JP5920712B2 - フェニルプロパノイド重合物量の簡易推定法 - Google Patents

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Description

本発明は、食品、農作物、パルプ、建材、土壌などにおけるリグニンや腐植などのフェニルプロパノイド重合物の含有量を推定する方法、並びにそれを利用した子実及び土壌の品質管理方法に関する。
植物は、外部環境の変化や他の生物からの防御のために、フェニルプロパノイドやその重合物である難分解性の有機物を生成している。難分解性有機物の代表例としてはリグニンと腐植が挙げられる。リグニンは植物細胞壁の一成分であるが、その分子構造は芳香環を有するフェニルプロパノイドの分子種同士が複雑に架橋された不定形高分子であり、セルロースやペクチンの間隙を埋めることで細胞壁の密度を高め、材料の力学的強度を増す役割を担っている。また、木造建築物に見られるように、リグニンは木材の耐環境性ならびに耐微生物性を高めており、難分解性であることが木材の利用価値を高めている。しかしその一方で、穀類などの残渣を飼料やバイオマス資源として利用する際に、難分解性であるリグニンの含有がエネルギー源としての効率的な利用を阻んでいる側面があるため、リグニンの制御が課題とされている。また、穀類、豆類、根菜類、葉菜類では食品化するために加熱による軟化が不可欠であるが、軟化過程でのリグニン分解が食感を左右することから、加熱調理前後のリグニン量変化を指標とした調理方法の改良や食材ごとの特性把握が求められている。以上のようにリグニン量の測定には多彩なニーズが存在するが、リグニンは難分解性であるがゆえに、強酸を使用した試料分解による定量が定法であり、作業の安全性や環境負荷の観点から、分解によらない簡易なリグニン量の推定方法が求められている。もう一つの難分解性有機物例である腐植は、土壌中における微生物などの作用による植物遺体の分解残渣であり、リグニンの分解残渣も主要成分であるため、様々な芳香環で構成されている分子構造や構成分子種の面で共通性が高い。腐植はフミン酸、フルボ酸、ヒューミンからなり、土壌有機物の主要構成物として、土壌の物理性(団粒形成能、保水性など)、化学性(交換性イオン量、pHなど)、生物性(可給態窒素源など)の指標として重視されている。特に土壌の有機物蓄積量やリン酸の保持性能などは農業生産における圃場管理技術上の重要な要素である。腐植の定量にはリグニン同様に、酸・アルカリ分解による定量が定法であるため、それにかわる様々な含有量簡易推定法が提案されている。
リグニン含有量の定量法は、紙パルプ試験法の一つとしてリグニン含有率試験方法が工業規格として規定されている(JIS P 8008:1976 パルプ材のリグニン試験方法 ならびにTAPPI 紙パルプ試験方法No.61:2000 パルプ材−リグニン含有率試験方法)。この規格では、リグニンを「木材中に20〜30%存在するフェニルプロパンを構成単位とする不規則な高分子」として定義し、硝酸ならびに硫酸による溶解・抽出過程を経ることにより、酸不溶性リグニンまたは酸溶解性リグニンのみを抽出し、存在量を乾固秤量または水性抽出物濃度の比色定量により推定する方法である。また、リグニン量測定に関する特許として繊維組成の測定方法(特許文献1)があげられる。当該方法では酸化剤として過マンガン酸カリウムまたは次亜塩素酸ナトリウムを用い、それらのリグニンとの反応による消耗量を定量することで繊維素材中の含有率を推定するものである。定量方法は、過マンガン酸カリウムの消費量を測定するカッパー価(ISO 302:1981、JIS P8211:1998、TAPPI T236cm-85)やK価(JIS P8206:1994)やTappi法過マンガン酸カリウム価(TAPPI UM251(1991))や漂白薬品を用いるパルプのハイポ価(ISO 3260:1982またはTAPPI T253om-89)などが挙げられているが、いずれも溶解物のクロマトグラフィーによる定量法である。
腐植量の定量法は、腐植の定義から一定量の風乾土壌に水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を加えて抽出した上清中に含まれる有機物量として定量する方法もあるが、精度が高い方法としてはチューリン法があげられる。これは、反応した炭素量に応じて消費される性質を持つ重クロム酸を用い、あらかじめ既知量の過剰な重クロム酸を加えて、反応後の重クロム酸量を、標準鉄(II)溶液で滴定・定量することで炭素含量を算出する方法である。さらに、精度はやや低いものの迅速性、簡便性を優先した比色法(熊田法を基にしたSPAD簡便法)や、水溶液中の化学的酸素要求量を指標とする方法(非特許文献1、非特許文献2)などがある。腐植量の定量法に関する特許文献としては、土壌中に含まれる腐植の波長特性の違いによる測定方法(特許文献2)や、化学発光を用いたフミン酸定量法(特許文献3)がある。後者の方法は工業排水などの水溶液を対象とし、フミン酸とホルムアルデヒドと過酸化水素が反応することにより生ずる化学発光を光電子倍増管により計測・定量する方法である。
特開2001-349886号公報 特開2011-64562号公報 特開平5-79988号公報
笠井ら、富山県環境化学センター研究報告書27、35-38、1999 上薗ら、日本土壌肥料学雑誌81、252-255、2010
リグニン・腐植ともに、正確な定量に使われる手法はクロマトグラムや滴定値を得るために難分解性の物質を分解・溶解する過程で酸やアルカリなどの毒劇物を大量に使用するものであり、分解・抽出にも長時間を要するため、簡便性に欠けるとともに、労働安全性や環境負荷の点で問題がある。既往の簡便法においても、例えば化学発光を用いたフミン酸定量法(特許文献3)では劇物であるホルムアルデヒドを発光増強剤として使用するなど、労働安全衛生や簡便性の点で問題がある。また、簡便法として比色法による定量手段を用いる方法では、反応生成物の積算的な効果を観察しているために反応過程の定量的な解析が難しい、試料の懸濁液を使用して定量できないため濾過した上清を使用しなければならない、などの問題がある。
以上のように、簡便性及び安全性と正確性とを両立したリグニン、腐植などのフェニルプロパノイド重合物の定量方法は未だ確立されていない。本発明は、このような技術的背景の下、フェニルプロパノイド重合物の新規な定量手段を提供することを目的とする。
本発明者は、フェニルプロパノイド重合物であり、かつ難分解性有機物でもあるフミン酸が活性酸素種による酸化分解過程で化学発光を生ずるとの知見(W.Goraczko and I.Slawinski、Nonlinearity in Biology, Toxicology, and Medicine、2:245-258、2004、またはM.Lipskiら、Journal of Fluorescence、9(2)、133-138、1999)に基づいて、それらの分解過程を観察する手法の検討を行った結果、1)試料の溶解を必要とせず、粒子状試料の懸濁液でも発光を定量できる、2)フミン酸以外のフェニルプロパノイド重合物(例えばリグニン)にも適用できる、3)0.01重量%〜3重量%の、劇物に該当しない低濃度の過酸化水素水でも、難分解性有機物の緩やかな分解・溶出反応を観察できる、4)酸化酵素の介在により不飽和脂肪酸が活性酸素源となり、フェニルプロパノイド重合物を発光させる、などの新たな知見を見出し、これを試料中のフェニルプロパノイド重合物量の指標とする発想に結びつけると同時に、難分解性であるフェニルプロパノイド重合物の可溶化技術を通じた食品、農産物、土壌、パルプ、建材などの品質管理技術にも結びつけ、本発明を完成するに至ったものである。
これまでの知見としては、酸化過程における微弱な発光現象は、不飽和脂肪酸の自動酸化、脂肪酸酸化酵素の一種であるリポキシゲナーゼによる酸化、フェノール類と活性酸素との反応、ペルオキシダーゼと反応基質との反応などに起因するものであることが報告されている。さらに過酸化水素がフミン酸水溶液の化学発光に寄与することを述べた文献(Masaru Kitanoほか、Microchemical Journal、 49、265-274、1994)も存在している。本発明はこれらの知見に加えて、パルプ・繊維工業分野、農業分野、食品製造分野での利用を考慮して、強酸や強アルカリ条件下で測定対象物を溶解することなく、懸濁液の状態でフェニルプロパノイド重合物の含有量を推定する手法を開発するために研究を重ねた結果、上記の発明に至った。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(12)を提供するものである。
(1)フェニルプロパノイド重合物を含有する試料から試料液を調製し、この試料液に、活性酸素源を添加し、活性酸素種によるフェニルプロパノイド重合物の分解に起因する化学発光量を指標として試料中のフェニルプロパノイド重合物の含有量を推定することを特徴とするフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法。
(2)フェニルプロパノイド重合物を含有する試料を液体中に懸濁させ、その懸濁液を試料液とすることを特徴とする(1)に記載のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法。
(3)フェニルプロパノイド重合物を含有する試料を、活性酸素源を含む水溶液と混合し、その混合液の上澄み液を試料液とすることを特徴とする(1)に記載のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法。
(4)活性酸素源が、過酸化水素源又は不飽和脂肪酸であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法。
(5)試料液が、ホルムアルデヒドを含まないことを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法。
(6)フェニルプロパノイド重合物が、リグニンであることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法。
(7)フェニルプロパノイド重合物を含有する試料を、両親媒性水溶液中に懸濁させ、その懸濁液を試料液とするか、あるいはフェニルプロパノイド重合物を含有する試料を、活性酸素源を含む両親媒性水溶液と混合し、その混合液の上澄み液を試料液とすることを特徴とする(6)に記載のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法。
(8)活性酸素源が、不飽和脂肪酸であることを特徴とする(7)に記載のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法。
(9)フェニルプロパノイド重合物が、腐植であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれか一項に記載のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法。
(10)フェニルプロパノイド重合物を含有する試料を、pH8.0以上の水溶液中に懸濁させ、その懸濁液を試料液とするか、あるいはフェニルプロパノイド重合物を含有する試料を、活性酸素源を含むpH8.0以上の水溶液と混合し、その混合液の上澄み液を試料液とすることを特徴とする(9)に記載のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法。
(11)(1)乃至(8)のいずれかに記載のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法によって、子実中のリグニン含有量を推定し、子実の品質を評価することを特徴とする子実の品質管理方法。
(12)(1)乃至(5)のいずれか又は(9)若しくは(10)に記載のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法によって、土壌中の腐植含有量を推定し、土壌の品質を評価することを特徴とする土壌の品質管理方法。
従来技術よりの改良点として、本発明では難分解性有機物の分解に伴って発生する光子量が反応分子量と溶液条件に強く依存することから、これらを対象物に応じて変えることにより、検出感度を容易に向上させることができる点で、従来の分光法や比色法より優れている。また、試料懸濁液であっても手軽にフェニルプロパノイド重合物含有量に関する指標を得られることを確認し、分解過程まで観察できる点も、従来技術より簡便性を高めていると言える。さらに、ホルムアルデヒドなどの劇物を過酸化水素による発光の増強剤として使用しなくても実用に耐えうることを確認し、試薬類の取り扱いの簡便性を高めている点において、従来技術であるフミン酸の化学発光定量法(特許文献3)よりも優れている。
リグニン水溶液中のリグニン含有量と発生光子数との関係を示す図。 小麦ふすま中のリグニン含有量と、過酸化水素に起因する発生光子数との関係を示す図。 小麦ふすま中のリグニン含量と、酸化酵素と不飽和脂肪酸との反応に起因する発生光子数の関係を示す図。 フミン酸濃度と発生光子数との関係を示す図。 COD試薬による酸化で発生する光子数と過酸化水素添加により発生する光子数との関係を示す図。 全窒素量と発生光子数との関係を示す図。 熱水抽出液の発生光子数と過酸化水素抽出液の発生光子数と関係を示す図。 過炭酸ナトリウム処理、アルカリイオン水処理、又は蒸留水処理をした土壌の発生光子数を示す図。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法は、フェニルプロパノイド重合物を含有する試料から試料液を調製し、この試料液に、活性酸素源を添加し、活性酸素種によるフェニルプロパノイド重合物の分解に起因する化学発光量を指標として試料中のフェニルプロパノイド重合物の含有量を推定することを特徴とするものである。
本発明においてフェニルプロパノイド重合物とは、植物のアミノ酸合成系で生成されたフェニルアラニンを起源とするフェニルプロパンが複数縮合した形 (C6C3) の化合物およびその化合物の誘導体であるフェニルプロパノイドが多数重合した化合物又はそのような化合物を複数含む混合物を意味し、例えばリグニン、フミン酸、フルボ酸、ヒューミン、及びこれらの複合物である腐植などをいう。本発明において好ましいフェニルプロパノイド重合物としては、リグニン、腐植を挙げることができる。
本発明において腐植とは、植物残渣や微生物遺体が土壌中で微生物による分解を受け、その分解産物から化学的または生物学的に合成される暗褐色の高分子有機酸の不定形混合物を意味する。
本発明の方法の対象となる試料としては、フェニルプロパノイド重合物が含有されると推定されるものであれば特に限定されない。例えば、リグニンの含有量を推定する場合は、稲(子実又は植物全体)、大豆(子実又は植物全体)、大麦(子実又は植物全体)、小麦(子実又は植物全体)、雑穀(子実又は植物全体)、根菜類(可食部位又は植物全体)、葉菜類(可食部位又は植物全体)、木材、紙パルプなどを試料とすることができ、腐植の含有量を推定する場合は、土壌、堆肥、培土、土壌改良材、有機肥料、工場排水、河川水、湖沼水、海洋水などを試料とすることができる。
試料液は、試料が液体の場合は試料をそのまま試料液とすることができる。試料が固体の場合は、試料を液体中に懸濁させ、その懸濁液を試料液とすることができ、また、試料を、活性酸素源を含む水溶液と混合し、その混合液の上澄み液を試料液とすることもできる。
活性酸素源としては、活性酸素種(過酸化水素、過酸化脂質など)を生じさせるものであれば特に限定されない。例えば、過酸化水素源や不飽和脂肪酸などを使用できるが、これら以外にもフェノールや没食子酸などのフェノール類、システインなどのチオール類を使用してもよい。
過酸化水素源としては、過酸化水素水を用いることができる。使用する過酸化水素水の濃度は劇物に該当しない3重量%以下であることが好ましい。過酸化水素水以外にも、例えば、過マンガン酸カリウム、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウムなども過酸化水素源として用いることができる。試料液中の過酸化水素濃度は、フェニルプロパノイド重合物の分解が生じる範囲内であれば特に限定されないが、0.1〜3.0重量%であることが好ましく、0.3〜1.0重量%であることが更に好ましい。
不飽和脂肪酸としては、例えば、リノール酸、リノレン酸などを挙げることができる。試料液中の不飽和脂肪酸の濃度は、特に限定されないが、0.1〜20重量%であることが好ましく、1〜5重量%であることが更に好ましい。
試料液中には、活性酸素種以外の成分が含まれていてもよいが、ホルムアルデヒドは含まれていないことが好ましい。
リグニン含有量を推定する場合、試料液の調製には、80容量%以上の両親媒性水溶液を使用するのが好ましい。両親媒性水溶液としては、例えば、エタノール水溶液を挙げることができる。また、リグニン含有量を推定する場合、試料液に添加する活性酸素源は、不飽和脂肪酸であることが好ましい。これは、不飽和脂肪酸がリポキシゲナーゼやペルオキシダーゼ等の作用により過酸化されることによって活性酸素種となり、この活性酸素種がリグニンの分解を促進して発光量を増加させるからである。
一方、腐植含有量を推定する場合、試料液の調製には、pH8以上のアルカリ性溶液を使用するのが好ましい。アルカリ性溶液としては、例えば、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、過マンガン酸カリウム水溶液、過炭酸ナトリウム水溶液、過ホウ酸ナトリウム水溶液、過酸化カルシウム水溶液、過酸化マグネシウム水溶液、電解とイオン濃縮により生成されたアルカリイオン水などを挙げることができる。
フェニルプロパノイド重合物の含有量の推定は、フェニルプロパノイド重合物の分解に起因する化学発光量を測定することにより行うことができる。化学発光量の測定は、例えば、微弱発光測定器、フォトンカウンター、ルミノメーター、ルミノイメージアナライザと称される機器などを用いて行うことができる。これらの機器には測定試料の性状と容量に応じた大きさの空間を有する、検出窓と測定試料出入口以外には光子の出入りを遮断できるブラックボックスが付属している。
化学発光量の測定は、回分式、連続式のいずれでも行うことができる。回分式の測定は、例えば、測定試料出入口から試料液を納めたマイクロプレートや密閉可能なマイクロテストチューブを挿入して行うことができる。連続式の測定は、例えば、自動または手動により、試料液と酸化剤を混合して一定量の試料液を吸引し、ブラックボックス内に導入することにより行うことができる。
試料に対しては可溶化処理を行い、溶液化した試料を試料液としてもよい。可溶化に用いる溶液又は粉末資材の種類は特に限定されないが、例えば、(A)0.01重量%〜3重量%の過酸化水素を添加した80℃〜100℃の熱水、水蒸気、若しくは電解とイオン濃縮により生成されたアルカリイオン水、又は炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウムのいずれかの水溶液、(B)0.01重量%〜3重量%の過酸化水素を添加した草木灰、くん炭、竹炭、フライアッシュ、炭酸カルシウムのいずれかの懸濁溶液、(C)0.01重量%〜3重量%の過酸化水素を含有する過炭酸ナトリウム水溶液、過マンガン酸カリウム水溶液、過ホウ酸ナトリウム水溶液、過酸化カルシウム水溶液、又は粉末状の過マンガン酸カリウム、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウムなどを用いることができる。可溶化は、以上の溶液又は粉末を重量比にして試料の1%〜200%添加して1時間〜24時間静置することを1回以上実施することができる。
本発明のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法は、稲(子実又は植物全体)、大豆(子実又は植物全体)、大麦(子実又は植物全体)、小麦(子実又は植物全体)、雑穀(子実又は植物全体)、根菜類(可食部位又は植物全体)、葉菜類(可食部位又は植物全体)、木材、紙パルプ、土壌、堆肥、培土、土壌改良材、有機肥料、工場排水、河川水、湖沼水、海洋水などの品質管理に利用することができる。好ましい利用法としては、農作物の子実中のリグニン含有量を推定し、子実の品質を評価する子実の品質管理方法や土壌中の腐植含有量を推定し、土壌の品質を評価する土壌の品質管理方法などを挙げることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
〔実施例1〕
はじめに本発明の元となったデータを図1に示す。
市販のリグニン試薬で調製したリグニン水溶液を測定対象物として、90%エタノール水溶液に添加してリグニン濃度を0.01g〜0.2gの範囲で調製した測定対象物0.9mLに対して、3%過酸化水素水を0.1mL添加後に発生した光子数をフォトンカウンターにより測定した。以上の測定により、リグニン量に応じて発生光子数が増大する事が示され、検量線を作成することにより、当該溶液中のリグニン含量推定が可能であることが示された。
〔実施例2〕
食品中のリグニン量と本法により得られる指標との関係を示す例として、小麦ふすま中のリグニン含量と発生光子数の関係を調べた結果を図2に示す。
小型製粉器により小麦種子を製粉して得られたふすま画分に含まれる澱粉を取り除いたふすま中のリグニン含量は定法により定量した。小麦は独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構で育成されたリグニン含量の異なる系統の種子を用いた。ふすま0.05gを使い捨てマイクロチューブにとり、90%エタノール水溶液0.9mLを添加して攪拌後、3%過酸化水素水を0.1mL添加して発生光子数をフォトンカウンターにより測定した。懸濁液の発生光子数はリグニン含量に応じて増加し、両者は高い相関を示したことから、本法により育成中の小麦品種においてリグニン含量を簡便に把握することで、利用目的に応じてリグニン含量の異なる品種育成の効率化に利用可能である。さらに、上述の手法に10重量%のリノール酸を含むエタノールを0.1mL添加すると、発光量は3割向上することが確かめられ、リグニン含量の少ない試料でのリグニン量推定に有効である。
より一層の簡易な方法として、小麦ふすまに含まれる酸化酵素が発生する活性酸素により、リノール酸などの不飽和脂肪酸が活性酸素種に転換されてリグニンと反応して発光することを利用して、小麦ふすま中のリグニン含有量を推定できることを図3に示す。
上述の水溶液をpH5〜6の0.01MのEDTA水溶液に変更し、充分な酸素が存在する条件下で、過酸化水素の代わりに10重量%のリノール酸を含むエタノール溶液0.1mLを添加して発光量を測定すると、小麦ふすま中に含まれるリグニン量と発生光子数との間に高い相関が見られた。本法は種皮やアリューロン層と呼ばれる種子表層に主として存在する酸化酵素を利用していることから、リグニン含有量の推定だけでなく、小麦粉などの製造工程で種皮などの切れ込み量を推定する方法としても有効である。
以上の手法は、小麦以外の穀類、豆類、根菜類、葉菜類、雑穀において適用可能である。
〔実施例3〕
本法により腐植量の指標が得られることを示す例として、腐植の一成分であるフミン酸量と本法による指標との関係を図4に示す。
過マンガン酸カリウムを酸化剤として使用しているパックテストCOD(化学的酸素要求性試薬、以下COD試薬と略す)による酸化反応で発生する光子数との関係を示したものである。COD試薬は中濃度用と高濃度用(COD(D))の2種類を検討した結果、どちらもフミン酸濃度と光子数に高い相関が見られ、きわめて低濃度でも検出可能であることが示された。
〔実施例4〕
土壌品質評価に用いられる簡易法と本法による指標の関係を示す例として、水田土壌の懸濁液の上澄みをとり、COD試薬による酸化で発生する光子数と3重量%過酸化水素添加のみによる酸化で発生する光子数との関係を観察した結果を図5に示す。採取圃場のそれぞれ異なる風乾土壌0.1gと電解濃縮によるアルカリイオン水(pH12)1.8mLを使い捨てマイクロチューブに入れて攪拌し、5分間静置した後に10000rpmで1分間遠心して上澄み液を調製した。これにCOD試薬1パック(所要上澄み液量0.3mL+蒸留水1.2mL)または3重量%過酸化水素0.2mL(所要上澄み液量0.2mL+蒸留水0.6mL)を添加して観察した光子数をそれぞれの軸に対応させて示した。高い相関が見られたことから、発光は過酸化水素によるものであり、過酸化水素のみでも同様の指標が得られることを確認した。
〔実施例5〕
土壌の含有全窒素量は農地の管理上重要な指標であり、大部分は土壌に固定されている腐植に由来すると言われている。そこで水田土壌を対象に水溶液で抽出した液に含まれる腐植量(発生光子数)と全窒素測定器により定量した全窒素量との関係を調べた結果を図6に示す。アルカリイオン水で5分間抽出した腐植抽出液0.8mLに3重量%過酸化水素0.2mLを添加して光子数を計測した結果を図6に示す。両者に高い相関がみられたことから、本手法により検量線を作成すれば水田土壌の全窒素含量を推定することができることが示された。
〔実施例6〕
畑土壌中の可給態有機物量は、従来の簡易法では土壌試料を80℃の熱水中で16時間加熱して得られた濾液のCOD定量値により推定される。そこでこの従来の抽出方法により得られた黒ボク土畑土壌の腐植溶液と、0.3%過酸化水素水により2時間抽出して得られた上清とをそれぞれ試料溶液とし、両試料溶液の腐植量を、試料溶液0.9mLに対して1M過炭酸ナトリウム水溶液0.1mLを添加した際の発生光子数を指標として推定し、両者の関係を図7に示した。本法により、短時間の抽出により、従来の抽出方法と同様の腐植量の推定が可能であることが示された。
〔実施例7〕
土壌の養分可給性改善に有効な方法を検討するために本法を応用した例を図8に示す。市販の育苗用粒状培土をビニールポット(φ10cm×20cm)に約1.5L充填して200mL灌水したものを9ポット用意し、パン用小麦(ユメシホウ)を各2粒ずつ植え付け、20℃の照光インキュベータ(明期6時間、暗期18時間に設定)内で7日間催芽してから、1ポット当たりの土壌改良資材として0.1M過炭酸ナトリウム水溶液(pH10.5)20mL、または電解濃縮アルカリイオン水(pH12)20mLを滴下し、対照区には蒸留水20mLを滴下した。各区3ポットずつ設け、各資材施用を1日1回で3日連続して行った後、さらに3日間全てのポットに蒸留水20mLずつを灌水してから、表層約1cmの土壌を約2g採取して室温風乾した土壌を本発明による腐植量推定法に供した。乾土0.1gを使い捨てマイクロチューブに採取し、所定の調製後に上清0.9mLに対して1M過炭酸ナトリウム水溶液0.1mLを添加した際の発生光子数を処理区間で比較した。抽出方法の違いを検討するため、0.01M EDTA水溶液のみ2mLの抽出液または0.01M EDTA水溶液1.8mLに3重量%過酸化水素水0.2mLを加えた抽出液について、0.5時間静置した後の上清の発生光子数を測定した。なお、上清の測定値は試料溶液0.9mLに対して1M過炭酸ナトリウム水溶液0.1mLを添加した際の発生光子数とした。図に示すように、アルカリ条件下で過酸化水素が存在する過炭酸ナトリウム水溶液処理の場合のみ、土壌の可給態有機物量が増加する現象を捉えることができた。
本発明におけるフェニルプロパノイド重合物である難分解性有機物の簡易推定法は、パルプ・繊維工業分野、農業分野、食品製造分野での利用が見込まれる。本発明によれば、パルプ原料、土壌、肥料、食材、農作物の評価だけでなく、関連する製造技術開発の効率化や、新エネルギー源として変換効率のよい植物品種開発、吸収効率のよい易分解性食物繊維からなる食品・飼料の開発などにつながる可能性がある。

Claims (6)

  1. フェニルプロパノイド重合物を含有する試料を液体中に懸濁させ、その懸濁液を試料液とし、この試料液に、活性酸素源を添加し、活性酸素種によるフェニルプロパノイド重合物の分解に起因する化学発光量を指標として試料中のフェニルプロパノイド重合物の含有量を推定することを特徴とするフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法であって、フェニルプロパノイド重合物がリグニン又は腐植であるフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法。
  2. フェニルプロパノイド重合物が、リグニンであることを特徴とする請求項1に記載のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法。
  3. フェニルプロパノイド重合物を含有する試料を、両親媒性水溶液中に懸濁させ、その懸濁液を試料液とすることを特徴とする請求項2に記載のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法。
  4. 活性酸素源が、不飽和脂肪酸であることを特徴とする請求項3に記載のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法によって、子実中のリグニン含有量を推定し、子実の品質を評価することを特徴とする子実の品質管理方法。
  6. 請求項1に記載のフェニルプロパノイド重合物含有量の推定法によって、土壌中の腐植含有量を推定し、土壌の品質を評価することを特徴とする土壌の品質管理方法。
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