JP5931452B2 - 牛乳類の風味劣化の科学的な評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、牛乳類の風味劣化の科学的な評価方法に関する。
牛乳類の品質劣化は、主に微生物学的な品質劣化と、風味的な品質劣化に分けられる。このうち、微生物学的な品質劣化では、生菌数の測定や大腸菌群の検査のような法的に定められた評価指標が存在し、製品の品質の良否を判定する上で、それらの評価指標が重要な役割を果たしている。
一方、風味的な品質劣化(風味劣化)では、特定の風味(香味)成分の測定のような評価指標が存在し、いくつかの製品の品質の良否を判定する上で、それらの評価指標が提案されている。
例えば、特開平08−114586号公報(特許文献1)には、脱脂粉乳の指標成分として、テトラデカナール及び/又はβ−ヨノンを定量することを特徴とする、風味評価方法が記載されている。特開平11−030610号公報(特許文献2)には、ホップを原料の一部として使用する飲料の指標成分として、セスキテルペン類を定量することにより、ホップ由来の香気成分量を推定することを特徴とする、官能試験によらない、客観的な風味評価方法が記載されている。特開平11−326305号公報(特許文献3)には、魚節の指標成分として、酢酸及び1−ペンテン−3−オールを定量し、それらの成分の割合から、酸化度を判定することを特徴とする、品質評価方法が記載されている。特開2010−203780号公報(特許文献4)には、清酒の指標成分として、1,2−ジヒドロキシ−5−メチルスルフィニルペンタン−3−オンの含量を測定とする、老香(清酒の劣化臭)の発生程度の予測方法が記載されている。
特開平08−114586号公報 特開平11−030610号公報 特開平11−326305号公報 特開2010−203780号公報
しかしながら、牛乳類では、その風味劣化と相関する適切で科学的な指標成分は見出されておらず、科学的な評価方法が存在しなかったため、官能評価のような主観的な評価方法でしか、現在、製品の品質を管理できていない。本発明は、このような状況に鑑み、牛乳類の風味劣化に対する科学的な指標成分を設定し、牛乳類の風味劣化の客観的な評価方法の構築を目的としてなされたものである。
上記課題を解決するために、本発明者らは、牛乳類の風味劣化の科学的な評価方法に用いる指標成分について検討したところ、牛乳類に含まれるラクトン類を定量することにより、牛乳類の風味劣化を適切に評価できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の請求項1に記載の発明は、γ−ドデカラクトンを定量することを特徴とする牛乳の風味劣化の評価方法、である。
請求項2に記載の発明は、γ−ドデカラクトンをSBSE−GC/MS法にて定量することを特徴とする、請求項1に記載の風味劣化の評価方法、である。
請求項3に記載の発明は、牛乳が4℃から15℃の温度にて、最大で6週間の期間まで保存したものである、請求項1または2のいずれかに記載の風味劣化の評価方法、である。
請求項4に記載の発明は、請求項1からのいずれかに記載の風味劣化の評価方法を用いて、風味面の品質を管理することを特徴とする、牛乳の製造方法、である。
請求項5に記載の発明は、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトン、γ−ドデカラクトンのいずれか1つを定量することを特徴とする低脂肪乳の風味劣化の評価方法、である。
請求項6に記載の発明は、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトン、γ−ドデカラクトンのいずれか1つをHS−SPME−GC/MS法にて定量することを特徴とする、請求項5に記載の風味劣化の評価方法、である。
請求項7に記載の発明は、低脂肪乳が4℃から15℃の温度にて、最大で6週間の期間まで保存したものである、請求項5または6のいずれかに記載の風味劣化の評価方法、である。
請求項8に記載の発明は、請求項5から7のいずれかに記載の風味劣化の評価方法を用いて、風味面の品質を管理することを特徴とする、低脂肪乳の製造方法、である。
従来では、官能評価のような主観的な評価方法でしか、牛乳類(製品)の風味劣化を管理できなかった。これに対して、本発明によれば、客観的な評価方法で、牛乳類の風味劣化を管理できることとなり、風味面の品質の安定した製品を提供できることとなる。
本願発明者らは、牛乳類の風味劣化について、客観的な評価方法を提供することを目的として、その風味劣化の指標成分となりうる物質を実験的に探索して検証した。その結果、牛乳類に含まれるラクトン類が、牛乳類の風味劣化についての官能評価と強い相関関係を示す指標成分となる物質であることが判明した。すなわち、牛乳類に含まれるラクトン類を定量することにより、牛乳類の風味劣化を適切に評価できることを見出した。
本発明において、牛乳類の風味劣化の指標成分であるラクトン類とは、環状エステルを持つ物質の総称であり、炭素原子が2個以上で、酸素原子が1個からなる複素環式化合物の一種であって、複素環を形成する酸素原子に隣接した炭素原子にケトン基が置換した構造である。牛乳類に含まれるラクトン類として、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、δ−トリデカラクトン、δ−テトラデカラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン等を挙げられる。これらは一般的に、風味の良好な香気成分(フレーバー)として有名である。例えば、δ−デカラクトン及びδ−ドデカラクトンでは、ミルク・バター様の香りを呈し、ミルクフレーバー等に使用されている。
牛乳類のラクトン類の定量方法では、その具体的な作業手順等は特に限定されないが、ラクトン類が揮発性を有する成分であることから、ガスクロマトグラフ(GC)による定量方法が望ましく、ラクトン類の検出の特異性から、ガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)による定量方法が望ましく、ラクトン類の検出感度の観点から、撹拌子吸着抽出−ガスクロマトグラフ/質量分析計(SBSE−GC/MS)による定量方法、もしくはヘッドスペース固相マイクロ抽出−ガスクロマトグラフ/質量分析計(HS−SPME−GC/MS)による定量方法がより望ましい。
SBSEとは例えば、特開2000−298121号公報に開示されている方法である。固定相を液相とした溶媒抽出の原理を応用した試料抽出方法であり、分配係数による物質移動を利用している。具体的には、磁石を内蔵したガラス製撹拌子に、固定相としてポリジメチルシロキサン等の成分をコーティングし、この撹拌子を試料(溶液)中で撹拌させて、試料(溶液)中の分析対象の成分(化学物質)を前記のポリジメチルシロキサン等に吸着させて抽出する方法である。この方法は、安価で簡易に濃縮分析ができることから、食品、香気成分、大気、農薬等を分析対象とした手軽な濃縮分析のツールとして用いられている。このとき、試料から分析対象の成分を抽出した後に、撹拌子を加熱して、分析対象の成分を脱着し、その後に、例えば、GC/MS等に導入して分析することが望ましい。
SPMEとは例えば、特表平05−506715号に開示されている方法である。細いニードルにポリジメチルシロキサン等の固相成分をコーティングし、この固相部分に試料(溶液)中の分析対象の成分(化学物質)を吸着させた後に、当該ニードルをGC/MS等の注入口に挿入して、分析対象の成分を加熱脱着させる方法である。分析対象の成分の捕集方法として、試料(溶液)中等にニードルを直に浸漬(接触)させる方法と、所定の容器内のヘッドスペースにある試料(気体)中等にニードルを暴露させる方法がある。このとき、試料(溶液)とニードルが直に接触しないため、試料中の様々な妨害物質から影響されにくいため、前者の捕集方法に比べて、後者の捕集方法が望ましい。
本願発明者らは、牛乳類の保存試験を実施し、それらの牛乳類の風味について、官能評価及びGC/MSによる機器分析を実施した。まず、ロットが同一の牛乳類を試料として、冷蔵(10℃)保存し、専門パネルにより官能評価を実施したところ、冷蔵保存3週間後まで、風味は特に大きく変動しなかったが、冷蔵保存の4週間後から、風味が著しく劣化することが判明した。このとき、冷蔵保存の4週間後から、官能評価において「後味がべたつく」、「バター様の風味となる」、「すっきり感が無くなる」等の意見が出された。
一方、上記の官能評価に用いた試料(牛乳類)について、GC/MSによる機器分析を実施した。分析対象の成分は、硫黄化合物(ジメチルサルファイド、ジメチルジサルファイド等)、ケトン類(2−ペンタノン、2−ヘプタノン、2−ノナノン等)、アルデヒド類(ヘキサナール、ノナナール、ベンズアルデヒド等)、アルコール類(1−オクタノール、1−ブタノール等)、遊離脂肪酸類(ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸等)、δ−ラクトン類(δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、δ−トリデカラクトン、δ−テトラデカラクトン等)、γ−ラクトン類(γ−ノナラクトン、γ−ドデカラクトン等)とした。
GC/MSによる機器分析の結果によると、硫黄化合物、ケトン類、アルデヒド類、アルコール類、遊離脂肪酸類では、冷蔵保存中において、それらの検出量の変化は小さかった。そして、官能評価による風味が著しく劣化した冷蔵保存の4週間後からでも、それらの検出量が大きく増減している傾向は認められなかった。
このとき、GC/MSによる機器分析の結果によると、δ−ラクトン類及びγ−ラクトン類では、冷蔵保存の3週間後までに、それらの検出量が大きく増加し、それ以降には、穏やかに増加する傾向が認められた。この機器分析の結果の傾向は、官能評価の結果の傾向とよく相関(一致)し、δ−ラクトン類及びγ−ラクトン類の検出量により、牛乳類の風味劣化の程度を評価できることが見出された。ラクトン類は香料の成分にも用いられている物質であり、特にδ−デカラクトンやδ−ドデカラクトンはミルク・バター様の良好な香りを呈する物質として知られている。そのような良好な香りを呈する成分が風味劣化の指標成分となることは、これまでに全く知られていない驚くべき事実であった。
なお、本発明において、「牛乳類」とは、通常の牛乳をはじめ、生乳、成分調整牛乳、低脂肪乳や無脂肪乳等の加工乳、乳飲料、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、牛乳以外の乳そのもの等である。これら牛乳類において、本発明の風味劣化の評価方法を適用することができる。
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。なお、この実施例は、本発明を限定するものではない。
[実施例1]
官能評価による牛乳の風味劣化の評価試験
試料として「明治おいしい牛乳」(125mL、紙製容器入り、株式会社明治製)を20本用意し、冷蔵(10℃)保存した。冷蔵保存の0、2、3、4、5、6週間後に、試料を採取し、牛乳の風味について十分に訓練されたパネル(専門パネル)の4名により、官能評価を実施した。官能評価において、点数付けの方法は、「おいしい牛乳として許容できる限界」を「3点」とし、「風味が良好である」を「5点」、「風味が非常に悪い」を「1点」とした。「4点」「2点」は、それぞれ「3点」との中間の評価とした。官能評価の結果を表1に示した。表中の「官能評価得点」では、専門パネル4名の評価点の平均値を示した。
Figure 0005931452
官能評価の結果から、冷蔵保存の3週間目まで、牛乳(試料)の風味は大きく変動しなかったが、冷蔵保存の4週間目から、牛乳の風味が著しく劣化した。官能評価の点数の低い牛乳では、「後味がべたつく」、「バター様の風味となる」、「すっきり感が無くなる」等の意見が出された。
[実施例2]
SBSE−GC/MS法による香気成分(ラクトン類)の分析試験
試料として「明治おいしい牛乳」(125mL、紙製容器入り、株式会社明治製)を20本用意し、冷蔵(10℃)保存した。冷蔵保存の0、1、2、3、4、6週間後に試料を採取し、SBSE−GC/MS法により、香気成分の分析試験を実施した。これら試料の10gを超純水により希釈して、50mLにフィルアップした。そして、これら希釈試料の11gずつをバイアルビン(20mL容)の2本に採取した。その後に、それぞれの試料に撹拌子であるツイスター(ゲステル社製)1本を接触(浸漬)させ、室温(約20℃)にて、500rpmで1時間撹拌させながら、それぞれの試料の香気成分(分析対象の成分)をツイスターに吸着させた。ツイスターを取り出し、それら2本をチューブ(TDS Thermal Desorption tubes、GESTEL社製)に入れ、オートサンプラー(「COMBIPAL」、エーエムアール社製)の所定箇所にセットしてから、加熱脱着装置(「TDS3(Thermal desorption system)」、アジレント・テクノロジー社製)を用いて、分析対象の成分を加熱して脱着させた。具体的には、試料を250℃に加熱しながら、香気成分を放出させ、コールドトラップを−150℃に設定して、香気成分を濃縮した。
そして、これらの濃縮物を、オートサンプラーに接続しているGC/MS(機種名「HP5973」、アジレント・テクノロジー社製)で分析した。GCのキャリアガスにはヘリウムを用い、流速は36cm/秒とした。GCカラムは「DB−WAX」(アジレント・テクノロジー社製、30m×内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いた。GCカラムの昇温条件は、40℃で5分間保持してから、5℃/分で250℃まで上昇させた後に、そのまま250℃で10分間保持した。MS法による分析対象の成分(物質)の検出では、トータルイオンクロマトグラムとマススペクトルの結果から、ライブラリに照合して確認した。加えて、標準品のリテンションタイムを別途分析し、それと照合して確認した。香気成分の分析の結果を表2に示した。なお、表2では、冷蔵保存の0週間後の試料(0週保存品)のピーク面積を1として、各週間後の試料のピーク面積を相対値で表現している。
Figure 0005931452
香気成分の分析の結果から、冷蔵保存の6週間後(6週保存品)において、δ−ラクトン類は、1.8倍から2.7倍に、γ−ラクトン類は、1.7倍から3.5倍に、それぞれ大きく増加することが判明した。特にδ−ラクトン類では、冷蔵保存の2週間後(2週保存品)までに、その検出量が大きく増加し、それ以降には、穏やかに増加する傾向が認められた。この「SBSE−GC/MS法による香気成分の分析試験」の結果は、実施例1の「官能評価による牛乳の風味劣化の評価試験」の結果とよく相関し、δ−ラクトン類及びγ−ラクトン類が牛乳類の風味劣化の指標成分として有用であることが判明した。
[実施例3]
HS−SPME−GC/MS法による香気成分(ラクトン類)の分析試験
試料として「明治おいしい牛乳」(125mL、紙製容器入り、株式会社明治製)を20本用意し、冷蔵(10℃)保存した。冷蔵保存の0週間後及び6週間後に試料を採取し、HS−SPME−GC/MS法により、香気成分の分析試験を実施した。これら試料の10gをバイアルビン(20mL容)に採取して密封した。そして、これらのバイアルビンをオートサンプラーの所定箇所にセットし、バイアルビンのヘッドスペース(気相部を意味する)に、固相マイクロファイバー(DVB/Carboxen/PDMS製、2cm)を暴露させながら、60℃で40分間加熱処理し、それぞれの試料の香気成分(分析対象の成分)を抽出した。
そして、これらの抽出物を、オートサンプラーに接続しているGC/MS(機種名「HP5973」、アジレント・テクノロジー社製)で分析した。GCのキャリアガスにはヘリウムを用い、流速は36cm/秒とした。GCカラムは「DB−WAX」(アジレント・テクノロジー社製、30m×内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いた。カラムの昇温条件は、40℃で5分間保持してから、15℃/分で250℃まで上昇させた後に、そのまま250℃で10分間保持した。MS法による分析対象の成分(物質)の検出では、トータルイオンクロマトグラムとマススペクトルの結果から、ライブラリに照合して確認した。加えて、標準品のリテンションタイムを別途分析し、それと照合して確認した。香気成分の分析の結果を表3に示した。表中の数値の単位はμg/Lである。このとき、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトン、γ−ドデカラクトンの定量では、それぞれの標準品を用いた標準添加法により検出値を算出した。そして、それぞれの標準品として、δ−デカラクトン及びγ−ドデカラクトンは、和光純薬工業社製、δ−ドデカラクトンは、東京化成工業社製のものを用いた。
Figure 0005931452
香気成分の分析の結果から、冷蔵保存の6週間後(6週保存品)において、δ−デカラクトンは、3.4倍、δ−ドデカラクトンは、3.25倍、γ−ドデカラクトンは、3倍に増加することが判明した。この「HS−SPME−GC/MS法による香気成分の分析試験」の結果は、実施例2の「SBSE−GC/MS法による香気成分の分析試験」の結果とよく相関し、δ−ラクトン類及びγ−ラクトン類が牛乳類の風味劣化の指標成分として有用であることが改めて判明した。そして、SBSE−GC/MS法だけでなく、HS−SPME−GC/MS法でも官能評価の代用となりうることが示された。
[実施例4]
ラクトン類を添加した牛乳の風味劣化の評価試験
試料として「明治おいしい牛乳」(125mL、紙製容器入り、株式会社明治製)に対し、実施例3における冷蔵保存の6週間後の試料(6週保存品)と同等の濃度になるように、δ−ラクトン類の標準品(δ−デカラクトン及びδ−ドデカラクトン)を加えた試料、γ−ドデカラクトンの標準品を加えた試料、δ−ラクトン類の標準品及びγ−ドデカラクトンの両方の標準品を加えた試料、及び無添加の試料の合計で4種の試料を用意し、専門パネルの3名により、官能評価を実施した。それぞれの標準品には、実施例3と同じものを用いた。官能評価の結果を表4に示した。
Figure 0005931452
ラクトン類を添加した牛乳による官能評価の結果から、ラクトン類により、牛乳類の風味劣化が良好に再現されることが判明し、牛乳類の風味劣化の指標成分として、ラクトン類を使用できることが改めて実証された。なお、δ−ラクトン類あるいはγ−ラクトン類を単独で添加した牛乳でも、その風味劣化は十分に再現されるが、δ−ラクトン類及びγ−ラクトン類の両方を添加した牛乳では、その風味劣化が一層明確に再現されることが判明した。したがって、ラクトン類を指標成分とした牛乳類の風味劣化の評価方法では、δ−ラクトン類及びγ−ラクトン類の両方を指標成分とすることが望ましく、このことにより、牛乳類の風味劣化を一層正確に評価できると考えられた。
[実施例5]
低脂肪乳の風味劣化の評価試験
試料として「明治おいしい低脂肪乳」(1L、紙製容器入り、株式会社明治製)を20本用意し、冷蔵(10℃)保存した。冷蔵保存の0、2、4、6週間後に試料を採取し、実施例3と同様にして、HS−SPME−GC/MS法による香気成分の分析試験を実施すると共に、実施例1と同様にして、官能評価(専門パネルの6名)による低脂肪乳の風味劣化の評価試験を実施した。香気成分の分析の結果と官能評価の結果を表5に示した。なお、HS−SPME−GC/MS法において、冷蔵保存の0週間後の試料(0週保存品)のピーク面積を1として、各週間後の試料のピーク面積を相対値で表現した。官能評価において、点数付けの方法は、実施例1と同様にして、その結果を専門パネルの6名による平均値で表示した。
Figure 0005931452
前記の結果から、低脂肪乳でも、官能評価による風味劣化の評価試験の結果と、ラクトン類の濃度の増加がよく相関し、ラクトン類を指標成分とした牛乳類の風味劣化の評価方法は、低脂肪乳を含めて、広範囲の牛乳類にも適用できることが実証された。
[実施例6]
試料の冷蔵保存の温度の違いによる風味劣化の評価試験
試料として「明治おいしい牛乳」(1L、紙製容器入り、株式会社明治製)を40本用意し、20本を冷蔵の4℃で保存すると共に、20本を冷蔵の10℃で保存した。冷蔵保存(4℃と10℃)の0、2、3、4週後に試料を採取し、実施例2と同様にして、SBSE−GC/MS法による香気成分の分析試験を実施すると共に、実施例1と同様にして、官能評価(専門パネルの5名)による牛乳の風味劣化の評価試験を実施した。香気成分の分析の結果と官能評価の結果を表6に示した。なお、SBSE−GC/MS法において、冷蔵保存の0週間後の試料(0週保存品)のピーク面積を1として、各週間後の試料のピーク面積を相対値で表現した。官能評価において、点数付けの方法は、実施例1と同様にして、その結果を専門パネルの5名による平均値で表示した。
Figure 0005931452
前記の結果から、低温の4℃では、10℃よりも、牛乳の風味劣化が緩慢に進行すると考えられた。そして、低温の4℃で保存した場合(4℃保存品)では、10℃で保存した場合(10℃保存品)よりも、牛乳の官能評価の点数が高くなり、ラクトン類の増加量は小さくなった。一方、低温の4℃で保存した場合(4℃保存品)でも、10℃で保存した場合(10℃保存品)と同じく、官能評価による風味劣化の評価試験の結果と、ラクトン類の濃度の増加がよく相関した。したがって、ラクトン類を指標成分とした牛乳類の風味劣化の評価方法は、風味劣化が進行しにくい低温の条件を含めて、広範囲の温度にも適用できることが実証された。
[実施例7]
試料の包装形態の違いによる風味劣化の評価試験
試料として「明治おいしい牛乳」(1L、紙製容器入り、株式会社明治製)、及び「明治おいしい牛乳」(180mL、ガラス製ビン入り、株式会社明治製)を20本ずつ用意し、それぞれのロットが同一の試料(製品)を冷蔵(10℃)保存した。冷蔵保存の0、2、3、4週後に試料を採取し、実施例2と同様にして、SBSE−GC/MS法による香気成分の分析試験を実施すると共に、実施例1と同様にして、官能評価(専門パネルの5名)による牛乳の風味劣化の評価試験を実施した。香気成分の分析の結果と官能評価の結果を表7に示した。なお、SBSE−GC/MS法において、冷蔵保存の0週間後の試料(0週保存品)のピーク面積を1として、各週間後の試料のピーク面積を相対値で表現した。官能評価において、点数付けの方法は、実施例1と同様にして、その結果を専門パネルの5名の平均値で表示した。
Figure 0005931452
前記の結果から、紙製容器入り試料(1L)でも、ガラス製ビン入り試料(180mL)でも、官能評価による風味劣化の評価試験の結果と、ラクトン類の濃度の増加がよく相関した。一般的に製品の包装形態の違いにより、光透過性、酸素透過性、微生物学的な防御性等の性質が異なり、それらの違いが製品(内容物)にも影響する可能性が考えられる。しかしながら、ラクトン類を指標成分とした牛乳類の風味劣化の評価方法は、製品の包装形態の違いに影響されずに適用できることが実証された。
以上の実施例から、牛乳類に含まれるラクトン類を定量することにより、牛乳類の風味劣化を妥当に評価できることが実証された。
[比較例1]
ラクトン類以外の香気成分の分析試験
試料として「明治おいしい牛乳」(125mL、紙製容器入り、株式会社明治製)を20本用意し、冷蔵(10℃)保存した。冷蔵保存の0、1、2、3、4、6週後に試料を採取し、ラクトン類以外の香気成分の分析試験を実施した。硫黄化合物類、ケトン類、アルデヒド類、アルコールでは、実施例3と同様にして、HS−SPME−GC/MS法により分析した。遊離脂肪酸類のうち、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸では、実施例3と同様にして、HS−SPME−GC/MS法により分析し、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸では、実施例2と同様にして、SBSE−GC/MS法により分析した。これら分析の結果を表8に示した。なお、結果は、冷蔵保存の0週間後の試料(0週保存品)のピーク面積を1として、各週間後の試料のピーク面積を相対値で表現した。
Figure 0005931452
前記の結果から、ラクトン類以外の香気成分では、いずれも大きく増減せず、実施例1の「官能評価による牛乳の風味劣化の評価試験」の結果と相関するような傾向は認められなかった。したがって、これらの香気成分では、牛乳類の風味劣化の指標成分になり得ないことが判明した。
従来では、官能評価等のような主観的な評価方法でしか、牛乳類(製品)の風味劣化を管理できなかった。これに対して、本発明によれば、牛乳類の風味劣化について客観的な評価方法を提供できる。また、本発明を用いることにより、牛乳類の風味劣化を適切に管理及び把握できることとなり、品質の安定した牛乳類の製造方法を提供できることとなる。

Claims (8)

  1. γ−ドデカラクトンを定量することを特徴とする牛乳の風味劣化の評価方法。
  2. γ−ドデカラクトンをSBSE−GC/MS法にて定量することを特徴とする、請求項1に記載の風味劣化の評価方法。
  3. 乳が4℃から15℃の温度にて、最大で6週間の期間まで保存したものである、請求項1または2のいずれかに記載の風味劣化の評価方法。
  4. 請求項1からのいずれかに記載の風味劣化の評価方法を用いて、風味面の品質を管理することを特徴とする、牛乳の製造方法。
  5. δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトン、γ−ドデカラクトンのいずれか1つを定量することを特徴とする低脂肪乳の風味劣化の評価方法。
  6. δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトン、γ−ドデカラクトンのいずれか1つをHS−SPME−GC/MS法にて定量することを特徴とする、請求項5に記載の風味劣化の評価方法。
  7. 低脂肪乳が4℃から15℃の温度にて、最大で6週間の期間まで保存したものである、請求項5または6のいずれかに記載の風味劣化の評価方法。
  8. 請求項5から7のいずれかに記載の風味劣化の評価方法を用いて、風味面の品質を管理することを特徴とする、低脂肪乳の製造方法。
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