JP5927244B2 - 酸素同位体濃度分析装置、及び酸素同位体濃度分析方法 - Google Patents
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Description
キャビティリングダウン分光法は、水の同位体(H2 16O、H2 17O、H2 18O)によって吸収波長が異なることを利用した方法である。キャビティリングダウン分光法は、吸収強度比から酸素同位体濃度を求める方法であり、試料(水を主成分とし、酸素同位体を含む試料)を直接分析することが可能であるため、簡便に酸素同位体の濃度を取得することができる。
少量の試料を気化させる装置として、例えば、電気加熱気化(ETV)装置が用いられている。近年では、グラファイトキュベットやタングステン母材とするボートやフィラメントを有する電気加熱気化(ETV)装置が用いられている。
この場合、波長掃引の開始から終了までの期間における水分濃度の変化が速くなり、光吸収強度が変化するため、正確な酸素同位体の光吸収強度比を得ることができなくなってしまうという問題があった。
つまり、水を主成分とする試料に含まれる酸素同位体の濃度を、精度良く取得することが困難であった。
このため、水を主成分とし、かつ酸素同位体の濃度が異なる複数の試料に含まれる酸素同位体の濃度を分析する際に、多くの時間を要してしまうという問題があった。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る酸素同位体濃度分析装置の概略構成を模式的に示す図(系統図)である。
図1では、第1の実施の形態に係る酸素同位体濃度分析装置10の一例として、複数の試料供給部11,12の数が2つの場合を例に挙げて図示する。
また、図1では、キャリアガス供給ライン35−1と同様な構成とされたキャリアガス供給ラインを符号「35−2」とし、流量調節部36−1と同様な構成とされた流量調節部を符号「36−2」とし、第4の加熱部38−1と同様な構成とされた第3の加熱部を符号「38−2」とし、気化器41−1と同様な構成とされた気化器を符号「41−2」とし、試料導入部41−1Aと同様な構成とされた試料導入部を符号「41−2A」として図示する。
キャリアガス供給ライン35−1は、その一端が気化器41−1と接続されており、他端がキャリアガス供給源(図示せず)と接続されている。
キャリアガス供給ライン35−1は、キャリアガス供給源(図示せず)から供給されたキャリアガスを気化器41−1に供給するためのラインである。キャリアガスとしては、例えば、窒素、或いはアルゴンやヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
このように、流量調節部36−1の前段に位置するキャリアガス供給ライン35−1を加熱する第7の加熱部34−1を設けることにより、キャリアガスの体積流量を一定にすることが可能となるため、気化導入した際、得られる2次微分吸収スペクトルにおける水同位体の各吸収線のピーク高さの再現性を高めることができる。
気化器41−1において、気化された試料Aは、キャリアガス供給ライン35−1により輸送されたキャリアガス(具体的には、所定の流量及び温度とされたキャリアガス)により、試料供給ライン45−1に導出される。
気化器41−1のうち、試料導入部41−1Aを除いた部分の材料としては、例えば、ステンレス鋼を用いることができる。気化器41−1としては、例えば、市販のT字型配管を用いることができる。
上記所定の温度としては、試料Aが瞬時に気化する温度が好ましく、上記70℃に限定されない。
フィルター44−1としては、例えば、メッシュサイズ2μmの焼結フィルターを用いることができる。
第2の加熱部46−1としては、例えば、リボンヒータを用いることができる。
このように、流量調節部36−2の前段に位置するキャリアガス供給ライン35−2を加熱する第7の加熱部34−2を設けることにより、キャリアガスの体積流量を一定にすることが可能となるため、気化導入した際、得られる2次微分吸収スペクトルにおける水同位体の各吸収線のピーク高さの再現性を高めることができる。
上記構成とされた試料供給部12は、先に説明した試料供給部11と同様な効果を得ることができる。
接続部14Bは、分析用気化試料供給ライン17の一端と接続されている。
接続部14Dは、廃棄ライン23の一端と接続されている。
一方、試料供給部11に試料A及びキャリアガスを供給し、試料供給部12にキャリアガスのみを連続的に供給させると、該キャリアガスは、接続部14C,14Dを介して、廃棄ライン23により連続的に廃棄される。
具体的には、4方切替バルブ14は、接続部14Bと接続部14Cと間、及び接続部14Aと接続部14Dとの間を接続すると共に、接続部14Aと接続部14Bとの間、及び接続部14Cと接続部14Dとの間が接続されていない状態にする。
一方、試料供給部12に試料B及びキャリアガスを供給し、試料供給部11にキャリアガスのみを連続的に供給させると、該キャリアガスは、接続部14A,14Dを介して、廃棄ライン23により連続的に廃棄される。
これにより、水を主成分とし、かつ酸素同位体の濃度が異なる濃度とされた複数の試料A,Bに含まれる酸素同位体の濃度を、簡便に取得することができる。
このように、所定の温度(例えば、70℃)となるように、4方切替バルブ14を加熱する第3の加熱部15を有することで、気化した試料A及びキャリアガスの温度を所定の温度(例えば、70℃)に保つことができると共に、4方切替バルブ14内における水分の吸着を抑制することができる。
第1の圧力調整部18としては、例えば、自動背圧調節器(オートプレッシャーレギュレータ)を用いることができる。
光透過性円筒部材81は、両端が閉塞端とされた円筒形状とされた部材であり、光透過性を有する材料(例えば、ガラス)で構成されている。
レーザ光導入孔83Aは、第1の反射鏡83の中央部を貫通するように配置されている。レーザ光導入孔83Aの直径は、例えば、4.3mm程度とすることができる。
第1の反射鏡83は、光透過性円筒部材81内に収容されている。第1の反射鏡83は、光透過性円筒部材81の2つの端部のうち、変調されたレーザ光が照射される側に位置する端部の内壁面と平坦面83bとが接触するように、該端部に固定されている。
第2の反射鏡84は、光透過性円筒部材81の2つの端部のうち、レーザ光が照射される側とは反対側に位置する端部の内壁面と平坦面84bとが接触するように、該端部に固定されている。
例えば、第1の反射面83aと第2の反射面84aとの間の距離が320mmで、第1の反射面83aと第2の反射面84aとの間でレーザ光を237回反射させる場合、レーザ光の合計の光路長は、76mとなる。
このように、多重反射光学吸収セル55として、ヘリオットセルを用いることにより、キャビティリングダウン分光分析装置(図示せず)では必要なレーザ光を共振器内で共振させる処理が不要となる。
したがって、共振条件を満たすために必要な高度な光軸調整機構が不要となるため、簡便に分析を行うことができる。
そして、上記光軸調整後に、試料A(または、試料B)の分析に使用する変調されたレーザ光を、可視光が通過した光路と同一の光路を通過するように調節し、レーザ光導入孔83Aを介して、多重反射光学吸収セル55内に導入させればよい。
一方、従来のキャビティリングダウン分光分析装置(図示せず)は、ミラーが汚れて反射率が低下すると、光路長が短くなるため、酸素同位体の濃度の感度が低下してしまう。
第6の加熱部57は、多重反射光学吸収セル55を介して、多重反射光学吸収セル55内の温度が所定の温度(例えば、50℃)となるように加熱を行う。
レーザ照射部61としては、例えば、ファンクションジェネレータ76、及び温度コントローラ内臓LDドライバ77により、1.003KHzの周波数、及び2mAの振幅で変調され、かつ1416nmの付近で波長を掃引可能な一定のレーザ光の温度(例えば、14℃)で、オフセット電流が15mA〜150mAの範囲内で可変な構成とされている。
レーザ光としてダイオードレーザ光を用いる場合、放射光の波長及び強度の変調につながるレーザ電流を変更することによって、上記変調を達成する。
レーザ光は、試料の導入された多重反射光学吸収セル55を通過後、レーザ光検出部69に入射し、電気信号は基本変調周波数(f)、或いは高調波周波数(nf)でロックインアンプ71によって変調される。なお、整数の倍数であるnを用いたその他の高調波(nf)にも同様に適用可能である。
ロックインアンプ71は、取得した2次微分吸収スペクトルに関するデータをデータ収録部72に送信する。
データ収録部72としては、例えば、データ収録装置(DAQ)を用いることができる。
また、パーソナルコンピュータ74は、データ収録部72から得られるロックインアンプの信号すなわち2次微分信号を読み取り、2次微分吸収スペクトルの描画や、各同位体のピーク高さの計算、そのピーク高さ比から同位体濃度を計算するために使用される。
ファンクションジェネレータ76は、パーソナルコンピュータ74から送信されたオフセット電流、変調振幅、変調周波数に関するデジタル信号を受け、レーザ光の変調周波数信号(例えば、オフセット電流:150mA、変調振幅:2mA、変調周波数:1.003KHz)を生成する。
ファンクションジェネレータ76は、ロックインアンプ71にレーザ光の変調周波数信号(例えば、1.003KHz)を供給する。レーザ光の変調周波数信号(例えば、1.003KHz)は、「参照信号」と呼ばれることもある。
温度コントローラ内臓LDドライバ77は、ファンクションジェネレータ76から送信される電圧信号に基づいて、レーザ照射部61から照射されるレーザ光の温度及び電流の制御を行う。
ポンプ26は、排気ライン25に設けられている。試料A(または、試料B)の分析が終了後に、多重反射光学吸収セル55内に残存するガスを排出させるときや、及び多重反射光学吸収セル55内のメモリー効果を除去するときに、ポンプ26は、排気ライン25内に多重反射光学吸収セル55内のガスを排出させる。
このように、排気ライン25に設けられた第2の圧力調整部28を有することにより、多重反射光学吸収セル55内の圧力を所定の圧力となるように保持することが可能となるので、多重反射光学吸収セル55内において、試料A(または、試料B)に含まれる酸素同位体の濃度を安定して、正確に取得することができる。
このように、多重反射光学吸収セル55と第2の圧力調整部28との間に位置する排気ライン25を覆う第8の加熱部58を有することで、第2の圧力調節部28に流れるガスの温度が一定の温度となるように制御して、多重反射光学吸収セル55の圧力をより一定に保持することが可能となるので、再現性良く2次微分吸収スペクトルを測定することができる。
つまり、従来よりも、簡便に、異なる濃度とされた酸素同位体を含む試料A,Bに含まれる酸素同位体濃度の分析を行うことができる。
ここでは、試料供給部11を介して供給した試料Aを分析後に、試料供給部12を介して供給した試料Bを分析する場合を例に挙げて説明する。
4方切替バルブ14には、フィルター44−1,44−2を通過したキャリアガスが供給される。
したがって、気化器41−1,41−2には、所定の流量(例えば、100ccm)で、かつ所定の温度(例えば、70℃程度)とされたキャリアガスが供給される。
また、上記加熱により、分析用気化試料供給ライン17、及び多重反射光学吸収セル55の温度が所定の温度(例えば、50℃)となる。
これにより、分析期間中において、常に一定の温度とされた気化した試料A(または、試料B)を多重反射光学吸収セル55内に供給することが可能となるので、分析装置本体22により取得される試料(試料Aまたは試料B)に含まれる酸素同位体の濃度の精度を向上させることができる。
このように、試料Aが導入される気化器41−1内の圧力が所定の圧力(例えば、300kPaA)となるように調整することで、酸素同位体のピークの安定時間(言い換えれば、ピークが安定的に検出される時間の長さ)を調整する(例えば、ピークが現れる時間を長くする)ことが可能となるので、安定して、試料Aに含まれる酸素同位体の濃度を取得することができる。
このとき、4方切替バルブ14には、フィルター44−1を通過した気化した試料A、及びキャリアガスが供給される。
なお、上記キャリアガス供給工程を行わない場合、マイクロシリンジを用いて試料Aを繰り返し導入する回数は、50〜60回程度必要である。
つまり、従来よりも、簡便に、異なる濃度とされた酸素同位体を含む試料A,Bに含まれる酸素同位体濃度の分析を行うことができる。
上記分析前準備工程により試料Aの酸素同位体濃度が安定した後、試料Aを導入させた気化器41−1内に、再度、試料A(分析用の試料)を導入することで、4方切替バルブ14を介して、多重反射光学吸収セル55内に気化した試料A、及びキャリアガスを供給する(分析用試料供給工程)。
これにより、多重反射光学吸収セル55内において、試料A(または、試料B)に含まれる酸素同位体の濃度が安定するため、正確に試料A(または、試料B)に含まれる酸素同位体濃度を取得することができる。
次いで、レーザ光検出部69では、酸素同位体と衝突したレーザ光の強度が電気信号(レーザ光の強度に関するデータ)に変換され、ロックインアンプ71に該電気信号が送信される。
ロックインアンプ71は、取得した2次微分吸収スペクトルに関するデータをデータ収録部72に送信する。
具体的には、上記キャリアガス供給工程を行わないと、50〜60回程度の試料の導入処理が必要であったが、上記キャリアガス供給工程を行うことで、10回程度に低減することが可能となる。
つまり、従来よりも、簡便に、異なる濃度とされた酸素同位体を含む試料A,Bに含まれる酸素同位体濃度の分析を行うことができる。
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る酸素同位体濃度分析装置の主要部の概略構成を模式的に示す図(系統図)である。図2において、図1に示す第1の実施の形態の酸素同位体濃度分析装置10と同一構成部分には、同一符号を付す。
第1の部材92は、リング状部材92Aと、接続部92Bと、を有する。リング状部材92Aは、第2の部材93の内側に配置されている。リング状部材92Aは、分析用気化試料供給ライン17と接続されている。
接続部92Bは、リング状部材92Aと接続されると共に、リング状部材92Aの外側に突出するように配置されている。
試料供給ライン45−1〜45−8は、接続部92Bと接続可能な状態で、リング状部材92Aの周囲に配置されている。
接続部93B〜93Hは、リング状部材93Aと接続されており、リング状部材93Aの周方向に配置されている。接続部93B〜93Hは、リング状部材93Aの内側に突出すると共に、試料供給ライン45−1〜45−8と接続可能な位置に配置されている。
この状態において、試料供給ライン45−2〜45−8に供給されたキャリアガスは、第2の部材93及び廃棄ライン23を介して、廃棄される。
例えば、図2に示す状態から、マルチポジションバルブ91が右に1段階回転すると、接続部92Bと試料供給ライン45−8とが接続され、試料供給ライン45−8を介して、多重反射光学吸収セル55内に、気化した試料及びキャリアガスを供給することができる。
この状態において、他の試料供給ライン(試料供給ライン45−1〜45−7)に供給されるキャリアガスは、第2の部材93及び廃棄ライン23を介して、廃棄される。
また、第2の実施の形態の酸素同位体濃度分析装置90によれば、図2に示す構成とされたマルチポジションバルブ91を有することで、図1に示す4方切替バルブ14を用いた場合と比較して、より多くの試料供給部(図1に示す試料供給部11,12と同様な構成とされた構造体)をマルチポジションバルブ91に接続することが可能となるので、分析する試料の数が多い場合に有効である。
図3は、本発明の第3の実施の形態に係る酸素同位体濃度分析装置の主要部の概略構成を模式的に示す図(系統図)である。図3において、図1及び図2に示す第1及び第2の実施の形態の酸素同位体濃度分析装置10,90と同一構成部分には、同一符号を付す。
なお、図3では、一例として、試料供給ライン45−1と接続部92Bとが接続された状態を示しており、この状態で、試料供給ライン45−1に気化した試料A及びキャリアガスが供給されると、分析用気化試料供給ライン17を介して、多重反射光学吸収セル55内に気化した試料A及びキャリアガスが供給される。
接続部101A〜101Gは、第1の部材92の外側に、リング状に配置されている。接続部101Aは、試料供給ライン45−1〜45−8のうちの1つの試料供給ラインと、該試料供給ラインと隣接する1つの接続部(具体的には、接続部101A〜101Gのうちの1つの接続部)とを接続するための接続配管である。
試料供給ライン45−1〜45−8、及び廃棄ライン103A〜103Hに対してマルチポジションバルブ101が回転することで、水を主成分とし、かつ酸素同位体を含む試料を供給する試料供給ライン(試料供給ライン45−1〜45−8のうちの1つの試料供給ライン)を選択することができる。
廃棄ライン103Eは、試料供給ライン45−5の近傍に設けられている。廃棄ライン103Fは、試料供給ライン45−6の近傍に設けられている。廃棄ライン103Gは、試料供給ライン45−7の近傍に設けられている。廃棄ライン103Hは、試料供給ライン45−8の近傍に設けられている。廃棄ライン103A〜103Hは、リング状に配置されている。
このように、複数の廃棄ライン103A〜103Hを有する第3の実施の形態の酸素同位体濃度分析装置100は、先に説明した第2の実施の形態の酸素同位体濃度分析装置90と同様な効果を得ることができる。
微分吸収スペクトルの次数は、各酸素同位体の吸収ピーク波長において、極大値が得られる偶数の次数が好ましい。微分吸収スペクトルの次数として4次または6次を用いる場合、電気信号の損失が大きいため、シグナルノイズ比率が大きい次数を選択するとよい。
試験例1では、図1に示す酸素同位体濃度分析装置10を用いて、試料供給部11から試料である水(水道水)を分析装置本体22に供給し、H2 16O、H2 17O、及びH2 18Oに関する2次微分吸収スペクトルを取得し、H2 16O、H2 17O、及びH2 18Oの吸収強度を得ることができるか否かの確認を行った。
キャリアガス供給ライン35−1,35−2を介して、気化器41−1,41−2には、100ccmの窒素ガス(キャリアガス)を供給した。また、第1の圧力調整部18により、気化器41−1内の圧力を300kPaAとした。
また、多重反射光学吸収セル55内でのレーザ光の反射回数は、237回とした。また、該レーザ光の光路長は、76mとした。レーザ光導入孔83Aの直径は、4.3mmとした。
図4は、図1に示す酸素同位体濃度分析装置を用いて水道水を分析した際に得られた水の同位体(H2 16O、H2 17O、及びH2 18O)に関する2次微分吸収スペクトルを示す図(グラフ)である。図4では、横軸にレーザ光の波長(nm)を、縦軸に各波長における吸収強度(a.u.)を示す。
このことから、酸素同位体濃度分析装置10を用いて、水の同位体(H2 16O、H2 17O、及びH2 18O)に関する2次微分吸収スペクトルを取得し、該2次微分吸収スペクトルに基づいて、試料(この場合、水道水)に含まれる酸素同位体(16O、17O、及び18O)の濃度を取得可能なことが判った。
波長λ3は、H2 17Oのピーク波長を示しており、その値は、1416.27nmであった。波長λ4は、H2 18Oのピーク波長を示しており、その値は、1416.37nmであった。
波長λ5は、H2 16Oのピーク波長(その3)を示しており、その値は、1416.58nmであった。
試験例2では、図1に示す酸素同位体濃度分析装置10を用いて、試験例1で使用した水道水と同じ種類の水道水(試料)を気化器41−1に10μL導入させた際の気化器41−1内の圧力が及ぼす影響についての試験を行った。
試験例2では、気化器41−1内の圧力を110kPaA、200kPaA,300kPaAに変化させ、水の同位体(H2 16O、H2 17O、及びH2 18O)に関する2次微分吸収スペクトルを1分間隔で連続的に取得した際の水の同位体(H2 16O、H2 17O、及びH2 18O)のピーク高さの推移を取得した。この結果を図5に示す。
なお、ここでの「ピーク高さ」とは、図4に示す水の同位体の吸収強度におけるピークトップ値とその両側のピークボトムの平均値との差を意味している。
また、気化器41−1における試料の気化温度が高かったり、キャリアガスの流量が多すぎたりすると、図5に示すピーク高さの安定時間は、短くなるため、気化温度、及びキャリアガスの流量を最適化し、かつ安定させることが、正確な酸素同位体の濃度を得るために重要であることが確認できた。
試験例3では、図1に示す酸素同位体濃度分析装置10を用いて、試料である10μLの水道水(試験例1で使用した水道水と同じ種類の水道水)を気化器41−1に導入し、気化器41−1内の圧力を300kPaAに制御した場合と、気化器41−1内の圧力を制御しない場合(言い換えれば、第1の圧力調整部18を機能させないで、水道水及びキャリアガスを通過させた場合)と、について、H2 16Oの濃度(atom%)と掃引回数(回)との関係について調べた。
ここでの「掃引回数」とは、2次微分吸収スペクトルを1分間隔で取得したときの各回数のことをいう。
なお、上記説明した以外の条件に付いては、試験例1と同じ試験条件を用いた。
一方、水道水が導入される気化器内41−1の圧力を制御しないと、安定したH2 16Oの濃度を取得できないことが確認できた。これは、気化器41−1において、気化した水分が、ヘリオットセル(多重反射光学吸収セル55)内に一気に流入して、ヘリオットセル内の水分濃度が不安定になったためと推測される。
試験例4では、図1に示す酸素同位体濃度分析装置10を用いて、酸素同位体濃度の大きく異なる試料に含まれる18Oの濃度(atom%)を算出した。
具体的には、以下の手法により、実施例の試験を行った。
始めに、4方切替バルブ14の状態を、試料供給部11から供給される10μmLの水道水(18Oの濃度が0.205atom%)をヘリオットセルに供給可能な状態にした。
その後、2次吸収スペクトルの吸収強度の比から酸素同位体(16O、17O、及び18O)の濃度を算出し、安定した値が得られるまで、水道水の気化導入を繰り返した。
このときの気化器41−2への水−18Oの気化導入回数と18Oの濃度との関係(実施例)を図7に示す。
この結果を図7に示す。
一方、実施例では、10回程度の気化導入で、18Oの濃度が安定しており、参考例よりも大幅に水試料の気化導入の回数を削減できることが確認できた。
Claims (11)
- 水を主成分とし、かつ酸素同位体を含む試料を気化させる気化器、及び該気化器と接続されると共に、キャリアガスにより、気化した前記試料を供給する試料供給ラインを含む複数の試料供給部と、
前記気化した試料及び前記キャリアガスが供給される多重反射光学吸収セル、該多重反射光学吸収セル内に変調させたレーザ光を照射するレーザ照射部、及び前記多重反射光学吸収セルから導出された前記レーザ光に基づいて、前記水の同位体の微分吸収スペクトルを取得すると共に、該微分吸収スペクトルを分析することで、前記酸素同位体の濃度を算出する分析部を含む分析装置本体と、
前記多重反射光学吸収セル内のガスを排気する排気ラインと、
前記複数の試料供給部に設けられた前記試料供給ラインと接続されており、複数の前記試料供給ラインのうち、1つの該試料供給ラインにより輸送された前記気化した試料及び前記キャリアガスを前記多重反射光学吸収セルに供給すると共に、残りの前記試料供給ラインに連続して供給する前記キャリアガスを廃棄する供給ライン切替部と、
一端が前記供給ライン切替部と接続され、他端が前記多重反射光学吸収セルと接続され、前記供給ライン切替部を通過した前記気化した試料及び前記キャリアガスを前記多重反射光学吸収セルに供給する分析用気化試料供給ラインと、
前記分析用気化試料供給ラインに配置され、前記複数の試料供給部に設けられた前記気化器のうち、前記試料が導入される気化器内の圧力が所定の圧力となるように調整する第1の圧力調整部と、
を有することを特徴とする酸素同位体濃度分析装置。 - 前記供給ライン切替部は、4方切替バルブまたはマルチポジションバルブであることを特徴とする請求項1記載の酸素同位体濃度分析装置。
- 前記試料供給部は、前記気化器と接続され、該気化器に前記キャリアガスを供給するキャリアガス供給ラインと、
前記キャリアガス供給ラインに設けられ、前記キャリアガスの流量を調節する流量調節部と、
を有することを特徴とする請求項1または2記載の酸素同位体濃度分析装置。 -
前記排気ラインに配置され、前記多重反射光学吸収セル内の圧力が所定の圧力となるように調整する第2の圧力調整部を有することを特徴とする請求項3記載の酸素同位体濃度分析装置。 - 前記気化器を加熱する第1の加熱部と、
前記試料供給ラインを加熱する第2の加熱部と、
前記供給ライン切替部を加熱する第3の加熱部と、
前記キャリアガス供給ラインのうち、前記気化器と前記流量調節部との間に配置された部分を加熱する第4の加熱部と、
前記分析用気化試料供給ラインを加熱する第5の加熱部と、
前記多重反射光学吸収セルを加熱する第6の加熱部と、
前記キャリアガス供給ラインのうち、前記流量調節部の前段に位置する部分を加熱する第7の加熱部と、
前記排気ラインのうち、前記多重反射光学吸収セルと前記第2の圧力調整部との間に位置する部分を加熱する第8の加熱部と、
を有することを特徴とする請求項4記載の酸素同位体濃度分析装置。 - 供給ライン切替部と接続され、かつ気化器を含む複数の試料供給部に、キャリアガスを連続的に供給するキャリアガス供給工程と、
前記供給ライン切替部の後段に配置された第1の圧力調整部により、前記気化器内の圧力が所定の圧力となるように調整する圧力調整工程と、
前記複数の試料供給部に設けられた前記気化器のうち、1つの気化器に、水を主成分とし、かつ酸素同位体を含む試料を繰り返し導入して、分析装置本体を構成する多重反射光学吸収セル内に気化した前記試料、及びキャリアガスを供給する分析前準備工程と、
前記供給ライン切替部により、前記試料が導入されていない前記試料供給部から供給された前記キャリアガスを廃棄するキャリアガス廃棄工程と、
前記分析前準備工程後、前記試料を導入させた前記1つの気化器内に、再度、前記試料を導入することで、前記供給ライン切替部を介して、前記多重反射光学吸収セル内に気化した前記試料、及び前記キャリアガスを供給する分析用試料供給工程と、
波長変調分光法を用いて、前記多重反射光学吸収セル内に変調させたレーザ光を照射し、前記多重反射光学吸収セル内において、該レーザ光を複数回反射させて、気化した前記試料と前記レーザ光とを衝突させるレーザ照射工程と、
前記多重反射光学吸収セルの外部に、前記多重反射光学吸収セル内に照射された前記レーザ光を導出し、該レーザ光の検出信号に基づいて、前記水の同位体の微分吸収スペクトルを取得する微分吸収スペクトルを取得工程と、
前記微分吸収スペクトルを分析することで、前記酸素同位体の濃度を算出する酸素同位体濃度算出工程と、
を有することを特徴とする酸素同位体濃度分析方法。 - 前記キャリアガスを連続的に供給する期間中において、前記気化器、及び前記気化器と接続されると共に、気化した前記試料を供給する試料供給ラインが所定の温度となるように加熱することを特徴とする請求項6記載の酸素同位体濃度分析方法。
- 前記気化した試料及び前記キャリアガスは、フィルターを介して、前記供給ライン切替部に供給され、その後、前記多重反射光学吸収セル内に供給されることを特徴とする請求項6または7記載の酸素同位体濃度分析方法。
- 前記供給ライン切替部として、4方切替バルブまたはマルチポジションバルブを用いることを特徴とする請求項6ないし8のうち、いずれか1項記載の酸素同位体濃度分析方法。
- 前記複数の試料供給部のうち、次の分析に使用する試料供給部に対して、予め他の試料を気化導入させることを特徴とする請求項6ないし9のうち、いずれか1項記載の酸素同位体濃度分析方法。
- 前記キャリアガス供給工程では、前記気化器に、流量が調節された前記キャリアガスを供給すると共に、流量が調節された前記キャリアガスの温度が所定の温度となるように加熱し、
前記分析用試料供給工程では、前記多重反射光学吸収セル内の圧力が所定の圧力となるように調整すると共に、前記多重反射光学吸収セルの温度が所定の温度となるように加熱することを特徴とする請求項6ないし10のうち、いずれか1項記載の酸素同位体濃度分析方法。
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