近年、インターネットの高速化、サーバーの処理能力の向上に伴い、クラウド・コンピューティング、ストレージ・サービスなどが普及し、サーバーの大規模化が進んでいる。また、大規模サーバーを安全に効率よく運用するために、ネットワーク中継装置の需要が高まっている。
ネットワーク中継装置にはOSI(Open Systems Interconnection)参照モデルであるアプリケーション層のデータを基にルーティングを行うL(Layer)7スイッチ、トランスポート層のデータを基にルーティングを行うL4スイッチ、ネットワーク層のデータを基にルーティングを行うL3スイッチ、及びデータリンク層のデータを基にルーティングを行うL2スイッチが存在する。
L7スイッチ、L4スイッチは主に負荷分散を目的に使用される。L2スイッチ、L3スイッチはネットワークシステム構築を目的に使用されるため非常に重要なスイッチであり、特に、サーバーやPC(Personal Computer)などの機器(ノード)と直接フレームのやりとりを行うL2スイッチには様々な機能が搭載されている。
L2スイッチに搭載されている機能にIEEE802.1Dに規定されたスパニングツリープロトコル(STP)がある。L2スイッチを用いてループ状にネットワークを構築した場合、ブロードキャストストームが発生する問題があるため、STPにより、物理的なループ状のネットワークの一部を論理的に切断し、ループのないネットワークトポロジーを構築する。
しかし、STPはネットワークトポロジーを構築するために最大50秒必要であり、ネットワークトポロジー構築中の50秒間は通信断が発生してしまう問題がある。この問題を解決するために、IEEE802.1Wでラピッドスパニングツリープロトコル(RSTP)が規定されている。
また、IEEE802.1QではSTP、RSTPとVLAN(Virtual Local Area Network)を使用する際に、各VLANによる複数のネットワークトポロジーをインスタンス化し、ネットワークの帯域を効率よく使用できるマルチプルスパニングツリープロトコル(MSTP)が規定されている(特許文献1参照)。
しかし、今までのSTP/RSTP/MSTPでは、音声データなど高優先度のフレームを送信するノード、受信するノードがそれぞれ接続されたスイッチ同士が物理的に直接接続されているにもかかわらず、ネットワークトポロジー上で最も離れた位置に配置され、ネットワークトポロジーを構成する他の複数のスイッチを経由して転送される可能性があり、高優先度のフレームの転送効率が悪くなるという問題がある。
この点について、図17及び図18を用いて説明する。図17はSTPによるネットワークトポロジー構築の一例について説明するための図であり、図18はSTPにてやりとりされるBPDU(Bridge Protocol
Data Unit)フレームにおけるブリッジ(Bridge)IDフィールドのフォーマットを示す図である。
ここでは、図17に示すように、スイッチ401乃至スイッチ408を用いてリング状にネットワークを構成した場合のSTPを用いたネットワークトポロジー構築の例を示す。
図示のように、スイッチ401のポートP2とスイッチ402のポートP1との間、スイッチ402のポートP2とスイッチ403のポートP1との間、スイッチ403のポートP2とスイッチ405のポートP1との間、スイッチ405のポートP2とスイッチ408のポートP2との間、スイッチ408のポートP1とスイッチ407のポートP2との間、スイッチ407のポートP1とスイッチ406のポートP2との間、スイッチ406のポートP1とスイッチ404のポートP2との間、スイッチ404のポートP1とスイッチ401のポートP1との間がEthernet(登録商標)ケーブルにより接続されることで、リング状のネットワークが構成されている。
また、ネットワーク上のノードであるPC451はスイッチ403のポートP3に、PC452はスイッチ405のポートP3に、PC453はスイッチ406のポートP3に、PC454はスイッチ407のポートP3に、それぞれ接続されている。
また、スイッチ402がルートブリッジ(Root Bridge)になり、スイッチ406のポートP2とスイッチ407のポートP1との間でネットワークが切断されたネットワークトポロジーが構築されている。
STP/RSTP/MSTPでは、(1)ルートブリッジの決定、(2)各スイッチにおけるポート役割の決定、の手順でネットワークトポロジーを構築する。
ルートブリッジはネットワークトポロジーで最も上位にあるスイッチであり、ネットワーク内でブリッジIDが最も小さいスイッチがルートブリッジとなる。ネットワーク内のスイッチ同士が互いにBPDUフレームを送受信することでネットワーク上の他のスイッチとブリッジID情報を交換する。
図18に示すように、BPDUフレームにおけるブリッジIDフィールドは、2バイトのブリッジプライオリティ(Bridge Priority:ブリッジ優先度)値と6バイトのMAC(Media Access Control)アドレスで構成される。ブリッジプライオリティ値はユーザーが自由に設定することが可能であるが、ネットワーク設計者が意図して設定しない限り0x0800の一定値であり、この場合ルートブリッジはネットワーク内のスイッチの中でMACアドレスの最も小さいスイッチになる。
各スイッチにおけるポートの役割はルートブリッジまでのパスコスト値であるルートパスコスト値により決定される。ルートパスコスト値はルートブリッジまでのポートコスト値の合計で計算される。ポートコスト値はポートに接続されたEthernet(登録商標)ケーブルの帯域幅(伝送レート)により決定され、10Mbps=100、100Mbps=19、1Gbps=4、10Gbps=2となる。
ルートパスコスト値によりスイッチの各ポートの役割が決定される。STPの場合はルートポート、指定(Designated)ポート、ブロッキングポートとなり、ブロッキングポート接続される経路が切断され、ループのないネットワークトポロジーが構築される。ルートパスコスト値が同じスイッチが二つある場合は、ブリッジIDの大きい方のスイッチのポートが、その二つのスイッチのブリッジIDが同じ場合は、ポートIDの大きい方のポートがブロッキングポートとなる。
このように、スイッチが保持しているブリッジプライオリティ値及びルートパスコスト値の大小に基づいて、ネットワークトポロジーの構成が決定される。この明細書では、このようなネットワークトポロジーの構成の決定に用いられる情報をネットワークトポロジーの決定要因となる情報と言うことにする。
ところで、図17において、PC451とPC452が優先度の低いデータの通信を行い、PC453とPC454が音声データなどの優先度の高いデータの通信を行っていた場合、PC451が送信した低優先度フレームはスイッチ403とスイッチ405を通る最短経路によりPC452に転送される。
一方、PC453が送信した高優先度フレームは、スイッチ406とスイッチ407との間が物理的に接続されているにもかかわらず、ネットワークトポロジー上、即ち論理的には切断されているため、スイッチ406−スイッチ404−スイッチ401−スイッチ402−スイッチ403−スイッチ405−スイッチ408−スイッチ407からなる全てのスイッチを経由してPC454に転送される。
このとき、スイッチ401からスイッチ408の中でフレームの優先制御を行うQoS(Quality of Service)に対応していないスイッチが一台でもあった場合、PC453から転送された高優先度フレームの遅延が大きくなり、さらに転送回数が多いため最悪の場合、フレームが失われる問題がある。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態のネットワーク中継装置を備えたネットワークにおけるネットワークトポロジー変更前の構成を示す図である。
図示のように、スイッチ101乃至スイッチ108を用いてリング状にネットワークが構成されている。即ち、スイッチ101のポートP2とスイッチ102のポートP1との間、スイッチ102のポートP2とスイッチ103のポートP1との間、スイッチ103のポートP2とスイッチ105のポートP1との間、スイッチ105のポートP2とスイッチ108のポートP2との間、スイッチ108のポートP1とスイッチ107のポートP2との間、スイッチ107のポートP1とスイッチ106のポートP2との間、スイッチ106のポートP1とスイッチ104のポートP2との間、スイッチ104のポートP1とスイッチ101のポートP1との間がEthernet(登録商標)ケーブルにより接続されることで、リング状のネットワークが構成されている。各スイッチがネットワーク中継装置である。
また、ネットワーク上のノードであるPC151はスイッチ101のポートP3に、PC152はスイッチ103のポートP3に、PC153はスイッチ104のポートP3に、PC154はスイッチ105のポートP3に、PC155はスイッチ106のポートP3に、PC156はスイッチ106のポートP4に、PC157はスイッチ107のポートP3に、PC158はスイッチ108のポートP3に、それぞれ接続されている。
また、スイッチ102がルートブリッジになり、スイッチ106のポートP2とスイッチ107のポートP1との間でネットワークが切断されたネットワークトポロジーが構築されている。全てのスイッチのブリッジプライオリティ値が初期値0x0800である場合、ルートブリッジはMACアドレス値で決まるため、ネットワーク設計者が意図しないスイッチがルートブリッジになる可能性がある。このため、図1ではネットワーク設計者がスイッチ102のブリッジプライオリティ値を0x0700に設定し、ルートパスコスト値の計算によりスイッチ106−スイッチ107間が切断されたものとする。
しかし、この図のネットワークトポロジーでは、PC156とPC157の間で高優先度フレームを送受信した場合に、スイッチ106−スイッチ107間はネットワークトポロジーで切断されているため、最短距離でフレームを転送することができず高優先度フレームの転送効率が悪い。
そこで、本実施形態では、各スイッチに直接接続されたノードからの受信フレームのVLANタグプライオリティ値を記録し、記録されたVLANタグプライオリティ値に基づいてブリッジプライオリティ値を変更する。ここで、PCがスイッチに直接接続されたノードからのフレームか否かの判別は以下のように行う。即ちスイッチが一定間隔で全ポートにハロー(Hellow)パケットと呼ばれるBPDUフレームを送信し、ハローパケットに対する返信フレームを受信したポートがスイッチと接続されたポートであり、返信フレームを受信しないポートがスイッチと接続されていないポートであると判別する。そして、スイッチと接続されていないポートからのフレームがスイッチに直接接続されたノードからのフレームであると判別できる。
ここでVLANタグプライオリティ値について説明する。図2はIEEE802.1QのVLANタグ追加フレームにおけるVLANタグフィールドのフォーマットを示す図であり、図3はVLANタグプライオリティ値とトラフィックタイプとの関係、即ち各トラフィックタイプのフレーム転送優先順位を示す図である。
図2に示すように、4バイトとVLANタグフィールドは2バイトのTPID(Tag Protocol Identifier)、3ビットのプライオリティ値、1ビットのCFI(Canonical Format Indicator)、及び12ビットのVLAN_IDからなる。3ビットのプライオリティ値は図3に示す各トラフィックタイプのフレーム転送優先順位を示す。QoSに対応したスイッチではVLANタグプライオリティ値に従ってスイッチ内で優先制御してフレーム転送が行われるが、STP/RSTP/MSTPでのネットワークトポロジー構築にはVLANタグプライオリティ値は考慮されない。
一方、本実施形態では、各スイッチで受信フレームのVLANタグプライオリティ値を記録し、記録されたVLANタグプライオリティ値に基づいて、転送優先度の高いフレーム程、転送効率が高くなるように、ネットワークトポロジーを動的に変更することにより、ネットワークトポロジー構築(更新)にVLANタグプライオリティ値が考慮される。
図4は受信フレームのVLANタグプライオリティ値に基づいて決定されるブリッジプライオリティ値の変更量を示す図である。図示のように、転送フレームの優先度が高いトラフィックタイプ程、ブリッジプライオリティ値の減算値が大きくなるように定められている。この図に示す情報は各スイッチ内の記憶装置(図示せず)に記憶されている。
図5は本発明の第1の実施形態のネットワーク中継装置を備えたネットワークにおけるネットワークトポロジー変更後の構成、即ち図1に示すネットワークにおいて、各スイッチに直接接続されたPCからの受信フレームのVLANタグプライオリティ値を記録し、記録されたVLANタグプライオリティ値と図4に示すブリッジプライオリティ値の変更量とに基づいてブリッジプライオリティ値を変更し、変更後のブリッジプライオリティ値に従って構築されたネットワークトポロジーを示す図である。
図示のように、スイッチ101のポートP3、スイッチ103のポートP3、スイッチ104のポートP3、スイッチ105のポートP3、スイッチ106のポートP3、スイッチ106のポートP4、スイッチ107のポートP3、スイッチ108のポートP3における受信フレームのVLANタグプライオリティ値は、それぞれ0、0、0、0、5、4、4、1である。つまり、スイッチ106、スイッチ107が高優先度のフレームを転送している。
従って、図4より、スイッチ101、スイッチ103、スイッチ104、スイッチ105、スイッチ106、スイッチ107、スイッチ108のブリッジプライオリティ値の減算値は、それぞれ0x0001、0x0001、0x0001、0x0001、(0x0100+0x0200)、0x0100、0x0000となる。なお、ここではスイッチ106にPCが2台接続されており、ブリッジプライオリティ値の減算値はPCに接続された2つのポートの合計値としているが、平均値や最大値としてもよい。
この結果、スイッチ101、スイッチ103、スイッチ104、スイッチ105、スイッチ106、スイッチ107、スイッチ108のブリッジプライオリティ値は、それぞれ0x07FE、0x07FE、0x07FE、0x07FE、0x0500、0x0600、0x0800となり、ブリッジプライオリティ値が最小となったスイッチ106がルートブリッジとなる。また、ルートパスコスト値が最大、つまりルートブリッジであるスイッチ106から最も離れ、帯域幅が小さい経路が切断されるため、高優先度のフレームを送信するPC、受信するPCに接続されたスイッチの経路が優先的に接続される。
なお、図5ではPC151とPC152とは最短経路で通信することができないが、PC151とPC152との間で高優先度の通信を行った場合、同様にブリッジプライオリティ値を変更し、ネットワークトポロジーを再構築すれば最短距離で通信を行うことができるようになる。即ち、一定時間間隔でブリッジプライオリティ値を変更し、ネットワークトポロジーを再構築することで、ネットワークトポロジー内の高優先度フレームの経路を動的に最短経路とするネットワークトポロジーに変更することができる。
図6はスイッチ101乃至スイッチ108においてネットワークトポロジー構築処理を実行する部分の機能ブロック図であり、図7はネットワークトポロジー構築処理のフローチャートである。スイッチ101乃至スイッチ108の構成は同じであるため、図6ではスイッチ100とした。
図6に示すように、スイッチ100はポート111乃至114と、ポート111乃至114から入力された受信フレーム中のVLANタグプライオリティ値をデコードするVLANタグプライオリティ値デコード部121乃至124と、VLANタグプライオリティ値デコード部121乃至124によりデコードされたVLANタグプライオリティ値を記録するVLANタグプライオリティ値記録媒体131乃至134と、ブリッジプライオリティ変更処理部135と、スイッチング処理部136とを備えている。ここで、VLANタグプライオリティ値デコード部121乃至124が本発明における転送優先度情報取得手段に相当し、ブリッジプライオリティ変更処理部135が変更手段に相当する。
図6に示すスイッチ100は以下のように動作する。
まず図7に示すSTPトポロジー構築処理が開始されると、ハローパケットを全ポート111乃至114に送信する(ステップS101)。ハローパケットは各ポートからネットワークへ送出される。
次にハローパケットに対する返信パケットがあったか否かを判断する(ステップS102)。判断の結果、返信パケットがなかったときは(ステップS102:No)、スイッチ100の各ポートには、直接接続されているノードが存在しないため、STPトポロジー構築処理を終了する。図1においてはスイッチ102がこの動作を行う。
一方、ステップS102で返信パケットがあったと判断したときは(ステップS102:Yes)、どのポートで返信パケットがあったか否かを並行して判断し(ステップS103、S106)、返信パケットがあったポートで受信された転送フレームのVLANタグプライオリティ値を一定期間記録する(ステップS103:Yes→S104、S106:Yes→S107)。
以上の各ステップのうち、ステップS101、S102、S103、及びS106はスイッチング処理部136が行い、ステップS104、及びS107はVLANタグプライオリティ値デコード部121乃至124が行う。
次に一定期間記録されたVLANタグプライオリティ値を基にブリッジプライオリティ変更処理部135がスイッチ100のブリッジプライオリティ値を変更し(ステップS105)、STPトポロジー構築処理を終了する。変更されたブリッジプライオリティ値はスイッチング処理部136に通知され、記憶される。
このように本発明の第1の実施形態のネットワーク中継装置(スイッチ101乃至スイッチ108)によれば、別のスイッチを経由せず、PCと直接接続されたスイッチのポートが受信するフレームのVLANタグプライオリティ値を記録し、記録されたVLANタグプライオリティ値を基にブリッジIDのブリッジプライオリティ値を変更することにより、従来のノードの追加、削除によるネットワークトポロジーの変更だけではなく、ネットワークトポロジー内を流れるフレームの優先度に従ってネットワークトポロジーを動的に変更する。
これにより、STP/RSTP/MSTPによりネットワークトポロジーを構築する際に、VLANタグプライオリティ値の高い高優先度フレームを送信するノードと接続されたスイッチがルートブリッジとなり、高優先度フレームを送信、受信するノード同士が優先的に近距離に接続されたネットワークトポロジーを動的に構築し、高優先度フレームの転送効率を高めることができる。
[第2の実施形態]
図8は本発明の第2の実施形態のネットワーク中継装置を備えたネットワークにおけるネットワークトポロジー変更前の構成を示す図である。
図示のように、スイッチ201乃至スイッチ208を用いてリング状にネットワークが構成されている。即ち、スイッチ201のポートP2とスイッチ202のポートP1との間、スイッチ202のポートP2とスイッチ203のポートP1との間、スイッチ203のポートP2とスイッチ205のポートP1との間、スイッチ205のポートP2とスイッチ208のポートP2との間、スイッチ208のポートP1とスイッチ207のポートP2との間、スイッチ207のポートP1とスイッチ206のポートP2との間、スイッチ206のポートP1とスイッチ204のポートP2との間、スイッチ204のポートP1とスイッチ201のポートP1との間が帯域幅100MbpsのEthernet(登録商標)ケーブルにより接続されることで、リング状のネットワークが構成されている。各スイッチがネットワーク中継装置である。
また、ネットワーク上のノードであるPC251はスイッチ201のポートP3に、PC252はスイッチ203のポートP3に、PC253はスイッチ204のポートP3に、PC254はスイッチ205のポートP3に、PC255はスイッチ206のポートP3に、PC256はスイッチ206のポートP4に、PC257はスイッチ207のポートP3に、PC258はスイッチ208のポートP3に、それぞれ接続されている。
また、スイッチ202がルートブリッジになり、スイッチ206のポートP2とスイッチ207のポートP1との間でネットワークが切断されたネットワークトポロジーが構築されている。
この場合、スイッチ207のポートP1、P2が最もルートブリッジから離れており、ルートパスコスト値は19*4=76となる。ポートのルートパスコストが同じ場合、ブリッIDの値の小さい方が優先的に接続される。図8の場合、スイッチ206とスイッチ208のブリッジプライオリティ値が同じである(0x0800)から、スイッチ208のMACアドレス値が小さいためスイッチ206−スイッチ207間が切断されている。
このネットワークトポロジーでは、PC256とPC257との間で高優先度のフレームを送信、受信した場合、スイッチ206−スイッチ207間は物理的には接続されているにもかかわらず、最短距離で通信することができないため、高優先度のフレームを最短距離で効率良く転送することができない。
そこで、本実施形態では、ネットワークトポロジー内に流れるフレームの優先度に従ってネットワークトポロジーを動的に変更する、即ち各スイッチが一定期間全ポートの受信フレームのVLANタグプライオリティ値を送信先ポート番号と共に記録した後、転送優先度の高いフレーム程、転送効率が高くなるようにルートパスコスト値を変更したBPDUフレームをフレームの送信先ポートへ送信し、ネットワークトポロジーの再構築を行う。
図9は受信フレームのVLANタグプライオリティ値に基づいて決定されるルートパスコスト値の変更量を示す図である。図示のように、VLANタグプライオリティ値の大きいトラフィックタイプ程、ルートパスコスト値の減算値が大きくなるように定められている。この図に示す情報は各スイッチ内の記憶装置(図示せず)に記憶されている。
図10は本発明の第2の実施形態のネットワーク中継装置を備えたネットワークにおけるネットワークトポロジー変更後の構成、即ち図8に示すネットワークにおいて、各スイッチが一定期間全ポートの受信フレームのVLANタグプライオリティ値を送信先ポート番号と共に記録した後、図9に示すルートパスコスト値の変更量によりルートパスコスト値を変更したBPDUフレームをフレームの送信先ポートへ送信し、再構築を行ったネットワークを示す図である。
図10に示すように、スイッチ201のポートP3、スイッチ203のポートP3、スイッチ204のポートP3、スイッチ205のポートP3、スイッチ206のポートP3、スイッチ206のポートP4、スイッチ207のポートP3、スイッチ208のポートP3における受信フレームのVLANタグプライオリティ値は、それぞれ0、0、5、0、0、0、5、0である。つまり、スイッチ204、スイッチ207が高優先度のフレームを転送している。
そこで、スイッチ204はPC253からVLANタグプライオリティ値5のフレームを一定期間受け取り、宛先ポート番号と共に記録し、スイッチ204のポートP2と接続された経路のルートパスコスト値を2減算して36にした。また、スイッチ206がスイッチ204からのVLANタグプライオリティ値5のフレームを一定期間受け取り、宛先ポート番号と共に記録し、ポートP2と接続された経路のルートパスコスト値を2減算して53にした。この結果、スイッチ207のポートP2のルートパスコスト値は4減算されて72となる。このようにルートパスコスト値を変更した後にネットワークトポロジーを再構築した。
これによって、優先度が高いフレームを転送するルートパスコスト値が低くなり、スイッチ207がスイッチ206と接続され、スイッチ208と切断されるネットワークトポロジーが構築される。一定時間間隔でネットワークトポロジーを再構築することで、ネットワーク内に流れる優先度の高いフレームを優先的に転送可能なネットワークトポロジーを動的に構築することができる。
図11はスイッチ201乃至スイッチ208においてネットワークトポロジー構築処理を実行する部分の機能ブロック図であり、図12はネットワークトポロジー構築処理のフローチャートである。スイッチ201乃至スイッチ208の構成は同じであるため、図11ではスイッチ200とした。
図11に示すように、スイッチ200はポート211乃至214と、ポート211乃至214から入力された受信フレーム中のVLANタグプライオリティ値をデコードするVLANタグプライオリティ値デコード部221乃至224と、VLANタグプライオリティ値デコード部221乃至224によりデコードされたVLANタグプライオリティ値を記録するVLANタグプライオリティ値記録媒体231乃至234と、ルートパスコスト変更処理部235と、スイッチング処理部236とを備えている。
図11に示すスイッチ200は以下のように動作する。
まず図12に示すSTPトポロジー構築処理が開始されると、各ポートで受信された転送フレーム中のVLANタグプライオリティ値がVLANタグプライオリティ値デコード部221乃至224によりデコードされ、VLANタグプライオリティ値記録媒体231乃至234に一定期間記録される(ステップS201、S202)。
次に一定期間記録されたVLANタグプライオリティ値を基にルートパスコスト変更処理部235がスイッチ200の全ポートのルートパスコスト値を変更し(ステップS203)、STPトポロジー構築処理を終了する。変更されたルートパスコスト値はスイッチング処理部236に通知され、記憶される。
このように本発明の第2の実施形態のネットワーク中継装置(スイッチ201乃至スイッチ208)によれば、スイッチの全ポートでの受信フレームのVLANタグプライオリティ値を転送先ポート番号と共に記録し、ネットワークトポロジーを構築する際に、ルートパスコスト値の計算に各ポートのVLANタグプライオリティ値に基づいて決定されたルートパスコスト値の変更量を加える。これにより、ネットワークトポロジー内に流れるフレームの優先度に従って、高優先度フレームが転送される経路が優先的に近距離に接続されるようにネットワークトポロジーを動的に構築し、高優先度フレームの転送効率を高めることができる。
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態は第1の実施形態及び第2の実施形態を組み合わせたものである。即ちノードと直接接続されたスイッチのポートが受信するフレームのVLANタグプライオリティ値を記録し、記録されたVLANタグプライオリティ値を基にブリッジIDのブリッジプライオリティ値を変更し、かつスイッチの全ポートでの受信フレームのVLANタグプライオリティ値を転送先ポート番号と共に記録し、ルートパスコスト値の計算に各ポートのVLANタグプライオリティ値にVLANタグプライオリティ値に基づいて決定されたルートパスコスト値の変更量を加えて、ネットワークトポロジーを変更する。
図13は本発明の第3の実施形態のネットワーク中継装置を備えたネットワークにおいて、ブリッジプライオリティ値を変更し、ルートパスコスト値を変更していないときのネットワークトポロジーを示す図であり、図14は図13からルートパスコスト値を変更したときのネットワークトポロジーを示す図である。
図13に示すように、スイッチ301乃至スイッチ308を用いてリング状にネットワークが構成されている。即ち、スイッチ301のポートP2とスイッチ302のポートP1との間、スイッチ302のポートP2とスイッチ303のポートP1との間、スイッチ303のポートP2とスイッチ305のポートP1との間、スイッチ305のポートP2とスイッチ308のポートP2との間、スイッチ308のポートP1とスイッチ307のポートP2との間、スイッチ307のポートP1とスイッチ306のポートP2との間、スイッチ306のポートP1とスイッチ304のポートP2との間、スイッチ304のポートP1とスイッチ301のポートP1との間が帯域幅100MbpsのEthernet(登録商標)ケーブルにより接続されることで、リング状のネットワークが構成されている。各スイッチがネットワーク中継装置である。
また、ネットワーク上のノードであるPC351はスイッチ301のポートP3に、PC352はスイッチ303のポートP3に、PC353はスイッチ304のポートP3に、PC354はスイッチ305のポートP3に、PC355はスイッチ306のポートP3に、PC356はスイッチ306のポートP4に、PC357はスイッチ307のポートP3に、PC358はスイッチ308のポートP3に、それぞれ接続されている。
また、スイッチ304がルートブリッジになり、スイッチ305のポートP2とスイッチ308のポートP2との間でネットワークが切断されたネットワークトポロジーが構築されている。
第1の実施形態と同様に、PCから直接スイッチに送信されるフレームのVLANタグプライオリティ値によりブリッジプライオリティ値を変更してネットワークトポロジーを構築した場合、図13ではPC351とPC353との間、及びPC354とPC357との間でVLANタグプライオリティ5のフレームを送受信しており、スイッチ301、スイッチ304、スイッチ305、スイッチ307のブリッジプライオリティ値は0x0600となる。これら4つのスイッチのブリッジプライオリティ値が同じであるため、各スイッチのMACアドレスの違いにより、スイッチ304がルートブリッジになったものとする。
全てのスイッチが100Mbpsの同一の帯域幅で接続されているので、スイッチ305のポートP1、P2のルートパスコスト値が共に76となり、スイッチ303とスイッチ308のブリッジプライオリティ値の違いにより、スイッチ305とスイッチ308との間が切断されている。
このネットワークトポロジーでは、PC351とPC353とは高優先度のフレーム最短距離で送受信することができるが、PC354とPC357とは高優先度のフレームを最短距離で送受信することができず効率が悪い。
一方、第2の実施形態と同様に、各スイッチの全てのポートでの受信フレームのVLANタグプライオリティ値を一定期間送信先ポート番号と共に記録し、PCからの受信フレームの送信先ポートのルートパスコスト値を変更したBPDUフレームを送信し、ネットワークトポロジーの再構築を行った図14の構成では、スイッチ304のポートP1、スイッチ307のポートP2、スイッチ308のポートP2でルートパスコスト値が2減算される。この結果、スイッチ305のポートP1のルートパスコスト値は74、ポートP2のルートパスコスト値は72となり、スイッチ303とスイッチ305との間が切断されたネットワークトポロジーが構築される。
図15はスイッチ301乃至スイッチ308においてネットワークトポロジー構築処理を実行する部分の機能ブロック図であり、図16はネットワークトポロジー構築処理のフローチャートである。スイッチ301乃至スイッチ308の構成は同じであるため、図15ではスイッチ300とした。
図15に示すように、スイッチ300はポート311乃至314と、ポート311乃至314から入力された受信フレーム中のVLANタグプライオリティ値をデコードするVLANタグプライオリティ値デコード部321乃至324と、VLANタグプライオリティ値デコード部321乃至324によりデコードされたVLANタグプライオリティ値を記録するVLANタグプライオリティ値記録媒体331乃至334と、ルートパスコスト変更処理部335と、ブリッジプライオリティ変更処理部336と、スイッチング処理部337とを備えている。
図15に示すスイッチ300は以下のように動作する。
まず図16に示すSTPトポロジー構築処理が開始されると、ハローパケットを全ポート311乃至314に送信する(ステップS301)。ハローパケットは各ポートからネットワークへ送出される。このステップはスイッチング処理部337が行う。
次に各ポートで受信された転送フレーム中のVLANタグプライオリティ値がVLANタグプライオリティ値デコード部321乃至324によりデコードされ、VLANタグプライオリティ値記録媒体331乃至334に一定期間記録される(ステップS302、S303)。
次いでVLANタグプライオリティ値記録媒体331乃至334に記録されたVLANタグプライオリティ値のうち、ハローパケットに対する返信があったポートで受信された転送フレーム中のVLANタグプライオリティ値により、ブリッジプライオリティ変更処理部336がブリッジプライオリティ値を変更する(ステップS304)。
次に一定期間記録されたVLANタグプライオリティ値を基に、ルートパスコスト変更処理部335がスイッチ300の全ポートのルートパスコスト値を変更し(ステップS305)、STPトポロジー構築処理を終了する。変更されたルートパスコスト値はスイッチング処理部337に通知され、記憶される。
これにより、ネットワークトポロジー内に複数の高優先度フレームを送信するグループが存在した場合でも、一定間隔でネットワークトポロジーを再構築することで、フレームの優先度を考慮したネットワークトポロジーを動的に構築することができる。
このように本発明の第3の実施形態のネットワーク中継装置(スイッチ301乃至スイッチ308)によれば、ノードと直接接続されたスイッチのポートが受信するフレームのVLANタグプライオリティ値を記録し、記録したVLANタグプライオリティ値に従ってスイッチのブリッジIDのブリッジプライオリティ値を設定し、さらに全ポートの受信フレームのVLANタグプライオリティ値を宛先MACアドレス、転送先ポート番号と共に記録する。そして、ネットワークトポロジーを構築する際に、VLANタグプライオリティ値の大きいフレームを送信するノードが接続されたスイッチがルートブリッジとなり、さらに各ポートのVLANタグプライオリティ値に従って決定されたルートパスコスト値の変更量をルートパスコスト値の計算に加える。
これにより、ネットワークトポロジー内を流れるフレームの優先度に従って高優先度フレームが転送される経路が優先的に近距離に接続されると共に高優先度フレームを送信するノード同士が優先的に近距離に接続されたネットワークトポロジーを動的に構築し、優先度が高いフレームの転送効率を高めることができる。