JP5931427B2 - 金属微粒子担持体とその製造方法および有機化合物の反応方法 - Google Patents

金属微粒子担持体とその製造方法および有機化合物の反応方法 Download PDF

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Description

本発明は、無機材料または炭素材料からなる担体に金属微粒子を担持した金属微粒子担持体とその製造方法、および金属微粒子担持体による触媒に関するものである。
従来、アミド化合物は、医薬品、ポリマー、界面活性剤、潤滑剤等の合成中間体として利用されており、例えば、ビタミンB3の構成成分であるニコチンアミドは工業的に生産されている。このようなアミド化合物の代表的な製法として、ニトリル化合物への水の付加反応(水和反応)が知られている。
ニトリル化合物の水和反応は触媒の存在下に行われるが、従来、酸触媒法や微生物触媒法が知られている。酸触媒法は、硫酸、塩酸、ポリリン酸等を触媒に用いる方法であり、微生物触媒法は、微生物の代謝によりニトリル化合物への水の付加反応を行い、その産物としてアミド化合物を得る方法である。
一方、バルクの金属と単分子の金属錯体との中間に位置するナノサイズの金属微粒子は、量子サイズ効果や特異な表面構造に由来する独特な触媒活性を発現することから、新しい触媒材料として盛んに研究が行われている。
このような金属微粒子を触媒に用いてニトリル化合物の水和反応を行う技術として、従来、ハイドロキシアパタイトの表面に銀を固定化した触媒を用いる方法(特許文献1参照)、パラジウムまたはルテニウムをアルミナ等の金属酸化物に担持した固体触媒を用いる方法(特許文献2参照)等が提案されている。
しかしながら、従来のニトリル化合物の水和反応のうち、酸触媒法は、反応温度を高温にする必要があり、反応がカルボン酸まで進みやすく、中間体のアミド化合物を得るのが難しい。また、反応後の中和過程において、多量の無機塩等の副生成物が生じるという問題点があった。また、微生物触媒法は、酵素活性を維持するための反応条件が限定されるため、製造できるアミド化合物が少なく、汎用性が低いという問題点があった。
一方、金属微粒子を触媒に用いてニトリル化合物の水和反応を行う技術のうち、ハイドロキシアパタイトの表面に銀を固定化した触媒を用いる方法は、脂肪族のニトリル化合物ではほとんど反応が進まないという問題点があった。
また、パラジウムまたはルテニウムをアルミナ等の金属酸化物に担持した固体触媒を用いる方法は、転化率が十分でないという問題点があった。
金属微粒子を触媒に用いた反応に関する技術としては、上記のようなニトリル化合物の水和反応の他、酸化反応、還元反応、クロスカップリング反応等も検討されている。例えば、金ナノ粒子をチタニア等の無機酸化物に担持させた触媒を用いて、超臨界二酸化炭素中でアルコールの酸化反応を行う方法(特許文献3参照)、金、銀、または銅をハイドロタルサイト表面に固定化した金属微粒子触媒を用いて、アルコールの脱水素反応によりカルボニル化合物を合成する方法(特許文献4参照)等が知られている。また、パラジウムを酸性酸化アルミニウムに固定化させた触媒を用いた鈴木・宮浦カップリング反応等が知られている(特許文献5参照)。
特開2009−233653号公報 特開2005−170821号公報 特開2010−12437号公報 特開2008−221080号公報 特開2009−28645号公報 国際公開第WO2010/098402号パンフレット 特願2009−144656
日本化学会第89春季年会(2009)講演予稿集 2L3−13 ナノ学会第7回大会講演予稿集 226頁
しかしながら、以上のように各種反応に関する金属微粒子による触媒、特に無機材料からなる担体に担持させた金属微粒子担持体に関する各種の技術が提案されているが、環境調和、製造の容易性、触媒としての汎用性等の観点を考慮するとさらなる改良も望まれている。
例えば、近年では、化学物質の製造の際に、原料から副生成物に至るまで汚染原因となる化学物質を使用せず、発生させないことで環境汚染を未然に防止しようとするグリーンケミストリーに適した環境調和型の触媒が望まれている。特に、化学物質の製造の際の合成反応において、水系の溶媒を使用できることが望まれている。
なお、本発明者等は、第11族の金属微粒子について、NOx、SOx等の酸性ガスの発生源である、硫黄、窒素を含有せず、さらに金属微粒子を極性溶媒に安定に分散可能な金属微粒子とその製造方法および金属微粒子分散液を提案している(特許文献6、非特許文献1、2参照)。また第9族、第10族の遷移金属の金属微粒子についても同様の技術を提案している(特許文献7参照)。
しかしながら、無機材料または炭素材料からなる担体へ担持した金属微粒子担持体について、特定の反応への触媒としての可能性、例えばニトリル化合物の水和反応への触媒としての可能性についての示唆や実際の検討に関する開示はされていない。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、環境に優しい極性溶媒、特に水系の溶媒を用いて簡易な工程で製造することができる金属微粒子担持体とその製造方法、および有機化合物の水和反応、酸化反応、還元反応、およびクロスカップリング反応等について、高効率に目的化合物を得ることができる金属微粒子担持体による触媒を提供することを課題としている。
本発明の金属微粒子担持体は、下記式(I):
(式中、X1は(CH2)nCOOHまたはその塩、あるいは対応するカルボキシレートイオンを示し(n=0〜3)、mは1〜5の整数を示す。Mは第9族、第10族、および第11族の遷移金属から選ばれる少なくとも1種の金属を示す。)で表される、金属Mとフェニル骨格との結合を有する金属微粒子を無機材料または炭素材料からなる担体に担持して得られるものである。
この金属微粒子は、下記式(II):
(式中、X2は(CH2)nCOOHを示し(n=0〜3)、mは1〜5の整数を示す。)で表されるジアゾニウム塩と、第9族、第10族、および第11族の遷移金属から選ばれる少なくとも1種の金属による金属化合物とを、還元剤の存在下に極性溶媒中で反応させて得られたものであることが好ましい。
この金属微粒子担持体は、無機材料または炭素材料からなる担体に金属微粒子を担持した後、焼成したものであることが好ましい。
本発明の金属微粒子担持体の製造方法は、前記の金属微粒子担持体の製造方法であって、極性溶媒の金属微粒子分散液に、無機材料または炭素材料からなる担体を含浸する工程を含むことを特徴とする。好適には金属微粒子を含浸担持した担体を100〜1000℃で0.5〜10時間焼成する工程を含むことを特徴とする。
本発明の触媒は、前記の金属微粒子担持体からなる。この触媒は、有機化合物の水和反応、酸化反応、還元反応、およびクロスカップリング反応から選ばれる少なくとも1種の反応に好適に用いることができる。
本発明によれば、式(I)の金属微粒子は水、アルコール等の極性溶媒に分散可能であり、金属微粒子分散液に無機材料または炭素材料からなる担体を含浸することにより、金属微粒子が担体にナノサイズで有効かつ強固に分散担持した金属微粒子担持体を得ることができる。
また、環境負荷の小さい極性溶媒、特に水系の溶媒を使用できることから、金属微粒子担持体の製造に際して環境負荷を低減できる。
また、この金属微粒子担持体を触媒として用いることにより、有機化合物の水和反応、酸化反応、還元反応、およびクロスカップリング反応について、高効率に目的化合物を得ることができる。さらに、反応終了後、ろ過、遠心分離等の操作により回収し、再度反応に利用することもできる。
実施例において合成した金属微粒子担持体の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の金属微粒子担持体は、上記式(I)で表される金属Mとフェニル骨格との結合を有する金属微粒子を無機材料または炭素材料からなる担体に担持して得られるものである。式(I)中、X1は(CH2)nCOOHまたはその塩、あるいは対応するカルボキシレートイオンを示し、(n=0〜3)、mは1〜5の整数を示す。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アミン塩等が挙げられる。金属微粒子におけるX1として(CH2)nCOOHとその塩との両方が混在するものであってもよい。また、金属微粒子がX1としてカルボキシレートイオンを有する場合としては、反応を行う場合等において分散液の状態である場合が挙げられる。式(I)中、Mは第9族、第10族、および第11族の遷移金属から選ばれる少なくとも1種の金属を示す。金属としては単一金属もしくは合金が挙げられる。
この金属微粒子担持体の原料となる金属微粒子は、上記式(II)で表されるジアゾニウム塩と、第9族、第10族、および第11族の遷移金属から選ばれる少なくとも1種の金属による金属化合物とを、還元剤の存在下に極性溶媒中で反応させて得ることができる。
式(II)で表されるジアゾニウム塩は、例えば、テトラフルオロほう酸水溶液に、対応するアミノフェニルカルボン酸を添加、攪拌し、亜硝酸ナトリウム水溶液を滴下し熟成した後、ろ別、溶剤洗浄、再結晶等の精製を行うことにより得ることができる。
式(II)で表されるジアゾニウム塩と反応させる第11族の遷移金属化合物としては、第11族の遷移金属である金、銀、および銅の塩、錯体等を用いることができ、極性溶媒に溶解できるものであれば特に限定されない。
第11族の遷移金属化合物としての金化合物は、例えば、テトラクロロ金(III)酸(H(AuCl4))、テトラクロロ金(III)酸ナトリウム(Na(AuCl4))、ジエチルアミン金(III)三塩化物((C2H5)2NH(AuCl3))、ジシアノ金(I)酸カリウム(KAu(CN)2)、シアン化金(I)(AuCN)等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、テトラクロロ金(III)酸が好ましい。
第11族の遷移金属化合物としての銀化合物は、例えば、銀塩、銀錯体等を用いることができ、極性溶媒に溶解できるものであれば特に限定されない。例えば、硝酸銀、過塩素酸銀、硫酸銀、酢酸銀、酸化銀、チオシアン酸化銀、シアン化銀、シアン酸化銀、炭酸銀、亜硝酸銀、リン酸銀、乳酸銀、シュウ酸銀等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、硝酸銀が好ましい。
第11族の遷移金属化合物としての銅化合物は、例えば、硝酸銅(II)、塩化銅(II)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)、水酸化銅、ギ酸銅、シュウ酸銅等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、硝酸銅(II)が好ましい。
式(II)で表されるジアゾニウム塩と反応させる第9族または第10族の遷移金属化合物としては、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金等の第9族または第10族の遷移金属の塩、錯体等を用いることができ、極性溶媒に溶解できるものであれば特に限定されない。
第9族の遷移金属化合物としてのロジウム化合物は、例えば、塩化ロジウム(III)、硝酸ロジウム(III)、硫酸ロジウム(III)、酢酸ロジウム(II)、酢酸ロジウム(III)、四酢酸二ロジウム(II)、ヘキサクロロロジウム(III)酸アンモニウム、ヘキサクロロロジウム(III)酸カリウム、ヘキサクロロロジウム(III)酸ナトリウム、ロジウム(III)アセチルアセトナート、ヘキサアミンロジウム(III)トリクロライド、ペンタアミンクロロロジウム(III)ジクロライド、ヘキサシアノロジウム(III)酸カリウム等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、塩化ロジウム(III)が好ましい。
第10族の遷移金属化合物としてのニッケル化合物は、例えば、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、硫酸ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、テトラシアノニッケル(II)酸カリウム、ニッケル(II)アセチルアセトナート、ヘキサアミンニッケル(II)ジクロライド、ヘキサアミンジニトロニッケル(II)、水酸化ニッケル(II)、安息香酸ニッケル(II)、スルファミン酸ニッケル(II)、過塩素酸ニッケル(II)、しゅう酸ニッケル(II)等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、硝酸ニッケル(II)が好ましい。
第10族の遷移金属化合物としてのパラジウム化合物は、例えば、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム、テトラクロロパラジウム(II)酸カリウム、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム、パラジウム(II)アセチルアセトナート、ジクロロジアミンパラジウム(II)、テトラアミンパラジウム(II)ジクロライド、ジアミンジニトロパラジウム(II)、テトラシアノパラジウム(II)酸カリウム、水酸化パラジウム(II)等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、硝酸パラジウム(II)が好ましい。
第10族の遷移金属化合物としての白金化合物は、例えば、ヘキサクロロ白金(IV)酸、塩化白金(II)、テトラクロロ白金(II)酸アンモニウム、テトラクロロ白金(II)酸カリウム、テトラクロロ白金(II)酸ナトリウム、ヘキサクロロ白金(IV)酸アンモニウム、ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム、ヘキサクロロ白金(IV)酸ナトリウム、白金(II)アセチルアセトナート、ジクロロジアミン白金(II)、テトラアミン白金(II)ジクロライド、ジアミンジニトロ白金(II)、テトラシアノ白金(II)酸カリウム等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ヘキサクロロ白金(IV)酸が好ましい。
還元剤としては、ジアゾニウム塩と、金属化合物とを同時に効率よく還元できるものを選択する必要がある。例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)、水素化トリエチルホウ素リチウム(LiBH(C2H5)3)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)、水素化ホウ素カリウム(KBH4)、水素化ホウ素テトラブチルアンモニウム((CH3(CH2)3)4NBH4)、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウム((CH3)4NBH4)等の水素化ホウ素塩系還元剤、ジボラン(B2H6)、アンモニアボラン(NH3-BH3)、トリメチルアンモニアボラン((CH3)3N-BH3)等のボラン系還元剤を用いることができるが、中でも水素化ホウ素ナトリウムが好ましく用いられる。
反応溶媒として用いる極性溶媒としては、水、THF(テトラヒドロフラン)、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコールが挙げられる。中でも、水、メタノールが好ましい。
式(II)で表されるジアゾニウム塩と、上記の金属化合物とを、還元剤の存在下に極性溶媒中で反応させて、式(I)で表される金属Mとフェニル骨格との結合を有する金属微粒子を合成することができる。反応は、100℃未満、好ましくは30℃以下の温度で行うことができる。
その後、必要に応じて水洗、溶剤洗浄、遠心分離、ろ過、電気透析等で精製を行い、窒素化合物、ハロゲン化合物等を除去し、無機材料または炭素材料からなる担体に担持して金属微粒子担持体を製造するための金属微粒子分散液を得ることができる。
本発明の金属微粒子担持体は、金属微粒子分散液に、無機材料または炭素材料からなる担体を含浸する工程を経て得ることができる。
無機材料または炭素材料からなる担体としては、合成物、天然物のいずれであっても構わない。
無機材料からなる担体としては、特に限定されないが、例えば、金属酸化物、金属硫化物、鉱物等を用いることができる。
金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、A12O3(アルミナ)、TiO2(チタニア)、SiO2(シリカ)、MgO(マグネシア)、ZrO2、La2O3、Y2O3、WO3、V2O5、CdO、Ta2O5、Nb2O5、SnO2、Bi2O3、CeO2、CuO、Fe2O3、In2O3、B2O3、CaO、BaO、ThO2等、またはこれらを含む複合物または混合物、例えば合成ゼオライト、SiO2-Al2O3、SiO2-TiO2、SiO2-MgO、SiO2-V2O5、SiO2-Cr2O3、SiO2-TiO2-MgO、Bi2(MoO4)3、SrTiO3、LaAlO3、LiTaO、LiNbO、KTaO3、KNbO3、NdGaO3等を用いることができる。
なお、上記無機酸化物は、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO4)3、BaSO4、KNO3、Mg(NO3)2、Al(NO3)3、Na2O、K2O、Li2O等の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても構わない。
金属硫化物としては、特に限定されないが、例えば、CdS、ZnS、PbS、WS3、In2S3等を用いることができる。
鉱物としては、特に限定されないが、例えば、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイト、ゼオライト、ハイドロタルサイト等を用いることができる。
炭素材料からなる担体としては、特に限定されないが、例えば、活性炭、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン等を用いることができる。
本発明の金属微粒子担持体の製造方法は、特に限定されないが、金属微粒子分散液に無機材料または炭素材料からなる担体を含浸する工程として、例えば、触媒調製法における吸着法(担体に対して飽和吸着量以下の金属微粒子分散液を含浸させる)、平衡吸着法(担体に対して飽和吸着量以上の金属微粒子分散液を含浸させ、過剰分はろ過する)、蒸発乾固法(担体を金属微粒子分散液に浸漬後に溶媒を蒸発させて金属微粒子を固定化する)、Pore-filling法(担体の細孔容積分の金属微粒子分散液を加えて全量吸い取らせる)、Incipient wetness, Dry impregnation法(担体の細孔容積分の金属微粒子分散液を少しずつ加えて担体表面が均一に濡れた状態にする)、噴霧乾燥法(担体を絶えず乾燥状態に保ちながら金属微粒子分散液を噴霧する)などの含浸方法により金属微粒子を担持することができる。その後、必要に応じて洗浄、乾燥、焼成などの工程を経て、金属微粒子を担体に分散固定することができる。
含浸工程では例えば、室温(25℃)〜150℃、1〜24時間、攪拌機等により攪拌しながら行うことができる。金属微粒子分散液中の金属濃度は、特に限定されないが、通常金属濃度として、1ppm〜100g/Lであり、金属微粒子と担体との比率は、触媒等の用途への適合性も考慮して適宜の比率とすることができるが、通常担体に対して金属微粒子を0.1〜80重量%とすることが好ましい。
含浸後、必要に応じて、ろ過、水洗し、室温〜110℃、常圧〜真空で乾燥することができ、乾燥後焼成(あるいは乾燥も兼ねて昇温しながら焼成)することもできる。焼成工程は通常100〜1000℃程度、0.5〜10時間の範囲から選択でき、好ましくは300〜600℃、1〜5時間である。焼成雰囲気については特に限定はなく、空気(大気)中あるいは窒素、アルゴンガス、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気中、酸素ガス等の酸化雰囲気中、水素ガス、一酸化炭素等の還元性雰囲気中等であっても良い。高温、長時間の焼成によっては担体の有効な比表面積の減少並びに金属微粒子が移動して凝集及び焼結する(シンタリング現象)ため、例えば、触媒として用いる場合は焼成温度、時間による金属微粒子担持体のキャラクタリゼーション(組成、組織、構造、反応性などの情報)を把握することで好適に選択することができる。
このようにして製造された本発明の金属微粒子担持体は、金属微粒子が担体にナノサイズで有効かつ強固に分散担持している。また、金属微粒子および金属微粒子担持体の製造時の反応溶媒として水、THF(テトラヒドロフラン)、アルコールなどの極性溶媒を用いることができ、特に水を用いることができることから、環境負荷、コストを低減できる。
本発明の金属微粒子担持体は、各種の用途、例えば、有機化合物の反応や排ガスの浄化に用いる触媒、燃料電池分野における電極触媒、電子部品に用いられる導電性材料、抗菌剤等に用いることができる。特に、各種の反応の触媒に好適に用いることができ、中でも、有機化合物を基質とする水和反応、酸化反応、還元反応、およびクロスカップリング反応に好適に用いることができる。
本発明の金属微粒子担持体を有機化合物の水和反応の触媒に用いる場合、反応基質の有機化合物としては、二重結合または三重結合を有する有機化合物、例えば、炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合、炭素−ヘテロ原子二重結合、または炭素−ヘテロ原子三重結合を有する有機化合物等が挙げられる。あるいは、シラン化合物の水和によるシラノール化合物の合成等にも用いることができる。
炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有する有機化合物としては、特に限定されないが、例えば、オレフィン、芳香族炭化水素等が挙げられる。
オレフィンとしては、好ましくはC2-C20、より好ましくはC2-C10の化合物を用いることができる。具体的には、例えば、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ブタジエン、イソプレン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、オクタジエン等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、好ましくはC6-C20、より好ましくはC6-C14の化合物を用いることができる。具体的には、例えば、ベンゼン、スチレン、α-メチルスチレン、インデン等が挙げられる。
これらの有機化合物を水和することにより、対応するアルコール等を合成することができる。
炭素−ヘテロ原子二重結合、または炭素−ヘテロ原子三重結合を有する有機化合物としては、特に限定されないが、例えば、ニトリル基を有する有機化合物、カルボニル基を有する有機化合物等が挙げられる。これらの有機化合物を水和することにより、対応するアミド、酸、アルコール等を合成することができる。
反応系に存在させる触媒としての金属微粒子担持体の含有量、反応温度、反応圧力および反応時間等は、反応基質の有機化合物や金属微粒子の種類等に応じて適宜に設定して行うことができる。
例えば、ニトリル化合物の水和によるアミド化合物の合成では、金属微粒子担持体の触媒を用いて、水を含む極性溶媒中でニトリル化合物を水和反応させ、対応するアミド化合物を合成する。原料のニトリル化合物としては、ニトリル基を有する有機化合物であれば特に限定されず、各種のものを用いることができる。
ニトリル基を有する有機化合物としては、例えば、ニトリル基の残基として飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、ヘテロ原子含有基、およびこれらに置換基を導入したもの等を有するものを用いることができる。
飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、sec-ペンチル基、neo-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の好ましくはC1-C18、より好ましくはC1-C10の直鎖または分岐のアルキル基等が挙げられる。
不飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、ビニル基、アリル基等の好ましくはC2-C18、より好ましくはC2-C10の直鎖または分岐のアルケニル基、エチニル基等の好ましくはC2-C18、より好ましくはC2-C10の直鎖または分岐のアルキニル基等が挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基等の好ましくはC3-C18、より好ましくはC3-C10のシクロアルキル基、シクロヘキセニル基等の好ましくはC3-C18、より好ましくはC3-C10のシクロアルケニル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等の好ましくはC6-C22、より好ましくはC6-C14のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等の好ましくはC7-C26、より好ましくはC7-C18のアリールアルキル基等が挙げられる。
芳香族複素環基としては、例えば、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基等の好ましくはC4-C22、より好ましくはC4-C14の単環または多環の複素環基等が挙げられる。
ヘテロ原子含有基としては、例えば、炭素鎖の途中または末端にエーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、エステル基、アミド基等を有するC2-C18、より好ましくはC2-C10のヘテロ原子含有基等が挙げられる。
上記の有機基に導入される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、C1-C6アルキル基、C2-C6アルケニル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルコキシカルボニル基、C6-C10アリールオキシ基、C2-C8ジアルキルアミノ基、C2-C8アシル基等が挙げられる。
また、原料のニトリル化合物として2以上のニトリル基を有するものを用いることもできる。この場合、ニトリル基の残基としては、例えば、価数以外は上記に例示した有機基に対応するものが挙げられる。
ニトリル化合物の水和反応を行う極性溶媒としては、例えば、水、THF(テトラヒドロフラン)、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等のC2-C5の直鎖または分岐のアルコール等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、極性溶媒として水を好適に用いることができ、環境負荷、コストの低減にも繋がり有効である。
ニトリル化合物への付加に用いられる水和反応のための水の使用量は、例えば、ニトリル化合物1molに対して水が1mol以上であればよく、1〜1000molの範囲で好適に用いることができる。
金属微粒子担持体の使用量は、特に限定されないが、例えば金属微粒子として銀微粒子を用いる場合には、ニトリル化合物1molに対して銀が0.00001〜1molとなる範囲で極性溶媒中に銀微粒子担持体を分散させて反応を行うことができる。
水和反応を行う際には、金属微粒子担持体の分散液に原料のニトリル化合物を溶解または懸濁させ、必要に応じて反応温度等の条件を調整しながら行うことができる。水和反応の反応温度、反応時間、反応圧力は、使用原料や溶媒の沸点等に応じて適宜のものとされ、特に限定されないが、例えば、反応温度0〜200℃、反応時間0〜120時間で、常圧または加圧下において行うことができる。
以上のような条件で、金属微粒子担持体が分散された水を含む極性溶媒中でニトリル化合物を水和反応させることにより、対応するアミド化合物を合成することができる。得られたアミド化合物は、ろ過、抽出、晶析、再結晶等により分離精製することができる。そして金属微粒子担持体は、反応終了後、ろ過、遠心分離等の操作により回収し、そのまま、または必要に応じて水や有機溶媒により洗浄した後、再度反応に利用することもできる。
本発明の金属微粒子担持体の触媒によれば、ほとんど副生成物が生じることなく、高選択的にアミド化合物を製造することができ、脂肪族、芳香族、複素環ニトリル化合物等の広範なニトリル化合物を原料として対応するアミド化合物を高効率に製造することができる。
次に、酸化反応としては、例えば、アルコールの酸化によるカルボニル化合物の合成、オレフィンの酸化によるエポキシ化合物の合成、一酸化炭素から二酸化炭素への酸化反応、炭化水素の酸化による水と二酸化炭素への分解反応、水素分子(H2)の酸化による水素カチオン(H+)の生成等が挙げられる。
アルコールの酸化によるカルボニル化合物の合成は、各種のアルコール、特に限定されないが、例えば、次式(1)〜(3)で表されるものを用いて行うことができる。
(式(1)中、R1は、水素原子または、ハロゲノ基、ニトロ基、アルコキシ基、フェノキシ基、もしくはアシロキシ基で置換されていてもよい炭化水素基、あるいは複素環基を示す。)式(2)中、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または、ハロゲノ基、ニトロ基、アルコキシ基、フェノキシ基、もしくはアシロキシ基で置換されていてもよい炭化水素基、あるいは複素環基を示し、あるいは、R2およびR3が一緒になって、これらが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。式(3)中、Xは単結合または2価の炭化水素基を示し、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子または、ハロゲノ基、ニトロ基、アルコキシ基、フェノキシ基、もしくはアシロキシ基で置換されていてもよい炭化水素基、あるいは複素環基を示し、あるいは、R4およびR5が一緒になって、Xおよびそれらが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。)
上記式(1)中、R1が炭化水素基である場合、この炭化水素基はC1-C20のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、またはアリールアルケニル基であるのが好ましく、この炭化水素基に置換していてもよいアルコキシ基およびアシロキシ基は、例えばC1-C10である。R1が複素環基である場合、この複素環基は酸素、窒素および硫黄から選ばれるヘテロ原子を含むものが好ましく、またこの複素環は5員環または6員環であるのが好ましい。
上記式(2)中、R2またはR3が炭化水素基である場合、この炭化水素基はC1-C20のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、またはアリールアルケニル基であるのが好ましく、この炭化水素基に置換していてもよいアルコキシ基およびアシロキシ基は、例えばC1-C10である。R2またはR3が複素環基である場合、この複素環基は酸素、窒素および硫黄から選ばれるヘテロ原子を含むものが好ましく、またこの複素環は5員環または6員環であるのが好ましい。R2およびR3が一緒になって、それらが結合する炭素原子とともに環を形成している場合、この環はC5-C20の単環または多環であるのが好ましい。
上記式(3)中、Xが2価の炭化水素基である場合、この炭化水素基はC1-C20のアルキリデン基、アルキレン基、アリーレン基であるのが好ましい。R4またはR5が炭化水素基である場合、この炭化水素基はC1-C20のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、またはアリールアルケニル基であるのが好ましく、この炭化水素基に置換していてもよいアルコキシ基およびアシロキシ基は、例えばC1-C10である。R4またはR5が複素環基である場合、この複素環基は酸素、窒素および硫黄から選ばれるヘテロ原子を含むものが好ましく、またこの複素環は5員環または6員環であるのが好ましい。R4およびR5が一緒になって、Xおよびそれらが結合する炭素原子とともに環を形成している場合、この環はC5-C20の単環または多環であるのが好ましい。
酸化反応で使用する分子状酸素源としては、例えば、酸素ガス、空気、または酸素ガスもしくは空気を窒素、二酸化炭素、ヘリウム等の不活性ガスで希釈したものを用いることができる。アルコールと分子状酸素との接触は、例えば、反応液を分子状酸素含有ガスの雰囲気下に置くことにより行ってもよく、あるいはこの液中に分子状酸素含有ガスを吹き込むことにより行ってもよい。
次に、還元反応としては、例えば、ニトロ化合物の還元によるアミンの合成、アルケンおよびアルキンの水素化反応、窒素酸化物の還元による窒素への分解反応、酸素分子(O2)の還元による水(H2O)の生成等が挙げられる。
ニトロ化合物の還元によるアミンの合成は、少なくとも1個のニトロ基を含有する有機化合物を水素と反応させることにより行うことができる。
例えば、分子内に少なくとも1個のニトロ基と、好ましくはC6-C18の炭素原子を有する芳香族ニトロ化合物を用いることができる。この芳香族ニトロ化合物は、ハロゲノ基で置換されていてもよい。
具体的には、例えば、ニトロベンゼン、ニトロトルエン、ニトロキシレン、ニトロナフタレン、ニトロアニリン、ニトロアルコール、およびこれらのハロゲノ基置換体等が挙げられる。
アルケンおよびアルキンの水素化反応は、例えば、反応性二重結合を有する有機化合物の炭素−炭素二重結合水素化反応(還元)がその1つである。これは、反応性炭素−炭素二重結合に水素を添加するものであり、本発明の触媒を使用することにより、例えばオレフィンに水素が添加されて、これが炭素−炭素単結合となり、容易にオレフィンが還元される。
反応基質である反応性二重結合を有する化合物としては、反応性二重結合を有するものであれば特に限定されず、例えば、オレフィン、ジエン化合物、不飽和環式炭化水素化合物はもちろんのこと、分子内に反応性二重結合を1個以上有するものであれば、高分子化合物でも、如何なる官能基および/または芳香環を置換基として有しているものでもよい。
以上において、反応系に存在させる触媒としての金属微粒子担持体の含有量、反応温度、反応圧力および反応時間等は、反応基質の有機化合物等に応じて適宜に設定して行うことができる。
次に、クロスカップリング反応としては、例えば、有機ハロゲン化物と有機ホウ素化合物等を反応基質とし、パラジウムを用いたクロスカップリング反応等を挙げることができる。
従来、クロスカップリング反応のためのパラジウム触媒として、例えば特許文献5の他、Pd粒子がフルオロアルキル基含有オリゴマーで複合化されたPdナノコンポジットを用いる技術(特開2010−235942号公報)、ゼオライト−パラジウム複合体を用いる技術(特開2010−69415号公報)、4級アンモニウム塩および水の共存下でクロスカップリング反応を行う際にパラジウム−炭素触媒を用いる技術(特開2009−298727号公報)等が知られている。
しかしながら、環境負荷(有機溶媒の使用)、製造の容易性、コスト面、触媒としての汎用性等の観点から、さらなる改良が望まれている。このような背景において、本発明の触媒は、水系でクロスカップリング反応が可能であり環境負荷が小さく、Pd-Ag複合体や少量のPdでも触媒活性があるため、コストを抑えることができる。
本発明の触媒は、鈴木・宮浦カップリング等の各種のクロスカップリング反応の触媒として用いることができる。鈴木・宮浦カップリング(Suzuki-Miyaura coupling)は、パラジウム触媒と塩基などの求核種の作用により、有機ホウ素化合物RB(OR')2または(R)3Bと、有機ハロゲン化物R''Xとをクロスカップリング反応させることで、ビアリール化合物、アルキルアリール化合物、または置換オレフィン類等R-R''を合成する反応である(Miyaura, Norio; Yamada, Kinji; Suzuki, Akira (1979). "A new stereospecific cross-coupling by the palladium-catalyzed reaction of 1-alkenylboranes with 1-alkenyl or 1-alkynyl halides". Tetrahedron Letters 20 (36): 3437-3440., Miyaura, N.; Suzuki, A. J. Chem. Soc. Chem. Commun. 1979, 866., Miyaura, Norio; Suzuki, Akira (1995). "Palladium-Catalyzed Cross-Coupling Reactions of Organoboron Compounds". Chemical reviews 95 (7): 2457-2483.)。
上記において、有機ホウ素化合物RB(OR')2または(R)3Bnの有機基Rは飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、ヘテロ原子含有基、およびこれらに置換基を導入したもの等が挙げられる。R'は水素原子またはアルキル基を示す。有機ハロゲン化物R''Xの有機基R''は飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、ヘテロ原子含有基、およびこれらに置換基を導入したもの等が挙げられる。ハロゲン原子Xは好ましくはヨウ素原子、臭素原子である。
上記反応により、ビアリール化合物、アルキルアリール化合物、アルケニルアリール化合物、ジエン化合物等を合成することができる。
金属微粒子担持体の使用量は、特に限定されないが、例えば金属微粒子としてパラジウム微粒子を用いる場合には、反応基質1molに対してパラジウムが0.00001〜1molとなる範囲で極性溶媒中にパラジウム微粒子担持体を分散させて反応を行うことができる。
クロスカップリング反応を行う極性溶媒としては、例えば、水、THF(テトラヒドロフラン)、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等のC2-C5の直鎖または分岐のアルコール等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、極性溶媒として水を好適に用いることができ、環境負荷、コストの低減にも繋がり有効である。
添加する塩基はアルカリ金属の炭酸塩、リン酸塩等が好適である。
反応を行う際には、金属微粒子担持体の分散液に原料化合物等を溶解または懸濁させ、必要に応じて反応温度等の条件を調整しながら行うことができる。反応温度、反応時間、反応圧力は、使用原料や溶媒の沸点等に応じて適宜のものとされ、特に限定されないが、例えば、反応温度0〜150℃、反応時間1〜24時間で、常圧または加圧下において行うことができる。
以上のような条件で、金属微粒子担持体が分散された水を含む極性溶媒中でクロスカップリング反応を行うことにより、対応するビアリール化合物等を合成することができる。得られた化合物は、ろ過、抽出、晶析、再結晶等により分離精製することができる。そして金属微粒子担持体は、反応終了後、ろ過、遠心分離等の操作により回収し、そのまま、または必要に応じて水や有機溶媒により洗浄した後、再度反応に利用することもできる。
本発明の触媒は、他の様々なクロスカップリング反応においても良好な触媒として用いることができる。例えば、溝呂木・ヘック反応、根岸カップリング、右田・小杉・スティルカップリング、薗頭カップリング、ブッフバルト・ハートウィック反応、熊田・玉尾・コリューカップリング等の反応においても好適に用いることができる。
溝呂木・ヘック反応(Mizoroki-Heck reaction)は、パラジウムを触媒として塩基存在下、有機ハロゲン化物(R-X)でアルケン(H2C=CHR')の水素を置換する反応である(Mizoroki, T.; Mori, K.; Ozaki, A. Arylation of Olefin with Aryl Iodide Catalyzed by Palladium. Bull. Chem. Soc. Jap. 1971, 44, 581., Heck, R. F.; Nolley, Jr., J. P. Palladium-catalyzed vinylic hydrogen substitution reactions with aryl, benzyl, and styryl halides. J. Org. Chem. 1972, 37 (14), 2320-2322.)
R-XにおいてXはハロゲン原子、トリフラート基等であり、有機基Rは不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、ヘテロ原子含有基、およびこれらに置換基を導入したもの等が挙げられる。アルケンH2C=CHR'は、少なくとも一つの水素原子を有し、電子不足であるアクリラート、エステル、アクリロニトリル等のオレフィンが用いられる。
根岸カップリング(Negishi coupling)は、有機亜鉛化合物R-ZnXと有機ハロゲン化物R'-Yとをパラジウム触媒の存在下に縮合させC-C結合生成物を得る手法である(Negishi, E. Acc. Chem. Res. 1982, 15, 340-348., Erdik, E. Tetrahedron 1992, 48, 9577-9648.)。
上記においてX、Yはハロゲンであり、亜鉛上の有機基Rは不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、ヘテロ原子含有基、およびこれらに置換基を導入したもの等が挙げられる。有機ハロゲン化合物R'-Yにおいて有機基R'は飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、ヘテロ原子含有基、およびこれらに置換基を導入したもの等が挙げられる。
右田・小杉・スティルカップリング(Migita-Kosugi-Stille coupling)は、パラジウム触媒の作用により、有機スズ化合物R'-Sn-R''3と有機ハロゲン化物R-Xとをクロスカップリングさせて炭素-炭素結合を生成する反応である(Kosugi, M. Sasazawa, K.; Shimizu, Y.; Migita, T. Chem. Lett. 1977, 301., Milstein, D.; Stille, J. K. J. Am. Chem. Soc. 1978, 100, 3636.)。
R-XにおいてXはハロゲン原子、トリフラート基等であり、有機基Rは不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、ヘテロ原子含有基、およびこれらに置換基を導入したもの等が挙げられる。有機スズ化合物上の有機基R'は飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、ヘテロ原子含有基、およびこれらに置換基を導入したもの等が挙げられる。
薗頭カップリング(Sonogashira coupling)はパラジウム触媒、銅触媒、塩基の作用によりアルキン化合物R'-C≡C-Hの末端アルキンと有機ハロゲン化物R-Xとをクロスカップリングさせてアルキニル化された不飽和化合物R-C≡C-R'を得る反応である(Sonogashira, K.; Tohda, Y.; Hagiwara, N. Tetrahedron Lett. 1975, 50, 4467.)。
R-XにおいてXはハロゲン原子、トリフラート基等であり、有機基Rは不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、ヘテロ原子含有基、およびこれらに置換基を導入したもの等が挙げられる。
ブッフバルト・ハートウィッグ反応(Buchwald-Hartwig reaction)は有機ハロゲン化物R-XとアミンNHR'R''とをパラジウム触媒および塩基の存在下で結合させる反応、およびそれから派生した反応である(John P. Wolfe and Stephen L. Buchwald (2002), "Palladium-catalyzed amination of aryl halides and aryl triflates: N-Hexyl-2-methyl-4-methoxyaniline and N-methyl-N-(4-chlorophenyl)aniline", Org. Synth. 78: 23 Coll. Vol. 10: 423., Frederic Paul, Joe Patt, John F. Hartwig (1994). "Palladium-catalyzed formation of carbon-nitrogen bonds. Reaction intermediates and catalyst improvements in the hetero cross-coupling of aryl halides and tin amides". J. Am. Chem. Soc. 116 (13): 5969-5970., Anil S. Guram and Stephen L. Buchwald (1994). "Palladium-Catalyzed Aromatic Aminations with in situ Generated Aminostannanes". J. Am. Chem. Soc. 116 (17): 7901 - 7902.)。
R-XにおいてXはハロゲン原子、トリフラート基等であり、有機基Rは不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、ヘテロ原子含有基、およびこれらに置換基を導入したもの等が挙げられる。パラジウムを触媒として、1級アミンまたは2級アミン(NHR'R'')が芳香環等に付加する。
熊田・玉尾・コリューカップリング(Kumada-Tamao-Corriu coupling)とは、グリニャール試薬(RMgX)と有機ハロゲン化物R'X'とを、パラジウム等の触媒の作用により縮合させて炭素-炭素結合を作る合成反応である(Tamao, K.; Sumitani, K.; Kumada, M. J. Am. Chem. Soc. 1972, 94, 4374-4376., Kumada, M. Pure Appl. Chem. 1980, 52, 669., Corriu, R. J. P.; Massse, J. P. J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1972, 144.)。
上記において有機基RおよびR'は飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、ヘテロ原子含有基、およびこれらに置換基を導入したもの等が挙げられる。
上記クロスカップリング反応に用いる基質中の有機基R, R'およびR''において、飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、sec-ペンチル基、neo-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の好ましくはC1-C18、より好ましくはC1-C10の直鎖または分岐のアルキル基等が挙げられる。
不飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、ビニル基、アリル基等の好ましくはC2-C18、より好ましくはC2-C10の直鎖または分岐のアルケニル基、エチニル基等の好ましくはC2-C18、より好ましくはC2-C10の直鎖または分岐のアルキニル基等が挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基等の好ましくはC3-C18、より好ましくはC3-C10のシクロアルキル基、シクロヘキセニル基等の好ましくはC3-C18、より好ましくはC3-C10のシクロアルケニル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等の好ましくはC6-C22、より好ましくはC6-C14のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等の好ましくはC7-C26、より好ましくはC7-C18のアリールアルキル基等が挙げられる。
芳香族複素環基としては、例えば、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基等の好ましくはC4-C22、より好ましくはC4-C14の単環または多環の複素環基等が挙げられる。
ヘテロ原子含有基としては、例えば、炭素鎖の途中または末端にエーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、エステル基、アミド基等を有するC2-C18、より好ましくはC2-C10のヘテロ原子含有基等が挙げられる。
上記の有機基に導入される置換基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、C1-C6アルキル基、C2-C6アルケニル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルコキシカルボニル基、C6-C10アリールオキシ基、C2-C8ジアルキルアミノ基、C2-C8アシル基等が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例において使用した金属微粒子の代表的な合成例は次のとおりである。
<合成例1>
下記式で表される化合物1を合成した。
42%テトラフルオロほう酸水溶液(152.45g、0.73mol)に、4-アミノ安息香酸(50.0g、0.36mol)を添加、攪拌した。40%亜硝酸ナトリウム水溶液(62.89g、0.36mol)を10〜15℃下、30分で滴下し、10分間熟成した後、ろ別、再結晶等の精製を行うことにより、化合物1として、白色〜淡黄色粉末47.15g(収率55%)を得た。
<合成例2>
テトラクロロ金(III)酸(0.3395g、0.8243mmol)をイオン交換水(33.8g)に溶解させ、N2を20分間フローし、脱気した。N2雰囲気下、合成例1の化合物1(0.1945g、0.8244mmol)を加え、5分間攪拌させた後、イオン交換水27.3gで溶解させた水素化ホウ素ナトリウム(0.0156g、0.4124mmol)を室温下、3時間で滴下した。滴下後、1時間熟成し、黒紫色分散液が得られた。得られた分散液を遠心分離、ろ過、水洗、溶剤洗浄等で精製し、金含有量505ppmの黒紫色水分散液が得られた。
紫外−可視吸収スペクトル 540nm
赤外線吸収スペクトル 1585, 1383cm-1:C=O伸縮振動、762 cm-1:C−H面外変角振動
<合成例3>
硝酸銀(0.2592g、1.526mmol)をイオン交換水(150g)に溶解させ、N2を20分間フローし、脱気した。N2雰囲気下、合成例1の化合物1(0.360g、1.525mmol)を加え、5分間攪拌させた後、イオン交換水45gで溶解させた水素化ホウ素ナトリウム(0.0577g、1.525mmol)を室温下、3時間で滴下した。滴下後、2時間熟成し、黒黄色分散液が得られた。得られた分散液を遠心分離、ろ過、水洗、溶剤洗浄等で精製し、銀含有量707ppmの黒黄色分散液85gが得られた。
紫外−可視吸収スペクトル 420nm
赤外線吸収スペクトル 1693cm-1:C=O伸縮振動、797 cm-1:C−H面外変角振動
<合成例4>
硝酸銅(II)(0.2400g、0.9934mmol)をイオン交換水(80.0g)に溶解させ、N2を20分間フローし、脱気した。N2雰囲気下、合成例1の化合物1(0.2344g、0.9935mmol)を加え、5分間攪拌させた後、イオン交換水20gで溶解させた水素化ホウ素ナトリウム(0.0376g、0.9939mmol)を室温下、2時間で滴下した。滴下後、2時間熟成し、黒黄色分散液が得られた。得られた分散液を遠心分離、ろ過、水洗、溶剤洗浄等で精製し、銅含有量1050ppmの茶色水分散液が得られた。
紫外−可視吸収スペクトル 290nm
赤外線吸収スペクトル 1703, 1587, 1387cm-1:C=O伸縮振動、785 cm-1:C−H面外変角振動
<合成例5>
塩化ロジウム(III)3水和物(0.1500g、0.570mmol)をイオン交換水(40.0g)に溶解させ、N2を20分間フローし、脱気した。N2雰囲気下、合成例1の化合物1(0.1344g、0.570mmol)を加え、5分間攪拌させた後、イオン交換水10.0gで溶解させた水素化ホウ素ナトリウム(0.0216g、0.571mmol)を室温下、2時間で滴下した。滴下後、2時間熟成し、黒色分散液が得られた。得られた分散液を遠心分離、ろ過、水洗、溶剤洗浄等で精製し、ロジウム含有量656ppmの黒色水分散液が得られた。
紫外−可視吸収スペクトル 321nm
赤外線吸収スペクトル 1703cm-1:C=O伸縮振動、779 cm-1:C−H面外変角振動
<合成例6>
硝酸パラジウム(II)2.4水和物(0.4909g、1.79mmol)をイオン交換水(110.0g)に溶解させ、N2を15分間フローし、脱気した。N2雰囲気下、合成例1の化合物1(0.4232g、1.79mmol)を加え、5分間攪拌させた後、イオン交換水28gで溶解させた水素化ホウ素ナトリウム(0.0679g、1.79mmol)を室温下、2時間で滴下した。滴下後、2時間熟成し、黒色分散液が得られた。得られた分散液を遠心分離、ろ過、水洗、溶剤洗浄等で精製し、パラジウム含有量2289ppmの黒色水分散液が得られた。
紫外−可視吸収スペクトル 295、330nm
赤外線吸収スペクトル 1682cm-1:C=O伸縮振動、756 cm-1:C−H面外変角振動
<合成例7>
ヘキサクロロ白金(IV)酸6水和物(0.1500g、0.290mmol)をイオン交換水(35g)に溶解させ、N2を10分間フローし、脱気した。N2雰囲気下、合成例1の化合物1(0.0683g、0.289mmol)を加え、5分間攪拌させた後、イオン交換水15gで溶解させた水素化ホウ素ナトリウム(0.0110g、0.291mmol)を室温下、2時間で滴下した。滴下後、2時間熟成し、黒色分散液が得られた。得られた分散液を遠心分離、水洗等で精製し、白金含有量337ppmの黒黄色水分散液が得られた。
紫外−可視吸収スペクトル 323nm
赤外線吸収スペクトル 1693cm-1:C=O伸縮振動、770cm-1:C−H面外変角振動
<合成例8>
硝酸銀(0.2048g、1.206mmol)および硝酸パラジウム(II)2.4水和物(0.3300g、1.206mmol)をイオン交換水(155g)に溶解させ、N2を20分間フローし、脱気した。N2雰囲気下、合成例1の化合物1(0.167g、0.708mmol)を加え、5分間攪拌させた後、イオン交換水81gで溶解させた水素化ホウ素ナトリウム(0.0456g、1.205mmol)を氷冷下(7℃)、2時間で滴下した。滴下後、1時間熟成し、黒色水分散液が得られた。得られた分散液を遠心分離、ろ過、水洗、溶剤洗浄等で精製し、銀含有量607ppmおよびパラジウム含有量588ppmの黒黄色分散液89gが得られた。
紫外−可視吸収スペクトル 289、294nm
赤外線吸収スペクトル 1681cm-1:C=O伸縮振動、756 cm-1:C−H面外変角振動
<実施例1>
合成例3の銀微粒子分散液(Ag:400ppm)100mL中に、担体としてγ−アルミナ(無水酸化アルミニウム、メルクケミカル社製)2.0gを加え、室温で4時間攪拌した。含浸後、吸引ろ過、水洗した後、60℃で真空乾燥することにより、銀−アルミナ担持体(Ag/A12O3:焼成なし)を得た。その透過型電子顕微鏡写真を図1に示す。このように100nm以下の担持された微粒子(黒色部分)が確認された。
<実施例2>
実施例1と同様にして得た銀−アルミナ担持体を400℃で3時間大気中焼成し、銀−アルミナ担持体(Ag/A12O3:400℃焼成)を得た。その透過型電子顕微鏡写真を図1に示す。このように100nm以下の担持された微粒子(黒色部分)が確認された。
<実施例3>
実施例1において、銀微粒子分散液の代わりに合成例6のパラジウム微粒子分散液(Pd:400ppm)を用いて、実施例1と同様にしてパラジウム−アルミナ担持体(Pd/A12O3:焼成なし)を得た。その透過型電子顕微鏡写真を図1に示す。このように100nm以下の担持された微粒子(黒色部分)が確認された。
<実施例4>
実施例3と同様にして得たパラジウム−アルミナ担持体を400℃で3時間大気中焼成し、パラジウム−アルミナ担持体(Pd/A12O3:400℃焼成)を得た。その透過型電子顕微鏡写真を図1に示す。このように100nm以下の担持された微粒子(黒色部分)が確認された。
<実施例5>
実施例1において、銀微粒子分散液の代わりに合成例7の白金微粒子分散液(Pt:400ppm)を用いて、実施例1と同様にして白金−アルミナ担持体(Pt/A12O3:焼成なし)を得た。その透過型電子顕微鏡写真を図1に示す。このように100nm以下の担持された微粒子(黒色部分)が確認された。
<実施例6>
実施例5と同様にして得た白金−アルミナ担持体を400℃で3時間大気中焼成し、白金−アルミナ担持体(Pt/A12O3:400℃焼成)を得た。その透過型電子顕微鏡写真を図1に示す。このように100nm以下の担持された微粒子(黒色部分)が確認された。
<実施例7>
実施例1において、担体としてγ−アルミナの代わりにハイドロタルサイト(キョーワード500、協和化学工業製)を用いて、実施例1と同様にして銀−ハイドロタルサイト担持体(Ag/HT:焼成なし)を得た。その透過型電子顕微鏡写真を図1に示す。このように100nm以下の担持された微粒子(黒色部分)が確認された。
<実施例8>
実施例7と同様にして得た銀−ハイドロタルサイト担持体を400℃で3時間大気中焼成し、銀−ハイドロタルサイト担持体(Ag/HT:400℃焼成)を得た。その透過型電子顕微鏡写真を図1に示す。このように100nm以下の担持された微粒子(黒色部分)が確認された。
<実施例9>
実施例1と同様にして、無機材料または炭素材料からなる担体としてγ−アルミナ、チタニア(ST-01、石原産業製)、ハイドロキシアパタイト(ヒドロキシリン酸カルシウム、Aldrich社製)、活性白土(水澤化学工業製)、ハイドロタルサイト、活性炭(日本エンバイロケミカルズ社製)、カーボンブラック(ケッチェンブラックECP-600JD、ライオン社製)を用いて、合成例2〜8の各金属微粒子を担持させ、銀−アルミナ担持体、銀−チタニア担持体、銀−ハイドロキシアパタイト担持体、銀−活性白土担持体、銀−ハイドロタルサイト担持体、銀−活性炭担持体、銀−カーボンブラック担持体、金−アルミナ担持体、金−チタニア担持体、金−ハイドロキシアパタイト担持体、金−ハイドロタルサイト担持体、金−カーボンブラック担持体、銅−アルミナ担持体、ロジウム−アルミナ担持体、ロジウム−ハイドロキシアパタイト担持体、ロジウム−ハイドロタルサイト担持体、ロジウム−カーボンブラック担持体、パラジウム−アルミナ担持体、パラジウム−ハイドロキシアパタイト担持体、パラジウム−ハイドロタルサイト担持体、パラジウム−カーボンブラック担持体、白金−アルミナ担持体、白金−ハイドロキシアパタイト担持体、白金−ハイドロタルサイト担持体、白金−カーボンブラック担持体、パラジウム・銀−アルミナ担持体を得た。各金属微粒子分散液(Metal:400ppm)に各担体を加えて含浸後、ろ過した濾液をICP(誘導結合プラズマ)分析により測定した結果、いずれもほとんど金属は含まれておらず、さらに濾過残物を透過型電子顕微鏡により観察して金属微粒子のほとんどが担体に担持されていたことを確認した。
<実施例10〜21>
実施例1または2と同様にして、合成例3、5、6の各金属微粒子分散液(Metal:400ppm)と表1に示す担体との組み合わせで、金属微粒子担持体を得た。この金属微粒子担持体を用いて表1に示す反応条件にてニトリル化合物の水和反応を行った。反応はオートクレーブ(容量30mL)に、ニトリル化合物(1.0mmol)、反応溶媒として水5mLを加えて加圧条件下で行った。対応するアミド化合物の生成(転化率)はガスクロマトグラフィーまたは1H NMR分光法により確認した。その結果を表1に示す。
<比較例1〜6>
比較例1では、γ−アルミナを触媒として用いて、表1に示す反応条件にてニトリル化合物の水和反応を行った。
比較例2では、ハイドロキシアパタイトを触媒として用いて、表1に示す反応条件にてニトリル化合物の水和反応を行った。
比較例3では、ハイドロタルサイトを触媒として用いて、表1に示す反応条件にてニトリル化合物の水和反応を行った。
比較例4では、カーボンブラックを触媒として用いて、表1に示す反応条件にてニトリル化合物の水和反応を行った。
比較例5では、Ag powder(粒径2-3.5μm、Aldrich社製)を触媒として用いて、表1に示す反応条件にてニトリル化合物の水和反応を行った。
比較例6では、AgNO3を触媒として用いて、表1に示す反応条件にてニトリル化合物の水和反応を行った。
比較例1〜6の反応結果(転化率)を表1に示す。
表1より、金属微粒子担持体を触媒として用いることで、ニトリル化合物を原料として高収率で対応するアミド化合物を得ることができた。さらに、金属微粒子担持体を焼成して、触媒として用いることで、より効率的に水和反応を進行させることができた。また、これまでほとんど反応が進まないとされた脂肪族ニトリル化合物に対しても、触媒活性を有することが認められた。
<実施例22〜36>
実施例1または2と同様にして、合成例2〜7の各金属微粒子分散液(Metal:400ppm)と表2に示す担体との組み合わせで、金属微粒子担持体を得た。この金属微粒子担持体を用いて表2に示す反応条件にてベンジルアルコールの酸化によるベンズアルデヒドの合成を行った。反応は100mLフラスコに、ベンジルアルコール(1.0mmol)、反応溶媒としてキシレン10mLを加えて空気中で行った。ベンズアルデヒドの生成(転化率)はガスクロマトグラフィーにより確認した。その結果を表2に示す。
<比較例7〜9>
比較例7では、γ−アルミナを触媒として用いて、表2に示す反応条件にてベンジルアルコールの酸化反応を行った。
比較例8では、ハイドロタルサイトを触媒として用いて、表2に示す反応条件にてベンジルアルコールの酸化反応を行った。
比較例9では、カーボンブラックを触媒として用いて、表2に示す反応条件にてベンジルアルコールの酸化反応を行った。
比較例7〜9の反応結果(転化率)を表2に示す。
表2より、金属微粒子担持体を触媒として用いることで、酸化反応を効率的に進行させ高収率で目的化合物を得ることができた。さらに、金属微粒子担持体を焼成して、触媒として用いることで、より効率的に反応を進行させることができた。
<実施例37〜48>
実施例1または2と同様にして、合成例3、5、6、7の各金属微粒子分散液(Metal:400ppm)と表3に示す担体との組み合わせで、金属微粒子担持体を得た。この金属微粒子担持体を用いて表3に示す条件にてシクロオクタジエンの還元によるシクロオクタンの合成を行った。反応は100mLフラスコに、シクロオクタジエン(1.0mmol)、反応溶媒としてエタノール10mLを加えて、10mL/min水素気流中で行った。シクロオクタンの生成(転化率)は1H NMR分光法により確認した。その結果を表3に示す。
<比較例10〜14>
比較例10では、γ−アルミナを触媒として用いて、表3に示す反応条件にてシクロオクタジエンの還元反応を行った。
比較例11では、γ−アルミナを400℃で3時間大気中焼成したものを触媒として用いて、表3に示す反応条件にてシクロオクタジエンの還元反応を行った。
比較例12では、ハイドロキシアパタイトを触媒として用いて、表3に示す反応条件にてシクロオクタジエンの還元反応を行った。
比較例13では、カーボンブラックを触媒として用いて、表3に示す反応条件にてシクロオクタジエンの還元反応を行った。
比較例14では、Ag powder(粒径2-3.5μm、Aldrich社製)を触媒として用いて、表3に示す反応条件にてシクロオクタジエンの還元反応を行った。
比較例10〜14の反応結果(転化率)を表3に示す。
表3より、金属微粒子担持体を触媒として用いることで、アルケンの水素化反応を効率的に進行させ高収率で目的化合物を得ることができた。さらに、金属微粒子担持体を焼成して、触媒として用いることで、より効率的に反応を進行させることができた。
<実施例49〜64>
実施例3または4と同様にして、合成例6、8の各金属微粒子分散液(Metal:400ppm)と表4に示す担体との組み合わせで、パラジウムを含有する金属微粒子担持体(金属種Pd:パラジウム-アルミナ担持体、パラジウム-ハイドロキシアパタイト担持体、パラジウム-ハイドロタルサイト担持体、パラジウム-カーボンブラック担持体、および金属種Pd-Ag:パラジウム・銀-アルミナ担持体)を得た。この金属微粒子担持体を用いて表4に示す条件にて鈴木・宮浦カップリング反応を行った。反応は100mLフラスコに、ハロゲン化アリール(1.0mmol)、フェニルボロン酸(1.1mmol)、Na2CO3(2.0mmol)、反応溶媒として水を加えて空気中で行った。ビアリール化合物の生成(転化率)はガスクロマトグラフィーにより確認した。その結果を表4に示す。
表4より、金属微粒子担持体を触媒として用いることで、鈴木・宮浦カップリング反応を水系で進行させることができ、高収率で目的化合物を得ることができた。さらに、金属微粒子担持体を焼成して、触媒として用いることで、より効率的に反応を進行させることができた。また、Pd-Ag複合体や少量のPdでも触媒活性を有することが認められた。
このように本発明の金属微粒子担持体は、水系の溶媒を用いて簡易な工程で製造することができるため環境負荷を低減でき、有機化合物の水和反応、酸化反応、還元反応、およびクロスカップリング反応において、効率的に反応を進行させることができる触媒として有効であることが認められた。

Claims (7)

  1. 下記式(I):
    (式中、X1は(CH2)nCOOHまたはその塩、あるいは対応するカルボキシレートイオンを示し(n=0〜3)、mは1〜5の整数を示す。Mは第9族、第10族、および第11族の遷移金属から選ばれる少なくとも1種の金属を示す。)で表される、金属Mとフェニル骨格との結合を有する金属微粒子が、無機材料または炭素材料からなる担体上に点在している、金属微粒子担持体。
  2. 担体が粉末である、請求項1に記載の金属微粒子担持体。
  3. 請求項1または2に記載の金属微粒子担持体の製造方法であって、下記式(I):
    (式中、X 1 は(CH 2 ) n COOHまたはその塩、あるいは対応するカルボキシレートイオンを示し(n=0〜3)、mは1〜5の整数を示す。Mは第9族、第10族、および第11族の遷移金属から選ばれる少なくとも1種の金属を示す。)で表される、金属Mとフェニル骨格との結合を有する金属微粒子の極性溶媒への分散液に、無機材料または炭素材料からなる担体を含浸する工程を含むことを特徴とする金属微粒子担持体の製造方法。
  4. 金属微粒子を、下記式(II):
    (式中、X2は(CH2)nCOOHを示し(n=0〜3)、mは1〜5の整数を示す。)で表されるジアゾニウム塩と、第9族、第10族、および第11族の遷移金属から選ばれる少なくとも1種の金属による金属化合物とを、還元剤の存在下に極性溶媒中で反応させて得る、請求項3に記載の金属微粒子担持体の製造方法
  5. 金属微粒子を担体に担持した後、この担体を焼成する、請求項3または4に記載の金属微粒子担持体の製造方法
  6. 100〜1000℃で0.5〜10時間焼成する、請求項5に記載の金属微粒子担持体の製造方法。
  7. 請求項1または2に記載の金属微粒子担持体を触媒に用いて、有機化合物の水和反応、酸化反応、還元反応、およびクロスカップリング反応から選ばれる少なくとも1種の反応を行うことを特徴とする有機化合物の反応方法。
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