JP5967700B2 - 膝継手 - Google Patents
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Description
大腿義足による昇段の課題として以下の3点がある。
(1)大腿義足の遊脚期の初期において、膝関節の屈曲不足により足部が下段の蹴込面に衝突する。
(2)大腿義足の遊脚期の終期において、膝関節の過伸展により足部が上段の蹴込面に衝突する。
(3)大腿義足の立脚期において、膝継手が予期せず折れる(膝折れ)。これは、立脚期の初期においては、膝継手が屈曲した状態で床反力がかかることに起因する。
しかし、このような膝継手は非常に高価であるにも関わらず、不自然な足取りとなり歩行者の負担が大きいという問題があった。
第2発明の膝継手は、第1発明において、前記回動制限手段は、回転方向を切り替え可能なラチェット機構であることを特徴とする。
第3発明の膝継手は、第1発明において、前記切替手段は、前記回動制限手段が前記大腿側部材に対する前記下腿側部材の過伸展を抑制した後であって、該回動制限手段に伸展方向の負荷が加わる前に、該回動制限手段の前記伸展制限状態を解除することを特徴とする。
第4発明の膝継手は、第1発明において、前記大腿義足の下腿部の加速度を検出する加速度検出手段を備え、前記切替手段は、前記加速度検出手段で検出した加速度が、屈曲方向の値である閾値に達したことをきっかけとして、前記回動制限手段の前記伸展制限状態を解除することを特徴とする。
第5発明の膝継手は、第4発明において、前記切替手段は、前記大腿側部材に対して前記下腿側部材が伸展を開始した後に、前記加速度検出手段で検出した加速度が、屈曲方向の値である閾値に達したことをきっかけとして、前記回動制限手段の前記伸展制限状態を解除することを特徴とする。
第6発明の膝継手は、第1発明において、前記大腿側部材に対する前記下腿側部材の角度を検出する角度検出手段を備え、前記切替手段は、前記角度検出手段で検出した角度がピークに達したことをきっかけとして、前記回動制限手段を前記伸展制限状態から前記屈曲制限状態へ切り替えることを特徴とする。
第7発明の膝継手は、第1発明において、前記大腿側部材に対する前記下腿側部材の角度を検出する角度検出手段を備え、前記切替手段は、前記角度検出手段で検出した角度が閾値に達したことをきっかけとして、前記回動制限手段を前記屈曲制限状態から前記伸展制限状態へ切り替えることを特徴とする。
第2発明によれば、回転にかかる抵抗が小さいので、膝関節が屈曲しやすく、大腿義足の遊脚期において足部が蹴込面に衝突することを防止できる。
第3発明によれば、回動制限手段が膝関節の過伸展を抑制した後に回動制限手段の伸展制限状態を解除するので、膝関節の過伸展により足部が蹴込面に衝突することを防止できる。また、回動制限手段に伸展方向の負荷が加わる前に回動制限手段の伸展制限状態を解除するので、回動制限手段に回転制限方向の負荷が加わり切り替えできなくなることを防止できる。
第4発明によれば、下腿部の加速度が、閾値に達したこときっかけとして回動制限手段の前記伸展制限状態を解除するので、回動制限手段が過伸展を抑制した後であって、回動制限手段に伸展方向の負荷が加わる前に回動制限手段の前記伸展制限状態を解除できる。
第5発明によれば、膝関節が伸展を開始した後に回動制限手段の前記伸展制限状態を解除するので、膝関節の屈曲による下腿部の加速度を無視することができ、誤作動を防止することができる。
第6発明によれば、膝関節角度がピークに達したこときっかけとして回動制限手段を切り替えるので、回動制限手段が過伸展を抑制した後であって、回動制限手段に伸展方向の負荷が加わる前に回動制限手段を切り替えることができる。
第7発明によれば、膝関節角度が閾値に達したことをきっかけとして回動制限手段を切り替えるので、膝折れを防止できる。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る膝継手1は、大腿義足TPに組み込まれる膝継手である。大腿義足TPは、膝継手1と、大腿切断患者の大腿部に装着される大腿ソケットTと、下腿部Lと、下腿部Lの下端に取り付けられた足部Fとから構成されている。
膝継手1は、図2における右側が膝頭であり、図2における左側(図3)が膝裏である。以下では、図2の右側を前、図2の左側を後とし、図2の紙面に対して垂直な方向(図3の左右)を左右とする。
ケース21の上端は、大腿側部材10の一対のアーム11、11の間に挿入されており、膝関節軸12が貫通している。そのため、下腿側部材20は、大腿側部材10に対して回動可能に連結されており、これにより膝関節が構成されている。本明細書において膝関節とは、大腿側部材10と下腿側部材20との連結部分を意味する。
(1)フリー状態
切替レバー33を中立にすると、ラチェット機構30は回転体32が筐体31に対して右回りにも左回りにも回転するフリー状態となる。この状態では、膝関節は屈曲も、伸展も可能となる。
(2)伸展制限状態
切替レバー33を図4における下向きに倒すと、ラチェット機構30は回転体32が筐体31に対して図4における左回りにのみ回転するように制限された伸展制限状態となる。この状態では、大腿側部材10に対する下腿側部材20の回動方向は屈曲方向にのみ制限され、伸展方向の回動は制限される。すなわち、膝関節は屈曲可能であるが、伸展は制限される。
(3)屈曲制限状態
切替レバー33を図4における上向きに倒すと、ラチェット機構30は回転体32が筐体31に対して図4における右回りにのみ回転するように制限された屈曲制限状態となる。この状態では、大腿側部材10に対する下腿側部材20の回動方向は伸展方向にのみ制限され、屈曲方向の回動は制限される。すなわち、膝関節は伸展可能であるが、屈曲は制限される。
なお、ロータリーポテンショメータ50が、特許請求の範囲に記載の角度検出手段に相当する。
なお、加速度センサ60が、特許請求の範囲に記載の加速度検出手段に相当する。
制御手段70は、ロータリーポテンショメータ50で検出した膝関節角度、および加速度センサ60で検出した下腿部Lの加速度を基に、ラチェット機構30をいずれの状態に切り替えるかを判断し、リニアステッピングモータ42を駆動する。
また、制御手段70と、ロータリーポテンショメータ50、加速度センサ60およびリニアステッピングモータ42とは、それぞれ有線で接続してもよいし、無線で接続してもよい。
図6に示すように、人は、義足および健足が地面に接地している立脚期と地面から離れている遊脚期とを交互に繰り返して昇段する。また、歩行の場合には、義足および健足の一方が遊脚期であり他方が立脚期である単脚支持期と、両方が立脚期である両脚支持期とを交互に繰返す。この立脚期と遊脚期とを合わせて歩行周期と称される。
その点、ラチェット機構30は回転可能な方向への回転にかかる抵抗が小さいという性質を有することから、膝継手1は膝関節が屈曲しやすく、遊脚期の初期において足部Fが階段の段差を乗り越えやすい。そのため、膝関節の屈曲不足により足部Fが下段の蹴上面に衝突することを防止できる。
その点、膝継手1は、ラチェット機構30により遊脚期に膝関節の伸展方向の回動を制限するので、足部Fが上段の蹴上面に衝突することを防止できる。また、下腿部Lが揺れないので任意のタイミングで接地できる。そのため、使用者にストレスがかからない。
大腿義足TPの遊脚期の終期において、ラチェット機構30を伸展制限状態としたまま大腿義足TPを接地させると、その後立脚期に移行し、膝関節を伸展させる力が加わる。一般に、ラチェット機構は回転制限方向(回転が制限されている方向)に負荷が加わると、回転方向の切り替えができなくなるという性質を有する。そのため、大腿義足TPが接地した後、ラチェット機構30に伸展方向の負荷が加わると、ラチェット機構30の切り替えができなくなる場合がある。また、大腿義足TPが立脚期に移行した後は膝折れの恐れがある。
そのため、大腿義足TPが接地する前または接地した直後に、少なくともラチェット機構30の伸展制限状態を解除し(フリー状態または屈曲制限状態へ切り替え)、膝折れが生じる前に屈曲制限状態へ切り替えることが好ましい。
また、ラチェット機構30が膝関節の過伸展を抑制した後にラチェット機構30の伸展制限状態を解除するので、膝関節の過伸展により足部Fが蹴込面に衝突することを防止できる。また、ラチェット機構30に伸展方向の負荷が加わる前にラチェット機構30の伸展制限状態を解除するので、ラチェット機構30に回転制限方向の負荷が加わり切り替えできなくなることを防止できる。
具体的には、ロータリーポテンショメータ50で膝関節角度を検出する。制御手段70は、ロータリーポテンショメータ50で検出した膝関節角度の時間変化(角速度)が伸展方向の値である閾値に達したか否かを基に、膝関節が伸展を開始したことを判断する。その後、上記のように下腿部加速度が閾値に達したか否かを判断する。
図9に、大腿義足TPの立脚期における、膝関節角度と膝関節モーメントの時間変化の典型例を示す。図9に示すように、膝継手1が組み込まれた大腿義足TPの立脚期の終期において、健足が接地する(両脚支持期II)前に膝継手1の膝関節の伸展が最大となることがわかる。また、大腿義足TPの単脚支持期において、膝関節の伸展が最大となってから健足が接地するまでの膝関節モーメントは正の値であり、膝関節を伸展させるモーメントが働いていることがわかる。
具体的には、ロータリーポテンショメータ50で膝関節角度を検出する。制御手段70は、ロータリーポテンショメータ50で検出した膝関節角度が伸展の最大値に達したことをきっかけとして、リニアステッピングモータ42を駆動してラチェット機構30を屈曲制限状態から伸展制限状態へ切り替える。
上記実施形態では、ラチェット機構30の伸展制限状態から屈曲制限状態への切り替えにおいて、加速度センサ60で下腿部Lの加速度を検出するように構成されているが、他の加速度検出手段を採用してもよい。例えば、ロータリーポテンショメータ50で膝関節角度の時間変化、すなわち角加速度を検出するように構成してもよい。膝関節の角加速度と上記下腿部加速度とは比例関係にあるので、膝関節の角加速度を基にラチェット機構30を伸展制限状態から屈曲制限状態へ切り替えるように構成してもよい。
例えば、ロータリーポテンショメータ50で膝関節角度を検出し、膝関節角度がピーク(図7(a)における破線)に達したことをきっかけとして、ラチェット機構30を伸展制限状態から屈曲制限状態へ切り替えてもよい。ここで、膝関節角度がピークに達したか否かは、膝関節の角速度が正の値から負の値に変化することなどから判断できる。
このようにしても、ラチェット機構30が過伸展を抑制した後であって、ラチェット機構30に伸展方向の負荷が加わる前にラチェット機構30を切り替えることができる。
つぎに、上記膝継手1の動作試験について説明する。
試験には、大腿部を切断していない健常者の男性が参加した。健常肢を屈曲させた状態で保持する擬似ソケットを作成し、その擬似ソケットに膝継手1が組み込まれた大腿義足TPを取り付けた。試験参加者は、擬似ソケットを右足に装着して昇段運動を行った。
図10に示すように、足部が蹴上面に衝突することなく、また、膝折れが生じることなく昇段が行えることが確認された。
10 大腿側部材
11 アーム
12 膝関節軸
20 下腿側部材
21 ケース
22 アダプタ
30 ラチェット機構
31 筐体
32 回転体
33 切替レバー
40 切替手段
41 スライダ
42 リニアステッピングモータ
43 リンク
50 ロータリーポテンショメータ
51 取付部材
60 加速度センサ
70 制御手段
Claims (7)
- 大腿義足に組み込まれる膝継手であって、
大腿側部材と、
該大腿側部材に対して回動可能に連結された下腿側部材と、
前記大腿側部材に対する前記下腿側部材の回動方向を、屈曲方向または伸展方向の一方向に制限可能な回動制限手段と、
該回動制限手段を、伸展方向の回動を制限する伸展制限状態と、屈曲方向の回動を制限する屈曲制限状態とで切り替える切替手段と、を備え、
前記切替手段は、
前記大腿義足の遊脚期に前記回動制限手段を前記伸展制限状態とし、
前記大腿義足の立脚期に前記回動制限手段を前記屈曲制限状態とする
ことを特徴とする膝継手。 - 前記回動制限手段は、回転方向を切り替え可能なラチェット機構である
ことを特徴とする請求項1記載の膝継手。 - 前記切替手段は、前記回動制限手段が前記大腿側部材に対する前記下腿側部材の過伸展を抑制した後であって、該回動制限手段に伸展方向の負荷が加わる前に、該回動制限手段の前記伸展制限状態を解除する
ことを特徴とする請求項1記載の膝継手。 - 前記大腿義足の下腿部の加速度を検出する加速度検出手段を備え、
前記切替手段は、前記加速度検出手段で検出した加速度が、屈曲方向の値である閾値に達したことをきっかけとして、前記回動制限手段の前記伸展制限状態を解除する
ことを特徴とする請求項1記載の膝継手。 - 前記切替手段は、
前記大腿側部材に対して前記下腿側部材が伸展を開始した後に、
前記加速度検出手段で検出した加速度が、屈曲方向の値である閾値に達したことをきっかけとして、前記回動制限手段の前記伸展制限状態を解除する
ことを特徴とする請求項4記載の膝継手。 - 前記大腿側部材に対する前記下腿側部材の角度を検出する角度検出手段を備え、
前記切替手段は、前記角度検出手段で検出した角度がピークに達したことをきっかけとして、前記回動制限手段を前記伸展制限状態から前記屈曲制限状態へ切り替える
ことを特徴とする請求項1記載の膝継手。 - 前記大腿側部材に対する前記下腿側部材の角度を検出する角度検出手段を備え、
前記切替手段は、前記角度検出手段で検出した角度が閾値に達したことをきっかけとして、前記回動制限手段を前記屈曲制限状態から前記伸展制限状態へ切り替える
ことを特徴とする請求項1記載の膝継手。
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