JP5973687B1 - 熱可塑性樹脂の被覆方法及び被覆装置 - Google Patents

熱可塑性樹脂の被覆方法及び被覆装置 Download PDF

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Abstract

【課題】上下方向に延設されると共に表面に凹凸を有する長尺の施工対象物に、熱可塑性樹脂を品質良く被覆する。【解決手段】本熱可塑性樹脂の被覆方法は、径方向に分割可能な有底筒状を有する型枠の底部に、長尺の施工対象物を挿通可能な挿通穴を設け、底部を下方にして挿通穴に施工対象物を挿通させる態様で、型枠を施工対象物の被覆範囲の上端近傍に設置する(S110)。そして、型枠内へ流動状態の熱可塑性樹脂を注ぎ込み(S140)、型枠内の熱可塑性樹脂の温度を保持した状態(S120)で、型枠が施工対象物の被覆範囲の下端に到達するまで、型枠を施工対象物に沿って降下させる(S150、S160)。これにより、施工対象物の全施工範囲が、熱可塑性樹脂に一時的に浸漬されるため、表面の凹部まで熱可塑性樹脂を充填することができ、滑らかで美しい被覆を形成することができる。【選択図】図5

Description

本発明は、上下方向に延設される長尺の施工対象物に、熱可塑性樹脂を被覆する方法及び装置に関するものである。
施工対象物に熱可塑性樹脂を被覆する方法として、専用機器を用いた方法が挙げられる。この方法では、専用機器の融解炉によって流動状態になるまで加熱した高温の熱可塑性樹脂を、ポンプを利用した圧力によって押し出し、ホースを介して専用のガンにより吹き付けることで、施工対象物に熱可塑性樹脂を被覆する。又、特許文献1には、PC鋼材を押出成型機へ順次送り出し、押出成型機においてPC鋼材の外周に加熱溶融させた熱可塑性合成樹脂材を供給することで、PC鋼材の外周に熱可塑性合成樹脂材を被着する方法が開示されている。
特開平8−42062号公報
しかしながら、上述した専用機器を用いた被覆方法では、例えば、吊り橋のハンガーロープ等、施工対象物が上下方向に延設された長尺物であり、更に表面に凹凸を有するものである場合に、以下のような問題が発生する。すなわち、施工対象物の上方側から吹き付けを開始すると、上方側で吹き付けた熱可塑性樹脂が下方へ垂れ、垂れた熱可塑性樹脂が施工対象物の下方の表面の凹部に入り込まずに凹部を覆うようにして硬化してしまい、施工対象物と熱可塑性樹脂との間に隙間が生じてしまう。これとは逆に、施工対象物の下方側から吹き付けを開始すると、施工対象物の表面の凹部に熱可塑性樹脂が充填され、施工対象物と熱可塑性樹脂との間に隙間が発生し難くなるものの、硬化前の熱可塑性樹脂は常に下方へ垂れていくため、施工対象物の下方側の樹脂厚が厚くなると共に、垂れた形状で硬化した熱可塑性樹脂によって施工対象物の美観が損なわれてしまう。又、吊り橋のハンガーロープ等の上下方向に延設された施工対象物を、押出成型機に通すことは実質的に不可能であるため、特許文献1の方法を採用することはできない。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上下方向に延設されると共に表面に凹凸を有する長尺の施工対象物に、熱可塑性樹脂を品質良く被覆することにある。
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
(1)上下方向に延設される長尺の施工対象物に熱可塑性樹脂を被覆する方法であって、径方向に分割可能な有底筒状を有する型枠の底部に、前記施工対象物を挿通可能な挿通穴を設け、前記底部を下方にして前記挿通穴に前記施工対象物を挿通させる態様で、前記型枠を前記施工対象物の被覆範囲の上端近傍に設置し、前記型枠内へ流動状態の前記熱可塑性樹脂を注ぎ込み、前記型枠内の前記熱可塑性樹脂の温度を保持した状態で、前記型枠が前記被覆範囲の下端に到達するまで、前記型枠を前記施工対象物に沿って降下させ、この際、前記型枠に取り付けるヒーターと、該ヒーターの温度を制御する温度制御装置とを用いて、前記型枠内の前記熱可塑性樹脂の温度を保持し、前記施工対象物が複数の金属製のワイヤを撚り合わせたワイヤロープであり、該ワイヤロープには、油分を含む防錆剤が注入されており、前記ワイヤロープに被覆した前記熱可塑性樹脂の熱の影響によって、前記ワイヤロープの内部から前記防錆剤の油分が溶け出さないように、前記温度制御装置により前記ヒーターの温度を制御する熱可塑性樹脂の被覆方法(請求項1)。
本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆方法は、径方向に分割可能な有底筒状を有する型枠の底部に、長尺の施工対象物を挿通可能な挿通穴を設け、底部を下方にして挿通穴に施工対象物を挿通させる態様で、型枠を施工対象物の被覆範囲の上端近傍に設置する。すなわち、有底筒状の型枠を分割状態にし、底部に設けた挿通穴を長尺の施工対象物が通るように、型枠の底部側を下方にして、施工対象物の被覆範囲の上端近傍において型枠を接合する。すると、施工対象物は、被覆範囲の上端近傍の部位が型枠の内部に位置し、被覆範囲の上端よりも下方の部位が挿通穴を介して下方へ延在する状態となる。そして、接合させた有底筒状の型枠内へ、加熱して流動状態にした熱可塑性樹脂を注ぎ込み、型枠内の熱可塑性樹脂の温度を保持した状態で、型枠が施工対象物の被覆範囲の下端に到達するまで、型枠を施工対象物に沿って降下させるものである。型枠内の熱可塑性樹脂の温度保持は、型枠に取り付けるヒーターと、このヒーターの温度を制御する温度制御装置とを用いて行う。
この際、型枠の内部に位置する施工対象物の部位は、温度が保持されることで流動状態が維持された熱可塑性樹脂に浸漬される状態になる。この状態で、施工対象物の施工範囲の上端から下端まで型枠を降下させるため、施工対象物の全施工範囲が、熱可塑性樹脂に一時的に浸漬されることとなる。このため、施工対象物の表面に凹凸がある場合であっても、全施工範囲にわたって、施工対象物表面の凹部まで熱可塑性樹脂が充填されると共に、滑らかで美しい仕上がり面の被覆が形成される。これにより、長尺の施工対象物に対して、熱可塑性樹脂が品質良く被覆されるものである。更に、型枠を降下させる速度を調整することによって、厚みが薄く均一な被覆が形成されるため、樹脂の使用量が目的に応じた必要十分な量に抑えられ、コストダウンや施工時間の短縮に寄与することとなる。なお、型枠の降下は、装置を介して行ってもよく、人力により行ってもよい。
更に、本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆方法は、上下方向に延設される長尺の施工対象物が、複数の金属製のワイヤを撚り合わせたワイヤロープであり例えば、施工対象物の長尺方向と直交する断面の、複数のワイヤが成す円形配置の中心近傍に相当する部分に、油分を含む防錆剤が注入されている。この防錆剤の油分は、施工対象物が熱可塑性樹脂の熱によって熱せられると、流動性が高まって施工対象物から溶け出る虞がある。しかしながら、本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆方法は、上述したように、厚みが薄く均一な被覆が形成される速度で、型枠を降下させるものであり、又、温度制御装置によって、型枠に取り付けたヒーターの温度を制御するため、熱可塑性樹脂から施工対象物へ不本意な熱が伝わる前に、熱可塑性樹脂が冷めて硬化する。このため、ワイヤロープの内部から防錆剤の油分が外へ溶け出すリスクが、大幅に低減されるものとなる。
(2)上記(1)項において、前記挿通穴の内周面を前記ワイヤロープの外周面の形状に倣った形状に設け、前記型枠を降下させる際、前記ワイヤロープの撚り方向に沿って、前記型枠の少なくとも底部を回転させながら降下させる熱可塑性樹脂の被覆方法(請求項2)。
本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆方法は、ロープ状の施工対象物、すなわち、複数の金属製のワイヤを撚り合わせたワイヤロープの、外周面の形状に倣った形状に、底部の挿通穴の内周面を設ける。そして、熱可塑性樹脂が注ぎ込まれた型枠を降下させる際に、施工対象物のロープ状の撚り方向に沿って、型枠の少なくとも底部を回転させながら降下させるものである。
すなわち、ロープ状の施工対象物は、螺旋状に変化する外周面を有しているため、少なくとも型枠の、ロープ状の外周面の形状に倣った形状の内周面を有する挿通穴が設けられた底部を、ロープ状の撚り方向(螺旋方向)に沿って回転させながら、型枠を降下させることで、挿通穴の内周面の形状と、施工対象物の、挿通穴に挿通している部位の外周面の形状とを常に一致させる。これにより、挿通穴の内周部とロープ状の施工対象物の外周部とを常に接触させ、挿通穴と施工対象物との間の隙間から、型枠内の熱可塑性樹脂が漏れることを防止するものである。なお、型枠の底部を回転させる際は、底部のみを型枠の本体部に対して回転させてもよく、型枠全体を回転させてもよい。又、挿通穴とロープ状の施工対象物との間には、型枠内の熱可塑性樹脂の粘度を考慮して、熱可塑性樹脂の漏れを防ぎ、かつ、底部(或いは型枠全体)を回転させながら型枠を降下させることができる程度の、隙間が許容さることは理解されるであろう。
(3)上記(1)項において、前記挿通穴の内周部に、前記施工対象物と前記底部との間を摺動可能にシールする摺動シール部材を装着した熱可塑性樹脂の被覆方法(請求項3)。
本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆方法は、挿通穴の内周部に、例えばスポンジ、ブラシ等の、底部と施工対象物との間を摺動可能にシールする摺動シール部材を装着する。そして、熱可塑性樹脂が注ぎ込まれた型枠を降下させる際に、挿通穴の内周部に装着した摺動シール部材を、施工対象物に接触させた状態で降下させるものである。
すなわち、摺動シール部材が接触するロープ状の施工対象物の外周面は、上記(2)項に記載したように螺旋状に変化するが、摺動シール部材は、その特有の性質によって、変化する施工対象物の外周面に合わせて、施工対象物に対して接触する部位の形状が変化する。これにより、挿通穴とロープ状の施工対象物との間の隙間から、型枠内の熱可塑性樹脂が漏れることを防止しながら、型枠を降下させるものとなる。
(4)上記(3)項において、前記型枠を、前記被覆範囲の下端まで降下させ、分割状態にして前記施工対象物から取り外した後、前記被覆範囲の上端近傍への前記型枠の設置から、前記被覆範囲の下端への前記型枠の降下までの工程を、再度実行することで、前記施工対象物に対して前記熱可塑性樹脂を二層に被覆する熱可塑性樹脂の被覆方法(請求項4)。
本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆方法は、被覆範囲の上端近傍への型枠の設置から、被覆範囲の下端への型枠の降下までの工程を実行し、型枠を分割状態にして施工対象物から取り外した後、再度、被覆範囲の上端近傍への型枠の設置から、被覆範囲の下端への型枠の降下までの工程を実行することで、施工対象物に対して熱可塑性樹脂を二層に被覆するものである。このとき、二層目の被覆を行う際の施工対象物は、一層目の被覆を行う際の施工対象物と比較して、一層目の被覆が既に形成されていることで、外周形状やその大きさが変化しているが、その変化量は、被覆の厚みが薄いことから僅かなものであるため、型枠の挿通穴の内周部に装着された摺動シール部材によって吸収される。このため、二層目の被覆を行う際に用いる型枠は、一層目の被覆の際よりも大きな挿通穴が設けられた底部を有する型枠である必要はなく、一層目の被覆を行う際に用いた型枠がそのまま利用される。従って、施工対象物に対して熱可塑性樹脂を、効率よく二層に被覆するものとなる。
ここで、施工対象物に対して一層目の被覆を形成したとき、ロープ状の施工対象物の内部に残存する僅かな空気が、熱可塑性樹脂の熱の影響によって、施工対象物の内部から、施工対象物の外周部と熱可塑性樹脂の被覆との間へ移動し、空気が入った玉が被覆に形成される場合がある。この場合には、その玉の部分を潰し、その周囲の熱可塑性樹脂に熱を加えて、施工対象物の表面が露出しないように熱可塑性樹脂の形を整えた後に、二層目の被覆を行えばよい。二層目の被覆の際は、施工対象物に一層目の被覆が形成されているため、施工対象物まで熱可塑性樹脂の熱が伝わり難く、空気が入った玉が被覆に形成されることはない。このように、一層目の被覆に空気が入った玉が発生した場合であっても、二層目の被覆を形成することで、滑らかで美しい仕上がり面の被覆が形成されることとなる。
(5)上記(1)から(4)項において、前記施工対象物の、前記被覆範囲の下端側が構造物に埋め込まれていると共に、該構造物の、前記施工対象物が埋め込まれた部位の周囲に座繰り部が設けられており、前記型枠を降下させた後、前記型枠の少なくとも底部を分割状態にして、前記型枠内に残っていた前記熱可塑性樹脂を、前記構造物の座繰り部内へ流し込む熱可塑性樹脂の被覆方法(請求項5)。
本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆方法は、型枠を降下させた後に、型枠内に残っていた熱可塑性樹脂を、施工対象物が埋め込まれた構造物の、施工対象物が埋め込まれた部位の周囲に設けられた座繰り部内へ流し込むものである。これにより、施工対象物の、被覆範囲の下端側の部位の周囲や、施工対象物と構造物との間の隙間においても、熱可塑性樹脂の被覆が形成されることとなる。
(6)上記(1)から(5)項において、前記施工対象物が金属製であり、前記熱可塑性樹脂が防錆剤である熱可塑性樹脂の被覆方法(請求項6)。
本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆方法は、金属製の長尺の施工対象物に対して、熱可塑性の防錆樹脂を被覆するものである。ここで、熱可塑性の防錆樹脂は、一般的に、専用機器を用いて加熱や吹き付け等を行っていたが、特にその加熱は時間を要するものであった。しかしながら、本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆方法は、熱可塑性防錆樹脂の吹き付けや加熱を行うための専用機器を用いる必要はなく、吹き付け機能が無い加熱に特化した汎用の加熱機器(電気鍋等)を用いて、必要十分な量だけの熱可塑性防錆樹脂を加熱すればよいものである。従って、熱可塑性防錆樹脂の加熱時間が大幅に短縮され、延いては、全体の施工時間が大幅に短縮されるものである。
(7)上下方向に延設される長尺の施工対象物に熱可塑性樹脂を被覆する装置であって、径方向に分割可能な有底筒状を成し、底部に前記施工対象物を挿通可能な挿通穴が設けられ、該挿通穴に前記施工対象物が挿通された状態で前記熱可塑性樹脂を貯留すると共に、前記施工対象物に沿って移動可能な型枠と、前記型枠内に貯留された前記熱可塑性樹脂の温度を保持するための温度保持手段と、を含み、該温度保持手段が、前記型枠に取り付けられるヒーターと、該ヒーターの温度を制御する温度制御装置とで構成され、前記施工対象物が複数の金属製のワイヤを撚り合わせたワイヤロープであり、該ワイヤロープには、油分を含む防錆剤が注入されており、前記温度制御装置は、前記ワイヤロープに被覆された前記熱可塑性樹脂の熱の影響によって、前記ワイヤロープの内部から前記防錆剤の油分が溶け出さないように、前記ヒーターの温度を制御するものである熱可塑性樹脂の被覆装置(請求項7)。
本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆装置は、型枠及び温度保持手段を含むものであり、型枠は、径方向に分割可能な有底筒状を有し、底部に長尺の施工対象物を挿通可能な挿通穴が設けられている。又、温度保持手段は、型枠内に貯留された熱可塑性樹脂の温度を保持するためのものである。このような構成により、型枠は、分割状態にされ、底部に設けられた挿通穴に長尺の施工対象物が通された状態で、底部側を下方にして、例えば施工対象物の被覆範囲の上端近傍において接合される。その後、内部に流動状態の熱可塑性樹脂が注ぎ込まれ、温度保持手段により熱可塑性樹脂の温度が保持された状態で、被覆範囲の下端に到達するまで、施工対象物に沿って降下される。温度保持手段は、型枠に取り付けられるヒーターと、このヒーターの温度を制御する温度制御装置とで構成されている。このとき、型枠の内部に位置する施工対象物の部位は、温度保持手段により温度が保持されることで流動状態が維持された、型枠内に貯留されている熱可塑性樹脂に浸漬される状態になる。この状態で、施工対象物の施工範囲の上端から下端まで型枠が降下されるため、施工対象物の全施工範囲が、熱可塑性樹脂に一時的に浸漬されることとなる。
このため、長尺の施工対象物に対して、その表面に凹凸がある場合であっても、全施工範囲において、表面の凹部まで熱可塑性樹脂が充填されると共に、滑らかで美しい仕上がり面の被覆が形成され、熱可塑性樹脂によって品質良く被覆されるものである。更に、型枠の降下速度が調整されることによって、厚みが薄く均一な被覆が形成されるため、樹脂の使用量が目的に応じた必要十分な量に抑えられ、コストダウンや施工時間の短縮に寄与することとなる。又、本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆装置は、熱可塑性樹脂の被覆に利用される従来の専用機器と比較して、装置構成がコンパクトであるため、従来の専用機器では困難であった狭小箇所の施工にも用いられ、更に、運搬コストが低減されるものである。ここで、施工対象物が複数の金属製のワイヤを撚り合わせたワイヤロープであり、そのワイヤロープに油分を含む防錆剤が注入されているため、防錆剤の油分が、熱可塑性樹脂から施工対象物へ伝わる熱の影響を受けて、流動性が高まり施工対象物から溶け出る虞がある。しかしながら、本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆装置は、上述したように、厚みが薄く均一な被覆が形成される速度で、型枠が降下されるものであり、又、温度制御装置によって、型枠に取り付けたヒーターの温度を制御するため、熱可塑性樹脂から施工対象物へ不本意な熱が伝わる前に、熱可塑性樹脂が冷めて硬化する。このため、ワイヤロープの内部から防錆剤の油分が外へ溶け出すリスクが、大幅に低減されるものとなる。
(8)上記(7)項において、前記挿通穴の内周面が、前記ワイヤロープの外周面の形状に倣った形状に形成されている熱可塑性樹脂の被覆装置(請求項8)。
本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆装置は、型枠の底部に設けられた挿通穴の内周面が、ロープ状の施工対象物(複数の金属製のワイヤを撚り合わせたワイヤロープ)の外周面の形状に倣った形状に形成されている。これにより、挿通穴の内周部と施工対象物の外周部とが常に接触するため、挿通穴とロープ状の施工対象物との間の隙間から、型枠内の熱可塑性樹脂が漏れることが防止されるものである。
(9)上記(8)項において、前記型枠は、筒状の本体部と前記底部とが別体に構成され、前記底部が、前記本体部に対して、前記施工対象物を回転軸とする方向に回転可能に保持されている熱可塑性樹脂の被覆装置(請求項9)。
本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆装置は、型枠が、筒状の本体部と、この本体部と別体の底部とで構成されており、型枠の底部が、型枠の本体部に対して、挿通穴に挿通されたロープ状の施工対象物を回転軸とする方向に回転可能に保持されているものである。このため、型枠は、ロープ状の施工対象物に沿って降下される際に、ロープ状の撚り方向(螺旋方向)に沿って、型枠の本体部に対して底部が回転されながら降下される。これにより、挿通穴の内周面の形状と、施工対象物の、挿通穴に挿通している部位の外周面の形状とが常に一致した状態になるため、型枠内の熱可塑性樹脂が漏れることを防止しながら、型枠が円滑に降下されるものとなる。
(10)上記(8)(9)項において、前記底部がシリコンによって形成されている熱可塑性樹脂の被覆装置。
本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆装置は、硬化前の成形性と硬化後の形状維持性とに優れたシリコンによって、型枠の底部を形成するものである。これにより、底部を作製する際は、例えば、硬化前のシリコンを、ロープ状の施工対象物自体又はこれを型取った雄型の周囲に接触させて成形することで、ロープ状の外周面の形状に倣った形状の内周面を有する挿通穴が設けられた、底部の原形が容易に作製される。そして、その原形から作製された硬化後のシリコンにより形成される底部は、その優れた形状維持性から、ロープ状の施工対象物の、断面形状の回転位相の変化に良好に追従して回転するものとなる。
(11)上記(7)項において、前記挿通穴の内周部に、前記施工対象物と前記底部との間を摺動可能にシールする摺動シール部材が装着されている熱可塑性樹脂の被覆装置(請求項10)。
本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆装置は、挿通穴の内周部に、型枠の底部と施工対象物との間を摺動可能にシールする摺動シール部材が装着されるものである。このような構成であるため、型枠は、ロープ状の施工対象物に沿って降下される際に、挿通穴の内周部に装着された摺動シール部材が、施工対象物の外周部に接触した状態で降下される。これにより、高さ方向の位置に応じて螺旋状に変化する、ロープ状の施工対象物の外周に対して、摺動シール部材が、その特有の性質により接触部位の形状を施工対象物の外周形状に合わせて変化させながら、常に接触する状態になる。このため、挿通穴とロープ状の施工対象物との間の隙間から、型枠内の熱可塑性樹脂が漏れることを防止しながら、型枠が円滑に降下されるものとなる。
(12)上記(7)から(11)項において、前記型枠を前記施工対象物に沿って降下及び上昇させるための昇降手段を備え、該昇降手段は、前記型枠を吊り下げるためのワイヤと、該ワイヤの繰り出し及び巻き取りを行う駆動部と、該駆動部を前記施工対象物の任意位置に設置するためのベース部と、前記駆動部の動作を制御する制御部と、を含む熱可塑性樹脂の被覆装置(請求項11)。
本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆装置は、型枠を長尺の施工対象物に沿って降下及び上昇させるための昇降手段を備え、この昇降手段が、型枠を吊り下げるためのワイヤと、ワイヤの繰り出し及び巻き取りを行う駆動部と、駆動部を施工対象物の任意位置に設置するためのベース部と、駆動部の動作を制御する制御部とを含むものである。すなわち、施工対象物の施工範囲の上端よりも上方に、ベース部を介して駆動部が設置され、この駆動部から吊り下げられるワイヤにより、型枠が吊り下げられる態様となる。そして、制御部によって駆動部が制御されることで、ワイヤの繰り出し及び巻き取りが行われ、これに応じて型枠が降下及び上昇する。このような構成により、狭小箇所であっても、型枠の降下及び上昇が円滑に行われるものである。
13)上記(9)から(12)項において、前記本体部が磁石を利用して接合される熱可塑性樹脂の被覆装置。
本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆装置は、接合状態で筒状を形成する型枠の本体部が、磁石を利用して接合されていることで、本体部の接合や分割が、迅速に行われるものである。なお、この場合の底部は、例えば、本体部に追従して分割及び接合されるように、保持手段により保持されていると共に、ピン等を用いた単純な機構を介して接合されていることが望ましい。
14)上記(9)から(12)項において、前記本体部がネジ機構を利用して接合される熱可塑性樹脂の被覆装置。
本項に記載の熱可塑性樹脂の被覆装置は、接合状態で筒状を形成する型枠の本体部が、ネジ機構を利用して接合されていることで、本体部を構成する部材同士が強固に接合されるものである。なお、この場合の底部も、上記(13)項に記載したように、本体部に追従して分割及び接合されるように、保持手段により保持されていると共に、ピン等を用いた単純な機構を介して接合されていてもよい。
本発明は上記のような構成であるため、上下方向に延設されると共に表面に凹凸を有する長尺の施工対象物に、熱可塑性樹脂を品質良く被覆することが可能となる。
本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆装置の一例を示す概略図である。 図1の熱可塑性樹脂の被覆装置の型枠周辺を示す拡大図である。 図1の熱可塑性樹脂の被覆装置の型枠周辺を下方から示す拡大図である。 図1の熱可塑性樹脂の被覆装置の昇降手段周辺を示す拡大図である。 本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆方法の一例を示すフロー図である。 本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆装置及び被覆方法において、型枠を降下させる方法の別例を示す概略図である。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づき説明する。なお、図面の全体にわたって、同一部分は同一符号で示している。
図1は、吊り橋等に用いられるハンガーロープ等の、金属製の複数のワイヤを撚り合わせたワイヤロープ(施工対象物)70に、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆装置10が設置された状態を概略的に示している。なお、図1において、ワイヤロープ70は、吊り橋等を構成する一部の構造物72に埋め込まれた状態であり、構造物72の、ワイヤロープ70が埋め込まれた部位の周囲には、座繰り部74が設けられている。又、以下の説明では、特に断り書きのない限り、ワイヤロープ70を施工対象物とし、熱可塑性樹脂として熱可塑性防錆樹脂を用いる場合を例にして説明する。
図示のように、熱可塑性樹脂の被覆装置10は、略円筒形状を有する型枠20と、型枠20をワイヤロープ70に沿って降下及び上昇させるための昇降手段40と、後述するように型枠20内に貯留される熱可塑性防錆樹脂の温度を保持するための温度保持手段60とを含んでいる。型枠20は、より詳しくは、図2及び図3に拡大図示しているように、接合状態で円筒形状を形成する一対の半割り部材(本体部)26a、26bと、一対の半割り部材26a、26bが形成する円筒形状の底部を成す円形プレート22と、円形プレート22を保持するための保持手段28とを含んでいる。なお、型枠20は、円筒形状に限定されるものではなく、内部に熱可塑性防錆樹脂を貯留できる筒状であれば、例えば多角筒形状であってもよい。
一対の半割り部材26a、26bは、本実施例では、ネジ機構34によって接合されており、このネジ機構34を取り外すことによって、半割り状態へと分割される。なお、一対の半割り部材26a、26bを接合させる手段は、ネジ機構34に限定されるものではなく、例えば磁石を利用して一対の半割り部材26a、26bを接合させてもよい。
円形プレート22は、半割り可能なものであり、円形プレート22を構成する2つのプレート部材は、例えば、他方のプレート部材との接触面にピン挿入穴が設けられ、2つのプレート部材のピン挿入穴に、双方のプレート部材に介在するようにして連結ピンが挿入されることで、接合状態が維持される。なお、円形プレート22を構成する2つのプレート部材同士の接合は、連結ピンを利用した方法に限定されるものではない。又、円形プレート22の中央には、ワイヤロープ70の外周面の螺旋状の凹凸形状に倣った形状の内周面を有する挿通穴24が設けられている。このため、この挿通穴24にワイヤロープ70を挿通すると、図3で確認できるように、ワイヤロープ70の外周に挿通穴24の内周部が接触する状態となる。円形プレート22は、例えばシリコンによって形成されている。
保持手段28は、円形プレート22を、一対の半割り部材26a、26bに対して下方から密着させ、かつ、挿通穴24に挿通されたワイヤロープ70を回転軸とする方向に回転自在に保持している。保持手段28は、図3の例では、一対の半割り部材26a、26bの下部に回転可能に固定された、複数のベアリング30で構成されており、各ベアリング30に設けられた溝に円形プレート22の外周部が嵌り込んでいることによって、上述の如く円形プレート22が保持されている。なお、図3の符号32は、一対の半割り部材26a、26bに対して、円形プレート22の回転位置を位置決めするためのプランジャを示している。
ここで、図1〜図3の例では、円形プレート22に設けられた挿通穴24の内周面が、ワイヤロープ70の外周面の形状に倣った形状を有すると共に、円形プレート22が、保持手段28によってワイヤロープ70を回転軸とする方向に回転自在に保持されているが、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆装置10は、これに限定されるものではない。例えば、挿通穴24を、ワイヤロープ70の直径よりも大きな直径を有する円形に設けると共に、その円形の内周部にスポンジ、ブラシ等の可撓性、柔軟性、ないし弾性を有し、円形プレート22とワイヤロープ70との間を摺動可能にシールできる摺動シール部材を装着してもよい。更に、この構成の場合は、保持手段28によって、円形プレート22を回転自在に保持する必要はなく、円形プレート22を一対の半割り部材26a、26bに対して下方から密着させるように保持すればよい。
温度保持手段60は、本実施例では、図2に示すように、ヒーター62と、ヒーター62の温度を制御する温度制御装置64とで構成される。ヒーター62は、型枠20内に貯留される熱可塑性防錆樹脂を加熱するように、一対の半割り部材26a、26bの各々に装着されている。温度制御装置64は、図2では概略的に図示しているが、ヒーター62と配線を介して接続されるものであり、例えば、図1の図示範囲外に設置され、ヒーター62との間の配線が、型枠20の昇降動作を阻害せず、かつ、ワイヤロープ70に接触しない配線ルートで引きまわされる。なお、温度保持手段60は、参考例として、例えば、型枠20の内部から外部へ伝わる熱を抑制するように、一対の半割り部材26a、26bに装着される断熱材であってもよい。
一方、昇降手段40は、図4に拡大図示しているように、2本のワイヤ42A、42B、駆動部44、ベース部46、及び、制御部50を含んでいる。2本のワイヤ42A、42Bは、型枠20を吊り下げるためのものであり、それらの一端側が、アイボルト36を介して型枠20と接続され(図2参照)、他端側が、駆動部44のボビンに接続されている。なお、ワイヤ42の数は、2本に限定されるものではなく、型枠20を安定して吊り下げることができる数であればよい。駆動部44は、モータ等によってボビンを時計回り方向及び半時計回り方向の何れかの方向に回転させることで、2本のワイヤ42A、42Bの夫々の繰り出し及び巻き取りを行うものであり、ベース部46上に固定されている。
ベース部46は、駆動部44をワイヤロープ70の高さ方向の任意位置に設置するためのものであり、本実施例では、ベース部46を構成する2つの部材によってワイヤロープ70を挟み込み、ボルト穴48に挿通したボルトを締め付けて2つの部材を接近させることで、ワイヤロープ70に対してベース部46が固定設置される。又、制御部50は、図4では概略的に図示しているが、駆動部44の動作を制御するものであり、駆動部44と配線を介して接続される場合は、型枠20の昇降動作を阻害せず、かつ、ワイヤロープ70に接触しないルートで、配線が引きまわされる。なお、駆動部44と制御部50とが一体的に構成されていてもよい。
続いて、図5に示したフロー図に沿って、上述した熱可塑性樹脂の被覆装置10を用いた、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆方法について説明する。なお、熱可塑性樹脂の被覆装置10の構成については、適宜、図1〜図4を参照されたい。
S100(昇降手段取り付け):施工対象物であるワイヤロープ70に対して、昇降手段40を取り付ける。取り付け位置は、ワイヤロープ70の施工範囲の上端よりも上方である。
S110(型枠取り付け):ワイヤロープ70に対して、型枠20を取り付ける。具体的には、分割状態にした型枠20を、円形プレート(底部)22に設けた挿通穴24にワイヤロープ70を挿通させるようにして、円形プレート22を下方にして接合状態にする。そして、上記S100で設置した昇降手段40から吊り下げられている2本のワイヤ42A、42Bの先端を、型枠20の上端に接続し、昇降手段40によって型枠20を吊り下げる状態にする。更に、2本のワイヤ42A、42Bの繰り出し長さを調整することで、型枠20をワイヤロープ70の施工範囲の上端近傍に配置する。
S120(型枠加熱):ヒーター62と温度制御装置64とで構成される温度保持手段60により、型枠20の加熱を開始する。加熱温度は、後述するように型枠20内に注ぎ込まれる熱可塑性防錆樹脂が、硬化せずに流動状態を維持できるような温度とする。なお、温度保持手段60が断熱材である場合は、本工程が省略される。
S130(熱可塑性樹脂準備):ワイヤロープ70を被覆するための熱可塑性防錆樹脂を準備する。すなわち、汎用の加熱機器等を用いて熱可塑性防錆樹脂を加熱し、流動状態にする。
S140(熱可塑性樹脂注ぎ込み):上記S120で設置した型枠20内に、上記S130で準備した流動状態の熱可塑性防錆樹脂を注ぎ込む。これにより、ワイヤロープ70の、型枠20の内部に位置する部位が、型枠20内に貯留された熱可塑性防錆樹脂に浸漬される状態になる。
S150(型枠降下開始):型枠20の降下を開始する。具体的には、昇降手段40の駆動部44を制御部50によって制御することで、駆動部44から2本のワイヤ42A、42Bを繰り出し、型枠20をワイヤロープ70に沿って降下させる。このとき、型枠20の降下に伴い、型枠20の円形プレート22が、ワイヤロープ70の撚り方向に沿って回転する。この型枠20の降下により、型枠20内の熱可塑性防錆樹脂に浸漬されるワイヤロープ70の部位が、下方向へシフトする。
S160(型枠降下終了):型枠20がワイヤロープ70の施工範囲の下端に到達したら、昇降手段40の制御部50により駆動部44を制御して、2本のワイヤ42A、42Bの繰り出しを停止し、型枠20の降下を終了する。これにより、ワイヤロープ70の全施工範囲が、一時的に型枠20内の熱可塑性防錆樹脂に浸漬されたことになる。
S170(型枠分割):型枠20を分割する。すなわち、一対の半割り部材26a、26bと円形プレート22とを分割して、半割り状態にする。
S180(構造物の座繰り部充填):上記S170において型枠20を分割することで、型枠20の内部に残っていた熱可塑性防錆樹脂を、図1に示すような構造物72の座繰り部74へ流し込み、座繰り部74に熱可塑性防錆樹脂を充填する。なお、円形プレート22を一対の半割り部材26a、26bから独立して分割できるように設けておくことで、上記S170で円形プレート22のみを分割し、型枠20の内部に残っていた熱可塑性防錆樹脂を座繰り部74へ流し込んでもよい。
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆装置10は、図1〜図4に示すように、型枠20、昇降手段40及び温度保持手段60を含むものであり、型枠20は、径方向に分割可能な有底筒状を有し、底部22に長尺の施工対象物70を挿通可能な挿通穴24が設けられている。又、昇降手段40は、型枠20を長尺の施工対象物70に沿って降下及び上昇させるためのものであり、温度保持手段60は、型枠20に貯留された熱可塑性樹脂の温度を保持するためのものである。このような構成により、型枠20は、分割状態にされ、底部22に設けられた挿通穴24に長尺の施工対象物70が通された状態で、底部22側を下方にして、施工対象物70の被覆範囲の上端近傍において接合される。その後、内部に流動状態の熱可塑性樹脂が注ぎ込まれ、温度保持手段60により熱可塑性樹脂の温度が保持された状態で、被覆範囲の下端に到達するまで、昇降手段40により施工対象物70に沿って降下される。温度保持手段60は、型枠20に取り付けられるヒーター62と、このヒーター62の温度を制御する温度制御装置64とで構成されている。このとき、型枠20の内部に位置する施工対象物の部位は、温度保持手段60により温度が保持されることで流動状態が維持された、型枠20に貯留されている熱可塑性樹脂に浸漬される状態になる。この状態で、施工対象物70の施工範囲の上端から下端まで型枠20が降下されるため、施工対象物70の全施工範囲が、熱可塑性樹脂に一時的に浸漬されることとなる。
このため、長尺の施工対象物70に対して、その表面に凹凸がある場合であっても、全施工範囲において、表面の凹部まで熱可塑性樹脂を充填することができると共に、滑らかで美しい仕上がり面の被覆を形成することができる。これにより、熱可塑性樹脂を品質良く被覆することが可能となる。更に、型枠20の降下速度を調整することによって、厚みが薄く均一な被覆を形成することができるため、樹脂の使用量を目的に応じた必要十分な量に抑えることができ、コストダウンや施工時間の短縮に寄与することが可能となる。又、熱可塑性樹脂の被覆装置10は、熱可塑性樹脂の被覆に利用される従来の専用機器と比較して、装置構成がコンパクトであるため、従来の専用機器では困難であった狭小箇所の施工にも用いることができ、更に、運搬コストを低減することができる。
更に、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆装置10は、複数の金属製のワイヤを撚り合わせたワイヤロープ70が施工対象物であり、このワイヤロープ70には、長尺方向と直交する断面の、複数のワイヤが成す円形配置の中心近傍に相当する部分に、油分を含む防錆剤が注入されている。この防錆剤の油分は、ワイヤロープ70が熱可塑性樹脂の熱によって熱せられると、流動性が高まってワイヤロープ70から溶け出る虞がある。しかしながら、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆装置10は、厚みが薄く均一な被覆が形成される速度で、型枠20が降下されるものであり、又、温度制御装置64によって、型枠20に取り付けたヒーター62の温度を制御するため、熱可塑性樹脂からワイヤロープ70へ不本意な熱が伝わる前に、熱可塑性樹脂が冷めて硬化する。このため、ワイヤロープ70の内部から防錆剤の油分が外へ溶け出すリスクを、大幅に低減することが可能となる。
又、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆装置10は、型枠20が、接合状態で円筒形状を形成する一対の半割り部材(本体部)26a、26b、型枠20の底部を成す半割り可能な円形プレート22、及び、円形プレート22を保持する保持手段28を含んでいる。又、型枠20の底部を成す円形プレート22は、ワイヤロープ70の外周面の形状に倣った形状の内周面を有する挿通穴24が設けられており、保持手段28は、円形プレート22を、半割り部材26a、26bに対して下方から密着させるように、かつ、ワイヤロープ70を回転軸とする方向に回転自在に保持する。
このような構成であるため、型枠20は、ワイヤロープ70に沿って降下される際に、ワイヤロープ70の撚り方向に沿って、一対の半割り部材26a、26bに対して円形プレート22が回転されながら降下される。ここで、ワイヤロープ70は、螺旋状に変化する外周面を有しているため、上記の如く型枠20を降下させることで、挿通穴24の内周面の形状と、ワイヤロープ70の、挿通穴24に挿通している部位の外周面の形状とを、常に一致させた状態にできる。これにより、挿通穴24の内周部とワイヤロープ70の外周部とを常に接触させることができるため、挿通穴24とワイヤロープ70との間の隙間から、型枠20内の熱可塑性樹脂が漏れることを防止しながら、型枠20を円滑に降下させることが可能となる。
又、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆装置10は、硬化前の成形性と硬化後の形状維持性とに優れたシリコンによって、円形プレート22を形成してもよい。このようにすることで、円形プレート22を作製する際は、例えば、硬化前のシリコンを、ワイヤロープ70自体又はこれを型取った雄型の周囲に接触させて成形することで、ワイヤロープ70の外周面の形状に倣った形状の内周面を有する挿通穴24が設けられた、円形プレート22の原形を容易に作製することができる。更に、その原形から作製した、硬化後のシリコンにより形成される円形プレート22は、その優れた形状維持性から、ワイヤロープ70の断面形状の回転位相の変化に、良好に追従して回転することができる。
又、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆装置10は、挿通穴24の内周部に、円形プレート22とワイヤロープ70との間を摺動可能にシールする摺動シール部材が装着され、保持手段28が円形プレート22を半割り部材26a、26bに対して下方から密着させるように保持するものであってもよい。このような構成の場合、型枠20は、ワイヤロープ70に沿って降下される際に、挿通穴24の内周部に装着された摺動シール部材が、ワイヤロープ70の外周部に接触した状態で降下される。これにより、高さ方向の位置に応じて螺旋状に変化する、ワイヤロープ70の外周に対して、摺動シール部材が、その特有の性質により接触部位の形状をワイヤロープ70の外周形状に合わせて変化させながら、常に接触する状態になる。このため、上記のような構成であっても、挿通穴24とワイヤロープ70との間の隙間から、型枠20内の熱可塑性樹脂が漏れることを防止しながら、型枠20を円滑に降下させることが可能となる。
更に、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆装置10は、昇降手段40が、型枠20を吊り下げるための2本のワイヤ42A、42Bと、これらのワイヤ42A、42Bの繰り出し及び巻き取りを行う駆動部44と、駆動部44をワイヤロープ70の任意位置に設置するためのベース部46と、駆動部44の動作を制御する制御部50とを含むものである。すなわち、ワイヤロープ70の施工範囲の上端よりも上方に、ベース部46を介して駆動部44が設置され、この駆動部44から吊り下げられる2本のワイヤ42A、42Bにより、型枠20が吊り下げられる態様となる。そして、制御部50によって駆動部44が制御されることで、2本のワイヤ42A、42Bの繰り出し及び巻き取りが行われ、これに応じて型枠20が降下及び上昇する。このような構成により、狭小箇所であっても、型枠20の降下及び上昇を円滑に行うことができる。
お、熱可塑性樹脂の被覆装置10は、参考例として、温度保持手段60が、型枠20に取り付けられる断熱材であってもよく、この場合は、制御や動力を要する装置等を用いることなく、単純な構成で熱可塑性樹脂の温度の保持を実現することが可能となる。
又、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆装置10は、接合状態で円筒形状を形成する一対の半割り部材26a、26bが、ネジ機構34を利用して接合されていることで、一対の半割り部材26a、26b同士を強固に接合することができる。更に、一対の半割り部材26a、26bが、磁石を利用して接合されていてもよく、この場合には、一対の半割り部材26a、26bの接合や分割を、迅速に行うことができる。なお、半割り可能な円形プレート22は、例えば、半割り部材26a、26bに追従して分割及び接合されるように、保持手段28により保持されていると共に、連結ピン等を用いた単純な機構を介して接合されていることが望ましい。
一方、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆方法は、径方向に分割可能な有底筒状を有する型枠20の底部22に、長尺の施工対象物70を挿通可能な挿通穴24を設け、底部22を下方にして挿通穴24に施工対象物70を挿通させる態様で、型枠20を施工対象物70の被覆範囲の上端近傍に設置する(図5のS110)。すなわち、有底筒状の型枠20を分割状態にし、底部22に設けた挿通穴24を長尺の施工対象物70が通るように、型枠20の底部22側を下方にして、施工対象物70の被覆範囲の上端近傍において型枠20を接合する。すると、施工対象物70は、被覆範囲の上端近傍の部位が型枠20の内部に位置し、被覆範囲の上端よりも下方の部位が挿通穴24を介して下方へ延在する状態となる。そして、接合させた有底筒状の型枠20内へ、加熱して流動状態にした熱可塑性樹脂を注ぎ込み(図5のS140)、型枠20内の熱可塑性樹脂の温度を保持した状態(図5のS120)で、型枠20が施工対象物70の被覆範囲の下端に到達するまで、型枠20を施工対象物70に沿って降下させるものである(図5のS150、S160)。型枠20内の熱可塑性樹脂の温度保持は、型枠20に取り付けるヒーター62と、このヒーター62の温度を制御する温度制御装置64とを用いて行う。
この際、型枠20の内部に位置する施工対象物70の部位は、温度が保持されることで流動状態が維持された熱可塑性樹脂に浸漬される状態になる。この状態で、施工対象物70の施工範囲の上端から下端まで型枠20を降下させるため、施工対象物70の全施工範囲が、熱可塑性樹脂に一時的に浸漬されることとなる。このため、施工対象物70の表面に凹凸がある場合であっても、全施工範囲にわたって、施工対象物70表面の凹部まで熱可塑性樹脂を充填することができると共に、滑らかで美しい仕上がり面の被覆を形成することができる。これにより、長尺の施工対象物70に対して、熱可塑性樹脂を品質良く被覆することが可能となる。更に、型枠20を降下させる速度を調整することによって、厚みが薄く均一な被覆を形成することができるため、樹脂の使用量を目的に応じた必要十分な量に抑えることができ、コストダウンや施工時間の短縮に寄与することが可能となる。
ここで、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆方法は、施工対象物が複数の金属製のワイヤを撚り合わせたワイヤロープ70であるが、このワイヤロープ70には、油分を含む防錆剤が注入されている。この防錆剤の油分は、熱可塑性樹脂からワイヤロープ70へ伝わる熱の影響を受けて、流動性が高まりワイヤロープ70から溶け出る虞がある。しかしながら、本熱可塑性樹脂の被覆方法は、上述したように、厚みが薄く均一な被覆が形成される速度で、型枠20を降下させ、なおかつ、温度制御装置64によって、型枠20に取り付けたヒーター62の温度を制御するものであるため、熱可塑性樹脂からワイヤロープ70へ不本意な熱が伝わる前に、熱可塑性樹脂が冷めて硬化する。このため、ワイヤロープ70の内部から防錆剤の油分が外へ溶け出すリスクを、大幅に低減することができる。
又、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆方法は、ワイヤロープ70の外周面の形状に倣った形状に、底部22の挿通穴24の内周面を設ける。そして、熱可塑性樹脂が注ぎ込まれた型枠20を降下させる際に、ワイヤロープ70のロープ状の撚り方向に沿って、型枠20の少なくとも底部22を回転させながら降下させるものである。これにより、挿通穴24の内周面の形状と、ワイヤロープ70の、挿通穴24に挿通している部位の外周面の形状とが常に一致するため、挿通穴24の内周部とワイヤロープ70の外周部とを常に接触させさせることができ、挿通穴24とワイヤロープ70との間の隙間から、型枠20内の熱可塑性樹脂が漏れることを防止することができる。なお、型枠20の底部22を回転させる際は、底部22のみを一対の半割り部材26a、26bに対して回転させてもよく、型枠20全体を回転させてもよい。
又、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆方法は、挿通穴24の内周部に、例えばスポンジ、ブラシ等の、底部22とワイヤロープ70との間を摺動可能にシールする摺動シール部材を装着してもよい。この場合には、熱可塑性樹脂が注ぎ込まれた型枠20を降下させる際に、挿通穴24の内周部に装着した摺動シール部材を、ワイヤロープ70に接触させた状態で降下させる。すなわち、摺動シール部材が接触するワイヤロープ70の外周面は、螺旋状に変化するが、摺動シール部材は、その特有の性質によって、変化するワイヤロープ70の外周面に合わせて、ワイヤロープ70に対して接触する部位の形状が変化する。これにより、挿通穴24とワイヤロープ70との間の隙間から、型枠20内の熱可塑性樹脂が漏れることを防止しながら、型枠20を降下させることができる。
更に、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆方法は、挿通穴24の内周部に可撓性部材を装着した場合に、被覆範囲の上端近傍への型枠20の設置(図5のS110)から、被覆範囲の下端への型枠20の降下(図5のS160)までの工程を実行し、型枠20を分割状態にしてワイヤロープ70から取り外した後、再度、被覆範囲の上端近傍への型枠20の設置から、被覆範囲の下端への型枠20の降下までの工程を実行することで、ワイヤロープ70に対して熱可塑性樹脂を二層に被覆してもよい。このとき、二層目の被覆を行う際のワイヤロープ70は、一層目の被覆を行う際のワイヤロープ70と比較して、一層目の被覆が既に形成されていることで、外周形状やその大きさが変化している。しかしながら、その変化量は、被覆の厚みが薄いことから僅かなものであるため、型枠20の挿通穴24の内周部に装着された摺動シール部材によって吸収される。このため、二層目の被覆を行う際に用いる型枠20は、一層目の被覆の際よりも大きな挿通穴24が設けられた底部22を有する型枠20である必要はなく、一層目の被覆を行う際に用いた型枠20をそのまま利用することができる。従って、ワイヤロープ70に対して熱可塑性樹脂を、効率よく二層に被覆することが可能となる。
ここで、ワイヤロープ70に対して一層目の被覆を形成したとき、ワイヤロープ70の内部に残存する僅かな空気が、熱可塑性樹脂の熱の影響によって、ワイヤロープ70の内部から、ワイヤロープ70の外周部と熱可塑性樹脂の被覆との間へ移動し、空気が入った玉が被覆に形成される場合がある。この場合には、その玉の部分を潰し、その周囲の熱可塑性樹脂に熱を加えて、ワイヤロープ70の表面が露出しないように熱可塑性樹脂の形を整えた後に、二層目の被覆を行えばよい。二層目の被覆の際は、ワイヤロープ70に一層目の被覆が形成されているため、ワイヤロープ70まで熱可塑性樹脂の熱が伝わり難く、空気が入った玉が被覆に形成されることはない。このように、一層目の被覆に空気が入った玉が発生した場合であっても、二層目の被覆を形成することで、滑らかで美しい仕上がり面の被覆を形成することができる。
又、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆方法は、型枠20を降下させた後に、型枠20内に残っていた熱可塑性樹脂を、ワイヤロープ70が埋め込まれた構造物72の、ワイヤロープ70が埋め込まれた部位の周囲に設けられた座繰り部74内へ流し込むものである(図5のS180)。これにより、ワイヤロープ70の、被覆範囲の下端側の部位の周囲や、ワイヤロープ70と構造物72との間の隙間においても、熱可塑性樹脂の被覆を形成することが可能となる。
更に、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆方法は、金属製のワイヤロープ70に対して、熱可塑性の防錆樹脂を被覆するものである。ここで、熱可塑性の防錆樹脂は、一般的に、専用機器を用いて加熱や吹き付け等を行っていたが、特にその加熱は時間を要するものであった。しかしながら、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆方法は、熱可塑性防錆樹脂の吹き付けや加熱を行うための専用機器を用いる必要はなく、吹き付け機能が無い加熱に特化した汎用の加熱機器(電気鍋等)を用いて、必要十分な量だけの熱可塑性防錆樹脂を加熱すればよいものである。従って、熱可塑性防錆樹脂の加熱時間を大幅に短縮することができ、延いては、全体の施工時間を大幅に短縮することが可能となる。
ここで、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆装置10及び被覆方法は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、様々な形態をとり得るものである。例えば、径方向に分割可能な型枠20は、本体部と底部22とが一体的に形成されていてもよい(すなわち、一方の半割り部材26aと円形プレート22を構成する一方のプレート部材とが一体的に形成され、他方の半割り部材26bと円形プレート22を構成するもう一方のプレート部材とが一体的に形成されているような構成)。又、底部22が、型枠20の本体部から独立して分割可能なものであってもよい。
更に、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂の被覆装置10及び被覆方法は、図4に示したような昇降手段40を用いる以外の方法で、型枠20を降下させてもよい。例えば、図6に示すように、ワイヤロープ70の周囲にワイヤロープ70と平行に、2本の硬性の棒状ガイド部材52を配置し、棒状ガイド部材52に係合すると共に棒状ガイド部材52に沿って昇降可能な可動部54と、型枠20とを、接続部56を介して接続した構成を利用してもよい。この場合、棒状ガイド部材52にネジ溝のようなものを設け、可動部54の棒状ガイド部材52に対する係合部分が、棒状ガイド部材52のネジ溝に沿って回転するような構成であってもよい。更に、可動部54に自走機構を設け、この自走機構を利用して型枠20を降下させてもよい。上記のような構成によれば、型枠20の底部22が型枠20の本体部に対して回転する場合であっても、型枠20の本体部をより強固に支持しながら、降下させることができる。なお、硬性の棒状ガイド部材52を配置する本数は、型枠20を安定して降下させることができれば、1本であってもよく、3本以上であってもよい。又、型枠20の降下を、人力により行ってもよい。この場合には、上述した棒状ガイド部材を用いるか否かに関わらず、型枠20に取っ手の役割をする部位を設けると、作業性が向上するため望ましい。
10:熱可塑性樹脂の被覆装置、20:型枠、22:底部(円形プレート)、24:挿通穴、26a、26b:一対の半割り部材(本体部)、40:昇降手段、42A、42B:ワイヤ、44:駆動部、46:ベース部、50:制御部、60:温度保持手段、70:施工対象物(ワイヤロープ)、72:構造物、74:座繰り部

Claims (11)

  1. 上下方向に延設される長尺の施工対象物に熱可塑性樹脂を被覆する方法であって、
    径方向に分割可能な有底筒状を有する型枠の底部に、前記施工対象物を挿通可能な挿通穴を設け、前記底部を下方にして前記挿通穴に前記施工対象物を挿通させる態様で、前記型枠を前記施工対象物の被覆範囲の上端近傍に設置し、
    前記型枠内へ流動状態の前記熱可塑性樹脂を注ぎ込み、前記型枠内の前記熱可塑性樹脂の温度を保持した状態で、前記型枠が前記被覆範囲の下端に到達するまで、前記型枠を前記施工対象物に沿って降下させ、この際、前記型枠に取り付けるヒーターと、該ヒーターの温度を制御する温度制御装置とを用いて、前記型枠内の前記熱可塑性樹脂の温度を保持し、
    前記施工対象物が複数の金属製のワイヤを撚り合わせたワイヤロープであり、該ワイヤロープには、油分を含む防錆剤が注入されており、
    前記ワイヤロープに被覆した前記熱可塑性樹脂の熱の影響によって、前記ワイヤロープの内部から前記防錆剤の油分が溶け出さないように、前記温度制御装置により前記ヒーターの温度を制御することを特徴とする熱可塑性樹脂の被覆方法。
  2. 記挿通穴の内周面を前記ワイヤロープの外周面の形状に倣った形状に設け、
    前記型枠を降下させる際、前記ワイヤロープの撚り方向に沿って、前記型枠の少なくとも底部を回転させながら降下させることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂の被覆方法。
  3. 前記挿通穴の内周部に、前記施工対象物と前記底部との間を摺動可能にシールする摺動シール部材を装着したことを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂の被覆方法。
  4. 前記型枠を、前記被覆範囲の下端まで降下させ、分割状態にして前記施工対象物から取り外した後、前記被覆範囲の上端近傍への前記型枠の設置から、前記被覆範囲の下端への前記型枠の降下までの工程を、再度実行することで、前記施工対象物に対して前記熱可塑性樹脂を二層に被覆することを特徴とする請求項3記載の熱可塑性樹脂の被覆方法。
  5. 前記施工対象物の、前記被覆範囲の下端側が構造物に埋め込まれていると共に、該構造物の、前記施工対象物が埋め込まれた部位の周囲に座繰り部が設けられており、
    前記型枠を降下させた後、前記型枠の少なくとも底部を分割状態にして、前記型枠内に残っていた前記熱可塑性樹脂を、前記構造物の座繰り部内へ流し込むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂の被覆方法。
  6. 前記施工対象物が金属製であり、前記熱可塑性樹脂が防錆剤であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂の被覆方法。
  7. 上下方向に延設される長尺の施工対象物に熱可塑性樹脂を被覆する装置であって、
    径方向に分割可能な有底筒状を成し、底部に前記施工対象物を挿通可能な挿通穴が設けられ、該挿通穴に前記施工対象物が挿通された状態で前記熱可塑性樹脂を貯留すると共に、前記施工対象物に沿って移動可能な型枠と、
    前記型枠内に貯留された前記熱可塑性樹脂の温度を保持するための温度保持手段と、を含み、
    該温度保持手段が、前記型枠に取り付けられるヒーターと、該ヒーターの温度を制御する温度制御装置とで構成され、
    前記施工対象物が複数の金属製のワイヤを撚り合わせたワイヤロープであり、該ワイヤロープには、油分を含む防錆剤が注入されており、
    前記温度制御装置は、前記ワイヤロープに被覆された前記熱可塑性樹脂の熱の影響によって、前記ワイヤロープの内部から前記防錆剤の油分が溶け出さないように、前記ヒーターの温度を制御するものであることを特徴とする熱可塑性樹脂の被覆装置。
  8. 記挿通穴の内周面が、前記ワイヤロープの外周面の形状に倣った形状に形成されていることを特徴とする請求項7記載の熱可塑性樹脂の被覆装置。
  9. 前記型枠は、筒状の本体部と前記底部とが別体に構成され、前記底部が、前記本体部に対して、前記施工対象物を回転軸とする方向に回転可能に保持されていることを特徴とする請求項8記載の熱可塑性樹脂の被覆装置。
  10. 前記挿通穴の内周部に、前記施工対象物と前記底部との間を摺動可能にシールする摺動シール部材が装着されていることを特徴とする請求項7記載の熱可塑性樹脂の被覆装置。
  11. 前記型枠を前記施工対象物に沿って降下及び上昇させるための昇降手段を備え、
    該昇降手段は、前記型枠を吊り下げるためのワイヤと、該ワイヤの繰り出し及び巻き取りを行う駆動部と、該駆動部を前記施工対象物の任意位置に設置するためのベース部と、前記駆動部の動作を制御する制御部と、を含むことを特徴とする請求項7から10のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂の被覆装置。
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