JP5900978B2 - 皮膚創傷部治癒用組成物及び同皮膚創傷部治癒用組成物の製造方法 - Google Patents

皮膚創傷部治癒用組成物及び同皮膚創傷部治癒用組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は皮膚用組成物及び同皮膚用組成物の製造方法に関する。特に、天然成分のみから構成され、創傷治癒に優れた効果を有する皮膚用組成物及びその製造方法に関する。
従来、創傷治療のための外用剤として、ヨード系殺菌剤や銀化合物系殺菌剤、塩化ベンザルコニウムなどの合成化合物を含有する組成物がよく用いられている。例えば特許文献1には、ポピドンヨード等の外皮用殺菌消毒剤を含有する皮膚疾患治療用外用剤が開示されている。また、特許文献2には、塩化ベンザルコニウムを含有するゲル状外用剤が開示されている。
特開平10−259141号公報 特開2003−119129号公報
しかしながらこのような合成化合物を含んだ外用剤等の組成物は、安心・安全の観点から消費者に敬遠される場合も多い。従って合成化合物を含まない組成物の開発が望まれているが、天然物のみで構成される組成物で十分な創傷治癒効果を有するものは従来提案されていない。
そこで本発明はこのような課題に鑑み、天然成分のみで構成されながら創傷治癒に優れた効果を発揮できる皮膚用組成物を提供することを目的とする。また、本発明では、皮膚用組成物の製造方法についても提供する。
請求項1に記載の発明に係る皮膚創傷部治癒用組成物は、D−グルコースと、ホホバオイルと、蜜蝋と、水とを含有し、前記ホホバオイルと蜜蝋との重量比が3:1〜5:1であり、前記ホホバオイルと蜜蝋との合計量と前記水との重量比が1:0.3〜1:2.5であるクリーム状又は乳液状の皮膚創傷部治癒用組成物であって、前記D−グルコースは、前記水中に10〜20重量%の濃度で溶存する水溶液の状態で蜜蝋とホホバオイルとの混合物中に油中水滴型エマルジョンとして前記皮膚創傷部治癒用組成物中に2.0〜8.0重量%の割合で分散しており、しかも、前記ホホバオイル及び蜜蝋の合計量100重量部に対し、0.6〜1.2重量部のティートリーオイル及び/または0.52〜1.05重量部のラベンダーオイルを前記創傷部に発生する悪臭を抑制し、且つ、細菌や真菌の増殖を抑制するための成分として含有する。
また、請求項2に記載の発明に係る皮膚創傷部治癒用組成物は、単糖類であるD−グルコースと、スクロース、ラクトース、マルトースから選ばれる少なくともいずれか1種の二糖類と、ホホバオイルと、蜜蝋と、水とを含有し、前記ホホバオイルと蜜蝋との重量比が3:1〜5:1であり、前記ホホバオイルと蜜蝋との合計量と前記水との重量比が1:0.3〜1:2.5であるクリーム状又は乳液状の皮膚創傷部治癒用組成物であって、前記D−グルコースは、前記水中に10〜20重量%の濃度で溶存する前記二糖類も含んだ水溶液の状態で蜜蝋とホホバオイルとの混合物中に油中水滴型エマルジョンとして前記皮膚創傷部治癒用組成物中に2.0〜8.0重量%の割合で分散しており、しかも、前記ホホバオイル及び蜜蝋の合計量100重量部に対し、0.6〜1.2重量部のティートリーオイル及び/または0.52〜1.05重量部のラベンダーオイルを前記創傷部に発生する悪臭を抑制し、且つ、細菌や真菌の増殖を抑制するための成分として含有する。
また、請求項3に記載の発明に係る皮膚創傷部治癒用組成物の製造方法では、ホホバオイルと加温して融解させた蜜蝋とを重量比が3:1〜5:1の割合で混合して混合液を調製する工程と、少なくとも前記蜜蝋の融解温度よりも高い温度に加温され、前記ホホバオイルと蜜蝋との合計重量の0.3〜2.5倍の重量の水に10〜20重量%の濃度でD−グルコースを含有させた糖水溶液を前記混合液に添加しつつ混合し、前記混合液中において前記糖水溶液の油中水滴エマルションを2.0〜8.0重量%の割合で形成させて分散しとろみを有する液とするエマルション形成工程と、前記とろみ液に、前記ホホバオイル及び蜜蝋の合計量100重量部に対して0.6〜1.2重量部のティートリーオイル及び/または0.52〜1.05重量部のラベンダーオイルを添加し、得られたクリーム状の液体が分離しない状態となるまで混合する工程と、前記クリーム状の液体を冷却して固化させる固化工程と、を有することを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明に係る皮膚創傷部治癒用組成物の製造方法では、ホホバオイルと加温して融解させた蜜蝋とを重量比が3:1〜5:1の割合で混合して混合液を調製する工程と、少なくとも前記蜜蝋の融解温度よりも高い温度に加温され、前記ホホバオイルと蜜蝋との合計重量の0.3〜2.5倍の重量の水に10〜20重量%の濃度でD−グルコースを含有させ、更にスクロース、ラクトース、マルトースから選ばれる少なくともいずれか1種の二糖類を含有させた糖水溶液を前記混合液に添加しつつ混合し、前記混合液中において前記糖水溶液の油中水滴エマルションを2.0〜8.0重量%の割合で形成させて分散しとろみを有する液とするエマルション形成工程と、前記とろみ液に、前記ホホバオイル及び蜜蝋の合計量100重量部に対して0.6〜1.2重量部のティートリーオイル及び/または0.52〜1.05重量部のラベンダーオイルを添加し、得られたクリーム状の液体が分離しない状態となるまで混合する工程と、前記クリーム状の液体を冷却して固化させる固化工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、天然成分のみで構成されながら創傷治癒に優れた効果を発揮できる皮膚用組成物を提供することができる。また、本発明に係る皮膚用組成物の製造方法によれば、上述のような効果を有する皮膚用組成物を製造可能な方法を提供することができる。
本発明の皮膚用組成物による熱傷の治癒状態を示した写真。 本発明の皮膚用組成物による熱傷の治癒状態を示した写真。 本発明の皮膚用組成物による熱傷の治癒状態を示した写真。 本発明の皮膚用組成物による熱傷の治癒状態を示した写真。 本発明の皮膚用組成物による熱傷の治癒状態を示した写真。 本発明の皮膚用組成物による熱傷の治癒状態を示した写真。 本発明の皮膚用組成物による熱傷の治癒状態を示した写真。 本発明の皮膚用組成物による熱傷の治癒状態を示した写真。 本発明の皮膚用組成物による熱傷の治癒状態を示した写真。 本発明の皮膚用組成物による熱傷の治癒状態を示した写真。 本発明の皮膚用組成物による熱傷の治癒状態を示した写真。 本発明の皮膚用組成物による擦り傷の治癒効果を示した写真。 本発明の皮膚用組成物によるアトピー性皮膚炎の改善効果を示した写真。
本発明による皮膚用組成物は天然成分のみから構成されており、創傷治癒効果に優れた組成物である。本発明による皮膚用組成物によれば、創傷治癒に必要となる時間が有意に短期間となる。更に、本発明による皮膚用組成物はアトピー性皮膚炎等の皮膚疾患の治療にも優れた効果を発揮するものである。なお、本明細書において創傷部とは、アトピー性皮膚炎等の皮膚疾患部の意味も含まれる場合がある。
創傷治癒を促進させるための重要なファクターとして、創傷部の細胞に十分な栄養が供給されること、創傷部が適度に湿潤状態に保たれること、創傷部における細菌や真菌の増殖が抑えられることが挙げられる。本発明による皮膚用組成物は、天然成分のみから構成されるものでありながら、これらのファクター全てを兼ね備えるものである。以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明による皮膚用組成物は、糖類と、種子または果実由来の天然オイル成分と、天然蝋成分と、を含有している。
糖類として、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、グリコーゲンおよびデキストリンなどの多糖類、スクロース、ラクトースおよびマルトースなどの二糖類、D−グルコース、D−フルクトースおよびD−ガラクトースなどの単糖類を好適に用いることが可能である。そしてこれらの糖類の内、1種類のみの糖類を用いても、複数の糖類を混合して用いても良い。
糖類は皮膚用組成物中に2.0〜8.0重量%程度含有させるのが良い。糖類の正確な作用機序は不明であるが、例えばエネルギー源供給による皮膚細胞の活性化や高濃度の糖類の存在による制菌効果などの働きがあるものと推測される。
従って、糖類の含有量を2.0重量%以上とすることにより皮膚細胞が十分に活性化され、本発明による皮膚用組成物は優れた創傷治癒効果を発揮することができるものと考えられる。更には、糖類の含有量は4.0重量%以上とすることが好ましい。糖類の含有量を4.0重量%以上とすることにより創傷部における細菌や真菌の増殖を抑える効果が高くなり、創傷部の化膿が抑えられて創傷治癒効果が更に高くなる。
一方、糖類の含有量を8.0重量%以下とすることにより、本発明による皮膚用組成物を製造する工程において糖類を均一に分散させることが可能となる。更には、糖類の含有量は6.0重量%以下とするのが好ましく、均一な皮膚用組成物を製造することが容易となる。
特に、皮膚用組成物中の糖類の含有量を5.0重量%程度とすることにより、十分な創傷治癒効果および制菌効果を得ることができるとともに、製造工程において糖類を均一に分散させることが容易となって安定した製品を製造することができる。
糖類は、代謝により細胞のエネルギー源となり易いものを用いるのが好ましい。従って、用いる糖類は、スクロース、ラクトースおよびマルトースなどの二糖類とするのが好ましく、D−グルコース、D−フルクトースおよびD−ガラクトースなどの単糖類とするのが更に好ましい。
単糖類を用いる場合は、D−グルコースを用いるのが特に好ましい。D−グルコースは全身の細胞において代謝されるため、創傷部の皮膚細胞を活性化する効果が特に高いと考えられる。
また、単糖類、二糖類および多糖類の混合物を含有する皮膚用組成物は、単糖類のみを含有する皮膚用組成物に比べ、創傷治癒の効果の持続時間がより長くなる。すなわち、単糖類、二糖類および多糖類の混合物を含有する皮膚用組成物は、単糖類により皮膚細胞へ速やかにエネルギーが供給されることによる即効性を示すとともに、二糖類や多糖類が代謝されて皮膚細胞へ徐々にエネルギーが供給されることによる徐放性を示す。単糖類の含有量が多いほど即効性が高く、二糖類や多糖類の含有量が多いほど徐放性が高くなる。
付言すれば、本発明に係る皮膚用組成物は、単糖類である第1の糖類と、二糖類や多糖類である第2の糖類とを含有し、第1の糖類を即効させて速やかな皮膚の治癒を促しつつ、第2の糖類を遅効させて微生物等の繁殖を長時間に亘って抑制しながら皮膚細胞へ徐々にエネルギーを供給することができ、より効果的に創傷部の治療を行うことができる。
本発明による皮膚用組成物は、種子または果実由来の天然オイル成分をベースとして構成されている。本発明の皮膚用組成物において、例えば、ホホバオイル、サラダオイル、オリーブオイル、グレープシードオイル、スイートアーモンドオイルおよびアボカドオイル等を天然オイル成分として好適に用いることができる。本発明において、天然オイル成分として1種類のオイルを用いても良いし、複数種類のオイルを混合したものを用いても良い。本発明による皮膚用組成物によれば、この天然オイル成分によって創傷部を適度な湿潤状態に保つことができる。創傷部を適度な湿潤状態に保つことにより皮膚組織の再生が促進されるため、高い創傷治癒効果を得ることが可能となる。このように創傷部を乾燥させずに湿潤状態に保つことが創傷治癒に有利であるという知見は、現在の創傷治療の分野において広まりつつある。
また、種子または果実由来の天然オイル成分は抗菌作用や抗炎症作用を示すものが多いため、このような天然オイル成分を皮膚用組成物のベース成分として用いることにより創傷治癒効果を高めることができる。
中でも、天然オイル成分としてホホバオイルを使用するのが良い。ホホバは砂漠でも生育可能な多年草であり、ホホバオイルはホホバの種子から抽出される成分である。ホホバの種子は、ホホバオイルに含まれるワックスエステルによって、極めて乾燥した砂漠においても内部の水分が蒸発することを防いでいる。そして、ホホバオイルに含まれるワックスエステルの成分は人の皮膚に存在するワックスエステルの成分に極めて近い。従って、本発明による皮膚用組成物にホホバオイルを含有させることにより、創傷部の湿潤状態を極めて良好に保つことができる。更に、ホホバオイルは抗菌作用も有しているため、創傷部における細菌や真菌の増殖を抑えることができる。
また、本発明による皮膚用組成物において、天然蝋成分として例えば、蜜蝋、鯨蝋、サトウキビ蝋、カルナウバ蝋(カルナバ蝋)および天然パラフィンワックス等を好適に用いることができる。本発明において、天然蝋成分として1種類の蝋を用いても良いし、複数種類の蝋を混合したものを用いても良い。このような天然蝋成分により、皮膚用組成物に防水性を付与することができる。皮膚用組成物が防水性を有することにより創傷部の浸軟が防止されるため、高い創傷治癒効果を得ることが可能となる。
中でも、天然蝋成分として蜜蝋を使用するのが良い。蜜蝋はミツバチが巣を作る際に分泌する天然のワックスであり、高い防水性や保湿性を有するとともに、自然界の抗生物質とも言われるほどの高い抗菌効果を有する。また、未精製の蜜蝋は毒性が極めて低く、口に入っても安全である。
なお、従来、オイル成分や蝋成分をベースとして構成される皮膚用組成物中に2.0〜8.0重量%という比較的高い濃度の糖類を含有させるという提案はなされていない。糖類は水溶性のものが多いため、オイル成分や蝋成分に対して均一に分散させるのが困難であることが大きな理由の一つであると考えられる。
一方、本発明に係る皮膚用組成物では、糖類の濃度を10〜20重量%程度とした高濃度水溶液(以下、高濃度糖液という。)を予め調製し、蝋成分が融解する程度に温められたオイル成分との混合液に、この高濃度糖液を少量ずつ添加して十分混合させることにより油中水滴(W/O型)エマルションを形成させ、このエマルションを保持したまま固化させるようにしている。
従って、調製された皮膚用組成物の単位体積あたりの糖類の含有量は2.0〜8.0重量%であるが、ミクロな視点で言えば、ペースト状に固化した蝋成分とオイル成分との混合液中に、高濃度糖液が油中水滴型エマルションの状態で偏在しつつ分散している。
それゆえ、本発明に係る皮膚用組成物を創傷部等の患部に塗布すると、高濃度糖液の液滴がしっかりと皮膚に浸透すると共に、皮膚細胞に対して速やかに栄養分を供給することができる。
また、皮膚用組成物中において高濃度糖液の液滴の周囲には、蜜蝋やオイル成分中に含まれる殺菌効果等の機能性を備えた比較的親水性の高い物質、例えば香気成分などが集合したり、同じく蜜蝋中に含まれる低級アルコール等を介して液滴中に浸透する。
従って、皮膚用組成物を塗布した際に、蜜蝋やオイル成分等に由来する患部の治癒を助長する成分を患部に対して効率的に供給することができ、治療効果を高めることができる。
また、高濃度糖液の液滴中に、前述の第1の糖類と第2の糖類とが含まれる場合には、第1の糖類で速やかに細胞に栄養を与えつつも、第2の糖類の存在によって微生物の繁殖をさらに抑制することができ、患部が微生物によって汚染されることを効果的に防止することができる。
本発明による皮膚用組成物は、オイル成分や蝋成分をベースとして構成されているため皮膚になじみやすく、皮膚用組成物中に分散した糖類を表皮より下層、更には真皮まで浸透させる効果に優れている。
本発明による皮膚用組成物は水の含有量によって塗布時の粘度を調製することが可能である。皮膚用組成物は、水の含有量が少ないほど固くなり、水の含有量が多いほど軟らかくなる。天然オイル成分および天然蝋成分の合計量と水との重量比を1:0.3〜1:2.5程度の範囲とすることにより、塗布時においてのばし易くかつ流れ落ちにくい粘度とすることができる。通常、本発明による皮膚用組成物をクリーム状とする場合は、天然オイル成分と天然蝋成分の合計量と水との重量比を1:0.8〜1:1.2程度とすれば良い。一方、本発明による皮膚用組成物を乳液状とする場合は、天然オイル成分と天然蝋成分の合計量と水との重量比を1:1.8〜1:2.2程度とすれば良い。
皮膚用組成物に含まれる水分は塗布後にある程度蒸発する。皮膚への塗布後、ある程度の水分が蒸発して含水率が落ち着いた皮膚用組成物は、天然オイル成分が多いほど軟らかくなり、天然蝋成分が多いほど固くなる。従って、本発明による皮膚用組成物において、天然オイル成分と天然蝋成分との重量比は3:1〜5:1程度とするのが良い。天然オイル成分と天然蝋成分との重量比をこのような範囲に設定することにより、塗布後に固くなり過ぎず、かつ皮膚から流れ落ちにくい皮膚用組成物とすることができる。更に、天然オイル成分と天然蝋成分との重量比を3:1〜5:1程度とするとともに、皮膚用組成物における天然オイル成分の含有量を53〜55重量%程度、天然蝋成分の含有量を12〜14重量%程度とするのが良く、塗布後の皮膚用組成物の皮膚への密着性を良好とすることができる。
また、本発明による皮膚用組成物にはエッセンシャルオイルを更に含有させても良い。本発明において使用するエッセンシャルオイルは1種類のみとしても良いし、複数種類としても良い。エッセンシャルオイルには植物由来の揮発性の芳香物質が含まれており、創傷部に発生する悪臭を抑えることができる。また、エッセンシャルオイルは殺菌作用や抗菌作用を有することが多く、創傷部における細菌や真菌の増殖を抑えることができる。
エッセンシャルオイルとして、ティートリーオイル、ラベンダーオイルまたはユーカリオイルを特に好適に用いることができる。ティートリーオイルは高い消臭作用や殺菌作用を有しているため、創傷部に発生する悪臭を抑えたり、創傷部における細菌や真菌の増殖を抑えたりする効果に優れている。ラベンダーオイルは快適な香り成分を含むとともに高い殺菌作用を有するため、創傷部に発生する悪臭を抑えたり、創傷部における細菌や真菌の増殖を抑えたりする効果に優れている。ユーカリオイルは高い消臭作用や殺菌作用、抗炎症作用を有しているため、創傷部に発生する悪臭を抑えたり、創傷部における細菌や真菌の増殖を抑えたりする効果に優れるとともに、創傷治癒を促進する効果を有する。
ティートリーオイル、ラベンダーオイルおよびユーカリオイルの使用量は創傷部の症状に応じて適宜決定すれば良い。通常、天然オイル成分および天然蝋成分の合計量100gに対し、ティートリーオイルは600〜1200mg程度、ラベンダーオイルは520〜1050mg程度、ユーカリオイルは560〜1120mg程度使用すれば良く、この範囲の使用量で創傷部に発生する悪臭を十分に抑えることができる。なお、ティートリーオイル、ラベンダーオイル、およびユーカリオイルの使用量は、天然オイル成分および天然蝋成分の合計量100gに対し、最高でもそれぞれ1500mg程度、1300mg、および1400mg程度までとした方が良い。この使用量を超えると殺菌効果が高くなり過ぎてしまう可能性があり、また、ティートリーオイルやラベンダーオイルの場合は皮膚が炎症反応を起こしてしまう可能性がある。
また、その他のエッセンシャルオイルの場合も、上記ティートリーオイルやラベンダーオイル、ユーカリオイルの使用量を基本として比重換算した程度の量を用いれば良い。また、エッセンシャルオイルの種類によって得られる効果や強さに違いがあるため、当業者の知識に基づいて使用量を適宜調整すれば良い。
また、本発明による皮膚用組成物には、緑茶抽出成分を更に含有させても良い。緑茶抽出成分には優れた抗菌効果を有するカテキン類が豊富に含まれているため、緑茶抽出成分を皮膚用組成物に含有させることよって創傷部における細菌や真菌の増殖を抑えることができる。また、緑茶抽出成分には葉緑体由来のクロロフィルも豊富に含まれており、クロロフィルによる創傷部の脱臭効果も期待できる。更に、緑茶抽出成分には抗酸化作用を有するビタミンCやビタミンEが含まれており、紫外線などで荒れた肌を改善する効果や肌の老化を防止する効果もある。
緑茶抽出成分は、製造工程において糖類を緑茶に溶解または分散させることによって皮膚用組成物に添加される。緑茶抽出成分を含有する皮膚用組成物の製造例については、後述の実施例2において紹介する。
以上の通り、本発明による皮膚用組成物は天然成分のみから構成されており、安全性の高い組成物であると言える。従って、本発明による皮膚用組成物は汎用性の高いものであり、様々な用途に用いることが可能である。例えば、本発明による皮膚用組成物は、スキンケア用のスキンクリームや、化粧料、創傷治癒用の皮膚外用剤、アトピー性皮膚炎等の皮膚疾患改善用外用剤などに利用することが可能である。
本発明による皮膚用組成物の実施例について以下に説明する。
[実施例1]
以下の材料を準備し、以下の調製手順で本実施例1に係る皮膚用組成物Aを得た。
(材料)
a ホホバオイル(Weleda製):30ml(約25g)
b 蜜蝋:6g
c ろ過滅菌済の15%(重量)D−グルコース水溶液:15ml
d ティートリーオイル(Weleda製):10滴(約310mg)
e ラベンダーオイル(Weleda製):10滴(約270mg)
(皮膚用組成物Aの調製手順)
1.65℃程度に温めておいたホホバオイルaに蜜蝋bを入れ、加温しながら蜜蝋bを溶かして十分に混合した(5〜10分程度)。
2.予め65℃程度に温めておいた15%(重量)D−グルコース水溶液cを手順1で得られた混合溶液に一滴ずつ滴下しては混合し、十分に均一化した(30〜40分程度)。
3.加温を停止し、少しだけとろみがついた段階でティートリーオイルdおよびラベンダーオイルeを滴下し、得られたクリーム状の液体が分離しない状態となるまで十分に混合した(10〜15分程度)。
4.得られたクリーム状の液体を保存用の遮光ビンに移し、自然冷却によって固化させ、皮膚用組成物Aを得た。
[実施例2]
以下の材料を準備し、以下の調製手順で本実施例2に係る皮膚用組成物Bを得た。
(材料)
a ホホバオイル(Weleda製):30ml(約25g)
b 蜜蝋:6g
c’ ろ過滅菌済の15%(重量)D−グルコース緑茶溶液:15ml
d ティートリーオイル(Weleda製):10滴(約310mg)
e ラベンダーオイル(Weleda製):10滴(約270mg)
(15%(重量)D−グルコース緑茶溶液c’の調製手順)
1.すり鉢に緑茶1.5gと14mlの水を加え、すりこ木を用いて30〜60秒間程度緑茶をすりつぶし、緑茶のペーストを作製した。
2.その後、すり鉢に約90℃のお湯95mlを加えて緑茶ペースト液とし、その緑茶ペースト液をそのままビーカー等に移した。
3.さらに90℃のお湯95mlをすり鉢に加え、すり鉢に残ったペースト状の緑茶をゆすぎ、先程のビーカー内の緑茶ペースト液に加えた。
4.この状態で2分間静置し、緑茶成分を抽出した。
5.2分後、緑茶ペースト液を茶こしを用いてろ過し、緑茶抽出成分を含有する緑茶成分抽出液を得た。
6.この緑茶成分抽出液にD−グルコース36gを溶解させて、15%(重量)D−グルコース緑茶溶液を調製した。
なお、手順5が終わった段階で茶葉残渣の量が多い場合は、手順6でD−グルコースを加える前に0.25μmフィルターで一度ろ過しても良い。
(皮膚用組成物Bの調製手順)
1.65℃程度に温めておいたホホバオイルaに蜜蝋bを入れ、加温しながら蜜蝋bを溶かして十分に混合した(5〜10分程度)。
2.予め65℃程度に温めておいた15%(重量)D−グルコース緑茶溶液c’を手順1で得られた混合溶液に一滴ずつ滴下しては混合し、十分に均一化した(30〜40分程度)。
3.加温を停止し、少しだけとろみがついた段階でティートリーオイルdおよびラベンダーオイルeを滴下し、得られたクリーム状の液体が分離しない状態となるまで十分に混合した(10〜15分程度)。
4.得られたクリーム状の液体を保存用の遮光ビンに移し、自然冷却によって固化させ、皮膚用組成物Bを得た。
[創傷治癒効果の評価]
得られた皮膚用組成物による創傷治癒効果の実験結果について説明する。
(マウスを対象とした熱傷の治癒効果による評価 I )
ここでは、深達性II度からIII度の熱傷をヘアレスマウスに人工的に負わせ、その熱傷の治癒速度を観察することにより本発明による皮膚組成物の創傷治癒効果の評価を行った。
(熱傷実験の手順)
1.ヘアレスマウスに麻酔をかけた。
2.ゼムクリップの丸みを帯びたところをガスバーナーで赤熱させた後、空気中で10秒程度冷却して赤熱状態を解消した。
3.ゼムクリップの加熱部をマウスの背中に1秒程度押し当て、熱傷を負わせた。
4.耳かき程度の量の皮膚用組成物Aを患部に塗布した。また、比較のため、D−グルコースのみを含有しない組成物も準備し、同様に患部に塗布した(コントロール)。
5.熱傷後2〜7日目の間、同一個体に対して同一の組成物を用い、手順4の作業を毎日繰り返した。なお、患部への組成物の塗布に際して麻酔は行わなかった。
6.熱傷後8日目以降は皮膚用組成物Aやコントロールの組成物の塗布は行わなかった。
(熱傷の治癒状態の評価)
熱傷の治癒状態は下記表1を基準に評価した。
同一条件の下、同様の実験を3回行った。それぞれの実験における治癒経過を下記表2〜4に示す。表2〜4中、数字は実験に供したヘアレスマウスの個体数を示し、Aは皮膚用組成物Aを用いた場合を示し、Cはコントロールの組成物を用いた場合を示す。なお、ここでは上記実施例1に係る皮膚用組成物Aを用いた場合の実験結果を示すが、上記実施例2に係る皮膚用組成物Bを用いても同様の結果が得られることは実証済である。
表2〜4で示される通り、D−グルコースを含有しないコントロールの組成物を使用した場合に比べ、皮膚用組成物Aを使用した場合の方が熱傷の治癒速度が速いことが明らかである。すなわち、D−グルコースにより創傷治癒効果が高められたと言える。
更に、皮膚用組成物Aを使用した場合は、早くて熱傷後4日目には治癒段階が1段階となるまでに熱傷が治癒した個体も存在し、遅くとも熱傷後12〜32日目までには全ての個体の熱傷が治癒段階が1段階となるまで治癒した。従って、本発明による皮膚用組成物によれば、極めて速やかに傷跡が残らない状態まで創傷を完治させることができると言える。なお、D−グルコースを含有しないコントロールの組成物を使用した場合は、熱傷後32日目までに治癒段階が1段階となるまで熱傷が完治した個体は観察されなかった。
図1〜9は実験1および実験2における熱傷の治癒効果を示した写真である。図1〜9において、白色破線の円や楕円で囲った部分が熱傷を負わせた部位である。
図1は実験1における熱傷後2日目の写真である。図1(a)は皮膚用組成物Aを用いた場合の治癒状態を示し、図1(b)はコントロールの組成物を用いた場合の治癒状態を示している。
熱傷後2日目において、皮膚用組成物Aを用いた場合はかさぶたが形成されるまでに熱傷の治癒が進行した。一方、D−グルコースを含有しないコントロールの組成物を使用した場合は、依然として熱傷部が赤く腫れ上がっている状態であった。
図2は実験1における熱傷後4日目の写真である。図2(a)(b)は皮膚用組成物Aを用いた場合の治癒状態を示し、図2(c)(d)はコントロールの組成物を用いた場合の治癒状態を示している。
熱傷後4日目において、皮膚用組成物Aを用いた場合はかさぶたがはがれかかったり(図2(a))、更にはかさぶたがはげて傷がふさがりつつある状態(図2(b))にまで治癒が進行した。一方、D−グルコースを含有しないコントロールの組成物を使用した場合は、依然として熱傷部が赤く腫れている個体が多く、図2(c)で示されるように炎症が悪化した個体も存在した。
図3は実験1における熱傷後8日目の写真である。図3(a)は皮膚用組成物Aを用いた場合の治癒状態を示し、図3(b)はコントロールの組成物を用いた場合の治癒状態を示している。
熱傷後8日目において、D−グルコースの有無に関わらず、熱傷はほぼ完治しつつある状態にあった。ただし、皮膚用組成物Aを用いた場合は傷跡がほとんど判別できないまでに治癒したのに対し、D−グルコースを含有しないコントロールの組成物を使用した場合は明らかな傷跡が観察された。なお、図3で示される写真の一部のピントが合っていないのは、撮影時にヘアレスマウスに麻酔をかけていなかったためである。
図4は実験1における熱傷後11日目の写真である。右および中央の個体は皮膚用組成物Aを用いた場合の治癒状態を示し、左の個体はコントロールの組成物を用いた場合の治癒状態を示している。
熱傷後11日目において、D−グルコースの有無に関わらず、熱傷はほぼ完治したものと思われる。ただし、皮膚用組成物Aを用いた場合は傷跡がほとんど判別できないまでに治癒したのに対し、D−グルコースを含有しないコントロールの組成物を使用した場合は明らかな傷跡が観察された。実験開始時には全ての個体に同程度の熱傷を与えていることから、D−グルコースを含有する皮膚用組成物Aを使用した方が完治の程度が良いと言える。
図5は実験1における熱傷後32日目の写真である。図5(a)(b)は皮膚用組成物Aを用いた場合の治癒状態を示し、図5(c)(d)はコントロールの組成物を用いた場合の治癒状態を示している。
熱傷後32日目において、D−グルコースの有無に関わらず、熱傷はほぼ完治したものと思われる。ただし、皮膚用組成物Aを用いた場合は傷跡がほとんど判別できないまでに治癒したのに対し、D−グルコースを含有しないコントロールの組成物を使用した場合は明らかな傷跡が観察された。実験開始時には全ての個体に同程度の熱傷を与えていることから、D−グルコースを含有する皮膚用組成物Aを使用した方が完治の程度が良いと言える。
図6は実験2における熱傷後3日目の写真である。図6(a)は皮膚用組成物Aを用いた場合の治癒状態を示し、図6(b)はコントロールの組成物を用いた場合の治癒状態を示している。
熱傷後3日目において、皮膚用組成物Aを用いた場合はかさぶたが形成された上、そのかさぶたがはがれそうな状態にまで熱傷の治癒が進行した。一方、D−グルコースを含有しないコントロールの組成物を使用した場合は、依然として熱傷部が赤いままの状態であった。
図7は実験2における熱傷後6日目の写真である。図7(a)(b)は皮膚用組成物Aを用いた場合の治癒状態を示し、図7(c)(d)はコントロールの組成物を用いた場合の治癒状態を示している。
熱傷後6日目において、皮膚用組成物Aを用いた場合は、傷跡がほとんど判別できないまでに治癒した。一方、D−グルコースを含有しないコントロールの組成物を使用した場合は、依然として熱傷部が赤いままの状態であったり、もしくは赤く腫れている状態であった。従って、D−グルコースを含有する皮膚用組成物Aを使用した方が明らかに創傷治癒効果が高いと言える。
図8は実験2における熱傷後7日目の写真である。図8(a)は皮膚用組成物Aを用いた場合の治癒状態を示し、図8(b)はコントロールの組成物を用いた場合の治癒状態を示している。
熱傷後7日目において、皮膚用組成物Aを用いた場合は、傷跡がほとんど判別できないまでに治癒した。一方、D−グルコースを含有しないコントロールの組成物を使用した場合は、依然として熱傷部が赤いままの状態であった。D−グルコースを含有する皮膚用組成物Aを使用した方が創傷治癒効果が高いことは明らかである。
図9は実験2における熱傷後8日目の写真である。図9(a)は皮膚用組成物Aを用いた場合の治癒状態を示し、図9(b)はコントロールの組成物を用いた場合の治癒状態を示している。
熱傷後8日目において、皮膚用組成物Aを用いた場合は、傷跡がほとんど判別できないまでに治癒した。一方、D−グルコースを含有しないコントロールの組成物を使用した場合は、依然として熱傷部が赤いままの状態であった。D−グルコースを含有する皮膚用組成物Aを使用した方が創傷治癒効果が高いことは明らかである。
(マウスを対象とした熱傷の治癒効果による評価 II )
次に、ヘアレスマウスを対象とした熱傷の治癒効果について、本発明に係る皮膚用組成物Aを用いた場合と、同皮膚用組成物Aの有効成分である糖類のみを用いた場合とを比較して評価した。
試験は、前述の(熱傷実験の手順)と略同様であり、一方の試験群に皮膚用組成物Aを塗布し、他方の対照群には試験群に塗布した量(耳かき程度の量)の皮膚用組成物Aに含まれる糖類(D−グルコース)と同量の糖類を水溶液として塗布することで行った。また、観察は10日以上に亘って行ったが、ここでは治療効果に顕著な差異が認められた試験開始から7日目までの結果について図10及び図11を参照しつつ説明する。なお、10日目以降は、試験群及び対照群ともに治癒が進み、目視による顕著な差異は確認されなかったため、写真を用いた差異の説明は割愛する。
ヘアレスマウスの皮膚に形成した熱傷の状態を試験初日から毎日観察を続けたところ、皮膚用組成物Aを用いた場合と糖類のみを用いた場合との違いは、熱傷後1〜3日目で見られた。
図10は、熱傷後3日目のヘアレスマウスの皮膚の状態を示している。図10(a)に皮膚用組成物Aを用いた試験群を示し、図10(b)に糖類のみの対照群を示す。図10(a)に示す皮膚用組成物Aを用いた試験群では、試験開始後2〜3日では熱傷(やけど)の傷にまだ赤みがみられるものの、創傷治癒によるその傷の有意な縮小(治癒)傾向がみられた。
それに対して、図10(b)に示す糖類のみの対照群の場合、試験開始後1〜2日には、熱傷(やけど)部分が感染症によると思われる炎症等によって悪化し、それによる傷・炎症部分の拡大と、それに伴う創傷治癒の遅れがみられた。また、試験開始後3日目では、拡大した創傷部位に大きなかさぶたが形成された状態となっていた。
図11に、熱傷後7日目のヘアレスマウスの皮膚の状態を示す。図11(a)に皮膚用組成物Aを用いた試験群を示し、図11(b)に糖類のみの対照群を示す。7日目においても、皮膚用組成物Aを用いた試験群と糖類のみの対照群とで創傷治癒の違いにおいて有意な差がみられた。
すなわち、糖類のみの対照群と比較して、皮膚用組成物Aを用いた試験群の方がより良好に創傷治癒していた。
また、特に着目すべき点として、皮膚用組成物Aを用いた試験群では、熱傷(やけど)直後の感染症による炎症が起きにくかったことが挙げられる。ただし、炎症がほぼ収まった後の創傷治癒の速度については、両者に大きな差がないようにも思われた。
これらの結果は、本発明に係る皮膚用組成物Aの主成分の一つとして含有される糖類に有意な創傷治癒効果があることを示唆しているものと思われる。なお、この実験は合計3回行われ、どの場合においても、同様の結果が得られた。すなわち、本発明に係る皮膚用組成物Aの方が、糖類のみの対照群よりも有意に、早く、且つより良好な創傷治癒を行うことができることが明らかとなった。
(ヒトを対象とした創傷治癒効果の評価)
ここでは、被験者の両腕に同じ擦り傷を負わせ、本発明による皮膚組成物の創傷治癒効果の評価を行った。
まず、尖った針金の先を瞬間的に皮膚にこすりつけることにより、被験者の両腕に横長線状の同程度の擦り傷を形成させた。そして1日1回、右腕患部に皮膚用組成物Aを、左腕患部にコントロールの組成物をまんべんなく塗布した。塗布した組成物の量は両腕ともそれぞれ耳かきの2杯分に相当する量とした。
図12は本発明の皮膚用組成物による擦り傷の治癒効果を示した写真であり、擦り傷形成後7日目における治療状態を示したものである。図12(a)は皮膚用組成物Aを用いた右腕患部の治癒状態を示し、図12(b)はコントロールの組成物を用いた左腕患部の治癒状態を示している。図12中、白色破線の楕円で囲った部分が擦り傷を負わせた部位である。
擦り傷形成後7日目において、皮膚用組成物Aを用いた場合は、傷跡がほとんど判別できないまでに治癒した。一方、D−グルコースを含有しないコントロールの組成物を使用した場合は、依然として擦り傷の痕が認められた。従って、D−グルコースを含有する皮膚用組成物Aを使用した方が創傷治癒効果が高いことは明らかである。なお、図12はモノクロ写真のため擦り傷の痕の有無が分かりにくいが、画像変換前のカラー写真では、図12(b)において矢印で示される位置に横長線状の擦り傷の痕を明らかに観察できる。
(アトピー性皮膚炎の治癒効果による評価)
ここでは、本発明の皮膚用組成物によるアトピー性皮膚炎の治癒効果の評価を行った。
アトピー性皮膚炎を発症した患者の腕に、小指の爪の大きさ程度の量の皮膚用組成物Aをまんべんなく塗布した。皮膚用組成物Aの塗布は、1日1回、夕方の入浴後に行った。
図13は本発明の皮膚用組成物によるアトピー性皮膚炎の改善効果を示した写真である。図13(a)は皮膚用組成物Aの塗布開始直前の状態を示した写真であり、図13(b)は皮膚用組成物Aの塗布開始後14日目の状態を示した写真である。図13中、主に白色破線で囲った部分が皮膚用組成物Aを塗布した部位である。
図13の写真から明らかなように、皮膚用組成物Aによってアトピー性皮膚炎の症状が軽減したことが分かる。従って、本発明の皮膚用組成物はアトピー性皮膚炎に対しても良好な改善効果を発揮できると言える。
上述してきたように、本実施形態に係る皮膚用組成物によれば、糖類と、種子または果実由来の天然オイル成分と、天然蝋成分と、を含有することとしたため、天然成分のみで構成されながら創傷治癒に優れた効果を発揮できる皮膚用組成物を提供することができる。
また、本実施形態に係る皮膚用組成物の製造方法によれば、加温して融解させた蜜蝋と天然オイル成分とを混合して混合液を調製する工程と、少なくとも前記蜜蝋の融解温度よりも高い温度に加温された10〜20重量%の糖類を含有する糖水溶液を前記混合液に添加しつつ混合し、前記混合液中において前記糖水溶液の油中水滴エマルションを形成させてとろみを有する液とするエマルション形成工程と、前記とろみ液を冷却して固化させる固化工程と、を有することとしたため、天然成分のみで構成されながら創傷治癒に優れた効果を発揮できる皮膚用組成物を製造可能な方法を提供することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。

Claims (4)

  1. D−グルコースと、ホホバオイルと、蜜蝋と、水とを含有し、前記ホホバオイルと蜜蝋との重量比が3:1〜5:1であり、前記ホホバオイルと蜜蝋との合計量と前記水との重量比が1:0.3〜1:2.5であるクリーム状又は乳液状の皮膚創傷部治癒用組成物であって、
    前記D−グルコースは、前記水中に10〜20重量%の濃度で溶存する水溶液の状態で蜜蝋とホホバオイルとの混合物中に油中水滴型エマルジョンとして前記皮膚創傷部治癒用組成物中に2.0〜8.0重量%の割合で分散しており、しかも、前記ホホバオイル及び蜜蝋の合計量100重量部に対し、0.6〜1.2重量部のティートリーオイル及び/または0.52〜1.05重量部のラベンダーオイルを前記創傷部に発生する悪臭を抑制し、且つ、細菌や真菌の増殖を抑制するための成分として含有してなる皮膚創傷部治癒用組成物
  2. 単糖類であるD−グルコースと、スクロース、ラクトース、マルトースから選ばれる少なくともいずれか1種の二糖類と、ホホバオイルと、蜜蝋と、水とを含有し、前記ホホバオイルと蜜蝋との重量比が3:1〜5:1であり、前記ホホバオイルと蜜蝋との合計量と前記水との重量比が1:0.3〜1:2.5であるクリーム状又は乳液状の皮膚創傷部治癒用組成物であって、
    前記D−グルコースは、前記水中に10〜20重量%の濃度で溶存する前記二糖類も含んだ水溶液の状態で蜜蝋とホホバオイルとの混合物中に油中水滴型エマルジョンとして前記皮膚創傷部治癒用組成物中に2.0〜8.0重量%の割合で分散しており、しかも、前記ホホバオイル及び蜜蝋の合計量100重量部に対し、0.6〜1.2重量部のティートリーオイル及び/または0.52〜1.05重量部のラベンダーオイルを前記創傷部に発生する悪臭を抑制し、且つ、細菌や真菌の増殖を抑制するための成分として含有してなる皮膚創傷部治癒用組成物
  3. ホホバオイルと加温して融解させた蜜蝋とを重量比が3:1〜5:1の割合で混合して混合液を調製する工程と、
    少なくとも前記蜜蝋の融解温度よりも高い温度に加温され、前記ホホバオイルと蜜蝋との合計重量の0.3〜2.5倍の重量の水に10〜20重量%の濃度でD−グルコースを含有させた糖水溶液を前記混合液に添加しつつ混合し、前記混合液中において前記糖水溶液の油中水滴エマルションを2.0〜8.0重量%の割合で形成させて分散しとろみを有する液とするエマルション形成工程と、
    前記とろみ液に、前記ホホバオイル及び蜜蝋の合計量100重量部に対して0.6〜1.2重量部のティートリーオイル及び/または0.52〜1.05重量部のラベンダーオイルを添加し、得られたクリーム状の液体が分離しない状態となるまで混合する工程と、
    前記クリーム状の液体を冷却して固化させる固化工程と、を有することを特徴とする皮膚創傷部治癒用組成物の製造方法。
  4. ホホバオイルと加温して融解させた蜜蝋とを重量比が3:1〜5:1の割合で混合して混合液を調製する工程と、
    少なくとも前記蜜蝋の融解温度よりも高い温度に加温され、前記ホホバオイルと蜜蝋との合計重量の0.3〜2.5倍の重量の水に10〜20重量%の濃度でD−グルコースを含有させ、更にスクロース、ラクトース、マルトースから選ばれる少なくともいずれか1種の二糖類を含有させた糖水溶液を前記混合液に添加しつつ混合し、前記混合液中において前記糖水溶液の油中水滴エマルションを2.0〜8.0重量%の割合で形成させて分散しとろみを有する液とするエマルション形成工程と、
    前記とろみ液に、前記ホホバオイル及び蜜蝋の合計量100重量部に対して0.6〜1.2重量部のティートリーオイル及び/または0.52〜1.05重量部のラベンダーオイルを添加し、得られたクリーム状の液体が分離しない状態となるまで混合する工程と、
    前記クリーム状の液体を冷却して固化させる固化工程と、を有することを特徴とする皮膚創傷部治癒用組成物の製造方法。
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