の形態に適用される光学フィルタは、可視光カットガラスの微粒子を所定の樹脂またはガラスに分散させた可視光吸収層を有するものである。
なお、可視光カットガラスの微粒子は、粒子径が1〜10μmとすることができる。
(光学フィルタの製造方法)
可視光カットガラスを粒子化する手法は、第3の実施の形態と同様である。
作製された可視光カットガラスの微粒子は、例えばポリエステル樹脂にホモジナイザ等を用いて遊星分散されるなどして、均一分散処理が行われる。
また、可視光吸収層の層厚は、例えば、約2μm〜約30μmである。
そして、可視光カットガラスの微粒子の均一分散処理が行われたポリエステル樹脂等は、スクリーン印刷やインクジェット印刷等の手法により、UV−Bセンサの素子受光部に塗布されて可視光吸収層92を形成する(図54参照)。
可視光吸収層92は、複合酸化微粒子を所定の樹脂またはガラスに分散させた膜(第1の光学フィルタ90及び第2の光学フィルタ74)上に配置される(図54参照)。
複合酸化微粒子は、Al2O3の微粒子およびSnO2の微粒子で構成され、可視光領域の光を吸収し、UV−B領域の紫外線を透過するようにできる。
また、複合酸化微粒子は、(MgyZn1-y)O(但し、x≦y≦1)または同等以上のエネルギーギャップを有する半導体の微粒子、および(MgxZn1-x)O(但し、0.3≦x≦0.4)または同等のエネルギーギャップを有する半導体の微粒子で構成され、UV−B領域の紫外線を透過するようにしても良い。
なお、複合酸化微粒子は、Ba、Na、Si、Niの酸化物の微粒子を含むようにすることができる。
また、複合酸化微粒子を分散させる樹脂は、透明レジスト、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂の何れかとすることができる。
(比較例:UV−Bセンサ)
比較例としてのUV−Bセンサのフィルタ90・74(図52参照)に用いられる2種類の微粒子分散ポリエステル樹脂の透過特性E1・E2は、図50に示すように表される。図50において、E1−E2は、微粒子分散ポリエステル樹脂の透過特性E1・E2の差分を示す。
図50に示すように、微粒子分散ポリエステル樹脂の透過特性E1・E2の差分特性には、可視光領域(約360nm〜約400nm)が含まれている。
光学フィルタ90,74を設けたシリコン・フォトダイオードPD1・PD2の感度特性は、図51に示すように表される。
図51に示すように、光学フィルタ90・74を設けたシリコン・フォトダイオードPD1・PD2の感度特性には、所定の差が存在する。
比較例としてのUV−Bセンサの模式的断面構造は、図52に示すように表される。
比較例としてのUV−Bセンサは、図52に示すように、p型のSi基板84と、p型のSi基板84にPやAs等のドナーがドープされたn型領域86・88と、Si基板84の表面に配置された絶縁膜80と、絶縁膜80上に配置された光学フィルタ90・74と、絶縁膜80上に光学フィルタ90・74を被覆して配置された保護膜78とを備える。
p型のSi基板84とn型領域86・88とのpn接合によって、フォトダイオードPD1、PD2が形成される。
絶縁膜80上において、フォトダイオードPD1と対向する位置には第1の光学フィルタ90が、フォトダイオードPD2と対向する位置には第2の光学フィルタ74が配置されている。
光学フィルタ90・74は、複合酸化微粒子を所定の樹脂またはガラスに分散させた膜で構成される。
複合酸化微粒子は、例えばSnO2の微粒子およびZnOの微粒子で構成され、UV−B領域の紫外線を透過するようにできる。
比較例としてのUV−Bセンサの差分受光感度と波長の関係は、図53に示すように表される。図53においては、光学フィルタ90・76を設けたシリコン・フォトダイオードPD1・PD2の感度特性の差分が示されている。
図53に示すように、光学フィルタ90、76を設けたシリコン・フォトダイオードPD1・PD2の感度特性の差分には、可視光領域(約360nm〜約400nm)が含まれている。
このように、比較例としてのUV−Bセンサは、可視光領域の光の入射によってUV−Bの測定結果に可視光の影響を受ける。
(第4の実施の形態に係る光検出装置:UV−Bセンサ)
第4の実施の形態に係る光検出装置(UV−Bセンサ)の模式的断面構造は、図54に示すように表される。
第4の実施の形態に係る光検出装置は、紫外領域における一定の第1波長範囲λの光を吸収する光学フィルタ90を有する第1の光検出部(フォトダイオードPD1)と、紫外領域において第1波長範囲λを含む第2波長範囲λ1の光を吸収する光学フィルタ74を有する第2の光検出部(フォトダイオードPD2)とを備える。ここで、光学フィルタ90・74は、上記の第4の実施の形態に係る光学フィルタにより構成可能である。また、第1の光検出部(PD1)の信号と第2の光検出部(PD2)の信号を用いて、第1波長範囲λの光量を演算可能である(図54参照)。
また、第1の光検出部(PD1)及び第2の光検出部(PD2)は、光電変換により光の検出を行なう。
また、光学フィルタ90・74は、フッ素樹脂からなる保護膜を備えていても良い。
また、光学フィルタ90・74の光入射側に設けられる可視光カットガラスからなるカバーガラスを備えていても良い。
第4の実施の形態に係る光検出装置は、第3の実施の形態(図40)と同様に、センサLSIチップ58上にフォトダイオード54が形成され、このフォトダイオード54上に光学フィルタ70が配置される構成を備え、光学フィルタ70に対向させて、所定の隙間52挟んで、可視光カットガラスからなるカバーガラス50を備えていても良い。また、受光素子としてのフォトダイオード54を樹脂やガラス等から成るパッケージ72に収容し、可視光カットガラスからなるカバーガラス50で封止するようにしても良い。
可視光カットガラスからなるカバーガラス50は、可視光領域の感度を低減することができる。
第4の実施の形態に係る光検出装置(UV−Bセンサ)は、図54に示すように、p型のSi基板84と、p型のSi基板84に配置されたn型領域86・88と、Si基板84の表面に配置された絶縁膜80と、絶縁膜80上に配置された光学フィルタ90・74と、絶縁膜80上に光学フィルタ90・74を被覆して配置された可視光吸収層92と、可視光吸収層92を被覆して配置された保護膜78とを備える。
p型のSi基板84とn型領域86・88とのpn接合によって、フォトダイオードPD1、PD2が形成される。
n型領域86・88には、PやAs等のドナーがドープされている。
絶縁膜80は、SiO2またはSiN等から形成されている。なお、絶縁膜80の一部には、Alパッド電極82a、82bが形成されている。
絶縁膜80上において、フォトダイオードPD1と対向する位置には光学フィルタ74が、フォトダイオードPD2と対向する位置には光学フィルタ76が形成されている。
光学フィルタ90・74は、複合酸化微粒子を所定の樹脂またはガラスに分散させた膜で構成される。
複合酸化微粒子は、例えばSnO2の微粒子およびZnOの微粒子で構成され、UV−B領域の紫外線を透過するようにできる。
また、複合酸化微粒子は、(MgyZn1-y)O(但し、x≦y≦1)または同等のエネルギーギャップを有する半導体の微粒子、および(MgxZn1-x)O(但し、0.3≦x≦0.4)または同等のエネルギーギャップを有する半導体の微粒子で構成され、UV−B領域の紫外線を透過するようにしても良い。
なお、可視光吸収層92の層厚は、例えば、約2μm〜約30μmとすることが望ましい。
可視光吸収層92は、可視光カットガラスの微粒子の均一分散処理が行われたポリエステル樹脂等をスクリーン印刷やインクジェット印刷等の手法により光学フィルタ90、74を覆うように形成される。
保護膜78は、フッ素樹脂を塗布することによって形成される。
第4の実施の形態に係る光検出装置(UV−Bセンサ)において、差分受光感度と波長の関係は、図55に示すように表される。図55において、曲線WOは可視光吸収層92を設けない場合、曲線Wは可視光吸収層92を設けた場合を示す。
可視光吸収層92を設けた場合には、図55に示すように、可視光吸収層92を設けないに比べて、波長約300nm近辺をピークに急激に受光感度が低減し、約400nmより長い波長に対する感度は検出されていない。
可視光カットガラスの微粒子の均一分散処理を実施したポリエステル樹脂等で構成される可視光吸収層92は、可視光領域(約360nm〜約400nm)の光を有効に遮断することができる。
第4の実施の形態に係る光検出装置(UV−Bセンサ)においては、可視光による影響を有効に低減してUV−Bをより精度良く計測することができる。
第4の実施形態によれば、所定の樹脂またはガラスに可視光カットガラスの微粒子を分散させ、UV−Bセンサに適用可能な光学フィルタ及びその製造方法並びに光検出装置を提供することができる。
第4の実施の形態によれば、紫外領域において特定の波長域の光のみを選択的に吸収する光学フィルタ及びその製造方法並びに光検出装置を提供することができる。
(UV−A、UV−B、UV−C領域におけるセンサ特性)
UV−A、UV−B、UV−C領域におけるセンサ特性は、図56に示すように表される。図56において、曲線Aは第3の実施の形態に係るUV−Aセンサのセンサ特性、曲線Bは第4の実施の形態に係るUV−Bセンサのセンサ特性を示す。
図56に示すように、第3の実施の形態に係るUV−Aセンサの感度のピークは370nm近辺であり、UV−Aの全領域において高感度を有する。一方、第4の実施の形態に係るUV−Bセンサの感度のピークは300nm近辺であり、UV−Bの全領域において高感度を有する。
(複数の光検出装置の製造方法)
第3〜第4の実施の形態に係る光学フィルタを適用した複数の光検出装置の製造方法の一工程を示す平面パターン(その1〜その4)は、図57〜図60に示すように表される。
複数の光検出装置、例えば4つのフォトダイオードPD1〜PD4を備え、UV−AセンサとUV−Bセンサとを有する光検出装置を複数組作製する場合の製造方法を図57〜60を参照して説明する。
(a)まず、図57に示すように、p型のSi基板84にn型領域を形成してフォトダイオードPD1〜PD4を形成する。なお、実際には、フォトダイオードPD1〜PD4の組が複数、マトリックス状に形成される。各フォトダイオードPD1〜PD4の受光面積は、例えば、約50μm×約50μmである。
(b)次に、図58に示すように、フォトダイオードPD1の上に光学フィルタ74、フォトダイオードPD2の上に光学フィルタ76、フォトダイオードPD3の上に光学フィルタ90、フォトダイオードPD4の上に光学フィルタ74をそれぞれ配置する。
光学フィルタ74は、例えば、約12wt%のZnOの微粒子を分散させたポリエステル樹脂、光学フィルタ76は、例えば、約6wt%のSnO2の微粒子を分散させたポリエステル樹脂、光学フィルタ90は、Al2O3の微粒子を分散させたポリエステル樹脂をスクリーン印刷やインクジェット印刷などの手法を用いて塗布することにより形成可能である。印刷面積は、各フォトダイオードPD1〜PD4の受光部より、例えば、縦横の寸法幅+50μm程度大きく形成すると良い。光学フィルタ74、76、90の膜厚は、印刷工程直後では、約数μm〜30μmであるが、約100℃で約10分間の熱処理工程を経て、厚さ約2μm〜数10μm程度に形成される。
(c)次に、図59に示すように、第1の光学フィルタ74、90および第2の光学フィルタ76、74を覆うように可視光吸収層92を配置する。可視光吸収層92は、可視光カットガラスの微粒子の均一分散処理が行われたポリエステル樹脂等をスクリーン印刷やインクジェット印刷等の手法によって塗布することにより形成可能である。可視光吸収層92の厚さは、例えば、約2μm〜約30μm程度である。可視光カットガラスは、ポリエステル樹脂等に対して、例えば、約30wt%とする。また、可視光吸収層92は、図示しない電極部を避けて形成される。ポリエステル樹脂等の粘度は、スクリーン印刷を行う場合には1000Pas〜100000Pas、インクジェット印刷を行う場合には数mPas〜100000Pasとすると良い。
(d)次に、図示は省略するが、可視光吸収層92を覆うように、フッ素樹脂によるコーティングを行う。これにより、純水(pH5〜pH6)によっても溶出してしまうZnOの溶出を防止することができる。フッ素樹脂による保護膜は、フッ素樹脂を塗布した後、100℃・10分の熱処理、200℃・10分の熱処理、窒素雰囲気中で250℃・10分の熱処理を順次行なって形成される。寸法精度が不十分な場合には、透明レジストを用い、スクリーン印刷やインクジェット印刷を行った後に、リソグラフィを行うようにしても良い。
(e)次に、4つのフォトダイオードPD1〜PD4を1つの組としてダイシングし、図示しないAlパッド電極等を介してワイヤボンディングにより所定の結線を行うことによりチップ化された光検出装置が作製される。
以上の工程により、例えば、4つのフォトダイオードPD1〜PD4を備え、UV−AセンサとUV−Bセンサとを有する光検出装置を量産することができる。
なお、この作製例では、フォトダイオードPD1とPD2の組がUV−Aセンサを構成し、フォトダイオードPD3とPD4の組がUV−Bセンサを構成している。
以上、説明したように、本実施形態によれば、紫外領域において特定の波長域の光のみを選択的に吸収する光学フィルタ及びその製造方法並びに光検出装置を提供することができる。
[第5の実施の形態]
(光学フィルタ)
第5の実施の形態に係る光学フィルタは、可視光カットガラスの微粒子と、可視光カットガラスの微粒子を分散させた可視光吸収層とを備える。ここで、可視光吸収層は、複合酸化微粒子を分散させたフィルタ層上に配置され、複合酸化微粒子は、Al2O3の微粒子およびGa2O3の微粒子で構成される。
第5の実施の形態に係る光学フィルタは、可視光吸収層は、可視光カットガラスの微粒子を分散させる樹脂を備える。ここで、樹脂は、透明レジスト、ポリエステル樹脂、若しくはアクリル樹脂のいずれかで形成される。
第5の実施の形態に係る光学フィルタの製造方法は、例えば第4の実施の形態で述べた製造方法を適用することができる。
(第5の実施の形態に係る光検出装置:UV−Bセンサ)
第5の実施の形態に係る光検出装置(UV−Bセンサ)の模式的断面構造は、図61に示すように表される。
第5の実施の形態に係る光検出装置は、紫外領域における一定の第1波長範囲λの光を吸収する光学フィルタ90を有する第1の光検出部(フォトダイオードPD1)と、紫外領域において第1波長範囲λを含む第2波長範囲λ1の光を吸収する光学フィルタ94を有する第2の光検出部(フォトダイオードPD2)とを備える。
ここで、光学フィルタ90・94は、上記の第5の実施の形態に係る光学フィルタにより構成可能である。
即ち、光学フィルタ90はAl2O3の微粒子を分散させたフィルタ層で構成され、光学フィルタ94はGa2O3の微粒子を分散させたフィルタ層で構成することができる。
また、光学フィルタ90に用いられる微粒子としては、Al2O3の微粒子に限られず、図74に示すように、Ga2O3よりもバンドギャップの大きい材料(例えば、SiO2、HfO2、ZrO2など)とすることができる。
なお、図74に示すように、β−Ga2O3とAl2O3の吸収端波長の差H3が一番大きく、また、Al2O3は価格も比較的安価なため、本実施の形態に示すようにAl2O3の微粒子とGa2O3の微粒子の組み合わせが適している。
また、光学フィルタ90・94は、フッ素樹脂からなる保護膜を備えていても良い。
また、光学フィルタ90・94の光入射側に設けられる可視光カットガラスからなるカバーガラスを備えていても良い。
第5の実施の形態に係る光検出装置は、第3の実施の形態(図40)と同様に、センサLSIチップ58上にフォトダイオード54が形成され、このフォトダイオード54上に光学フィルタ70が配置される構成を備え、光学フィルタ70に対向させて、所定の隙間52挟んで、可視光カットガラスからなるカバーガラス50を備えていても良い。また、受光素子としてのフォトダイオード54を樹脂やガラス等から成るパッケージ72に収容し、可視光カットガラスからなるカバーガラス50で封止するようにしても良い。
可視光カットガラスからなるカバーガラス50は、可視光領域の感度を低減することができる。
第5の実施の形態に係る光検出装置(UV−Bセンサ)は、図61に示すように、p型のSi基板84と、p型のSi基板84に配置されたn型領域86・88と、Si基板84の表面に配置された絶縁膜80と、絶縁膜80上に配置された光学フィルタ90・94と、絶縁膜80上に光学フィルタ90・94を被覆して配置された可視光吸収層92と、可視光吸収層92を被覆して配置された保護膜78とを備える。
p型のSi基板84とn型領域86・88とのpn接合によって、フォトダイオードPD1、PD2が形成される。
n型領域86・88には、PやAs等のドナーがドープされている。
絶縁膜80は、SiO2またはSiN等から形成されている。なお、絶縁膜80の一部には、Alパッド電極82a、82bが形成されている。
絶縁膜80上において、フォトダイオードPD1と対向する位置には光学フィルタ90が、フォトダイオードPD2と対向する位置には光学フィルタ94が形成されている。
光学フィルタ90は、上述のようにAl2O3等の微粒子を所定の樹脂またはガラスに分散させた膜で構成される。
また、光学フィルタ94は、上述のようにGa2O3の微粒子を所定の樹脂またはガラスに分散させた膜で構成される。
なお、可視光吸収層92の層厚は、例えば、約2μm〜約30μmとすることが望ましい。
可視光吸収層92は、可視光カットガラスの微粒子の均一分散処理が行われたポリエステル樹脂等をスクリーン印刷やインクジェット印刷等の手法により光学フィルタ90、94を覆うように形成される。
保護膜78は、フッ素樹脂を塗布することによって形成される。
(紫外線の人体に与える影響)
上述のように、紫外線は、波長によってUV−A(315nm〜400nm)、UV−B(280nm〜315nm)、UV−C(200nm〜280nm)の3種類に分類される。
一般的に、紫外線は波長が短いほど人体(生物)に対する有害作用が大きいが、UV−Cは大気圏上部の酸素分子及び成層圏のオゾンによって完全に吸収されてしまうため、オゾン量が多少減少しても地表面には到達しないので、生物に対して問題にはならない。
UV−Bは、核酸などの重要な生体物質に損傷をもたらし、光老化(シミやしわ)や皮膚がんの増加、白内障の増加、免疫抑制など人の健康に影響を与えるほか、陸域、水圏生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
(紫外線の強度)
地表に到達する紫外線の強度は、波長によって異なっている。
図62に、紫外線の大圏気外(A10)及び晴天時の地表(A11)での波長別の強度を示す。
図62を見るとわかるように、UV−Bは大気圏外での強度に比べて、地表では大きく減衰している。
UV−Bが短波長ほど大きく減衰しているのは、主に成層圏オゾンの吸収によるものである。
UV−Aが僅かに減衰しているのは、主に大気分子、エアロゾル(Aerosol:大気中に浮遊する液体や固体の微粒子)による散乱の影響によるものであり、波長が短いほど散乱の影響は大きい。
(紅斑紫外線量)
上述のように、紫外線の人体への影響度は波長によって異なっている。
波長毎の人体への相対影響度については、国際照明委員会(CIE)が定義したCIE作用スペクトルが一般的に用いられている。CIE作用スペクトルは、人の皮膚に紅斑(赤い日焼け)を引き起こす作用曲線をいう。
図63に、CIE作用スペクトルの相対影響度を示す。なお、紅斑紫外線とは、皮膚に赤い日焼けを生じさせる紫外線のことをいう。図63に示すように、UV−B領域内の波長280nm〜300nmでは相対影響度が高く、UV−B領域内の波長300nmからUV−A領域に入った320nmにかけて急激に低くなる。また、320nm以上の波長では相対影響度は殆ど0となる。
なお、波長別紫外線強度にCIE作用スペクトルを乗じることにより、紅斑紫外線強度を算出することができる(図64参照)。そして、この値を波長積分して得られるのが、紅斑紫外線量(図64の曲線内の面積)となる。
紅斑紫外線量は、波長別紫外線強度について相対影響度を考慮せずに単純に積分したUV−B量と比較すると、人の健康への影響の強さをより的確に反映した指標といえる。
ここで、CIE作用スペクトルの定義式は、SerをCIE作用スペクトル、λを波長として、次の通りである。すなわち、
Ser(λ)=1.0(250nm<λ<298nm)
Ser(λ)=100.094(298-λ)(298nm<λ<328nm)
Ser(λ)=100.015(139-λ)(328nm<λ<400nm)
(UVインデックス)
UVインデックスは、地上に到達する紫外線量のレベルを分り易く表す指標として、WHO(世界保健機関)がWMO(世界気象機関)やUNEP(国連環境計画)などと共同で開発したもので、一般公衆に紫外線対策の必要性を啓発することを目的としている。
UVインデックスは、上述の紅斑紫外線量を日常生活で使い易い簡単な数値とするために紅斑紫外線量を25mW/m2で割って指標化したものである。
例えば、環境省の「紫外線保健指導マニュアル」や世界保健機関(WHO)で示している紫外線対策の解説では、UVインデックスのランクを1から11+とし、11以上はまとめて11+と表記している。
気象庁では、290nm〜325nmの波長については、0.5nm毎に紫外線強度を測定し、UVインデックスの算出にあたって、観測を行っていない325nm〜400nmの波長域の寄与分については、モデル計算の結果に基づいて324nmの観測値を使って推定している。
本実施の形態に係る光検出装置(UV−Bセンサ)は、安価且つ小型に製造することができ、1チップで簡易的にUVインデックスを測定することが可能である。
そのため、携帯電話や腕時計等の携帯機器に搭載することが可能であり、常に携帯して環境の紫外線を測定することにより、紫外線の浴びすぎ等を回避するのに資することができる。
(第5の実施の形態に係る光検出装置(UV−Bセンサ)の特性等)
図65は、第1の光学フィルタ90を形成するAl2O3および第2の光学フィルタ94を形成するGa2O3の透過特性を示すグラフである。
このグラフを見ると分かるように、Al2O3の透過率とGa2O3の透過率には、所定の差がある。
このような透過率の差があると、紫外線の測定結果の正確性に影響を及ぼす。
そこで、本発明では、複合酸化微粒子を構成するAl2O3の微粒子およびGa2O3の微粒子の粒径に応じて、第1の光検出部と第2の光検出部の面積を変えている。
ここで、図66(a)はフォトダイオードPD1を構成する第1の光学フィルタ90の構成例を示す平面図、(b)はフォトダイオードPD2を構成する第2の光学フィルタ94の構成例を示す平面図、(c)は第1の光学フィルタを形成するAl2O3の微粒子の例を示す拡大図、(d)は第2の光学フィルタを形成するGa2O3の微粒子の例を示す拡大図である。
この例では、Al2O3の微粒子の粒径d2とGa2O3の微粒子の粒径d1との関係はd2<d1となっており、この粒径の大きさの差が透過率に影響を与えていると考えられる。
そこで、本実施の形態では、透過率の差を補正するために、第2の光学フィルタ94の面積SGを第1の光学フィルタの面積SAの1.08倍としている。
図67は、第1の光学フィルタ90を形成するAl2O3および面積補正を行った第2の光学フィルタ94を形成するGa2O3の透過特性を示すグラフである。
このグラフを見ると分かるように、少なくとも350nm以上の波長領域において、Al2O3の透過率とGa2O3の透過率は略一致するようになっている。これにより、紫外線をより正確に測定することが可能となる。
なお、本実施の形態では、上述のように、透過率の差を補正するために、第2の光学フィルタ94の面積SGあるいは第1の光学フィルタの面積SAを調整する措置を示したが、これに限定されず、例えば、複合酸化微粒子を構成するAl2O3の微粒子およびGa2O3の微粒子の粒径に応じて、第1の光検出部(フォトダイオードPD1)から出力される信号と第2の光検出部(フォトダイオードPD2)から出力される信号とを調整する調整手段(調整回路等)を備えるようにしても良い。
図68は、第1の光学フィルタ90を形成するAl2O3および第2の光学フィルタ94を形成するGa2O3の透過率の差分と波長の関係を示すグラフ、図69は紫外線透過可視光カットガラスの透過特性を示すグラフである。
図70は、第1の光学フィルタ90を形成するAl2O3および面積補正を行った第2の光学フィルタ94を形成するGa2O3の透過率の差分と波長の関係を示すグラフである。
図71は、シリコン・フォトダイオード(Si−PD)の感度特性を示すグラフ、図72はUV−Bについての感度特性を示すグラフである。
また、図73は、受光感度スペクトル(A12)とCIE作用スペクトルの受光感度と波長の関係を示すグラフである。このグラフを見ると分かるように、国際照明委員会(CIE)が定義したCIE作用スペクトルの曲線(CIE)と、本実施の形態に係る光検出装置(UV−Bセンサ)による受光感度スペクトルの曲線(A12)とは、比較的一致している。
このように、本実施の形態に係る光検出装置(UV−Bセンサ)によれば、UVインデックスを簡易的に測定することが可能である。
[第6の実施の形態]
(オートライト装置)
第6の実施の形態に係るオートライト装置は、外部の紫外線を検出する前記第1〜第5の実施の形態に係るいずれかの光検出装置(UVセンサ)と、外部の照度を検出する照度検出装置と、光検出装置および照度検出装置による検出結果に基づいて、照明装置をオン・オフさせる制御装置と備える。
また、制御装置は、光検出装置による検出結果または照度検出装置の検出結果の何れかが所定の閾値以下となった場合に照明装置をオンし、光検出装置による検出結果または照度検出装置の検出結果の何れかが所定の閾値以上となった場合にオフするように制御することができる。
また、照明装置は、自動車や自転車等の車両に搭載された照明器具、あるいは街灯に搭載された照明器具とすることができる。
図75のブロック図に示すように、第6の実施の形態に係るオートライト装置550は、光検出装置(UVセンサ)551と照度センサ552とが、センサ入力インターフェイス553を介して接続されている。
UVセンサ551としては、第1〜第5の実施の形態に係るいずれかの光検出装置を用いることができる。
照度センサ552としては、フォトトランジスタを使うタイプ、フォトダイオードを使うタイプ、フォトダイオードにアンプ回路を追加したタイプ等を適用することができる。
センサ入力インターフェイス553には、オートライト制御回路554が接続され、オートライト制御回路554には、ライト駆動回路555が接続されている。
ライト駆動回路555には、自動車のヘッドライト、テールランプや自転車の夜間走行用のライトあるいは街灯の電球等の照明器具560が接続されている。
オートライト制御回路554は、UVセンサ551による紫外線の検出結果または照度センサ552による可視光の検出結果の何れかが所定の閾値以下となった場合に照明器具560をオンし、UVセンサ551による紫外線の検出結果または照度センサ552による可視光の検出結果の何れかが所定の閾値以上となった場合にオフするようにライト駆動回路555を制御する。
図76は、第6の実施の形態に係るオートライト装置の駆動処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
この処理が開始されると、まず、ステップS10で照度センサ552による可視光の検出結果は閾値以下であるか否かが判定され、「Yes」の場合にはステップS11に移行する。
ステップS11では、ライト駆動回路555をオンしてステップS12に移行してライト560がオンされてステップS10に戻る。
これにより、閾値以下の暗さとなった場合に、自動車等のライトが点灯するという、いわゆる一般的なオートライト装置と同様の動作を行う。
一方、ステップS10で「No」と判定された場合にはステップS13に移行する。
ステップS13では、UVセンサ551による紫外線(UV−AまたはUV−B)の検出結果は閾値以下であるか否かが判定され、「Yes」の場合にはステップS14に移行する。
ステップS14では、ライト駆動回路555をオンしてステップS15に移行してライト560がオンされてステップS10に戻る。
これにより、例えば、照度は一定値以上あるが紫外線が所定値以下となったような場合に、自動車等のライトを点灯させるという、一般的なオートライト装置には無い動作を行うことができる。
これにより、閾値を適当な値とすることにより、例えば、照度は一定値以上であっても視認性が低下したような環境(曇天や霧等が発生した場合)下で、自動車等のライトを自動的に点灯させることができ、安全性や利便性を向上させることができる。
また、ステップS13で「No」と判定された場合には、ステップS16に移行する。
ステップS16ではライト駆動回路555をオフして、ステップS17でライト560がオフされてステップS10に戻る。
なお、第6の実施の形態に係るオートライト装置の駆動処理は、これに限られず、例えば、照度は一定値以下であっても、紫外線は所定値以上である場合(例えば、所定条件下の曇天など)には、自動車や街灯のライトを点灯させないようにして、不必要なライトの点灯を抑制して、省電力を図れるようにしても良い。
また、雪道など紫外線が強い状況において、UVセンサ551による紫外線の検出結果が閾値以上となった場合に、自動車に搭載されるフォグランプ等を自動的にオンさせるようにしても良い。
(オートライト装置の自動車への適用例)
図77〜79を参照して、第6の実施の形態に係るオートライト装置550の自動車への適用例について説明する。
図77は、第6の実施の形態に係るオートライト装置550を自動車に搭載し、照度センサのみを機能させた場合の動作状況を示す説明図である。
なお、オートライト装置550のUVセンサ551および照度センサ552は、例えば、自動車のダッシュボードの上などに配置される。これにより、フロントウィンドウを介して、車外から太陽光および紫外線がUVセンサ551および照度センサ552に入射して測定される。
図77に示すように、太陽800が出て紫外線を含む太陽光が降り注ぐ環境下において走行する場合には、照度センサ552による可視光の測定結果は閾値以上となるため、図77(a)に示すように、自動車のヘッドライト560は消灯状態を維持する。
例えば、図77(b)に示すように、高架下600などの比較的短距離の日陰700を走行する場合には、照度センサ552による可視光の測定結果は閾値以下となるため、自動車のヘッドライト560は点灯状態となる。なお、比較的短距離の日陰であるためヘッドライト560は本来不要であるが、ドライバには、一般的に消灯操作をする時間はないといえる。
また、高架下600などを通過後には、照度センサ552による可視光の測定結果は閾値以上となるため、図77(c)に示すように、自動車のヘッドライト560は再び消灯状態となる。
図78は、第6の実施の形態に係るオートライト装置550を自動車に搭載し、照度センサとUVセンサを機能させた場合の動作状況を示す説明図である。
図78に示すように、太陽800が出て紫外線を含む太陽光が降り注ぐ環境下において走行する場合には、照度センサ552による可視光の測定結果およびUVセンサ551による測定結果は閾値以上となるため、図78(a)に示すように、自動車のヘッドライト560は消灯状態を維持する。
例えば、図78(b)に示すように、高架下600などの比較的短距離の日陰700を走行する場合には、照度センサ552による可視光の測定結果は閾値以下となるが、路面等から反射した紫外線が入射するためUVセンサ551の測定結果は閾値以上となり、自動車のヘッドライト560は消灯状態を維持する。
これにより、比較的短距離の日陰であるためヘッドライト560は本来不要であるので、ドライバの感覚に合わせれて消灯状態を維持し、利便性や省電力性を向上させることができる。
また、高架下600などを通過後には、照度センサ552による可視光の測定結果およびUVセンサ551による測定結果は閾値以上となるため、図78(c)に示すように、自動車のヘッドライト560は再び消灯状態となる。
図79は、第6の実施の形態に係るオートライト装置550を自動車に搭載し、曇天下や雨天下において照度センサ552のみを機能させた場合の動作状況を示す説明図である。
曇天下や雨天下においては、雲による光散乱(ミー散乱)が生じる。
ミー散乱では、散乱強度が波長に反比例するので、短波長ほど雲900の影響を受け易い。
このような状況下において、図79に示すように、照度センサ552のみを機能させた状態で走行すると、比較的明るい場合には、照度センサ552による可視光の測定結果は閾値以上となるため、自動車のヘッドライト560は消灯状態を維持する。
しかし、比較的明るい状況下であってもドライバの視認性を高めるためにヘッドライト560が自動的に点灯して欲しい場合がある。このような状況下においても、ドライバの肉眼は徐々に暗さに慣れてしまうため、手動によるヘッドライト560の点灯を忘れる場合もある。
図80は、第6の実施の形態に係るオートライト装置550を自動車に搭載し、曇天下や雨天下において照度センサ552とUVセンサ551を機能させた場合の動作状況を示す説明図である。
図80に示すように、照度センサ552とUVセンサ551の両方を機能させた状態で走行すると、曇天や雨天下で比較的明るい場合には、照度センサ552による可視光の測定結果は閾値以上となるが、UVセンサ551による紫外線の測定結果は、雲によるミー散乱の影響で閾値以下となる場合がある。
このような状態は、前出の図76のフローチャートにおけるステップS10→ステップS13→ステップS14→ステップS15の処理に相当し、ヘッドライト560が自動的に点灯される。
これにより、曇天や雨天下で視認性が低下した場合に、ドライバが操作することなくヘッドライト560が自動的に点灯され、安全性や利便性を向上させることができる。
(紫外線の散乱)
図81に示すように太陽800から地上に達する光には、直射光hνDと散乱光hνRがある。
直射光hνDとは太陽800から直接地上に達する光のことであり、散乱光hνRとは太陽800からやってきた光が窒素・酸素などの空気分子やエアロゾル粒子650(固体または液体の微粒子)にあたり、その進行方向が変化し、植物750や人間850等が存在する地上に達する光のことである。
図81に示すように散乱光hνRは分子や粒子により四方に広がる。光が空気分子により散乱する場合は、光の波長が短いほど散乱しやすくなる性質があり、紫外線は可視光よりも波長が短いために、より散乱され易い。
図82は本州付近の夏の晴天時のUVインデックスの日変化を、直射光と散乱光に分けて示したグラフである。
図82において、地上に到達する紫外線の総量を太線で、そのうちの直射光によるものを細線で示している。
図82を見れば分かるように、地上に達する紫外線の中で、散乱光の寄与が直射光より大きい。したがって、日傘や帽子で日射しを遮り、日陰にいても、空が見える所では目で感じる以上に紫外線を浴びることになるので注意が必要である。
(地表面の反射と紫外線)
図83に示すように紫外線には、太陽800から直接届く紫外線hνDや空気分子やエアロゾル粒子に散乱されて届く紫外線の他に地表面で反射される紫外線hνRがある。
屋外にいる人850は、上空から地上に向かう紫外線(太陽800からの直射光と大気で散乱された光をあわせたもの)を浴びるだけでなく、地表面で反射された紫外線hνR浴びている。
UVインデックスは、このうち上空から地上に向かう紫外線の強度を示したものである。
UVインデックスを利用する際に、実際に浴びる紫外線量には紫外線が地表面で反射される効果も含まれていることを考慮に入れる必要がある。
なお、地表面での紫外線の反射の割合は、地表面の状態により大きく異なる。例えば、草地やアスファルトの反射率は10%もしくはそれ以下であるが、砂浜では25%、新雪では80%にも達する。
さらに、地表面で反射された紫外線hνRの一部は上空に向かい、大気等で再び散乱されて地上に向かう。つまり地表面の反射率が大きいところでは、反射率が小さいところより散乱光も強くなっている。
例えば、一面雪原の場合には、上空からの紫外線量(UVインデックス)は、反射と散乱の効果により雪がないと仮定した場合と比較して4〜5割ほど増加することが分かっている。
上空からの紫外線hνDに対して帽子や日傘の利用は有効であるが、地表面から反射してくる紫外線hνRについても忘れずに、総合的な紫外線対策をとることが望ましい。
本発明に係る光検出装置(UVセンサ)によれば、携帯電話や腕時計等の携帯機器に搭載することが可能であり、常に携帯して環境のUVインデックスを簡易的に測定することにより、紫外線の浴びすぎ等を回避することに役立てることができる。
[その他の実施の形態]
上記のように、実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。