JP5932328B2 - Lfs活性が抑制されたタマネギの判定方法 - Google Patents

Lfs活性が抑制されたタマネギの判定方法 Download PDF

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Description

本発明は、催涙性の低減及び有用な生理作用の向上が期待される、催涙成分生成酵素(LFS)の活性が抑制されたタマネギを判定する方法に関する。
タマネギは古くから世界中で広く食されている野菜の一つであり、人に対して有効な生理作用を示すことに関しては多くの報告がある(非特許文献1)。さらに、2002年に催涙成分生成酵素(LFS)が発見され、タマネギの催涙成分(LF)であるpropanthial S-oxideが、前駆物質であるS-1-プロペニル-システインスルフォキシド(PRENCSO)に酵素アリイナーゼが作用して1-プロペニルスルフェン酸(E-1-propenylsulfenic acid)となり、1-プロペニルスルフェン酸がLFSにより異性化されて生じる機構が明らかとなった(図6)。このため、LFSの活性が抑制されたタマネギでは、タマネギ中の有用成分の量が増加し、有用な生理作用が高められていることが期待される(非特許文献2)。加えて、LFS活性が抑制されたタマネギは催涙性が抑制されたタマネギである。
LFS活性が抑制されたタマネギを簡便に判定するためには、タマネギ中のLFS活性を評価する手法が必要である。出願人は、未公開の特許出願特願2011-59569の段落0025、0026において、LFS活性測定対象タマネギの抽出液に、精製されたアリイナーゼと、精製されたPRENCSOとを添加して酵素基質反応を開始させ、生成したLFを定量することにより、LF生成量に基づいてLFS活性を評価する方法を記載している。
また特許文献1には、ネギ属植物の辛さを推定する指標としてLFSを定量することが記載されている。同文献ではLFSを、LFSに特異的な抗体を用いた酵素免疫測定法(ELISA)により定量することが開示されている。
一方、過去に行われた研究で、PRENCSOのアリイナーゼ分解物は、1-プロペニルスルフェン酸であることや、この1-プロペニルスルフェン酸から誘導されるチオスルフィネートは不安定なため、短時間でZwiebelanesと呼ばれる化合物に変化することが報告されていた (非特許文献4)。さらに、RNAi技術を用いて作出したLFS活性抑制タマネギについての成分分析の結果から、LFS活性抑制タマネギでは、通常のタマネギに比べてチオスルフィネート量が増加していることや、Zwiebelane isomerと呼ばれる成分が増加していることが確認されている(非特許文献3)。しかしながら、タマネギ粉砕物中における当該化合物の生成量と、タマネギのLFS活性との相関関係までは明らかにされていない。
特開2010-78361号公報
Griffiths G et al.; Onions-A Global Benefit to Health. Phytother. Res. 16, 603-615 (2002) Imai S et al.; An onion enzyme that makes the eyes water. Nature 419, 685 (2002). Eady C. C. et al.; Silencing Onion Lachrymatory Factor Synthase Causes a Significant Change in the Sulfur Secondary Metabolite Profile. Plant Physiology, 147, 2096-2106 (2008). Block E et al.; The Organosulfur Chemistry of the Onion. Phosphorus Sulfur and Silicon 58, 3-15 (1991)
特願2011-59569において記載されているLFS活性の評価方法は、精製されたアリイナーゼと、精製されたPRENCSOとが必要であるため、測定が簡便でないという問題がある。
特許文献1において記載されている、酵素免疫測定法によるLFS量の測定方法は、抗LFS抗体が必要である。抗LFS抗体の作製に手間を要する点、作製ロット間で抗体の品質に差が生じるリスクがある点において尚改善の余地がある。更に、LFSのタンパク質の量を測定する酵素免疫測定法は、LFSタンパク質量が多く辛さが強いタマネギ試料と、LFSタンパク質量が少なく辛さが弱いタマネギ試料とを区別する目的では適しているが、検量できるタンパク質の濃度範囲が限定されるため、LFSタンパク質の量が非常に少ない試料の分析には適していない。
そこで本発明は、LFS活性が抑制されたタマネギの簡便な判定方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、タマネギを粉砕した得られる粉砕物中で酵素反応により生じる下記式1で表される化合物の量が、タマネギ中の催涙成分生成酵素(LFS)の活性と反比例しており、LFSの活性が低いタマネギほど、粉砕物中の前記化合物の量が多いことを見出し、本発明を完成するに至った。式1で表される化合物は、非特許文献3において、LFS活性抑制タマネギで増加する事が確認されている化合物(Zwiebelane isomer)である。従来は、タマネギ粉砕物中における当該化合物の生成量と、タマネギのLFS活性との相関関係は明らかではなかった。本発明は以下の発明を包含する。
(1) 対象タマネギが、催涙成分生成酵素(LFS)の活性が抑制されたLFS活性抑制タマネギであるかどうかを判定する方法であって、
対象タマネギを粉砕して粉砕物を得る工程と、
前記粉砕物中の、式1:
Figure 0005932328
で表される化合物の量を指標として、対象タマネギがLFS活性抑制タマネギであるかどうかを判定する工程と、
を含む方法。
(2) 対象タマネギの粉砕物中の式1で表される化合物の量が、LFS活性が抑制されていないLFS活性非抑制タマネギの粉砕物中の式1で表される化合物の量に基づき設定された所定の閾値よりも大きい又は該閾値以上である場合に、対象タマネギがLFS活性抑制タマネギであると判定する、(1) の方法。
(3) 対象タマネギが、催涙成分生成酵素(LFS)の活性が抑制されたLFS活性抑制タマネギであるかどうかを判定する方法であって、
対象タマネギを粉砕して粉砕物(A)を得る工程と、
LFS活性が抑制されていないLFS活性非抑制タマネギを粉砕して粉砕物(B)を得る工程と、
粉砕物(A)における式1で表される化合物の量(A)と、粉砕物(B)における式1で表される化合物の量(B)とを比較して、比較結果に基づいて、対象タマネギがLFS活性抑制タマネギであるかどうかを判定する工程と、
を含む方法。
(4) タマネギを粉砕して得られる粉砕物、又は当該粉砕物の処理物、に酸を添加する工程を更に含む、(1)又は(3)の方法。
(5) (1)〜(4)のいずれかの方法による判定結果に基づいて、対象タマネギが催涙性抑制タマネギであるかどうかを判定する工程を含む、催涙性抑制タマネギの判定方法。
本発明によれば、対象タマネギがLFS活性抑制タマネギであるか否か、並びに、催涙性が抑制されたタマネギであるか否か、を簡便に判定することが可能である。
シリカゲルカラムによる分離前後の試料の、薄層クロマトグラフィー(TLC)による分析結果を示す。 PRENCSO+アリイナーゼの反応液(a)、LFS発現抑制タマネギバルブの粉砕物の抽出液(b)、LFS発現非抑制タマネギバルブの粉砕物の抽出液(c)における式1の化合物の有無のHPLCによる確認結果を示す。 参考例3において式1の成分の残存率の算出に用いたHPCLチャートを示す。 参考例3での式1の成分の残存率の経時的変化を示す。図4(a)は水300 μlに各濃度の酢酸を添加した系の結果を示し、図4(b)はイソプロパンノール300 μlに各濃度の酢酸を添加した系の結果を示す。 タマネギにおけるLFS活性と、式1の成分の生成量との関係を示す。図5Aは実施例1において分析した全試料の結果を示し、図5Bは低LFS活性の試料の結果を示す。 通常のタマネギの粉砕時における、催涙成分 (LF) の生成経路を説明する図である。
1. 式1で表される化合物
本発明においてLFS活性抑制の指標として用いられる化合物は、式1で表される平面構造を有する。
式1で表される平面構造を有する化合物には、複数の光学異性体が存在するが、本発明ではそれらの合計量をLFS活性抑制の指標とする。すなわち、本発明において「式1で表される化合物の量」とは、式1で表される化合物の総量を指す。
本発明者らは、未公開の特許出願特願2011-59569において、LFS活性抑制タマネギの粉砕物において、式1で表される平面構造を持つ化合物が、複数の光学異性体の混合物の形態で含まれることを見出した(参考例1及び2)。更に本発明者らは、タマネギのLFS活性が弱いほど、タマネギ粉砕物中における当該化合物の生成量が大きいことを見出し、本発明を完成するに至った(実施例1)。この現象は、アリイナーゼの作用を受けてPRENCSOから生成される1-プロペニルスルフェン酸が、LFS活性が高い場合には図6に示すようにLFに変換されるところが、LFS活性が低下している場合には式1で表される化合物に変換されることによると推定される。
LFS活性抑制タマネギの粉砕物中で生じる式1で表される化合物(Zwiebelane isomer)は、以下の特徴を有する。
下記条件の高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によるクロマトグラムにおいて、保持時間約22.00分〜約26.00分の間に主要な3つのピークとして現れる、複数の光学異性体化合物である。条件:
カラム:ThermoFisher ODS Hypersil 250mm X 4.6mm, 5μm、カラムオーブン:30℃、移動相(CH3CN/H2O):0分(18%/82%), 45分(90%/10%), 50分(90%/10%), 50.1分(18%/82%)、60分(18%/82%)(具体的には、0分から45分において、グラジエントをかけてCH3CN濃度を18%から90%に上げる。45分から50分までの5分間は、CH3CNを90%で保持する。その直後50.1分からは、CH3CN濃度を18%に切り替えて60分まで流す)、流速:0.5 ml/分、検出254nm
上記条件でのHPLCによるクロマトグラムにおいて、保持時間約22.0分〜約26.0分の間に現れる主要な3つのピークのうち、保持時間の最も長いピーク(参考例2では25.0分)に対応する画分中の式1で表される化合物は、以下の物理化学的特徴を有する。
(1) 外観:無色油状
(2) 比旋光度:[α]D 23 = -7.42(c =0.128, CHCl3
(3) MS [M]+:m/z 252.40
(4) HR MS [M+H]+:m/z 253.0383(253.0385 calcd. for C9H17O2S3
(5) 分子式: C9H16O2S3
(6) 溶解性:水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、クロロホルム、ヘキサン
(7) 紫外吸収スペクトル:λmaxnm 260 (in 58% CH3CN)
(8) 赤外吸収スペクトル:IR (neat, νmax) 3342 (b), 2964 (s), 2930 (m), 2873 (m), 1722 (w), 1627 (w), 1453 (m), 1377 (w), 1092 (s), 1043 (vs), 946 (s), 887 (w) cm-1
(9) 1H NMRスペクトル:δ 6.65 (dq, J=14.9, 6.9 Hz, 1H), 6.52 (dq, J=14.9, 1.7 Hz, 1H), 5.20 (d, J=7.4 Hz, 1H), 4.87 (d, J=4.0 Hz, 1H), 2.10-2.19 (ddq, J=12.3, 6.4, 4.0 Hz, 1H), 1.99-2.06 (ddq, J=12.6, 7.4, 6.8 Hz, 1H), 2.00 (dd, J=6.9, 1.7 Hz, 3H), 1.15 (d, J=6.8 Hz, 3H), 1.07 (d, J=6.4 Hz, 3H)
(10) 13C NMRスペクトル:δ 137.72, 129.19, 90.87, 59.93, 48.95, 48.83, 18.02, 14.67, 14.60
上記条件でのHPLCによるクロマトグラムにおいて、保持時間約22.0分〜約26.0分の間に現れる主要な3つのピークのうち、保持時間が最も短いピーク(参考例2では23.2分)及び保持時間が次に短いピーク(参考例2では24.4分)に対応する画分(保持時間が最も短いピークの開始から、保持時間が次に短いピークの終了までに対応する画分)中の式1で表される化合物は、以下の物理化学的特徴を有する。
(1) 外観:無色油状
(2) MS [M]+:m/z 252.40
(3) HR MS [M+H]+:m/z 253.0383(253.0385 calcd. for C9H17O2S3
(4) 分子式: C9H16O2S3
(5) 溶解性:水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、クロロホルム、ヘキサン
(6) 紫外吸収スペクトル:λmaxnm 260 (in 55% CH3CN)
(7) HPLC保持時間:22.4〜24.5分 (参考例2でのピークトップの検出時間:23.2分,24.4分)
(条件) カラム:ThermoFisher ODS Hypersil 250mm X 4.6mm, 5μm、カラムオーブン:30℃、移動相(CH3CN/H2O):0分(18%/82%), 45分(90%/10%), 50分(90%/10%), 50.1分(18%/82%)、60分(18%/82%)(具体的には、0分から45分において、グラジエントをかけてCH3CN濃度を18%から90%に上げた。45分から50分までの5分間は、CH3CNを90%で保持した。その直後50.1分からは、CH3CN濃度を18%に切り替えて60分まで流した)、流速:0.5 ml/分、検出254nm
(8) 保持時間が短い成分(参考例2においてHPLCピークトップ23.2分の成分(B-Fr.1))の1H NMRスペクトル:δ 6.59 (dq, J=15.0, 6.4 Hz, 1H), 6.54 (dq, J=15.0, 1.7 Hz, 1H), 5.15 (d, J=7.4 Hz, 1H), 4.97 (d, J=5.2 Hz, 1H), 2.25 (ddq, J=12.0, 6.85, 5.2 Hz, 1H), 1.98 (dd, J=6.4, 1.7 Hz, 3H), 1.88 (ddq, J=12.0, 7.4, 6.3 Hz, 1H), 1.19 (d, J=6.8 Hz, 3H), 1.16 (d, J=6.3 Hz, 3H)
(9) 保持時間が短い成分(参考例2においてHPLCピークトップ23.2分の成分(B-Fr.1))の13C NMRスペクトル:δ136.07, 132.46, 89.17, 62.01, 50.99, 48.95, 17.66, 16.23, 15.20
(10) 保持時間が長い成分(参考例2において HPLCピークトップ24.4分の成分(B-Fr.2))の1H NMRスペクトル:δ 6.57 (dq, J=15.0, 7.0 Hz, 1H), 6.50 (d, J=15.0 Hz, 1H), 5.36 (d, J=4.0 Hz, 1H), 5.19 (d, J=5.2 Hz, 1H), 2.53 (m, J=6.3 Hz, 1H), 1.96 (d, J=7.0 Hz, 3H), 1.93 (m, J=6.9, 5.2 Hz, 1H), 1.21 (d, J=6.9 Hz, 3H), 1.09 (d, J=6.3 Hz, 3H)
(11) 保持時間が長い成分(参考例2においてHPLCピークトップ24.4分の成分(B-Fr.2))の13C NMRスペクトル:δ135.92, 132.50, 83.42, 61.52, 47.28, 44.46, 17.98, 15.19, 12.42
2. タマネギ
本発明の判定方法で判定の対象とするタマネギ(対象タマネギ)の品種は特に限定されない。タマネギとしては、タマネギの鱗茎(一般に、「バルブ」または「球」と呼ばれる部分)、或いは鱗茎から伸びる葉鞘や葉身の部分を用いることができる。
3. 分析試料の調製
PRENCSOに対するアリイナーゼ及びLFSの作用、並びに式1で表される化合物の生成は、タマネギの粉砕により生じる。そこで本発明では、対象タマネギを粉砕して、式1で表される化合物を生成させる工程を含む。なお、粉砕前に対象タマネギに加熱等を行い酵素失活させた場合には、粉砕しても式1で表される化合物は生成しない。このため、粉砕に供される対象タマネギは酵素活性が保持されたタマネギであることが前提となる。
タマネギの粉砕は、十分に粉砕することができる方法であれば特に限定されない。タマネギの適当な部位をそのまま粉砕して粉砕物を調製することが可能である。また、タマネギの適当な部位を裁断して得られる適当な寸法の小片を粉砕することにより粉砕物を調製することも可能である。後者の方法において粉砕に供するタマネギ小片の寸法は特に限定されないが、一辺の長さが2mm以下の小片では、粉砕前の時点で先にアリイナーゼ及びLFSの作用が生じてしまうため、正しく測定できないおそれがある。そこで、一辺が3〜10mm程度の小片を用いることが好ましく、5〜10mm程度の小片を用いることがより好ましい。
粉砕はホモジナイザー、ミキサー等の通常の粉砕装置により行うことができる。粉砕の際には、タマネギに適宜水等の溶媒を添加してもよい。
粉砕物は、粉砕物を適宜水等の溶媒により希釈した希釈物や、遠心分離、ろ過等の固液分離手段により分離して得られる上清も包含する。
タマネギの粉砕物(希釈物や上清も包含する)を、直接、後述する式1で表される化合物の測定に用いることができる。
或いは、タマネギの粉砕物(希釈物や上清も包含する)の抽出物を、後述する式1で表される化合物の測定に用いることもできる。抽出物は、タマネギの粉砕物から式1で表される化合物を抽出することが可能な方法により調製されたものであれば特に限定されない。典型的な抽出法としては、ジエチルエーテル、ヘキサン、酢酸エチル、ジクロロメタンなどの水不溶の有機溶媒で抽出する方法や、タマネギの粉砕物を合成吸着剤により処理して前記化合物を合成吸着剤に吸着させ、次いでメタノール、エタノール、プロパノール、アセトニトリル、アセトンなどの水可溶な有機溶媒を含む溶液により、吸着された前記化合物を溶出させる方法が挙げられる。合成吸着剤としては、ダイアイオンHP-20(三菱化学株式会社)やアンバーライトXAD-2(オルガノ株式会社)など各種吸着剤が使用できる。式1で表される化合物の安定性が低いことを考慮すると、タマネギ粉砕物からの抽出を行う場合、粉砕後は速やかに、好ましくは2時間以内に行うことが好ましい。
4. 酸による安定化
式1で表される化合物は安定性が低く、粉砕により短時間で生成し、その後は経時的に分解する。本発明者らは、驚くべきことに、式1で表される化合物はpH5以下の酸性条件では安定であることを見出した(参考例3)。そこでタマネギの粉砕物(希釈物、上清を包含する)又はその処理物(抽出物等)を上記の方法で調製した後に、該粉砕物又はその処理物に酸を添加してpHを5以下、より好ましくは3〜5にすることにより安定化することがより好ましい。酸としては酢酸等の有機酸でも、塩酸等の無機酸でも好適に使用することができる。タマネギの粉砕物又はその処理物の調製後に酸添加をできるだけ速やかに、好ましくは2時間以内に行うことが好ましい。なお本発明においてpH値は20〜25℃において測定された値を指す。
5. 測定方法
式1で表される化合物の量の測定の方法は特に限定されず、HPLC等の適当な手段を用いて行うことができる。
参考例1及び2に示すように式1で表される化合物の複数の異性体が複数のピークに分離する場合は、これらのピーク面積を合計して式1で表される化合物の量とすればよい。
測定手段及び条件(例えばHPLC分析の場合の機器、カラム、移動相等)は適宜決定することができる。
6.判定工程
本発明では対象タマネギの粉砕物中の式1で表される化合物の量を指標として、対象タマネギがLFS活性抑制タマネギであるかどうかを判定することを特徴とする。
判定の方法は特に限定されないが、典型的には、対象タマネギ粉砕物と同一の方法で調製されたLFS活性非抑制タマネギの粉砕物における式1で表される化合物の量に基づいて設定された閾値と、対象タマネギの粉砕物中の式1で表される化合物の量(測定値)とを比較し、測定値が閾値よりも大きい又は該閾値以上である場合に、対象タマネギがLFS活性抑制タマネギであると結論付け、測定値が閾値以下又は該閾値未満である場合に、対象タマネギがLFS活性非抑制タマネギであると結論付ける。
前記閾値は、予め測定された、LFS活性非抑制タマネギの粉砕物における式1で表される化合物の量に基づいて設定されたものであってもよいし、対象タマネギ粉砕物中の当該化合物の量の測定と並行して、LFS活性非抑制タマネギの当該化合物の量の測定を行い、その結果に基づいて設定されたものであってもよい。
閾値は、LFS活性非抑制タマネギの粉砕物における式1で表される化合物の量の測定値自体であってもよいし、複数得られた測定値から統計処理を行い導かれた値であってもよい。典型的には、複数回の測定により得られたLFS活性非抑制タマネギの粉砕物における式1で表される化合物の量を平均した平均値を閾値としたり、該平均値に、標準偏差(σ)の2倍又は1倍の値を加えた値を閾値としたりすることができる。
7. 本発明の方法の応用
LFS活性抑制タマネギは、破砕時に催涙成分(LF)の発生が少ないため、辛味が少なく生食しやすいだけでなく、加工時の目の痛みや刺激が少ない点で有利である。
LFS活性抑制タマネギの粉砕物が有する式1で表される化合物は、未公開の特許出願特願2011-59569において本出願人が開示している通りシクロオキシゲナーゼ-1阻害作用や、α-グルコシダーゼ阻害作用という、生理的に有利な効果を有する。
本発明によれば、対象タマネギが、このような有利な特徴を有するLFS活性抑制タマネギであることの判定を容易に行うことができる。
タマネギのLFS活性抑制形質は人為的に導入されるだけでなく、遺伝形質として既存のタマネギ品種が有している場合もある。本発明の判定方法は、LFS活性抑制形質を有するタマネギを選抜育種する場合の形質選抜手段として利用することも可能である。
参考例1. 式1の化合物の誘導
参考例1-1.
精製PRENCSO溶液の調製
(1)加熱タマネギからPRENCSOの抽出
生タマネギ3玉(約1000 g)の外皮をはがし、ラップをして電子レンジで12分間加熱した。加熱したタマネギをミキサーに入れ、等量の蒸留水を加えてから粗砕し、粗砕液を8000rpmで10分間遠心分離した。上清を回収し、陽イオン交換樹脂IR120B(Hタイプ)を加えて攪拌したのち、吸引濾過により、樹脂を回収した。回収した樹脂に蒸留水1Lを加え、これに濃アンモニア水を加えてpH8.5に調整した。吸引濾過により、上清を回収し、残った樹脂に再度pH8.5のアンモニア水を加えた。再度、吸引濾過により、上清を回収した。得られた溶液に1N塩酸を加えてpH7.0に中和した。エバポレーターを用いて溶液を濃縮乾固した。
(2)PRENCSOの精製
残留物に蒸留水50mlを加えて溶解させた。得られた粗PRENCSO溶液を中圧逆相クロマトグラフィーによって精製した。必要に応じて、さらにHPLC(カラム:ODS,移動相:酸性水pH3.3,温度:35℃,UV:230nm)によって精製した。カラムから得られた溶出液をエバポレーターおよび凍結乾燥機を用いて乾固し、精製PRENCSO粉末(約100mg)を得た。
参考例1-2.
精製アリイナーゼ溶液の調製
(1)ニンニクを粉砕・酸沈
まず、ミキサーのジョッキを冷蔵庫に入れて冷やしておいた。また、低温遠心機にローターをセットし、温度を4℃にセットして冷却しておいた。ニンニク片(100g)に等量のバッファー A(後述)を加えて、ミキサーで粉砕した。氷上に置いたジョッキの口に二重にしたガーゼを輪ゴムでとめ。粉砕物をそのガーゼの上に流して、濾した。ろ液がある程度得られた後で、ガーゼ上の粉砕物をガーゼで包んで絞った。得られたろ液を4℃、12000rpmで10 分間遠心分離し、上清を回収した。回収した遠心上清を氷上に置いた状態で攪拌しつつ、pHをモニターしながら、酢酸を加えていき、pHを4.0に調整した。pHが4.0になったら、そのまま5分間静置した。沈殿の出てきたサンプルを4℃、12000rpmで10分間遠心分離し、遠心ペレットを回収した(バッファー Aを使用した)。
回収したペレットを50ml〜100mlにして(バッファーA)、そのまま、5℃で30分間静置した。回収したペレットの懸濁液を4℃、12000rpmで10分間遠心分離した。1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて、回収した遠心上清のpHを6.5に調整した。これをアリイナーゼ粗抽出液とした。
(2)ハイドロキシアパタイトカラム処理
上記アリイナーゼ粗抽出液(遠心上清)をバッファー Aで平衡化したハイドロキシアパタイトカラムにアプライした。アリイナーゼは、ハイドロキシアパタイトカラムに黄色のバンドとなって吸着された。サンプルをアプライしたハイドロキシアパタイトカラムを300mlのバッファー Aで洗浄した。洗浄の終了したハイドロキシアパタイトカラムに300mlのバッファー C(後述)を流して、溶出させた。溶出液はフラクションコレクターを使って10 mlずつ分画し、黄色の溶出液が分画されているフラクションを集めた。
(3)ConAカラムによるアリイナーゼの精製
集めたフラクション(20ml)の1/20倍volの20mM塩化カルシウム、塩化マグネシウム溶液を加えて、サンプル溶液のカルシウムイオン、マグネシウムイオン濃度を上げた。そうした上で、再生し、startingバッファー(ConA Sepharose 4Bのマニュアルに記載されている推奨バッファー)で平衡化したConAカラムにアプライした。サンプルをアプライした後のConAカラムを50mlのstartingバッファーで洗浄した。洗浄の終了したConAカラムに50mlのConA溶出バッファー(ConA Sepharose 4Bのマニュアルに記載されている推奨バッファー)を流して、溶出させた。溶出液はフラクションコレクターを使って2mlずつ分画し、黄色の溶出液が分画されているフラクションを集めた。
(4)精製したアリイナーゼの濃縮方法
ConAカラム精製によって得られた黄色い溶出液(アリイナーゼ溶液)10mlをCENTRIPLUS CONCENTRATORS(up to 15ml,No.4421)(ミリポア社製)に入れた。CENTRIPLUS CONCENTRATORSを、4℃に冷却した遠心機にセットし、3000rpmで30分遠心した。中身を一度確認した後、もう一度、3000rpmで30分間遠心した。
なお、上記バッファーA(pH7.0)(アリイナーゼ精製用50mMバッファーA)は次のように調製した。50mMリン酸水素2カリウム溶液(5.22gを600mlに溶解)と50mMリン酸二水素カリウム溶液(3.4gを500mlに溶解)を調製した。pHをモニターしながら、両者を混合して、pHを7.0に調整した。出来上がったバッファー9倍volに対して、グリセロールを1倍vol加えてよく混合した。出来上がったグリセロール入りバッファー 1Lに対して、5.3 mgのピリドキサールリン酸を添加して混合した。出来上がったバッファーは、10℃で保存した。
また、バッファーC(pH7.0)(アリイナーゼ精製用500mMバッファーC)は、次のように調製した。500mMリン酸水素2カリウム溶液(43.6gを500mlに溶解)と500mMリン酸二水素カリウム溶液(34.0gを500mlに溶解)を調製した。pHをモニターしながら、両者を混合して、pHを7.0に調整した。出来上がったバッファー9倍volに対して、グリセロールを1倍vol加えてよく混合した。出来上がったグリセロール入りバッファー 1Lに対して、5.3mgのピリドキサールリン酸を添加して混合した。出来上がったバッファーは、10℃で保した。
参考例1-3. 式1の化合物の誘導と単離精製
ガラス製遠沈管に250 U/ml のアリイナーゼ溶液(500 mM リン酸ナトリウムバッファー(pH 7.0), 10%グリセロール,25 μMピリドキサールリン酸)3.2mlを採る。ここに20 mg/mlのPRENCSO水溶液1.6mlを加えて酵素反応を開始させた。反応開始から60秒後にクロロホルム1.5mlを添加し、30秒間混合した。遠沈管を3000rpmで30秒間遠心し、有機層を回収した。残った水層にさらにクロロホルムを1.5ml 添加し、30秒間混合後、3000rpmで30秒間遠心して有機層を回収した。得られた有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した。こうして得られたクロロホルム抽出物から、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、反応初期生成物を単離精製した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、ワコーゲルC300を5 g用い、溶出溶媒はヘキサン:酢酸エチル(8:2)を用いた。シリカゲルカラム溶出後の画分については、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて目的物の有無を確認し、2種類の画分(先に溶出したほうを画分A,後に溶出したほうを画分Bとする)を得た(図1)。それぞれの画分についてエバポレーターを用いて濃縮乾固させ、画分Aより4.5 mg、画分Bより4.4 mgの乾固物を得た。画分AをNMR、MS、IR、UV、元素分析構造解析をした結果、式1の平面構造を有することを特定できた。後に溶出した画分Bについては、Waters社のUPLC-MSを用いたMSスペクトル解析の結果、画分Aと同様のUVスペクトル、MSスペクトルを示したことから、画分Aの異性体画分であると決定できた。
画分Aの物理化学的性状
(1) 外観:無色油状
(2) 比旋光度:[α]D 23 = -7.42(c =0.128, CHCl3
(3) MS [M]+:m/z 252.40
(4) HR MS [M+H]+:m/z 253.0383(253.0385 calcd. for C9H17O2S3
(5) 分子式: C9H16O2S3
(6) 溶解性:水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、クロロホルム、ヘキサン
(7) 紫外吸収スペクトル:λmaxnm 260 (in 58% CH3CN)
(8) 赤外吸収スペクトル:IR (neat, νmax) 3342 (b), 2964 (s), 2930 (m), 2873 (m), 1722 (w), 1627 (w), 1453 (m), 1377 (w), 1092 (s), 1043 (vs), 946 (s), 887 (w) cm-1
(9) 1H NMRスペクトル:δ 6.65 (dq, J=14.9, 6.9 Hz, 1H), 6.52 (dq, J=14.9, 1.7 Hz, 1H), 5.20 (d, J=7.4 Hz, 1H), 4.87 (d, J=4.0 Hz, 1H), 2.10-2.19 (ddq, J=12.3, 6.4, 4.0 Hz, 1H), 1.99-2.06 (ddq, J=12.6, 7.4, 6.8 Hz, 1H), 2.00 (dd, J=6.9, 1.7 Hz, 3H), 1.15 (d, J=6.8 Hz, 3H), 1.07 (d, J=6.4, 3H)
(10) 13C NMRスペクトル:δ 137.72, 129.19, 90.87, 59.93, 48.95, 48.83, 18.02, 14.67, 14.60
(11) HPLC保持時間:24.6〜26.0分 (ピークトップの検出時間:25.0分)
(条件)カラム:ThermoFisher ODS Hypersil 250mm X 4.6mm, 5μm、カラムオーブン:30℃、移動相(CH3CN/H2O):0分(18%/82%), 45分(90%/10%), 50分(90%/10%), 50.1分(18%/82%)、60分(18%/82%)(具体的には、0分から45分において、グラジエントをかけてCH3CN濃度を18%から90%に上げた。45分から50分までの5分間は、CH3CNを90%で保持した。その直後50.1分からは、CH3CN濃度を18%に切り替えて60分まで流した)、流速:0.5 ml/分、検出254nm
画分Bの物理化学的性状
(1) 外観:無色油状
(2) MS [M]+:m/z 252.40
(3) HR MS [M+H]+:m/z 253.0383(253.0385 calcd. for C9H17O2S3
(4) 分子式: C9H16O2S3
(5) 溶解性:水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、クロロホルム、ヘキサン
(6) 紫外吸収スペクトル:λmaxnm 260 (in 55% CH3CN)
(7) HPLC保持時間:22.4〜24.5分 (参考例2でのピークトップの検出時間:23.2分,24.4分)
(条件)カラム:ThermoFisher ODS Hypersil 250mm X 4.6mm, 5μm、カラムオーブン:30℃、移動相(CH3CN/H2O):0分(18%/82%), 45分(90%/10%), 50分(90%/10%), 50.1分(18%/82%)、60分(18%/82%)(具体的には、0分から45分において、グラジエントをかけてCH3CN濃度を18%から90%に上げた。45分から50分までの5分間は、CH3CNを90%で保持した。その直後50.1分からは、CH3CN濃度を18%に切り替えて60分まで流した)、流速:0.5 ml/分、検出254nm
(8) 保持時間が短い成分(参考例2においてHPLCピークトップ23.2分の成分(B-Fr.1))の1H NMRスペクトル:δ 6.59 (dq, J=15.0, 6.4 Hz, 1H), 6.54 (dq, J=15.0, 1.7 Hz, 1H), 5.15 (d, J=7.4 Hz, 1H), 4.97 (d, J=5.2 Hz, 1H), 2.25 (ddq, J=12.0, 6.85, 5.2 Hz, 1H), 1.98 (dd, J=6.4, 1.7 Hz, 3H), 1.88 (ddq, J=12.0, 7.4, 6.3 Hz, 1H), 1.19 (d, J=6.8 Hz, 3H), 1.16 (d, J=6.3 Hz, 3H)
(9) 保持時間が短い成分(参考例2においてHPLCピークトップ23.2分の成分(B-Fr.1))の13C NMRスペクトル:δ136.07, 132.46, 89.17, 62.01, 50.99, 48.95, 17.66, 16.23, 15.20
(10) 保持時間が長い成分(参考例2においてHPLCピークトップ24.4分の成分(B-Fr.2))の1H NMRスペクトル:δ 6.57 (dq, J=15.0, 7.0 Hz, 1H), 6.50 (d, J=15.0 Hz, 1H), 5.36 (d, J=4.0 Hz, 1H), 5.19 (d, J=5.2 Hz, 1H), 2.53 (m, J=6.3 Hz, 1H), 1.96 (d, J=7.0 Hz, 3H), 1.93 (m, J=6.9, 5.2 Hz, 1H), 1.21 (d, J=6.9 Hz, 3H), 1.09 (d, J=6.3 Hz, 3H)
(11) 保持時間が長い成分(参考例2においてHPLCピークトップ24.4分の成分(B-Fr.2))の13C NMRスペクトル:δ135.92, 132.50, 83.42, 61.52, 47.28, 44.46, 17.98, 15.19, 12.42
参考例2. 式1の化合物の誘導
(1)PRENCSO+アリイナーゼの反応液から
1.5 mlマイクロチューブに250 U/ml のアリイナーゼ溶液(500 mM リン酸ナトリウムバッファー(pH 7.0),10%グリセロール,25 μMピリドキサールリン酸)30 μlを採った。ここに20 mg/mlのPRENCSO水溶液20 μlと蒸留水50 μlを加えて酵素反応を開始させた。反応開始から30秒後に10 μg/mlホルモノネチン含有イソプロパノール300 μlを添加し、30秒間混合した。チューブを15000rpmで3分間遠心し、その上清をHPLCを用いて下記の条件にて分析したところ、式1の化合物が誘導されたことが確認された。
結果を図2(a)に示す。HPLC保持時間25.0分の単一のピークが観察された。このピークに対応するHPLCフラクションを「A1フラクション2」とする。A1フラクション2は参考例1-3においてシリカゲルで精製した画分Aに相当する。HPLC保持時間22.4分から24.5分にかけて、2つ以上のピークが観察された。これらのピークに対応するHPLCフラクションを「A1フラクション1」とする。A1フラクション1は参考例1-3においてシリカゲルで精製した画分Bに相当する。なお「A1」はZwiebelane isomerを指す。「A1フラクション1」、「A1フラクション2」はそれぞれ「Zwiebelane isomerフラクション1」、「Zwiebelane isomerフラクション2」を意味する。
(2)LFS活性抑制タマネギから
10 ml容ガラス製遠沈内で、LFS発現抑制タマネギ (非特許文献3記載に記載されている、RNAi技術を用いて作出された、LFS活性が通常タマネギの約1/20に低減された、LFS発現抑制タマネギ) のバルブの凍結粉砕物1.5 gに蒸留水5 mlを加え、30秒間ボルテックッスで混合した後、3分間室温にて放置した。次に少量のNaCl、5 mlのジエチルエーテルを加えた後、1分間ボルテックスで混合し、3500rpmで10分間遠心した。有機層を回収し、再度ジエチルエーテルによる抽出を繰り返した。集めた有機層に無水硫酸マグネシウムを加え脱水し、フィルターろ過した。その後、窒素ガスによる濃縮乾固を行い、10 μg/mlホルモノネチン含有メタノールに溶解した後、HPLCを用いて下記の条件にて分析したところ、式1の化合物が誘導されたことが確認された。
結果を図2(b)に示す。上記(1)でのHPLC分析結果と同様の結果が得られた。
比較のために、LFS発現抑制タマネギのバルブに代えてLFS非抑制タマネギのバルブを用いた以外は上記と同様の方法及び条件により試料を調製しHPLC分析を行った。結果を図2(c)に示す。式1の化合物はPDA(フォトダイオードアレイ検出器)では検出されなかった。
[HPLC条件]
HPLC:Agilent 1100 Series、検出波長:254nm、カラム:ThermoFisher ODS Hypersil 250mm X 4.6mm, 5μm、カラムオーブン:30℃、移動相(CH3CN/H2O):0分(18%/82%), 45分(90%/10%), 50分(90%/10%), 50.1分(18%/82%)、60分(18%/82%)、流速:0.5 ml/分
参考例3. 式1の化合物の溶液中での安定性
1.5 ml マイクロチューブに250 U/ml のアリイナーゼ溶液(500 mM リン酸ナトリウムバッファー(pH 7.0),10%グリセロール,25 μMピリドキサールリン酸)60 μlを採った。ここに20 mg/mlのPRENCSO水溶液30 μl を加えて酵素反応を開始させた。反応開始から30秒後に水または酢酸(約 1.7、0.17、0.017 mol/l) 10 μlと、水またはイソプロパノール300 μlを添加し混合し5℃で保存した。保存開始後4時間毎に12時間、式1の化合物についてHPLCを用いて下記の条件にて分析を行い、保存開始直後に対する残存率を確認した。
[HPLC条件]
HPLC:Waters 2695 Separaions Module、検出器:Waters 2998 Photodiode Array Detector、検出波長:254nm、カラム:ThermoFisher ODS Hypersil 250mm X 4.6mm, 5μm、カラムオーブン:30℃、移動相(CH3CN/H2O):0分(35%/65%), 35分(87.5%/12.5%), 40分(35%/65%), 50分(35%/65%)、流速:0.6 ml/分
式1の成分の残存率算出時のHPCLのチャートを図3に示す。式1の成分の残存率の経時的変化を図4に示す。図4(a)は式1の成分を含む反応液に水300 μlと各濃度の酢酸を添加した系の結果を示し、図4(b)はイソプロパノール300 μlと各濃度の酢酸を添加した系での結果を示す。いずれの場合も、酸性にすることによって安定性が増した。また、式1の成分はpHが6以下になると安定性が増した。
実施例1. タマネギでのLFS活性と式1の化合物の生成量との関係
<実験方法>
2.0mlのマイクロチューブに、参考例1-2に記載した方法で調製した精製アリイナーゼ、及び下記のように調製したタマネギパウダー、rLFSを下表に従い混合した(但しアリイナーゼは最後に添加した)。25℃で4分間反応させた後、10%酢酸水溶液30μlを加えボルテックスで混合した。4℃、15000rpmで5分間遠心し、上清を回収した。回収した上清は、0.45μmフィルターでろ過した後、HPLCで分析した。
[HPLC条件]
HPLC:Waters 2695 Separaions Module、検出器:Waters 2998 Photodiode Array Detector、検出波長:254nm、カラム:SunFire C18(waters社製)250mm X 4.6mm, 5μm、カラムオーブン:30℃、移動相(CH3CN/H2O):0分(35%/65%), 35分(87.5%/12.5%), 40分(35%/65%), 50分(35%/65%)、流速:0.6 ml/分、インジェクション量:5μL
Figure 0005932328
各試料は、種々のLFS活性を有するタマネギ粉砕物を模している。試料名は、各試料のLFS活性が、通常のタマネギ粉砕物でのLFS活性の何分の一に相当するかを示す。
式1の化合物の生成量(ピーク面積)とLFS活性との関係を図5Aに示す。図5Bは低LFS活性の試料における式1の化合物の生成量とLFS活性との関係を示す図である。式1の化合物はLFSの活性が通常のタマネギの1/20 (0.05) 以下になると増加することが確認できた。
タマネギパウダーの調製方法
生タマネギ1玉(約300 g)の外皮をはがし、ラップをして電子レンジで5分間加熱した。液体窒素で急速凍結した後、減圧下、-10℃で凍結乾燥した。凍結乾燥後、乳棒、乳鉢を用いて直径1mm以下のパウダーになるように粉砕した。作製したパウダーは、使用時までシリカゲルを入れたデシケーター内で保存した。
rLFSの調製方法
WO 02/020808 A1に記載された方法により、遺伝子組み換え法によりLFSを作製した。
概要は次のとおりである。コンピテント法により、LFSタンパクを発現するプラスミド(pGEX-4T-3-E2-3-1)を大腸菌に導入し、形質転換体を得た。得られた形質転換体を100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地で37℃で振盪培養した。培地にイソプロピル‐β‐チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加して生産誘導するとGSTとE2‐2-3-1の融合タンパク質(以下、GST-E2-3と称す)が菌体内に蓄積した。
上記のようにして形質転換体を培養し、菌体を遠心分離によって集めた後、超音波破砕した。遠心によって回収した上清をグルタチオンセファロース4 Fast Flowカラム(アマシャムファルマシア製)に流し、GST融合タンパク質をカラムに吸着させた。カラムを洗浄後、還元型グルタチオンを含む溶出バッファーで、融合タンパク質を溶出し、E2-3融合タンパク質試料の精製物を得た。
融合タンパク質試料をHiTrap Desaltingカラム(アマシャムファルマシア)製に流し、還元型グルタチオンを除去し、再度グルタチオンセファロース4 Fast Flowカラムに吸着させた。カラムを洗浄後、トロンビンを含むバッファーでカラムを満たし、室温で2時間プロテアーゼ処理をおこなって、GSTタグを融合タンパク質から切り離した。GSTタグを除いた組換えE2-3をカムから溶出させ、さらに、この溶出液にBenzamidine Sepharose 6を加え混合し、遠心分離することによって溶出液中のトロンビンを除き、組換えE2-3試料を得た(これをrLFSとしている)。
実施例2. タマネギでの判定
通常のLFS活性を有するタマネギの粉砕物の分析
5玉のタマネギ(品種:札幌黄)から、根の反対側から1/4〜1/3のところで水平にカットし、厚さ5mmのスライスを調製した。リング状のタマネギ断面の最中層から3層目のリングを取り出し、リングを放射線状に切り(16等分以上)、各辺の寸法が3〜5 mmのタマネギ小片を作製した。タマネギ小片のうち、0.6g分を粉砕用チューブに入れ、氷中に保持した。
タマネギ小片をボールミルで30Hz x 2minを4回繰り返して粉砕した。粉砕後、600μlの水を添加し、さらに、直ちに120μlの1/10酢酸を添加した。遠心15000rpm, 5min, 4℃を行い、その上清を0.4μmフィルターでろ過し、遮光バイアルに入れて検液とし、Waters社製のHPLC-PDAを用いて測定した。
HPLC条件:カラム ODS (センシュウ科学 250mm × 4.6mmΦ)、流速:0.6ml/分、カラムオーブン:30℃、検出:254nm、インジェクション量:5μl
移動相(CH3CN/H2O):0分(35%/65%), 35分(87.5%/12.5%), 40分(35%/65%), 50分(35%/65%)
式1の化合物に対応する複数のピークの面積値を合計した。その結果、面積値平均133,850μV*sec、面積値標準偏差(σ) 19,340μV*secを得た。
これらの値に基づき、面積値平均+2σの面積値172,530μV*secを閾値に設定した。
分析対象タマネギでの判定
分析対象として、812玉のタマネギを用意した。
各タマネギについて、上記と同様の方法でHPLC分析用検液を調製し、HPLC分析を行った。
式1の化合物に対応する複数のピークの面積値を合計が、前記閾値172,530μV*secよりも大きい場合にLFS活性抑制タマネギであると判定した。
その結果、46玉をLFS活性抑制タマネギであると判定した。

Claims (5)

  1. 対象タマネギが、催涙成分生成酵素(LFS)の活性が抑制されたLFS活性抑制タマネギであるかどうかを判定する方法であって、
    対象タマネギを粉砕して粉砕物を得る工程と、
    前記粉砕物中の、式1:
    Figure 0005932328
    で表される化合物の量を指標として、対象タマネギがLFS活性抑制タマネギであるかどうかを判定する工程とを含み、
    対象タマネギの粉砕物中の式1で表される化合物の量が、LFS活性が抑制されていないLFS活性非抑制タマネギの粉砕物中の式1で表される化合物の量に基づき設定された所定の閾値よりも大きい又は該閾値以上である場合に、対象タマネギが、LFS活性がLFS活性非抑制タマネギのLFS活性の1/4未満のLFS活性抑制タマネギであると判定する方法。
  2. 前記閾値が、複数回の測定により得られたLFS活性非抑制タマネギの粉砕物中の式1で表される化合物の量の平均値、又は、該平均値に標準偏差の2倍若しくは1倍の値を加えた値であり、且つ
    対象タマネギの粉砕物中の式1で表される化合物の量が、前記閾値よりも大きい場合に、対象タマネギが、LFS活性がLFS活性非抑制タマネギのLFS活性の1/4未満のLFS活性抑制タマネギであると判定する、請求項1の方法。
  3. 対象タマネギが、催涙成分生成酵素(LFS)の活性が抑制されたLFS活性抑制タマネギであるかどうかを判定する方法であって、
    対象タマネギを粉砕して粉砕物(A)を得る工程と、
    LFS活性が抑制されていないLFS活性非抑制タマネギを粉砕して粉砕物(B)を得る工程と、
    粉砕物(A)における式1:
    Figure 0005932328
    で表される化合物の量(A)と、粉砕物(B)における式1で表される化合物の量(B)とを比較して、量(A)が量(B)よりも多い場合に、対象タマネギが、LFS活性がLFS活性非抑制タマネギのLFS活性の1/4未満のLFS活性抑制タマネギであると判定する工程と、
    を含む方法。
  4. タマネギを粉砕して得られる粉砕物、又は当該粉砕物の処理物に酸を添加する工程を更に含む、請求項1〜のいずれか1項の方法。
  5. 請求項1〜のいずれか1項の方法による判定結果に基づいて、対象タマネギが催涙性抑制タマネギであるかどうかを判定する工程を含む、催涙性抑制タマネギの判定方法。
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