本実施形態の説明に先立ち、本願発明者が行った検討結果について説明する。
図1は、その検討に使用した情報送信器の模式図である。
この情報送信器1は海上に浮かべられるブイであり、水Wに浮くフロート2とこれに固定された無線送信器3とを有する。
無線送信器3には、水Wの中に沈められる複数のケーブル5が設けられ、その各々の先端にセンサユニット6が設けられる。センサユニット6は、水Wの温度や流速を計測してその計測結果を無線送信器3に送る。
この例では、長さの異なる複数のケーブル5ごとにセンサユニット6を設けることで、異なる水深における水温や流速等を各センサユニット6で計測できるようにする。
そして、各センサユニット6の計測結果に対して後述のように所定の処理を行った後、無線送信器3に固定されたアンテナ4によりその計測結果が陸上に無線送信される。
なお、情報送信器1が水上で漂流するのを防止するために、無線送信器3にはロープ7と錨8とが設けられる。
図2は、センサユニット6の機能ブロック図である。
図2に示すように、ケーブル5は電源線11、信号線12、及び制御線13を有しており、その各々がセンサユニット6に電気的に接続される。なお、電源線11、信号線12、及び制御線13はいずれも二本ずつ設けられており、そのうちの一方は接地側電線として機能する。
また、センサユニット6は、電源回路15、センサ16、ADコンバータ17、変調器18、及び第1の制御部19を有する。
電源回路15は電源線11を四本に分配し、電源線11の電位をセンサ16、ADコンバータ17、変調器18、及び第1の制御部19の各々に供給する。
センサ16は、水温等の計測結果を含むセンサ信号Sを後段のADコンバータ17に送る。センサ信号Sは、アナログ信号であって、ADコンバータ17によってデジタル値に変換された後、変調器18においてデジタル変調される。
この例では変調器18における変調方式としてASK(Amplitude Shift Keying)方式を採用し、これにより信号Sを変調して変調後の信号Sが変調器18から信号線12に出力される。
また、第1の制御部19には制御線13からタイミング信号STが入力される。タイミング信号STはセンサ16による計測のタイミングを指示する信号であり、当該信号を受けたときのみ第1の制御部19はイネーブル信号SEを後段に出力し、これによりセンサ16、ADコンバータ17、及び変調器18の各々が駆動する。
図3は、無線送信器3の機能ブロック図である。
なお、図3において、図2におけるのと同じ要素には同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
図3に示すように、無線送信器3は、電源20、第2の制御部21、復調器22、無線変調器23、及びアンプ24を有しており、複数のケーブル5が接続される。
このうち、電源20は、太陽光発電等により情報送信器1が自ら発電して得られた電力を蓄える充電池であって、その正極と負極の各々が上記の電源線11に接続される。
また、第2の制御部21、復調器22、無線変調器23、及びアンプ24も電池20から電力の供給を受けて駆動する。
第2の制御部21は、上記したタイミング信号STを生成してそれを制御線13、復調器22、無線変調器23、及びアンプ24の各々に出力する。
復調器22は、信号線12から送られてくるセンサ信号Sを復調した後、そのセンサ信号Sを無線変調器23に出力する。無線変調器23における変調方式としては、例えばZigBee(登録商標)やBlueTouth(登録商標)等がある。
無線変調器23で変調されたセンサ信号Sはアンプ24において増幅された後、アンテナ4から無線送信される。
なお、復調器22、無線変調器23、及びアンプ24の各々は、第2の制御部21からタイミング信号ST受けた場合のみ駆動し、それ以外の場合には駆動を停止する。
以上説明した無線送信器1によれば、図2及び図3に示したように、アナログ値であるセンサ信号Sをデジタル値に変換してセンサユニット6から無線送信器3に有線送信する。アナログ信号はノイズが乗りやすかったり、ケーブル5を伝っている途中で電圧が減衰するといった不都合があるが、上記のようにセンサ信号Sをデジタル値に変換して無線送信器3に有線送信することでこれらの不都合を解消できる。
しかし、この方法では、センサ信号Sを変調したり復調したりするために変調器18、復調器22、及び無線変調器23等の複数のユニットが必要となる。よって、これらのユニットの合計の消費電力が多くなってしまうため、情報送信器1の総電力を低減するのが困難となる。
また、図1に示したように、複数のセンサユニット6ごとに複数のケーブル5が設けられるため各ケーブル5が絡まりやすく、情報送信器1の扱いも難しくなる。
以下に、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図4は、第1実施形態に係る情報送信器の模式図である。
なお、図4において図1で説明したのと同じ要素には図1におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
この情報送信器30は、海、川、及び湖等における水Wに浮かべられるブイであり、フロート2とこれに固定された無線送信器31とを有する。
無線送信器31には、水Wの中に垂れ下がるケーブル33が一本だけ設けられる。ケーブル33の長さは特に限定されないが、本実施形態ではその長さを数十m〜1km程度とする。また、異なる水深における水の状態を観察するために、この例ではケーブル5に所定の間隔をおいて複数のセンサユニット34を設ける。
センサユニット34による計測の対象としては、水Wの温度、流速、及び塩分濃度があり、これらのうちのいずれか一に適したセンサがセンサユニット34に内蔵される。
なお、情報送信器31が水上で漂流するのを防止するために、無線送信器31にはロープ7と錨8とが設けられる。
図5は、ケーブル33とセンサユニット34の機能ブロック図である。
図5に示すように、ケーブル33には二本の電源線41が設けられており、その各々がセンサユニット34に電気的に接続される。なお、二本の電源線41のうちの一方は接地電位(GND)に維持された接地側電線であり、他方は電源電圧(Vcc)に対応した非接地側電線である。
更に、ケーブル33の種類も特に限定されないが、本実施形態では二本の電源線41のうちの接地側電線を外部導体とし、非接地側電線を内部導体とする同軸ケーブルをケーブル33として使用する。
また、センサユニット34は、第1のローパスフィルタ42、電源回路43、センサIC49、及び第1のハイパスフィルタ48を有する。
このうち、第1のローパスフィルタ42は、その入力側が電源線41に接続されており、その遮断周波数よりも周波数が低い直流成分のみを電源線41の電位から抽出して後段に出力する。第1のローパスフィルタ42の遮断周波数は特に限定されないが、本実施形態では50Hz程度とする。
また、電源線41の電位には後述のように無線送信器31から供給された電源電圧が含まれるが、その電源電圧はケーブル33を伝ううちに減衰することがある。そこで、この例では第1のローパスフィルタ42の後段に電源回路43を設け、その電源回路43において第1のローパスフィルタ42の出力電圧を3.3V程度の所定の電圧にまで昇圧してセンサIC49に供給する。なお、電源電圧の減衰が問題にならない場合には電源回路43を省略してもよい。
一方、センサIC49は、複数のセンサユニット34ごとに設けられており、センサ44、ADコンバータ45、無線変調器46、及びMPU(Micro Processing Unit)等の制御部47を樹脂封止してなる。
このようにセンサIC49にセンサ44等の各ユニットを設けることで、各ユニットを別々に用意してそれらを接続する場合よりも小型軽量化が図られると共に、低コスト化や高信頼性も実現できる。
なお、この例ではセンサ44とセンサIC49とを別部品としているが、センサIC49にセンサ44を含めてもよい。
また、上記のセンサ44、ADコンバータ45、無線変調器46、及び制御部47は、いずれも電源回路43から出力される電源電圧によって駆動する。
センサ44は、半導体センサであって、水温等の計測結果を含むセンサ信号Sを後段のADコンバータ45に送る。なお、そのセンサ信号Sが複数のセンサユニット34のうちのどれから送信されたのかを識別できるように、センサ信号Sにはセンサユニット34ごとに定められた一意のセンサIDも含まれる。
そのセンサ信号Sは、アナログ信号であって、ADコンバータ45によって10ビットのデジタル値に変換された後、無線変調器46において無線規格に変調される。
その無線規格は特に限定されない。本実施形態では無線変調器46で使用する無線規格としてZigBeeを用いる。ZigBeeは変調方式として直接拡散方式を採用しており、その無線周波数は2.4GHz、データ転送速度は250kbps程度である。
なお、本実施形態で使用し得る無線規格としては、BlueTouthや特定小電力無線の規格もある。特定小電力無線を使用する場合、無線変調器46で使用する周波数としては例えば351MHzを採用し得る。
制御部47は、センサ44による計測のタイミングを指示するタイミング信号STをセンサ44に送る。なお、そのタイミング信号STはADコンバータ17と無線変調器46の各ユニットにも送られ、タイミング信号STが送られたときのみこれらのユニットが駆動する。
また、タイミング信号STを送信するタイミングは制御部47に予めプログラムされており、本実施形態では6時間おきに制御部47からタイミング信号STが送信される。
上記の無線変調器46で変調されたセンサ信号Sは、約10mWの出力電力でセンサIC49から出力された後、第1のハイパスフィルタ48に入力される。
第1のハイパスフィルタ48は、その入力側が無線変調器46に接続され、出力側が電源線41に接続される。本実施形態では、第1のハイパスフィルタ48の遮断周波数を、無線変調器46における無線規格の周波数よりも低い100MHz程度とする。これにより、無線変調器46を出たセンサ信号Sは第1のバイパスフィルタ48を通過して電源線41の電位に重畳されることになる。
なお、上記した第1のローパスフィルタ42の遮断周波数は、無線変調器46における無線規格の周波数よりも低いため、無線変調器46を出たセンサ信号Sが第1のローパスフィルタ42を通ることはない。
また、第1のローパスフィルタ42の出力側の二本のラインのうち、一方は接地電位に維持されており、他方はセンサ信号Sが通る信号線として供される。これについては第2のローパスフィルタ42の入力側についても同様である。
図6は、無線送信器31の機能ブロック図である。
図6に示すように、無線送信器31は、電源51、第2のローパスフィルタ52、第2のハイパスフィルタ53、及びRF(Radio Frequency)アンプ54を有すると共に、上記の電源線41が接続される。
このうち、電源51は、太陽光発電等により情報送信器30が自ら発電して得られた電力を蓄える充電池であって、その正極と負極の各々が上記の電源線41に接続される。また、RFアンプ54も電源51から電力の供給を受けて駆動する。
第2のローパスフィルタ52は、50Hz程度の遮断周波数を有しており、この遮断周波数よりも周波数が低い電源51の直流成分を電源線41の電位に重畳する。
また、第2のハイパスフィルタ53は、無線変調器46(図5参照)により変調されたセンサ信号Sを電源線41の電位から抽出してRFアンプ54に送る。第2のハイパスフィルタ53の遮断周波数は、無線変調器46の無線規格における周波数よりも低く電源線41に重畳されたセンサ信号Sが透過できる値であれば特に限定されず、本実施形態ではその遮断周波数を100MHz程度とする。
なお、上記した第2のローパスフィルタ52の遮断周波数は、無線変調器46の無線規格における周波数よりも低いので、電源線41に重畳されたセンサ信号Sが第2のローパスフィルタ52を通って電源51に至ることはない。
そして、第2のハイパスフィルタ53から出力されたセンサ信号Sは、RFアンプ54において増幅された後、アンテナ32から無線送信される。無線送信されるセンサ信号Sは、アンテナ32から20km程度離れた地点にまで到達することができ、一回の無線送信に要する電力は1W程度である。
図7は、この情報送信器30を利用した観測システムの模式図である。
この観測システム60は、上記の情報送信器30と、陸上に設けられたパーソナルコンピュータ等の計算機61と、陸上アンテナ62とを有する。計算機61は、情報送信器31から無線送信されるセンサ信号Sを陸上アンテナ62を介して取り込み、センサ信号Sに含まれる水Wの水温や流速等の情報をディスプレイに表示する。
また、上記のようにセンサ信号Sには複数のセンサユニット34を識別するためのセンサIDが含まれているため、計算機61はそのセンサIDを用いることでセンサ信号Sがどのセンサユニット34から送信されたものを識別することができる。
なお、計算機61がセンサ信号Sの受信に失敗しないように、時間を僅かにずらして制御部47(図5参照)がタイミング信号STを複数回送信することにより、情報送信器31からセンサ信号Sを複数回送信するようにしてもよい。本実施形態では僅かな送信間隔をおいてセンサ信号Sを三回無線送信することで、三回のうち少なくとも一回は計算機61がセンサ信号Sを受信できるようにする。
更に、このように複数回に分けてセンサ信号Sを送信する場合には、その送信間隔をセンサユニット34ごとに異なる値にするのが好ましい。これにより、複数のセンサユニット34から同時にセンサ信号Sが送信される確率が減り、計算機61が一つのセンサユニット34から送信されたセンサ信号Sを確実に受信できるようになる。
このような情報送信器31を海上に浮かべる場合には、漁業等においてこれらの情報を利用することで、魚の成育等に関して新たな知見を得るのに役立てることができる。
以上説明した本実施形態によれば、図5を参照して説明したように、センサ信号Sの変調は無線変調器46において一度のみ行われる。よって、変調と復調とを複数回行う図2の例と比較して変調や復調に要する電力を低減でき、情報送信器30の低消費電力化を実現することができる。
更に、このように変調や復調の回数が少ないため、本実施形態では無線送信器31とセンサユニット34の各々の回路構成を単純化でき、回路遅延が原因でセンサ信号Sを無線送信するのに要する時間が長くなるのを防止できる。そのため、タイミング信号STによって無線変調器46等を稼働状態にしている時間が10msec程度の短時間であっても一回の計測で得られたセンサ信号Sを無線送信しきることができ、無線変調器46等における電力を低減することができる。
ここで、電源線に信号を重畳する技術には既存の電力線通信技術もあるが、本実施形態のようにセンサ信号Sを無線規格に変調して電源線41に重畳すると、以下のように電力線通信技術よりも消費電力を低減できることが明らかとなった。
図8は、情報送信器30の消費電力を実際に調査して得られた図である。
この調査では、本実施形態に係る情報送信器30の他に、図1〜図3で説明した情報送信器1を第1の比較例としてその消費電力を調査した。
更に、既存の電力線通信技術を用いた第2の比較例の消費電力についても調査した。この第2の比較例では、既存の電力線通信技術であるHD-PLCを用いて、第1の比較例の変調器18(図2参照)から出たセンサ信号Sを電源線11に重畳した。なお、これ以外については第2の比較例は第1の比較例と同じであり、第2の比較例における変調と復調の回数も第1の比較例と同じである。
図8においては、センサユニットと無線送信器の各々について、これらの駆動電圧、駆動電流、センサ信号の送信時間、及び消費電力が示されている。
図8に示されるように、本実施形態では、第1の比較例と第2の比較例のいずれよりも総消費電力が少ない。第1の比較例よりも本実施形態の消費電力が少ないのは、上記のように本実施形態ではセンサ信号Sに対する変調と復調の回数が少ないためと考えられる。
一方、既存の電力線通信技術を用いた第2の比較例よりも本実施形態の方が消費電力が少ない理由は次のように考えられる。
既存の電力線通信技術の一つであるHD-PLCにおいては、変調方式としてOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)が採用されている。OFDMは、本実施形態の無線規格であるZigBeeの直接拡散方式と比較して複雑な変調方式であるため、変調器18の回路構成が本実施形態の無線変調器46よりも複雑となり、その変調器18の消費電力が大きくなる。
また、OFDMはそもそも間欠動作を想定した規格ではないため、スリープモードでも1W程度の電力が消費されてしまう。これに対し、本実施形態で使用するZigBeeは間欠動作や低消費電力を想定した規格であるため、スリープモードでの消費電力をμWレベルにまで低減することができる。
更に、HD-PLCにおける周波数帯域は4MHz〜28MHzであり、データ転送速度は約210MHz程度であるのに対し、本実施形態で採用するZigBeeの周波数帯域は2.4GHz、データ転送速度は250kbps程度である。
両者を比較すると、周波数帯域とデータ転送速度との比は本実施形態の方が圧倒的に小さく、これが理由で本実施形態において消費電力が低減できたとも考えられる。
以上の結果より、本実施形態のようにセンサ信号Sを無線規格に変調してから電源線41に重畳することで、その重畳方式として既存の電力線通信を用いる場合よりも格段に低消費電力化が図られることが明らかとなった。
この点は、海上のように外界から電力を供給するのが困難であって情報送信器30が自ら発電した電力を有効活用しなければならない場合に特に実益がある。
更に、本実施形態では一本のケーブル33に複数のセンサユニット34を設けるので、図1のように複数のセンサユニット6ごとに複数のケーブル5を設ける場合よりもケーブル33が絡まり難くなり、情報送信器30の取り扱いが容易になる。
なお、本実施形態は上記に限定されない。
例えば、上記ではケーブル33(図4参照)を水Wの中に垂らすことで情報送信器30をブイとして用いたが、石油、ガス、又は上下水道等のパイプラインに沿ってケーブル33を敷設してもよい。
この場合は、ケーブル33において所定の間隔で設けられたセンサユニット34によりパイプラインの温度や圧力を計測することで、その計測結果をパイプラインの維持や管理に役立てることができる。更に、ビルや工場等にケーブル33を敷設し、そのケーブル33に設けられたセンサユニット34で工場等の温度を測定するようにしてもよい。これらについては後述の第2実施形態でも同様である。
(第2実施形態)
第1実施形態では、タイミング信号ST(図5参照)を送信するタイミングはセンサユニット34ごとに制御部47に予めプログラムされているので、各センサユニット34の各々が独立して自らのタイミングでセンサ信号Sを無線送信する。
これに対し、本実施形態では、以下のようにしてセンサ信号Sを送信するタイミングを無線送信器31が制御する。
図9は、本実施形態におけるセンサユニット34とケーブル33の機能ブロック図である。
図9に示すように、本実施形態に係るセンサユニット34は、第1のローパスフィルタ42、電源回路43、センサ44、第1のハイパスフィルタ48、第1のバンドパスフィルタ72、波形整形回路73、及びセンサIC74を有する。
第1実施形態の図4と同様に、本実施形態でも一本のケーブル33に複数のセンサユニット34が間隔をおいて設けられ、各センサユニット34の第1のローパスフィルタ42がケーブル33の電源線41に接続される。
電源線41の電位のうち第1のローパスフィルタ42を透過した直流成分は電源回路43において3.3V程度にまで昇圧された後、センサ44とセンサIC74の各々に電源電圧として供給される。
この例では、水Wの温度や流速といった計測対象ごとにセンサ44を二つ設けているが、第1実施形態のように一つのセンサ44のみをセンサユニット34に設けてもよい。
各センサ44は、電源回路43から出力された電源電圧によって駆動し、温度や流速等を含むセンサ信号SをセンサIC74に送信する。第1実施形態と同様に、そのセンサ信号Sには、センサ44が属するセンサユニット34を識別するための一意のセンサIDも含まれる。
センサIC74は、ADコンバータ45、無線変調器46、及びMPU等の第1の制御部71を有する。
第1実施形態と同様に、このようにセンサIC74に第1の制御部71等の各ユニットを設けることで、各ユニットを別々に用意してそれらを接続する場合よりも小型軽量化が図られると共に、低コスト化や高信頼性も実現できる。
そのセンサIC74におけるADコンバータ45は、アナログ信号であるセンサ信号Sを10ビットのデジタル値に変換して無線変調器46に送る。
そして、無線変調器46は、第1実施形態と同様にセンサ信号SをZigbee、BlueTouth、及び特定小電力無線のいずれかの無線規格に変調する。各無線規格の無線周波数も第1実施形態と同様であり、Zigbeeでは2.4GHz、特定小電力無線では351MHzである。
なお、本実施形態のようにセンサ44を二つ設ける場合には、無線変調されたセンサ信号Sを上位ビットと下位ビットに分け、それらを各センサ44に割り当てることで各センサ44に係る情報を無線変調器46から一度に送信すればよい。
このように変調されたセンサ信号Sは、約10mW程度の出力電力でセンサIC74から第1のハイパスフィルタ48に出力される。
第1のハイパスフィルタ48は、その入力側が無線変調器46に接続され、出力側が電源線41に接続される。第1実施形態と同様に、本実施形態でも第1のハイパスフィルタ48の遮断周波数を無線変調器46における無線規格の周波数よりも低くする。これにより、無線変調器46を出たセンサ信号Sが第1のハイパスフィルタ48を通過できるようになり、センサ信号Sが電源線41の電位に重畳されることになる。
一方、第1の制御部71には、第1のバンドパスフィルタ72と波形整形回路73を介してタイミング信号STが入力される。
タイミング信号STはセンサ44による計測のタイミングを指示する信号であり、当該信号を受けたときのみ第1の制御部71はイネーブル信号SEを後段に出力し、これによりセンサ44、ADコンバータ45、及び無線変調器46が駆動する。
そのタイミング信号STは、電源線41の電位に重畳されており、第1のバンドパスフィルタ72によって抽出される。
第1のバンドパスフィルタ72の通過帯域は特に限定されない。但し、その通過帯域が第1のハイパスフィルタ48の遮断周波数に重なると、無線変調器46を出たセンサ信号Sが第1のバンドパスフィルタ72を透過し、第1の制御部71の前段でタイミング信号STとセンサ信号Sとが混信するおそれがある。
そのため、第1のバンドパスフィルタ72の通過帯域は、第1のハイパスフィルタ48の遮断周波数よりも低く、かつ、タイミング信号STの周波数を包含する1kHz〜1MHz程度とするのが好ましい。
また、タイミング信号STはケーブル33を介してセンサユニット34に供給されるが、数十m〜1kmもの長さのあるケーブル33を伝搬している途中にタイミング信号STの波形が劣化するおそれがある。
波形整形回路73は、このように波形が劣化したタイミング信号STの波形を整形して上記の第1の制御部71に出力することで、第1の制御部71がタイミング信号STを正しく認識できるようにする役割を担う。なお、タイミング信号STの波形の劣化が問題にならない場合には波形整形回路73を省略してもよい。
また、波形整形回路73や第1のバンドパスフィルタ72の各々の入出力には二本のラインが設けられるが、これらのうちの一方は接地電位に維持されており、他方はタイミング信号STが通る信号線として供される。
図10は、本実施形態に係る無線送信器31の機能ブロック図である。
なお、図10において、第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
図10に示すように、本実施形態に係る無線送信器31は、電源51、第2のローパスフィルタ52、第2のハイパスフィルタ53、RFアンプ54、MPU等の第2の制御部76、及び第2のバンドパスフィルタ77を有する。
このうち、RFアンプ54と第2の制御部76は、電源51から電力の供給を受けて駆動する。
第2のローパスフィルタ52は、第1実施形態と同様に50Hz程度の遮断周波数を有しており、この遮断周波数よりも周波数が低い電源51の直流成分を電源線41の電位に重畳する。
また、第2のハイパスフィルタ53は、100MHz程度の遮断周波数を有しており、無線変調器46(図9参照)により変調されたセンサ信号Sを電源線41の電位から抽出してRFアンプ54に送る。
なお、上記した第2のローパスフィルタ52の遮断周波数は、無線変調器46の無線規格における周波数よりも低いので、電源線41に重畳されたセンサ信号Sが第2のローパスフィルタ52を通って電源51に至ることはない。
そして、第2のハイパスフィルタ53から出力されたセンサ信号Sは、RFアンプ54において増幅された後、アンテナ32から無線送信される。無線送信されるセンサ信号Sは、アンテナ32から20km程度離れた地点にまで到達することができ、一回の無線送信に要する電力は1W程度である。
また、一回の無線送信のためにイネーブル信号SE(図9参照)でADコンバータ45と無線変調器46を稼働状態にしておく時間は10msecであり、この時間内でアンテナ32からセンサ信号Sを無線送信しきることができる。
一方、第2の制御部76は、上記のタイミング信号STを生成して第2のバンドパスフィルタ77に送る。
タイミング信号STは複数のセンサユニット34ごとに生成され、複数のセンサユニット34のうちのどれに送信したのかを識別するための一意の識別IDがタイミング信号STに含まれる。上記の第1の制御部71(図9参照)は、その識別IDを認識することで、タイミング信号STが自分宛てに送られてきたものか他のセンサユニット34に送られたのかを識別することができる。そして、自分宛てに送られてきたものと判断された場合に、第1の制御部71は上記のイネーブル信号SEを生成する。
また、タイミング信号STの周波数は特に限定されないが、本実施形態ではその周波数を100kHz程度とする。
更に、タイミング信号STを生成するタイミングは第2の制御部76に予めプログラムされており、本実施形態では6時間おきに第2の制御部76がタイミング信号STを生成する。
そして、第2のバンドパスフィルタ77は、第1のバンドパスフィルタ77と同じ程度の1kHz〜1MHz程度の通過帯域を有しており、タイミング信号STを通過させて電源線41に重畳させる。この通過帯域は、第2のハイパスフィルタ53の遮断周波数よりも低いので、タイミング信号STが第2のハイパスフィルタ53を通過してRFアンプ54に至ることはない。
また、第1実施形態のように第2の制御部76が時間を僅かにずらしてタイミング信号STを三回生成してセンサ信号Sを三回無線送信し、三回のうちの少なくとも一回は計算機61(図7参照)がセンサ信号Sを受信できるようにしてもよい。
なお、本実施形態ではセンサユニット34(図5参照)にセンサ44を二つ設けたが、各センサ44に係る情報は無線変調器46で一つにまとめて一度に送信されるので、センサ44を複数設けたことで消費電力が顕著に上昇することはない。
以上説明した本実施形態によれば、図10を参照して説明したように、無線送信器34の第2の制御部76が生成したタイミング信号STを電源線41に重畳することにより、そのタイミング信号STをセンサユニット34(図9参照)に送る。
よって、アンテナ32からセンサ信号Sを無線送信するタイミングを無線送信器31がセンサユニット34ごとに管理し、そのタイミングを調節することで複数のセンサユニット34から同時にセンサ信号Sが無線送信されるのを防止できる。
その結果、複数のセンサユニット34から無線送信されたセンサ信号Sの各々を計算機61(図7参照)が確実に取得することができ、センサ44による計測結果の取得に漏れが生じるのを防止できる。
しかも、第1実施形態と同様に、センサ信号Sを無線規格に変調して電源線41に重畳することで低消費電力化を実現することもできる。
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 電源線と、
前記電源線に接続された複数のセンサと、
前記電源線に接続され、電源とアンテナとを有する無線送信器と、
前記電源線と前記複数のセンサとの間にそれぞれ接続された複数の変調器とを備え、
前記複数の変調器は、前記センサから受けた信号を無線規格に変調し、変調された前記信号を前記電源線を通して前記無線送信器に送ることを特徴とする情報送信器。
(付記2) 前記変調器は、直接拡散方式により前記変調を行うことを特徴とする付記1に記載の情報送信器。
(付記3) 前記電源線を含むケーブルを一本のみ有することを特徴とする付記1又は付記2に記載の情報送信器。
(付記4) 水に浮かべられるフロートを更に有し、前記無線送信器が前記フロートに固定されると共に、前記ケーブルが前記無線送信器から垂れ下がることを特徴とする付記3に記載の情報送信器。
(付記5) 前記複数のセンサごとに設けられた複数のセンサユニットを更に有し、
前記複数のセンサユニットの各々に、前記複数の変調器の各々が設けられると共に、前記センサによる計測のタイミングを指示するタイミング信号を前記センサに送る制御部が設けられたことを特徴とする付記1乃至付記4のいずれかに記載の情報送信器。
(付記6) 前記センサユニットは、
前記電源線に接続され、前記電源線の電位から直流成分を抽出して前記センサ、前記変調器、及び前記制御部に供給する第1のローパスフィルタと、
前記電源線に接続され、前記変調器により変調された前記信号を前記電源線の電位に重畳する第1のハイパスフィルタとを有することを特徴とする付記5に記載の情報送信器。
(付記7) 前記無線送信器は、前記センサによる計測のタイミングを該センサごとに指示するタイミング信号を前記電源線の電位に重畳する制御部を有することを特徴とする付記1乃至付記4のいずれかに記載の情報送信器。
(付記8) 前記複数のセンサごとに設けられた複数のセンサユニットを更に有し、
前記複数のセンサユニットの各々に、前記複数の変調器の各々と、前記電源線の電位から前記タイミング信号を抽出するバンドパスフィルタとが設けられたことを特徴とする付記7に記載の情報送信器。
(付記9) 前記センサユニットは、
前記電源線に接続され、前記電源線の電位から直流成分を抽出して前記センサと前記変調器に供給する第1のローパスフィルタと、
前記電源線に接続され、前記変調器により変調された前記信号を前記電源線の電位に重畳する第1のハイパスフィルタとを有することを特徴とする付記8に記載の情報送信器。
(付記10) 前記無線送信器は、
前記電源線に接続され、前記変調器により変調された前記信号を前記電源線の電位から抽出して前記アンテナに送る第2のハイパスフィルタと、
前記電源の電位を前記電源線の電位に重畳する第2のローパスフィルタとを有することを特徴とする付記6又は付記9に記載の情報送信器。