JP5961049B2 - 光学フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電気・電子又は精密機器の表示部において、表示装置と組み合わせて用いられる光学フィルム及びその製造方法に関する。
近年、液晶ディスプレイ(LCD)は、テレビ(TV)用途又は動画表示用途で、表示装置として目覚ましい進歩を遂げ、急速に普及が進んでいる。例えば、高速応答性を有する液晶材料の開発や、オーバードライブなどの駆動方式の改良により、従来、液晶が苦手としていた動画表示を克服するとともに、表示の大型化に対応した生産技術革新も進んでいる。
これらのディスプレイにおいて、画質を重視するテレビやモニタなどの用途、外光の強い屋外で使用されるビデオカメラなどの用途では、外光の映り込みを防止する処理が表面に施されるのが通例である。その手法の一つに防眩処理があり、例えば、通常、液晶ディスプレイの表面には防眩処理がなされている。防眩処理は、表面に微細な凹凸構造を形成することにより、表面反射光を散乱し、映り込み像をぼかす効果を発現させる処理であり、通常、LCDには、このような処理をした防眩性フィルムが配設されている。
また、LCDと並んで、近年、普及が進んでいるプラズマディスプレイパネル(PDP)において、優れた透過画像を表示でき、かつ優れた防眩性を有する防眩性フィルムとして、特開2009−265143号公報(特許文献1)には、透明フィルムと、この透明フィルムの上に形成されるハードコート層からなる防眩性フィルムであって、前記ハードコート層中に(a)一次粒径が40〜200nmのシリカ微粒子と(b)一次粒径が1〜30nmのシリカ微粒子とバインダーとを含み、かつシリカ微粒子凝集構造を含み、前記防眩性フィルムのハードコート層側表面の中心線平均粗さRaが0.05〜0.3μm、凹凸周期λaが40〜200μm、前記防眩性フィルムのヘイズ値が0.1〜3.0%である防眩性フィルムが開示されている。この文献には、シリカ微粒子の含有量は、フィルム重量の0.05〜30%(特に0.2〜25%)と記載されている。また、シリカ微粒子の凝集構造の形成方法としては、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートなどの凝集剤を用いる方法が記載されている。実施例では、ハードコート材料100重量部に対して、1.5〜9重量部配合され、1.92〜2.02%のヘイズ及び46〜80μmの凹凸周期を有するハードコート層が形成されている。
しかし、この防眩性シートでは、シリカ微粒子の割合が多いため、ハードコート層の機械的特性が低下する。また、多量のシリカ微粒子を凝集させるため、凝集剤が必要であり、ブリードアウトの原因となる。さらに、防眩性も充分ではなく、強い光が映り込む環境下で視認性を向上するのは困難である。
一方、特許第4213989号公報(特許文献2)には、透明支持体の一方の面にハードコート層と反射防止層とが順次設けられた長尺のポリマーフィルムの前記一方の面に、金属製のエンボス版を有するエンボスローラにより凹凸形成加工を連続的に施して防眩性フィルムとする防眩性フィルムの製造方法において、前記エンボス版を、不規則な凹凸パターンになるように放電加工により作製し、前記エンボス版の表面の算術平均粗さRaを0.3〜1.0μmとし、平均凹凸周期RSmを5〜30μmとし、前記透明支持体に周面が接触して前記ポリマーフィルムを冷却するバックアップローラと、前記反射防止層に周面が接触して前記ポリマーフィルムを加熱する前記エンボスローラとにより前記ポリマーフィルムを狭持しながら搬送させ、前記ポリマーフィルムが狭持される狭持位置の上流では前記ポリマーフィルムを前記エンボスローラに巻き掛け、前記狭持位置の下流では前記ポリマーフィルムを前記バックアップローラに巻き掛けることを特徴とする防眩性フィルムの製造方法が開示されている。
しかし、この防眩性フィルムでは、エンボス板の調製が困難である上に、製造工程が煩雑であり、生産性が低い。さらに、防眩性も充分ではなく、強い光が映り込む環境下で視認性を向上するのは困難である。
特開2009−265143号公報(特許請求の範囲、段落[0028]、実施例) 特許第4213989号公報(請求項1)
従って、本発明の目的は、生産性が高く、防眩性に優れた光学フィルム及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、映り込みを抑制でき、視認性に優れた光学フィルム及びその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、耐擦傷性及び機械的特性にも優れた光学フィルム及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、凝集剤などのブリードアウトが抑制された光学フィルム及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、透明フィルムの上に形成されたハードコート層の表面に、硬化性樹脂前駆体及びナノファイバーを含む硬化性組成物の硬化物で微細な凹凸構造を形成することにより、防眩性に優れた光学フィルム(特に防眩フィルム)を高い生産性で製造できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の光学フィルムは、透明フィルムと、この透明フィルムの上に形成されたハードコート層とを含む光学フィルムであって、前記ハードコート層が、硬化性樹脂前駆体及びナノファイバーを含む硬化性組成物の硬化物で形成され、かつ前記ハードコート層の表面に、凹凸の平均間隔Sm5〜40μm及び十点平均粗さRz0.8〜2.5μmの凹凸構造が形成されている。
本発明の光学フィルムは、反射散乱光プロファイルにおける散乱角0°の散乱光強度(I)に対する散乱角10°の散乱光強度(I10)の比(I10/I)が0.05〜0.7、散乱角0°の散乱光強度(I)に対する散乱角20°の散乱光強度(I20)の比(I20/I)が0.01〜0.5の範囲にあってもよい。また、反射散乱光プロファイルにおける散乱角5°の散乱光強度(I)に対する散乱角15°の散乱光強度(I15)の比(I15/I)は0.3〜0.8、散乱角5°の散乱光強度(I)に対する散乱角20°の散乱光強度(I20)の比(I20/I)は0.2〜0.6、散乱角5°の散乱光強度(I)に対する散乱角30°の散乱光強度(I30)の比(I30/I)は0.15〜0.4の範囲にあってもよい。さらに、視感度反射率Yは4%以下であってもよい。
本発明の光学フィルムにおいて、前記ナノファイバーはセルロースナノファイバーであってもよい。前記硬化性組成物は、さらに無機ナノ粒子(特に金属酸化物粒子)を含んでいてもよい。前記硬化性樹脂前駆体は、ケイ素含有多官能(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。前記ナノファイバーの割合は、硬化性樹脂前駆体100重量部に対して0.01〜3重量部程度であってもよい。前記硬化性組成物は、さらにエチレン性不飽和結合を有さない高分子(特にセルロース誘導体)を含んでいてもよい。前記ハードコート層は凝集剤を実質的に含有しなくてもよい。前記ナノファイバーは10〜500nmの平均繊維径及び1〜20μmの平均繊維長を有していてもよい。
本発明には、透明フィルムの上に、ハードコート層を形成するための塗工液を塗布し、乾燥後、活性エネルギー線を照射して硬化する前記光学フィルムの製造方法も含まれる。
本発明では、透明フィルムの上に形成されたハードコート層の表面が、硬化性樹脂前駆体及びナノファイバーを含む硬化性組成物の硬化物で形成された微細な凹凸構造を有するため、防眩性に優れた光学フィルムが高い生産性で得られる。特に、この光学フィルムは、細かい凹凸を有する表面の形状により反射率を低下できるとともに、反射散乱光を散乱角15°以上の広角側に散乱させることにより散乱角0〜5°付近の散乱光強度が低いため、映り込みを抑制でき、視認性に優れており、強い光が映り込む環境下でも視認性に優れたディスプレイの表示が得られる。すなわち、周辺の環境が変化した場合でも安定した表示の視認性が得られるため、カーナビゲーション用ディスプレイ、スマートフォン、タブレットパーソナルコンピュータ(PC)等のディスプレイ表面として最適である。また、蛍光灯や窓等の強い光が映りこむような環境下に設置されても映り込みがほとんどないため、PCモニターやテレビを含む各種のディスプレイの表面シートとしても適している。
また、ハードコート層を硬化性樹脂前駆体及びナノファイバーを含む硬化性組成物の硬化物で形成されているため、耐擦傷性及び機械的特性も向上できる。さらに、凝集剤を配合することなく、優れた光学特性を発現する凹凸構造を形成できるため、凝集剤などのブリードアウトが抑制された光学フィルムが得られる。
[ハードコート層]
本発明の光学フィルムは、透明フィルムの上に形成されたハードコート層を含む。このハードコート層は、硬化性樹脂前駆体及びナノファイバーを含む硬化性組成物の硬化物で形成されており、表面に微細な凹凸構造を有している。
(ハードコート層の表面構造)
具体的には、表面の凹凸構造は、凹凸の平均間隔Smが5〜40μmであり、好ましくは8〜38μm、さらに好ましくは10〜35μm(特に12〜32μm)程度であってもよい。Smが小さすぎると、防眩性が低下し、映り込みも発生し易く、Smが大きすぎると、ギラツキが発生し易くなる。
前記凹凸構造の十点平均粗さRzは0.8〜2.5μmであり、好ましくは0.85〜2.3μm、さらに好ましくは0.9〜2μm(特に1〜1.8μm)程度であってもよい。Rzが小さすぎると、防眩性が低下し、映り込みも発生し易く、Rzが大きすぎると、画像の鮮明性が低下し、製造も困難となる。
本発明では、Smが小さいにも拘わらず、比較的大きなRzを有しているため、反射率を低下できるとともに、反射散乱光を広角側に散乱できるため、映り込みを抑制でき、視認性に優れており、強い光が映り込む環境下でも視認性を向上できる。
なお、本発明では、これらの凹凸の平均間隔Sm及び十点平均粗さRzは、JIS B0601に準拠した方法で測定できる。
(硬化性組成物)
表面に前記凹凸構造が形成されたハードコート層は、透明で、かつ硬質な材料で形成されていればよく、光学特性及び機械的特性に優れたハードコート層を簡便に製造できる点から、硬化性樹脂前駆体及びナノファイバーを含む硬化性組成物の硬化物で形成されている。硬化性組成物の硬化物で形成されることにより耐擦傷性などの機械的特性を向上できるともに、ナノファイバーを含有することにより、光学特性を損なうことなく、簡便な方法で、前記凹凸構造を形成できる。
(A)硬化性樹脂前駆体
硬化性樹脂前駆体としては、熱や活性エネルギー線(紫外線や電子線など)などにより反応する官能基を有する化合物であり、熱や活性エネルギー線などにより硬化又は架橋して樹脂(特に硬化又は架橋樹脂)を形成可能な種々の硬化性化合物が使用できる。前記樹脂前駆体としては、例えば、熱硬化性化合物又は樹脂[エポキシ基、重合性基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、シラノール基などを有する低分子量化合物(例えば、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂など)]、活性光線(紫外線など)により硬化可能な光硬化性化合物(光硬化性モノマー、オリゴマーなどの紫外線硬化性化合物など)などが例示でき、光硬化性化合物は、EB(電子線)硬化性化合物などであってもよい。なお、光硬化性モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい光硬化性樹脂などの光硬化性化合物を、単に「光硬化性樹脂」という場合がある。
光硬化性化合物には、例えば、単量体、オリゴマー(又は樹脂、特に低分子量樹脂)が含まれる。単量体は、例えば、1つの重合性基を有する単官能単量体と、少なくとも2つの重合性基を有する多官能単量体とに分類できる。
単官能単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系単量体、ビニルピロリドンなどのビニル系単量体、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの橋架環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
多官能単量体には、2〜8程度の重合性基を有する多官能単量体が含まれ、2官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの橋架環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
3〜8官能単量体としては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
オリゴマー又は樹脂としては、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなど)、ポリエステル(メタ)アクリレート(例えば、脂肪族ポリエステル型(メタ)アクリレート、芳香族ポリエステル型(メタ)アクリレートなど)、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート(ポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレートなど)、シリコーン(メタ)アクリレートなどが例示できる。これらの(メタ)アクリレートオリゴマー又は樹脂には、スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などの共重合性単量体が含まれていてもよい。これらの光硬化性化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
また、硬化性樹脂前駆体は、ヘイズを抑制できるとともに、屈折率も調整でき、視認性も向上できる点から、前記ケイ素非含有硬化性樹脂前駆体(特にケイ素非含有多官能(メタ)アクリレート)に加えて、ケイ素含有多官能(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。
ケイ素含有多官能(メタ)アクリレートとしては、シリコーン(メタ)アクリレートが汎用される。シリコーン(メタ)アクリレートは、通常、オルガノシロキサン単位[−Si(R)−O−](基Rは置換基を示す)を有しており、Si原子(又はオルガノシロキサン単位)の数は、1分子中に1以上(例えば、1〜30、好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15程度)であってもよい。また、(メタ)アクリロイル基の数は、1分子中に2以上(例えば、2〜20、好ましくは2〜15、さらに好ましくは2〜10程度)であってもよい。
シリコーン(メタ)アクリレートは、モノマーであってもよく、オリゴマー(又はプレポリマー)であってもよく、モノマー及びオリゴマーを組み合わせて使用してもよい。また、オリゴマー(プレポリマー)は、複数の(−Si−O)結合を有するポリシロキサン系オリゴマーであってもよく、加水分解縮合性基(例えば、メトキシ、エトキシなどのC1−4アルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子など)を有するシリコーン(メタ)アクリレートモノマーの加水分解縮合による2量体、3量体などの多量体であってもよい。
代表的なシリコーン(メタ)アクリレートとしては、1分子中に1つのSi原子を有するシリコーンモノ乃至テトラ(メタ)アクリレート、1分子中に2つのSi原子を有するシリコーンテトラ乃至ヘキサ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
これらのシリコーン(メタ)アクリレートのうち、1分子中に複数(例えば、2〜10個、好ましくは3〜8個、さらに好ましくは4〜7個程度)の(メタ)アクリロイル基と、1又は複数(例えば、1〜20個、好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜6個程度)のSi原子を有するシリコーン(メタ)アクリレート成分[例えば、シリコーンジ乃至ヘキサ(メタ)アクリレート、好ましくはシリコーントリ乃至ヘキサ(メタ)アクリレート]が好ましい。なお、シリコーンジ(メタ)アクリレートは、商品名「EBECRYL350」(ダイセル・サイテック(株)製)などとして入手でき、シリコーンヘキサ(メタ)アクリレートは、商品名「EBECRYL1360」(ダイセル・サイテック(株)製)などとして入手できる。
さらに、硬化性樹脂前駆体は、ハードコート層の強度を向上する点などから、フッ素原子を含有する硬化性化合物を含んでいてもよい。フッ素原子を含有する前駆体(フッ素含有硬化性化合物)としては、前記単量体及びオリゴマーのフッ化物、例えば、フッ化アルキル(メタ)アクリレート[例えば、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートやトリフルオロエチル(メタ)アクリレートなど]、フッ化(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[例えば、フルオロエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フルオロプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、フッ素含有エポキシ樹脂、フッ素含有ウレタン系樹脂などが挙げられる。
好ましい硬化性樹脂前駆体は、短時間で硬化できる光硬化性化合物、例えば、紫外線硬化性化合物(モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい樹脂など)、EB硬化性化合物である。特に、実用的に有利な樹脂前駆体は、紫外線硬化性樹脂である。さらに、耐擦傷性を向上させるため、光硬化性樹脂は、2官能以上(好ましくは2〜10官能、さらに好ましくは3〜8官能程度)の光硬化性化合物、特に、多官能(メタ)アクリレート、例えば、3官能以上(特に4〜8官能)の(メタ)アクリレート(例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなど)を含むのが好ましい。特に、5〜7官能(メタ)アクリレートと、2〜4官能(メタ)アクリレート[特に、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3〜4官能(メタ)アクリレート]とを組み合わせてもよく、両者の割合(重量比)は、例えば、前者/後者=100/0〜1/99、好ましくは90/10〜10/90、さらに好ましくは80/20〜20/80程度であり、微細な凹凸を形成し易い点から、例えば、90/10〜50/50(特に80/20〜60/40)程度であってもよい。
さらに、ケイ素非含有多官能(メタ)アクリレート(特に、5〜7官能(メタ)アクリレートと、2〜4官能(メタ)アクリレートとの組み合わせ)に対して、ケイ素含有多官能(メタ)アクリレートを組み合わせるのが好ましい。ケイ素含有多官能(メタ)アクリレートの割合は、ケイ素非含有多官能(メタ)アクリレート100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部(特に0.15〜0.5重量部)程度である。ケイ素含有多官能(メタ)アクリレートの割合が少なすぎると、ヘイズを低下する効果が小さく、多すぎると、ムラが発生し易くなる。
硬化性樹脂前駆体の数平均分子量としては、例えば、5000以下、好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下程度である。
硬化性樹脂前駆体は、その種類に応じて、硬化剤を含んでいてもよい。例えば、熱硬化性樹脂では、アミン類、多価カルボン酸類などの硬化剤を含んでいてもよく、光硬化性樹脂では光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、慣用の成分、例えば、アセトフェノン類又はプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類などが例示できる。光硬化剤などの硬化剤の含有量は、硬化性樹脂前駆体100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜8重量部(特に1〜5重量部)程度であり、3〜8重量部程度であってもよい。
さらに、硬化性樹脂前駆体は硬化促進剤を含んでいてもよい。例えば、光硬化性樹脂は、光硬化促進剤、例えば、第三級アミン類(ジアルキルアミノ安息香酸エステルなど)、ホスフィン系光重合促進剤などを含んでいてもよい。
(B)ナノファイバー
ナノファイバーは、無機繊維であってもよいが、調製し易い点などから、有機繊維が好ましい。有機繊維としては、天然繊維(例えば、セルロース、シルク、羊毛繊維など)、再生繊維(例えば、タンパク質又はポリペプチド繊維、アルギン酸繊維など)、瀝青炭質繊維(ピッチ系繊維など)、合成繊維(熱硬化性樹脂繊維、熱可塑性樹脂繊維など)などが挙げられる。これらの有機繊維のうち、繊維長が短いナノファイバーを調製し易い点から、セルロース繊維が好ましい。
セルロースナノファイバーとしては、例えば、β−1,4−グルカン構造を有する多糖類で形成されている限り、特に制限されず、高等植物由来のセルロース繊維[例えば、木材繊維(針葉樹、広葉樹などの木材パルプなど)、竹繊維、サトウキビ繊維、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなど)、ジン皮繊維(例えば、麻、コウゾ、ミツマタなど)、葉繊維(例えば、マニラ麻、ニュージーランド麻など)などの天然セルロース繊維(パルプ繊維)など]、動物由来のセルロース繊維(ホヤセルロースなど)、バクテリア由来のセルロース繊維、化学的に合成されたセルロース繊維[セルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどの有機酸エステル;硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロースなどの無機酸エステル;硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロースなど);カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロースなど);アルキルセルロース(メチルセルロース、エチルセルロースなど);再生セルロース(レーヨン、セロファンなど)などのセルロース誘導体繊維など]などが挙げられる。これらのセルロースナノファイバーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
これらのセルロースナノファイバーのうち、生産性が高く、適度な繊維径及び繊維長を有する点から、植物由来のセルロース繊維、例えば、木材繊維(針葉樹、広葉樹などの木材パルプなど)や種子毛繊維(コットンリンターパルプなど)などのパルプ由来のセルロース繊維が好ましい。
ナノファイバー(特にセルロースナノファイバー)の平均繊維径は、ナノメータサイズであれば特に限定されないが、例えば、10〜500nmであり、好ましくは30〜400nm、さらに好ましくは50〜300nm(特に100〜250nm)程度である。平均繊維径が小さすぎると、凹凸構造を形成するのが困難となる。平均繊維径が大きすぎると、微細な凹凸構造を形成するのが困難となる。本発明では、粒径の大きな粒子を用いることなく、ナノメータサイズのファイバーを用いて特定の条件で製造することにより、微細な凹凸構造を形成できる。
さらに、繊維径分布の標準偏差は、均一な凹凸構造を形成できる点から、例えば、80nm以下(例えば、1〜80nm)、好ましくは3〜50nm、さらに好ましくは5〜40nm(特に10〜30nm)程度であってもよいさらに、最大繊維径も500nm未満であってもよく、例えば、30〜400nm、好ましくは40〜300nm、さらに好ましくは50〜200nm程度であってもよい。
なお、本発明において、前記平均繊維径、繊維径分布の標準偏差、最大繊維径は、電子顕微鏡写真に基づいて測定した繊維径(n=20程度)から算出した値である。
ナノファイバー(特にセルロースナノファイバー)の平均繊維長は0.1〜30μm程度であり、例えば、0.5〜20μm(例えば、1〜20μm)、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは2〜8μm(特に2.5〜6μm)程度である。平均繊維長が小さすぎると、凹凸構造を形成するのが困難となる。平均繊維長が大きすぎると、凹凸構造が大きくなり過ぎて、反射率が高くなる。
さらに、平均繊維径に対する平均繊維長の比(平均繊維長/平均繊維径)(平均アスペクト比)は2〜100程度であり、例えば、3〜50、好ましくは5〜30、さらに好ましくは10〜25(特に10〜20)程度である。本発明では、このように、ナノサイズの平均径を有するとともに、比較的短い繊維長及び低いアスペクト比を有するナノファイバーを用いることにより、微細な凹凸構造を形成できる。
このような繊維サイズを有するナノファイバーは、慣用の方法で製造でき、セルロースナノファイバーの場合、ホモジナイズ処理(ホモジナイザーなど)、叩解処理(ディスクリファイナー、ビーズミルなど)、超音波処理などの機械的なフィブリル化処理によって製造してもよい。さらに、機械的なフィブリル化処理工程の後、酸やアルカリの存在下で加水分解処理してもよい。フィブリル化処理の方法としては、例えば、特公昭60−19921号公報、特開2007−84713号公報、特開2008−169497号公報、特開2011−26760号公報、特開2012−25833号公報、特開2012−36517号公報、特開2012−36518号公報に記載の方法などに記載の方法も利用できる。
ナノファイバーの横断面形状(繊維の長手方向に垂直な断面形状)は、特に限定されないが、セルロースナノファイバーの場合、バクテリアセルロースのような異方形状(扁平形状)であってもよいが、植物由来のナノファイバーの場合、通常、略等方形状である。略等方形状としては、例えば、真円形状、正多角形状などであり、略円形状の場合、短径に対する長径の比(平均アスペクト比)は、例えば、1〜2、好ましくは1〜1.5、さらに好ましくは1〜1.3(特に1〜1.2)程度である。
ナノファイバー(特にセルロースナノファイバー)は、硬化性組成物中において、水又はアルコール(イソプロパノールなど)に分散させて、分散液(又は懸濁液)の状態に調製されてもよい。分散液における固形分濃度は、例えば、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは0.2〜10重量%(特に0.3〜5重量%)程度である。
ナノファイバー(特にセルロースナノファイバー)の割合は、硬化性樹脂前駆体100重量部に対して、例えば、0.1〜4重量部程度の範囲から選択できるが、光学特性を低下させず、微細な凹凸構造を形成できる点から、例えば、0.2〜3重量部、好ましくは0.5〜2.5重量部、さらに好ましくは1〜2.3重量部程度である。ナノファイバーの割合が少なすぎると、凹凸構造を形成するのが困難となる。ナノファイバーの割合が多すぎると、光学特性が低下する。
(C)エチレン性不飽和結合を有さない高分子
硬化性組成物は、柔軟性などの機械的特性を向上させるために、さらに硬化性樹脂前駆体の硬化反応に関与するエチレン性不飽和結合を有さない高分子を含んでいてもよい。
このような高分子としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン樹脂、ゴム又はエラストマーなどが例示できる。これらの高分子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの高分子のうち、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル、セルロース誘導体などが汎用されるが、透明性及び耐熱性に優れるとともに、柔軟性などの機械的特性も向上できる点から、セルロース誘導体が好ましい。
セルロース誘導体には、セルロースエステル類、セルロースエーテル類、セルロースカーバメート類が含まれる。
セルロースエステル類としては、例えば、脂肪族有機酸エステル(セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート;セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのC2−6アシレートなど)、芳香族有機酸エステル(セルロースフタレート、セルロースベンゾエートなどのC7−12芳香族カルボン酸エステル)、無機酸エステル類(例えば、リン酸セルロース、硫酸セルロースなど)などが例示できる。セルロースエステル類は、酢酸・硝酸セルロースエステルなどの混合酸エステルであってもよい。
セルロースエーテル類としては、例えば、シアノエチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロース;メチルセルロース、エチルセルロースなどのC1−6アルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース又はその塩、ベンジルセルロース、アセチルアルキルセルロースなどが例示できる。セルロースカーバメート類としては、例えば、セルロースフェニルカーバメートなどが例示できる。
これらのセルロース誘導体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのセルロース誘導体のうち、セルロースエステル類、特に、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2−6アシレートが好ましい。なかでも、溶剤のへの溶解性が高く、塗工液の調製がし易い上に、少量の添加によって塗工液の粘度調節が容易にできるとともに、塗工液でのセルロースナノファイバーの凝集を抑制し、保存安定性を高めるため、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2−4アシレート(特に、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースアセテートC3−4アシレート)が好ましい。
前記高分子の割合は、硬化性樹脂前駆体100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部(例えば、0.1〜5重量部)、さらに好ましくは0.2〜3重量部(特に0.3〜2重量部)程度である。前記高分子の割合は、ナノファイバー100重量部に対して、例えば、5〜200重量部、好ましくは10〜100重量部、さらに好ましくは20〜70重量部程度である。本発明では、前記高分子の割合を調整することにより、ハードコート性と機械的特性とのバランスを調整でき、この範囲にあると、両者のバランスに優れる。
(D)無機粒子
硬化性組成物は、透明性などの光学特性を改良する点などから、さらに無機粒子を含んでいてもよい。
無機粒子の形状としては、特に制限されず、例えば、球状、楕円体状、多角体形(多角錘状、正方体状、直方体状など)、板状、棒状、不定形状などが挙げられる。これらの形状のうち、光学特性などの点から、略球状などの等方形状が好ましい。
無機粒子の平均一次粒径は、1〜60nm(例えば、1〜50nm)、好ましくは2〜30nm、さらに好ましくは3〜15nm(特に5〜10nm)程度である。無機粒子の平均粒径が小さすぎると、ヘイズや反射率を低減する効果が低下する。無機粒子の平均粒径が大きすぎると、表面の凹凸構造に影響を与え、光学特性が低下する。
無機粒子としては、例えば、金属単体、金属酸化物、金属硫酸塩、金属珪酸塩、金属リン酸塩、金属炭酸塩、金属水酸化物、ケイ素化合物、フッ素化合物、天然鉱物などが挙げられる。無機粒子は、カップリング剤(チタンカップリング剤、シランカップリング剤)により表面処理されていてもよい。これらの無機粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの無機粒子のうち、透明性などの点から、酸化チタンなどの金属酸化物粒子、酸化ケイ素などのケイ素化合物粒子、フッ化マグネシウムなどのフッ素化合物粒子などが好ましく、ヘイズを抑制でき、耐擦傷性にも優れる点から、金属酸化物粒子が特に好ましい。さらに、金属酸化物粒子は、低屈折率層などとの密着性も向上できる。
金属酸化物粒子を構成する金属酸化物としては、例えば、周期表第4A族金属酸化物(例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウムなど)、第5A族金属酸化物(酸化バナジウムなど)、第6A族金属酸化物(酸化モリブデン、酸化タングステンなど)、第7A族金属酸化物(酸化マンガンなど)、第8族金属酸化物(酸化ニッケル、酸化鉄など)、第1B族金属酸化物(酸化銅など)、第2B族金属酸化物(酸化亜鉛など)、第3B族金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化インジウムなど)、第4B族金属酸化物(酸化錫など)、第5B族金属酸化物(酸化アンチモンなど)などが挙げられる。
これらの金属酸化物粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの金属酸化物粒子のうち、アンチモン、錫、亜鉛を含む金属酸化物、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン含有酸化錫(アンチモンドープ酸化錫)、酸化錫、酸化亜鉛などが好ましく、アンチモン含有酸化錫、酸化アンチモン、酸化錫及び酸化亜鉛からなる群から選択された少なくとも一種で構成された微粒子(特にアンチモン含有酸化錫粒子(ATO粒子))が特に好ましい。
無機粒子は、硬化性組成物中において、溶媒中に分散された分散液の形態であってもよい。溶媒としては、例えば、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。金属酸化物粒子の場合、エタノールやイソプロパノールなどの低級アルコール(例えば、重量比で、エタノール/イソプロパノール=90/10〜50/50(特に80/20〜60/40)程度の混合溶媒)が汎用される。分散液中の無機粒子の固形分濃度は、例えば、0.1〜50重量%、好ましくは1〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%程度である。無機粒子の表面は、これらの溶媒に分散させるために、慣用の表面処理がされていてもよい。
無機粒子の割合は、硬化性樹脂前駆体100重量部に対して、例えば、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部(特に0.8〜2重量部)程度である。無機粒子の割合は、ナノファイバー100重量部に対して、例えば、10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部、さらに好ましくは30〜100重量部程度である。無機粒子の割合が少なすぎると、光学特性の改良効果が小さい。無機粒子の割合が多すぎると、機械的特性が低下するとともに、防眩性が弱まる。
(E)他の添加剤
硬化性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤は、熱重合開始剤(ベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物などの熱ラジカル発生剤)であってもよく、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)であってもよい。好ましい重合開始剤は、光重合開始剤である。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類又はプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類などが例示できる。光重合開始剤には、慣用の光増感剤や光重合促進剤(例えば、第三級アミン類など)が含まれていてもよい。光重合開始剤の割合は、硬化性樹脂前駆体100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜8重量部(特に1〜5重量部)程度であってもよい。
溶媒は、前記硬化性樹脂前駆体及び前記高分子の種類及び溶解性に応じて選択でき、少なくとも固形分(硬化性樹脂前駆体、前記高分子、反応開始剤、その他添加剤)を均一に溶解できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)など)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などが例示できる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、混合溶媒であってもよい。
これらの溶媒のうち、メチルエチルケトンなどのケトン類、ブタノールなどのアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのセロソルブ類が好ましく、これらを混合してもよい。例えば、前記ケトン類と、前記アルコール類及び/又は前記セロソルブ類とを、前者/後者=90/10〜10/90、好ましくは80/20〜30/70、さらに好ましくは70/30〜50/50程度の割合(重量比)で混合してもよい。
溶媒の割合は、硬化性樹脂前駆体100重量部に対して10〜1000重量部程度の範囲から選択でき、例えば、50〜1000重量部、好ましくは100〜800重量部、さらに好ましくは200〜500重量部程度である。
硬化性組成物には、ハードコート層の光学特性を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、有機粒子、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、界面活性剤、水溶性高分子、充填剤、架橋剤、カップリング剤、着色剤、難燃剤、滑剤、ワックス、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤などが含まれていてもよい。
特に、硬化性組成物は、凝集剤を用いることなく、凹凸構造を形成でき、光学特性などの点から、実質的に凝集剤(例えば、特開2009−265143号公報に記載の微粒子の凝集剤など)を含有していない組成物が好ましい。
硬化性組成物(硬化性樹脂前駆体)は、熱硬化性組成物であってもよいが、短時間で硬化できる光硬化性化合物、例えば、紫外線硬化性化合物、EB硬化性化合物であってもよい。特に、実用的に有利であり、かつ凹凸構造を形成し易い樹脂前駆体は、紫外線硬化性樹脂である。
ハードコート層の厚みは、例えば、0.5〜30μm、好ましくは1〜25μm、さらに好ましくは3〜20μm(特に5〜15μm)程度である。
[透明フィルム]
透明フィルム(又は基材フィルム)としては、ガラス、セラミックスの他、樹脂シートが例示できる。透明フィルムを構成する樹脂としては、前記ハードコート層と同様の樹脂が使用できる。好ましい透明フィルムとしては、透明性ポリマーフィルム、例えば、セルロース誘導体[セルローストリアセテート(TAC)、セルロースジアセテートなどのセルロースアセテートなど]、ポリエステル系樹脂[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアリレート系樹脂など]、ポリスルホン系樹脂[ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど]、ポリエーテルケトン系樹脂[ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなど]、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、環状ポリオレフィン系樹脂[トパス(TOPAS)(登録商標)、アートン(ARTON)(登録商標)、ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)など]、ハロゲン含有樹脂(ポリ塩化ビニリデンなど)、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレンなど)、酢酸ビニル又はビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコールなど)などで形成されたフィルムが挙げられる。透明フィルムは1軸又は2軸延伸されていてもよい。
これらのフィルムは、用途に応じて適宜選択でき、光学フィルムをタッチパネルの上部電極基板(指又はペンなどの押圧部材と接触する側の電極基板)に用いる場合は、可撓性が必要であるため、プラスチックシート又はフィルム(未延伸又は延伸プラスチックシート又はフィルム)を利用できる。
光学的に等方性の透明フィルムには、ガラス、未延伸又は延伸プラスチックシート又はフィルムが例示でき、例えば、ポリエステル(PET、PBTなど)、セルロース誘導体類、特に、セルロースエステル類(セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースアセテートC3−4アシレートなど)などで形成されたシート又はフィルムが好ましい。特に、ハードコート層の熱可塑性樹脂としてセルロース誘導体を使用した場合、透明フィルムとしてセルロース誘導体で構成されたフィルムを用いると、両者の密着性も向上できる。
透明フィルムの厚みは、例えば、5〜2000μm、好ましくは15〜1000μm、さらに好ましくは20〜500μm程度の範囲から選択できる。
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、前記ハードコート層を有することにより、反射散乱光を散乱角15°以上の広角側に散乱させることにより散乱角0〜5°付近の散乱光強度が低いため、映り込みを抑制でき、視認性に優れている。
すなわち、本発明の光学フィルムにおいて、反射散乱光プロファイルにおける散乱角0°の散乱光強度(I)に対する散乱角10°の散乱光強度(I10)の比(I10/I)は、例えば、0.05〜0.7、好ましくは0.08〜0.65、さらに好ましくは0.1〜0.6程度である。
散乱角0°の散乱光強度(I)に対する散乱角20°の散乱光強度(I20)の比(I20/I)は、例えば、0.01〜0.5、好ましくは0.04〜0.45、さらに好ましくは0.1〜0.42程度である。
散乱角5°の散乱光強度(I)に対する散乱角15°の散乱光強度(I15)の比(I15/I)は、例えば、0.3〜0.8、好ましくは0.4〜0.7、さらに好ましくは0.45〜0.65程度である。
散乱角5°の散乱光強度(I)に対する散乱角20°の散乱光強度(I20)の比(I20/I)は、例えば、0.2〜0.6、好ましくは0.3〜0.5、さらに好ましくは0.35〜0.48程度である。
散乱角5°の散乱光強度(I)に対する散乱角30°の散乱光強度(I30)の比(I30/I)は、例えば、0.15〜0.4、好ましくは0.18〜0.35、さらに好ましくは0.2〜0.32程度である。
本発明の光学フィルムは、微細な凹凸構造を有し、反射率を低下できるため、映り込みを抑制できる。すなわち、反射率(視感度反射率Y)は5%以下であってもよく、例えば、4%以下(例えば、3.5%以下)、好ましくは1〜3.5%、さらに好ましくは1.5〜3%(特に2〜3%)程度であってもよい。
本発明の光学フィルムは、高い防眩性を有するにも拘わらず、高い透明性も有しており、JIS K7136に準拠した全光線透過率は、例えば、80%以上であってもよく、例えば、85〜99%、好ましくは90〜98%、さらに好ましくは92〜97%(特に93〜96%)程度である。
本発明の光学フィルムは、JIS K7136に準拠したヘイズは、例えば、10〜80%、好ましくは20〜75%、さらに好ましくは30〜70%程度であってもよい。
本発明の光学フィルムの透過像鮮明度は、0.125mm幅の光学櫛を使用した場合、すなわち、光学櫛幅0.125mmの透過像鮮明度は、例えば、1〜30%、好ましくは2〜20%、さらに好ましくは3〜15%程度である。
光学櫛幅0.25mmの透過像鮮明度は、例えば、1〜30%、好ましくは2〜20%、さらに好ましくは3〜15%程度である。
光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度は、例えば、1〜30%、好ましくは2〜20%、さらに好ましくは3〜15%程度である。
光学櫛幅1mmの透過像鮮明度は、例えば、2〜40%、好ましくは3〜30%、さらに好ましくは5〜20%程度である。
光学櫛幅2mmの透過像鮮明度は、例えば、2〜60%、好ましくは3〜50%、さらに好ましくは5〜40%程度である。
透過像鮮明度とは、膜を透過した光のボケや歪みを定量化する尺度である。透過像鮮明度は、膜からの透過光を移動する光学櫛を通して測定し、光学櫛の明暗部の光量により値を算出する。すなわち、膜が透過光をぼやかす場合、光学櫛上に結像されるスリットの像は太くなるため、透過部での光量は100%以下となり、一方、不透過部では光が漏れるため0%以上となる。透過像鮮明度の値Cは光学櫛の透明部の透過光最大値Mと不透明部の透過光最小値mから次式により定義される。
C(%)=[(M−m)/(M+m)]×100
すなわち、Cの値が100%に近づく程、透明導電性膜による像のボケが小さい[参考文献;須賀、三田村,塗装技術,1985年7月号]。
本発明の光学フィルム(特に、防眩フィルムとして利用される光学フィルム)は、ハードコート層の上に、表面反射率を下げるために、さらに低屈折率層を形成してもよい。低屈折率層を前記ハードコート層の上に積層することにより、液晶表示装置などの表示装置において、低屈折率層を最表面となるように配設した場合などに、外部からの光(外部光源など)が、光学フィルムの表面で反射するのを有効に防止できる。
[光学フィルムの製造方法]
本発明の光学フィルムは、ハードコート層の表面に前記凹凸構造を形成できる限り、特に限定されず、慣用の方法を利用できる。ハードコート層が硬化性組成物の硬化物で形成されている場合、本発明の光学フィルムは、透明フィルムの上に、硬化性組成物を含む塗工液を塗布し、乾燥後、活性エネルギー線を照射して硬化することにより得ることができる。
塗工液は、通常、前記硬化性樹脂前駆体とナノファイバーと溶媒と必要に応じてエチレン性不飽和結合を有さない高分子や無機粒子とを含む混合液(特に均一溶液などの液状組成物)で構成されている。好ましい態様では、前記混合液として、光硬化性化合物と、セルロースナノファイバーと、セルロース誘導体と、金属酸化物粒子と、光重合開始剤と、前記光硬化性化合物及びセルロース誘導体を可溶な溶媒とを含む組成物が使用される。本発明では、セルロースナノファイバーを塗工液中で、慣用の方法により均一に分散するのが好ましく、例えば、塗工液を超音波で処理してもよい。
混合液中の溶質(硬化性樹脂前駆体、ナノファイバー、前記高分子、無機粒子、反応開始剤、その他添加剤)の濃度は、流延性やコーティング性などを損なわない範囲で選択でき、例えば、1〜80重量%、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは15〜50重量%程度である。
なお、透明フィルムに前記混合液を塗布すると、溶媒の種類によっては透明フィルムが溶解又は膨潤する場合がある。例えば、トリアセチルセルロースフィルムに、樹脂成分を含有する塗布液(均一溶液)を塗布すると、溶媒の種類によって、トリアセチルセルロースフィルムの塗布面が溶出、侵食若しくは膨潤する場合がある。このような場合、透明フィルム(トリアセチルセルロースフィルムなど)の塗布面に予め耐溶剤性コーティング剤を塗布し、光学的に等方性の耐溶剤性コーティング層を形成していてもよい。このようなコーティング層は、例えば、AS樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)などの熱可塑性樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、紫外線硬化型樹脂などの硬化性樹脂などを用いて形成できる。また、混合液又は塗布液を透明支持体に塗布する場合、透明フィルムの種類に応じて、透明フィルムを溶解・侵食若しくは膨潤しない溶媒を選択してもよい。
塗布方法としては、慣用の方法、例えば、スプレー、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター法、ディップ法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、バーコーター法やグラビアコーター法などが汎用される。なお、必要であれば、塗布液は複数回に亘り塗布してもよい。
前記混合液を流延又は塗布した後、溶媒を蒸発させる。溶媒の蒸発は、通常、例えば、溶媒の沸点に応じて、30〜200℃程度の範囲から選択できるが、本発明では、ハードコート層の表面に特定の凹凸構造を形成するために、乾燥温度が重要であり、硬化性樹脂前駆体の種類により選択できるが、例えば、80℃以下(例えば、20〜75℃)、好ましくは30〜70℃、さらに好ましくは40〜60℃(特に45〜60℃)程度である。乾燥温度が高すぎると、粘度低下により高い凹凸構造を形成するのが困難である。
本発明では、塗工液が凝集剤を含有していないにも拘わらず、塗工液中に分散したナノファイバーが硬化性組成物の硬化とともに適度に凝集し、核となって樹脂成分が隆起し、表面に微細な凹凸構造を形成すると推定できる。
このような凹凸構造が形成されたハードコート層は、活性光線(紫外線、電子線など)や熱などにより最終的に硬化し、硬化樹脂を形成する。前駆体の硬化は、硬化性樹脂前駆体の種類に応じて、加熱、光照射などを組合せてもよい。これらのうち、特定の凹凸構造を形成し易い点から、光照射が好ましい。光照射は、光硬化成分などの種類に応じて選択でき、通常、紫外線、電子線などが利用できる。
光源としては、例えば、紫外線の場合は、Deep UV ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザーなどの光源)などを用いることができる。照射光量(照射エネルギー)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、50〜10000mJ/cm、好ましくは70〜7000mJ/cm、さらに好ましくは100〜5000mJ/cm程度であってもよい。
電子線の場合は、電子線照射装置などの露光源によって、電子線を照射する方法が利用できる。照射量(線量)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、1〜200kGy(グレイ)、好ましくは5〜150kGy、さらに好ましくは10〜100kGy(特に20〜80kGy)程度である。加速電圧は、例えば、10〜1000kV、好ましくは50〜500kV、さらに好ましくは100〜300kV程度である。
これらの光源のうち、汎用的な露光源は、通常、紫外線照射装置である。なお、光照射は、必要であれば、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。特に、光硬化を利用した場合、前駆体を硬化させることにより直ちに固定化できるだけでなく、透明フィルムの内部から熱によりオリゴマーなどの低分子成分が析出することも抑制できる。さらに、ハードコート層に耐擦傷性を付与でき、タッチパネルに用いた場合、操作を繰り返しても表面構造の損傷などが抑制でき、耐久性を向上できる。
ハードコート層の上に、さらに低屈折率層を形成する場合も、通常、前記ハードコート層と同様の方法で、塗工液を塗布又は流延した後、活性光線や熱などを用いて硬化することにより形成できる。
本発明では、ハードコート層に対する他の層(例えば、低屈折率層や透明導電層など)の密着性を向上させるために、ハードコート層を表面処理に供してもよい。表面処理としては、慣用の表面処理、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾンや紫外線照射処理などが挙げられる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で得られた透明導電性膜を以下の項目で評価した。
[ヘイズ及び全光線透過率(TPP)]
ヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH−5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。
[透過像(写像)鮮明度]
光学フィルムの写像鮮明度を、写像測定器(スガ試験機(株)製、商品名「ICM−1T」)を用いて、JIS K7105に基づき、フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるようにフィルムを設置して測定を行った。写像測定器の光学櫛のうち、0.125〜2mm幅の光学櫛における写像鮮明度を測定した。
[反射率(視感度反射率Y)]
光学フィルムの透明フィルム側に黒フィルムを貼り合わせ、積分球反射強度測定装置((株)日立ハイテクノロジーズ製、U−3300)を用いて、積分反射率(視感度換算)を測定した。
[散乱強度]
測定サンプルの透明フィルム側に黒フィルムを貼り合わせ、光散乱測定装置((株)村上色彩技術研究所製「変角光度計GP−200」)を用いて反射散乱光を測定した。入射光角度をフィルムの法線から−10°として、5mm径に絞られた白色光源をフィルムへ入射し、受光機を変角して表面反射散乱光を測定した。なお、受光角度は、反射光が0°を中心に略対称となるように、フィルム法線から10°の位置を0°とした。
[凹凸の平均間隔Sm、十点平均粗さRz]
JIS B0601に準拠して、非接触表面形状測定システム((株)菱化システム製「VertScan2.0」を用いて、凹凸の平均間隔Sm、十点平均粗さRzを測定した。
[鉛筆硬度]
JIS K5400に準拠し、荷重4.9Nで鉛筆硬度を測定した。
[映り込みの評価]
表示面における映り込みの判定は、得られた光学フィルムの透明フィルム側に黒フィルムを貼り合わせ、蛍光灯の光を映り込ませ、目視にて以下の基準で評価した。
◎:蛍光灯の存在が確認できない
○:蛍光灯の存在がわずかに確認できる
×:蛍光灯の存在がはっきりと確認できる。
[ギラツキの評価]
表示面におけるギラツキの判定は、6.4型XGA液晶ディスプレイ(画素数1024×768)上に、得られた光学フィルムを配設し、白表示として目視にて以下の基準で評価した。なお、用いたLCDディスプレイの表層側偏光板は、クリアタイプの偏光板であった。
◎:ギラツキが感じられない
○:ギラツキが僅かに感じられる
×:ギラツキが感じられる。
[塗工液の調製]
(ハードコート層塗工液:SNC−1)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製「DPHA」、屈折率1.51)70重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製「PETIA」、屈折率1.51)30重量部及びセルロースプロピオネートアセテート(イーストマン社製「CAP−482−20」、アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75,000)1.0重量部を、2−ブタノン(MEK)290重量部、1−メトキシ−2−プロパノール(MMPG)185重量部および1−ブタノール(BuOH)25重量部の混合液に溶解した。この溶液に、光重合開始剤A(チバ・ジャパン(株)製「イルガキュア184」)2重量部及び光重合開始剤B(チバ・ジャパン(株)製「イルガキュア907」)1重量部を加えて溶解した。さらに、この溶液に、セルロースナノファイバー((株)ダイセル製、平均繊維径約200nm、平均繊維長さ約5μm、2重量%のイソプロパノール分散液)を100重量部加え、30分間超音波をかけて分散を行い、ハードコート層塗工液:SNC−1を調製した。
(ハードコート層塗工液:SNC−2)
さらにATO粒子[日揮触媒化成(株)製「ELCOM SH−1212ATV」、粒径8nm、20重量%のアルコール(エタノール/イソプロパノール=80/20(重量比)の混合溶媒)分散液]を5重量部添加する以外はSNC−1と同様にしてハードコート層用塗工液:SNC−2を調製した。
(ハードコート層塗工液:SNC−3)
さらにシリコーンアクリレート(六官能シリコーン含有アクリル系UV硬化モノマー、ダイセルサイテック(株)製「EBECRYL1360」)を0.02重量部添加する以外はSNC−2と同様にしてハードコート層用塗工液:SNC−3を調製した。
(ハードコート層塗工液:SNC−4)
シリコーンアクリレートの添加量を0.05重量部に変更する以外はSNC−3と同様にしてハードコート層用塗工液:SNC−4を調製した。
(ハードコート層塗工液:SNC−5)
シリコーンアクリレートの添加量を0.2重量部に変更する以外はSNC−3と同様にしてハードコート層用塗工液:SNC−5を調製した。
(ハードコート層塗工液:SNC−6)
さらにシリコーンアクリレート0.02重量部を添加する以外はSNC−1と同様にしてハードコート層用塗工液:SNC−6を調製した。
(ハードコート層塗工液:SNC−7)
ATO粒子の添加量を2.5重量部に変更する以外はSNC−6と同様にしてハードコート層用塗工液:SNC−7を調製した。
(ハードコート層塗工液:SNC−8)
さらにATO粒子5重量部及びシリコーンアクリレート0.1重量部を添加する以外はSNC−1と同様にしてハードコート層用塗工液:SNC−8を調製した。
(ハードコート層塗工液:SNC−9)
さらにATO粒子6重量部及びシリコーンアクリレート0.1重量部を添加する以外はSNC−1と同様にしてハードコート層用塗工液:SNC−9を調製した。
(ハードコート層塗工液:SNC−10)
セルロースナノファイバーの添加量を90重量部に変更する以外はSNC−2と同様にしてハードコート層用塗工液:SNC−10を調製した。
(ハードコート層塗工液:AG−1)
PETIA21重量部、DPHA9重量部、ポリメチルメタクリレート(PMMA、分子量75,000)3重量部、光重合開始剤A1.98重量部、光重合開始剤B0.33重量部、透光性第一微粒子(単分散アクリルビーズ、粒径4.6μm、屈折率1.535)4.95重量部、透光性第二微粒子(スチレンビーズ、粒径3.5μm、屈折率1.60)0.33重量部、シリコーン系レベリング剤(大日精化(株)製「10−28」)0.0132重量部と、トルエン及びシクロヘキサノンの混合溶媒(トルエン:シクロヘキサノン=8:2)とを、全固形分が42重量%となるように添加して十分混合し、ハードコート層塗工液:AG−1を調製した。
(ハードコート層塗工液:AG−2)
PETIA21重量部、DPHA9重量部、PMMA3重量部、光重合開始剤A1.98重量部、光重合開始剤B0.33重量部、透光性第一微粒子8重量部、透光性第二微粒子0.33重量部、シリコーン系レベリング剤0.0132重量部と、トルエン及びシクロヘキサノンの混合溶媒(トルエン:シクロヘキサノン=8:2)とを、全固形分が42重量%となるように添加して十分混合し、ハードコート層塗工液:AG−2を調製した。
(ハードコート層塗工液:AG−3)
PETIA21重量部、DPHA9重量部、PMMA3重量部、光重合開始剤A1.98重量部、光重合開始剤B0.33重量部、透光性第一微粒子4.95重量部、透光性第二微粒子0.6重量部、シリコーン系レベリング剤0.0132重量部と、トルエン及びシクロヘキサノンの混合溶媒(トルエン:シクロヘキサノン=8:2)とを、全固形分が42重量%となるように添加して十分混合し、ハードコート層塗工液:AG−3を調製した。
実施例1
透明フィルムとして、トリアセチルセルロールフィルム(富士フイルム(株)製「TAC」、厚み80μm)を用い、このフィルムの上に、ハードコート層塗工液SNC−1をバーコーター#18を用いて塗工した後、50℃で1分間乾燥させた。塗工フィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:800mJ/cm)に通して、紫外線硬化処理を行い、ハードコート性及び表面凹凸構造を有する層を形成した。得られた光学フィルムにおけるハードコート層の厚みは約8μmであった。
実施例1〜8,参考例1〜2及び比較例1〜3
ハードコート層塗工液SNC−1の代わりに、ハードコート層塗工液SNC−2〜10、AG1〜3を用いる以外は、参考例1と同様にして光学フィルムを作製した。なお、ハードコート層の厚みは、実施例1〜8及び参考例1及び2が約7μm、比較例1〜3が約6μmであった。
実施例及び比較例で得られた光学フィルムについて、各種特性を測定した結果を表1〜3に示す。
Figure 0005961049
Figure 0005961049
Figure 0005961049
表1〜3の結果から明らかなように、実施例の光学フィルムは、光学特性及び機械的特性に優れる。一方、比較例の光学フィルムは、光学特性が低い。
本発明の光学フィルムは、種々の表示装置、例えば、液晶表示(LCD)装置、陰極管表示装置、有機又は無機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、表面電界ディスプレイ(SED)、リアプロジェクションテレビディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル付き表示装置などの表示装置に利用される光学フィルムとして利用できる。
これらのうち、本発明の光学フィルムは、PCモニターやテレビを含む各種のディスプレイに有用であり、周辺の環境に影響されずに防眩性を発揮できるため、カーナビゲーション用ディスプレイ、スマートフォン、タブレットパーソナルコンピュータ(PC)等のディスプレイ及びタッチパネル付き表示装置の防眩フィルムとして特に有用である。

Claims (9)

  1. 透明フィルムと、この透明フィルムの上に形成されたハードコート層とを含む光学フィルムであって、前記ハードコート層が、硬化性樹脂前駆体ナノファイバー、無機ナノ粒子及びセルロースエステルを含む硬化性組成物の硬化物で形成され、かつ前記ハードコート層の表面に、凹凸の平均間隔Sm5〜40μm及び十点平均粗さRz0.8〜2.5μmの凹凸構造が形成されており、前記硬化性組成物が、10〜500nmの平均繊維径及び1〜20μmの平均繊維長を有するナノファイバーを、硬化性樹脂前駆体100重量部に対して0.01〜3重量部の割合で含む、光学フィルム。
  2. 反射散乱光プロファイルにおける散乱角0°の散乱光強度(I)に対する散乱角10°の散乱光強度(I10)の比(I10/I)が0.05〜0.7、散乱角0°の散乱光強度(I)に対する散乱角20°の散乱光強度(I20)の比(I20/I)が0.01〜0.5の範囲にある請求項1記載の光学フィルム。
  3. 反射散乱光プロファイルにおける散乱角5°の散乱光強度(I)に対する散乱角15°の散乱光強度(I15)の比(I15/I)が0.3〜0.8、散乱角5°の散乱光強度(I)に対する散乱角20°の散乱光強度(I20)の比(I20/I)が0.2〜0.6、散乱角5°の散乱光強度(I)に対する散乱角30°の散乱光強度(I30)の比(I30/I)が0.15〜0.4の範囲にある請求項1又は2記載の光学フィルム。
  4. 視感度反射率Yが4%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルム。
  5. ナノファイバーがセルロースナノファイバーである請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルム。
  6. 無機ナノ粒子が金属酸化物で形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルム。
  7. 硬化性樹脂前駆体が、ケイ素含有多官能(メタ)アクリレートを含む請求項1〜のいずれかに記載の光学フィルム。
  8. ハードコート層が凝集剤を実質的に含有しない請求項1〜のいずれかに記載の光学フィルム。
  9. 透明フィルムの上に、ハードコート層を形成するための塗工液を塗布し、乾燥後、活性エネルギー線を照射して硬化させ、請求項1記載の光学フィルム製造する方法であって、前記塗工液が、硬化性樹脂前駆体、ナノファイバー、無機ナノ粒子及びセルロースエステルを含む硬化性組成物を含み、かつ10〜500nmの平均繊維径及び1〜20μmの平均繊維長を有するナノファイバーを、硬化性樹脂前駆体100重量部に対して0.01〜3重量部の割合で含む硬化性組成物を含む、製造方法
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