JP5954725B2 - 疲労亀裂検出方法および疲労亀裂検出塗料組成物 - Google Patents
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Description
特許文献1には、地震等で被災したコンクリート構造物の破損箇所を直ちに的確に把握することを目的として、空気等と反応する液体等からなる反応体を包囲体に封入したセンサをコンクリート構造物の内部または表面に配置する構成が記載されている。
特許文献2には、ブレーキホースの損傷を確実に視認することを目的として、ゴム製のホース体内に識別充填層を形成する構成が記載されている。
特許文献3には、建物の劣化診断を容易に行うことを目的として、内装材の内部に着色液体が封入された複数のカプセルを設ける構成が記載されている。
しかし、これら特許文献1〜3に記載されている構成はいずれも、損傷を検出するための手段を予め構造物内に設けるものであり、船舶等の疲労亀裂を検出する方法として用いることはできない。
そこで、本発明は、疲労亀裂に起因しない誤発色がなく、かつ褪色による視認性の低下が生じない信頼性の高い疲労亀裂の検出方法、並びに、それに用いる疲労亀裂検出塗料組成物を提供することを目的としている。
上記の構成により、その内部にペースト状流動体を収納したマイクロカプセルが基材の表面近傍に位置している状態を維持し、基材に生じた疲労亀裂にマイクロカプセル内のペースト状流動体を作用させることができる。また、形成された黒色標を視認することによって、基材における疲労亀裂の発生および進展を容易に検出することができる。
なお、表面近傍とは、基材の表面から発生した疲労亀裂の進展によりマイクロカプセルに生じた亀裂が到達し得るマイクロカプセルの空間を含めた範囲をいう。
上記の構成により、基材に生じた疲労亀裂にペースト状流動体が作用して生じる黒色を呈する部分の視認性が良好となる。また、塗料組成物を基材の表面に塗布し硬化または固化させた場合に、疲労亀裂の発生していない部分に生じた塗料組成物層の割れを原因として流出したペースト状流動体と、基材の疲労亀裂とペースト状流動体との作用により生じる黒色を呈する部分との違いが明確になる。
請求項3記載の本発明は、請求項1または請求項2に記載の疲労亀裂検出方法において、前記マイクロカプセルは、透明/半透明あるいは白色/淡色系の材料をもって構成したことを特徴とする。
上記の構成により、割れていないマイクロカプセルと、基材の疲労亀裂とペースト状流動体との作用により生じる黒色を呈する部分との違いが明確になる。
上記の構成により、流体状樹脂組成物において、疲労亀裂とペースト状流動体との作用により生じる黒色を呈する部分とそれ以外の部分との明暗比(コントラスト)等を大きくすることができる。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5のうちの1項に記載の疲労亀裂検出方法において、前記ペースト状流動体の粘度を7000cP〜35000cP(センチポワズ)としたことを特徴とする。
上記の構成により、基材などに生じた疲労亀裂とペースト状流動体との作用による黒い呈色を良好にすることができる。
上記の構成により、疲労亀裂検出塗料組成物を基材の表面に塗布し固化または硬化させた場合、基材の表面近傍に固定的にマイクロカプセルを維持し、基材に生じた疲労亀裂にマイクロカプセル内のペースト状流動体を作用させることが可能となる。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の疲労亀裂検出塗料組成物において、前記微粒子の粒径が1μm〜40μmであり、前記マイクロカプセルの粒径とその組み合わせを適宜設定したことを特徴とする。
請求項10に記載の本発明は、請求項7から請求項9のうちの1項に記載の疲労亀裂検出塗料組成物において、前記ペースト状流動体の粘度を7000cP〜35000cP(センチポワズ)としたことを特徴とする。
請求項11に記載の本発明は、請求項7から請求項10のうちの1項に記載の疲労亀裂検出塗料組成物において、前記マイクロカプセルと前記流体状樹脂組成物との重量比率を、マイクロカプセル:流体状樹脂組成物=20:80〜60:40に設定したことを特徴とする。
上記の構成により、基材などに生じた疲労亀裂とペースト状流動体との作用による黒い呈色を良好にすることができる。
また、塗料組成物を基材の表面に塗布し硬化または固化させることで、ペースト状流動体を収納したマイクロカプセルをより金属製の基材の表面近傍に固定的に臨ませることが可能となり、例えば、重力等により時間経過とともにペースト状流動体を収納したマイクロカプセルが偏在することにより疲労亀裂を十分に検出できない部分が生じることを防ぐことができる。
本発明の第1の実施形態につき、図1〜図4を参照して以下に説明する。
図1は、本実施形態による疲労亀裂検出方法のフローチャートである。同図に示すように、本実施形態の疲労亀裂検出方法は、金属製の基材の硬度以上の硬度を有する金属または金属酸化物の微粒子を含むペースト状流動体を収納手段の閉ざされた空間に収納し、収納手段を金属製の基材の表面近傍に固定的に臨ませるステップ(S10、以下、適宜「固定ステップ」という。)と、疲労亀裂の進展に伴う収納手段に生じた亀裂からのペースト状流動体の流動による疲労亀裂に対する作用により疲労亀裂を検出するステップ(S20、以下、適宜「検出ステップ」という。)と、を有している。
例えば、金属製の基材表面に塗布してペースト状流動体を臨ませる構成とした場合、(1)外圧を受けてペースト状流動体の量が不足する部分が生じること、(2)垂直面に適用した部分が重力により流動してペースト状流動体の塗布厚が不足する部分が生じること、(3)水流や接触などの外部からの物理的要因によりペースト状流動体が除去されたりすることなどが起こりうる。したがって、正確な検出のために必要な量のペースト状流動体が存在していない領域において疲労亀裂が発生した場合、正確に検出することができない。
しかし、固定ステップにおいてペースト状流動体を収納した収納手段を金属製の基材の表面近傍に固定的に臨ませることにより、上述した外圧、重力および物理的要因などの影響によって、金属製の基材の表面近傍のペースト状流動体の量が変動することを防止することができる。このため、疲労亀裂を正確に検出することが可能となる。
黒色標22は疲労亀裂21の亀裂面で研削された基材20の微細粉末が顕著な黒色を呈しているものであり、この黒色の微細粉末は水や油に溶けない一種の顔料であるので、染料のような紫外線による褪色を生じない。
本実施形態では、収納手段としてマイクロカプセルを用いる疲労亀裂検出方法および疲労亀裂検出塗料組成物について、図4および図5を参酌して説明する。上述した実施形態と機能が同じ部材およびステップには同じ番号を付し、本実施形態では説明を省略する。
図5は本実施形態による疲労亀裂検出方法を段階的かつ模式的に示す断面図である。
図5(a)は、固定ステップ(S10、図1参照)において、基材20の表面に塗料組成物10が設けられた状態を示している。同図に示す通り、疲労亀裂の発生が懸念される基材20の表面に、マイクロカプセル12と流体状樹脂組成物16とを混合して得られた塗料組成物10を塗布して硬化または固化させ、疲労亀裂検出用の被覆膜を形成しておく。このように、マイクロカプセル12と流体状樹脂組成物16とを混合して塗料組成物10を生成し、塗料組成物(疲労亀裂検出塗料組成物)10を基材20の表面に塗布し、流体状樹脂組成物16を硬化または固化させることにより、マイクロカプセルを基材20の表面近傍に固定的に臨ませることができる。
上述した疲労亀裂検出方法に用いられる塗料組成物である本実施形態の疲労亀裂検出塗料組成物について、以下に説明する。
また、ペースト状流動体11の粘度は、7000cP〜35000cP(センチポワズ)とすることが好ましい。なお、1000cP=10P=1Pa・s(パスカル秒)である。
この構成により、ペースト状流動体11が疲労亀裂21に入り込むのに適した量、粘度となり、基材20に生じた疲労亀裂21とペースト状流動体11との作用による黒色標22による呈色が良好となる。
なお、微細粒14の粒径は、マイクロカプセル12の粒径との組み合わせに応じて、適宜設定すればよい。
また、基材表面にペースト状流動体を直接塗布した場合、ペースト状流動体を周囲の環境から保護するために必要となるプライマー樹脂組成物による保護層の形成が不要となる。したがって、マイクロカプセル12を含む塗料組成物10を用いることにより、固定ステップ(S10、図1参照)を塗布と硬化または固化の1回として、工数を少なくすることができる。さらに、用いるペースト状流動体の量を少なくすることもできる。
本実施形態では、収納手段としてマイクロカプセル以外を用いる疲労亀裂検出方法について、図6〜図9を参酌して説明する。上述した実施形態と機能が同じ部材およびステップには同じ番号を付し、本実施形態では説明を省略する。
上記の構成によっても、図8(a)に示す基材20(収納手段)の孔26(収納手段の空間)と外部とを連通する部分に疲労亀裂21(収納手段の亀裂)が生じた場合、黒色標22により疲労亀裂21を容易に検出することができる。また、リベット29(封止手段、締結手段、収納手段)や関連部品に疲労亀裂21が生じた場合も同様に黒色標22により検出することができる。
また、基材表面にペースト状流動体を直接塗布した場合に必要となるプライマー樹脂組成物が不要となる。
表1は疲労亀裂検出塗料組成物の実施例1〜4としての亀裂検出塗料組成物の構成を示している。
試験番号(1)〜(3)は、アルミニウム合金JIS規格A5083P−Oの切欠き付き平板試験片による、疲労亀裂検出方法の実施例である。試験片の形状寸法を図10に示す。同図に示すように、試験片の中央部に、直径2mmの穴を形成し、その穴を起点として、幅0.3mmで長さ10mmの人工切欠きを放電加工により形成した。試験片の切欠き部および亀裂の進展が予想される亀裂進展経路に疲労亀裂検出塗料組成物を塗布した。繰り返し荷重振幅1.6tonf、繰り返し周波数4.2Hzで疲労試験を行い、亀裂進展に伴う疲労亀裂検出塗料組成物の発色状況を観察した。
試験片の形状寸法は、試験番号(1)〜(3)と同じく、図10に示す通りである。繰り返し荷重振幅3.75tonf、繰り返し周波数4.2Hzで疲労試験を行い、疲労亀裂進展に伴う疲労亀裂検出塗料組成物の発色状況を観察した。
図14は試験番号(5)の荷重繰り返し数N=1.920×106回における発色状況を示す図面代用写真である。図15は、試験番号(5)の荷重繰り返し数 N=2.288×106回における発色状況を示す図面代用写真である。図14および図15において、(b)は(a)の発色部を拡大して示したものである。
これら図面代用写真に示すように、実施例4の亀裂検出塗料組成物は、角回し溶接継手試験片における疲労亀裂進展に伴い良好に発色し、溶接止端部の疲労亀裂を外部から容易に目視検出できるものであった。
11 ペースト状流動体
12 マイクロカプセル(収納手段)
13 マイクロカプセル殻
14 微細粒(微粒子)
15 粘性油
16 流体状樹脂組成物(固化または硬化後)
20 基材(収納手段)
21 疲労亀裂(収納手段の亀裂)
22 黒色標
25 内部空間(収納手段の空間)
26、36 孔(収納手段の空間)
27 ボルト(封止手段、締結手段、収納手段)
28 ナット(封止手段、締結手段、収納手段)
29 リベット(封止手段、締結手段、収納手段)
30 他材(収納手段)
41 空間(収納手段の空間)
Claims (11)
- 金属製の基材の表面に発生する疲労亀裂を検出する方法であって、
前記金属製の基材の硬度以上の硬度を有する金属または金属酸化物の微粒子を含むペースト状流動体を、前記疲労亀裂の進展に伴い亀裂を生じることが可能なマイクロカプセルの閉ざされた空間に収納し、
流体状樹脂組成物と前記マイクロカプセルとを混合して、硬化時または固化時に前記疲労亀裂の進展に伴い塗膜亀裂を生じることが可能な塗料組成物として生成し、前記塗料組成物を前記基材の表面に塗布し硬化または固化させて前記マイクロカプセルを前記金属製の基材の表面近傍に固定的に臨ませ、
前記疲労亀裂の進展に伴う前記マイクロカプセルに生じた前記亀裂からの前記ペースト状流動体の流動による前記疲労亀裂に対する作用により前記基材から生じた黒色の微細粉が前記亀裂及び前記塗膜亀裂を通って外部へ出て形成された黒色標を視認することにより、前記疲労亀裂を検出したことを特徴とする疲労亀裂検出方法。 - 前記微粒子は白色または淡色系のセラミックス粉末であることを特徴とする請求項1に記載の疲労亀裂検出方法。
- 前記マイクロカプセルは、透明/半透明あるいは白色/淡色系の材料をもって構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の疲労亀裂検出方法。
- 前記流体状樹脂組成物は白色または淡色系であることを特徴とする請求項1から請求項3のうちの1項に記載の疲労亀裂検出方法。
- 前記微粒子の粒径が1〜40μmであることを特徴とする請求項1から請求項4のうちの1項に記載の疲労亀裂検出方法。
- 前記ペースト状流動体の粘度を7000cP〜35000cP(センチポワズ)としたことを特徴とする請求項1から請求項5のうちの1項に記載の疲労亀裂検出方法。
- 請求項1から請求項4のうちの1項に記載の疲労亀裂検出方法に用いられる塗料組成物であって、
金属製の基材の硬度以上の硬度を有する金属または金属酸化物の微粒子を含むペースト状流動体を収納したマイクロカプセルと、
流体状樹脂組成物とを混合させて生成したことを特徴とする疲労亀裂検出塗料組成物。 - 前記マイクロカプセルの粒径は10μm〜1000μmであることを特徴とする請求項7に記載の疲労亀裂検出塗料組成物。
- 前記微粒子の粒径が1μm〜40μmであり、前記マイクロカプセルの粒径とその組み合わせを適宜設定したことを特徴とする請求項8に記載の疲労亀裂検出塗料組成物。
- 前記ペースト状流動体の粘度を7000cP〜35000cP(センチポワズ)としたことを特徴とする請求項7から請求項9のうちの1項に記載の疲労亀裂検出塗料組成物。
- 前記マイクロカプセルと前記流体状樹脂組成物との重量比率を、マイクロカプセル:流体状樹脂組成物=20:80〜60:40に設定したことを特徴とする請求項7から請求項10のうちの1項に記載の疲労亀裂検出塗料組成物。
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