JP5991662B2 - 窒素酸化物浄化触媒、及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車や船舶のエンジン等の内燃機関、各種燃焼器、工場から排出される排ガス中の窒素酸化物を効率よく浄化する触媒に関するものである。
従来、自動車や船舶のエンジン等の内燃機関からの排ガスについて、空気汚染や地球温暖化といった地球環境の面から様々な基準が定められている。自動車や船舶のエンジンにおける排ガス中に含まれる有害物質である窒素酸化物(NO)を還元して無害の窒素に変換する触媒として、一般的にパラジウム(Pd)、白金(Pt)、またはロジウム(Rh)等の貴金属を担持した三元触媒が使用されている。三元触媒を使用することで、炭化水素(HC)は水(HO)及び二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)は二酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)は窒素(N)にそれぞれ酸化若しくは還元される。排ガス中の有害物質の中でも窒素酸化物(NO)はとりわけ除去することが困難であるが、窒素酸化物(NO)の浄化においてロジウム(Rh)が最も優れていることが知られている。
特開2004−98000(2004年4月2日公開)
しかしながら、従来の触媒は、Pd,Pt,Rhのような希少金属を用いており、コストが高くなるという問題がある。また、貴金属は、埋蔵量も少ないことから将来的な供給不足が懸念される。
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、その目的は、貴金属と同レベルの浄化能力を有し、かつ、比較的安価な材料で構成される窒素酸化物浄化触媒を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み、CMD(Computational Material Design)(計算機マテリアルデザイン入門(笠井秀明他編、大阪大学出版会、2005年10月20日発行)を参照)を用いた第1原理計算を実行して窒素酸化物浄化触媒の浄化能力のメカニズムを解明した。そして、さらに鋭意検討した結果、貴金属と同レベルの浄化能力を有し、かつ、比較的安価な材料で構成される窒素酸化物浄化触媒を実現できることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。ただし、本発明は、少なくとも下記の<1>または<4>を含んでいればよい。
<1>CuOを材料とし、その表面における酸素原子の割合を低下させるような表面酸素除去処理が施されていることを特徴とする窒素酸化物浄化触媒。
<2>上記表面酸素除去処理は、プラズマを表面に照射して酸素を除去する処理であることを特徴とする上記<1>に記載の窒素酸化物浄化触媒。
<3>上記表面酸素除去処理は、電場を印加することにより、表面の酸素原子を内部に移動させる処理であることを特徴とする上記<1>に記載の窒素酸化物浄化触媒。
<4>CuOを材料とし、その表面における酸素原子の割合が化学量論比よりも小さいことを特徴とする窒素酸化物浄化触媒。
本発明の窒素酸化物浄化触媒は、CuOを材料とし、その表面における酸素原子の割合を低下させるような表面酸素除去処理が施されているものである。もしくは、本発明の窒素酸化物浄化触媒は、CuOを材料とし、その表面における酸素原子の割合が化学量論比よりも小さいものである。これにより、窒素酸化物と触れる表面のCu原子の価電子数をある程度高い状態とし、かつ、当該Cu原子がフェルミエネルギー近傍のエネルギー準位を有する電子軌道を有することとなり、窒素酸化物との間に電子のやり取りを行う能力が向上する。その結果、貴金属と同レベルの浄化能力を有し、かつ、比較的安価な材料で構成される窒素酸化物浄化触媒を提供することができるという効果を奏する。
(a)は分子状吸着を示し、(b)は解離吸着を示す図である。 Rh金属の構造モデルを示す上面図である。 Rh、Pt、Pd、Irの金属によるNO分子の吸着エネルギーの算出結果を示す図である。 Rh金属表面へのNO分子の吸着によるRh表面原子の電子状態密度の変化を示す図であり、(a)はNO分子の吸着前を示し、(b)はNO分子が解離吸着したときを示す。 金属表面における原子の電子状態密度を示す図であり、(a)はPt、(b)はPd、(c)はIr、(d)はCuを示す。 Co、Ni、Cu、Feを含む材料の構造モデルを示す図であり、(a)が金属単体、(b)が表面酸化金属、(c)が酸化物の構造モデルを示している。 (a)がCoの金属単体、(b)がCoの表面酸化金属、(c)がCoOの構造モデルを示している。 Coを含む材料に対するNOの吸着エネルギーの算出結果を示す図である。 Coを含む材料における、最も表面に近いCo原子の価電子数の算出結果を示す図である。 (a)がNiの金属単体、(b)がNiの表面酸化金属、(c)がNiOの構造モデルを示している。 Niを含む材料に対するNOの吸着エネルギーの算出結果を示す図である。 Niを含む材料における、最も表面に近いNi原子の価電子数の算出結果を示す図である。 (a)がFeの金属単体、(b)がFeの表面酸化金属、(c)がFeの構造モデルを示している。 Feを含む材料に対するNOの吸着エネルギーの算出結果を示す図である。 Feを含む材料における、最も表面に近いFe原子の価電子数の算出結果を示す図である。 (a)がCuの金属単体、(b)がCuの表面酸化金属、(c)がCuOの構造モデルを示している。 Cuを含む材料に対するNOの吸着エネルギーの算出結果を示す図である。 Cuを含む材料における、最も表面に近いCu原子の価電子数の算出結果を示す図である。 Cuの金属単体における表面のCu原子と、Cuの酸化物(CuO(111))における最も表面に近いCu原子との電子状態密度を示す図であり、(a)はCuの金属単体における表面のCu原子、(b)〜(e)は図16の(c)に示す位置(1)〜(4)のCu原子の電子状態密度を示している。 表面の酸素を取除いたCuOの構造モデルを示す図である。 表面の酸素を取除いたCuOの構造モデル(金属終端モデル)に対するNO分子の吸着エネルギーの算出結果を示す。 表面の酸素を取除いたCuOの構造モデルにおける表面のCu原子の価電子数を示す図である。 表面の酸素を取除いたCuOの表面に位置するCu原子の電子状態密度を示す図であり、(a)〜(d)は図20に示す位置(1)〜(4)のCu原子の電子状態密度を示している。 電子密度分布を示す図であり、(a)はCuの金属単体を示す斜視図であり、(b)はCuの金属単体を示す上面図であり、(c)は表面の酸素を取除いたCuOを示す斜視図であり、(d)は表面の酸素を取除いたCuOを示す上面図である。
本発明の一形態について図1〜24に基づいて説明すれば以下の通りである。
本発明の一実施形態に係る窒素酸化物浄化触媒は、自動車や船舶のエンジン等の内燃機関からの排ガス中に含まれる有害物質である窒素酸化物(NO)の浄化に優れた触媒である。
本実施形態に係る窒素酸化物浄化触媒は、CuOを材料とし、その表面における酸素原子の割合を低下させるような表面酸素除去処理が施されている。言い換えると、本実施形態の窒素酸化物浄化触媒は、CuOを材料とし、その表面における酸素原子の割合(つまり、酸素原子数/(酸素原子数+銅原子数))が化学量論比(33%)よりも小さい。ここで、「化学量論比(33%)よりも小さい」とは、酸素低下処理を行っていないCuOの表面における酸素原子の割合が通常取り得る値(つまり、ばらつき等を考慮して取り得る値)よりも実質的に小さいことを意味している。また、表面における酸素原子の割合は、好ましくは16%以下であり、より好ましくは11%以下であり、さらに好ましくは0.33%以下である。
表面酸素除去処理としては、例えば、プラズマ照射処理や電場印加処理を用いることができる。プラズマ照射処理を行う場合、CuOの結晶体の表面にプラズマを照射し、表面の酸素原子を除去する。例えば、http://www.shinko-seiki.com/product/v/plazma.html に記載されているように、水素イオンを利用し、表面の酸素原子を除去することができる。
また、電場印加処理を用いる場合、CuOの結晶体に所定値の電場を印加することにより、表面の酸素原子を正極側にわずかに移動させる。この際、負極側に位置する表面の酸素原子は、CuOの結晶体内部に存在する、より正極側に位置する酸素欠陥に移動することとなる。これにより、負極側に配置されている表面において、酸素原子の割合を化学量論比よりも小さくすることができる。そして、負極側に配置されていた表面が窒素酸化物に触れるように用いればよい。このように、電圧印加によって酸素原子を移動させることができる。
上記のように、表面における酸素原子の割合を低下させるような表面酸素除去処理が施されたCuO、もしくは、表面における酸素原子の割合が化学量論比(33%)より小さいCuOを材料とする窒素酸化物浄化触媒によれば、貴金属と比べて安価となり、また、Rh、Pd、Ptと同レベルの窒素酸化物の浄化能力を有することができる。
以下、本実施形態に係る窒素酸化物浄化触媒を完成させるに至るまでに発明者らが独自に見出した知見を詳細に説明するとともに、本実施形態の効果について説明する。
<発明者らが新たに見出した知見>
(貴金属の浄化能力の検証)
窒素酸化物(NO)の浄化において、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)またはロジウム(Rh)などの貴金属を含む浄化触媒の中では、Rhが最も浄化能力が優れており、次いでIrが優れていることが知られている。また、Pd及びPtも窒素酸化物の浄化能力を有しているものの、RhやIrよりも劣ることが知られている。このような貴金属材料による窒素酸化物の浄化能力の違いに関する知見が実験的に得られているものの、その理由についてはこれまで解明されていない。
窒素酸化物の主成分は、一酸化窒素(NO)の場合が多い。NO分子が触媒に吸着される場合、分子状吸着と解離吸着との2つの状態が存在すると考えられる。図1の(a)は分子状吸着の状態を示しており、図1の(b)は解離吸着の状態を示している。
分子状吸着は、NO分子が触媒表面に垂直な方向に沿って配置し、N原子と触媒表面の金属原子とが吸着している。分子状吸着では、NO分子におけるN原子とO原子との結合状態が強く、N原子とO原子との解離は生じないと考えられている。一方、解離吸着は、NO分子が触媒表面に沿って配置し、N原子及びO原子の両方が触媒表面の金属原子に吸着される。解離吸着では、N原子及びO原子の両方が触媒に吸着されることによりN原子とO原子との結合力が弱まって解離し、その後Nとして放出されると考えられている。そのため、窒素酸化物(NO)浄化を行うためには、触媒表面においてNO分子が解離吸着し、その後Nとして解離するプロセスが必ず必要である。
そこで、本発明者らは、Rh、Pt、Pd及びIrの金属結晶に対するNO分子の吸着に伴う電子状態の変化に着目したシミュレーションを行うことにより、Rh、Pt、Pd、Irの浄化能力の差異を検証することとした。
具体的には、密度汎関数理論に基づいた第1原理計算を用いて、金属結晶へのNO分子の分子状吸着及び解離吸着について、エネルギー量や電子状態密度、価電子数の変化を検出した。
なお、第1原理計算とは、「相互作用する多電子系の基底状態のエネルギーは電子の密度分布により決められる」ことを示した密度汎関数理論を基にした計算手法である(P. Hohenberg and W. Kohn, Phys. Rev. 136, B864 (1964),W. Kohn and L. J. Sham, Phys. Rev. 140, A1133 (1965)、または、藤原毅夫著「固体電子構造」朝倉書店発行第3章を参照)。第1原理計算によれば、物質の電子構造を経験的なパラメータなしに定量的に議論できるようになり、実際、多くの実証により、実験に匹敵する有効性が示されている。本シミュレーションでは、第1原理計算の中でも現在もっとも精度の高い、一般密度勾配近似法を用いて計算した。
Rh、Pt、Pd、Irの金属構造は、いずれも立方最密構造である。そこで、このシミュレーションでは、触媒となる金属構造を、(111)面を表面とする4層構造とし、各層を3原子×3原子として行った。図2は、シミュレーションで用いたRh金属の構造モデルの上面図を示す図である。
そして、NO分子が金属表面から無限遠まで離れた位置に存在するときの全体(つまり、金属及びNO分子)のエネルギー量(E)と、NO分子が金属表面に吸着したときの状態における全体のエネルギー量(E)との差(E−E)を吸着エネルギーとして求めた。この吸着エネルギーは、NO分子が吸着し、触媒となる金属原子の電子とNOの電子とが結合することにより発生するエネルギー量を表している。
また、上述したようにNO分子が金属表面に吸着する際には、分子状吸着と解離吸着とがある。そのため、図1の(a)に示す分子状吸着がされたときの吸着エネルギーである分子状吸着エネルギーと、図1の(b)に示す解離吸着がされたときの吸着エネルギーである解離吸着エネルギーとの両方について求めた。
なお、NO分子が金属表面に吸着する際の吸着サイトとしては、第1層目に存在する金属原子の上、第2層目に存在する金属原子の上(hcp)、第1層目に存在する3つの金属原子で囲まれる位置であり、かつ、第2層目に金属原子が存在しない位置の上(fcc)などがある。ここでは、NO分子の吸着サイトの様々な候補についてシミュレーションを行い、最もエネルギー量が低くなる吸着サイトに吸着するものとした。
すなわち、分子状吸着の場合には、NO分子のN原子の位置を様々な吸着サイトに変化させ、それぞれについてシミュレーションを行い、全体のエネルギー量を求める。そして、最小のエネルギー量を示す吸着サイトに吸着するものとし、そのときのエネルギー量(E)から、NO分子が金属表面から無限遠に離れた位置に存在するときの全体のエネルギー量Eを減算することで分子状吸着エネルギーを求めた。
また、解離吸着の場合には、NO分子のN原子及びO原子の位置を、N−O間の距離を考慮しながら様々な吸着サイトに変化させ、それぞれについてシミュレーションを行い、全体のエネルギー量を求める。そして、最小のエネルギー量を示す吸着サイトに吸着するものとし、そのときのエネルギー量(E)から、NO分子が金属表面から無限遠に離れた位置に存在するときの全体のエネルギー量Eを減算することで解離吸着エネルギーを求めた。図2ではNO分子のN原子及びO原子が示されているが、これはNO分子が解離吸着したときの状態を示している。
図3は、Rh、Pt、Pd、Ir金属によるNO分子の吸着エネルギーの算出結果を示す図である。なお、図において、吸着エネルギーのマイナス値が大きいほど、その吸着状態が安定であることを示している。
図3に示されるように、Rhでは、分子状吸着エネルギーが−1.97eVに対し、解離吸着エネルギーが−2.19eVであった。また、Irでは、分子状吸着エネルギーが1.51eVに対し、解離吸着エネルギーが−1.92eVであった。このように、Rh、Irでは、解離吸着エネルギーの方が分子状吸着エネルギーよりもマイナスの値が大きい。これは、解離吸着が生じやすいことを意味しており、Rh及びIrの浄化能力が優れているという実験的な知見と一致している。また、Rhの方がIrよりも解離吸着エネルギーのマイナスの値が大きく、Rhが最も優れた浄化能力を有する点とも一致している。
これに対し、Pd及びPtにおいては、分子状吸着エネルギーはそれぞれ−1.71eV、−1.26eVであり、解離吸着エネルギーは、−0.74eV、−0.41eVであった。Pd及びPtでは、分子状吸着エネルギーの方が解離吸着エネルギーよりも大きく、NOが吸着する場合に解離吸着よりも分子状吸着する方が安定であることを意味している。これは、Pd及びPtがRhよりも浄化能力が劣るという実験的な知見と一致している。
以上のことから、触媒材料に対するNO分子の解離吸着エネルギー及び分子状吸着エネルギーを算出することにより、当該触媒材料による窒素酸化物の浄化能力の効果を確認できることがわかった。
また、図4は、Rh金属の表面へのNO分子の吸着前後における、Rh金属における表面原子の電子状態密度の変化を示す図である。図4において、(a)はNO分子の吸着前(つまり、NO分子が無限大に離れた位置に存在するとき)の電子状態密度を示し、(b)はNO分子が解離吸着したときの電子状態密度を示す。
図4の(a)(b)に示されるように、NO分子が吸着することにより、Rh金属の表面原子におけるフェルミエネルギー近傍の電子軌道が大きく変化していることがわかる。特に、NO分子の吸着前にはフェルミエネルギー近傍に位置しているdzz及びdyz軌道のピーク位置が低エネルギー側にシフトし、低くなっている。これは、フェルミエネルギー近傍に位置している電子がNO分子の窒素原子に電子を供与していることを意味し、当該電子の供与が、NO分子の解離及びN分子の生成に寄与しているものと考えられる。特に、dzz軌道のピーク位置は、吸着前ではフェルミエネルギーより高い位置にあったところが、吸着後にはフェルミエネルギー付近に位置していることがわかる。これは、dzz軌道の電子がNO分子とより強く結合しながら電子をNO分子へ供与させ、NO分子の解離に寄与しているものと考えられる。
また、図5の(a)はNO分子の吸着前におけるPt原子の電子状態密度を示し、図5の(b)はNO分子の吸着前におけるPd原子の電子状態密度を示し、図5の(c)はNO分子の吸着前におけるIr原子の電子状態密度を示している。また図5では、参考として、遷移金属であるCu金属の(111)面を表面とする4層構造における、NO分子が吸着されていない状態のCu原子の電子状態密度を(d)に示している。
図5に示されるように、PtやPd、Irにおいても、フェルミエネルギー近傍に、NO分子に電子を供与しやすい軌道が存在している。特に、Irでは、Rhと同様に、dzz軌道のピーク位置がフェルミエネルギーより高い位置に存在する。そのため、Irでも、dzz軌道の電子がNO分子と結合することでNO分子の解離に大きく寄与しているものと考えられ、Rhと同様に浄化能力が高いものと考えられる。
一方、Cu原子では、各電子軌道のエネルギーがフェルミエネルギーよりも低い位置にあり、安定化しているため、電子供与力が弱く、浄化能力が貴金属に比べて低い。
このように、Rh、Pd、Pt、Irの貴金属では、金属原子がフェルミエネルギー近傍に位置する電子軌道を有することにより、NO分子を解離させるために必要な電子を供与する能力が高いため、浄化能力が高いといえる。特に、吸着前においフェルミエネルギーよりも高い位置にピークを有する電子軌道の存在が好ましいことがわかった。
(遷移金属Co、Ni、Cu、Feの浄化能力の検証)
上記のRh、Pd、Pt,Irにおけるシミュレーションの検証結果を基に、安価な材料である遷移金属コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、銅(Cu)、鉄(Fe)を用いた窒素酸化物浄化触媒の浄化能力のシミュレーションによる検証を行った。シミュレーションの方法は、Rh、Pd、Pt,Irと同様に、密度汎関数理論に基づいた第1原理計算である。
シミュレーションを行った材料は、Co、Ni、Fe、Cuの、(1)金属単体、(2)金属の表面のみが酸化され表面の第1層が酸素である表面酸化金属、及び(3)酸化物である。
なお、Coの金属単体及び表面酸化金属は六方最密構造であり、Ni及びCuの金属単体及び表面酸化金属は面心立方構造であり、Feの金属単体及び表面酸化金属は体心立方構造である。
また、酸化物は、それぞれCoO、NiO、Fe、CuOとした。CoO及びNiOは岩塩型構造、CuOは赤銅鉱型構造、Feは逆スピネル型構造である。
図6は、シミュレーションを行う際の各構造モデルを示す図である。図6において(a)は金属単体の構造モデルを示す図である。(a)に示されるように、Co、Ni、Cu、Feのいずれも4層構造とし、各層の原子数を3原子×3原子とした。なお、Coでは(0001)面が表面となり、Ni及びCuでは(111)面が表面となり、Feでは(100)面が表面となるように設定している。
図6の(b)は表面酸化金属の構造モデルを示す図である。(b)に示されるように、(a)に示した構造モデルの表面金属層の上に酸素の層を設けた構造としている。なお、酸素層の原子数は、金属層と同じように3原子×3原子としている。
図6の(c)は酸化物の構造モデルを示す図である。(c)に示されるように、CoO,NiO,CuOでは(111)面が表面となり、Feでは(100)面が表面となるように設定している。また、CoO及びNiOでは6層構造、CuO及びFeでは9層構造としている。CoO、NiO及びCuOでは各層の原子数を2原子×2原子とし、Feでは1原子×1原子としている。
(Coについて)
図7は、Coの金属単体、表面酸化金属及び酸化物の構造モデルを示す図である。(a)が金属単体、(b)が表面酸化金属、(c)が酸化物の構造モデルを示している。また、(a)(b)(c)のそれぞれにおいて、上図が構造モデルの上面図、下図が構造モデルの斜視図を示す。
図6及び図7に示す構造モデルについて、密度汎関数理論に基づいた第1原理計算を用いて、NO分子の吸着エネルギーを算出した。算出方法は、Rh、Pd、Pt、Irと同様である。
図8は、Coの金属単体(図中Co(0001)と記す)、表面酸化金属(図中O/Co(0001)と記す)、酸化物(図中CoO(111)と記す)に対するNO分子の分子状吸着エネルギー及び解離吸着エネルギーの算出結果を示している。なお、「NO分子吸着」は分子状吸着エネルギー、「NO解離吸着」は解離吸着エネルギーを示している。また、図中で「不安定」は、シミュレーションにおいて解離吸着の状態での安定構造が見つからない、もしくは、プラスの値をとり吸着状態が不安定であることを示している。
なお、図8(以下の同様の図でも同じ)では、参考のため、O原子の吸着エネルギー(図中では「O原子吸着」と記す)、及び、N原子の吸着エネルギー(図中では「N原子吸着」と記す)も示している。O原子の吸着エネルギーは、O原子が触媒材料の表面から無限大に離れた位置に存在するときの全体のエネルギー量(E)と、O原子が触媒材料の表面に吸着したときの状態における全体のエネルギー量(E)との差を示している。同様に、N原子の吸着エネルギーは、N原子が触媒材料の表面から無限大に離れた位置に存在するときの全体のエネルギー量(E)と、N原子が触媒材料の表面に吸着したときの状態における全体のエネルギー量(E)との差を示している。
図8に示されるように、Coの表面酸化金属(O/Co(0001))及び酸化物(CoO(111))では、分子状吸着エネルギーはマイナスの値を示したものの、解離吸着の状態が不安定であることが確認された。
図9は、最も表面に近いCo原子の価電子数を示す図である。ここでは、4s及び3d軌道の電子数の合計である。図9に示されるように、金属単体から表面酸化金属、酸化物になるに従い、最も表面に近いCo原子の価電子数が大きく下がることが確認された。これは、表面酸化金属及び酸化物ではCo原子によるNO分子への電子の供与能力が低下していることを意味している。このように、表面酸化金属及び酸化物では、NO分子への電子の供与能力が低下するために、解離吸着の状態が不安定となるものと考えられる。
以上から、Coの表面酸化金属(O/Co(0001))及びCoの酸化物(CoO(111))は、窒素酸化物の浄化能力がないと判断できる。
一方、Coの金属単体では、分子状吸着エネルギー及び解離吸着エネルギーの両方がマイナスの比較的大きな値をとり、かつ、解離吸着エネルギーの方が分子状吸着エネルギーよりも大きなマイナスの値をとることが確認された。この結果からすれば、Coの金属単体は、窒素酸化物の浄化能力が非常に優れていることが予想される。
しかしながら、窒素酸化物浄化触媒として使用する場合、当該触媒は、通常大気と接する場所に設置される。大気中には酸素分子が存在しており、金属単体の酸化を考慮する必要がある。そこで、図7の(a)に示すCoの金属単体と酸素分子とが無限遠に離れた位置に存在するときのエネルギー量と、図7の(b)に示すCoの表面酸化金属のエネルギー量との差を求め、大気中において金属単体が酸化せずに安定して存在するかを確認した。下記の式は、金属単体の表面に存在する1個のCo原子が1個の酸素原子と結合するとき(つまり被覆率1の表面酸化)のエネルギー変化量を示している。
上記の算出式の結果がマイナスの値を示していることから、Coは、大気中において金属単体で存在することができず、表面が酸化され、図7の(b)に示す表面酸化金属の状態に変化することが確認された。そのため、Coの金属単体も窒素酸化物浄化触媒として使用できない。
(Niについて)
図10は、Niの金属単体、表面酸化金属及び酸化物の構造モデルを示す図である。(a)が金属単体、(b)が表面酸化金属、(c)が酸化物の構造モデルを示している。
図6及び図10に示す構造モデルについて、Coと同様にNO分子の吸着エネルギーを算出した結果を図11に示す。なお、図中では、Niの金属単体をNi(111)、Niの表面酸化金属をO/Ni(111)、Niの酸化物をNiO(111)と記している。
図11に示されるように、Niの表面酸化金属(O/Ni(111))では、NO分子が吸着状態をとらないことが確認された。また、Niの酸化物(NiO(111))では、分子状吸着エネルギーはマイナスの値を示したものの、解離吸着の状態が不安定であることが確認された。
図12は、最も表面に近いNi原子の価電子数を示す図である。図12に示されるように、Coと同様に、金属単体から表面酸化金属、酸化物になるに従い、最も表面に近いNi原子の価電子数が大きく下がり、表面酸化金属及び酸化物ではNi原子によるNO分子への電子の供与能力が低下していることが確認された。このために解離吸着の状態が不安定になるものと考えられる。
以上から、Niの表面酸化金属(O/Ni(111))及びNiの酸化物(NiO(111))は、窒素酸化物の浄化能力がないと判断できる。
一方、Niの金属単体では、分子状吸着エネルギー及び解離吸着エネルギーの両方がマイナスの比較的大きな値をとり、かつ、解離吸着エネルギーの方が分子状吸着エネルギーよりも大きなマイナスの値をとることが確認された。
次に、図10の(a)に示すNiの金属単体と酸素分子とが無限大に離れた位置に存在するときのエネルギー量と、図10の(b)に示すNiの表面酸化金属のエネルギー量との差を求め、大気中において金属単体が酸化せずに安定して存在するかを確認した。下記の式は、金属単体の表面に存在する1個のNi原子が1個の酸素原子と結合するときのエネルギー変化量を示している。
上記の算出式の結果がマイナスの値を示していることから、NiもCoと同様に大気中において金属単体で存在することができず、表面が酸化され、図10の(b)に示す表面酸化金属の状態に変化することが確認された。そのため、Niの金属単体も窒素酸化物浄化触媒として使用できない。
(Feについて)
図13は、Feの金属単体、表面酸化金属及び酸化物の構造モデルを示す図である。(a)が金属単体、(b)が表面酸化金属、(c)が酸化物の構造モデルを示している。
図6及び図13に示す構造モデルについて、Co及びNiと同様にNO分子の吸着エネルギーを算出した結果を図14に示す。なお、図中では、Feの金属単体をNi(100)、Feの表面酸化金属をO/Fe(100)、Feの酸化物をFe(100)と記している。
図14に示されるように、Feの表面酸化金属(O/Fe(100))及び酸化物(Fe(100))では、分子状吸着エネルギーがマイナスの値を示したものの、解離吸着の状態が不安定であることが確認された。
図15は、最も表面に近いFe原子の価電子数を示す図である。図15に示されるように、Co及びNiと同様に、金属単体から表面酸化金属、酸化物になるに従い、最も表面に近いFe原子の価電子数が大きく下がり、表面酸化金属及び酸化物ではFe原子によるNO分子への電子の供与能力が低下していることが確認された。このために解離吸着の状態が不安定になるものと考えられる。
以上から、Feの表面酸化金属(O/Fe(100))及びFeの酸化物(Fe(100))は、窒素酸化物の浄化能力がないと判断できる。
一方、Feの金属単体では、分子状吸着エネルギー及び解離吸着エネルギーの両方がマイナスの比較的大きな値をとり、かつ、解離吸着エネルギーの方が分子状吸着エネルギーよりも大きなマイナスの値をとることが確認された。
次に、図13の(a)に示すFeの金属単体と酸素分子とが無限大に離れた位置に存在するときのエネルギー量と、図13の(b)に示すFeの表面酸化金属のエネルギー量との差を求め、大気中において金属単体が酸化せずに安定して存在するかを確認した。下記の式は、金属単体の表面に存在する1個のFe原子が1個の酸素原子と結合するときのエネルギー変化量を示している。
上記の算出式の結果がマイナスの値を示していることから、FeもNi及びCoと同様に大気中において金属単体で存在することができず、表面が酸化され、図13の(b)に示す表面酸化金属の状態に変化することが確認された。そのため、Feの金属単体も窒素酸化物浄化触媒として使用できない。
(Cuについて)
図16は、Cuの金属単体、表面酸化金属及び酸化物の構造モデルを示す図である。(a)が金属単体、(b)が表面酸化金属、(c)が酸化物の構造モデルを示している。
図6及び図16に示す構造モデルについて、Co、Ni及びFeと同様にNO分子の吸着エネルギーを算出した結果を図17に示す。なお、図中では、Cuの金属単体をCu(111)、Cuの表面酸化金属をO/Cu(111)、Cuの酸化物をCuO(111)と記している。
なお、Cuの金属単体では、表面第1層における3つのCu原子で囲まれる領域の中心であるサイトの2つの上にN原子およびO原子を配置したときの解離吸着エネルギーが最も安定であった。
図17に示されるように、Cuの表面酸化金属(O/Cu(111))では、NO分子が吸着状態をとらないことが確認された。また、Cuの酸化物(CuO(111))では、分子状吸着エネルギーはマイナスの値を示したものの、解離吸着の状態が不安定であることが確認された。このため、Cuの表面酸化金属(O/Cu(111))及びCuの酸化物(CuO(111))は、窒素酸化物の浄化能力がないと判断できる。
図18は、最も表面に近いCu原子の価電子数を示す図である。図18に示されるように、金属単体から表面酸化金属、酸化物になるに従い、最も表面に近いCu原子の価電子数が下がることが確認された。この価電子数の低下が窒素酸化物の浄化能力の低下に寄与しているものと考えられるが、Cuにおける価電子数の低下幅は、Co、Ni、Feに比べて小さいことがわかった。
一方、Cuの金属単体では、分子状吸着エネルギーの方が解離吸着エネルギーよりも値が大きいものの、両方ともマイナスの値をとることが確認された。また、下記の式のように、金属単体の表面に存在する1個のCu原子が1個の酸素原子と結合するときのエネルギー変化量もプラスの値を示す。
このように、Cuの金属単体が大気中で存在することが確認され、ある程度の窒素酸化物の浄化能力があることが確認された。しかしながら、解離吸着エネルギーは分子状吸着エネルギーよりも小さく、かつ、解離吸着エネルギーの絶対値もRhに比べて小さい。そのため、Rhの代替材料としては浄化能力が低い。
(金属終端のCuO)
図18に示されるように、Cuでは、金属単体に対する酸化物のCu原子価電子数の低下幅は、他の遷移金属であるCo、Ni及びFeと比べて小さく、これらの遷移金属よりも電子供与の能力が高いものと推定される。
また、図19は、Cuの金属単体における表面のCu原子と、Cuの酸化物(CuO(111))における最も表面に近いCu原子との電子状態密度を示す図である。なお、図19において、(a)はCuの金属単体における表面のCu原子の電子状態密度を示している。また、(b)〜(e)は、それぞれ図16の(c)に示す位置(1)〜(4)のCu原子の電子状態密度を示している。図19に示されるように、Cu金属単体をCuOとすることで、電子軌道のエネルギー準位が右側(高エネルギー側)にシフトし、フェルミエネルギー近傍のエネルギー準位を有する電子軌道が増えていることが理解できる。
これらのことから、CuOの表面の電子状態をわずかに変化させることで、窒素酸化物の浄化能力を向上させる可能性があると本発明者らは考えた。そこで、図16の(c)に示す構造モデルから表面の酸素を取除いた構造モデル、つまり、金属原子が終端となるCuOの構造モデル(以下、金属終端モデルともいう)を設定し、シミュレーションを行った。
図20は、シミュレーションを行う際に用いた、表面の酸素を取除いたCuOの構造モデルを示す図である。図20において、上図は構造モデルの上面図であり、下図は構造モデルの斜視図である。ここでは、(111)面が表面となるように設定するとともに、8層構造で各層の原子数を2原子×2原子としている。
図24は、Cuの金属単体の構造モデルと、表面の酸素を取除いたCuOの構造モデルとの電子密度分布を示す図である。(a)はCuの金属単体を示す斜視図であり、(b)はCuの金属単体を示す上面図であり、(c)は表面の酸素を取除いたCuOを示す斜視図であり、(d)は表面の酸素を取除いたCuOを示す上面図である。なお、図24は、Cu原子のd軌道のフェルミ準位近傍における電子密度分布(Isosurface:0.0005e/Å)を示している。
図24の(a)(b)に示されるように、Cu金属単体ではCu原子の周囲に電子が局在していることがわかる。上述したように、Cu金属単体において最も安定な解離吸着エネルギーを示すときのN原子およびO原子の吸着サイトは、いずれも3つのCu原子で囲まれるサイト(hollowサイト)である。しかしながら、図24の(a)(b)で示されるように、Cu金属単体において電子密度はCu原子の周囲に局在しており、解離吸着したNO分子のN原子およびO原子とCu原子との電子のやり取りが比較的起こりにくい状態である。
一方、図24の(c)(d)に示されるように、表面の酸素を取除いたCuOの表面では3つのCu原子で囲まれるサイト(hollowサイト)にも電子密度が広がっていることがわかる。そのため、NO分子が解離吸着し、2つのhollowサイト上にN原子およびO原子がそれぞれ吸着した場合、Cu金属単体と比較して、N原子およびO原子とCu原子との電子のやり取りが起こりやすく、解離吸着がより安定的であることが推定される。
また、フェルミ準位の近傍において電子密度がピークとなるエネルギー準位Eとフェルミ準位Eとの差は、Cu金属単体では−0.3531eVであるのに対し、表面の酸素を取除いたCuOでは−0.2829eVであった。フェルミ準位に近いエネルギーを有する電子は、他原子とも結合しやすい。この点からも、表面の酸素を取除いたCuOの方がよりNO分子を吸着しやすいことが推定される。
そして、表面の酸素を取除いたCuOの構造モデルについてNO分子の吸着シミュレーションを行い、分子状吸着エネルギー及び解離吸着エネルギーを求めた。図24で示される結果から推定されたように、吸着の際に最も安定的なエネルギーをとるN原子およびO原子の吸着サイトは、3つのCu原子で囲まれたサイト(hollowサイト)であった。
図21は、表面の酸素を取除いたCuOの構造モデル(金属終端モデル)に対するNO分子の分子状吸着エネルギー及び解離吸着エネルギーの算出結果を示す。図21に示されるように、分子状吸着エネルギー及び解離吸着エネルギーの両方とがマイナスの値をとり、かつ、解離吸着エネルギーの方が分子状吸着エネルギーよりも大きなマイナスの値(−1.676eV)をとることが確認された。この値は、Rhには及ばないものの、PdやPtよりも高い値を示している。この算出結果から、表面の酸素を除く処理が施されたCuOの窒素酸化物の浄化能力は、高価な希少金属であるRhよりもわずかに劣るものの、PdやPtよりも優れていることがわかった。このため、表面の酸素を除く処理が施されたCuO、つまり、表面に存在する酸素の割合が化学量論比よりも小さいCuOは、窒素酸化物浄化触媒として従来用いられていたRh、Pt、Pd等の貴金属の代替材料として使用できる。
表面の酸素を除く処理が施されたCuOの窒素酸化物の浄化能力が高い理由を以下に説明する。
図22は、表面に位置するCu原子の価電子数を示す図である。ここでは、4s及び3d軌道の電子数の合計である。図22では、Cu金属単体における表面のCu原子の価電子数と、金属終端モデルにおいて図20に示す位置(1)〜(4)に存在するCu原子の価電子数とを示している。表面の酸素を取除いていないCuOにおけるCu原子の価電子数が10.477であるところ(図18参照)、表面の酸素を取除いたCuOにおけるCu原子の価電子数が10.744であった。このように、金属単体からの価電子数の低下幅がより小さくなり、電子供与の能力が高い状態が維持されている。
また、図23は、表面の酸素を取除いたCuOの表面に位置するCu原子との電子状態密度を示す図である。なお、図23において、(a)〜(d)は、それぞれ図20に示す位置(1)〜(4)のCu原子の電子状態密度を示している。図23に示されるように、表面の酸素を取除いたCuOの表面に位置するCu原子では、Cu金属単体と比べて、電子軌道のエネルギー準位が右側(高エネルギー側)にシフトし、フェルミエネルギー近傍のエネルギー準位を有する電子軌道が増えていることが理解できる。このことは、他の原子との間で電子のやり取りを行う能力が高いことを示している。
つまり、CuOの表面の酸素を取除くことにより、窒素酸化物と触れる表面のCu原子の価電子数をある程度高い状態とし、かつ、当該Cu原子においてフェルミエネルギー近傍のエネルギー準位を有する電子軌道が増え、窒素酸化物との間に電子のやり取りを行う能力が向上する。その結果、表面の酸素を取除いたCuOでは、窒素酸化物を解離吸着させることができ(つまり、窒素酸化物の還元活性を高めることができ)、浄化能力が高まったものと考えられる。
本発明は、上述した構成に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明に係る窒素酸化物浄化触媒は、自動車や船舶のエンジン等の内燃機関、各種燃焼器、工場から排出される排ガス中の有害物質を浄化する触媒及び装置に利用可能である。

Claims (4)

  1. CuOを材料とし、その(111)面の表面における酸素原子の割合が化学量論比よりも小さくなるよう表面酸素除去処理を行うことを特徴とする窒素酸化物浄化触媒の製造方法
  2. 上記表面酸素除去処理は、プラズマを表面に照射して酸素を除去する処理であることを特徴とする請求項1に記載の窒素酸化物浄化触媒の製造方法
  3. 上記表面酸素除去処理は、電場を印加することにより、表面の酸素原子を内部に移動させる処理であることを特徴とする請求項1に記載の窒素酸化物浄化触媒の製造方法
  4. CuOを材料とし、その(111)面の表面における酸素原子の割合が化学量論比よりも小さいことを特徴とする窒素酸化物浄化触媒。
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