JP5993041B2 - 透明導電性フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、可撓性透明基材の一方の面に透明導電体層を有する透明導電性フィルムの製造方法に関する。
従来、タッチパネル等に用いられる透明導電性フィルムとして、透明フィルム等の可撓性透明基材に、ITO等の導電性金属酸化物からなる透明導電体層が積層されたものが知られている。近年、多点入力(マルチタッチ)が可能な投影型静電容量方式のタッチパネルや、マトリックス型の抵抗膜方式タッチパネルが脚光を浴びているが、これらのタッチパネルでは、透明導電性フィルムの透明導電体層が、所定形状(例えばストライプ状)にパターン化されている。このような透明導電性フィルムは、可撓性透明基材上に透明導電体層を有するパターン形成部と、可撓性透明基材上に透明導電体層を有していないパターン開口部とを有している。
透明導電体層がパターン化されている場合、透明導電体層が形成されている部分(パターン形成部)と透明導電体層が形成されていない(パターン開口部)との間の反射率差に起因して、パターンが視認され、表示素子としての見栄えが悪くなる場合がある。このような透明導電体層の有無による視認性の相違を抑制する観点から、フィルム基材と透明導電体層との間に複数の光学干渉層をアンダーコート層として設け、光学干渉層の屈折率等を所定範囲に調整することが提案されている(例えば、特許文献1〜4)。
特開2010−15861号公報 特開2008−98169号公報 特許第4364938号明細書 特開2009−76432号公報
上記のように、透明導電体層がパターン化されている場合は、その境界が視認され難いことが求められるが、これに加えて、表示装置の軽量化や薄型化の観点から、タッチパネル等に用いられる透明導電性フィルムの薄型化が求められている。透明導電性フィルムの厚みを小さくするためには、その厚みの大部分を占めるフィルム基材の厚みを小さくすることが必要である。しかしながら、本発明者らが検討したところ、フィルム基材の厚みを小さくすると、基材と透明導電体層との間に光学干渉層が設けられていても、透明導電性フィルムをタッチパネルに組み込んだ際に、透明導電体層のパターン境界が視認され易く、見栄えが悪くなる場合があることが判明した。
上記に鑑みて、本発明は、基材の厚みが80μm以下と小さい場合でも、タッチパネルに組み込んだ際に、透明導電体層のパターンが視認され難い透明導電性フィルムを提供することを目的とする。
上記課題に鑑みて本発明者らが検討の結果、透明導電性フィルムの透明導電体層をパターン化した後におこなわれる熱処理工程において、パターン形成部とパターン開口部との寸法変化率の差を小さくすることによって、透明導電体層のパターンが視認され難くなることを見出し、本発明に至った。
本発明は、厚み80μm以下の可撓性透明基材上にパターン化された透明導電体層を有する透明導電性フィルムの製造方法に関する。透明導電性フィルムは、可撓性透明基材上に透明導電体層を有するパターン形成部と、可撓性透明基材上に透明導電体層を有していないパターン開口部とを有する。本発明の製造方法は、透明フィルム基材を有する可撓性透明基材上にパターン化されていない透明導電体層が形成された積層体を準備する積層体準備工程、透明導電体層の一部を除去して可撓性透明基材上に透明導電体層を有するパターン形成部と可撓性透明基材上に透明導電体層を有していないパターン開口部とにパターン化するパターン化工程、および透明導電体層がパターン化された後の前記積層体を加熱する熱処理工程を有する。
本発明においては、熱処理工程におけるパターン形成部の寸法変化率Hとパターン開口部の寸法変化率Hとの差H−Hの絶対値が小さいことが好ましい。具体的には、H−Hが0.03%未満であることが好ましく0.025%以下であることがより好ましく、0.02%以下がさらに好ましく、0.015%以下が特に好ましい。
一実施形態において、透明導電体層がパターン化された後の前記積層体を加熱する熱処理工程での温度は100℃未満であることが好ましい。
本発明の一実施形態において、透明導電体層の一部の除去は、エッチャントを用いたウェットエッチングにより好適に行うことができる。この場合、熱処理工程では前記積層体を加熱乾燥することが好ましい。
本発明の一実施形態において、可撓性透明基材は、透明フィルム基材の透明導電体層形成面側にアンダーコート層が形成されたものである。また、透明導電体層はスズドープ酸化インジウムからなることが好ましく、可撓性透明基材は、透明フィルム基材としてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたものであることが好ましい。
本発明によれば、透明導電体層をパターン化した後の透明導電性フィルムにおいて、パターン形成部とパターン開口部の加熱時の寸法変化率の差が所定範囲内である。そのため、加熱後においても透明導電体層と可撓性透明基材の界面に生じる応力が小さく、フィルムにうねりが生じ難い。このようにして得られた透明導電性フィルムをガラス板等の剛性の基体と貼り合わせてタッチパネル等を形成した場合において、パターン境界での段差が低減され、パターン境界が視認されることによる見栄えの低下が抑止される。
透明導電体層がパターン化された透明導電性フィルムの模式的断面図である。 粘着剤層付き透明導電性フィルムの一形態を示す断面図である。 透明導電性フィルムを他の基体と貼り合わせた形態を示す模式的断面図である。 透明導電体層がパターン化された透明導電性フィルムの一形態を示す模式的平面図である。 パターン境界における表面形状(段差)の測定結果の一例を表す図である。 透明導電性フィルムを基体と貼り合わせた際にパターン境界に段差が生じることを概念的に説明するための図である。 実施例および比較例における、(H−H)の値とパターン境界における段差との関係をプロットしたものである。
図1は、パターン化された透明導電体層を有する透明導電性フィルムの一形態を示す模式的断面図である。図1に示す透明導電性フィルム100は、可撓性透明基材1の一方の面に、パターン化された透明導電体層2を有している。可撓性透明基材は、透明フィルム基材11の表面に、必要に応じてアンダーコート層12等が形成されている。透明導電性フィルム100は、透明導電体層2が形成されているパターン形成部Pと、透明導電体層が形成されていないパターン開口部Oとから構成されている。図2は、可撓性透明基材1の透明導電体層2が形成されていない側の面に粘着剤層3を有する粘着剤層付き透明導電性フィルムの一形態を示す模式的断面図である。図3は、この粘着剤層3を介して透明導電性フィルムがガラス等の剛性の基体50に貼り合わせられている粘着剤層付き透明導電性フィルム110を示す模式的断面図である。
まず、上記のような構成を有する透明導電性フィルムにおいて、可撓性透明基材1の厚みを小さくした場合に、透明導電体層2のパターン境界が視認され易くなる原因について検討した。厚み23μmのPETフィルム基材からなる可撓性透明基材1上にITOからなるパターン化された透明導電体層2が形成された透明導電性フィルム100を粘着剤層3を介してガラス板50に貼り合わせた場合の、透明導電体層側の表面形状プロファイルの一例を図5に示す。図5においては、透明導電体層が形成されているパターン形成部Pと、透明導電体層が形成されていないパターン開口部Oとの境界で、150nm以上の高低差(段差)が生じている。この例において、パターン境界における高低差は透明導電体層の厚み(22nm)よりもはるかに大きく、この段差がパターン境界を視認され易くしている要因であると考えられた。
このように、ガラス板に貼り合わせた透明導電性フィルムのパターン境界において大きな段差が生じる原因についてさらに検討したところ、ガラス板に貼り合わせる前の透明導電性フィルムには、図6(a)に概念的に示すように、パターン形成部Pの透明導電体層2形成面側を凸として波状のうねりが発生していた。このようにうねりが生じているフィルムが、粘着剤層を介して平坦なガラス板に貼り合わせられると、ガラス板の方がフィルムよりも剛性が大きいために、フィルムのうねり自体はほぼ解消されて平坦となる。一方で、透明導電性フィルムのうねりが解消されて平坦となる際には、凸状に湾曲していたパターン形成部Pの境界部にひずみが集中するために、図6(b)に概念的に示すように、透明導電体層が端部の境界付近で盛り上がり、これが境界に段差を生じる原因であると推定される。なお、図3および図6(b)においては、透明導電性フィルム100の可撓性透明基材1側が粘着剤層3を介して剛性の基体と貼り合わせられた形態が図示されているが、透明導電体層2側が他の基体(例えばタッチパネルのウィンドウ層)と貼り合わせられた場合においても、フィルムのうねりが原因でパターン境界に段差が生じ、パターン境界が視認され易くなっているものと考えられる。
段差を解消して、パターン境界を視認され難くするためには、ガラス等の剛性基体に貼り合わせられる前の透明導電性フィルムのうねりを解消することが重要であると考えられた。さらに、透明導電性フィルムにうねりが生じる原因について考察したところ、透明導電体層をエッチング等によりパターン化した後、フィルムが加熱されると、うねりが生じやすいことが判明した。一般に、透明導電体層をウェットエッチングによりパターン化した後には、エッチャントが水洗され、その後に加熱乾燥が行われる。また、透明導電体層が非晶質である場合は、透明導電体層の加熱信頼性や透明性の向上、低抵抗化等を目的として酸素存在下で加熱することによって透明導電体層を結晶化する場合がある。さらには、透明導電性フィルム上にIC等の制御手段と透明導電体層とを電気的に接続するためのパターン配線を形成する際やタッチパネルの組立加工時にも加熱が行われる。
本発明は、透明導電体層をパターン化後の熱処理工程においてうねりが発生することを抑制すれば、ガラス板等の剛性基体に透明導電性フィルムが貼り合わせられた場合の段差が低減し、パターン境界が視認され難くなるとの推定原理に基づいてなされたものである。そして、さらに検討の結果、透明導電体層をパターン化後の加熱工程において、パターン形成部の寸法変化率Hとパターン開口部の寸法変化率Hが略同等であれば、うねりの発生が抑制され、ガラス等と貼り合わせた場合でも、パターン境界が視認され難くなることが見出された。
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、一形態にかかる透明導電性フィルムの模式的断面図である。図1においては、可撓性透明基材1上に、透明導電体層2が形成された透明導電性フィルム100が図示されている。図1においては、可撓性透明基材1としてフィルム基材11上にアンダーコート層12が形成されたものが図示されているが、可撓性透明基材1はアンダーコート層を有していなくともよい。また、フィルム基材11の透明導電体層2が形成されていない側の面に、ハードコート層、ブロッキング防止層、反射防止層等の機能性層(不図示)が形成されていてもよい。
<可撓性透明基材>
(フィルム基材)
可撓性透明基材1を構成する透明フィルム基材11としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。例えば、その材料として、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂である。なお、例えば図1において、符号「1」で示される部材(すなわち、可撓性透明基材)が透明フィルム基材11のみで構成される場合も、当該部材を可撓性透明基材という。
透明導電性フィルムにうねりや段差を生じ難くする観点からは、基材フィルムの厚みを大きくして、剛性を高めることが好ましいが、薄型化の観点から、本発明における基材フィルムの厚みは80μm以下である。なお、後述するようにフィルム基材11上に光学干渉層やハードコート層等のアンダーコート層12が形成されている場合は、これらも含めた可撓性透明基材としての厚みが80μm以下であることが好ましい。
薄型化の観点からは、フィルム基材の厚みは小さいことが好ましいが、厚みが過度に小さいと、ハンドリング性に劣る等の問題を生じるため、フィルム基材の厚みは10μm以上であることが好ましい。フィルム基材の厚みが、10〜60μm、さらには10〜30μmの薄型の場合においても本発明は好適である。また、フィルム基材を上記範囲のように薄くすれば、透明導電性フィルムの総厚みが薄くなることに加え、例えば、透明導電体層をスパッタリング法等により形成する際、フィルム基材の内部から発生する揮発成分量が少なくなり、結果的に欠陥の少ない透明導電体層を形成することができる。
フィルム基材は、加熱時の寸法安定性が高いことが好ましい。一般にプラスチックフィルムは加熱時の膨張や収縮による寸法変化を生やすい。これに対して、金属酸化物からなる透明導電体層は寸法変化を生じ難いため、加熱時に基材フィルムに寸法変化が生じると、可撓性透明基材と透明導電体層との界面にひずみが生じ、これがうねりを発生させる原因となる。そのため、基材フィルムは熱変形温度が高いことが好ましい。
透明フィルム基材は、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施してもよい。これにより、この上に設けられる透明導電体層やアンダーコート層等の基材に対する密着性を向上させることができる。また、透明導電体層やアンダーコート層等を設ける前に、必要に応じてフィルム基材表面を溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化してもよい。
透明フィルム基材はそのまま可撓性透明基材1として用いることもできるが、図1に示すように、透明フィルム基材11の透明導電体層2形成面側に、ハードコート層、ブロッキング防止層、光学干渉層等のアンダーコート層12を設けたものであってもよい。
(アンダーコート層)
一般に、ハードコート層は、フィルムに硬度を持たせてキズ付きを防止する目的で設けられ、アンチブロッキング層は、フィルム表面に凹凸を形成して滑り性や耐ブロッキング性を付与するために設けられる。また、光学干渉層は、透明導電体層をパターン形成部とパターン開口部とにパターン化した際に両者の反射率差を低減し、パターンが視認されることを抑止するために設けられる。
ハードコート層を形成する樹脂としては、熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられるが、これらのなかでも紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よくハードコート層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものがあげられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、例えば紫外線重合性の官能基を有するもの、なかでも当該官能基を2個以上、特に3〜6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマー成分を含むものがあげられる。また、紫外線硬化型樹脂には、紫外線重合開始剤が配合されている。
ハードコート層の形成方法は特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。たとえば、透明フィルム11上にハードコート層を形成する樹脂組成物を塗工し、乾燥後、硬化処理する方法が採用される。樹脂組成物の塗工は、ファンテン、ダイコーター、キャスティング、スピンコート、ファンテンメタリング、グラビア等の適宜な方式で塗工される。なお、塗工にあたり、前記樹脂組成物は、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等の一般的な溶剤で希釈して溶液としておくことが好ましい。
ハードコート層は、上記のように、フィルムに硬度を持たせてキズ付きを防止する目的で設けられるものであるが、本発明においては、可撓性透明基材の加熱寸法変化の抑制に寄与させることもできる。すなわち、ハードコート層は一般に架橋構造を有しているために、ポリマーフィルム基材に比して寸法変化を生じ難く、フィルム基材上にハードコート層が形成された可撓性透明基材は、フィルム基材単体の場合に比して加熱寸法変化が小さい。そのため、透明フィルム基材11上にアンダーコート層12としてハードコート層を設けることによって可撓性透明基材の寸法変化が抑制され、透明導電体層2がパターン化された透明導電性フィルムを加熱した場合のうねりの低減にも寄与し得る。
ハードコート層の厚みは、1〜7μmが好ましく、2μm〜5μmがより好ましい。ハードコート層の厚み小さいと、硬度が不足したり、上記のような寸法変化の抑制効果が十分に発揮されない場合がある。一方、厚みが過度に大きいと、可撓性透明基材や透明導電性フィルムにカールを生じたり、ハードコート層にクラックが発生する等の不具合を生じる場合がある。
上記のようなハードコート層は、ブロッキング防止層としての機能を有するものであってもよい。ハードコート層がブロッキング層としての機能を有する場合、表面の算術平均粗さRaは50nm以上であることが好ましい。算術平均粗さを前記範囲とすることで、透明導電性フィルムに良好な滑り性や耐ブロッキング性が付与される。
このようなブロッキング防止層としては、硬化型樹脂層中に微粒子を含有させたものや、硬化型樹脂組成物として相分離する2種以上の成分を含有するコーティング組成物を用いたもの、あるいはこれらを併用することによって、表面に凹凸が形成されたものが好適に用いられる。硬化型樹脂層の成分としては、ハードコート層の各成分として前記したものが好適に用いられる。また、相分離する2種以上の成分を含有するコーティング組成物としては、例えば国際公開WO2005/073763号パンフレットに記載の組成物を好適に用いることができる。
光学干渉層は、透明導電体層が形成されているパターン形成部と透明導電体層が除去されたパターン開口部との光学厚み差を調整することによって、両者間の反射率差を低減し、パターンが視認され難くすることを目的として設けられる。
光学干渉層は、無機物、有機物、又は、無機物と有機物との混合物により形成することができる。例えば、無機物として、NaF(1.3)、NaAlF(1.35)、LiF(1.36)、MgF(1.38)、CaF(1.4)、BaF(1.3)、SiO(1.46)、LaF(1.55)、CeF(1.63)、Al(1.63)などの無機物〔上記各材料の括弧内の数値は屈折率である〕が挙げられる。これらのなかでも、SiO、MgF、Alなどが好ましく用いられる。特に、SiOが好適である。上記の他、酸化インジウムに対して、酸化セリウムを10〜40重量部程度、酸化錫を0〜20重量部程度含む複合酸化物を用いることができる。
上記有機物としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などが挙げられる。これら有機物は、少なくとも1種が用いられる。特に、有機物としては、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用するのが望ましい。
光学干渉層は、透明フィルム基材11と透明導電体層2との間に設けることができ、導電層としての機能を有しないものである。すなわち、光学干渉層は、パターン化された透明導電体層2の間を絶縁する誘電体層として設けられる。従って、光学干渉層は、通常、表面抵抗が、1×10Ω/□以上であり、好ましくは1×10Ω/□以上、さらに好ましくは1×10Ω/□以上である。なお、光学干渉層の表面抵抗の上限に特に制限はない。一般的には、光学干渉層の表面抵抗の上限は測定限界である、1×1013Ω/□程度であるが、1×1013Ω/□を超えるものであってもよい。
光学干渉層の屈折率は、透明導電体層の屈折率との差が、0.1以上であることが好ましい。透明導電体層の屈折率と光学干渉層の屈折率の差は、0.1以上0.9以下、さらには0.1以上0.6以下であるのが好ましい。なお、光学干渉層の屈折率は、通常、1.3〜2.5、さらには1.38〜2.3、さらには1.4〜2.3であるのが好ましい。このように光学干渉層の屈折率を制御することによって、パターン形成部とパターン開口部との反射率差を低減することができる。
透明フィルム基材11に最も近い光学干渉層は、有機物により形成されていることが、透明導電体層をエッチングによりパターン化する上で好ましい。そのため、光学干渉層が1層からなる場合には、光学干渉層は、有機物により形成するのが好ましい。
光学干渉層が、2層以上からなる場合には、少なくとも、透明フィルム基材から最も離れた光学干渉層は、無機物により形成されていることが、透明導電体層をエッチングによりパターン化する上で好ましい。光学干渉層が3層以上からなる場合には、フィルム基材から第二層目より上の光学干渉層についても無機物により形成されていることが好ましい。
無機物により形成された光学干渉層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセス、またはウェット法(塗工法)などにより形成できる。光学干渉層を形成する無機物としては、前述の通り、SiOが好ましい。ウェット法では、シリカゾル等を塗工することによりSiO膜を形成することができる。
以上から、光学干渉層を層設ける場合には、第一光学干渉層を有機物により形成し、第二光学干渉層を無機物により形成するのが好ましい。
光学干渉層の厚みは、特に制限されるものではないが、光学設計や、透明フィルム基材からのオリゴマー発生防止効果の点から、通常、1〜300nm程度であり、好ましくは5〜300nmである。なお、光学干渉層が2層以上からなる場合、各層の厚みは、5〜250nm程度であることが好ましく、10〜250nmであることがより好ましい。
このような光学干渉層は、基材フィルム上に直接設けることもできるし、前述のようなハードコート層やブロッキング防止層上に設けてもよい。光学干渉層も、上記のハードコート層と同様に可撓性透明基材の加熱寸法変化の抑制に寄与し得る。しかしながら、光学干渉層は、一般にハードコート層に比して厚みが小さいために、加熱寸法変化の抑制効果はハードコート層の方が優れている。そのため、透明フィルム基材上にハードコート層を設け、その上に光学干渉層を設けることで、可撓性透明基材の寸法変化を抑制しつつ、パターン形成部とパターン開口部との間の反射率差を抑制することもできる。
<透明導電体層>
透明導電体層2は、導電性金属酸化物により形成される。透明導電体層を構成する導電性金属酸化物は特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の導電性金属酸化物が用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えばスズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)などが好ましく用いられる。中でも、ITOが最も好適である。また、可撓性透明基材の透明導電体層2側の面に光学干渉層が形成されている場合、透明導電体層は、光学干渉層との屈折率の差が0.1以上であることが好ましい。
透明導電体層の厚みは特に制限されないが、10nm以上とするのが好ましく、15〜40nmであることがより好ましく、20〜30nmであることがさらに好ましい。透明導電体層の厚みが15nm以上であると、表面抵抗が例えば1×103Ω/□以下の良好な連続被膜が得られ易い。また、透明導電体層2の厚みが40nm以下であると、より透明性の高い層とすることができる。
透明導電体層の形成方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。透明導電体層は、アモルファスであってもよく、結晶性のものであってもよい。結晶性の透明導電体層を形成する方法として、可撓性透明基材1上に高温で製膜を行うことによって、そのまま結晶性の膜を形成することもできる。しかしながら、基材の耐熱性等を考慮すると、結晶性の透明導電体層は、一旦基材上にアモルファス膜を形成した後、該アモルファス膜を可撓性透明基材とともに加熱・結晶化することによって形成することが好ましい。
透明導電体層の結晶化は、透明導電体層をパターン化する前後のいずれに行うこともできる。なお、ウェットエッチングにより透明導電体層をパターン化する場合、エッチングの前に透明導電体層の結晶化を行うと、エッチングが困難となる場合がある。そのため、透明導電体層の結晶化は、透明導電体層をパターン化した後に行うことが好ましい。透明導電体層のパターン化後に結晶化を行う場合は、後に詳述するように、パターン形成部の寸法変化率とパターン開口部の寸法変化率が小さくなるように加熱条件を設定することが好ましい。
<透明導電体層のパターン化>
上記のようにして可撓性透明基材上に透明導電体層が形成された積層体は、透明導電体層の一部が除去されてパターン化される。透明導電体層がパターン化された透明導電性フィルムは、可撓性透明基材1上に透明導電体層2を有するパターン形成部Pと、可撓性透明基材1上に透明導電体層を有していないパターン開口部Oとを有する。パターンの形状は、透明導電性フィルムが適用される用途に応じて、各種形状を形成することができる。パターン形成部Pの形状としては、例えば、図4に示すストライプ状の他、スクエア状等が挙げられる。なお、図4では、パターン形成部Pの幅がパターン開口部Oの幅より大きく図示されているが、本発明は当該形態に制限されるものではない。
透明導電体層2のパターン化はウェットエッチングにより行なわれることが好ましい。透明導電体層2の一部をウェットエッチングにより除去してパターン化を行う場合、パターンを形成するためのマスクにより透明導電体層2の一部(パターン形成部)を覆って、透明導電体層のマスクにより覆われていない部分(パターン開口部)をエッチャントに曝すことによって除去する。前述のように透明導電体層2は、ITOやATO等の導電性金属酸化物が用いられるため、エッチャントとしては、酸が好適に用いられる。酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、およびこれらの混合物、ならびにそれらの水溶液が挙げられる。
<熱処理>
上記のように透明導電体層がパターン化された後の透明導電性フィルムは、熱処理工程に供される。熱処理としては、パターン化に用いたエッチャントを水等の洗浄液を用いて洗浄した後の洗浄液を乾燥するための加熱、非晶質の透明導電体層を結晶化するための加熱、パターン化された透明導電体層をIC等の制御手段と電気的に接続するためのパターン配線形成時に銀ペースト等を乾燥するための加熱、およびタッチパネルの組立加工時の加熱等が挙げられる。
本発明においては、熱処理工程において、パターン形成部Pの寸法変化率Hとパターン開口部Oの寸法変化率Hとの差H−Hの絶対値が0.03%未満であることが好ましい。熱処理工程におけるパターン形成部とパターン開口部の寸法変化率の差を小さくすることによって、透明導電性フィルムにおけるうねりの発生が抑制される。そのため、透明導電性フィルムをタッチパネル等に組み込んだ際に、パターン境界に大きな段差が生じることによる見栄えの低下が抑止される。うねりの発生を抑制して、パターン境界に生じる段差を小さくする観点からは、H−Hの絶対値は0.025%以下であることがより好ましく、0.02%以下であることがさらに好ましく、0.015%以下であることが特に好ましい。
寸法変化率(%)は、加熱処理前の2点間距離L、および加熱処理後の2点間距離Lを用いて、100×(L−L)/Lで定義され、寸法変化率の符号が正である場合は膨張、負である場合は収縮を表す。したがって、H−Hが負である場合は、透明導電体層が除去されているパターン開口部は、透明導電体層が形成されているパターン形成部に比して、熱処理後の寸法が小さくなる(熱収縮し易い)ことを意味する。熱処理工程における透明導電性フィルムの寸法変化率(熱収縮率)が方向によって異なる場合は、いずれか一方向の寸法変化率の差が前記範囲であることが好ましい。なお、図4に示すように、透明導電体層がストライプ状にパターン化されている場合は、パターン化方向(パターンが並んでいる方向)における寸法変化率の差が前記範囲であることが好ましい。
熱処理工程におけるパターン形成部とパターン開口部の寸法変化率の差が小さい場合にうねりが抑制される推定原理について以下に説明する。
透明導電体層が除去されたパターン開口部において、可撓性透明基材1は、高温に加熱されると、基材フィルムの熱膨張や熱収縮によって寸法変化を生じ易い。例えば、透明フィルム基材として二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられている場合、透明導電性フィルムが120℃程度に加熱されると、パターン開口部の基材は熱収縮を生じ、寸法変化率Hは、一般に負の値となる。一方、金属酸化物からなる透明導電体層2は、基材フィルムに比して硬度が高く、加熱による寸法変化を生じ難い。そのため、可撓性透明基材1上に透明導電体層2が形成されたパターン形成部では、可撓性透明基材の寸法変化が透明導電体層によって抑制され、パターン形成部Pの寸法変化率Hの絶対値は、透明導電体層が除去されたパターン開口部Oの寸法変化率Hの絶対値に比して小さくなる傾向がある。
パターン形成部Pにおける寸法変化率Hの絶対値はHに比して小さいが、透明導電体層によって基材の寸法変化が抑制されているために、可撓性透明基材1と透明導電体層2との界面に応力が生じる。一方で、透明導電体層が形成されていないパターン開口部では、このような界面での応力が生じない。そのため、透明導電体層がパターン化された透明導電性フィルムは、図7に概念的に示すように、パターン形成部Pの透明導電体層2側を凸として、フィルムに波状のうねりが生じるものと考えられる。なお、図7では可撓性透明基材が加熱により収縮する場合を示しているが、可撓性透明基材が加熱により膨張するものであれば、パターン形成部の透明導電体層2が形成されていない側を凸としてうねりが生じるものと考えられる。
パターン形成部とパターン開口部の寸法変化率の差が小さいということは、前述のような可撓性透明基材と透明導電体層の界面に発生する応力が小さいことを意味するため、H−Hの絶対値が小さいほど、うねりの発生が抑制されるものと考えられる。そして、透明導電性フィルムのうねりが小さければ、ガラス等の剛性基体と貼り合わせた場合における、パターン境界部の段差が小さくなり、パターン境界が視認され難くなるものと考えられる。
以下、熱処理工程の具体例について説明する。透明導電性フィルムをパターン化した後の熱処理の典型例は、パターン化に用いたエッチャントを水等の洗浄液を用いて洗浄した後に、洗浄液を乾燥するための加熱である。一般に水を主成分とする液体が洗浄液として用いられるために、洗浄液を乾燥するための加熱は100℃以上の高温で行われることが多い。一方で、透明導電体層をパターン化後の透明導電性フィルムがこのような高温での熱処理に曝されると、可撓性透明基材が寸法変化を生じ、パターン形成部とパターン開口部との寸法変化率差が大きくなる傾向がある。そのため、洗浄液の乾燥は、100℃未満の低温で行われることが好ましい。乾燥時の加熱温度は、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。
なお、フィルム基材表面にハードコート層等のアンダーコート層が形成されたもののように、加熱寸法変化が抑制された可撓性透明基材が用いられる場合は、上記範囲より高い温度で加熱しても、H−Hの絶対値を0.03%未満として、うねりの発生を抑制できる場合がある。このような場合において、熱処理工程の加熱温度は、H−Hの絶対値が0.03%以上とならない範囲で、適宜に設定し得る。
その他の熱処理としては、非晶質の透明導電体層を結晶化するための加熱、パターン化された透明導電体層をIC等の制御手段と電気的に接続するためのパターン配線形成時に銀ペースト等を乾燥するための加熱、およびタッチパネルの組立加工時の加熱等が挙げられる。これらの熱処理を行う場合においても、上記の洗浄液の乾燥と同様に、加熱温度を調整することによって、H−Hの絶対値を0.03%未満とすることができる。
上記のように透明導電体層2がパターン化された透明導電性フィルムは、タッチパネル等に好適に用いられる。特に、透明導電体層がパターン化されて複数の透明電極を有することから、投影型静電容量方式のタッチパネルや、マトリックス型の抵抗膜方式タッチパネルに好適に用いられる。タッチパネル等への適用に際しては、図2に示すように、可撓性透明基材1の透明導電体層2が形成されていない側の面に粘着剤層3を有する粘着剤層付き透明導電性フィルムを形成してもよい。この粘着剤層付き透明導電性フィルムを、粘着剤層3を介して、例えば図3に示すように、基体50に貼り合わせて用いることができる。この際、基体50としてガラス板等の剛性の基体が用いられても、透明導電性フィルムのうねりが抑制されていれば、パターン境界での段差の発生が抑制され、視認性に優れるタッチパネルを形成することができる。また、透明導電体層2が設けられている側に粘着剤層を設けて、タッチパネルのウィンドウ層等の他の基体と貼り合わせた場合でも、同様にパターン境界での段差が抑制されるために、視認性に優れるタッチパネルを形成することができる。
粘着剤層3としては、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性及び接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
粘着剤層3の構成材料である粘着剤の種類によっては、適当な粘着用下塗り剤を用いることで基材との投錨力を向上させることが可能なものがある。従って、そのような粘着剤を用いる場合には、可撓性透明基材1に粘着用下塗り剤を用いることが好ましい。
前記粘着剤層には、ベースポリマーに応じた架橋剤を含有させることができる。また、粘着剤層には必要に応じて例えば天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。また透明微粒子を含有させて光拡散性が付与された粘着剤層3とすることもできる。
前記粘着剤層は、通常、ベースポリマー又はその組成物を溶剤に溶解又は分散させた固形分濃度が10〜50重量%程度の粘着剤溶液として用いられる。前記溶剤としては、トルエンや酢酸エチル等の有機溶剤や水等の粘着剤の種類に応じたものを適宜に選択して用いることができる。
この粘着剤層は、例えば、ガラス等の剛性基体や他のプラスチックフィルム基体等とのの接着後に於いては、そのクッション効果により、基材1の一方の面に設けられた透明導電体層2の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性、いわゆるペン入力耐久性および面圧耐久性を向上させる機能を有し得る。そのため、特にマトリックス型の抵抗膜方式のタッチパネルに用いる場合においては、粘着剤層にクッション効果を持たせることが好ましい。具体的には、粘着剤層3の弾性係数を1〜100N/cmの範囲、厚みを1μm以上、通常5〜100μmの範囲に設定するのが望ましい。粘着剤層の厚みが上記範囲であると、クッション効果が十分発揮され、かつ粘着剤層による密着力も十分となり得る。粘着剤層の厚みが上記範囲よりも薄いと上記耐久性や密着性が十分確保できず、また上記範囲よりも厚いと透明性などの外観に不具合が発生する場合がある。なお、透明導電性フィルムが静電容量方式のタッチパネルに用いられる場合には、上記のような粘着剤層によるクッション効果は必ずしも求められるものではないが、各種基体との密着性や、粘着剤層付き透明導電性フィルムのハンドリングを容易とする観点からは、粘着剤層3は上記と同様の厚みおよび弾性係数を有することが好ましい。
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の実施例において、1μm以上の厚みを有するものに関しては、ミツトヨ製マイクロゲージ式厚み計にて測定を行った。アンダーコート層およびITO膜の厚みは、大塚電子製の瞬間マルチ測光システム 型番「MCPD2000」を用い、干渉スペクトルの波形を基に算出した。
[実施例1]
(可撓性透明基材)
透明フィルム基材として、厚み23μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱樹脂製 商品名「ダイアホイル」、屈折率1.65)を、そのまま可撓性透明基材として用いた。
(ITO膜の製膜)
DCマグネトロンスパッタ装置に、ターゲット材料として、酸化インジウムと酸化スズとを97:3の重量比で含有する焼結体を装着した。可撓性透明基材を搬送しながら、脱水、脱ガスを行った後、基材の加熱温度を100℃とし、アルゴンガスおよび酸素ガスを導入して、放電出力6.35mW/cmでDCスパッタリング法により製膜を行い、基材上に厚み22nmのITO膜を形成した。
(ITO膜のパターン化)
このようにして得られた可撓性透明基材上に透明導電体層としてITO膜が形成された積層体から、7cm四方の矩形の試験片を切り出し、ITO膜の表面に幅2mmのポリイミドテープを2mm間隔で複数貼り合わせた。この際、スパッタ製膜時の搬送方向(以下、「MD方向」)がパターン化方向となるように、MD方向と直交する方向(以下、「TD方向」)にテープを貼り合わせた。この試験片を50℃に加温した5wt%塩酸水溶液に10分間浸漬させ、非マスキング部(ポリイミドテープが貼り合わせられていない部分)の透明導電体層のエッチング処理を行った。透明導電体層を除去後の試料を、十分な量の純水に浸漬することによって水洗した後、ポリイミドテープをゆっくりと剥離した。
(加熱処理)
パターン化後の透明導電性フィルムを、70℃のオーブン中で5分間加熱して、乾燥を行った。
(段差の評価)
このようにして得られたITO膜がパターン化された透明導電性フィルムを、ITO膜面を上にした状態で、ハンドローラーを用いて、厚み22μmのアクリル系粘着剤層を介してガラス板に貼り合わせた。小坂研究所社製の微細形状測定機(型番「ET4000」)を用いて、カットオフ値0.8mm、速度0.2mm/秒でITO膜形成面側の試料表面を走査させ、透明導電体層が形成されているパターン形成部と透明導電体層が除去されたパターン開口部との境界における段差を計測した。また、目視にて、パターン形成部とパターン開口部との判別ができるか否かを評価した。目視距離は20cm、目視角度はサンプル面から40度とした。
(熱処理時の寸法変化率の測定)
以下のように、透明導電体層が形成されている積層体をパターン形成部、透明導電体層をエッチングにより除去したものをパターン開口部とみなして、上記の加熱処理と同様の加熱を行った際のそれぞれの寸法変化率を測定した。
(1)パターン形成部の寸法変化率
可撓性透明基材上に透明導電体層としてITO膜が形成された積層体から、7cm四方の矩形の試験片を切り出し、50℃の純水に10分間浸漬した。パターン化方向(MD方向)に約50mmの間隔で2点の標点(傷)を可撓性透明基材上に形成した後、上記の加熱処理と同様に70℃で5分間の加熱をおこない、加熱前の標点間距離Lおよび、加熱後の標点間距離Lを、TOPCON社製の表面座標測定機(型番「CP600S」)により測定して、パターン形成部の寸法変化率H=100×(L−L)/L(%)を求めた。
(2)パターン開口部の寸法変化率
可撓性透明基材上に透明導電体層としてITO膜が形成された積層体から、7cm四方の矩形の試験片を切り出し、上記のITO膜のパターン化の場合と同様に、50℃に加温した5wt%塩酸水溶液に10分間浸漬してITO膜を除去した。その後、パターン形成部に関して上記したのと同様に熱処理を行い、加熱前後での寸法変化率Hを測定した。
[実施例2]
メラミン樹脂:アルキド樹脂:有機シラン縮合物を、固形分で2:2:1の重量比で含む熱硬化型樹脂組成物を、固形分濃度が8重量%となるようにメチルエチルケトンで希釈した。この溶液を、実施例1で用いたのと同様の厚み23μmのPETフィルムの一方の面に塗布し、150℃で2分間加熱硬化させ、膜厚33nmの光学干渉層(屈折率:1.54)を形成した(この光学干渉層を「アンダーコート層A」とする)。このアンダーコート層Aが形成されたPETフィルムを可撓性透明基材として用い、アンダーコート層形成面側にITO膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
[実施例3]
実施例1で用いたのと同様の厚み23μmのPETフィルムの一方の面に、ドライプロセスにより、厚み50nm、屈折率1.6〜1.9のSiOx(xは1.5以上2未満)からなる光学干渉層を形成した(この光学干渉層を「アンダーコート層B」とする)。このアンダーコート層Bが形成されたPETフィルムを可撓性透明基材として用い、アンダーコート層形成面側にITO膜を形成したこと、および加熱処理工程における温度を120℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
[実施例4]
アクリル・ウレタン系樹脂(DIC製 商品名「ユニディック17−806」)100重量部に、光重合開始剤として、ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン(チバガイギー製 商品名「イルガキュア184」)5重量部を加え、トルエンで希釈して、固形分が30重量%となるようにハードコート塗布溶液を調製した。この溶液を、実施例1で用いたのと同様の厚み23μmのPETフィルムの一方の面に塗布し、100℃で3分間加熱乾燥した後、オゾンタイプ高圧水銀灯(エネルギー密度80W/cm、15cm集光型)2灯で紫外線照射(積算光量300mJ/cm)を行い、厚さ2μmのハードコート層を形成した(このハードコート層を「アンダーコート層C」とする)。このアンダーコート層Cが形成されたPETフィルムを可撓性透明基材として用い、アンダーコート層形成面側にITO膜を形成したこと、および加熱処理工程における温度を160℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
[実施例5]
厚み50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂製 商品名「ダイアホイル」、屈折率1.65)の一方の面に、実施例2と同様にアンダーコート層Aを形成した。このPETフィルムを可撓性透明基材として用い、アンダーコート層形成面側にITO膜を形成したこと、および加熱処理工程における温度を160℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
[実施例6]
実施例1と同様にして、可撓性透明基材上にITO膜が形成された積層体を作製した後、ITO膜のパターン化において、ポリイミドテープを貼る方向を変えて、TD方向にパターン化を行った。また、寸法変化率はTD方向について行った。それ以外は実施例1と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
[比較例1]
加熱処理工程における温度を120℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
[比較例2]
加熱処理工程における温度を160℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
[比較例3]
加熱処理工程における温度を120℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例2と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
[比較例4]
加熱処理工程における温度を160℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例2と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
[比較例5]
加熱処理工程における温度を160℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例3と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
[比較例6]
加熱処理工程における温度を160℃、加熱時間を5分間としたこと以外は、実施例6と同様にして、透明導電性フィルムの作製および評価を行った。
上記各実施例および比較例の透明導電性フィルムの作製条件および評価結果を表1に示す。なお、パターンの目視評価は下記の3段階で評価した結果を示している。
○:パターン形成部とパターン開口部の判別が困難である。
△:パターン形成部とパターン開口部とをわずかに判別できる。
×:パターン形成部とパターン開口部とをはっきりと判別できる。
Figure 0005993041
表1から明らかなように、H−Hの絶対値が0.03%未満であると、パターン境界での段差が小さくなり、パターン境界が視認され難いことがわかる。また、実施例1、比較例1、および比較例2の対比、実施例2、比較例3、および比較例4の対比、ならびに実施例3と比較例5との対比から、基材が同一であれば、熱処理工程におけるH−Hの絶対値が小さいほど、段差が抑制されていることがわかる。
Figure 0005993041
また、表2から明らかなように、熱処理工程における加熱温度が100℃未満であると、H−Hの絶対値が0.03%未満に抑制され、パターン境界での段差が小さくなり、パターン境界が視認され難いことがわかる。また、実施例1、比較例1、および比較例2の対比、実施例2、比較例3、および比較例4の対比、ならびに実施例6と比較例6との対比から、基材が同一であれば、熱処理工程における加熱温度が低いほど、段差が抑制されていることがわかる。
図7は、各実施例および比較例のH−Hに対して、パターン境界の段差をプロットしたものである。図7によれば、H−Hの絶対値が大きくなるにしたがって段差が大きくなり、基材の厚みやアンダーコート層の種類、および透明導電体層のパターン化方向に関わらず、H−Hの値と段差とが高い相関を示していることがわかる。したがって、H−Hを所定範囲とすることで、段差が低減され、パターン境界が視認され難くなることがわかる。
1 可撓性透明基材
11 透明フィルム基材
12 アンダーコート層
2 透明導電体層
3 粘着剤層
50 基体
100 透明導電性フィルム

Claims (7)

  1. 透明フィルム基材を有する可撓性透明基材の一方の面にパターン化された透明導電体層を有する透明導電性フィルムを製造する方法であって、該透明導電性フィルムは、可撓性透明基材上に透明導電体層を有するパターン形成部と、可撓性透明基材上に透明導電体層を有していないパターン開口部とを有し、可撓性透明基材の厚みは80μm以下であり、前記透明導電体層の厚みは10〜30nmであり、
    可撓性透明基材上にパターン化されていない透明導電体層が真空蒸着法、スパッタリング法又はイオンプレーティング法により形成された積層体を準備する積層体準備工程、
    前記透明導電体層の一部を除去して、可撓性透明基材上に透明導電体層を有するパターン形成部と、可撓性透明基材上に透明導電体層を有していないパターン開口部とにパターン化するパターン化工程、および
    透明導電体層がパターン化された後の前記積層体を加熱する熱処理工程、を有し、
    前記透明導電体層の一部の除去を、エッチャントを用いたウェットエッチングにより行い、かつ、
    前記熱処理工程では前記積層体を加熱乾燥し、
    熱処理工程における、パターン形成部の寸法変化率Hとパターン開口部の寸法変化率Hとの差H−Hの絶対値が0.03%未満であり、
    パターン化された前記透明導電性フィルムを、前記透明導電体層面を上にした状態で、ハンドローラーを用いて、厚み22μmのアクリル系粘着剤層を介してガラス板に貼り合わせた際の前記透明導電体層形成面側の表面における前記パターン形成部と前記パターン開口部との境界における段差が145nm以下である、透明導電性フィルムの製造方法。
  2. 透明フィルム基材を有する可撓性透明基材の一方の面にパターン化された透明導電体層を有する透明導電性フィルムを製造する方法であって、該透明導電性フィルムは、可撓性透明基材上に透明導電体層を有するパターン形成部と、可撓性透明基材上に透明導電体層を有していないパターン開口部とを有し、可撓性透明基材の厚みは80μm以下であり、前記透明導電体層の厚みは10〜30nmであり、
    可撓性透明基材上にパターン化されていない透明導電体層が真空蒸着法、スパッタリング法又はイオンプレーティング法により形成された積層体を準備する積層体準備工程、
    前記透明導電体層の一部を除去して、可撓性透明基材上に透明導電体層を有するパターン形成部と、可撓性透明基材上に透明導電体層を有していないパターン開口部とにパターン化するパターン化工程、および
    透明導電体層がパターン化された後の前記積層体を加熱する熱処理工程、を有し、
    前記熱処理工程における加熱温度が、100℃未満であり、
    パターン化された前記透明導電性フィルムを、前記透明導電体層面を上にした状態で、ハンドローラーを用いて、厚み22μmのアクリル系粘着剤層を介してガラス板に貼り合わせた際の前記透明導電体層形成面側の表面における前記パターン形成部と前記パターン開口部との境界における段差が145nm以下である、透明導電性フィルムの製造方法。
  3. 前記熱処理工程における、パターン形成部の寸法変化率Hとパターン開口部の寸法変化率Hとの差H−Hの絶対値が0.03%未満である、請求項2に記載の透明導電性フィルムの製造方法。
  4. 前記透明導電体層の一部の除去を、エッチャントを用いたウェットエッチングにより行い、かつ、
    前記熱処理工程では前記積層体を加熱乾燥する、請求項2又は3に記載の透明導電性フィルムの製造方法。
  5. 前記可撓性透明基材は、前記透明フィルム基材の透明導電体層形成面側にアンダーコート層が形成されたものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明導電性フィルムの製造方法。
  6. 前記透明導電体層はスズドープ酸化インジウムからなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明導電性フィルムの製造方法。
  7. 前記可撓性透明基材は、前記透明フィルム基材としてポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明導電性フィルムの製造方法。

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