JP5900938B2 - 薬剤ナノ粒子を分散した水分散液の製造法およびその利用 - Google Patents

薬剤ナノ粒子を分散した水分散液の製造法およびその利用 Download PDF

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Description

本発明は、薬剤ナノ粒子が分散している水分散液の製造法およびその利用に関する。
近年、薬剤(特に難水溶性薬剤)の粒子をナノサイズにまで微小化させたdrug nanocrystal(薬剤ナノ結晶)に高い関心が寄せられている。薬剤は、そのナノサイズによって細胞および/または組織へのその浸透性が向上されることが期待されている。さらに、薬剤のバルク粉体が難水溶性であっても、ナノ結晶化されることによって薬剤の水溶性が格段に高められる可能性がある。このように、薬剤ナノ結晶は、優れた次世代製剤形態として、科学、製剤分野において急速に研究が進められている。
ナノ粒子化した薬剤(薬剤ナノ粒子ともいう。)の製造技術としては、[1]薬剤バルク粉体をホモジナイザー、レーザアブレーションおよびミリング等でトップダウン様式にて微細化する技術(特許文献1・2参照)、[2]薬剤分子の集合体からボトムアップ様式にて薬剤ナノ結晶を作製する、沈殿法、気相蒸着法、エマルジョン法、スプレードライ法、凍結法等の技術(非特許文献1・2参照)、[3]これらの技術の組合せが報告されている。
日本国公表特許公報「特表2010−505748号公報(2010(平成22)年2月25日公表)」 日本国公開特許公報「特開2010−031026号公報(平成22年2月12日公開)」
Pharm Res. (2011) vol.28: pp.2567-2574 Journal of Controlled Release (2008) vol.128: pp.178-183
ナノ結晶化された粉末製剤の製品化がすでに行われている。しかしながら、薬剤ナノ結晶を水へ分散させた液状製剤(水分散液製剤ともいう。)として製品化に成功した例は極めて少ない。これは、薬剤ナノ結晶に特徴的な、水中での結晶成長(粒子成長ともいう。)による粒子径の増大が問題となるためである。すなわち、ナノ粒子として作製した薬剤が、液状製剤中でμm〜mmオーダーの大きな結晶凝集体を形成するために、薬剤ナノ粒子を安定的に分散した水分散液製剤として提供することは困難である。
本発明は上記課題を解決するために完成されたものであり、より詳細には、水分散液製剤として安定的に使用することができる、ナノ粒子を分散した水性組成物を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明者らは、鋭意検討を重ね、その結果、薬剤としての有効成分と軟膏基剤とを含ませた、有機溶媒と水との混合液を用いて作製した薬剤ナノ粒子において、難水溶性である薬剤の上記ナノ結晶を水に分散することができることを見出すとともに、得られたナノ粒子水分散液において、ナノ結晶の結晶成長が抑制されていることや、ナノ粒子に含まれている軟膏基剤の元々の特徴(患部への薬剤の滞留性を向上させること、薬剤の長期的な徐放性を維持することなど)がナノ粒子水分散液にて維持されていることを見出したことによって本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の方法は、有効成分を含むナノ粒子が水に分散しているナノ粒子水分散液を製造するために、有機溶媒を溶媒とする第一溶液と水を溶媒とする第二溶液との混合液を凍結したサンプルを凍結乾燥する工程であって、上記混合液が有効成分および軟膏基剤を含有している、工程、および、凍結乾燥したサンプルを水に分散させる工程を包含することを特徴としている。
上記構成を有していることにより、本発明の方法によって製造された水分散液において、有効成分を含むナノ粒子は均一に分散しており、かつ長期間の保存の後でも結晶成長が生じない。
本発明の方法は、上記水分散液において分散した粒子の結晶成長が生じていないことを確認する工程をさらに包含してもよい。本発明の方法によって製造された水分散液ではナノ粒子の結晶成長が生じないので、均一な分散系が維持されており、沈殿系が形成されない。すなわち、上記確認する工程は、上記水分散液において沈殿が生じていないことを確認する工程であってもよい。
また、上述したように、本発明の方法によって製造された水分散液において、ナノ粒子の結晶成長が抑制されている。すなわち、本発明の方法は、有効成分のナノ結晶の成長を抑制する方法でもあり得る。これは、有効成分および軟膏基剤を含む、有機溶媒と水との混合液を迅速に凍結しかつ凍結乾燥したことにより、有効成分の表面が軟膏基剤によってコーティングされたためであると考えられる。本発明の方法を用いれば、有効成分の表面が軟膏基剤によって首尾よくコーティングされ、その結果、有効成分のナノ結晶の成長が抑制される。ただし、コーティングの精度が一定でない可能性がある。よって、本発明の方法は、必要に応じて、得られた複数の水分散液から、ナノ粒子の結晶成長が生じていない分散液を選択する工程をさらに包含してもよく、この工程は、沈殿が生じていない水分散液を複数の水分散液から選択する工程であっても、懸濁液画分を回収する工程(生じた沈殿を除去する工程)であってもよい。
本発明のナノ粒子水分散液は、上述した方法に従って製造されていることを特徴としている。
本発明の組成物は、上記ナノ粒子水分散液を含有していることを特徴としている。本発明の組成物は、軟膏の代替物としての点眼剤または皮膚外用剤であってもよい。また、本発明の組成物は、ナノレベルのサイズの薬剤を含んでいるので、組織深遠部へ薬剤の有効成分を送達するために用いられてもよく、例えば、眼深遠部における疾患を処置するために用いられることが好ましい。
本発明を用いれば、軟膏(軟膏剤)に徐放性および滞留性を付与するという軟膏基剤の特徴を損なうことなく、ナノ結晶の結晶成長を抑制することができる。さらに、本発明を用いれば、難水溶性の薬剤を、長期間にわたって沈殿を生じさることなく、首尾よく水に分散することができる。
本発明を用いれば、水分散液製剤として薬剤のナノレベルでの局所塗布が可能となり、患部周辺に広範に塗布することに起因する軟膏の不都合(不便さや不快さ)が低減される。
本発明の一実施形態による粒子の電子顕微鏡像を示す図である。 従来技術による粒子の電子顕微鏡像を示す図である。 本発明の一実施形態による粒子の電子顕微鏡像を示す図である。 本発明の一実施形態または従来技術による粒子の分散液の外観を示す図である。 本発明の一実施形態による過酷試験の実施前後のナノ粒子の様子(電子顕微鏡像)を示す図である。 本発明の一実施形態による過酷試験の実施前後のナノ粒子の様子(粒度分布およびゼータ電位の結果)を示す図である。 本発明の一実施形態によるラノリンの使用の有無による粒子の様子(電子顕微鏡像、平均粒子径およびゼータ電位の結果)を示す図である。 本発明の一実施形態による種々の軟膏基剤を使用した際のナノ結晶の電子顕微鏡像(過酷試験前)を示す図である。 本発明の一実施形態による種々の軟膏基剤を使用した際のナノ結晶の電子顕微鏡像(過酷試験後)を示す図である。 本発明の一実施形態による種々の薬剤を用いて得られたナノ結晶の電子顕微鏡像を示す図である。 本発明の一実施形態による蛍光色素ナノ粒子点眼後の眼球表面の蛍光像の様子を示す図である。 本発明の一実施形態による蛍光色素ナノ粒子滴下後(180分後)の悌毛を施した皮膚表面の蛍光像の様子を示す図である。 本発明の一実施形態による薬物の眼内移行性を示す図である。 本発明の一実施形態による網膜の構造図を示す図である。
〔1:ナノ粒子水分散液を製造する方法〕
本発明は、ナノ粒子水分散液を製造する方法を提供する。特に、本発明は、難水溶性または非水溶性の薬剤(またはその有効成分)を首尾よく分散した薬剤ナノ粒子水分散液を製造する方法を提供する。本発明の製造方法は、軟膏基剤が目的の有効成分(例えば、難水溶性または非水溶性の薬剤)とともに含まれた、有機溶媒と水との混合液を凍結し、次いで凍結サンプルを凍結乾燥し、さらに凍結乾燥サンプルを水に再分散させることによって行われる。すなわち、本発明の製造方法は、ナノ粒子水分散液を製造するために、溶媒に有機溶媒を用いた第一溶液と溶媒に水を用いた第二溶液との混合液を凍結したサンプルを凍結乾燥する工程、および、凍結乾燥したサンプルを水に分散させる工程、を包含し、上記混合液は有効成分および軟膏基剤を含有している。
本発明に好適に利用される有効成分(難水溶性または非水溶性の薬剤)は特に限定されず、例えば、後述する懸濁型点眼剤に使用されるステロイド(デキサメタゾンおよびフルオロメトロン、ならびにトリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、コーチゾン、プレドニゾロン・アセテート、メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロン、吉草酸ベタメタゾン、コハク酸コルチゾール等)や、カルパイン(カルシウム依存性システインプロテアーゼ)に特異的に作用するインヒビターとして細胞のアポトーシスを阻害して神経保護薬等として機能するカルパインインヒビター(カルパインインヒビターI、カルペプチン、カルパインインヒビターII、カルパインインヒビターIII、カルパインインヒビターIV、カルパインインヒビターIV−2、カルパインインヒビターV、カルパインインヒビターVI、カルパインインヒビターVII、カルパインインヒビターX、カルパインインヒビターXI、カルパインインヒビターXII、カルパスタチンペプチド、EST、PD145305、PD150606、PD151746、Z−Leu−Leu−Tyr−CHN2、Z−Leu−Tyr−CH2Cl、Z−Phe−Tyr−CHO、Z−Leu−Leu−CHO、ロイペプチン等)、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs:ネパフェナク、インドメタシン、プラノプロフェン、ジクロフェナク、ブロムフェナク等)、抗腫瘍剤(パクリタキセル、カンプトテシン、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン、ドキソルビシン、タキソール、マイトマイシンC、レチノイン酸、サリドマイド等)、抗菌剤(エリスロマイシン、シクロスポリンA等)、新生血管抑制剤(フマリン、COX-2阻害薬、サリドマイド、2−メトキシエストラジオール、マトリックス分解酵素阻害剤マリマスタット、低分子キナーゼ阻害薬、ソラフェニブ、スニチニブ、セレコキシブ、プロタミン、ヘパリン、コーチゾン、プレドニゾロン・アセテート、硫酸化多糖、ハービマイシンA、フマギリン等)、抗ウイルス剤(アシクロビル等)、抗高血圧薬成分(スピロノラクトン等)、抗ヒスタミン薬成分(ロラタジン等)、抗高脂血症薬成分(クロフィブラート等)が挙げられる。
また、上述したように、本発明の方法によって製造された水分散液において、ナノ粒子の結晶成長が抑制されている。これは、第一溶液と第二溶液との混合液を迅速に凍結しかつ凍結乾燥したことにより、有効成分の表面が軟膏基剤によってコーティングされたためであると考えられる。ただし、コーティングの精度が一定でない可能性があり、得られた分散液においてナノ粒子の結晶成長が首尾よく抑制されていない可能性がある。このような可能性を排除するために、本発明の方法は、ナノ粒子の結晶成長が生じていないことを確認する工程をさらに包含することが好ましく、ナノ粒子の結晶成長が生じていない分散液を選択する工程をさらに包含することがより好ましい。
非特許文献1および2では、薬剤およびマトリクスを溶解した、t−ブチルアルコールと水との混合物を凍結した後に凍結乾燥することによって、マトリクスに取り込まれた薬剤のナノ粒子を得ている。しかし、非特許文献1および2には、軟膏基剤を用いて薬剤ナノ粒子を製造することが記載も示唆もされていない。また、非特許文献1および2でマトリクスとして、凍結乾燥中の結晶化を容易にするキャリアとしてマンニトールが用いられているが、マンニトールは軟膏基剤でないばかりか、両者の間で構造面での共通点もない。
非特許文献1には、溶媒に分散させた時に、薬剤ナノ結晶が容易に凝集物を形成したり溶けたりすること、凝集体の形成は界面活性剤を添加すること抑えることが可能であること、界面活性剤は薬剤を部分的に溶かしてしまうので最適でない結晶サイズの形成を導いてしまうことが記載されている。これらの記載は、オストワルド熟成などの、水中での薬剤の結晶成長が難しいことを示しており、薬剤ナノ粒子の水への再分散化が難しいことを示している。しかし、非特許文献1および2には、これらの不利益を克服する技術が開示も示唆もされていない。
このように非特許文献1および2に記載の方法によって得られた薬剤ナノ粒子は水へ再分散することが困難であり、しかも、水分散系における薬剤ナノ粒子の結晶成長を抑制することができない。
特許文献1では、乳化剤が水相に含まれており、水に不溶性の非ポリマー性疎水性有機化合物が薬剤とともに有機相に含まれており、高圧ホモジナイザーを用いて上記水相および上記有機相のエマルジョンを作製し、含まれている有機溶媒を真空下にて除去することによって薬剤ナノ粒子を得ている。特許文献2では、表面に脂肪酸エステルを吸着させた薬剤を分散媒中にてミリングすることによって薬剤ナノ粒子を得ている。しかし、特許文献1および2には、軟膏基剤を用いて薬剤ナノ粒子を製造することや薬剤ナノ粒子の製造の際に凍結乾燥を用いることが記載も示唆もされていない。しかも、結晶成長を抑制することを課題の1つとしている技術を、結晶成長を抑制することができない技術と組み合わせることは、当業者が容易になし得ることでない。
本発明の方法によって製造された水分散液において、分散した粒子の結晶成長は、少なくとも1週間以上生じないことが好ましく、1ヶ月以上生じないことがより好ましい。また、上記水分散液を高温(40℃以上、50℃以上または60℃以上)の、結晶成長を抑制するには過酷な環境下に保存した場合であっても、分散した粒子の結晶成長は生じないことが好ましく、高温環境下であっても少なくとも1週間以上生じないことがより好ましく、1ヶ月以上生じないことがさらに好ましい。すなわち、上記確認する工程は、上記分散させる工程の1週間以上後に行われることが好ましく、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月またはそれ以上後に行われることがより好ましく、いずれも場合も上記過酷な環境下にて行われてもよい。
第一溶液に用いられる有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、ベンゼン、1,4−ジオキサン、α,α,α−トリフルオロトルエン、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコール、エチルイソチオシアナート、4−キシレン、2−キシレン、2−クロロ−α,α,α−トリフルオロトルエン、4−クロロトルエン、シクロヘキサノール、エタノール、アセトン、メタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、クロロホルム、ジブロモメタン、ブチルクロライド、ジクロロメタン、ジメトキシメタン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、t−ブチルエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、2−ニトロエタノール、2−フルオロエタノール、2、2、2−トリフルオロエタノール、2−メトキシエタノール、i−ブチルアルコール、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコール、1−、2−、3−ペンタノール、ネオ−ペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノール、アニソール、ベンジルアルコール、フェノール、グリセロール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、1、3−ジメチル−3、4、5、6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル、プロパノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トリメチルアミン(TMA)、水酸化アンモニウム、トリフルオロ酢酸(TFA)、ギ酸、塩化ブチル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピオニトリル、ギ酸エチル、酢酸メチル、エチルメチルケトン、酢酸エチル、スルホラン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、テトラメチル尿素、ニトロメタン、ニトロベンゼン、ヘキサメチルホスホルアミド、2−、3−、または4−ピコリン、ピロール、ピロリジン、モルホリン、ピリジン、ピペリジン、酢酸、プロピオン酸、ペンタン、ヘキサン、トルエン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、エチルベンゼン、オクタン、インダン、ノナン、ナフタレン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、グリセロールアセテート、モノチオグリセロール、ジエタノールアミン、乳酸エチル、グリセロールホルマル、N−メチルピロリドン、ポリエチレングリコール400、イソプロピルミリステート、n−プロパノール、n−ブタノール、炭酸ジメチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1−ペンタノール、四塩化炭素、ヘキサフルオロアセトン、クロロブタノール、ジメチルスルホン、ブタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、ジメチルアクリルアミド、乳酸、グリコール酸、氷酢酸、グリセリン酸、安息香酸、プロパン酸もしくは乳酸のカルボキシ末端オリゴマー、グリコール酸、tert−ブタノール、ジオキサン、塩化エチレン、メチルエチルエーテル、メタンスルホン酸、メチシル酸およびHClが挙げられ、シクロヘキサン、ベンゼン、1,4−ジオキサン、α,α,α−トリフルオロトルエン、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコール、エチルイソチオシアナート、4−キシレン、2−キシレン、2−クロロ−α,α,α−トリフルオロトルエン、4−クロロトルエン、シクロヘキサノール、エタノール、アセトン、メタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)および1−メチル−2−ピロリドン(NMP)が好ましく、シクロヘキサン、ベンゼン、1,4−ジオキサン、α,α,α−トリフルオロトルエン、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコール、エチルイソチオシアナート、4−キシレン、2−キシレン、2−クロロ−α,α,α−トリフルオロトルエン、4−クロロトルエン、シクロヘキサノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノールおよび2−メチル−2−プロパノールがより好ましいが、目的の有効成分を溶解することができるものであれば特に限定されない。なお、単一の有機溶媒に溶解しない薬剤または難溶解性である薬剤を用いる場合、第一溶液の主成分を構成する第1の有機溶媒に加えて、溶解補助剤として第2の有機溶媒を混合させれば目的の薬剤を首尾よく溶解し得ることを、当業者は十分理解している。すなわち、本発明における第一溶液は、上述した有機溶媒が単一で用いられても、2つ以上組み合わせて用いられてもよい。
第二溶液は、水であっても、必要に応じて分散剤を含む水であってもよい。用いる有機溶媒や、第一溶液と第二溶液との混合比によっては、得られた分散液においてナノ粒子の結晶成長が首尾よく抑制されていない可能性があるが、上述したように、ナノ粒子の結晶成長が生じていないことを確認する工程や、ナノ粒子の結晶成長が生じていない分散液を選択する工程をさらに包含することによって、ナノ粒子の結晶成長が首尾よく抑制されたナノ粒子水分散液を製造することができる。なお、第一溶液に用いられる有機溶媒としてt−ブチルアルコールが用いられる場合、第一溶液と第二溶液との混合液は、それぞれの混合比が10000:1〜1:10000であることが好ましく、10:1〜1:10であることがより好ましい。
水分散液において、ナノ粒子の結晶成長が生じないことによって均一な分散系が維持され、その結果、沈殿系が形成されない。すなわち、上記確認する工程は、上記水分散液において沈殿が生じていないことを確認する工程であってもよく、上記選択する工程は、沈殿が生じていない水分散液を選択する工程、あるいは懸濁液画分を回収する工程(生じた沈殿を除去する工程)であってもよい。
本発明の方法に用いられる軟膏基剤は、軟膏を製造する際に用いられる周知の基剤であれば特に限定されず、例えば、ラノリン、ワセリン、蜜蝋、フェノール・亜鉛華リニメント、カカオ脂、ウイテプゾール、グリセロゼラチン、流動パラフィン、ハードファット、マクロゴール、ヒドロカーボンゲル軟膏基剤(例えばプラスチベース(大正富山医薬品株式会社)のような流動パラフィンとポリエチレンの混合物)が好適な例として挙げられ、ラノリンまたはその誘導体がより好ましい。ヒツジの原毛から羊毛を取別する際に副生する羊脂であるラノリンは、脂肪族アルコール類、コレステロール類、テンペンアルコール類、脂肪酸の混合物などである。ラノリンは、常温でペースト状であり、抱水性に優れ、自重の2倍量の水と混和することができるが、本質的に水に不溶である。このようなラノリンを加水分解および分別精製して得られるアルコール(ラウリンアルコール)または酸(ラウリン脂肪酸)もまた、ラノリン誘導体である。また、ラノリンに対して、アセチル化、アルコキシル化、スルホン化、水素化、エステル交換、還元等の化学反応を行った生成物もまた、ラノリン誘導体であり、ラウリン脂肪酸の金属塩などが、ラノリン誘導体として挙げられる。なお、本発明の方法に用いられるラノリンまたはその誘導体は、ラノリン誘導体の混合物であってもよく、精製されたラノリンであることが最も好ましい。上述したもの以外に、白色ワセリン、パラフィン、イソパラフィン、スクワラン、スクワレン、ポリブテン、セレシン、ラノリン、吸着精製ラノリン、ステアリン酸、ステアリルアルコール、セレシン、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ホホバ油、サラシミツロウ、ミリスチン酸イソプロピル、ゲル化炭化水素、中鎖脂肪酸トリグリセライド、固形パラフィン、セトステアリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ミリスチン酸イソプロピル、オクチルドデカノール、パルミチン酸イソプロピル、乳酸セチル、酪酸ラノリン、ポロイド、α − オレフィンオリゴマー、マイクロクリスタリンワックス、アイソパー、合成イソパラフィン、イソヘキサデカン、スクワラン、スクワレン、ゼレン50W、ポリエチレン、スクワラン、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリイソオクタン酸グリセリン、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、イソステアリン酸、クロタミトン、中鎖脂肪酸トリグリセリト、サリチル酸エチレングリコール、鉱物油等もまた、本発明への利用に好適である。さらに、マクロゴール軟膏等の水性軟膏基剤、乳剤性軟膏基剤、あるいはそれらの混合基剤からなる軟膏基剤が用いられてもよく、必要に応じて、ポリソルベート80(Tween類)、ゼラチン、トリエタノールアミン、アラビアゴム、トラガント、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ポリオキシル40、ソルビタンモノ脂肪酸エステル(Span類)、その他の界面活性剤などの乳化剤などが配合されていてもよい。
本発明の方法は、有効成分および軟膏基剤を有機溶媒に溶解して第一溶液を作製する工程や、分散剤を水に溶解して第二溶液を作製する工程をさらに包含してもよく、第一溶液と第二溶液との混合液を作製する工程や、第一溶液と第二溶液との混合液を凍結する工程をさらに包含してもよい。上記凍結する工程は、迅速な凍結が望まれるため、混合液が凍るような例えば摂氏0℃以下の環境下、冷蔵庫の使用、冷凍庫の使用、ディープフリーザーの使用、冷却溶媒環境下、液体ヘリウム環境下、ドライアイス環境下、液体窒素環境下等によって行われることが好ましいが、液体窒素環境下にて行われることが最も好ましい。
本明細書中で使用される場合、「ナノ粒子」は粒径がナノメートルのサイズである粒子が意図され、本発明におけるナノ粒子は、その粒径平均が500nm程度であることが好ましいが、220nm未満のサイズであってもよい。このような粒径を有するナノ粒子は、0.22μmのフィルタを用いて濾過することによって得ることができる。また、本発明におけるナノ粒子は、その粒径平均が約10〜200nmであることがより好ましく、より好ましくは約20〜180nm、さらに好ましくは約25〜150nm、最も好ましくは約25〜100nmである。
本発明の方法は、上記分散させる工程によって得られた分散液を濾過する工程をさらに包含することが好ましい。この工程は、ナノサイズを超える粒子を水分散液から除去するために用いられることが好ましいが、ナノ粒子の結晶成長が生じていないことを確認する工程として用いられてもよい。
本発明の方法を用いることによって、ナノ化による比表面積の増大に伴って薬剤の溶解性を向上することができる。また、難水溶性薬剤を用いた場合は、生体への投与に必要な難水溶性薬剤の水分散化が可能になる。
なお、本発明の方法において、「有効成分」は、本発明のナノ粒子水分散液の効果が期待される局面に用いられる薬剤であればよく、特定の薬剤に限定されない。また、WO 2010/053101に開示されるようなプロドラッグもまた、本発明に適用する有効成分として好適に用いられる。
当業者は、対象疾患に応じて薬剤(有効成分)を適宜選択することができる。そして、選択された薬剤を溶解するための有機溶媒は公知であるかあるいは容易に知ることができるので、当業者は、上記薬剤に好適な有機溶媒を容易に選択することができ、続いて、その有機溶媒に溶解し得る軟膏基剤もまた容易に選択し得る。すなわち、当業者は、選択した薬剤に基づいて試行錯誤することなく第一溶液を作製することができる。また、当業者は、何ら試行錯誤することなく第二溶液を作製することができる。このようにして得られた第一溶液および第二溶液を用いて本発明を実行すれば、所望の薬剤のナノ粒子水分散液を製造し得るということを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。
このように、本発明に係る薬剤ナノ粒子水分散液を製造する方法は、少なくとも、第一溶液および第二溶液の混合液を凍結したサンプルを凍結乾燥する工程と、凍結乾燥したサンプルを水に分散させる工程とを包含すればよいといえる。すなわち、薬剤(有効成分)、軟膏基剤および有機溶媒が後述する実施例と異なる方法も、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。
つまり、本発明の目的は、第一溶液および第二溶液の混合液を凍結したサンプルを凍結乾燥する工程と、凍結乾燥したサンプルを水に分散させる工程とを包含する薬剤ナノ粒子水分散液の製造方法を提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載した個々の薬剤(有効成分)、軟膏基剤および有機溶媒に存するのではない。
〔2:ナノ粒子水分散液〕
本発明はまた、上述した方法によって製造されたナノ粒子水分散液を提供する。本発明のナノ粒子水分散液は、軟膏基剤が目的の有効成分(難水溶性または非水溶性の薬剤)とともに含まれた、ナノメートルのサイズの粒径を有する粒子が水に分散している。本発明のナノ粒子水分散液に分散しているナノ粒子に含まれる軟膏基剤は、上述したものであれば特に限定されない。
ナノサイズの結晶を水中に溶解すると、オストワルド熟成とよばれる現象によって結晶の粒子成長(すなわち結晶成長)が繰り返され、溶液中に存在する粒子が径の大きな(μm以上の)粒子塊となり、その結果として溶液中に沈殿系を形成する。そのため、従来の手法に従って作製するナノ結晶水分散液は粒子分布に広がりを有する不均一系であり、これは非ナノ結晶を懸濁した態様と同等であり、ナノ結晶としての利点が失われている。
本発明のナノ粒子水分散液では、ナノ粒子の結晶成長が生じない。これは、有効成分の表面の一部または全部が軟膏基剤によってコーティングされたためであると考えられる。すなわち、本発明のナノ粒子水分散液に分散しているナノ粒子は、有効成分(難水溶性または非水溶性の薬剤)の表面を軟膏基剤がコーティングしている。
本発明のナノ粒子水分散液に分散しているナノ粒子は、高温(40℃以上、50℃以上または60℃以上)の環境下にて保存された場合であっても、少なくとも1週間以上、好ましくは1ヶ月以上、より好ましくは、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月またはそれ以上の期間にわたって結晶成長が生じない。すなわち、本発明のナノ粒子水分散液において、少なくとも1週間以上、好ましくは1ヶ月以上、より好ましくは、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月またはそれ以上の期間にわたって沈殿系が形成されない。
本発明のナノ粒子水分散液に分散しているナノ粒子は、その粒径平均が500nm程度であることが好ましいが、220nm未満のサイズであってもよい。このような粒径を有するナノ粒子は、0.22μmのフィルタを用いて濾過することによって得ることができる。また、本発明におけるナノ粒子は、その粒径平均が約10〜200nmであることがより好ましく、より好ましくは約20〜180nm、さらに好ましくは約25〜150nm、最も好ましくは約25〜100nmである。
本発明におけるナノ粒子の粒径が上述した数値範囲であることによって、ナノ粒子に含まれている薬剤の移行性が格段に高まり、組織深遠部へ薬剤の有効成分を送達する効率が格段に向上することが期待される。眼軟膏の代替として用いた場合に、眼深部への薬剤の浸透性が高まるので、これまで薬剤治療が困難であった眼深遠部(網膜等)の難治性疾患の治療が可能となる。さらに、薬剤の移行性が高まることによって、薬剤の最小投与による最大薬理効果を見込むことができる。さらに、ナノ化された粒子における薬剤は結晶であるため、本発明のナノ粒子水分散液は、薬剤が100%最密パッキングされた高密度製剤を提供する。
〔3:組成物〕
本発明は、ナノ粒子水分散液を含有している組成物を提供する。本発明の組成物は、上記ナノ粒子水分散液の性質に起因して種々の用途に利用され得る。
〔a〕軟膏代替物
軟膏(または軟膏剤)は、ワセリン等の基剤の中に有効成分を分散させた、半固形の外用剤であり、患部に塗布されることによって皮膚疾患等の治療に用いられる。軟膏に用いられる基剤(軟膏基剤ともいう。)としては、ワセリン等の疎水性基剤(油脂性基剤)、親水性基剤(乳剤性基剤、水溶性基剤、懸濁性基剤)、疎水性基剤、糊膏(リニメント)、泥膏(パスタ)、硬膏、ローション、スプレー等が挙げられ、軟膏の使用形態は、基本的にクリーム、ゲル、ローション等の塗布型である。軟膏は、軟膏基剤の性質によって、皮膚に付着することによって有効成分を長く皮膚に留めることができ、皮膚外用剤や、口腔用軟膏、眼軟膏等に使用されている。
軟膏は、疾患部に塗布された状態が長期間維持されるため、薬剤の長期的かつ安定的な徐放の利点がある。しかし、軟膏の洗浄は容易でなく、特に眼疾患に対する軟膏(眼軟膏)はクリームの塗布による懸濁のために視界が遮られて不便であり、患者へのコンプライアンスも低い。また、直接塗布するため、対象疾患部が、皮膚、眼、口腔などに限定され、体内の疾患部へ患者が簡便に塗布することは不可能である。また、塗布範囲も数mm〜数cmと広範囲に及ぶため、疾患部以外の健常組織へも薬剤が塗布されることが多い。さらに、基剤自体のアレルギー反応も含む副作用の問題も挙げられる。
上述したように、本発明のナノ粒子水分散液に分散しているナノ粒子は、有効成分(難水溶性または非水溶性の薬剤)および軟膏基剤を含有しており、有効成分の表面の一部または全部が軟膏基剤によってコーティングされている。そして、ナノ粒子水分散液において、ナノ結晶の結晶成長が抑制されているだけでなく、ナノ粒子水分散液は、ナノ粒子に含まれている軟膏基剤の元々の特徴(患部への薬剤の滞留性を向上させること、薬剤の長期的な徐放性を維持することなど)が維持されている。
本発明の組成物は、薬剤ナノ粒子を水分散液にて提供し得る(すなわち液状製剤である)ので、従来の軟膏製剤では困難であった投与形態(経口投与、注射、点眼等)を実現する。一実施形態において、本発明の組成物は、軟膏代替物として用いられ、より詳細には、本実施形態の組成物は、点眼剤である。従来の塗布型の眼軟膏と異なり、本発明の組成物は製剤が水分散液の形態で提供され、液滴投与が実現した。これにより、従来の軟膏製剤のように厚く塗布することを必要としないのでベタベタした不快感がなく、従来の軟膏製剤のような塗布によって生じる視界不良が発生しない。
なお、難水溶性の薬剤を水に懸濁/分散させた懸濁型点眼剤が市販されている。懸濁型点眼剤に使用される薬剤の代表例としてステロイドが挙げられる。ステロイドは難水溶性であるので、水中で数マイクロメートル以上の大きな粒子塊を形成して点眼容器の底へ沈殿している。このような懸濁型薬剤では粒子サイズが大きいために、薬剤の溶解性および眼内への移行性が低い(5%以下)。本発明の組成物がナノレベルの薬剤を含有していることによって、薬剤の、細胞/組織への浸透性が高まり、従来の点眼液投与では困難とされる眼深遠部炎症や後眼部網膜疾患への薬剤の移行性向上と治療の可能性が期待される;薬剤の最小投与による最大の薬理効果が望め、薬剤使用量の低下に伴う副作用の低減が見込める;快適な使用と優れた薬理効果により、患者のコンプライアンス向上が期待される。もちろん、本発明の組成物では、軟膏基剤に由来する長期滞留性、徐放性が期待される。
他の実施形態において、軟膏代替物として用いられ、より詳細には、本実施形態の組成物は、皮膚外用剤である。本発明の組成物は製剤がナノサイズで提供され、組織や細胞への浸透性が向上する。いずれの実施形態においても、軟膏基剤がその機能を発揮することによって、患部への薬剤の滞留性を向上させることや、薬剤の長期的な徐放性を維持することが可能である。
〔b〕さらなる用途
本発明に用いられる薬剤は、主に難水溶性薬剤であり、ナノサイズ化されている。上述したように、本発明の組成物は製剤がナノサイズで提供され、組織や細胞への浸透性が向上する。これに起因して、本発明の組成物は、薬剤の最小投与による最大効果を見込めるDDS(ドラッグデリバリーシステム)に極めて有効な剤形であり、優れた薬理効果や患者へのコンプライアンスの向上が期待される。すなわち、本発明の組成物は、適用した部位(組織表面)から組織深遠部へ薬剤の有効成分を送達することが必要な局面に利用される。上述した点眼剤として用いられた場合、本発明の組成物は、眼深遠部(網膜等)における疾患を処置するために用いられる。このように、本発明の組成物は、新たな剤形を提供するので、多くの医療分野での活用や抜群の経済効果を期待し得る。
〔4:ナノ結晶の成長を抑制する方法〕
本発明はさらに、ナノ結晶の成長を抑制する方法を提供する。薬剤ナノ結晶の結晶成長を抑制することは、今後開発が熾烈になるナノ結晶製剤の製剤化において極めて重要な課題である。本発明は、軟膏基剤を用いて、薬剤ナノ結晶の表面をコーティングすることによって結晶成長を抑制する方法を提供する。本発明が適用された薬剤ナノ結晶は、コーティングされた軟膏製剤の特徴点(徐放性、滞留性)を保持した、新たな製剤形態にて提供される。
本発明の方法は、軟膏基剤が目的の有効成分(例えば、難水溶性または非水溶性の薬剤)とともに含まれた、有機溶媒と水との混合液を凍結し、次いで凍結サンプルを凍結乾燥することによって行われる。すなわち、本発明の方法は、有機溶媒を溶媒とする第一溶液と、水を溶媒とする第二溶液との混合液を凍結したサンプルを凍結乾燥する工程を包含し、上記混合液は有効成分および軟膏基剤を含有している。
有機溶媒と水との混合液(薬剤を含有している。)を凍結し、次いで凍結サンプルを凍結乾燥することによって薬剤ナノ結晶が得られるが、本発明の方法を用いることによって、ナノ粒子の結晶成長が抑制されている。これは、第一溶液と第二溶液との混合液(薬剤および軟膏基剤を含有している。)を迅速に凍結しかつ凍結乾燥したことにより、有効成分の表面が軟膏基剤によってコーティングされたためであると考えられる。このように、本発明を用いれば、ナノ結晶の成長を抑制することができる。なお、本方法の説明については、「1:ナノ粒子水分散液を製造する方法」の説明を適宜参照のこと。
コーティングの精度によっては、ナノ粒子の結晶成長が首尾よく抑制されない可能性がある。このような可能性を排除するために、本発明の方法は、ナノ粒子の結晶成長が生じていないことを確認する工程をさらに包含することが好ましく、凍結乾燥したサンプルを水に分散させる工程や、ナノ粒子の結晶成長が生じていない分散液を選択する工程をさらに包含することがより好ましい。なお、水分散液において、ナノ粒子の結晶成長が生じないことによって均一な分散系が維持され、その結果、沈殿系が形成されない。すなわち、上記確認する工程は、上記水分散液において沈殿が生じていないことを確認する工程であってもよく、上記選択する工程は、沈殿が生じていない水分散液を複数の水分散液から選択する工程、あるいは懸濁液画分を回収する工程(生じた沈殿を除去する工程)であってもよい。
〔1.ナノ粒子水分散液の作製〕
デキサメタゾン(30mg)、軟膏基剤であるラノリン(60mg)、およびポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングリコール(70)(60mg)を10mLのt−ブチルアルコールに溶解して溶液A(第一溶液)を調製した。また、ポリビニルピロリドン(20mg)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(3mg)、およびポリソルベート80(5ul)を10mLの精製水に溶解して溶液B(第二溶液)を調製した。
なお、デキサメタゾン、ラノリン、t−ブチルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリソルベート80を和光純薬工業株式会社より入手し、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングリコール(70)を日本油脂より入手し、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを信越化学工業より入手した。
溶液A10mLをビーカーに入れて、1500rpm程度にてマグネティックスターラ―で撹拌した。撹拌している溶液A(45℃)にシリンジを用いて水溶液B10mL(25℃)を素早く注入した。得られた混合溶液をナスフラスコに入れ、液体窒素環境下にて混合溶液を急速に凍結した。凍結乾燥器を用いて、混合溶液の凍結サンプルを6時間程度の凍結乾燥に供した。混合溶液の凍結乾燥サンプルに適量の精製水(10mL程)を混合し、超音波処理によって上記サンプルを水中に分散させた。得られた分散液を、孔径0.22μmのフィルタに通して、デキサメタゾンのナノ粒子水分散液を得た。また、同様の手順に従って、フルオロメトロンのナノ粒子水分散液を得た。
〔2.水分散液における粒子の観察〕
得られたデキサメタゾンのナノ粒子水分散液におけるデキサメタゾンのナノ結晶の電子顕微鏡像を図1に示す。コントロールとして、従来技術の手順に従って超音波懸濁によってデキサメタゾンの水分散液を作製し、水分散液中のデキサメタゾンのナノ結晶を電子顕微鏡にて観察した(図2)。
従来技術の手順は、以下のとおりである:ラノリン(60mg)、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングリコール(70)(60mg)、ポリビニルピロリドン(20mg)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(3mg)、およびポリソルベート80(5ul)を10mLの精製水と混合し混合液を作製し、続いて、この混合液にデキサメタゾン(30mg)を混入し、超音波発生装置(BRASON2510)にて60分間超音波照射を行い超音波懸濁によるデキサメタゾンの水分散液を作製した。
なお、マイクロピペットを用いてナノ粒子分散液を20μL採取し、孔径0.05μmのアイソポアメンブレンフィルター(MILLIPORE社製;フィルターコード:VMTP)を使用した減圧濾過過程によって、目的の結晶サンプルをアイソポアメンブレンフィルター上に捕集した。結晶サンプルを担持したアイソポアメンブレンフィルターを走査型電子顕微鏡(SEM)(JEOL社製:JSM−6510LA)専用の試料台の上に導電性カーボンテープを用いて貼り付け、スパッタリング(JEOL社製:JFC−1600)を行って結晶サンプル表面に白金コーティングを施した後に結晶サンプルをSEMで観察した。
図1に示すように、100nm程度のナノ結晶群が観察され、本発明の方法に従えば良好なナノ粒子を得ることができることがわかった。図2に示すように、数〜数十マイクロメートルの結晶隗が形成されており、従来技術の手順に従えば良好なナノレベルの粒子を得ることができないことがわかった。
本発明の方法は、急速な凍結過程によって溶液中に存在している分子群の集合による結晶化過程でナノ結晶(または基剤でコーティングされたナノ粒子)を作製する、ボトムアップ的な手法である。これに対して、従来の作製法は、サイズの大きな粒子塊に超音波の衝撃を与えることによってトップダウン的に粒子塊を破砕しながら小さくしていく方法である。
従来の作製法にて用いる超音波発生装置では、粒子径の微小化に限度があり、通常平均粒子径がμmオーダー以上の粒子群が作製される。本発明でも作製過程で同様の装置を用いて超音波処理を行うが、これは凍結乾燥法によって作製されたナノ粒子群の塊を超音波の衝撃によってほぐして水に再分散させるためのものであり、粒子を破砕するためのものでない。
また、フルオロメトロンのナノ粒子水分散液におけるフルオロメトロンのナノ結晶の電子顕微鏡像を図3に示す。図1と同様に、100nm程度のナノ結晶群が観察され、本発明の方法に従えば良好なナノ粒子を得ることができることがわかった。
〔3.水分散液の外観〕
上述したデキサメタゾンのナノ粒子水分散液(A)、従来技術によって作製したデキサメタゾンの水分散液(B)、およびフルオロメトロンのナノ粒子水分散液(C)を、別々のバイアルに入れて観察した(図4)。正立したバイアル(左図)を倒し、背後に配置した文字をバイアルの側方より観察した。AおよびCでは、バイアル中の分散液を介して背後の文字を確認することができたことから、分散した粒子の粒径が小さいこと、および粒子が均一に分散したために光散乱が低下していることがわかった。しかし、Bでは、バイアル中の分散液を介して背後の文字を確認することができなかったことから、分散した粒子の粒径が大きいこと、および粒子の分散が不均一なために強く光散乱が生じたことがわかった。
〔4.ナノ粒子の結晶成長抑制〕
本発明のナノ粒子水分散液において結晶の成長が抑制されているか否かを検証するために、ラノリンを使用したフルオロメトロン水分散液A(すなわち本発明のナノ粒子分散液)とラノリンを使用しないフルオロメトロン水分散液Bを作製した。分散液AおよびBを60℃のオイルバスに48時間静置するという過酷試験を行い、過酷試験の前と後との間でどの程度の結晶成長が生じているかを、電子顕微鏡観察、ならびに動的光散乱法による粒度分布測定およびゼータ電位測定によって調べた。その結果、分散液Aでは、過酷試験の前後で粒子径、粒度分布およびゼータ電位にほとんど変化が見られなかったが、分散液Bでは、過酷試験の後にナノ粒子の結晶成長、粒度分布の広がりおよびゼータ電位の大幅な低下による粒子分散の不安定化が見られた。電子顕微鏡像を図5に、粒度分布およびゼータ電位を図6に示す。このように、本発明のナノ粒子分散液におけるナノ粒子の結晶成長抑制効果が実証された。
さらに、カルパインインヒビターであるカルペプチンを用いて、ラノリンを使用したカルペプチン水分散液C(すなわち本発明のナノ粒子分散液)とラノリンを使用しないカルペプチン水分散液Dを作製した。カルペプチン水分散液Cでは結晶成長が抑制された粒子径100nm程度のナノ粒子が観察されたが、カルペプチン水分散液Dでは結晶成長が抑制されておらず、平均的な大きさが4μm弱のファイバー状の薬剤が形成された。これらの電子顕微鏡観察、ならびに動的光散乱法による粒度分布測定およびゼータ電位測定の結果をそれぞれ図7(a)および(b)に示す。カルペプチン水分散液Cにおけるゼータ電位がカルペプチン水分散液Dのゼータ電位よりも強くネガティブにチャージしていることから、カルペプチン水分散液Cでのナノ粒子の分散安定性が確保されていることがわかる。このことは、軟膏基剤(ラノリン)を使用することによって、ナノ結晶水分散液の作製段階における薬剤の結晶成長を抑制しつつ、ナノ粒子の粒子分散安定性を向上させることを示す。
〔5.種々の軟膏基剤を用いて得られた水分散液〕
軟膏基剤としてラノリンを用いたナノ粒子水分散液の作製手順と同様の手順に従って、軟膏基剤として(a)ワセリン、(b)蜜蝋、(c)ウイテプゾール、または(d)カカオ脂を用いた、フルオロメトロンのナノ粒子水分散液を得た。得られたナノ粒子水分散液におけるナノ結晶の電子顕微鏡像を図8に示す。図1と同様に、200nm程度のナノ結晶群が観察され、本発明の方法に従えば良好なナノ粒子を得ることができることがわかった。さらに、得られたナノ粒子水分散液におけるナノ結晶の、動的光散乱法による粒度分布およびゼータ電位の結果を、表1に示す。分散した粒子の粒径が小さいこと、粒子が均一に分散したために光散乱が低下していること、およびゼータ電位測定によって表面がネガティブにチャージしたナノ粒子が安定的に分散していることがわかった。
さらに、軟膏基剤として(a)ワセリン、(b)蜜蝋、(c)ウイテプゾール、または(d)カカオ脂を用いた、フルオロメトロンのナノ粒子水分散液に対して、上述した過酷試験(60℃のオイルバスに48時間静置)を行ったが、過酷試験の前後で粒子径および粒度分布にほとんど変化が見られなかった。このことからも、種々の軟膏基剤を用いた系でも、本発明のナノ粒子分散液におけるナノ粒子の結晶成長抑制効果が実証された。得られたナノ粒子水分散液におけるナノ結晶の、電子顕微鏡像を図9に、動的光散乱法による粒度分布およびゼータ電位測定の結果を表1に示した。
〔6.種々の薬剤を用いて得られた水分散液〕
ステロイド(デキサメタゾンまたはフルオロメトロン)のナノ粒子水分散液の作製手順と同様の手順に従って、薬剤としてステロイド以外のものを用いてナノ粒子水分散液を得た。得られたナノ粒子水分散液におけるナノ結晶の電子顕微鏡像を図10に示す。図中、(a)〜(d)はそれぞれ、薬剤としてカルパインインヒビターI、カルペプチン、シクロスポリンA、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンを用いた場合のナノ結晶像である。図1と同様に、50〜400nm程度のナノ結晶群が観察され、本発明の方法に従えば良好なナノ粒子を得ることができることがわかった。さらに、種々の薬剤において得られたナノ粒子水分散液におけるナノ結晶の、動的光散乱法による粒度分布およびゼータ電位の結果を、表2に示す。表中のALLNおよびSN38はそれぞれカルパインインヒビターIおよび7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンを示す。分散した粒子の粒径が小さいこと、粒子が均一に分散したために光散乱が低下していること、およびゼータ電位測定によって表面がネガティブにチャージしたナノ粒子が安定的に分散していることがわかった。また、本発明を用いれば、低分子化合物だけでなくペプチド(カルペプチン)または油滴状(クロフィブラート)の薬剤をナノ粒子化することができることがわかった。
〔7.本発明のナノ粒子水分散液による化合物の滞留性1〕
本発明のナノ粒子水分散液を用いることによって化合物(ナノ結晶)が目的の組織へ長期的に滞留することができるか否かを検証するために、ラノリンを使用した水分散液E(すなわち本発明のナノ粒子分散液)とラノリンを使用しない水分散液Fを作製した。蛍光色素としてフルオレセイン(CAS 2321-07-5, Aldrich社)を使用した各水分散液の作製手順は以下のとおりである:
(1)ラノリン(60mg)、ユニルーブ(60mg)および蛍光色素フルオレセイン(1mg)をt−ブチルアルコール(10mL)に溶解させた溶液A(第一溶液)、ならびにPVP(20mg)、Tween 80(5μL)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(3mg)を溶解させた溶液B(第二溶液)を用いて、上述した手順に従って、ラノリンを含むフルオレセイン水分散液Eを作製した;
(2)ユニルーブ(60mg)および蛍光色素フルオレセイン(1mg)をt−ブチルアルコール(10mL)に溶解させた溶液A(第一溶液)、ならびにPVP(20mg)、Tween 80(5μL)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(3mg)を溶解させた溶液B(第二溶液)を用いて、上述した手順に従って、ラノリンを含まないフルオレセイン水分散液Fを作製した。
作製した各水分散液10μLをマウスに点眼し、所定の時間(60分間または180分間)の経過後にマウスを安楽死させ、共焦点レーザー顕微鏡を用いてマウスの眼球表面の蛍光像を観察した。その結果、ラノリンを使用した水分散液Eでは、いずれの場合にも点眼後の眼球表面から蛍光色素による蛍光が観察された(図11)。一方、ラノリンを使用しなかった水分散液Fでは、点眼を施した60分後には蛍光が観察されたが、点眼後の時間経過に伴って眼球表面からの蛍光が減衰し、点眼を施した180分後には蛍光がほとんど観察されなかった(図11)。このように、本発明のナノ粒子分散液においてナノ結晶を構成させることによって化合物の組織滞留性が向上することが明らかとなった。
〔8.本発明のナノ粒子水分散液による化合物の滞留性2〕
本発明のナノ粒子水分散液を用いることによって化合物(ナノ結晶)が眼球だけでなく皮膚へも長期的に滞留することができるか否かを、上記水分散液E(すなわち本発明のナノ粒子分散液)と上記水分散液Fを用いて検証した。
各水分散液50μLを剃毛したマウスの皮膚に滴下し、180分後にマウスを安楽死させ、共焦点レーザー顕微鏡を用いて滴下箇所を観察した。その結果、ラノリンを使用した水分散液Eでは、滴下箇所にて蛍光色素による蛍光が観察された(図12)。一方、ラノリンを使用しなかった水分散液Fでは、滴下箇所における蛍光色素による蛍光が水分散液Eほど顕著でなかった。このことより、水分散液Fが、滴化した箇所に長期的に留まらず、次第に周囲へ拡散したと考えられる。このように、本発明のナノ粒子分散液においてナノ結晶を構成させることによって化合物の組織滞留性が向上することが明らかとなった。
なお、水分散液Eを用いた場合、滴下180分後のマウスの尿から蛍光が観察された。このことより、本発明のナノ粒子水分散液が、目的の化合物を経皮的に体内へ徐放し得ることが明らかとなった。
〔9.本発明のナノ粒子水分散液を含有する点眼剤の効果1〕
本発明のナノ粒子水分散液を用いて点眼剤を作製し、眼深部疾患である網膜ぶどう膜炎に対する抗炎症効果を検証した。網膜ぶどう膜炎の抗炎症効果の評価にヒト内因性ぶどう膜炎の動物モデルである実験的自己免疫性網膜ぶどう膜炎(EAU:experimental autoimmune uveoretinitis)を用いた。
EAUでは眼と離れた部位に網膜特異抗原であるS抗原や視細胞間レチノイド結合タンパク(IRBP:interphotoreceptor retinoid binding protein)を注入することにより、マウスやラットのような小動物からヒトに近いサルまで、眼に触ることなく網膜ぶどう膜炎を効率よく誘導することができる。眼内炎症の程度は、既報に基づき下記のようなクリニカルスコアとして客観的かつ定量的に評価することができる。免疫したマウスの95%以上の個体にてクリニカルスコア2〜3を示すことを予備実験にて確かめている。
文献(Clin Exp Immunol, 1998,111, 442-9)を参考にしてEAUモデル動物を作製した。マウスに深酔麻酔を施し、結核死菌を含んだ完全フロイントアジュバント(CFA:complete freund's adjuvant)と合成ペプチド(IRBPのN末端15アミノ酸)を十分に混和した5mg/mLペプチド溶液を200μL皮下注射した。一般に、注射の約8日後から網膜ぶどう膜炎の炎症が出現し始め、17〜18日後に炎症がピークを迎えるとされている。この観点から、本発明の点眼剤の治療効果を検証するために、注射12日後〜18日後までの1週間にわたって1日3回毎日点眼を施した。フルオロメトロンを含有しない点眼基剤のみのコントロール液を施したコントロール群(3匹)、市販の点眼剤(フルオロメトロン濃度0.1重量%)を施した群(2匹)、本発明の点眼剤(フルオロメトロン濃度0.1重量%)を施した群(2匹)について点眼を行った。
点眼開始から1週間後に点眼を止め、マウスの眼底網膜を顕微鏡にて観察し、網膜部位における炎症の度合いをクリニカルスコアにより評価した。表3に炎症程度評価の基準を表すクリニカルスコアを示す。表4に実験結果を示す。
市販の点眼液を施した群では、「2+」が2眼、「1+」が2眼であった。本発明の点眼剤を施した群では、「1+」が2眼、「0.5」が2眼であった。これらの結果より、本発明の点眼剤を施した群では市販の点眼剤やコントロール液を施した群よりも優れた抗炎症効果を示すことがわかった。このように、本発明の点眼剤は後眼部網膜ぶどう膜炎に対する優れた抗炎症効果を期待することができる。
〔10.本発明のナノ粒子水分散液を含有する点眼剤の効果2〕
本発明のナノ粒子水分散液を用いて点眼剤を作製し、ウサギに点眼した薬物の眼内移行性を評価した。フルオロメトロンを含有しない点眼基剤のみのコントロール液を施した系(1眼)、市販の点眼剤(フルオロメトロン濃度0.1重量%)を施した系(1眼)、本発明の点眼剤(フルオロメトロン濃度0.1重量%)を施した系(1眼)、点眼を施さない系(1眼)について点眼を行った。
各系について、点眼した30分後にウサギに麻酔処理を施し、注射器を用いて角膜を穿刺して前房水を採取した。文献(あたらしい眼科7, 1051-53, 1990)を参考に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、眼内に移行した薬物濃度を測定した。先ず、各種採取した前房水0.2mLにジクロロメタン1.5mLを加え、10分間振盪した。振盪後、ジクロロメタン層1mLを分取し、約45℃の水浴にて蒸発乾固した。室温で一晩放置した後、残渣をメタノール40μLで溶解し、HPLC用の試料とした。なお、この際に使用した試験管、ピペットなどは十分洗浄したものを用いた。
フルオロメトロンは点眼後にそのほとんどが分解物であるジヒドロフルオロメトロンとなって前房水内に現れることが知られており、HPLC測定においてジヒドロフルオロメトロンはフルオロメトロンより早い保持時間にて検出される(あたらしい眼科7、1051−53、1990)。HPLC測定を行った結果を図13に示す。本発明の点眼剤を施した系(図中(d))において、フルオロメトロン(e)よりも早い保持時間にて特異的なピークの発現を認めた。このピークは、未処置の前房水(a)において認められないピークであり、またコントロール液を施した系(b)および市販の点眼剤を用いた系(c)の前房水からもほとんど検出されない。これらのことから、フルオロメトロンの分解物であるジヒドロフルオロメトロンが、本発明の点眼剤を用いた系(d)の前房水に多く含有されていたことが推測される。なお、上記ピークがジヒドロフルオロメトロンのピークであることを、標準試料を用いた検証実験によって確認した(結果は示さず)。このピークに基づいてフルオロメトロンの前房水内移行濃度を求めると約235ng/mLとなり、文献(あたらしい眼科7、1051−53、1990)にて報告されている市販の点眼剤を用いた系での約30ng/mLよりも約7〜8倍高い眼内移行性を示した。このように、本発明の点眼剤は従来品の点眼剤よりも高い組織浸透性(眼内移行性)を有することが示された。
〔11.本発明のナノ粒子水分散液を含有する点眼剤の効果3〕
本発明のナノ粒子水分散液を用いて点眼剤を作製し、網膜変性疾患の治療効果を検証した。薬剤にカルパインインヒビター(カルパインインヒビターIおよびカルペプチン)を用い、先天的に網膜変性を示すマウス(C3H/HeNCrlCrlj)に対して生後5日目から1日2回点眼を開始した。コントロールには、粒子サイズが粗大な(すなわちナノ粒子でない)懸濁型のカルパインインヒビターの点眼液、およびカルパインインヒビターを含まない基剤のみの点眼液を用いた。C3H/HeNCrlCrljマウスは、ホスホジエステラーゼ(PDE)6Bに遺伝子変異を有するマウスであり、生後すぐに網膜変性が始まり、生後2週目にはかなりの網膜色素上皮細胞および視細胞がアポトーシスに陥る、ヒトにおける網膜色素変性のモデル動物と考えられている。視細胞生存の評価の上で、視細胞の核が存在する外顆粒層の細胞密度や層構造の状態を評価することは、神経保護の状態を評価することになり、確立された方法として既に報告されている。
点眼開始から9日後にマウスを安楽死させ、眼球を摘出し、次いでホルマリンで眼球組織の化学固定を行った。固定した眼球をOCTコンパウンドに浸して凍結固化させた後に、クライオスタッドによって薄膜化した。得られた切片に対してヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を行い、光学顕微鏡によって網膜の構造を観察した。
結果を図14に示す。図中、(a)は正常マウスの網膜であり、(b)〜(h)は網膜変性マウスの網膜であり、その点眼した溶液は以下のとおりである;(b)カルパインインヒビターIナノ粒子水分散液;(c)カルパインインヒビターI懸濁液;(d)点眼なし(コントロール);(e)基剤のみ(コントロール)(f)カルペプチンナノ粒子水分散液;(g)カルペプチン懸濁液;(h)点眼なし(コントロール)。また、図中Nは、視神経乳頭を示す。
網膜変性が生じない正常マウスの網膜(図14(a))において外顆粒層が何十層にもわたって保たれているのに対して、網膜変性マウスの点眼なしのコントロール群(図14(d)および(h))または基剤のみを点眼した群(図14(e))では、外顆粒層が大幅に減少し,網膜の全層にわたって細胞密度が低下し,多くの空胞が認められた。カルパインインヒビターIナノ粒子水分散液の点眼(図14(b))では空胞が認められず、細胞密度も高く、外顆粒層も点眼なしのコントロール群(図14(d))と比較して、細胞数および密度ともに増加していた。カルペプチンナノ粒子水分散液の点眼(図14(f))においても同様に、アポトーシスが抑制され、網膜内層は正常マウス(図14(a))と同じレベルにみえ、外顆粒層の細胞密度や細胞の層構造も厚かった。ナノ粒子水分散液でなく懸濁液を用いた場合(図14(c)および(g))では、点眼なしのコントロール群と比較すると若干細胞密度は増えているが、空胞が多く、アポトーシスは抑制されていなかった。ナノ粒子水分散液の点眼群(図14(b)および(f))と、懸濁液の点眼群(図14(c)および(g))を比較すると、これらの細胞密度は圧倒的にナノ粒子水分散液の点眼群の方が高く、空胞もなく、アポトーシスが抑制されていることが明らかである。このように、本発明の点眼剤が網膜変性疾患に対する治療効果を有していることが実証された。
神経変性疾患である緑内障や、網膜の難治性疾患(加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、網膜色素変性等)のような眼深遠部に対する点眼態様による治療は、これまでに極めて困難であると考えられてきた。本発明の点眼剤による網膜変性疾患に対する治療効果が実証されたことは、本発明の点眼剤が眼深遠部における疾患に対する治療を可能とすることを強く示唆している。眼深遠部における疾患の治療を簡便な点眼態様にて可能とする本発明は、眼疾患の治療に大いに寄与する。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
すなわち、本発明は以下の態様であり得る:
[1]第一溶液と第二溶液との混合液を凍結したサンプルを凍結乾燥する工程、および、凍結乾燥したサンプルを水に分散させる工程、を包含し、上記混合液は有効成分および軟膏基剤を含有し、第一溶液の溶媒は有機溶媒であり、第二溶液の溶媒は水である、有効成分のナノ粒子水分散液を製造する方法。
[2]前記軟膏基剤が、ラノリン、ワセリン、蜜蝋、フェノール・亜鉛華リニメント、カカオ脂、ウイテプゾール、グリセロゼラチン、流動パラフィン、ハードファット、マクロゴール、ヒドロカーボンゲル軟膏基剤、またはこれらの誘導体である、1の方法。
[3]前記有効成分が難水溶性または非水溶性の薬剤である、1または2の方法。
[4]前記分散させる工程によって得られた分散液において、有効成分を含むナノ粒子の結晶成長が生じていないことを確認する工程をさらに包含する、1〜3の方法。
[5]前記確認する工程が、前記得られた分散液を濾過する工程である、4の方法。
[6]前記分散させる工程によって得られた分散液において、沈殿が生じていないことを確認する工程をさらに包含する、1〜5の方法。
[7]前記確認する工程を、前記分散させる工程の1週間以上後に行う、4〜6の方法。
[8]前記分散させる工程によって得られた分散液から、有効成分を含むナノ粒子の結晶成長が生じていない分散液を選択する工程をさらに包含する、4〜7の方法。
[9]前記分散させる工程によって得られた分散液から、沈殿が生じていない分散液を選択する工程をさらに包含する、6または7の方法。
[10]第一溶液と第二溶液との混合液を凍結する工程をさらに包含する、1〜9の方法。
[11]前記混合液を凍結する工程が液体窒素環境下にて行われる、10の方法。
[12]第一溶液と第二溶液との混合液を作製する工程をさらに包含する、1〜11の方法。
[13]有効成分および軟膏基剤を有機溶媒に溶解して第一溶液を作製する工程、および/または、分散剤を水に溶解して第二溶液を作製する工程をさらに包含する、1〜12の方法。
[14]1〜13の方法によって製造された、ナノ粒子水分散液。
[15]14のナノ粒子水分散液を含有している、組成物。
[16]点眼剤または皮膚外用剤である、15の組成物。
[17]適用した部位から組織深遠部へ薬剤の有効成分を送達するための、15または16の組成物。
[18]眼深遠部における疾患を処置するための、17の組成物。
[19]前記疾患が、網膜ジストロフィー、網膜色素変性、緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、ならびに種々の疾患に続発して発生する網膜変性および神経変性疾患からなる群より選択される、18の組成物。
[20]徐放性製剤として用いられる、15〜19の組成物。
[21]第一溶液と第二溶液との混合液を凍結したサンプルを凍結乾燥する工程を包含し、上記混合液は有効成分および軟膏基剤を含有し、第一溶液の溶媒は有機溶媒であり、第二溶液の溶媒は水である、有効成分のナノ結晶の成長を抑制する方法。
[22]前記軟膏基剤が、ラノリン、ワセリン、蜜蝋、フェノール・亜鉛華リニメント、カカオ脂、ウイテプゾール、グリセロゼラチン、流動パラフィン、ハードファット、マクロゴール、ヒドロカーボンゲル軟膏基剤、またはこれらの誘導体である、21の方法。
[23]前記有効成分が難水溶性または非水溶性の薬剤である、21または22の方法。
[24]前記凍結乾燥する工程によって得られたサンプルを水に分散させる工程をさらに包含する、21〜23の方法。
[25]前記分散させる工程によって得られた分散液において、有効成分を含むナノ粒子の結晶成長が生じていないことを確認する工程をさらに包含する、24の方法。
[26]前記確認する工程が、前記得られた分散液を濾過する工程である、25の方法。
[27]前記分散させる工程によって得られた分散液において、沈殿が生じていないことを確認する工程をさらに包含する、22〜24の方法。
[28]前記確認する工程を、前記分散させる工程の1週間以上後に行う、25〜27の方法。
[29]前記分散させる工程によって得られた分散液から、有効成分を含むナノ粒子の結晶成長が生じていない分散液を選択する工程をさらに包含する、25〜28の方法。
[30]第一溶液と第二溶液との混合液を凍結する工程をさらに包含する、21〜29の方法。
[31]前記混合液を凍結する工程が液体窒素環境下にて行われる、30の方法。
[32]第一溶液と第二溶液との混合液を作製する工程をさらに包含する、21〜31の方法。
[33]有効成分および軟膏基剤を有機溶媒に溶解して第一溶液を作製する工程、および/または、分散剤を水に溶解して第二溶液を作製する工程をさらに包含する、21〜32の方法。
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
本発明は、薬剤ナノ粒子の、水中での結晶成長を抑制する技術を提供することができるので、今後開発が激化するであろう、薬剤ナノ粒子を用いた製剤分野において極めて重要な役割を担う。

Claims (14)

  1. 薬剤および軟膏基剤を含有する、有機溶媒を溶媒とする第一溶液と、水を溶媒とする第二溶液との混合液を凍結したサンプルを凍結乾燥する工程であって、ここで、上記薬剤はナノ粒子でなく、上記混合液はナノ粒子を含んでいない、工程、および
    凍結乾燥したサンプルを水に分散させる工程
    を包含する、薬剤の有効成分を含むナノ粒子を分散した水分散液を製造する方法。
  2. 前記軟膏基剤が、ラノリン、ワセリン、蜜蝋、フェノール・亜鉛華リニメント、カカオ脂、ウイテプゾール、グリセロゼラチン、流動パラフィン、ハードファット、マクロゴール、ヒドロカーボンゲル軟膏基剤、またはこれらの誘導体である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記分散させる工程によって得られた分散液において、前記薬剤の有効成分を含むナノ粒子の結晶成長が生じていないことを確認する工程をさらに包含する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記確認する工程が、前記得られた分散液を濾過する工程である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記分散させる工程によって得られた分散液から、前記薬剤の有効成分を含むナノ粒子の結晶成長が生じていない分散液を選択する工程をさらに包含する、請求項3または4に記載の方法。
  6. 前記凍結したサンプルが、薬剤および軟膏基剤を有機溶媒に溶解した第一溶液に、水を溶媒とする第二溶液を素早く注入しかつ得られた混合液を、迅速に凍結することによって得られ、ここで、上記薬剤はナノ粒子でなく、上記混合液はナノ粒子を含んでいない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記混合液を迅速に凍結することが液体窒素環境下にて行われる、請求項に記載の方法。
  8. 前記第一溶液が、薬剤および軟膏基剤を有機溶媒に溶解して作製され、前記第二溶液が、分散剤を水に溶解して作製される、請求項またはに記載の方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法によって製造された水分散液を含有している組成物を調製する工程を包含する、製剤を製造する方法
  10. 前記製剤が、点眼剤または皮膚外用剤である、請求項に記載の方法
  11. 前記製剤が、適用した部位から組織深遠部へ薬剤の有効成分を送達するための製剤である、請求項9または10に記載の方法
  12. 前記製剤が、眼深遠部における疾患を処置するための製剤である、請求項11に記載の方法
  13. 前記疾患が、網膜ジストロフィー、網膜色素変性、緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、ならびに種々の疾患に続発して発生する網膜変性および神経変性疾患からなる群より選択される、請求項12に記載の方法
  14. 前記製剤が徐放性製剤である、請求項13のいずれか1項に記載の方法。
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