JP5966351B2 - 磁場計測装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光を利用した磁場計測装置に関する。
光を利用した磁場計測装置は、心臓からの磁場(心磁)や脳からの磁場(脳磁)などの生体から発生する微小な磁場を計測するもので、医療画像診断装置などへの応用が期待されている。磁場の計測には、磁気モーメントに偏極を生じさせる媒体が用いられる。この媒体としては、窒素による格子欠陥を設けたダイヤモンドといった固体素子や、アルカリ金属原子などのガスを封入したガスセルを用いる。この素子にポンプ光を照射することで素子内の原子のエネルギーが磁場に応じて励起され、この素子を透過したプローブ光の偏光面は磁気光学効果により回転する。磁場計測装置は、この偏光面の回転角度を磁場情報として計測する。
これらの磁場計測装置において、複数方向の各成分について磁場を測定する試みが行われている。特許文献1には、ホール素子や磁気抵抗効果素子などの固体磁気センサーを用いて、これらを異なる検出方向に配置することにより、磁場の複数方向の成分を検出している。また、近年、SQUID(Superconducting Quantum Interference Device)を用いない方式として光ポンピング式の磁気センサーが複数提案され、高感度化の試みがなされている(非特許文献1〜3)。
特開2008−96261号公報
I. K. Kominis, T. W. Kornack, J. C. Allred, and M. V. Romalis, "A subfemtotesla multichannel atmic magnetometer", Nature, 422, 596-599(2003) G. Bison, N. Castagna, A. Hofer, P. Knowles, J.-L. Schenker, M. Kasprzak, H. Saudan, and A. Weis2, "A room temperature 19-channel magnetic field mapping device for cardiac signals", APPLIED PHYSICS LETTERS 95, 173701 (2009) D. Budker et al., "Nonlinear magneto-optical rotation with frequency-modulated light", Phys. Rev. A, 65, 055403(2002)
特許文献1に開示された磁気センサーでは、センシング方式または素子の種類に依らず多方向成分を検出することが可能である。しかしながら、この磁気センサーは構造が複雑になる。また、この磁気センサーは異なる方向成分を異なる位置に置かれたセンサーでそれぞれ検出するので、厳密には同一位置の磁場について多方向成分を検出しているのではない。さらに、これをアレイ化して磁気分布を計測すると、空間分解能が低下するおそれがある。この問題はSQUIDを用いた磁気センサーにおいても同じである。
また、非特許文献1〜3に挙げた磁気センサーはいずれも測定可能となる磁場ベクトル成分の方向が固定されているため、複数の成分を計測することは不可能である。
さらには、非特許文献3には、周波数変調により測定可能範囲を向上させる方法が紹介されているが、この方法では、測定磁場に対応する+1次の共鳴周波数以外に0次および−1次等の複数の周波数が混在して共鳴を起すため、出力レベルが低下する。また、この方法では、各周波数が接近すると磁場強度の特定が困難になるという問題がある。
本発明は、同一位置の磁場について多方向成分を計測するとともに、共鳴による出力レベルの低下を抑制することを目的とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係る磁場計測装置は、偏光された光が照射されているときに磁場が与えられると、前記光の偏光面を前記磁場の強さに応じて回転させる媒体と、直線偏光成分を有する照射光を前記媒体に対して異なる複数の軸からそれぞれ照射する照射部と、前記媒体を透過した前記各照射光の偏光面の回転量をそれぞれ計測する計測器と、前記計測器によって計測された各回転量を加算し、その加算値に対応した加算信号を出力する加算器と、前記加算信号に応じた周波数の周期信号を発生する発振器と、前記発振器が発生した周期信号に対して前記各軸に応じて予め定められた位相差を付与し位相差周期信号として出力する移相器と、前記照射部が照射する各軸の照射光を、各々対応する位相差を持つ前記位相差周期信号を用いて変調する変調器とを具備することを特徴とする。
この構成によれば、同一位置の磁場について多方向成分を計測するとともに、共鳴による出力レベルの低下を抑制することができる。
好ましくは、上述の態様において、前記加算信号の高域周波数成分を除去するフィルターを具備し、前記発振器は、前記フィルターにより高域周波数成分が除去された加算信号に応じた周波数の周期信号を発生するとよい。
この構成によれば、外乱などの影響により生じる短周期の発振を抑制することができる。
また、上述の態様において、前記変調器は、前記各軸の照射光の光強度を、各々対応する位相差を持つ前記位相差周期信号を用いて変調してもよい。この構成によれば、照射光の強度を調節することで、磁場の計測を行うことができる。
また、上述の態様において、前記変調器は、前記各軸の照射光の波長を、各々対応する位相差を持つ前記位相差周期信号を用いて変調してもよい。この構成によれば、照射光の波長を調節することで、磁場の計測を行うことができる。
また、上述の態様において、前記加算器は、前記計測器によって計測された各回転量を決められた期間にわたって取得して、当該期間おける時間平均をそれぞれ算出して加算するとよい。
この構成によれば、計測器が計測する回転量の時間変動による誤差を抑制することができる。
また、上述の態様において、前記照射部は、直線偏光面を持つレーザー光を出力するレーザー光出力部と、レーザー光出力部の出力光を軸の数に応じて分岐させる分岐路とを有していてもよい。
この構成によれば、レーザー光の光源を1つにすることができる。
また、上述の態様において、前記照射部は、直線偏光面を持つレーザー光を出力するレーザー光出力部と、前記各軸毎に設けられ、入力されたレーザー光を各軸に応じた方向に出射する複数の出射部と、前記レーザー光出力部の出力光を前記各出射部にサイクリックに順次切り替えて入射させる切り替え手段とを有していてもよい。
この構成によれば、レーザー光出力部から出力されるレーザー光の光強度を下げずにそのレーザー光を各方向に出射することができる。
本発明の実施形態に係る磁場計測装置の全体構成を示す図である。 ガスセルを説明するための図である。 w軸を説明するための図である。 加算器の一例を示す図である 位相差周期信号を説明するための図である。 ワンビーム方式の計測装置により磁場を計測する原理を説明するための図である。 変形例において+w方向から−w方向を観察した光の振動方向とアライメントの配置を示す図である。 変形例において印加磁場がw軸と平行なときの光の振動方向とアライメントの配置を示す図である。 変形例における磁場計測装置の全体構成を示す図である。 変形例における照射部を示す図である
1.実施形態
1−1.構成
図1は、本発明の実施形態に係る磁場計測装置1の全体構成を示す図である。磁場計測装置1は、ポンプ光の照射をプローブ光の照射によって兼ねる、いわゆるワンビーム方式の計測装置である。照射部11は、光源111と分岐路112とを有する。光源111は、後述するガスセル13に封入された原子の超微細構造準位の遷移に対応した周波数のレーザー光を出力するレーザー光出力装置(レーザー光出力部)である。具体的には、このレーザー光の波長は、ガスセル13内に封入された気体原子の基底状態の超微細構造量子数Fと励起状態の超微細構造量子数F−1間に対応する波長である。
分岐路112は、光源111が発生させたレーザー光を、それぞれ異なる3つの方向に分岐させる。分岐路112は、例えば光ファイバーや導波路、AOM(Acousto Optic Modulator;音響光学変調器)などにより、光源111により発生したレーザー光を上述した3方向のいずれかに導く。また、分岐路112は偏光板などを備える。この偏光板は、3方向のいずれかに導かれた上記のレーザー光から、所定方向の直線偏光成分を有するビーム(照射光)を抽出する。偏光成分の調整をされたこのビームはガスセル13へ照射される。つまり、照射部11は、直線偏光成分を有する照射光を各方向に沿ったガスセル13に封入された気体原子(後述)に対して上記の3つの方向からそれぞれ照射する。
変調器12は、分岐路112によって3方向に照射されるビームの光強度(放射強度)を、各々対応する位相差を持つ周期信号である位相差周期信号を用いて変調する。この周期信号とは、例えば正弦波である。これにより、この3方向に照射されるビームの光強度は、上記の周期信号に示された周期でそれぞれ変動する。
ガスセル13は、気体原子が封入されたガラス製のセル(素子)である。ここで気体原子とは、例えばカリウム(K)や、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)などのアルカリ金属原子である。これら気体原子は、透過する光の偏光面を磁場の強さに応じて回転させる媒体としての性質を有する。ガスセル13は、変調器12から照射された上述のビームを透過させる。ガスセル13を透過した上述のビームは、光ファイバーなどにより計測器14に導かれる。なお、ガスセル13の材質はガラスに限られず、ビームを透過する材質であれば、樹脂などであってもよい。また、ガスセル13の内壁には炭化水素等によって非緩和コーティングがなされていてもよい。
図2は、ガスセル13を説明するための図である。図2において、ガスセル13が配置される空間はxyz右手系座標空間によって表される。この空間においてx軸に沿う方向をx軸方向という。また、x軸方向のうち、x成分が増加する方向を+x方向といい、x成分が減少する方向を−x方向という。同様に、y、z成分についても、y軸方向、+y方向、−y方向、z軸方向、+z方向、−z方向を定義する。
図2に示すように、ガスセル13の形状は略立方体であり、その各辺はx軸方向、y軸方向、およびz軸方向に沿っている。変調器12は、それぞれ+x方向、+y方向、および+z方向の3方向に沿って、それぞれビームBx、By、Bzをガスセル13に向けて照射する。したがって、ビームBx、By、Bzはそれぞれガスセル13の面に略直交するように指定された周期で照射される。
ここで、+x方向、+y方向、および+z方向の3方向にそれぞれ向かって伸びる単位ベクトルを合成したベクトルを想定する。そして、この合成されたベクトルに沿った方向を+w方向といい、この+w方向に向かって伸びる軸をw軸という。
図3は、w軸を説明するための図である。図3には、xyz座標空間がいわゆるキャビネット投影法により表示されている。このxyz座標空間におけるベクトルを(x,y,z)という成分によって表すと、x軸方向の単位ベクトルは(1,0,0)となり、y軸方向の単位ベクトルは(0,1,0)となり、z軸方向の単位ベクトルは(0,0,1)となる。これら3つの単位ベクトルを合成したベクトル(1,1,1)は、w軸方向に伸びる。ガスセル13には、予めこのw軸方向に決められた強さの磁場が印加されている。この磁場をバイアス磁場という。
図2に示すように、ビームBxは、矢印Dx方向に沿った直線偏光成分を有する。矢印Dx方向は、+y方向および+z方向の単位ベクトルを合成したベクトルに沿った方向である。すなわち、矢印Dx方向は、x軸方向に直交する方向である。ビームByは、矢印Dy方向に沿った直線偏光成分を有する。矢印Dy方向は、+z方向および+x方向の単位ベクトルを合成したベクトルに沿った方向である。すなわち、矢印Dy方向は、y軸方向に直交する方向である。ビームBzは、矢印Dz方向に沿った直線偏光成分を有する。矢印Dz方向は、+x方向および+y方向の単位ベクトルを合成したベクトルに沿った方向である。すなわち、矢印Dz方向は、z軸方向に直交する方向である。
磁場計測装置1は、上述した+x方向、+y方向、および+z方向の3方向にそれぞれ対応する計測器14を備える。3つの計測器14は、それぞれ対応する方向に照射されガスセル13を透過した上述のビームを受光する。そして、各計測器14は、ビームに含まれる直線偏光成分がガスセル13を透過して回転した回転量、すなわち、偏光面の回転角度をそれぞれ計測する。
加算器15は、各計測器14によって計測された各回転量を加算し、その加算値に対応した加算信号を出力する。図4は、加算器15の一例を示す図である。加算器15として、例えば図4に示す加算回路が用いられる。この加算回路は、x,y,z方向の各ビームについて、それぞれ偏光面の回転量を示す信号Sx,Sy,Szを加算して「Sx+Sy+Sz」として出力する。
アンプ16は、加算器15の出力した加算信号を増幅する増幅器であって、磁場計測装置1により構成されるフィードバック系のゲインと位相とを最適化するための回路を有する。VCO(voltage controlled oscillator)17は、電圧制御発振器であり、アンプ16の出力レベルを基に決定された発振周波数を示す周期信号を発生する。
VCO17により発生した周期信号は移相器19に入力される。移相器19は、VCO17により発生した周期信号に対してx軸方向、y軸方向、およびz軸方向に応じて予め定められた位相差を付与する。例えば、x軸方向に応じた位相差は0であり、y軸方向に応じた位相差は(2π/3)であり、z軸方向に応じた位相差は(4π/3)である。移相器19は、この位相差を付与した周期信号を位相差周期信号として出力する。
そして、上述したように変調器12は、照射部11が照射する各軸の照射光を、各々対応する位相差を持つ位相差周期信号を用いて変調する。これら各位相差周期信号は、移相器19により出力されたものである。
図5は、位相差周期信号を説明するための図である。図5に示すように、ビームBx、By、Bzの光強度は時間とともに、移相器19により出力されたそれぞれ対応する正弦波(位相差周期信号)に沿って変化する。ビームBx、By、Bzは、それぞれの位相差が等しくなるように制御されるため、各光強度は三相交流になる。なお、この位相差周期信号により示される周波数を、以下、変調周波数という。
1−2.動作
次に、磁場計測装置1による磁場の計測の動作を説明する。
図6は、ワンビーム方式の計測装置により磁場を計測する原理を説明するための図である。以下、図に示す座標記号のうち、内側が白い円の中に黒い円を描いた記号は、紙面奥側から手前側に向かう矢印を表している。ワンビーム方式の計測装置において、ガスセルに封入された気体原子に直線偏光が照射されると、気体原子が光ポンピングされ、エネルギーが変化した際に生じる磁気モーメントの確率分布は、球形の原点対称な分布から変化する。例えば、超微細構造準位F→F´=F−1のエネルギー遷移のときにおいて、気体原子の磁気モーメントの確率分布はその直線偏光の振動の向きに沿って伸びる領域R1に応じた形状となる。この確率分布をアライメントという。
すなわち、図6(a)に示すように、例えば電場の振動方向が+y方向に平行な矢印D0方向に沿っている直線偏光を、+x方向に向けて照射すると、この直線偏光が透過する気体原子には、y軸方向に沿った領域R1に分布するアライメントが生じる。ここに磁場が印加されると、磁場の方向を回転軸としてアライメントが回転する。この回転数は印加される磁場の強さに比例する。この運動を歳差運動という。気体原子のスピン偏極は、歳差運動と同時に系で決まる緩和作用が働いて定常状態を形成する。このスピン偏極の定常状態の方向が、透過する光の直線偏光の方向と異なる場合に、線形二色性により直線偏光の偏光面は回転する。
図6(b)には、−x方向に直線偏光の電場の振動方向を見たときの偏光面の回転角度φが示されている。この回転角度φが、+x方向の磁場の強さと相関があるため、この回転角度φを計測することにより、ガスセル13の内部におけるx軸方向の磁場の強さが求まる。なお、ワンビーム方式において、測定する磁場の方向DMは、光を照射する方向(図6では+x方向)となる。
図1に示したように磁場計測装置1はフィードバック系を構成する。このフィードバック系を動作させることで、印加される磁場の強さに比例した歳差運動周波数に同期して、気体原子への光の照射がなされる。これによりアライメントが増幅され、一種の共鳴状態となる。磁場が変動した場合には、この系はその変動に対応した周波数に追従する。すなわち、磁場計測装置1は、フィードバック回路を有することによって、フェーズロックドループを構成している。
例えば、w軸方向に上述したバイアス磁場が印加され、バイアス磁場以外の磁場が印加されていない場合を考える。変調器12が歳差運動周波数に対応した変調周波数で動作しているときには、いずれの軸に対しても、アライメントの向きと直線偏光が照射された時点での振動方向とが一致するため、計測器14が計測する回転角度はゼロとなり、安定状態となる。しかし、歳差運動周波数が変調周波数よりも遅い場合には、アライメントの向きと振動方向とが一致しないため、全ての計測器14の計測結果がプラスとなり、VCO17が発生させる信号の発振周波数が増大する。その結果、磁場計測装置1は、歳差運動周波数と変調周波数とが一致する方向に調整される。
一方、測定対象となる磁場が印加された場合、印加されたその磁場がバイアス磁場に合成された磁場ベクトルは、w軸と平行にならずに傾いた方向を向く。気体原子のアライメントは、この傾いた磁場ベクトルを軸として回転するため、各計測器14の計測する回転角度は、それぞれ異なる値を示す。この時の変調周波数と各計測器14の計測結果とに基づいて、磁場計測装置1は測定対象の磁場を算定する。
具体的には以下のとおりである。ここでは、いずれか1本のビームで磁化を飽和させた状態からビームを遮断した後、歳差運動させたときのアライメントを考える。また、横磁場はw軸方向の磁場成分に対して微小であると仮定する。図7は、この変形例において+w方向から−w方向を観察した光の振動方向とアライメントの配置を示す図である。
加磁場Bの横磁場がゼロであれば、ガスセル13に封入された気体原子は、歳差運動の作用が無い状態となる。この状態においてこの気体原子に向けて、z軸方向に伝搬し、矢印Dz方向に沿った直線偏光成分を有する照射光を照射すると、この照射光による光ポンピングによって生じるアライメントは、矢印Dz方向に向く。
一方、印加磁場Bに横磁場が存在する(ゼロでない)場合、アライメントはこれを軸として歳差運動し、その結果生じるアライメントの向く方向は矢印Dz2方向になるとする。
矢印Dz方向と矢印Dz2方向の差のベクトルをδMとする。このδMは、矢印Dz方向および矢印Dz2方向に比べて微小であると仮定するため、w軸を法線する平面内にあるとする。x軸およびy軸に対するアライメントに対しても同方向の変位δMが生じる。矢印Dz方向に沿った直線偏光成分を有する照射光によって計測器14に計測される値は、z軸を法線とする平面に矢印Dz2方向が示すベクトルを射影したベクトルと、矢印Dz方向が示すベクトルとのなす角度θ(図示せず)に比例する。近似を用いると、角度θはw軸を法線とする平面に向けてδMを射影した線分の長さに比例する。この線分は、z軸と直行し、w軸を法線とする平面内にある。δMの長さを規格化するとこの射影成分の長さは次の式(1)で示されるように、cosαである。
Figure 0005966351
矢印Dx方向と矢印Dy方向に対するビームに対する出力も線分の方向を変えることで、同様に算出すると、以下に示す式(2)および式(3)となる。
Figure 0005966351
Figure 0005966351
各式の右辺を加算すると任意のαに対してゼロとなる。つまり加算器15の処理が単純加算であるならば出力がゼロになるので、図1のフィードバック系が一定の周波数で安定する。印加磁場Bの大きさは変調周波数に対応し、その方向は各計測器14の出力から算出することが可能となる。
また、印加磁場Bがw軸と平行であり(つまり、印加磁場B横磁場が存在しない)、光ポンピングによる磁化の影響がない場合を考える。図8は、この変形例において印加磁場Bがw軸と平行なときの光の振動方向とアライメントの配置を示す図である。図8に示すように、矢印Dz方向に沿った直線偏光成分を有する照射光を照射すると、この照射光による光ポンピングによって生じるアライメントは、矢印Dz方向に向く。さらに、アライメントは、印加磁場Bを軸として回転する。この回転したアライメントと回転前のアライメントとの差のベクトルをδMzで表す。δMzの長さを規格化するとこの射影成分の長さは上述した式(1)で示されるように、cosαである。
この関係は全ての軸に対して同様の値をもつので、加算器15の処理が単純加算であるならば出力が3cosαとなる。この結果からVCO17の周波数変化を生じ、フィードバック系の作用により変調周波数と歳差運動周波数が一致するように調整される。
以上説明したとおり、磁場計測装置1は、1つの位置に印加された磁場の強さをその向きに関わらず計測する。また、磁場計測装置1は、1方向の光で1方向の磁場を計測するのではなく、複数方向の光を用いて磁場を計測するので、測定磁場に対応する+1次の共鳴周波数以外の周波数が混在し難い。そのため、磁場計測装置1を用いることで、出力レベルの低下が抑制される。
2.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
(1)上述した実施形態において、変調器12は、光源111が出力したレーザー光を、x,y,z方向に沿ったビームとしてそれぞれガスセル13に照射していたが、照射する方向は2方向であってもよいし、4方向以上であってもよい。この場合、移相器19は、各方向に照射するビームの位相間隔が均等になるように位相差周期信号を出力すればよい。
(2)上述した実施形態において、加算器15の加算信号はそのままアンプ16に入力されていたが、加算器15とアンプ16またはVCO17との間において、加算器15の加算信号のうち一部を除去するフィルター18を設けてもよい。図9は、この変形例における磁場計測装置1aの全体構成を示す図である。磁場計測装置1aは、加算器15からアンプ16までの間にフィルター18を備えている点が、上述した磁場計測装置1と異なる。フィルター18は、加算器15の出力した加算信号のうち、予め決められた閾値以上の成分(高域周波数成分)を除去し、その閾値未満の成分(低域周波数成分)をアンプ16に供給するローパスフィルターである。変調器12→ガスセル13→計測器14→加算器15→アンプ16→VCO17→変調器12というフィードバックの構成は、その構成ゆえに意図しない発振が生じうる場合があるが、フィルター18を設けることにより、そのような発振を除去することができる。
(3)上述した実施形態において、変調器12は、3方向のビームの光強度を、移相器19により出力されたそれぞれ対応する正弦波(位相差周期信号)を用いて変調していたが、位相差周期信号の形状は正弦波に限られない。例えば、変調器12は、3方向のビームの光強度をそれぞれ対応する矩形波や三角波に変調してもよい。この場合、移相器19が、これら矩形波、三角波などを出力すればよい。
(4)上述した実施形態において、磁場計測装置1は、気体原子が封入されたガラス製のセル(素子)であるガスセル13を備えていたが、透過する光の偏光面を磁場の強さに応じて回転させる媒体として、気体原子以外の媒体を用いてもよい。例えば、磁場計測装置1は、窒素による格子欠陥を設けたダイヤモンドといった固体素子を、上記の媒体として用いてもよい。
(5)上述した実施形態において、3本のビームの伝搬方向は互いに直交しており、電界の振動方向は直行していなかったが、任意の3方向の磁化方向を検出できればこの限りでない。例えば、分岐させた3本のビームに含まれる各直線偏光成分の振動方向が直交するように分岐路112を配置してもよい。
(6)上述した実施形態において、変調器12は、各ビームの光強度をそれぞれ対応する位相差周期信号を用いて変調していたが、各ビームの波長をこの位相差周期信号を用いて変調してもよい。ビームの波長を変更するとそのビームに含まれる光のうち、気体原子の励起に寄与する波長の光の量は増減する。また、ガスセル13におけるビームの透過率はその波長に応じて変わる場合がある。したがって、ビームの波長を変更するとガスセルを透過する光の量が増減する。つまり、変調器12は、波長を変調することによってビームの光強度を変調していることとなる。
(7)上述した実施形態において、加算器15は、各計測器14が計測した回転量を取得して加算し、その加算値に対応した加算信号を出力していたが、加算器15の行う加算はこれに限られない。例えば、加算器15は、各計測器14が計測した回転量をそれぞれ決められた期間にわたって取得して、その期間おける時間平均をそれぞれ算出して加算してもよい。なお、変形例2で示したフィルター18は、加算器15が備えていてもよく、例えば、この加算の前の時間平均に対して所定の高周波成分を除去するようにしてもよい。これにより、各計測器14が計測した回転量が短期間に変動しても、その影響が磁場計測に顕れ難く、その時間変動による誤差は抑制される。
(8)上述した実施形態において、照射部11は、光源111と分岐路112とを有していたが、分岐路112に代えて切り替え部112bと出射部113とを有していてもよい。図10は、この変形例における照射部11bを示す図である。出射部113は、x軸方向、y軸方向、およびz軸方向の各軸毎に設けられ、光ファイバーなどによって入力されたレーザー光を各軸に応じた方向に出射する。切り替え部112bは、信号を時分割多重化する装置であり、光源111の出力光を出射部113にサイクリックに順次切り替えて入射させる。これにより照射部11は、分岐路を有していなくてよい。また、照射部11は、光源111から出力されるレーザー光の光強度を下げずに、そのレーザー光を複数方向に照射する。
なお、上述したように切り替え部112bによって1つの光源を時分割でスイッチングするのではなく、複数のVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER;垂直共振器面発光レーザー)を用いて、それぞれを各ビームに割り当て、独立に変調させてもよい。
1,1a…磁場計測装置、11,11b…照射部、111…光源、112…分岐路、112b…切り替え部、113…出射部、12…変調器、13…ガスセル、14…計測器、15…加算器、16…アンプ、17…VCO、18…フィルター、19…移相器

Claims (7)

  1. 光の偏光面を磁場の強さに応じて回転させる媒体が封入されたガスセルと、
    直線偏光成分を有する照射光を前記ガスセルに対して、第1の方向と前記第1の方向とは異なる第2の方向とからそれぞれ照射する照射部と、
    前記ガスセルに入射前の前記照射光の直線偏光成分の偏光面に対する、前記ガスセルを通過後の前記照射光の直線偏光成分の偏光面の回転量を、前記第1の方向と前記第2の方向とに関してそれぞれ計測する計測器と、
    前記第1の方向に関する偏光面の回転量と前記第2の方向に関する偏光面の回転量とを加算し、その加算値に対応した加算信号を出力する加算器と、
    前記加算信号に応じた周波数の周期信号を発生する発振器と、
    前記周期信号に第1の位相差を付与して第1の位相差周期信号を出力し、前記周期信号に前記第1の位相差とは異なる第2の位相差を付与して第2の位相差周期信号を出力する移相器と、
    前記第1の位相差周期信号を用いて前記第1の方向から照射される前記照射光を変調し、前記第2の位相差周期信号を用いて前記第2の方向から照射される前記照射光を変調する変調器と、
    を具備することを特徴とする磁場計測装置。
  2. 前記加算信号の高域周波数成分を除去するフィルター
    を具備し、
    前記発振器は、前記高域周波数成分が除去された加算信号に応じた周波数の周期信号を発生する
    ことを特徴とする請求項1に記載の磁場計測装置。
  3. 前記変調器は、前記照射光の光強度を変調する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の磁場計測装置。
  4. 前記変調器は、前記照射光の波長を変調する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の磁場計測装置。
  5. 前記加算器は、前記各回転量を決められた期間にわたって取得して、当該期間おける時間平均をそれぞれ算出して加算する
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の磁場計測装置。
  6. 前記照射部は、直線偏光面を持つレーザー光を出力するレーザー光出力部と、前記レーザー光を分岐させる分岐路と、を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の磁場計測装置。
  7. 前記照射部は、直線偏光面を持つレーザー光を出力するレーザー光出力部と、入力された光を所定の方向に出射する複数の出射部と前記レーザー光を前記複数の出射部に順次切り替えて入射させる切り替え手段と
    を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の磁場計測装置。
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